(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】埋立造成地の生産方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/18 20060101AFI20230623BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
E02D3/12 103
(21)【出願番号】P 2020553946
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042410
(87)【国際公開番号】W WO2020090829
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018203225
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000217686
【氏名又は名称】電源開発株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592002695
【氏名又は名称】株式会社セイア
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍵本 広之
(72)【発明者】
【氏名】熊本 勝彦
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-073981(JP,A)
【文献】特開2005-087782(JP,A)
【文献】特開2002-274899(JP,A)
【文献】特開2009-221784(JP,A)
【文献】特開2014-091102(JP,A)
【文献】特開2005-171725(JP,A)
【文献】特開2005-034676(JP,A)
【文献】米国特許第05299692(US,A)
【文献】特開2014-166934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/18
E02B 3/18
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上埋立処分場の埋め立てによって造成地を生産する方法であって、
陸上埋立処分場の埋立区域を所要の容積を有する埋立領域に区画し、
石炭火力発電所から排出された、乾灰、湿灰及びクリンカアッシュの少なくとも1つを含む石炭灰
と水とを混合して、石炭灰含水比が35~40%であるスラリーを生成し、
生成した前記スラリーを前記埋立領域に投入し、
前記埋立領域
に投入した前記スラリーを
、前記スラリーの表面が固化するまで乾燥させる、埋立造成地の生産方法。
【請求項2】
前記埋立区域を仕切りによって前記埋立領域に区画する、請求項1に記載の埋立造成地の生産方法。
【請求項3】
前記仕切りとして、前記石炭灰を少なくとも一部に含む畔を用いる、請求項2に記載の埋立造成地の生産方法。
【請求項4】
前記埋立区域を1以上の前記埋立領域に区画するとともに、一の埋立領域に、前記一の埋立領域の容積を満たすまで前記スラリーを投入した後、他の埋立領域への前記スラリーの投入を開始する、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の埋立造成地の生産方法。
【請求項5】
前記埋立領域の形状は矩形である、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の埋立造成地の生産方法。
【請求項6】
前記埋立区域が碁盤目状となるように、前記埋立領域を区画する、請求項
5に記載の埋立造成地の生産方法。
【請求項7】
前記埋立領域に投入された前記スラリーが乾燥した後、当該埋立領域上を新たな埋立領域として区画し、前記スラリーを新たに投入する、請求項1乃至
6のいずれか一項に埋立造成地の生産方法。
【請求項8】
前記埋立領域に投入された前記スラリーの乾燥後の石炭灰含水比が、27%以下である、請求項
7に記載の埋立造成地の生産方法。
【請求項9】
陸上埋立処分場の埋立区域、又は前記埋立区域に隣接する陸地に移設型スラリー製造装置を設置し、前記移設型スラリー製造装置を稼働して、前記スラリーを生成する、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の埋立造成地の生産方法。
【請求項10】
前記移設型スラリー製造装置から前記スラリーを搬送可能な範囲内の前記埋立領域への投入が完了した後、前記移設型スラリー製造装置の稼働を停止して、前記移設型スラリー製造装置を2以上の集合体に分割するとともに、
新たな設置場所に、前記移設型スラリー製造装置を移設する、請求項
9に記載の埋立造成地の生産方法。
【請求項11】
生成した前記スラリーをスラリー厚が20~40cmとなるように前記埋立領域に投入する、請求項1に記載の埋立造成地の生産方法。
【請求項12】
前記移設型スラリー製造装置は、支持基盤を含む、請求項9に記載の埋立造成地の生産方法。
【請求項13】
前記移設型スラリー製造装置は、最大接地圧が0.5kgf/cm
2
以下である、請求項9に記載の埋立造成地の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋立造成地の生産方法に関する。
本願は、2018年10月29日に、日本に出願された特願2018-203225号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所から産出される石炭灰、石膏粉や、高炉から産出される高炉スラグ粉末等(以下「石炭灰等」と記載する)のうち、有効利用されなかったものは、最終処分場において埋立処分される。最終処分場には、陸上埋立処分場と水面埋立処分場とがある。最終処分の方法としては、石炭灰等を加湿した後、ダンプ・ブルドーザ等によって埋立を行う湿灰埋立と、石炭灰等と水とを混合してスラリー化した後に埋立処分するスラリー埋立とに大別される。
【0003】
従来、陸上埋立処分場で用いられる湿灰埋立方法では、発電所の付帯設備によって加湿した石炭灰等を埋立処分場までダンプ等で搬送した後、ブルドーザによって転圧、締固めを行って埋め立てていた。しかしながら、従来の湿灰埋立方法では、湿灰の埋め立て密度を十分高くすることが出来ず、埋立処分場を有効活用できないという課題があった。また、従来の湿灰埋立方法では、埋め立てた湿灰の表面が乾燥すると飛散しやすい状態になるため、ブルドーザによる転圧後、粉塵等の飛散防止対策として湿灰の上に即日覆土、あるいは中間覆土を設ける必要があった。即日覆土とは、一日の作業終了後に廃棄物表面に設ける覆土をいう。中間覆土とは、廃棄物を埋め立てる際、一層の厚さを最大3m以下とし、一層ごとにその表面に設ける覆土(概ね50cm)をいう。
【0004】
特許文献1には、飛散防止対策としての中間覆土を省略可能な、陸上埋立処分場における焼却残渣の処分方法が開示されている。特許文献1に開示された焼却残渣の処分方法では、焼却残渣にセメントと水を添加して混練した非流動性の塑性混練物を形成し、この塑性混練物を層状にした層状体を形成する。次いで、この層状体の表面に対して面振動を与えることで、焼却残渣の粒子の周囲にセメント及び水を浸透させ、流動性の塑性流体層を形成する。そして、これを繰り返し行うことで2以上の固化盤を積み重ねていき、焼却残渣を処分するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された処分方法では、中間覆土の省略が可能であるが、埋立対象(焼却残渣)に対して余計な添加物(セメント)を加えることで容量がかさんでしまうため、埋立処分場の有効活用の観点では十分であるとは言えず、さらには経済性の観点からも採用が困難であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、粉塵等の飛散防止対策が不要であり、埋立処分場の有効活用が可能な陸上埋立処分場の埋立方法、すなわち、埋立造成地の生産方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である埋立造成地の生産方法は以下の構成を採用する。
[1] 陸上埋立処分場の埋め立てによって造成地を生産する方法であって、
陸上埋立処分場の埋立区域を所要の容積を有する埋立領域に区画し、
前記埋立領域に、乾灰、湿灰及びクリンカアッシュの少なくとも1つを含む石炭灰を原料として生成されたスラリーを投入した後、
前記埋立領域内のスラリーを乾燥させる、埋立造成地の生産方法。
[2] 前記埋立区域を仕切りによって前記埋立領域に区画する、[1]に記載の埋立造成地の生産方法。
[3] 前記仕切りとして、前記石炭灰を少なくとも一部に含む畔を用いる、[2]に記載の埋立造成地の生産方法。
[4] 前記スラリーの石炭灰含水比が、35~40%である、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の埋立造成地の生産方法。
[5] 前記埋立区域を1以上の前記埋立領域に区画するとともに、一の埋立領域に、前記一の埋立領域の容積を満たすまで前記スラリーを投入した後、他の埋立領域への前記スラリーの投入を開始する、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の埋立造成地の生産方法。
[6] 前記埋立領域の形状は矩形である、[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の埋立造成地の生産方法。
[7] 前記埋立区域が碁盤目状となるように、前記埋立領域を区画する、[6]に記載の埋立造成地の生産方法。
[8] 前記埋立領域に投入された前記スラリーが乾燥した後、当該埋立領域上を新たな埋立領域として区画し、前記スラリーを新たに投入する、[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の埋立造成地の生産方法。
[9] 前記埋立領域に投入された前記スラリーの乾燥後の石炭灰含水比が、27%以下である、[8]に記載の埋立造成地の生産方法。
[10] 陸上埋立処分場の埋立区域、又は前記埋立区域に隣接する陸地に移設型スラリー製造装置を設置し、前記移設型スラリー製造装置を稼働して、前記スラリーを生成する、[1]乃至[9]のいずれか一項に記載の埋立造成地の生産方法。
[11] 前記移設型スラリー製造装置から前記スラリーを搬送可能な範囲内の前記埋立領域への投入が完了した後、前記移設型スラリー製造装置の稼働を停止して、前記移設型スラリー製造装置を2以上の集合体に分割するとともに、
新たな設置場所に、前記移設型スラリー製造装置を移設する、[10]に記載の埋立造成地の生産方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、所要の容積を有する埋立領域に、乾灰、湿灰及びクリンカアッシュの少なくとも1つを含む石炭灰を原料として生成されたスラリーを投入した後、埋立領域内のスラリーを乾燥させる構成であるため、高密度で埋め立てすることができる。したがって、本発明の埋立造成地の生産方法によれば、陸上埋立処分場の有効活用が可能である。また、スラリーを乾燥した後の表面は固化しており、粉塵が発生することがないため、粉塵等の飛散防止対策が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の埋立造成地の生産方法を適用した第1実施形態を説明するための平面図である。
【
図2】本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用可能な移設型スラリー製造装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用可能な移設型スラリー製造装置の構成を示す側面図である。
【
図4】スラリー製造装置に設けられた機械レベル調整機部分の拡大図である。
【
図5】本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用可能なスラリー製造装置をユニット(集合体)に分割した場合の側面図である。
【
図6】第1実施形態の埋立造成地の生産方法に適用可能な埋立領域の拡大平面図である。
【
図7】第1実施形態の埋立造成地の生産方法における、埋立方法の一例を示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態の埋立造成地の生産方法における、埋立方法の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の埋立造成地の生産方法は、従来、水面埋立処分場の埋立に用いるスラリー埋立の手法を、新たに陸上埋立処分場の埋立において適用する。
本明細書において、「埋立造成地」とは、石炭灰スラリーによって埋め立てられた層を陸上部分に1層以上有している土地をいう。また、水面埋立処分場においても、水中部埋め立て後に露出した陸上部分にも適用される。
【0012】
<第1の実施形態>
以下、本発明の埋立造成地の生産方法を適用した第1実施形態の構成について、これを用いる陸上埋立処分場の埋立設備、及び移設型スラリー製造装置の構成と併せて、図面を用いて詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
(陸上埋立処分場の埋立設備)
第1実施形態の埋立造成地の生産方法(すなわち、陸上埋立処分場の埋立方法)に適用可能な陸上埋立処分場の埋立設備(以下、単に「埋立設備」という)の構成について説明する。
図1は、本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用可能な埋立設備70の構成を模式的に示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、埋立設備70は、スラリー供給源(以下、「スラリー製造装置」ということがある)1、上記スラリー製造装置1の石炭灰スラリー導出用の配管L1に接続されるスラリーポンプ14、スラリーポンプ14から埋立地点まで延設される輸送管L2、及び上記輸送管L2の先端が接続されるコンクリートポンプ車80と、を備えて、概略構成されている。
この埋立設備70は、陸上埋立処分場60の任意の埋立地点にスラリー状の石炭灰等(石炭灰スラリー)を供給するための設備である。
【0015】
スラリー供給源(スラリー製造装置)1は、乾灰、湿灰及びクリンカアッシュの少なくとも1つを含む石炭灰を原料として、陸上埋立処分場60の埋立て、すなわち、埋立造成地の生産に用いる石炭灰スラリーを製造するための装置である。
【0016】
原料として用いる石炭灰は、一般的にフライアッシュとクリンカアッシュとに分類される。本明細書では、フライアッシュとは、石炭火力発電所から排出される石炭灰のうち、煙道に設置された電気式集じん器やサイクロン、バグフィルタ等の機械式集じん機(以下、単に「集じん器」と記載する)で捕捉される石炭灰を示す。クリンカアッシュとは、石炭火力発電所から排出される石炭灰のうち、炉底あるいは炉壁に固着・排出された石炭灰であり、砂、レキ状のものを示す。
【0017】
上述したフライアッシュは、さらに、乾灰と湿灰とに分類される。本明細書では、乾灰とは、上記フライアッシュであり、集塵機から排出されたもので、吸湿していない状態のものを示す。また、湿灰とは、ガット船(密閉した船倉のない船)やダンプトラックで輸送するために乾灰に加湿した石炭灰(フライアッシュ)、もしくは野積みにされたフライアッシュが雨水等に触れて湿った状態になった石炭灰(フライアッシュ)を示す。
湿灰は、通常、含水率で15~30質量%程度の範囲を持った状態にある。
【0018】
スラリー供給源1は、設置場所は特に限定されるものではない。スラリー供給源1は、陸上埋立処分場60内の任意の地点に設けられていてもよいし、陸上埋立処分場60に隣接する陸地61のいずれかの地点に設けられていてもよい。
【0019】
スラリー供給源1の設置態様は、特に限定されるものではない。スラリー供給源1は、常設されたものであってもよいし、仮設されたものであってもよい。中でも、本実施形態に適用するスラリー供給源1としては、移設可能な設置態様であることが好ましい。
本実施形態に好適な移設型スラリー製造装置の構成については、後述する。
【0020】
スラリー供給源1は、後述するように、生成した石炭灰スラリー導出用の配管L1を有している。この石炭灰スラリー導出用の配管L1は、スラリーポンプ(スラリー圧送装置)14と接続されている。スラリーポンプ14は、スラリー供給源1の出口からスラリーの排出部まで石炭灰スラリーを押し出すために必要な吐出圧を有している。スラリーポンプ14としては、一般的な油圧ピストン2連式ポンプ、水陸両用サンドポンプ等を用いることができる。
【0021】
輸送管(スラリー輸送管)L2は、スラリー供給源1から圧送される石炭灰スラリーを陸上埋立処分場60の任意の埋立地点に配置されたコンクリートポンプ車80まで移送する。すなわち、輸送管L2は、スラリーポンプ14とコンクリートポンプ車80との間に設けられた配管である。輸送管L2の基端は、スラリーポンプ14と接続されている。輸送管L2の先端は、後述するようにコンクリートポンプ車80のホッパー部に接続されている。これにより、スラリー供給源1によって製造され、スラリーポンプ14によって圧送された石炭灰スラリーを、コンクリートポンプ車80に接続されたフレキシブルホースの先端から、任意の埋立地点に供給することができる。後述するように、本実施形態では、フレキシブルホースの先端が、スラリーの排出部となる。
【0022】
輸送管L2の長さRは、特に限定されるものではないが、50~500mとすることができ、100~300mがより好ましい。輸送管L2は、所要の長さの配管を複数用意し、これらを連結して構成してもよい。このような構成とすれば、連結する配管の本数を増減させることにより、陸上埋立処分場60の任意の埋立地点まで容易に輸送管L2を延ばして設置することができる。
【0023】
輸送管L2の断面サイズは、スラリー供給量と輸送管L2の長さ等から決まる配管の圧損を考慮して決定されるが、150A(管外形150mm)程度が一般的である。鋼管や柔軟な樹脂製の配管や、例えばコルゲート管等のように柔軟な構造を有した配管を使用できる。柔軟な材質又は構造を採用すれば、輸送管L2を容易に移動することができる。
【0024】
「移設型スラリー製造装置」
本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用するスラリー供給源として好適な移設型スラリー製造装置(以下、単に「スラリー製造装置」と記載する)1の構成について説明する。
図2は、本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用可能なスラリー製造装置1の構成を示す斜視図である。
図3は、本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用可能なスラリー製造装置1の構成を示す側面図である。
【0025】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用可能なスラリー製造装置1は、主要設備として、支持基盤2、支持フレーム3、及び高速混練ミキサー(撹拌装置)4を備えるとともに、任意の設備として、ベルトコンベア(原料搬送設備)5、材料受ホッパー(原料投入設備)6、スラリーホッパー7、及び階段8(8A,8B)を備えている。スラリー製造装置1では、上述した主要設備が支持基盤2上に載置されている。
【0026】
支持基盤2は、スラリー製造装置1の各構成部材(支持フレーム3、高速混練ミキサー4、ベルトコンベア5、材料受ホッパー6、スラリーホッパー7、及び階段8)を、直接あるいは支持フレーム3を介して間接的に支持するために設けられた基礎である。具体的には、支持基盤2としては、
図2に示すように、地盤の上に敷設された敷鉄板を用いることができる。本実施形態のスラリー製造装置1は、支持基盤2を用い、上述した主要設備を支持基盤2上に載置する構成であるため、固く、安定した地盤でない場所であっても設置できる。
支持基盤2の大きさは、特に限定されるものではなく、スラリー製造装置1の大きさに応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、幅:6.0~7.5m程度、長さ:15.0~17.1m程度とすることができる。本実施形態では、支持基盤2の大きさを幅:6.0m、長さ:15.0mとする。
支持基盤2の厚さは、スラリー製造装置1の構成部材の総量に応じて、反りや変形が生じることがない厚さを適宜選択することができる。具体的には、例えば、2.2~2.5cm程度とすることができる。
【0027】
図3に示すように、支持基盤2は、スラリー製造装置1を分解して移設する際の運搬しやすさの観点から、2枚の支持基盤部材(敷鉄板)2A,2Bから構成されている。支持基盤部材2A,2Bは、それぞれ独立した部材であってもよいし、部材同士が固定及び固定の解除の選択が自在に連結(締結)されていてもよい。支持基盤部材2A、2Bの枚数は、主要設備全体を載置する観点、輸送等車両に積載する観点、及び最大接地圧の確保の観点から、2枚が好ましく、1枚であってもよい。
支持基盤部材2A,2Bは、搬送等車両に積載する観点から、複数の敷鉄板を溶接したものを使用してもよい。1枚当たりの敷鉄板の大きさは、支持基盤2(支持基盤部材2A、2B)の大きさに合わせて決定することができるが、搬送等車両に積載する観点から、長さが10m以下であることが好ましい。
支持基盤部材2A,2Bは、スラリー製造装置1を移設する際、溶接個所を切り離して運搬し、移設した後に再溶接して設置することができる。
本実施形態に適用するスラリー製造装置1は軽量であるため、杭やコンクリート板のような固定基礎を用いる必要がない。したがって、スラリー製造装置1を分解して移設する際に運搬しやすい。
【0028】
図2及び
図4に示すように、支持基盤2上には、機械レベル調整機9が複数(本実施形態では、8箇所)設けられている。支持基盤2と支持フレーム3とは、機械レベル調整機9を介して連結された状態で固定されている。
【0029】
機械レベル調整機9は、
図4に示すように、H型鋼からなるレベル調整ベースプレート9Aと、調整用ボルト9Bとから構成される。機械レベル調整機9を設けることにより、支持基盤2上に支持フレーム3を連結する際に位置ずれを防止することができる。さらに、調整用ボルト9Bによって、機械設備のレベル調整をmm単位で容易に行うことができる。
支持基盤2と支持フレーム3とは、溶接等によって完全に固定されるのではなく、例えばボルトによる締結等によって、固定及び固定の解除の選択が自在となっている。
【0030】
支持フレーム3は、
図2及び
図3に示すように、スラリー製造装置1の構成部材(例えば、高速混練ミキサー3等)を所定の位置(高さ)に支持(固定)するために設けられたフレーム(骨組み)である。支持フレーム3としては、例えば、H型鋼を用いることができる。
【0031】
図3に示すように、支持フレーム3は、スラリー製造装置1を分解して移設する際の運搬しやすさの観点から、複数の支持フレーム部3A~3Dから構成されている。また、各支持フレーム部3A~3Dの構成は、特に限定されるものではなく、必要な形状や強度等に応じて、適宜選択することができる。
【0032】
具体的には、支持フレーム部3A~3Dは、H型鋼を用い、4本を垂直方向に並べて柱とし、柱の上に4本を平行方向に掛けわたして桁とした構成を基本構造としている。必要に応じて、柱と桁との間にH型鋼を斜めに掛け渡す筋違が設けられている。
【0033】
支持フレーム部3A~3Dは、それぞれ独立した部材であってもよいし、支持フレーム部同士が固定及び固定の解除の選択が自在に連結(締結)されていてもよい。支持フレーム部同士の連結方法は特に限定されるものではなく、例えば、H型鋼同士をボルトによって固定する方法を用いることができる。
【0034】
図2及び
図3に示すように、支持フレーム3には、作業用の床(足場)10が複数(本実施形態では、3箇所)設けられている。さらに、作業用の床10と支持基盤2との間に階段8(8A,8B)を着脱自在に掛け渡すことで、地面よりも高い位置に設けられた作業用の床10上に作業者が行くことができる。これにより、運転状況の確認等、作業性を高めることができる。作業用の床10には、安全用の柵11が設けられていることが好ましい。
【0035】
高速混練ミキサー4は、乾灰、湿灰及びクリンカアッシュのうち、いずれか1つ、又は2以上を組み合わせた石炭灰と、水とを混練して、スラリーを生成する撹拌装置である。
高速混練ミキサー4としては、具体的には、HFミキサー(大平洋機工株式会社製)のような垂直ミキサーを用いることができる。高速混練ミキサー4は、垂直ミキサーに限定されるものではなく、横型ミキサーであってもよいし、回転軸が鉛直方向と水平方向との間となるように傾斜するミキサーを用いてもよい。高速混練ミキサー4は、石炭灰と水との混合比率を適正な範囲に調整する機能を有していてもよい。
【0036】
高速混練ミキサー4の容量としては、特に限定されるものではなく、生成するスラリー量等から適宜選択することができる。具体的には、例えば、0.5~2.0m3程度とすることができる。
【0037】
高速混練ミキサー4は、当該高速混練ミキサー4の下方にスラリーホッパー7を設置する空間を設けるため、地上よりも比較的上方となる位置に設けられている。具体的には、高速混練ミキサー4は、原料となる石炭灰の投入口側を上方に、生成したスラリーの排出口側を下方となるように、支持フレーム部3Bによって支持されている。支持フレーム部3Bは、高速混練ミキサー4がスラリーホッパー7の上方となるように、支持フレーム部3A上に設けられている。
【0038】
高速混練ミキサー4の上方には、原料投入ガイド機構12と、水供給機構13とが設けられている。原料投入ガイド機構12としては、鋼製シュートを用いることができる。水供給機構13としては、鋼製配管を用いることができる。水供給機構13への水供給源としては、水中ポンプと水槽を用いることができる。スラリー製造装置1と水供給源との連結は、鋼製配管によって行う。水供給源は、スラリー製造装置1に隣接して配置する。水供給源は、水供給機構13へ供給可能な範囲に配置すればよく、水供給源を支持基盤2上に配置しなくてもよい。これにより、主要装置を支える支持基盤2の重量をより少なくすることができ、後述する最大接地圧を小さな値とすることができる。
【0039】
高速混練ミキサー4は、石炭灰スラリー製造の生産性を高めるため、高速撹拌可能であることが好ましい。高速撹拌の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば垂直ミキサーの場合には、インバーター制御等によって130rpm以上の回転数であることが好ましく、140rpm以上の回転数であることがより好ましく、150rpm以上の回転数とすることがさらに好ましい。この場合、バッチ式のスラリー生成において、30秒以下、より好ましくは15秒以下の練り混ぜ時間でスラリー化することができる。
【0040】
ベルトコンベア5は、原料となる石炭灰のうち、
図1に示すように主に灰仮置場40に野積みされた湿灰及びクリンカアッシュを原料とする場合に、これらの原料を積載して高速撹拌ミキサー4の投入口に設けられた原料投入ガイド機構12に運搬するための搬送設備である。ベルトコンベア5は、原料投入ガイド機構12側が高くなるように、傾斜した状態で支持フレーム部3B、3C間に亘って着脱自在に支持されている。
【0041】
ベルトコンベア5を用いることにより、作業者が原料を高速混練ミキサー4の投入口に運ぶ必要がなくなるため、作業効率が向上する。また、ベルトコンベア5によって原料を原料投入ガイド機構12まで運搬する際に、稼働時間を計測することによって、原料の投入量を計量することができる。さらに、上述したように灰仮置場40に野積みされた湿灰及びクリンカアッシュを原料とする場合、フライアッシュを貯留するサイロも不要となる。これにより、従来のスラリー製造装置に設けられていたフライアッシュ貯留用のサイロや灰定量供給機が不要となるため、スラリー製造装置1を小型化することができる。
【0042】
材料受ホッパー6は、原料となる石炭灰のうち、主に野積みされた湿灰及びクリンカアッシュを原料とする場合に、これらの原料をベルトコンベア5に積載するために設けられた原料の投入設備である。材料受ホッパー6は、支持フレーム部3Dに支持されている。
支持フレーム部3Dは、材料受ホッパー6がベルトコンベア5の積載面の上方となるように、支持フレーム部3C上に設けられている。
【0043】
このように材料受ホッパー6を設けることにより、当該材料受ホッパー6の上方に設けられた開口部から、例えば、バックホウ、ショベルカー等の重機を用いて投入された原料を貯留するとともに、下方に設けられた開口部から原料をベルトコンベア5の積載面に投下することができる。
ベルトコンベア5と材料受ホッパー6との間に、例えば摺り切り板状の部材を設けることにより、ベルトコンベア5上に積載される石炭灰の厚さを均一にすることができる。このように、ベルトコンベア5上に積載される石炭灰の断面積(厚さ)を一定に保つことにより、ベルトコンベア5の稼働時間によって高速混練ミキサー4への石炭灰の投入量を正確に制御することが可能となる。
【0044】
スラリーホッパー7は、高速混練ミキサー4によって製造された石炭灰スラリーを一時的に貯留するための設備である。スラリーホッパー7は、支持フレーム部3Aによって支持されている。スラリーホッパー7の下部には、石炭灰スラリー導出用の配管L1が接続されており、スラリー製造装置1の二次側に石炭灰スラリーを供給可能とされている。スラリーホッパー7を備えることにより、スラリー製造装置1から石炭灰スラリーを安定して供給することができる。
【0045】
階段8(8A,8B)は、支持フレーム3に設けられた作業用の床10に登るために、支持基盤2と支持フレーム3との間に掛け渡されている。具体的には、階段8Aは、支持基盤部材2Bと、支持フレーム部3Dとの間に設けられている。階段8Bは、支持基盤部材2Aと、支持フレーム部3Bとの間に設けられている。これにより、地面よりも高い位置に設けられた作業用の床10上に作業者が安全に行くことができる。階段8は、支持基盤2及び支持フレーム3に、例えばボルトによる締結等によって、着脱自在に固定されている。これにより、スラリー製造装置1を解体する際に、自由に取り外しすることができる。
【0046】
本実施形態に適用可能なスラリー製造装置1は、最大接地圧が0.5kgf/cm2以下であり、0.43kgf/cm2以下であることが好ましく、0.22kgf/cm2以下であることがより好ましく、0.1kgf/cm2以下であることがさらに好ましい。スラリー製造装置1の最大接地圧が0.5kgf/cm2以下であると、硬く安定した地盤でなくとも湿地ブルドーザが入っていける程度の地盤であれば、スラリー製造装置1を設置することができる。したがって、本実施形態のスラリー製造装置1を設置する際の設置場所として、埋立て処理開始前から陸地であった場所に限られず、後述する陸上埋立処分場の埋立処理が既に一層以上完了した場所(即ち、埋立造成地)にも設置することができる。
スラリー製造装置1の最大接地圧は、支持基盤2を含むスラリー製造装置1の総重量(荷重)/支持基盤2の面積から決定される。本実施形態では、スラリー製造装置1の機械荷重は35,513kgであり、積載荷重を含むスラリー製造装置1の荷重は122kNである。支持基盤2の面積は90m2である。これより、スラリー製造装置1の最大接地圧は122kN/90m2=1.35kN/m2(=0.0135kgf/cm2)となる。
【0047】
このように、陸上埋立処分場60内、あるいは陸上埋立処分場60に隣接する陸地61のいずれかの地点にスラリー製造装置1を設置することにより、スラリーポンプの供給能力をことさら高くすることなく、さらにはスラリー輸送管をことさら延長することなく、石炭灰スラリーを安定して供給することができる。また、スラリー輸送管を短くできるため、スラリー輸送管内での石炭灰スラリーの詰まりのリスクも低減させることができる。
本実施形態のスラリー製造装置1は、充分に小型・軽量化の検討がなされており、0.2kgf/cm2未満(0.194kgf/cm2)の最大接地圧を実際に達成することができる。
【0048】
本実施形態に適用可能なスラリー製造装置1は、支持基盤2、支持フレーム3、高速混練ミキサー4、ベルトコンベア5、材料受ホッパー6、スラリーホッパー7、及び階段8の各構成部材の連結部分について、任意の個所で固定を解除することができる。支持基盤2及び支持フレーム3については、各部材の連結部分について、任意の個所で固定を解除することができる。固定の解除は、例えば、締結部分のボルトを緩めることで行うことができる。これにより、本実施形態のスラリー製造装置1は、一度設置した後であっても、2以上の任意のユニット(集合体)に分割して、新たな設置場所に搬送した後、再度設置することができる。
【0049】
スラリー製造装置1は、2以上のユニットに分割することができる。各ユニットは、各支持基盤部材2A,2B、各フレーム部材3A~3D、撹拌装置4、ベルトコンベア5、材料受ホッパー6、スラリーホッパー7及び階段8A,8Bから選ばれた任意の組合せとすることができる。
【0050】
スラリー製造装置1は、例えば、8つのユニット1A~1Hに分割することができる。
具体的には、
図5に示すように、ユニット1Aは、支持基盤部材2A、支持フレーム部3A、及びスラリーホッパー7を有して概略構成されている。ユニット1Bは、支持フレーム部3B、攪拌装置4、及び水供給機構13を有して概略構成されている。ユニット1Cは、原料投入ガイド機構12を有して概略構成されている。ユニット1Dは、支持基盤部材2B及び支持フレーム部3Cを有して概略構成されている。ユニット1Eは、支持フレーム部3D及び材料受ホッパー6を有して概略構成されている。ユニット1Fは、ベルトコンベア5から構成されている。ユニット1Gは、階段8Aから構成されている。ユニット1Hは、階段8Bから構成されている。本実施形態では、攪拌装置4を含むユニット1Bの重量を約17tとする。
【0051】
スラリー製造装置1のユニット分割数は一例であり、これに限定されない。例えば、階段8A,8bを支持基盤部材2A,2Bに取り付けたままとすることで、8未満のユニット数としてもよい。支持基盤部材2A,2Bと支持フレーム部3A,3Cとを分離することで、8超のユニット数としてもよい。スラリー製造装置1のユニット分割の位置は一例であり、これに限定されない。支持基盤2及び支持フレーム3の各部材とするための分割の位置は一例であり、これに限定されない。
【0052】
ところで、従来のスラリー製造装置は、大型のサイロである材料貯蔵設備、ロードセル等の計量装置、材料を混練りするスパイラルピンミキサー、フロージェットミキサー等の混練り装置をそれぞれ複数台ずつ備える大型の建造物であった。したがって、従来のスラリー製造装置は、設置した後に解体して移設することは困難であった。
【0053】
これに対して、上述したスラリー製造装置1は、2以上のユニットに分解することができるため、一度設置した後であってもユニット単位に解体して別の場所に移設することができる。したがって、スラリー製造装置1は、スラリーポンプの供給能力をことさら高くすることなく、さらにはスラリー輸送管をことさら延長することなく、次の埋立地点にスラリー製造装置1を移設することで、石炭灰スラリーを安定して供給することができる。
また、スラリー輸送管を短くできるため、スラリー輸送管内での石炭灰スラリーの詰まりのリスクも低減させることができる。
【0054】
上述したスラリー製造装置1では、ベルトコンベア5を備える構成を一例として説明したが、これに限定されず、ベルトコンベア5及び材料受ホッパー6を除いて、高速混練ミキサー4に直接原料を投入する構成としてもよい。これにより、移設型スラリー製造装置をさらに小型化、軽量化することができる。
【0055】
上述したスラリー製造装置1は、原料として湿灰及びクリンカアッシュを用いる構成を一例として説明したが、これに限定されず、乾灰を用いる構成としてもよい。具体的には、高速混練ミキサー4の上方もしくは側方に石炭灰(乾灰)サイロを設ける構成としてもよい。
【0056】
「石炭灰スラリーの製造方法」
上述したスラリー製造装置1を用いた石炭灰スラリーの製造方法について、原料として湿灰及びクリンカアッシュを用いる場合を一例として説明する。
本実施形態に適用可能なスラリー製造装置1は、石炭灰スラリーの原料として、湿灰及びクリンカアッシュを用いることができる。原料の保管には、乾灰と異なり、大型のサイロを必要としない。例えば、
図1に示すように、移設型スラリー製造装置1の隣に灰仮置場40を設けて保管することができる。
【0057】
先ず、原料である湿灰及びクリンカアッシュを材料受ホッパー6に投入する。具体的には、例えば、バックホウ、ショベルカー等によって野積みされている湿灰及びクリンカアッシュを運搬する。次いで、材料受ホッパー6から一定量の原料をベルトコンベア5の積載面に供給する。
【0058】
ベルトコンベア5を運転することにより、積載した原料を原料混練ミキサー4の投入口に設けられた原料投入ガイド機構12に運搬し、所定量の原料を高速混練ミキサー4に供給する。本実施形態のスラリー製造装置1は、計量装置を備えていないが、原料を運搬する際のベルトコンベア5の稼働時間を計測することによって、原料の投入量を計量することができる。次いで、水供給機構13から高速混練ミキサー4内に水を供給する。高速混練ミキサー4内への原料及び水の供給量は、厳密に管理する必要がないが、原料の含水率を一日数回計測した上で、その値に基づいた補正をして算出することが好ましい。
【0059】
高速混練ミキサー4を稼働して、石炭灰スラリーを製造する。高速混練ミキサー4が垂直ミキサーの場合、インバーター制御によって130~156rpmの回転数とすることにより、約7~15秒程度で1バッチの石炭灰スラリーを製造することができる。製造されるスラリーの品質は、スラリー輸送管内にて、石炭灰スラリーの詰まりが生じない範囲であればよく、必ずしもダマ状のものがなくなるまで混練する必要はない。
【0060】
本実施形態の埋立造成地の生産方法では、多量のブリーディングが出ない程度の配合であれば、石炭灰スラリーの含水比は特に限定されるものではない。具体的には、石炭灰スラリーの含水比は35%以上40%以下とすることが好ましい。石炭灰スラリーの含水比が上記範囲内であれば、ブリーディングの発生が少なく、埋立密度は含水比が減少するほど増加するために好ましい。
【0061】
製造された石炭灰スラリーを高速混練ミキサー4からスラリーホッパー7に移送して、一時的に貯留する。そして、埋立設備70の求めに応じて、スラリーホッパー7の下部に設けられた石炭灰スラリー導出用の配管L1から、スラリー製造装置1の二次側に石炭灰スラリーを供給することができる。
【0062】
(埋立造成地の生産方法)
本発明を適用した一実施形態である埋立造成地の生産方法の構成について説明する。本実施形態の埋立造成地の生産方法は、上述した埋立設備70を用いて埋立造成地を生産する方法(すなわち、陸上埋立処分場の埋立方法)である。
【0063】
本実施形態の埋立造成地の生産方法は、陸上埋立処分場60の埋立区域を、所要の容積を有する1以上の埋立領域に区画する工程(第1工程)と、スラリー製造装置(移設型スラリー製造装置)1と配管を設置する工程(第2工程)と、スラリー製造装置1を稼働して、石炭灰のスラリーを生成する工程(第3工程)と、スラリー製造装置1からいずれかの埋立領域に、乾灰、湿灰及びクリンカアッシュの少なくとも1つを含む石炭灰を原料として生成されたスラリー(石炭灰スラリー)を当該埋立領域の容積を満たすまで投入する工程(第4工程)と、埋立領域内のスラリーを乾燥させる工程(第5工程)と、を備え、区画された埋立領域へのスラリー投入が完了するまで、上記第3~第5工程を繰り返す方法である。
以下、各工程について、詳細に説明する。
【0064】
「第1工程」
陸上埋立処分場60を、所要の容積を有する1以上の埋立領域に区画する。
具体的には、
図1に示すように、陸上埋立処分場60を横断するように通路Rを設けるとともに、この通路Rを挟むように、略矩形の埋立区域A~Dに分割する。次いで、各埋立区域A~Dについて、埋立領域(1)~(8)にそれぞれ区画(分割)する。各埋立区域A~Dにおいて、各埋立領域(1)~(8)が、埋立単位となる。
図6は、本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用する埋立区域Aの拡大図である。
【0065】
図7は、本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用可能な埋立領域の構成の一例を示す斜視図である。
図7に示すように、埋立区域Aの埋立領域(1)は、仕切り(畔)30によって埋立範囲が区画されている。仕切り30は、バックホウ等の施工機械で所定の高さに構築された堰(せき)である。
【0066】
埋立領域を区画する仕切り30は、スラリーを投入した際に当該埋立領域の側壁として機能するものであれば、特に限定されるものではない。仕切り30としては、埋立領域A-(1)の周囲を取り囲むように設けられた畔を用いることができる。
【0067】
仕切り30の材質は、特に限定されない。仕切り30の材質としては、埋立領域A-(1)内に投入されるスラリーと同じ石炭灰を少なくとも一部に含むものが好ましく、石炭灰のみで形成されるものがより好ましい。
【0068】
埋立領域の形状は、特に限定されない。
図7に示すように、コンクリートポンプ車80を用いて埋立領域A-(1)に投入したスラリーを広げて厚みを均一にすることを想定した場合、埋立領域A-(1)の形状は、周囲が仕切り30で取り囲まれた矩形であることが好ましい。
【0069】
仕切り30の高さ(埋立面からの高さ)Hは、特に限定されるものではなく、埋め立てに用いる石炭灰スラリーの含水比に応じて適宜選択することができる。
【0070】
本発明者らが検討した結果、石炭灰スラリーの含水比が35~40%の範囲内である場合、埋め立てたスラリー上に重機などが乗っても地盤が液状化しない限度の含水比26~27%となるまで自然乾燥させるのに必要な日数は、表1に示す通りである。
【0071】
【0072】
表1に示すように、陸上埋立処分場60においてスラリー埋立てを実施する場合、スラリー厚を大きくすると(例えば、スラリー厚:50cm)、含水比26~27%になるまで乾燥するのに多くの日数を要する。これに対して、30cm程度のスラリー厚となるように埋め立てた場合では、7~8日程度で含水比26~27%に乾燥する(すなわち、埋立部は固まる)。
【0073】
したがって、仕切り30の高さ(埋立面からの高さ)Hとしては、埋め立てに用いる石炭灰スラリーの含水比が35~40%の範囲内である場合では、10~60cmとすることができ、20~40cmとすることが好ましい。
【0074】
仕切り30の幅Wは、特に限定されるものではなく、埋め立ての際に用いるコンクリートポンプ車80の大きさに応じて適宜選択することができる。仕切り30の幅Wとしては、5~60mとすることができる。例えば、コンクリートポンプ車80として90~110m3/h級のものを用いる場合、コンクリートポンプ車80のアーム長さが25mとなるため、幅Wとしてはその倍数となる25m、50mとすることが好ましい。
【0075】
仕切り30の長さLは、特に限定されるものではなく、スラリー供給源であるスラリー製造装置1の一日の生産量に応じて適宜選択することができる。仕切り30の長さLとしては、10~120mとすることができる。例えば、スラリー製造装置1として一日の生産量が400m3のものを用い、スラリー厚:30cm、仕切り30の幅W:25mとして埋め立てる場合、長さLとしては約55mとすることができる。仕切り30の幅W:50mとして埋め立てる場合、長さLとして約25mとすることができる。
【0076】
すなわち、仕切り30によって区画された埋立領域の容積と、スラリー供給源であるスラリー製造装置1の一日の生産量とが一致するように、埋立領域のサイズ(L×W×H)を設計することが好ましい。
【0077】
埋立区域A~Dにおいて、各埋立区域が碁盤目状となるように埋立領域(1)~(8)をそれぞれ区画することが好ましい。各埋立区域を分割して埋立領域を区画する際、仕切り30を用いることで、隣接する埋立領域の間で仕切30を共有することができるため、埋立領域ごとに個別に仕切り30を設ける必要がなくなり効率的である。
【0078】
各埋立区域A~Dを分割して埋立領域を区画する際、分割数は特に限定されないが、埋め立てに用いる石炭灰スラリーの含水比を35~40%の範囲内とし、30cm程度のスラリー厚となるように埋め立てた場合に7~8日程度で乾燥することから、8分割前後とすることが好ましい。これにより、埋立領域(1)~(8)を埋立領域(1)から順に埋め立てた際、8日後には最初に埋め立てた埋立領域(1)の乾燥が完了するため、埋立領域(1)に再び石炭灰スラリーを投入して埋め立てることができる。
【0079】
各埋立区域A~Dを分割して埋立領域(1)~(8)に区画する際、各埋立領域(1)~(8)の形状は限定されるものではない。各埋立領域(1)~(8)の形状としては、全て同一の形状であってもよいし、それぞれ別の形状であってもよい。例えば、
図6に示すように、2種類の形状の組み合わせとしてもよい。具体的には、
図6に示す埋立区域Aでは、埋立領域(1)~(4)のサイズ(L×W×H)を25m×110m×0.3mとし、埋立領域(5)~(8)のサイズ(L×W×H)を50m×50m×0.3mとした場合を一例として示している。
【0080】
「第2工程」
図1に示すように、陸上埋立処分場60の中央に設けられた通路Rの、分割された埋立区域A~Dの中央付近となる地点P1を設置場所として選定して、
図2及び
図3に示すスラリー製造装置(移設型スラリー製造装置)1を設置する。
具体的には、
図5に示すように、スラリー製造装置1の8個に分割されたユニット1A~1Hをそれぞれトラックで運搬し、クレーンで積み下ろして、ユニット1A~1Hを組み立てる。その際、
図4に示すように、調整用ボルト9Bによって、機械設備のレベル調整をmm単位で行うことが好ましい。
【0081】
図1及び
図6に示すように、スラリー製造装置1のスラリーホッパー7の下部に設けられた石炭灰スラリー導出用の配管L1をスラリーポンプ14に接続する。次に、スラリーポンプ14に接続された輸送管L2を埋立区域Aの埋立領域(1)まで配設する。
具体的には、長さ約4mの配管を複数用意し、これらを連結することで埋立領域(1)まで延ばして設置する。
【0082】
図6中に示す(a)の位置に配置されたコンクリートポンプ車80のホッパー部に、輸送管L2の先端を配置する。そして、コンクリートポンプ車80に接続されたフレキシブルホースの先端が、埋立領域A-(1)の仕切り30の内側となるように配設する。
【0083】
「第3工程」
スラリー製造装置1を稼働して、石炭灰のスラリーを生成する。
具体的には、先ず、
図1、
図2及び
図3に示すように、灰仮置場40に野積みされている湿灰及びクリンカアッシュをバックホウ、ショベルカー等によって材料受ホッパー6に運搬する。次いで、材料受ホッパー6から一定量の原料をベルトコンベア5の積載面に供給する。
【0084】
ベルトコンベア5を運転して、所定量の原料を高速混練ミキサー4に供給する。
原料を運搬する際のベルトコンベア5の稼働時間を計測することによって、原料の投入量を計量する。次いで、高速混練ミキサー4内に水分を供給し、高速混練ミキサー4を稼働して、含水比が35~40%の範囲内の石炭灰スラリーを製造する。約15秒程度で1バッチの石炭灰スラリーを製造することができる。
【0085】
製造された石炭灰スラリーを高速混練ミキサー4からスラリーホッパー7に移送して、一時的に貯留する。そして、
図1に示すように、スラリーホッパー7の下部に設けられた石炭灰スラリー導出用の配管L1から、スラリーポンプ14を介して輸送管L2へ石炭灰スラリーを供給する。
【0086】
「第4工程」
スラリー製造装置1からいずれかの埋立領域に、石炭灰スラリーを当該埋立領域の容積を満たすまで投入する。
具体的には、
図6中に示す(a)の位置に設置されたコンクリートポンプ車80から石炭灰スラリーを排出して、埋立領域(1)(25m×110m×0.3m)の内側へ石炭灰スラリーを流し込む。区画内に流し込まれた石炭灰スラリーは自身の流動性によって自然に広がっていくが、スラリー表面には自然に1/10~1/20程度の勾配が付くため、コンクリートポンプ車80のブーム先端に取り付けたホースの先端にてスラリーを広げて厚みを均一にする。
【0087】
コンクリートポンプ車80のブーム範囲が25mの場合、埋立領域(1)の上側半分(
図6中に示す斜線部分)の埋め立てが終わると、埋立領域(1)の下側半分にはブームが届かないため、埋め立てができなくなる。
【0088】
そこで、スラリー製造装置1からの石炭灰スラリーの供給を一旦停止する。次に、コンクリートポンプ車80とスラリー輸送管L2との接続を解除し、コンクリートポンプ車80を
図6中に示す(b)の位置に移設する。輸送管L2については、これを構成する配管を適宜切り離し、任意の位置で再び連結することで、
図6中に示す(b)の位置まで延設する。次いで、(b)の位置に配置されたコンクリートポンプ車80のホッパー部に、輸送管L2の先端を接続した後、スラリー製造装置1からの石炭灰スラリーの供給を再開して、埋立領域(1)の下側半分の埋め立てを行う。なお、切り離した配管については、その場から撤去せずに作業の邪魔にならない場所に残置しておく。
【0089】
「第5工程」
埋立領域内に投入された石炭灰スラリーを乾燥させる。
具体的には、埋立領域に投入された石炭灰スラリーの石炭灰含水比が概ね27%以下となるまで乾燥させる。石炭灰スラリーの乾燥方法は、特に限定されない。石炭灰スラリーの乾燥方法としては、自然乾燥、送風機を用いた乾燥等が挙げられるが、自然乾燥によって乾燥させることが好ましい。石炭灰スラリーを自然乾燥させる場合にかかる日数は、埋立領域に投入した初期の石炭灰スラリーの含水比と、埋立領域に投入したスラリー厚とによって変動する。上述したように、石炭灰スラリーの含水比が35~40%の範囲内であり、スラリー厚が30cm程度であれば、7~8日程度自然乾燥させることで含水比26~27%程度に乾燥する。
【0090】
本実施形態の埋立造成地の生産方法によれば、乾燥した石炭灰スラリーの表面から粉塵等が発生しないため、粉塵等の飛散防止対策としてスラリー表面の上に即日覆土、あるいは中間覆土を設ける必要がない。したがって、覆土を設ける作業が不要となるため、作業効率に優れるとともに、覆土の容量分だけ陸上埋立処分場60を有効活用できる。
【0091】
「第6工程」
本実施形態の埋立造成地の生産方法では、上述した第4工程が完了し、第5工程を行うと同時に、輸送管L2を埋立区域Aの埋立領域(1)から次の埋立対象となる埋立領域A-(2)まで移動させる。
具体的には、埋立領域(1)の埋め立てが完了した後、スラリー製造装置1からの石炭灰スラリーの供給を一旦停止する。次に、コンクリートポンプ車80とスラリー輸送管L2との接続を解除し、コンクリートポンプ車80を
図6中に示す(c)の位置に移設する。輸送管L2については、これを構成する配管を適宜切り離し、任意の位置で再び連結することで、
図6中に示す(c)の位置まで延設する。次いで、(c)の位置に配置されたコンクリートポンプ車80のホッパー部に、輸送管L2の先端を配置した後、スラリー製造装置1からの石炭灰スラリーの供給を再開して、埋立領域(2)(25m×110m×0.3m)の上側半分の埋め立てを行う。なお、切り離した配管については、その場から撤去せずに作業の邪魔にならない場所に残置しておく。
【0092】
埋立領域(2)の上側半分の埋め立てが完了した後、スラリー製造装置1からの石炭灰スラリーの供給を一旦停止する。次に、コンクリートポンプ車80とスラリー輸送管L2との接続を解除し、コンクリートポンプ車80を
図6中に示す(d)の位置に移設する。輸送管L2については、これを構成する配管を適宜切り離し、任意の位置で再び連結することで、
図6中に示す(d)の位置まで延設する。次いで、(d)の位置に配置されたコンクリートポンプ車80のホッパー部に、輸送管L2の先端を配置した後、スラリー製造装置1からの石炭灰スラリーの供給を再開して、埋立領域(2)の下側半分の埋め立てを行う。切り離した配管については、その場から撤去せずに作業の邪魔にならない場所に残置しておく。
【0093】
このように、本実施形態の埋立造成地の生産方法では、埋立区域Aの区画された埋立領域(1)~(8)へのスラリー投入が完了するまで、上記第3~第6工程を繰り返す。
具体的には、
図6に示す埋立領域(3)及び(4)については、切り離した配管を再び連結しながら、あるいは連結した配管を再び切り離しながら、上述した埋立領域(1)及び(2)と同様に埋め立てを実施する。
図6に示す埋立領域(5)~(8)(50m×50m×0.3m)については、上述した埋立領域(1)~(4)と同様に、それぞれ2回に分けて埋め立てを行う。その際、コンクリートポンプ車80の設置場所は、埋立領域(5)~(8)に隣接する位置であれば、特に限定されない。
埋立区域Aの全ての埋立領域(1)~(8)の埋め立てが完了した後、他の埋立区域B,C,Dについても同様にして、区画された埋立領域(1)~(8)の埋め立てを行う。
【0094】
「第7工程」
本実施形態の埋立造成地の生産方法では、全ての埋立区域A~Dの各埋立領域(1)~(8)の1層目の埋め立てが完了(埋立領域に投入されたスラリーが乾燥)した後、当該埋立区域A~D上に新たな埋立領域(1)~(8)をそれぞれ区画してスラリーを新たに投入する。
具体的には、上記第1工程、第3~第6工程を繰り返して行う。このように、埋立区域A~Dの各埋立領域(1)~(8)に2層目以降を積層していくことで、埋立造成地を生産することができる。
【0095】
「第8工程」
本実施形態の埋立造成地の生産方法では、
図1に示すように全ての埋立区域A~Dの各埋立領域(1)~(8)が所定の厚さ(例えば、1層0.3mとして3層分の0.9m程度)となるまで埋め立てが完了した場合(すなわち、地点P1に設置されたスラリー製造装置1からスラリーを搬送可能な範囲内の全ての埋立領域への投入が完了した場合)、スラリー製造装置1の稼働を停止し、スラリー製造装置1を2以上の集合体に分割するとともに、陸上埋立処分場60の新たな設置場所P2に、スラリー製造装置1を移設する。
【0096】
具体的には、
図5に示すように、スラリー製造装置1を8個のユニット1A~1Hに分割するとともに、現在の設置場所とは異なる新たな設置場所にスラリー製造装置1を移設する。例えば、
図1に示すように、陸上埋立処分場60の通路Rに設けられた設置場所P1から離れた設置場所P2を選定し、スラリー製造装置1を設置することができる。これにより、新たな埋立対象となる埋立区域に近い場所にスラリー製造装置1を設置することで、新たな埋立区域内の埋立領域を埋立てすることができる。
【0097】
(埋立造成地)
本実施形態の埋立造成地の生産方法によって得られた埋立造成地は、水面埋立処分場の埋立に用いるスラリー埋立の手法を、陸上埋立処分場の埋立において適用したため、埋立密度を1.18t/m3以上とすることができる。なお、埋立造成地の埋立密度としては、1.20t/m3以上とすることが好ましく、1.22t/m3以上とすることがより好ましい。
【0098】
本実施形態の埋立造成地の生産方法によって得られた埋立造成地(すなわち、埋め立てが全て終了した状態での埋立造成地)は、厚さ方向を断面視した際、石炭灰スラリーが2層以上、好ましくは5層以上、より好ましくは10層以上積層されている。また、1層辺りの厚さが、10~50cmの範囲であることが好ましく、20~40cmの範囲であることがより好ましい。そして、各層の間には中間覆土が設けられていないことを特徴とする。
【0099】
以上説明したように、本実施形態の埋立造成地の生産方法によれば、所要の容積を有する埋立領域に、乾灰、湿灰及びクリンカアッシュの少なくとも1つを含む石炭灰を原料として生成されたスラリーを投入した後、埋立領域内のスラリーを乾燥させる構成であるため、高密度の埋立が可能となり、陸上埋立処分場60の容量の効果的な利用が可能である。また、スラリーを乾燥した後の表面は固化しており、粉塵が発生することがないため、粉塵等の飛散防止対策として覆土を設ける必要がない。従って、覆土の容量分だけ陸上埋立処分場60の埋め立て容量を有効に利用できるので、処分場の延命化を図ることが可能となる。
【0100】
本実施形態の埋立造成地の生産方法によれば、埋立場所に応じてスラリー製造装置1を埋立地点に近い設置場所に移設することができるため、輸送管(スラリー輸送管)L2の長さを100m程度とすることができる。これにより、輸送管L2内で石炭灰スラリーの詰まりが生じる可能性が低いため、スラリー品質を厳重に管理する必要がない。すなわち、本実施形態によれば、スラリー製造装置1において石炭灰スラリーを製造する際、配管のつまりを防止するために厳密なスラリー品質管理をする必要がないため、生産能力を高くすることができる。
【0101】
本実施形態の埋立造成地の生産方法によれば、埋立密度が1.18t/m3以上の埋立造成地が得られる。
【0102】
<第2の実施形態>
本発明の埋立造成地の生産方法を適用した、第2の実施形態の構成について説明する。第2の実施形態の埋立造成地の生産方法は、上述した第1実施形態の埋立造成地の生産方法がコンクリートポンプ車80を用いて行うのに対して、コンクリートポンプ車80を用いない点で相違している。具体的には、第2実施形態の埋立造成地の生産方法では、輸送管L2の先端から埋立領域内に石炭灰スラリーを投入し、石炭灰スラリーの厚さを均一にする際、バックホウ90を補助的に用いる態様である。これに伴い、コンクリートポンプ車80のブーム長と、バックホウ90のアーム長さとが異なるため、埋立領域を区画する際、埋立領域のサイズが変更となる。
したがって、本実施形態の埋立造成地の生産方法では、上述した実施形態と異なる構成について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0103】
「第1’工程」
図8は、本実施形態の埋立造成地の生産方法に適用可能な埋立領域の構成の一例を示す斜視図である。
図8に示すように、仕切り30の幅Wは、特に限定されるものではなく、埋め立ての際に補助的に用いるバックホウ90の大きさに応じて適宜選択することができる。仕切り30の幅Wとしては、5~50mとすることができる。例えば、バックホウ80として0.75m
3級のものを用いる場合、バックホウ80のアーム長さが8.8mとなるので、幅Wとしてはその倍の約15mとすることが好ましい。仕切り30の長さLとしては、10~150mとすることができる。例えば、スラリー製造装置1として一日の生産量が400m
3のものを用い、スラリー厚:30cm、仕切り30の幅W:15mとして埋め立てる場合、長さLとしては約88mとすることが好ましい。
【0104】
本実施形態では、
図1に示すように各埋立区域A~Dを分割して埋立領域(1)~(8)に区画する際、各埋立領域(1)~(8)の形状を全て同一の形状とすることが好ましい。具体的には、
図8に示す埋立区域A-(1)では、埋立領域のサイズ(L×W×H)を15m×88m×0.3mとし、埋立領域(1)~(8)を全て同一の大きさとしてもよい。
【0105】
「第2’工程」
第2’工程において、スラリー製造装置1のスラリーホッパー7の下部に設けられた石炭灰スラリー導出用の配管L1をスラリーポンプ14に接続する。次に、スラリーポンプ14に接続された輸送管L2を埋立区域Aの埋立領域(1)まで移動する。次いで、
図8に示すように、輸送管L2の先端が埋立領域A-(1)の仕切り30の内側となるように配設する。
【0106】
「第3’工程」
第3’工程において、製造された石炭灰スラリーを高速混練ミキサー4からスラリーホッパー7に移送して、一時的に貯留する。そして、
図1に示すように、スラリーホッパー7の下部に設けられた石炭灰スラリー導出用の配管L1から、スラリーポンプ14を介して輸送管L2へ石炭灰スラリーを供給する。
【0107】
「第4’工程」
スラリー製造装置1からいずれかの埋立領域に、石炭灰スラリーを当該埋立領域の容積を満たすまで投入する。
具体的には、
図8に示すように、輸送管L2の先端から埋立領域A-(1)内へ石炭灰スラリーを放出する。輸送管L2から放出された石炭灰スラリーは、埋立領域内へ流れていくが、輸送管L2の先端付近に堆積するため、バックホウ90によってスラリーを広げて厚みを均一にする。
【0108】
埋立領域A-(1)への石炭灰スラリーの投入が完了したら、石炭灰スラリーの供給を一旦停止し、輸送管L2の先端、及びバックホウ90を次の埋立領域まで移動させる。これらの工程を繰り返すことにより、第1実施形態と同様に各埋立領域の埋め立てを実施できる。
【0109】
本実施形態の埋立造成地の生産方法によれば、上述した実施形態と同様に、粉塵等の飛散防止対策が不要であり、埋立処分場の有効活用が可能である。また、本実施形態では、コンクリートポンプ車を用いることなく、バックホウ90のみで各埋立領域の埋め立てを実施できる。
【0110】
本発明の技術的範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。上述した実施形態の埋立造成地の生産方法では、各埋立区域A~Dの各埋立領域(1)~(8)のレイアウトの一例を用いて説明したが、これに限定されるものではない。
【0111】
本発明の埋立造成地の生産方法に適用可能な陸上埋立処分場としては、水面埋立処分場を埋め立てたことで生成した陸地であってもよい。さらに、水面埋立処分場の埋立方法としてスラリー埋立を適用した後、生成した陸地に対して本発明の埋立造成地の生産方法(すなわち、陸上埋立処分場の埋立方法)へ移行してもよい。これにより、スラリー埋立を水面埋立処分場から陸上埋立処分場まで連続して行うことができる。
【0112】
上述した実施形態の埋立造成地の生産方法では、石炭灰スラリーの供給源として、移設型スラリー製造装置を適用した構成を一例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、水面埋立処分場の埋立から移行して本発明の埋立造成地の生産方法を行う場合等では、石炭灰スラリーの供給源として固定式(据え置き型)のスラリー製造装置を用いてもよい。石炭灰スラリーの供給源として、固定式(据え置き型)のスラリー製造装置とコンクリートポンプ車との組み合わせを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の埋立造成地の生産方法によれば、陸上埋立処分場の有効活用が可能である。また、スラリーを乾燥した後の表面は固化しており、粉塵が発生することがないため、粉塵等の飛散防止対策が不要である。
【符号の説明】
【0114】
1…移設型スラリー製造装置(スラリー製造装置、スラリー供給源)
1A~1H…ユニット(集合体)
2…支持基盤
2A,2B…支持基盤部材(敷鉄板)
3…支持フレーム
3A~3D…支持フレーム部
4…高速混練ミキサー(撹拌装置)
5…ベルトコンベア(原料搬送設備)
6…材料受ホッパー(原料投入設備)
7…スラリーホッパー
8,8A,8B…階段
9…機械レベル調整機
9A…レベル調整ベースプレート
9B…調整用ボルト
10…床(足場)
11…柵
12…原料投入ガイド機構
13…水供給機構
14…スラリーポンプ(スラリー圧送装置)
30…仕切り(畔)
40…灰仮置場
60…陸上埋立処分場
61…陸地
70…陸上埋立処分場の埋立設備(埋立設備)
80…コンクリートポンプ車
90…バックホウ
L1…石炭灰スラリー導出用の配管
L2…輸送管(スラリー輸送管)
R…通路