(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】薬物送達のための超音波応答性容器
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20230623BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230623BHJP
B01J 20/08 20060101ALI20230623BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20230623BHJP
A61L 27/34 20060101ALI20230623BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20230623BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20230623BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20230623BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20230623BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20230623BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230623BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230623BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230623BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230623BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230623BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230623BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230623BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20230623BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230623BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20230623BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230623BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61K9/14
B01J20/28 Z
B01J20/08 A
B01J20/10 A
A61L27/34
A61L27/56
A61L27/50
A61L27/02
A61L27/54
A61L27/16
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/32
A61K48/00
A61K35/76
A61K9/16
A61K9/51
A61K9/50
A61K35/12
A61K51/00 100
A61P43/00 105
A61M37/00 550
(21)【出願番号】P 2020560935
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 US2018059020
(87)【国際公開番号】W WO2019212594
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】PCT/US2018/030953
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519392030
【氏名又は名称】バイオナット ラブス リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519392041
【氏名又は名称】シュピゲルマッハー、マイケル
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュピゲルマッハー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キセリョフ、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】コロティロフ、セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェッツ、オレクシイ
(72)【発明者】
【氏名】カルドッシュ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】オレン、エラン
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】JUAN L. PARIS et al.,"POLYMER-GRAFTED MESOPOROUS SILICA NANOPARTICLES AS ULTRASOUND-RESPONSIVE DRUG CARRIERS",ACS NANO,2015年10月11日,VOL.9, NO.11,pp.11023 - 11033,https://doi.org/10.1021/acsnano.5b04378
【文献】BEATA CHERTOK et al.,"CIRCULATING MAGNETIC MICROBUBBLES FOR LOCALIZED REAL-TIME CONTROL OF DRUG DELIVERY",THERANOSTICS,2018年,VOL.8,NO.2,pp.341 - 357,http://dx.doi.org/10.7150/thno.20781
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61M、B01J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の生物学的組織に移植されて、外部刺激である放出刺激に感応して医療ペイロードを放出する担体デバイスであって、
前記放出刺激は、10kHz~100kHzの周波数を有する超音波であり、
前記担体デバイスは、
前記医療ペイロードを担持するための複数の細孔を有する多孔質粒子であって、前記複数の細孔を閉塞するコーティング材料でコーティングされ、前記コーティング材料が、10kHz~100kHzの周波数を有する超音波である前記放出刺激に対して感応性である、該多孔質粒子と、
前記多孔質粒子に付着し、外部刺激である推進刺激に応答する推進構成要素であって、前記推進刺激により推進されて、前記対象の体内の所定の位置に方向付けられる、該推進構成要素と、を備え
、
前記推進構成要素が、磁気による推進刺激に対して感応性であり、
前記コーティング材料が、p(MEO2MA-co-THPMA)を含むポリマーである、デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記放出刺激の周波数が10kHz~40kHzである、デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスであって、
前記放出刺激の周波数が20kHzである、デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記多孔質粒子が、シリカまたはアルミナから作られる、デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記複数の細孔の平均サイズが、10nm~1000nmの範囲である、デバイス。
【請求項6】
請求項
5に記載のデバイスであって、
前記複数の細孔の前記平均サイズが、100nm~150nm、100nm~200nm、50nm~100nm、10nm~50nm、2nm~50nm、60nm~130nm、70nm~150nm、または、30nm~60nmの範囲である、デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記多孔質粒子のBET比表面積が、S
BET817m
2/g~1044m
2/gの範囲である、デバイス。
【請求項8】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記多孔質粒子の細孔の総体積が、0.5cm
3/g~5.0cm
3/gの範囲である、デバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記多孔質粒子の細孔径が、3nm~10nmの範囲である、デバイス。
【請求項10】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記医療ペイロードが、前記対象の治療または診断で使用されるものである、デバイス。
【請求項11】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記医療ペイロードが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、ペプチド、ペプトイド、または、腫瘍溶解性ウイルスを含む、デバイス。
【請求項12】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記医療ペイロードが、遺伝子治療構成要素を含み、前記遺伝子治療構成要素が、CRISPR/Cas9またはウイルスベクターベースの薬剤を含む、デバイス。
【請求項13】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記多孔質粒子が、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはそれらの組み合わせである、デバイス。
【請求項14】
システムであって、
担体デバイスと、
遠隔ユニットと、を備え、
前記担体デバイスが、医療ペイロードを担持し、対象の生物学的組織に移植されて、前記対象の体内の所定の位置で前記医療ペイロードを放出するように構成され、
前記担体デバイスは、
複数の細孔を有する多孔質粒子であって、前記複数の細孔を閉塞するコーティング材料でコーティングされ、前記コーティング材料は外部刺激である超音波の放出刺激に対して感応性である、該多孔質粒子と、
前記多孔質粒子に付着され、外部刺激である推進刺激に応答する推進構成要素であって、前記推進刺激により推進されて、前記所定の位置に方向付けられる、該推進構成要素と、を備え
前記推進構成要素が、磁気による推進刺激に対して感応性であり、
前記コーティング材料が、p(MEO2MA-co-THPMA)を含むポリマーであり、
前記遠隔ユニットが、10kHz~100kHzの周波数を有する前記放出刺激を前記担体デバイスに適用することによって、前記複数の細孔の開放と、それによる前記医療ペイロードの放出を誘導するように構成されている、システム。
【請求項15】
請求項
14に記載のシステムであって、
前記放出刺激の周波数が10kHz~40kHzである、システム。
【請求項16】
請求項
15に記載のシステムであって、
前記放出刺激の周波数が20kHzである、システム。
【請求項17】
請求項
14に記載のシステムであって、
前記多孔質粒子が、シリカまたはアルミナから作られる、システム。
【請求項18】
請求項
14に記載のシステムであって、
前記複数の細孔の平均サイズが、10nm~1000nmの範囲である、システム。
【請求項19】
請求項
18に記載のシステムであって、
前記複数の細孔の前記平均サイズが、100nm~150nm、100nm~200nm、50nm~100nm、10nm~50nm、2nm~50nm、60nm~130nm、70nm~150nm、または、30nm~60nmの範囲である、システム。
【請求項20】
請求項
14に記載のシステムであって、
前記多孔質粒子のBET比表面積が、S
BET817m
2/g~1044m
2/gの範囲である、システム。
【請求項21】
請求項
14に記載のシステムであって、
前記多孔質粒子の細孔の総体積が、0.5cm
3/g~5.0cm
3/gの範囲である、システム。
【請求項22】
請求項
14に記載のシステムであって、
前記多孔質粒子の細孔径が、3nm~10nmの範囲である、システム。
【請求項23】
請求項
14に記載のシステムであって、
前記医療ペイロードが、前記対象の治療または診断で使用されるものである、システム。
【請求項24】
請求項
14に記載のシステムであって、
前記医療ペイロードが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、ペプチド、ペプトイド、または、腫瘍溶解性ウイルスを含む、システム。
【請求項25】
請求項
14に記載のシステムであって、
前記医療ペイロードが、遺伝子治療構成要素を含み、前記遺伝子治療構成要素が、CRISPR/Cas9またはウイルスベクターベースの薬剤を含む、システム。
【請求項26】
請求項
14に記載のシステムであって、
前記多孔質粒子が、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはそれらの組み合わせである、システム。
【請求項27】
デバイスを動作させる方法であって、
請求項1~
13のいずれか一項に記載の担体デバイスを提供するステップと、
前記コーティング材料で閉塞された前記複数の細孔内に医療ペイロードを提供するステップと、
10kHz~100kHzの周波数を有する前記放出刺激を前記デバイスに適用するステップと、を含む、方法。
【請求項28】
請求項
27に記載の方法であって、
前記放出刺激の周波数が10kHz~40kHzである、方法。
【請求項29】
請求項
28に記載の方法であって、
前記放出刺激の周波数が20kHzである、方法。
【請求項30】
請求項
27に記載の方法であって、
磁気の前記推進刺激を適用して、前記デバイスを前記推進刺激により推進させて、前記対象の体内の所定の位置に方向付けられるステップをさらに含む、方法。
【請求項31】
請求項1に記載のデバイスを生産する方法であって、
複数の細孔を有する多孔質粒子を提供するかまたは構成するステップと、
前記多孔質粒子の細孔を医療ペイロードで充填するステップと、
前記複数の細孔を閉塞するように、前記多孔質粒子をコーティング材料でコーティングするステップであって、
前記コーティング材料が、p(MEO2MA-co-THPMA)を含むポリマーであり、前記コーティング材料が、10kHz~100kHzの周波数を有する前記放出刺激に対して感応性である、該ステップと、
外部刺激である
磁気の推進刺激に応答する推進構成要素を前記多孔質粒子に、前記コーティング材料に、またはそれらの組み合わせに結合するステップであって、前記推進構成要素は、前記
磁気の推進刺激により推進されて、前記対象の体内の所定の位置に方向付けられる、該ステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、20l8年5月3日に出願された(および「Triggering of Payload Release From Miniaturized Devices」と題された)国際出願第PCT/US2018/030953号の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、コーティングされたメソ多孔質ナノ粒子(MSN)に関する。コーティング材料は、超音波応答性材料(例えばポリマー)であり、MSNの細孔に充填された材料をブロック/放出するための制御層として機能する。
【背景技術】
【0003】
超音波(US)ベースの方法は、現在、生体組織に埋め込まれた粒子またはデバイスから、薬物および診断補助具などの医療ペイロードの放出をリモートでトリガーするために存在する。粒子または埋め込み型デバイスからのUS遠隔トリガーペイロード放出は、過去に研究されてきた。そのような方法の目的は、生体組織内のそのようなペイロード(例えば、粒子または移植可能なデバイス)を収容する担体からのペイロード放出(薬物または診断)のための外部トリガーを生成することである。遠隔でトリガーされるペイロードの放出は、次のような特定の臨床目標をサポートする上で望ましい:
・担体粒子が治療に適した場所(腫瘍など)にある場合にのみの医療ペイロードの放出、
・適切なタイミングでのみの医療ペイロードの放出(例えば、臨床手順の途中)、または
・所定の時間、所定の領域(複数可)を治療するための、時間依存もしくはストップアンドゴー方式での医療ペイロードの放出。
【0004】
既存のUSベースのトリガー方法は、次のような様々な効果に依存している:
・キャビテーションに基づく熱的/機械的効果(振動による局所的な加熱と拡散速度の増加、および/または拡散を増加させる局所的な化学的特性の変化につながる)、
・ペイロードの放出につながる担体の機械的劣化/破裂、
・担体もしくはその統合部品の形状変更、または
・ペイロードが放出されている周囲の生体組織の特性の変更(ソノポレーションなど)、その結果、組織を介したペイロードの拡散/吸収の改善。
【0005】
これらの方法の一般的な欠点は、各方法が臨床的観点から望まれる典型的な技術的特徴のサブセットのみをサポートすることである。臨床ペイロード放出のための超音波ベースの遠隔トリガーシステムのこれらの機能は、次を含む:
・深部に位置する組織でペイロードの放出をトリガーできるような、カスタマイズ可能な組織浸透深さ(10cm以上)。例えば、7MHzを超える(US診断)範囲の放出方法は、典型的には、10cm未満の浸透に制限されている。
・既存の医療用超音波機器との互換性を提供し、組織への侵襲性を最小限に抑えるためのカスタマイズ可能な周波数範囲(KHz~MHz範囲)。例えば、キャビテーションベースの方法は典型的には、高密度焦点式超音波(HIFU)を使用するKHz範囲で最も効果的であるが、ポリマー分解ベースの方法は、MHz範囲でより効果的である(US診断)、
・制御可能な期間にわたる段階的なペイロード放出、または(単一の放出パルスではなく)オン/オフの切り替え可能な放出機能のサポート。例えば、ペイロードを包む均一なポリマーの分解に依存する方法は、設計上不可逆的であり、段階的な放出機能を備えておらず、
・単一の組織体積単位内の複数のペイロード担体の個別制御(例えば、同じ臓器内にある多くの粒子からの単一の粒子のみからペイロードを選択的に放出する)。既存の方法は、どれもこの機能を提供しない。
【0006】
したがって、現在の能力の上記の制限を克服する埋め込み型デバイスおよびその方法を有することが望ましいであろう。この目標は、本発明の実施形態によって成し遂げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、組織に埋め込むことができる担体デバイスを提供し、担体デバイスは、多孔質構造を含む。多孔質構造の細孔は、必要に応じて体内の特定の場所に放出することができる機能性材料を含む。機能性材料は、治療または診断に使用される任意の材料であり得る。例えば、機能性材料は、薬物、生物学的材料の結合剤、画像化要素などであり得る。多孔質構造からの機能性材料の放出を制御するために、多孔質構造は、超音波(US)に感応性がある材料によってコーティングされる。材料は、多孔質構造からの材料の放出が必要とされない場合、コーティング材料が、多孔質構造の細孔からの材料の放出をブロックする高密度/閉鎖構造をとるように選択される。しかしながら、多孔質構造の細孔からの材料の放出が必要とされる場合、コーティング材料は、そのような放出を可能にするためにそのコンフォメーションを変更する。このコンフォメーションの変化は、コーティング材料に超音波を適用することによって誘導される。したがって、多孔質構造からの物質放出の制御は、要求に応じてオンおよびオフにできる外部のUS供給源を使用して達成される。
【0008】
一実施形態では、本発明は、当該組織または別の組織における機能性材料の正確な送達および放出のために生物学的組織に移植するための担体デバイスであって、担体デバイスは、
・US感応性コーティング材料でコーティングされた多孔質粒子と、
・機能性材料と、
・推進構成要素と、を備え、
機能性材料が、前記多孔質材料の細孔内に存在し、前記推進構成要素が、前記多孔質粒子に付着している。
【0009】
一実施形態では、推進構成要素は、磁気構成要素である。一実施形態では、コーティング材料は、ポリマーである。一実施形態では、推進構成要素およびコーティング材料は、外部刺激に対して応答性である。
【0010】
一実施形態では、コーティング材料は、超音波(US)刺激に対して感応性であり、推進構成要素は、US、磁気、電気、電磁、熱、電磁放射、またはそれらの組み合わせから選択される刺激に感応性である。
【0011】
一実施形態では、推進構成要素への刺激の適用は、デバイスを推進する。一実施形態では、US感応性材料は、USに応答して構造的または化学修飾を受ける。
【0012】
一実施形態では、科学的または構造的修飾は、ポリマー分解、またはコイルコンフォメーションから球状コンフォメーション構造への変化を含む。一実施形態では、US感応性コーティング材料は、その化学構造、長さ、分子量、形状もしくはトポロジーを変化させるか、または粒子から分離するか、または外部US刺激に応答して破裂するか、または穿孔されるようになる。一実施形態では、多孔質材料は、シリカまたはアルミナである。
【0013】
一実施形態では、多孔質粒子の平均サイズは、10nm~1000nmの範囲である。一実施形態では、多孔質粒子の平均サイズは、100~150nmまたは100~200nmまたは50~100nmまたは10~50nmまたは2~50nmまたは60~130nmまたは70~150nmまたは30~60nmの範囲である。
【0014】
一実施形態では、多孔質粒子のBET比表面積は、SBET817~1044m2/gの範囲である。一実施形態では、多孔質粒子の細孔の総体積は、0.9cm3/g~1.4cm3/gの範囲である。一実施形態では、細孔径は、3nm~10nmの範囲である。
【0015】
一実施形態では、US感応性コーティング材料が応答するUSの周波数は、10~40KHzの範囲である。一実施形態では、USの周波数は、20KHzである。一実施形態では、US感応性材料は、MHz周波数範囲にあるUSに応答して構造的修飾を受けない。
【0016】
一実施形態では、機能性材料は、有機化合物、ポリマー、複合体、またはそれらの組み合わせである。一実施形態では、機能性材料は、小分子、生物学的材料、遺伝子治療構成要素、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、ペプチド、ペプトイド、内因性または操作された細胞、腫瘍溶解性ウイルスまたは放射線治療材料を含む。
【0017】
一実施形態では、遺伝子治療構成要素は、CRISPR/Cas9またはウイルスベクターベースの薬剤を含む。一実施形態では、粒子は、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはそれらの組み合わせである。一実施形態では、ポリマーは、2-(2-メトキシエトキシ)エチルメタクリレートおよびテトラヒドロピラニルメタクリレート-ポリ(2-(2-メトキシエトキシ)エチルメタクリレート-co-2-テトラヒドロピラニルメタクリレート)、p(MEO2MA-co-THPMA)を含むかまたは構成される。
【0018】
一実施形態では、ポリマーは、カルボキシ末端基を含む。一実施形態では、多孔質粒子は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)を含み、前記ポリマーのカルボキシ基が、前記多孔質粒子上の前記ポリマーの共有結合固定化のためにAPTESのNH2基に結合する。
【0019】
一実施形態では、ポリマーは、温度感応性である。一実施形態では、ポリマーは、温度変化に応答してコンフォメーションを変化させる。一実施形態では、コンフォメーション変化は、20~30℃未満の温度でのコイル構造および20~30℃を超える温度での球状構造を含む。
【0020】
一実施形態では、本発明は、システムであって、
・請求項1に記載のデバイスと、
・遠隔ユニットと、を備え、
遠隔ユニットは、外部刺激を当該デバイスに適用するように構成されている、システムを備える。
【0021】
一実施形態では、外部刺激は、USを含む。一実施形態では、コーティング材料は、その形状、トポロジーを変化させるか、または粒子破裂から分離するか、または前記外部刺激に応答して穿孔されるようになるか、あるいは
推進構成要素は、外部刺激、または
それらの組み合わせに応答して駆動される。
【0022】
一実施形態では、本発明は、デバイスを動作させる方法を提供し、方法は、
〇担体デバイスを提供するステップであって、担体デバイスが、
・US感応性コーティング材料でコーティングされた多孔質粒子と、
・機能性材料と、
・推進構成要素と、を備え
機能性材料が、多孔質材料の細孔内に存在し、推進構成要素が、多孔質粒子に付着している、提供する該ステップと、
〇デバイスに外部刺激を適用するステップと、を含む。
【0023】
一実施形態では、コーティング料は、外部刺激に対して応答性である。一実施形態では、刺激は、US、磁気またはそれらの組み合わせである。
【0024】
一実施形態では、コーティングポリマーは、機能性材料が、外部刺激に応答して粒子から放出されるように、その化学構造、分子量、形状、またはトポロジーを変化させるか、または粒子破裂から分離するか、または前記外部刺激に応答して穿孔されるようになるか、あるいは推進構成要素が、外部刺激、またはそれらの組み合わせに応答して駆動される。
【0025】
一実施形態では、コーティング材料は、USに対して応答性であり、推進構成要素は、磁気刺激に対して応答性であり、またはコーティング材料は、第1の周波数のUSに対して応答性であり、推進構成要素は、第2の周波数のUSに対して応答性である。
【0026】
一実施形態では、機能性材料は、有機化合物、ポリマー、複合体、またはそれらの組み合わせである。一実施形態では、コーティング材料は、ポリマーを含む。
【0027】
一実施形態では、多孔質粒子は、マイクロ構造、ナノ構造、またはそれらの組み合わせである。一実施形態では、推進構成要素は、磁気構成要素を含む。
【0028】
一実施形態では、本発明は、本発明の担体デバイスを生産する方法を提供し、方法は、
・多孔質粒子を提供するかまたは構成するステップと、
・多孔質粒子の細孔を機能性材料で充填するステップと、
・多孔質粒子をUS感応性コーティング材料でコーティングするステップと、
・推進構成要素を多孔質粒子に、コーティング材料に、またはそれらの組み合わせに結合するステップと、を含む。
【0029】
一実施形態では、本発明は、対象を治療する方法を提供し、方法は、
・本発明の担体デバイスを対象に挿入するステップと、
・外部刺激をデバイスに適用するステップと、を含む。
【0030】
一実施形態では、デバイスを挿入することは、対象内の特定の組織にデバイスを挿入することを含む。
【0031】
一実施形態では、外部刺激は、
・対象内の規定された場所にデバイスを推進するための磁気/電気、音響、超音波もしくは電磁刺激、または
・多孔質粒子からの機能性材料の放出を誘発するためのUS刺激、または
・それらの組み合わせを含む。
【0032】
一実施形態では、機能性材料の放出のために、外部刺激の適用に続いて、機能性材料は、組織または組織の/中の構成要素(複数可)と相互作用する。一実施形態では、相互作用は、治療効果、診断効果、またはそれらの組み合わせをもたらす。
【0033】
一実施形態では、方法は、対象内の前記デバイスの位置を画像化することをさらに含む。一実施形態では、推進構成要素は、磁気構成要素である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され、明確に特許請求される。しかしながら、本発明は、その目的、特徴、および利点と共に、操作構成および方法の両方に関して、添付の図面と共に読まれる場合、以下の詳細な説明を参照することによって最良に理解され得る。
【0035】
【
図2A】MSNサンプルの粒度分布を示す(DLSデータによる)。
【
図2B】MSNサンプルの粒度分布を示す(DLSデータによる)。
【
図2C】MSNサンプルの粒度分布を示す(DLSデータによる)。
【
図2D】MSNサンプルの粒度分布を示す(DLSデータによる)。
【
図3A】MSNサンプルの炭素水素窒素(CHN)分析データを示す。
【
図3B】MSN-1(1)、MSN-2(2)、MSN-3(3)MSN-4(4)およびMSN-5(5)のサンプルのN
2吸着等温線(77K)を示す。
【
図4A】ローダミンBで標識されたメソ多孔質シリカナノ粒子MSN-5の、可視範囲での拡散反射(A)と励起波長470nmでの蛍光(B)のスペクトルを示している。
【
図4B】ローダミンBで標識されたメソ多孔質シリカナノ粒子MSN-5の、可視範囲での拡散反射(A)と励起波長470nmでの蛍光(B)のスペクトルを示している。
【
図5】NMR信号積分によるco(MEO
2MA/THPMA)のモノマー比の推定である。
【
図6】コポリマーco(MEO
2MA/THPMA)のDLSパターンを示す:1-0.875/0.125、2-0.850/0.150、3-0.885/0.115。
【
図7】コポリマー-1のGPC RID分析データを示す。
【
図8】ポリマー1の相転移温度(下限臨界溶液温度、LCST)の決定を示す。
【
図9】PBS溶液中のハイブリッドMSNからのフルオレセインの放出プロファイルと、US曝露(20KHz)あり、US無しの時間の関係を示す。
【
図10】PBS溶液中のハイブリッドMSNまたは純粋なMSNからのフルオレセインの放出プロファイルを、US曝露(20KHz)あり、US無しの時間と比較して示す。
【
図11】USでの処理前後のコポリマー2の
1H NMRスペクトルである。
【
図12】PBS溶液中のMSNからのフルオレセインの放出プロファイルと、スケーリングされたサンプルのUS曝露(20kHz)ありとUS無しの時間の関係を示す。
【
図13】PBS溶液中のMSN-6サンプルのフルオレセイン放出プロファイルとUS曝露あり(1MHz、8Wまたは20kHz、約14W)およびUS無しの時間の関係を示す。
【
図14】PBS溶液中のMSN-6サンプルのフルオレセイン放出プロファイルをUS曝露(1MHz、8W-異なるtまたは20kHz、約14W)およびUS無しの時間と比較して示す。
【
図15A】USの集束レンズ(A)およびR=3cmの球面レンズによって集束された1MHz超音波の可視化のスキーム(B)である。
【
図15B】USの集束レンズ(A)およびR=3cmの球面レンズによって集束された1MHz超音波の可視化のスキーム(B)である。
【
図16】MSN-1サンプルのTEM画像である(d約4.5nm、D
pore約2.8nmのオーダーのメソ細孔が示されている)。
【
図17A】MSNサンプルのXRDパターンを示す。
【
図17B】MSNサンプルのXRDパターンを示す。
【
図17C】MSNサンプルのXRDパターンを示す。
【
図17D】MSNサンプルのXRDパターンを示す。
【
図17E】MSNサンプルのXRDパターンを示す。
【
図19A】N
2吸着等温線から計算された、MSN-1(1)、MSN-2(2)、MSN-3(3)、MSN-4(4)およびMSN-5(5)サンプルの粒子内(A)および粒子間(B)の細孔径分布を示す。
【
図19B】N
2吸着等温線から計算された、MSN-1(1)、MSN-2(2)、MSN-3(3)、MSN-4(4)およびMSN-5(5)サンプルの粒子内(A)および粒子間(B)の細孔径分布を示す。
【
図20】THPMA(モノマー)、MEO
2MA(モノマー)、およびCO(MEO
2MA/THPMA)-1の
1H NMRスペクトルである。
【
図21】THPMA(モノマー)、MEO
2MA(モノマー)、およびCO(MEO
2MA/THPMA)-1の
1H NMRスペクトルである。
【
図22】THPMA(モノマー)、MEO
2MA(モノマー)、およびco(MEO
2MA/THPMA)-3の
1H NMRスペクトルである。
【
図23】THPMAとコポリマー1、2、および3のCHN分析である。
【
図24】モノマーとコポリマー-1のFTIRスペクトルである
【
図25】モノマーと「縮合」コポリマー-6の
1H NMRスペクトルを示す。
【
図26】コポリマー-1とコポリマー-2のGPC RID分析データを示す。
【
図27A】コポリマー1、2、6、および7で覆われたMSNサンプルのXRDパターンである。
【
図27B】コポリマー1、2、6、および7で覆われたMSNサンプルのXRDパターンである。
【
図28A】ポリマー1、2、6、および7で覆われたMSNサンプルのFTIRスペクトル。
【
図28B】ポリマー1、2、6、および7で覆われたMSNサンプルのFTIRスペクトル。
【
図29】溶液中のフルオレセイン含有量を測定するための較正グラフである。フルオレセインの発光の濃度への依存性は線形ではなく、多項式によってより適切に説明される。フルオレセイン:λ
exc490、λ
em514nm。
【0036】
実例を単純かつ明確にするために、図に示される要素は、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことが理解されるであろう。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために他の要素に比較して誇張され得る。さらに、適切であると考えられる場合、対応する要素または類似の要素を示すために、参照番号が図の間で繰り返され得る。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の詳細な説明において、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細を伴わずに実行されてもよいということが、当業者によって理解されるであろう。他の事例では、本発明を不明瞭にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は、詳細に説明されていない。
【0038】
本発明の一実施形態では、固定化されたカルボン酸末端温度および超音波(US)応答性ポリマーを有するシリカメソ多孔質ナノ粒子(MSN)が調製された。いくつかの実施形態では、MSNは、その視覚化および発光分光法による粒子含有量の潜在的推定のためにローダミン-Bで標識され、一方、ポリマーは、細孔に充填された色素(フルオレセイン)の遮断/放出を制御する層として作用した。内部データに基づくと、ポリマーはT<約20℃でコイルコンフォメーションを採用したが、温度の上昇により、コンフォメーションが変化し、MSNの表面に小球が形成された。したがって、カーゴは、低温でポリマーグラフト化MSNに充填され、室温まで加熱すると細孔が閉じた。色素を充填したポリマーグラフト化MSNを20kHzの超音波で処理した後、リン酸緩衝液で洗浄すると、フルオレセインが放出された。最良のサンプルでは、20kHzUSを使用して、対照サンプル(US処理無し)と比較して、US処理時のフルオレセイン放出の3倍の増加が達成された。UV照射下での細孔開口のメカニズムを調べたところ、20kHzUSでの処理により、ポリマーの化学的破壊(加水分解)により細孔が開くことが明らかになった。
【0039】
この研究は、メソ多孔質シリカ粒子などの不活性担体の細孔が、超音波(US)の作用下でコンフォメーションの変化を受ける材料によって「塞がれる」可能性があるという考えに基づいていた。一例では、使用された超音波-応答性ポリマーは、2-(2-メトキシエトキシ)エチルメタクリレートおよびテトラヒドロピラニルメタクリレート-ポリ(2-(2-メトキシエトキシ)エチルメタクリレート-co-2-テトラヒドロピラニルメタクリレート)、p(MEO2MA-co-THPMA)のコポリマーであった。このポリマーは、US処理下でコンフォメーションを変化させることができることが知られているため、このような「プラグ」として選択された。重合は、カルボキシ基を有する4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草)酸によって開始された(スキーム1)このカルボキシ基の存在は、MSNへのさらなる共有結合固定化のために(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)のNH2基に結合しているため、この実施形態にとって非常に重要である。
【0040】
【0041】
スキーム1.p(MEO2MA-co-THPMA)コポリマーの式(a)および重合の開始剤4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草)酸(b)。アスタリスクは、ポリマーにカルボキシル基を有する重合開始剤の残留物を示す。
【0042】
一例として、合成と表面修飾の単純さ、広範囲のpH値(アルカリ性媒体を除くすべての範囲)での様々な溶液での安定性、大きな分子の収着に十分な大きなサイズの細孔と、アクセス可能な高い体積のために、メソ多孔質シリカナノ粒子(MSN)が複合材料作成の基礎として選択された。
【0043】
メソ多孔質ナノ粒子(MSN)は、テンプレート(臭化セチルトリメチルアンモニウム、CTAB)の存在下でシリカ源(テトラエチルオルトシリケートTEOS)の制御された加水分解によって合成された。MSNのサイズと多孔質に対する合成条件の影響を明らかにするために、粒子の4つの異なるサンプルを、平均粒子サイズと順序を変えて調製した(MSN-1~MSN-4とラベル付けされ、MSN-5はローダミンBでラベル付けされた粒子を示す、以下を参照)。前述のプロトコルを適用すると、細孔径が100~150nmのMSN(MSN-1)が形成された。TEOS濃度の2倍の増加、すべての試薬の濃度の1.5倍の増加、または水分含有量のそれぞれの減少により、より小さなMSN(それぞれ、60~130nmおよび70~150nm-MSN-2およびMSN-3)が形成された。すべての試薬の濃度を2分の1に減らすか、反応混合物を希釈すると、サイズが30~60nmの粒子を特徴とするより小さなMSN(MSN-4)も得られた。すべてのサンプルでのメソ細孔の形成は、高分解能TEM(
図16)および粉末X線回折分析(
図17)によって確認された。
【0044】
TEMで示されているように、すべての場合でMSNは、ほぼ球形であり、粒子凝集体の含有量は、低かった(
図1)。ロイド溶液中のMSNのサイズは、動的光散乱(DLS)によって検証された。サンプルMSN-1およびMSN-2について、DLSおよびTEMプロトコルを介して決定されたサイズの間には良好な相関関係があった(
図1および2を参照)。同時に、DLSによって測定されたサンプルMSN-3およびMSN-4の粒子のサイズは、TEMによって測定されたものよりも大きいように見えた。この相違は、コロイド溶液中での凝集体の形成によって説明することができる。
【0045】
ローダミン-B標識サンプルを合成するための基本的な方法として、平均サイズが約100~150nmの高次MSN(MSN-1)を生成する方法を選択した。ローダミン-Bは、チオシアン酸基を介した共有結合固定化によって、つまり粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)で処理することにより、シリカ粒子に組み込まれた。このラベリングは、MSNの視覚化と発光分光法による粒子含有量の推定のために導入された。
【0046】
MSNのサンプルには、C、H、N分析(
図3A)および熱重量分析(
図18)のデータから計算して、約32~43%のCTABテンプレートと最大15%の水が含有されていた。このテンプレートは、細孔内にあり、70℃で硝酸アンモニウムのエタノール溶液(95%)を使用したイオン交換によってサンプルを形成するために除去する必要があった。この方法では、細孔からすべてのテンプレートを除去できないことが見い出されたが(
図3)、ただし、ローダミンBを保存するため、ならびに加熱時に粒子が凝集することを回避するために、イオン交換の手順(500℃での焼成とは対照的に)を選択した。
【0047】
MSNサンプルの多孔質特性は、77KでのN
2吸着測定によって決定された(
図3b)。すべてのサンプルは高い気孔率を持ち、比表面積S
BETは、817~1044m
2/gの範囲で変化し、総細孔容積の値は0.9~1.4cm
3/gの範囲であった。予想通り、総収着容量においてメソ細孔の有意な寄与があった。例えば、サンプルMSN-5(ローダミンラベル付きサンプル)は、S(メソ細孔)=915m
2/gおよび総比表面積989m
2/g、メソ細孔の体積0.90cm
3/gおよび総細孔体積1.09cm
3/g、およびメソ細孔直径2.91+0.24nmを有していた(細孔径の計算を
図19に示す)。
【0048】
MSN-5のローダミンBの光学特性は、細孔内のテンプレート(CTAB)の存在に強く依存することがわかった。テンプレートの除去により、吸収(反射率)の最大シフトと発光強度の変化が生じた。ローダミンの発光は、ゲスト充填によって異なる可能性があるため、細孔内のゲスト含有量の定量的測定には使用できないと結論付けた。
【0049】
MSNコーティングを実現するために、様々なモノマー比を使用して3つのポリマーバッチを調製した:2-(2-メトキシエトキシ)エチルメタクリレート/2-テトラヒドロピラニルメタクリレート(MEO
2MA/THPMA)含有量は、0.875/0.125(ポリマー1)、0.850/0.150(ポリマー2)、または0.885/0.115(ポリマー3)に設定された。ポリマー組成は、NMR分光法によって研究された。重合が完了し、NMRによってモノマーの痕跡は見られなかったことが示された(
図20~22)。同時に、ポリマーサンプルには、DMF(次の段階の溶媒として添加されたため許容できるとみなされた)とn-ヘキサン(精製に使用)の不純物が含有されていた。開始剤のカルボキシル基はNMRでは検出されなかった(その予想される含有量は約0.003マイクロモル/0.01lミリモルのモノマーであった)。ポリマーの形成は、C、H、N分析(
図23)およびIR分光法によっても一致した。C=C二重結合(予想通り)を除く出発モノマーに特徴的なすべての特定のバンドが、ポリマーのIRスペクトルで見い出され(
図24)、完全な重合がさらに確認された。
【0050】
NMRスペクトルの4.06ppmおよび5.8~5.9ppmのピークは、約10であることがわかったポリマー(
図5)のモノマー比の推定に特に有用であった。
【0051】
ポリマー鎖の長さ(M
w)を修正するために、重合開始剤(4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草)酸)の量を変化させた。次に、開始剤の量を増やしたポリマー(サンプル6および7)を合成した。我々のUS制御フルオレセイン放出(下記参照)でポリマー-1でコーティングされたMSNの最高の性能を考慮して、反応混合物中のモノマーの比率は、その合成に使用されたプロトコルと同様に保たれた(
図25)。
【0052】
エタノールおよび水溶液中のポリマーの凝集状態を、室温での動的光散乱(DLS)によって調べた。この研究で調製された3つのポリマーはすべて、エタノール中で平均サイズが約10~20nmのミセルを形成したが、水中では大きな凝集体のみが検出された(
図6)。水中での室温でのポリマーの凝集は、細孔の閉塞に必要な大きな小球の予想される形成と一致している。
【0053】
ポリマーの分子量(M
w)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された。この分析では、コポリマー-1とコポリマー2のM
w値がそれぞれ44000Daと33000Daであることが示された(
図7および26)。
【0054】
【0055】
p(MEO2MA-co-THPMA)は、温度によって引き起こされるコンフォメーション変化を受けるため、MSNサンプルへのグラフト化に関連する温度依存のDLS信号が研究されている。この実験の目的は、遷移相の温度を決定することであった。我々のやり方では、低温でのポリマー採用コイルコンフォメーションが、対象のカーゴが粒子のメソ細孔に入らせる。温度を上げると、ポリマー鎖のコンフォメーションが変化する可能性をもたらす。この転移により、表面ポリマーの「崩壊した」球状トポロジーが生じ、MSN粒子の表面に閉じた/部分的に閉じた細孔が得られた。次のステップとして、相転移温度を決定した(633nmの波長で最大の50%の散乱強度に対応する温度)。測定は、相転移温度(下限臨界溶液温度、LCST)に到達するシステムに対応するポリマーのコンフォメーション変化の効果に基づいていた。LCSTポイントで、ポリマーのコンフォメーションが疎水性状態に変化すると予想され、この状態では、分子が崩壊し、化合物が水に不溶性になり、DLSシグナルが発生する。我々の実験のセットアップでは、温度は10~45℃の範囲で少しずつ上昇し、各温度ポイントで2分間平衡化した後に読み取りが行われた。コポリマー1の場合、相転移温度は、約21~22℃と決定された(
図8)。この洞察に基づいて、後続の実験でのカーゴ充填は、T<20℃で実行されたが、カーゴの放出ステップではシステムが加熱された。
【0056】
ローダミン標識MSN表面へのポリマーの固定化(ポリマーグラフト化)は、N、N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドとN-ヒドロキシスクシンイミドを使用して、カルボン酸テザーを介して実行された。固定化されたポリマーの量を増やすために、ポリマーグラフト化の手順を3回繰り返した(中間サンプル分離無しの同じサンプルの反応混合物へのポリマーの数回の添加)。粉末XRD分析は、ポリマーでコーティングされたMSNのサンプルがメソ構造のオーダーを示すことを示唆した(
図27)。さらに、コポリマー1または2で処理されたMSNサンプルは、IRスペクトルで特徴的な吸収帯を示した(例えば、-O-CH
2-に割り当てることができる1727cm
-1帯、
図28)。
【0057】
カーゴ放出を評価するために、ポリマーをグラフトしたMSNに、リン酸緩衝液(PBS)中のフルオレセインをMSNと4℃で1日攪拌して充填した。サンプルを4℃で濾過し、温かい(50℃)PBSで洗浄して、細孔を閉じた。サンプル洗浄の手順を約10回繰り返し、サンプル洗浄後に無色のろ液を得た。得られた残留物をポリプロピレンチューブに入れ、10mLのPBS緩衝液を入れ、超音波で処理した。対照では、同じサンプルをポリプロピレンチューブに入れ、超音波処理無しで10mLのPBS緩衝液を入れた。両方の混合物(超音波処理および対照)を37℃で所定の時間加熱し、分析のためにサンプルを採取した(
図9、10、12~14を参照)。MSNは、遠心分離によって分離され、上澄みの蛍光は検量線を使用して測定された(
図29)。
【0058】
コポリマー1または2で処理された両方のMSNサンプルは、対照と比較して、超音波処理後に劇的に増強されたフルオレセイン放出を示した。我々のやり方では、ポリマー1で処理されたMSNで最良の違いが見い出された(
図9)。
【0059】
ポリマーで処理されていないMSNサンプルを比較のために研究した。研究されたすべてのケースでのフルオレセイン放出は、ポリマーグラフト化サンプルよりも5~6倍高かったが、カーゴ放出に対するUS処理の効果は見られなかった(
図10)。
【0060】
細孔が開くメカニズムを見い出すために、ポリマーの加水分解に対する超音波の影響を調べた。具体的には、ポリマーのポリマー溶液を20KHzで超音波処理し、加水分解生成物を
1H NMR分光法で分析して、モノマーと加水分解生成物の形成を明らかにした(
図11)。さらに、懸濁したポリマー-1とポリマー-2の水溶液を20kHzUSで10分間処理して、媒体のpHの大幅な低下(「酸性化」)を見い出した。このpHの変化は、使用するポリマーのMWの増加によってさらに強化された。例えば、30mLの水中の0.26gのポリマー(1と2の両方)を超音波で処理すると、溶液のpH値は6.5から4.47に低下した。この効果は、エステル基の加水分解によるカルボキシル基の形成に起因していた。
【0061】
スケーリングされたMSNサンプルは、超音波処理されたサンプルと対照の間のフルオレセイン放出より良い違い(約3倍)を示した(
図12)。
【0062】
1MHz周波数の超音波に対するポリマーグラフト化MSNサンプルの応答をさらに試験した。実験は、上記で報告されたプロトコルを使用して実施された。20kHz超音波プロトコルで得られたデータとは対照的に、モデル化合物の放出は、複数のMSNサンプルにわたって適度に増強された(ベースラインに対して約5%の増加、
図13)。これらの比較データに基づいて、合成手順は、ポリマーグラフト化MSNの大規模なバッチ(サンプルMSN-6)の合成のためにスケールアップされた。ポリマー1および2の両方をMSN-6サンプルに固定化し、上記のように20kHzおよび1MHzの超音波で処理した。20kHzの超音波周波数でのフルオレセイン放出は、対照実験と比較して一貫して高かった(X2~3倍)。一方、1MHzの超音波によるMSN-6の治療は、効率が低かった。
【0063】
図13は、PBS溶液中のMSN-6サンプルのフルオレセイン放出プロファイルとUS曝露あり(1MHz、8Wまたは20kHz、~14W)およびUS無しの時間の関係を示す。
【0064】
別の実験では、超音波処理は、2~55℃の範囲の温度で実行された。高温での1Mhz超音波処理下でのフルオレセインの放出の増強が観察されたのに対し、20kHz周波数の効果と比較してやや低かった(
図14)。
【0065】
図14は、PBS溶液中のMSN-6サンプルのフルオレセイン放出プロファイルをUS曝露(1MHz、8W-異なるtまたは20kHz、~14W)およびUS無しの時間と比較して示す。
【0066】
超音波強度を高めるために、集光レンズが製造された(
図30)。US濃度用のレンズは、半径Rが約2.5cmの有機ガラス製の凹面である。有機ガラス(ポリメチルメタクリレート)のUS波の速度は、水性媒体および生理学的マトリックス(それぞれ2700m/秒および1500m/秒)よりも速いため、超音波エンベロープの焦点を合わせることが期待されていた。同様のレンズで焦点を合わせた1MHzUSの写真を
図15に示す(写真はシャドウ法で取得したものである)。
【0067】
図15は、USの集束レンズ(A)およびR=3cmの球面レンズによって集束された1MHz超音波の可視化のスキーム(B)である。
【0068】
本発明の特定の実施形態は、生体組織に埋め込まれた担体の遠隔トリガーおよびナビゲーションのために超音波(US)に依存している。他の実施形態は、超音波を他の外部の物理的刺激と組み合わせ、その非限定的な例には、以下が含まれる:電磁場、現象、および効果、および温度と圧力の両方の効果を含む熱力学的現象と効果。
【0069】
本明細書における「担体デバイス」および「担体」という用語は、生体組織に埋め込み可能であり、医療ペイロード(機能性材料)を組織に運び、放出することができる任意の物体を示す。いくつかの実施形態では、「デバイス」という用語または「粒子」という用語は、担体または担体デバイスを説明するために使用される。機能性材料または「医療ペイロード」という用語、または同等に医療の文脈で使用される「ペイロード」という用語は、本明細書では、医学的治療的または診断的性質の任意の物質または材料を含むと理解される。特定の実施形態では、医療ペイロードまたはペイロードは、機能が治療に関連するか、または向けられ、または診断目的である「機能性材料」と同等である。本明細書における「デバイス」(担体に関する)という用語は、堆積、化学反応、化学的または物理的結合、エッチング、リソグラフィー、薄膜技術、堆積技術、コーティング、成形、液体およびガス処理、自己組織化、化学合成などを含むがこれらに限定されない、物理的/化学的生産/製造技術によって構築または製作される担体を意味する。本発明のいくつかの実施形態における「粒子」という用語は、担体デバイスに関して言及されている。他の実施形態では、「粒子」という用語は、例えば多孔質粒子などの担体デバイスの部分に関して注記されている。
【0070】
本発明の様々な実施形態では、担体デバイスは、生体組織への埋め込みのために小型化されている。本明細書における「小型化された」(担体に関して)という用語は、ミリメートルからセンチメートルスケールの担体、「担体マイクロデバイス」と呼ばれるマイクロメートル(「ミクロン」)スケールの担体、「担体ナノデバイス」と呼ばれるナノメートルスケールの担体、を含むがこれらに限定されない、小さいサイズの担体を意味する担体自体は上記のサイズスケールであるだけでなく、担体の個々の構成要素も同等のスケールである。特定の担体寸法は、異なるスケールであり得る、例えば、担体は、ナノメートル範囲の1つの寸法とマイクロメートル範囲の別の寸法を有し得ることに留意されたい。そのようなすべての小型デバイスは、本発明の実施形態に含まれる。
【0071】
一実施形態では、本発明の多孔質材料は、複数の細孔を含む。一実施形態では、この発明の多孔質材料はメソ多孔質材料であり、2nm~50nmの間のサイズの範囲の細孔を含む。一実施形態では、この発明の多孔質材料は、大部分がメソ細孔、および少量のミクロおよびマクロ細孔を含む。一実施形態では、本発明の多孔質材料は、ミクロ細孔、メソ細孔、およびマクロ細孔の任意の組み合わせを含み、ミクロ細孔は、直径2nmまでの範囲であり、メソ細孔直径は、2nm~50nmの範囲であり、マクロ細孔は、直径50nmより大きいものである。この発明の多孔質粒子は、一実施形態では固体材料である。本発明の多孔質粒子は、一実施形態では、液体環境および非液体環境において安定である。この態様によれば、かつ一実施形態では、本発明の多孔質粒子は、小胞またはリポソームではなく、多多孔質材料であること、固体材料であること、および液体および非液体環境で安定であることを含む様々な特性においてそのような粒子とは異なる。一実施形態では、本発明の多孔質粒子は、複数の細孔を含む。一実施形態では、多孔質粒子は、多孔質構造である。一実施形態では、多孔質粒子は、球の形状を有する。他の実施形態では、多孔質粒子/構造は、ロッド、ディスク、ボックス、尖った形状、楕円形、葉、または任意の対称/非対称/部分対称形状を含む任意の形状をとることができる。
【0072】
一実施形態では、推進要素/推進構成要素は、多孔質粒子に付着している。この態様によれば、一実施形態では、推進構成要素は、多孔質粒子に直接(コーティングを通してではなく)付着している。他の実施形態では、推進構成要素は、多孔質粒子のコーティングに付着している。一実施形態では、多孔質粒子は、推進構成要素に取り付けられ、この取り付けに続いてのみ、多孔質粒子は、コーティング材料によってコーティングされている。一実施形態では、多孔質粒子は、最初にコーティングされ、次に推進構成要素に付着される。一実施形態では、推進構成要素は、多孔質粒子の外部表面に付着している。一実施形態では、推進構成要素は、多孔質粒子の内部領域に付着している。一実施形態では、推進構成要素は、多孔質粒子の細孔に結合している材料である。
【0073】
一実施形態では、推進構成要素は、磁気構成要素である。この態様によれば、ある実施形態では、磁気構成要素は磁性材料を含む。一実施形態では、磁気構成要素は、磁場および/または電場に応答性がある。磁気構成要素により、1つの実施形態でデバイスをナビゲートすることができる。一実施形態では、磁場または電磁場が印加されると、磁気構成要素が磁場に応答する。したがって、外部磁場を印加することにより、磁性構成要素をある場所から別の場所に移動させることができる。磁気構成要素は、デバイスからの機能性材料の制御放出のために、デバイスを特定の場所に向けるために使用される。外部場(外部刺激)の適用は、デバイスを目的の場所に駆動するために使用される。
【0074】
いくつかの実施形態では、コーティング材料は、USに対して感応性がある。一実施形態では、USへの曝露時に、コーティング材料は、その形状/コンフォメーションを変化させる。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、USに応答する加水分解によって例示されるがこれに限定されないように、化学修飾を受ける。
【0075】
一実施形態では、US感応性材料は、USに応答して構造的または化学修飾を受ける。この態様によれば、一実施形態では、USの適用前は、コーティング材料は、閉じた形状または形態である、すなわち、機能性材料は、コーティング材料を透過または移動することができない。したがって、この構造のコーティング材料が多孔質粒子をコーティングする場合、多孔質粒子の細孔内に存在する機能性材料は、粒子内に閉じ込められ、放出することができない。しかしながら、コーティング材料が構造的改変を受けると(例えば、USに応じて)、それは穿孔されるか、その形状を変えるか、または剥離し、その結果、機能性材料は、多孔質粒子から周囲の組織に移動することができる。
【0076】
球構造
【0077】
一実施形態では、コーティング材料は、非ポリマー材料の乾燥フィルムである。一実施形態では、本発明のデバイスは、特定の組織に載置または向けることができ、機能的な材料がその組織に放出される。他の実施形態では、本発明のデバイスは、特定の組織に載置または向けることができ、機能的材料は、隣接する(他の)組織に放出される。
【0078】
一実施形態では、1つのデバイスが、組織、血流、リンパ、胆汁、または脳脊髄液の流れにおける機能性物質の放出に使用されている。他の実施形態では、2つ以上のデバイスが、組織内の機能性材料の放出のために使用される。この態様によれば、一実施形態では、2つ以上のデバイスは、同じ機能性材料を放出するように動作する。他の実施形態では、デバイスのフリート内の異なるデバイスは、必要に応じて放出されている異なる機能性材料を含有する。2つ以上のデバイスからの1つ以上の機能性材料の放出は、並行して行われる。例えば、同時に、一部のデバイスは、第1の材料を放出し、他のデバイスは、第2の材料を放出する。1つ以上の機能性材料を備えた複数のデバイスの使用は、一実施形態において強化された治療または診断効果をもたらす。
【0079】
一実施形態では、多孔質材料は、シリカまたはアルミナである。一実施形態では、一実施形態では、多孔質材料は、シリカまたはアルミナを含む。一実施形態では、一実施形態では、多孔質粒子は、SiO2、Al2O3、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、多孔質材料は、有機多孔質材料、または有機/無機多孔質材料である。
【0080】
一実施形態では、多孔質粒子の平均サイズは、10nm~300nmまたは10nm~1000nmまたは50nm~250nmの範囲である。
【0081】
一実施形態では、多孔質粒子の細孔の総体積は、0.5cm3/g~5.0cm3/gの範囲である。一実施形態では、特定の多孔質材料に関連する総細孔容積の他の値は、本発明の実施形態に適用可能である。
一実施形態では、細孔径は、3nm~10nmの範囲である。一実施形態では、細孔径は、5nm~50nmの範囲である。一実施形態では、細孔径は、2nm~50nmの範囲である。一実施形態では、細孔径は、1nm~50nmまたは1nm~75nmまたは1nm~100nmの範囲である。いくつかの実施形態では、上記の範囲は、細孔のすべてに与えられる。他の実施形態では、上記の範囲は、特定の領域/粒子/材料内の細孔の大部分に与えられる。本発明の多孔質材料には、少量のより小さなまたはより大きな細孔が存在し得る。例えば、細孔の20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満は、細孔の大部分のサイズ/径の上記に与えられた範囲外である可能性がある。
【0082】
一実施形態では、本発明は、当該組織または別の組織における機能性材料の正確な送達および放出のために生物学的組織に移植するための担体デバイスであって、担体デバイスは、
・US感応性コーティング材料でコーティングされた多孔質粒子と、
・機能性材料と、
・推進構成要素と、を備え
機能性材料が、前記多孔質材料の細孔内に存在し、前記推進構成要素が、前記多孔質粒子に付着している。
【0083】
一実施形態では、US感応性コーティング材料が応答するUSの周波数は、10~100KHzの範囲である。この周波数範囲は、いくつかの実施形態では、コーティング材料が感応性である範囲である。使用できる超音波感受性ポリマーの追加の代表的な例には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド6、PSおよびPMMAが含まれる。この実施形態によれば、その周波数範囲でUSが適用されると、USに敏感なコーティング材料は、本明細書で上記のようにその形状/コンフォメーションを変化させる。
【0084】
一実施形態では、粒子は、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはそれらの組み合わせである。一実施形態では、粒子は、ナノ粒子であり、粒子の最大寸法は、ナノメートルの範囲にある。いくつかの実施形態では、粒子は、粒子の最大寸法がマイクロメートル範囲であるマイクロ粒子である。いくつかの実施形態では、粒子サイズは、500nm~1000nmの範囲であり、それはナノ粒子およびマイクロ粒子の両方とみなすことができる。いくつかの実施形態では、特定の寸法(例えば、長さ)がマイクロメートルの範囲にあり、別の寸法(例えば、厚さ)がナノメートルの範囲にある。このような粒子は、マイクロ・ナノ粒子とみなすことができる。そのような組み合わせはすべて、本発明の実施形態に含まれる。
【0085】
本明細書に記載される一実施形態では、本発明の担体デバイスは、US感応性コーティング材料でコーティングされた多孔質粒子を含む。いくつかの実施形態では、粒子は、コーティング材料によって完全にコーティングされている。他の実施形態では、USの適用時に機能性材料を放出することができない領域は、コーティング材料によって覆われず、コーティングされない。例えば、いくつかの実施形態では、推進構成要素は、粒子の表面の領域に付着している。一実施形態によれば、この領域は、コーティング材料によってコーティングされていない。したがって、いくつかの実施形態では、コーティング材料は、多孔質粒子の一部をコーティングする。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、多孔質粒子の外側表面の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも805、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%または少なくとも99.99%をコーティングする。
【0086】
一実施形態では、本発明は、対象を治療する方法を提供し、方法は、
・請求項1に記載のデバイスを対象に挿入するステップと、
・外部刺激をデバイスに適用するステップと、を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、粒子は最初に対象に挿入され、次に組織内の所望の場所に移送され、移送された後、機能性材料が粒子から放出される。粒子の所望の場所への移送、機能性材料の放出、またはそれらの組み合わせは、外部刺激によって制御される。いくつかの実施形態では、粒子移送を制御する刺激は、移送中に機能性材料が固定され、その後の移送機能性材料が放出されるように、機能性材料の刺激とは異なる。いくつかの実施形態では、特定の経路に沿った機能性材料の動的放出のために、移送のための刺激および放出のための刺激を同時に適用することができる。いくつかの実施形態では、移送および放出のための刺激は、性質が異なる(例えば、一方は、USであり、他方は、磁気ベースである)。他の実施形態では、移送のための刺激および放出のための刺激は、大きさ/値が異なる(例えば、移送は、ある周波数のUSによって誘導され、一方、放出は、別の周波数のUSによって誘導される)。
【0088】
カーゴは、いくつかの実施形態では機能性材料またはペイロードを指し、担体デバイスは、いくつかの実施形態では容器としてみなされる。
【実施例】
【0089】
実施例1
1.出発化合物および材料の合成
【0090】
1.1.メソ多孔質シリカナノ粒子(MSN)
【0091】
1gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、480mlのH2O(Milli-Q)および3.5mLのNaOH(2M)を1000mLの丸底フラスコに添加した。混合物を80℃に加熱し、600rpmで撹拌した。次に、ポンプを使用して5mLのTEOSを0.25mL/分の速度で滴下した。得られた白色懸濁液を80℃でさらに2時間磁気撹拌した。次に、反応混合物を遠心分離し、水およびエタノールで洗浄した。最後に、硝酸アンモニウム(10mg/mL)のエタノール(95%)溶液を使用したイオン交換により、70℃で一晩磁気撹拌機でテンプレートを除去した。ナノ粒子を遠心分離によって収集し、エタノールで3回洗浄し、真空下で一晩乾燥させた。
【0092】
1.2.ローダミンBラベル付けメソ多孔質シリカナノ粒子(MSN)
【0093】
1gのCTAB、480mlのH2O(Milli-Q)および3.5mLのNaOH(2M)を1000mLの丸底フラスコに添加した。混合物を80℃に加熱し、600rpmで撹拌した。2時間の間、100μLのエタノール中の2.2μLの(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)を含む1mgのローダミン-Bイソチオシアネートを混合し、得られた溶液を5mLのTEOSに加え、次に、混合物をポンプで0.25mL/分の速度で滴下して添加した。得られた白色懸濁液を80℃でさらに2時間磁気撹拌した。次に、反応混合物を遠心分離し、水およびエタノールで洗浄した。最後に、硝酸アンモニウム(10mg/mL)のエタノール(95%)溶液を使用したイオン交換により、70℃で一晩マグネチック撹拌機でテンプレートを除去した。ナノ粒子を遠心分離によって収集し、エタノールで3回洗浄し、真空下で一晩乾燥させた。
【0094】
1.3.US応答性モノマー、テトラヒドロピラニルメタクリレート(THPMA)
【0095】
メタクリル酸(8g)、ピリジン(0.3mL)、およびp-トルエンスルホン酸(0.7g)を80mLのジクロロメタンに溶解した(
図S7a)。ジヒドロピラン(0.162モル)を室温でゆっくりと添加した。一晩撹拌した後、溶液を短いシリカカラムで濾過した。溶液を、水およびブラインで3回抽出した。最後に、溶媒を真空下で除去して、THPMAを得た。
【0096】
1.4.US応答性コポリマーp(MEO2MA-co-THPMA)
【0097】
コポリマー、ポリ(2-(2-メトキシエトキシ)エチルメタクリレート-co-2-テトラヒドロピラニルメタクリレート)、p(MEO2MA-co-THPMA)は、MEO2MA(温度応答性モノマー)とTHPMA(超音波-応答性モノマー)からフリーラジカル重合によって合成された。異なるモル比(合計0.01モル)のMEO2MAおよびTHPMAをシールバイアルに入れ、窒素でパージした。不活性雰囲気下で16mLのDMFを添加し、溶液を80℃で磁気撹拌機下に載置した。0.003ミリモルの開始剤4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(ABCVA)を含む1mLのDMFを添加した。反応は一晩行われた。次に、ポリマーを冷ジエチルエーテル中で沈殿させ、遠心分離によって分離し、ジエチルエーテルで3回洗浄した後、溶媒を蒸発させた。
【0098】
1.5.ポリマーグラフト化MSNナノ粒子
【0099】
0.3gのカルボン酸末端ポリ(MEO2MA-co-THPMA)、11mgのN、N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および6mgのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)をガラスバイアルに添加した。バイアルを窒素でパージし、2mLのDMFを添加した。次に、N2雰囲気下で磁気撹拌機を用いて、8μlのAPTESを含むDMF(1mL)を加えた。溶液を一晩撹拌した(溶液1、シリレートコポリマー溶液)。次に、激しく攪拌しながら、1mLの溶液1を50mgのMSNを含む20mLのトルエンに滴下した。反応媒体を還流下で加熱した。4時間後、さらに1mLの溶液1を添加した。4時間後、残りの溶液1を添加した。反応物を激しく撹拌しながら24時間放置した。次に、混成MSNを遠心分離によって収集し、トルエン、DMF(2回)、冷水(2回)、およびエタノールで洗浄した。その後、ナノ粒子を真空下で16時間乾燥させた。色素を充填する前に、サンプルをトルエン、DMF(2回)、水、エタノールで完全に洗浄し、60℃で真空乾燥した。
【0100】
1.6.動的光散乱によるポリマーグラフト化MSNナノ粒子の相転移温度(LCST)の決定
【0101】
LCSTは、LCSTでのポリマーの沈殿によって得られる散乱強度の劇的な変化(散乱強度が最大の50%である温度として決定される)によって、動的光散乱(DLS)によって決定された。LCSTの測定は、633nmの「赤色」レーザーを備えたZetasizer Nano-S(Malvern Instruments)を使用して実行された。転移温度を決定するために、ガラスキュベット内の1mLの溶液からの90℃での散乱強度の温度依存性を測定した。温度は、10~45℃の範囲で個別の温度増分によって上昇し、各温度で2分間平衡化した後に読み取りが行われた。
【0102】
1.7.コポリマーグラフト化MSNの超音波応答性のためのカーゴの充填および放出
【0103】
カーゴ充填:20mgのナノ粒子をセプタム付きのガラスバイアルに入れ、80℃で真空下で24時間乾燥させた。次に、バイアルを磁気撹拌して4℃に載置し、5mLのカーゴ溶液(20mg/mL、PBS中のフルオレセイン)を添加し、懸濁液を4℃で24時間撹拌した。その後、外面に吸収されたカーゴを除去するために、サンプルを濾過し、あらかじめ熱いPBS(50℃)で2回洗浄した。最後に、生成物を25℃の真空下で乾燥させた。
【0104】
カーゴ放出を評価するために、ポリマーをグラフトしたMSNに、リン酸緩衝液(PBS)中のフルオレセインをMSNと4℃で1日攪拌して充填した。コポリマーの熱応答性による細孔の閉鎖を誘発するために、サンプルを4℃で濾過し、温かい(50℃)PBSで洗浄した。サンプル洗浄の手順を8~11回繰り返し、サンプル洗浄後に無色の溶液が得られ、外部表面からFLが完全に放出された(細孔にトラップされたフルオレセインのみがサンプルに残っている必要があった)。次に、サンプルをポリプロピレンチューブに入れ、10mLのPBS緩衝液を入れ、USで処理した。特に、US処理は、溶液加熱を引き起こすが、我々の信念では、次のステップでのさらなる溶液加熱を考慮すると、これは重要ではない。対照実験では、サンプルをポリプロピレンチューブに入れ、US処理無しで10mLのPBS緩衝液を入れた。次に、両方の溶液(USおよび対照によって処理された)を37℃で一定時間加熱し、指定された加熱期間の後、分析のためにサンプルを採取した。MSNを遠心分離により分離し、そして透明な溶液の蛍光を、較正曲線、フルオレセインを用いて測定した:λ
exc490、λ
em514nm(
図29)。
【0105】
1.8.ポリマーの加水分解
【0106】
特定量のポリマー(0.07~0.26g)を30mLの水に懸濁した。懸濁液を20kHzUSで10分間処理した後、溶液のpHをpHメーターで測定した。
【0107】
実施例2
2.方法
【0108】
粉末回折は、D8 ADVANCE、Bruker AXS回折計で測定した。サンプルの表面と体積を測定するための窒素吸着は、Sorptomatic 1990(Thermo Electron)装置を使用して77Kで測定した。動的光散乱は、Zetasizer Nano-S、Malvernデバイスを使用して測定した。透過型電子画像はTEM(PEM-125K、Selmi)顕微鏡で取得し、元素分析(CHN)は、CarloErba 1106分析器で実行した。熱分析は、Q-1000、MOMデリバトグラフで実行された。IRスペクトルは、KBrディスクのSpectrum One Perkin Elmer FTIR分光計で測定した。UV-VisスペクトルはSpecord 210、Analytik Jena分光計で測定され、固体サンプルと溶液の発光スペクトルはLS55、Perkin Elmer発光分光計で測定された。1H NMRおよび13Cスペクトルは、ユニティプラス400、バリアンNMR分光計で測定した。
【0109】
図16は、MSN-1サンプルのTEM画像である(d~4.5nm、D
pore~2.8nmのオーダーのメソ細孔が示されている)。
【0110】
【0111】
【0112】
図19に、N
2吸着等温線から計算された、MSNs-1(1)、MSNs-2(2)、MSNs-3(3)、MSNs-4(4)およびMSN-5(5)サンプルの粒子内(A)および粒子間(B)の細孔径分布を示す。
【0113】
【0114】
本明細書では本発明の特定の特徴が図示され、説明されてきたが、多くの修正、置換、変更、および同等物が当業者に実施されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に収まるように、すべてのそのような修正および変更を網羅することを意図していることを理解されたい。