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特許7301131ランダム低ビニル共重合体の製造方法、この製造方法によって製造される共重合体、及びそれらの共重合体に基づくゴム混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ランダム低ビニル共重合体の製造方法、この製造方法によって製造される共重合体、及びそれらの共重合体に基づくゴム混合物
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/22 20060101AFI20230623BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230623BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20230623BHJP
   C08F 4/54 20060101ALI20230623BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20230623BHJP
   C08F 236/10 20060101ALN20230623BHJP
【FI】
C08C19/22
B60C1/00 A
C08C19/25
C08F4/54
C08F8/00
C08F236/10
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021529011
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 RU2018000768
(87)【国際公開番号】W WO2020106174
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】513322589
【氏名又は名称】パブリック・ジョイント・ストック・カンパニー・“シブール・ホールディング”
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エフゲニー・レオニドヴィチ・ポルキン
(72)【発明者】
【氏名】アフィナ・レオニドヴナ・ルミアンツェヴァ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェトラーナ・ボリソヴナ・ポポヴァ
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-263587(JP,A)
【文献】特開平09-165471(JP,A)
【文献】特開平09-020839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/22
B60C 1/00
C08C 19/25
C08F 4/54
C08F 8/00
C08F 236/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機リチウム開始剤を用いることによる共役ジエンとビニル芳香族モノマーの共重合により、低い、40%未満のビニル基含有量をもつランダム共重合体を製造する方法であって、前記共重合を、一般式ROK(Rは5~15個の炭素原子を含む脂肪族基である)のカリウムアルコラート及び電子供与体(ED)添加剤を含む電子供与体システムの存在下で、70~130℃の温度において行い、次にシクロシロキサン、オキソシクロシロキサン、ラクタム、又はビニルピリジン類からなる群から選択される少なくとも1つの化合物により修飾することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記共重合を80~120℃の温度において行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
共重合を90~110℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電子供与体システム中の成分のモル比ED/ROKが(0.1~10)の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カリウムアルコラートが、カリウムアミレート、カリウムイソアミレート、カリウムtert-アミレート、カリウムヘキサノレート、カリウム2-メチルヘキサノレート、カリウム2-エチルヘキサノレート、カリウムヘプタノレート、カリウム2-メチルヘプタノレート、カリウム2-エチルヘプタノレート、カリウムオクタノレート、カリウムラプロモラート、又はそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1つのヘテロ原子を有する化合物をEDとして用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記の1つのヘテロ原子を有するEDが、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、又はそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
EDがテトラヒドロフラン(THF)であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
EDの量が、有機リチウム開始剤の活性リチウム1モルあたり0.3~2モルであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
EDの量が、有機リチウム開始剤の活性リチウム1モルあたり0.4~1モルであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
EDの量が、有機リチウム開始剤の活性リチウム1モルあたり0.5~0.8モルであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
2つ以上のヘテロ原子を有する化合物をEDとして用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記の2つ以上のヘテロ原子を有するEDが、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、2,2-ビス(2'-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、メチルテトラヒドロフルフリルエーテル、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、プロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、イソプロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、sec-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、イソブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、tert-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ペンチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、エチレングリコールメチルtert-ブチルエーテル、エチレングリコールエチルtert-ブチルエーテル(EGETBE)、ジテトラヒドロフルフリルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジイソブチルエーテル、又はそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
2つ以上のヘテロ原子を有するEDが、2,2-ビス(2'-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP)、N、N、N '、N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、メチルテトラヒドロフルフリルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルtert-ブチルエーテル、及びジテトラヒドロフルフリルエーテルを含む群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記の2つ以上のヘテロ原子を有するEDが、DTHFP及びTMEDAから選択されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記の2つ以上のヘテロ原子を有するEDの量が、有機リチウム開始剤の活性リチウム1モルあたり0.01~0.3モルであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記の2つ以上のヘテロ原子を有するEDの量が、有機リチウム開始剤の活性リチウム1モルあたり0.02~0.2モルであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記の2つ以上のヘテロ原子を有するEDの量が、有機リチウム開始剤の活性リチウム1モルあたり0.03~0.1モルであることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
末端修飾剤として用いられる化合物が、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(HMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、デカメチルペンタシクロシロキサン(DMPCS)、プロピルメタクリレート-ヘプタ-ブチルシクロシロキサン、1,3-グリシジルプロピル-ヘプタン-イソブチル-シクロシロキサン、1,1-ジメチル-1-シラ-2-オキサシクロシロキサン、2,2,4-トリメチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン、N-メチル-イプシロン-カプロラクタム、N-メチルピロリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
末端修飾剤が、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1-ジメチル-1-シラ-2-オキサシクロシロキサン、及び2-ビニルピリジンから選択されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
末端修飾剤が、脂肪族又は芳香族溶媒中の1~20%溶液の形態で使用されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記の修飾剤の溶液を、前もって又は使用直前に調製することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
分岐剤をさらに用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
分岐剤が、四塩化スズ、四塩化ケイ素、ヘキサクロロパラキシレン、ヘキサクロロジシラン、1,3-ビス-トリクロロシラニルプロパン、1,4-ビス-トリクロロシラニルブタン、ビス-トリクロロシラニルエタン、及びトリクロロシリルベンゼンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
分岐剤が、四塩化スズ、四塩化ケイ素、ヘキサクロロパラキシレン、ヘキサクロロジシラン、及びトリクロロシラニルエタンから選択されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
分岐剤が四塩化スズ及び四塩化ケイ素から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の方法により調製された、低い、40%未満のビニル基含有量を有し、1.12~1.85の分子量分布、及び66~76ムーニー単位のムーニー粘度を特徴とする、共重合体。
【請求項28】
8~12質量%のビニル基含有量を特徴とする、請求項27に記載の共重合体。
【請求項29】
請求項27に記載の共重合体又は請求項1~26のいずれか一項に記載の方法によって調製された共重合体、及び適切な添加剤を含むゴム混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ、電気及びその他の分野におけるゴム製品の製造に使用される合成ゴムの産業に関し、特に、本発明は、共役ジエン及びビニル芳香族モノマーのランダム共重合体(この共重合体は低いビニル基含有量を有する)、ならびにこれらの共重合体に基づくゴム混合物、及び前記の共重合体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
英国特許GB994726Aは、ジエン、好ましくは1,3-ブタジエン又はイソプレンと、芳香族ビニル置換化合物とから調製された線状ランダム共重合体を記載している。この共重合体中のジエンの含有量は、以下の構造(変種)によって特徴付けられる:
(1)少なくとも30%のシス-1,4構造、及び12%を超えない1,2構造であり、ジエンはブタジエン又はペンタジエンである、又は
(2)少なくとも70%のシス-1,4構造、及び15%を超えない3,4構造、及び実質的に1,2構造を含まず、ジエンはイソプレンである。
【0003】
上記共重合プロセスはリチウムベースの触媒の存在下で行われる。このプロセスは連続法であることができる。リチウムベースの触媒は、金属リチウム又は炭化水素リチウムのいずれかである。電子供与体添加剤は使用されない。この重合は、バルクで又は炭化水素溶媒中で実施することができる。ビニル芳香族化合物は、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、1-及び2-ビニルナフタレンであることができる。
【0004】
しかしながら、本発明のスチレンブタジエンゴムは、高いブロックスチレン含有量を有し、これは複素弾性ヒステリシス特性に悪影響を与える。
【0005】
英国特許GB1029445Aは、共役ジエンポリマーを調製するための方法を開示している。重合触媒は、(a)式R(Li)の有機リチウム化合物、又は式R(Na)の有機ナトリウム化合物(Rは炭化水素基である)、及び(b)以下の式の一つに対応する有機化合物を含む。
【化1】
【0006】
上記式中、R’は炭化水素基であり、MはLiであり、成分(a)が有機ナトリウムである場合ナトリウムであり、Mはカリウム、ルビジウム、又はセシウムであり、成分(a)が有機リチウム化合物である場合、R'’は水素又は炭化水素基であり、Qは以下の基:
【化2】
から選択され、
式中、xは4又は5の整数であり、yは1~3の整数であり、R’’は炭化水素基であり、Yは酸素又は硫黄であり、nは1~3の整数である。上記触媒は ジエン、又はジエンとビニル置換芳香族炭化水素の混合物の重合に用いられる。この触媒は、予め又はその場で調製される
【0007】
上記特許の説明は、この方法が、ランダム低ビニル共重合体をもたらすことを教示している。この発明はまた、共役ジエンホモポリマー及びランダム共重合体の両方においてビニル含有量を制御することを可能にする。
【0008】
この発明の不利な点は、重合が、カルボン酸のアルカリ金属塩、並びにアルカリ金属のアルコラート及びフェノラートの存在下で行われることである。カルボン酸塩は活性鎖の切断を引き起こし、フェノラートはメタル化を受けやすく、ほとんどのルビジウム及びセシウムアルコラートは炭化水素溶媒に不溶性である。この出願によれば、カリウムアルコラートは電子供与体添加剤なしで使用され、それが、ポリマー中のブロックスチレンの高含有量をもたらす。
【0009】
ロシア国特許RU2377258号は、ブタジエンポリマー及びブタジエンとスチレンの共重合体を調製するための方法を記載している。ポリマーは、連続溶液重合によって調製される。この方法は、有機リチウム化合物及び修飾添加剤の存在下、炭化水素溶媒中で実施される。使用される修飾添加剤は、アルカリ金属ラプラモラートとテトラヒドロフルフリルアルコール、ナトリウム、及び有機リチウム化合物の反応生成物である。この触媒複合体は、有機リチウム化合物と修飾添加剤を含む。炭化水素溶媒は、トルエン又はキシレンを含む。モノマーの重合後、テトラエトキシシラン又は四塩化ケイ素である混合剤[2]が反応物質に添加される。分離する前に、軟化剤として使用される油が、ポリマー溶液に添加される。この発明にしたがうポリマーを調製する方法は、高温において、ジエン部分(10~70質量%)の中の1,2-結合の調節された含有量を有するポリブタジエン及びブタジエンとスチレンの共重合体をもたらす。
【0010】
示された技術的結果は、修飾添加剤であるナトリウムラプラフルフリレートを使用することによってもたらされる。不利な点は、この添加剤を事前に調製する必要があることであり、これは、別の製造を必要とする。
【0011】
低ビニルスチレン-ブタジエンポリマー及びそれらの調製方法は、ロシア国特許RU2562458によって知られている。この方法は、開始剤及び式1の化合物から選択される少なくとも1つの極性剤の存在下でのモノマーの重合を含む。
【化3】
【0012】
1,2-ジエンが重合プロセスに添加される。活性開始剤に対する1,2-ジエンのモル比は0.1~1.0である。活性開始剤に対する極性剤のモル比は0.05~0.6である。ポリマー含有組成物は、それがスチレン及び1,3-ブタジエンのモノマー単位を含むことも記載している。ポリマーは、少なくとも以下の特性を有する:A)ビニル含有量は、ポリマー中の重合したブタジエンの質量に基づいて12~40質量%であり、B)スチレンブロック含有量は、ポリマー中のスチレンの質量に基づいて8質量%未満であり、かつ、C)スチレン含有量は、ポリマーの質量に基づいて10~50質量%である。その技術的な結果は、残留モノマーの最小のレベルとともに、高いモノマー転化レベルを達成することである。
【0013】
しかし、この方法は、1,2-単位の少ない含有量とブロックスチレンがないことを同時に特徴とするブタジエン-スチレンゴムをもたらさない。提案された方法において0.05~0.3のモル比で極性添加剤を使用することは、ブロックスチレンの形成を回避することはできず、ポリマー中のその存在は、この共重合体に基づいて調製されたゴムの特性に悪影響を与える。
【0014】
米国特許US7884168号は、ビニル芳香族モノマー(20~40質量%)及び共役ジオレフィンモノマー(60~80質量%)からなるポリマーを調製するための方法を開示している。提案された方法によれば、ポリマー中の1,2-単位の含有量は8~12%の範囲の値である。
【0015】
この特許においては、強い電子供与体添加剤、例えば、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が使用されている。このような電子供与体添加剤を少量、活性リチウムに添加した場合にのみ、そのような電子供与体添加剤を使用することによって、1,2-単位の低い含有量が達成でき、さもなければビニル単位の低い含有量を得ることはできない。得られたポリマーは、高いブロックスチレン含有量を有し、このことがこのポリマーに基づいて調製されたゴムの特性に悪影響を及ぼす。
【0016】
米国特許US3944528号は、カリウム変性有機リチウム触媒を使用して、共役ジエンとビニル置換芳香族炭化水素の共重合体を調製するための方法を開示している。この触媒は、等モル量の4-ノニルフェノール(又は他の4-アルキルフェノール)及びカリウムtert-ブチレートをヘプタンに溶解することによって調製される。カリウムtert-ブチレートが溶けて、カリウムノニルフェノラートとtert-ブタノールの溶液が形成される。
【化4】
【0017】
この錯体は、2~80のLi/K比で電子供与体添加剤(ED)/触媒として使用される。tert-ブタノールとフェノールの反応でリチウムフェノレートが形成され、生じたtert-ブタノールはリチウムフェノレートと可溶性の錯体を形成する。
【0018】
しかしながら、形成された錯体は、成長するポリマー鎖の不活性化を引き起こすアルコールを含む。結果として、所定のムーニー粘度及び分子量特性をもつスチレン-ブタジエン共重合体を得るための有機リチウム開始剤が消費される。さらに、用いられた助触媒は炭化水素中に完全には溶解せず、不安定な、沈殿をするエマルジョンを形成する。この沈殿物は蓄積し、技術装置のエレメントを閉塞させる。
【0019】
米国特許US3903019号は、バリウムジ-tert-アルコキシドとジブチルマグネシウム化合物の触媒複合体を使用することによるポリマー溶液の調製を開示している。ポリマーとゴムは、バリウムジ-tert-アルコキシドとジブチルマグネシウム化合物の新しい触媒複合体を使用することにより、モノマーから調製することができる。特に、この触媒の存在下で調製されたブタジエンのホモポリマー及びスチレンとの共重合体は、低いビニル含有量(6~10%)及び高いトランス-1,4-単位(80~85%)含有量によって特徴付けられる。さらに、その共重合体はランダムなコモノマー配列分布を有している。
【0020】
この発明の不利な点は、開始剤としてのバリウムアルコラートとの複合体に有機マグネシウム化合物を使用することによる低い重合速度である。別の重大な欠点は、連鎖移動プロセスがないことによって引き起こされる増大したゲル形成である。
【0021】
米国特許US4129705Aは、重合プロセスを開示している。これは、本質的に(a)有機リチウム開始剤及び(b)バリウム又はストロンチウム又はカルシウムの化合物、(b)アルミニウム又は亜鉛の有機金属化合物、及び(b)アルカリ金属アルコラートエーテル又はアミンからなる(b)三元触媒システムの存在下でエラストマーを形成するための共役ジエンの単独重合及び他のジエン又はビニル芳香族化合物と共役ジエンの共重合の方法である。提案された発明によれば、調製されたポリマーは、1,2-単位の低い含有量及びトランス-1,4-単位の高い含有量によって特徴付けられる。
【0022】
この出願に開示されているように、使用される四元触媒システムは、アルミニウム及び亜鉛の有機金属化合物と有機リチウム化合物との複合体を含む。しかしながら、そのような複合体は経時的に安定ではなく、その結果、それらの使用は、所望の目標とするムーニー粘度を有するポリマーをもたらさない。
【0023】
米国特許US4933401Aは、共役ジエンの重合のための触媒組成物、及び共役ジエンポリマーを調製するための方法を開示している。共役ジエンの重合のための触媒システムは、以下の成分を含む:
(a)次の式:
【化5】
(式中、R~Rは同じであるか異なり、1~20個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基を表す)
で表される有機リチウム-アルミニウム化合物、
(b)次の式:
【化6】
又は
【化7】
(式中、R~Rは上で定義されている)
で表される有機バリウム-アルミニウム化合物、
(c)次の式:
【化8】
(式中、Rは1~20個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、又は酸素及び窒素からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭化水素基を表す)
で表されるリチウムアルコキシド:
【0024】
上記の触媒組成物を用いる重合によって得られるポリマー又は共重合体は、高いトランス-1,4結合含有量、低いビニル結合含有量、及び低いシス-1,4結合含有量によって特徴付けられる。
【0025】
しかしながら、提案された方法は多くの欠点を有しており、特に以下の点がある:追加の装置を使用することによる、触媒システムの別個の調製の必要性、及び最終的な触媒複合体の組成物の不安定さによる、生じたポリマーのムーニー粘度測定値及び微細構造の低い再現性。加えて、バリウムアルミネートに基づく触媒システムを用いる重合は低速で進み、モノマー転化率が低い。
【0026】
米国特許US5959039Aは、高分子量及び低分子量のポリマー成分の両方を含む、タイヤに使用するためのゴム組成物を開示している。結合したスチレンを30質量%以下の量で含む高分子量ポリマー成分を含むゴム組成物は、スチレン-ブタジエン共重合体又は共役ジエンポリマー、例えばポリブタジエンであり、かつ少なくとも30×10の重量平均分子量を有する;及び、結合したスチレンを30質量%以下の量で含む低分子量ポリマー成分は、スチレン-ブタジエン共重合体又は共役ジエンポリマー、例えばポリブタジエンであり、かつ0.2×10~8×10の重量平均分子量を有する。さらに、提供された例は、得られたポリマーが低いビニル結合含有量によって特徴付けられることを示している。
【0027】
この出願において開示された方法の重大な欠点は、ポリマー中の低分子量成分の高い含有量である。このことは、この発明による方法によって製造されたゴムの転がり抵抗に多様な影響を与える。加えて、権利主張された触媒システムは、活性リチウムをキレート化することができる電子供与体化合物を含まず、それは、生じる共重合体中のブロックスチレンの存在を回避することを可能にできない
【0028】
ゴムポリマーの調製に使用されるカリウムベースの触媒システムは、米国特許US7825202B2によって知られている。その触媒システムは、一実施形態では、有機リチウム化合物、及び式:(R)(H)K(式中、Aはホウ素又はアルミニウムであり、Hは水素であり、Kはカリウムであり、Rは同じであっても異なっていてもよく、H、C~C10アルキル、C~C10シクロアルキル、フェニル、又はC~C10アルキル又はC~C10シクロアルキルで置換されたフェニルであり、但し、少なくとも1つのRがC~C10アルキルであり、さらに任意の2つのRが任意選択により場合によっては炭素環の一部であってもよい)のカリウムアルキルボロヒドリド又はカリウムアルキルアルミニウムヒドリドを含む。そのゴム状ポリマーは、低から中程度、すなわち約10%~約40%のビニル含有量を有することができ、タイヤトレッドゴムコンパウンドに有用である。
【0029】
しかしながら、提案された方法による触媒システムの使用は、低い重合速度及び高分子量成分の形成の増加をもたらし、それは次に、ゲル形成の増加をもたらし、その結果、装置の目詰まり及び損傷をもたらす。
【0030】
ロシア国特許RU2339651は、開始システムの存在下、炭化水素溶媒中で、適切なモノマーの重合によるポリブタジエン又はブタジエンとスチレンの共重合体を調製するための方法を開示しており、その方法は、開始システムが、有機リチウム化合物と、アルカリ金属ラプロモラートとテトラヒドロフルフリルアルコール、金属マグネシウム及びナトリウム(カリウム)をそれぞれ1:2~4:1~2:0~2のモル比で反応させることによって得られる修飾添加剤との複合体であることによって特徴付けられる。その技術的効果は、60℃より高い温度において、ジエン部分中の1,2-単位の含有量が9~75質量%の制御された量、10g/モルより大きな分子量をもつ巨大分子の少ないレベル(5質量%以下)をもつポリブタジエン及びブタジエンとスチレンの共重合体を得ることである。
【0031】
ロシア国特許RU2598075は、ブタジエンホモポリマー及びブタジエンとスチレンの共重合体を調製するための方法を記載している。この方法は、有機リチウムベースの開始システムと、1:[0.05~4.0]:[0.05~1.0]:[0.05~1.0]のバリウム:カリウム:ナトリウム(又はリチウム):カルシウム(又はマグネシウム)の当量比の、バリウム、カリウム、ナトリウム(又はリチウム)、カルシウム(又はマグネシウム)のアミン含有アルコラートとの混合物に基づく修飾添加剤の存在下での、炭化水素溶媒中での対応するモノマーの重合を含み、その重合工程は電子供与体を添加することをさらに含み、その方法は1.0:[0.01~2.0]:[0.2~2.0]の有機リチウム化合物:電子供与体:修飾剤のモル比で実施される。その技術的な結果は、ブタジエン部分中の1,2-単位の制御された含有量(9~85%)と、0.050%未満のゲルフラクションの含有量とともに、広い範囲の分子量(100×10~700×10g/モルの重量平均分子量)でのポリマーの合成の可能性です。
【0032】
しかしながら、この方法によれば、修飾添加剤の工業規模の合成物を分離する必要があり、それは別個の装置を必要とする。さらに、ランダム共重合体の製造には、カリウムアルコラートの大量消費が必要であり、カリウムアルコラートの群は、ラプラモール及びテトラヒドロフルフリルアルコールの構造フラグメントを含む修飾添加剤の多官能性分子の一部なので、その別々のデリバリーは不可能である。したがって、これらの基を有する化合物の供給が、今度は、低ビニルのブタジエン-スチレン共重合体を調製することを不可能にし、カリウムアルコラートの量の増加とともに増大することは明らかである。
【0033】
技術的本質及び達成された技術的結果に最も近いのは、ロシア国特許出願RU94024075号において提案された方法であり、これは、有機リチウム化合物及び炭化水素からなる触媒及びアルカリ金属のスチレン化フェノラートの可溶性修飾剤の存在下で、炭化水素溶媒中での共役ジエンの重合によって又は前記のジエン類相互の又はビニル芳香族化合物との共重合による(コ)ポリマーをもたらす。その修飾添加剤は、そのモル比が1:(0.5~200)のアルカリ金属のアルキルフェノラート及びメチル-tert-ブチルエーテルの混合物である。この発明の実施態様の例は、様々な含有量の1,2-単位を示しており、特に、最小値は11.2、11.4、及び12.8%である。
【0034】
しかし、アルカリ金属のフェノラートと組み合わせたメチル-tert-ブチルエーテルの使用は、ブロックスチレンなしの共重合体をもたらさず、なぜなら、メチル-tert-ブチルエーテルは2つ以上のヘテロ原子を含むキレート性EDと比較して比較的低い電子供与特性を示すからである。加えて、アルカリ金属のスチレンフェノラートは、重合中に有機金属化合物によるメタル化を受けやすい。これらのプロセスはリチウムの不活性化、すなわち、活性重合中心の「死」を引き起こし、これは、有機リチウム開始剤の消費の増加及び得られる共重合体中の低分子量画分の増大した含有量をもたらす。このことは、これらの共重合体(コポリマー)に基づくゴムの接着性の低下をもたらす。さらに、この発明は、ゴムにおいて、弾性ヒステリシス及び物理的機械的特性などのパラメータにおいて官能化された共重合体より劣る非官能化共重合体をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【文献】英国特許第994726号明細書
【文献】英国特許第1029445号明細書
【文献】ロシア国特許第2377258号明細書
【文献】ロシア国特許第2562458号明細書
【文献】米国特許第7884168号明細書
【文献】米国特許第3944528号号明細書
【文献】米国特許第3903019号号明細書
【文献】米国特許第4129705号明細書
【文献】米国特許第4933401号明細書
【文献】米国特許第5959039号明細書
【文献】米国特許第7825202号明細書
【文献】ロシア国特許第2339651号明細書
【文献】ロシア国特許第2598075号明細書
【文献】ロシア国特許出願第94024075号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
したがって、ケイ酸及びカーボンフィラーに対する改善された親和性を有し、かつゴム中でのその使用がゴムの弾性ヒステリシス特性を向上させる、低いビニル基含有量をもつランダム共重合体を調製する方法を開発する必要がある。
【0037】
本発明の説明
本発明の目的は、シリカ及びカーボンフィラーに対して優れた親和性を有する低いビニル基含有量をもつランダム共重合体(低ビニル共重合体)、並びに転がり抵抗及びウェットグリップなどの高い弾性ヒステリシス特性を有する、ランダム共重合体に基づくゴムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
ランダム低ビニル共重合体の調製は、有機リチウム開始剤を用いて共役ジエンとビニル芳香族モノマーを共重合する方法によって達成され、この共重合は、一般式ROK(Rは脂肪族基である)のカリウムアルコラート及び電子供与体添加剤を含む電子供与体システムの存在下で、70~130℃の温度において実施され、次にシクロシロキサン、オキソシクロシロキサン、ラクタム、又はビニルピリジン類からなる群から選択される少なくとも1つの化合物により修飾することを特徴とする。
【0039】
その結果得られる修飾された低ビニル共重合体は、分子内におけるモノマー単位のランダムな分布を有している。本発明による方法は、重合時間を30~40分(1.5~3倍)に短縮することによってプロセスの向上した生産性をもたらし、重合プロセスが30~40分で完了し、多数の反応器を必要としないので、連続重合のためのハードウェア設計を簡素化することを可能にする。さらに、ゲル形成が減少し、その結果、反応器及び製造ユニットを目詰まりさせることによって引き起こされる問題がないことも発見された。
【0040】
この方法によって調製された共重合体は、高い修飾度、すなわち、重合生成物中の未反応の修飾剤が実質的に存在しないこと、1,2-単位の低い含有量、及び制御された分子量分布によって特徴づけられる。
【0041】
これらの共重合体に基づいて製造されたゴムは、優れた弾性ヒステリシス特性(転がり抵抗及びウェットグリップ)によって特徴づけられる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明によれば、重合は、一般式ROKのカリウムアルコラート(Rは5~15個の炭素原子を含む脂肪族基である)及び電子供与体添加剤(以下、ED)からなる電子供与体システムを用いて行われる。そのシステム中の成分のモル比はED:ROK=1:(0.1~10)であり、達成すべきポリマー微細構造の目標値に応じて変わる。
【0043】
電子供与体システムの存在下及び70~130℃の温度での重合は、重合性分子の活性部位の反応性を高め、その結果、高分子中のビニル単位のランダムな分布によって特徴づけられる共重合体が調製されることを確実にする。
【0044】
本発明によれば、様々な脂肪族カリウムアルコラート及びそれらの混合物を用いることができる。本発明によるカリウムアルコラートは、一般式ROKで表され、Rは5~15個の炭素原子を含む脂肪族基であり、直鎖状又は分枝状構造の一級、二級、又は三級脂肪族基から選択することができる。好ましいカリウムアルコラートには、カリウムアミレート、カリウムイソアミレート、カリウムtert-アミレート、カリウムヘキサノレート、カリウム2-メチルヘキサノレート、カリウム2-エチルヘキサノレート、カリウムヘプタノレート、カリウム2-メチルヘプタノレート、カリウム2-エチルヘプタノレート、カリウムオクタノレート、カリウムラプロモラートが含まれ、カリウムアルコラートには、ナトリウム及び周期表の第2族元素を含む多官能混合カリウムラプロモラート-テトラヒドロフルフリレートも含まれる。
【0045】
本発明による方法において、カリウムアルコラートの量は、活性リチウム(開始剤を調製するプロセスにおいて使用される有機金属化合物中のアニオンに対する対イオン)に基づいて計算され、したがって、カリウムアルコラートの使用量は、共重合体の調製のための好ましい微細構造(ミクロ構造)に応じて変わる。アルコラートの量が多ければ多いほど、異なる長さのブロックによって表される、共重合体分子中のビニル芳香族化合物残基の含有量は少なくなり、かつ前記のブロックの長さはより短くなる。
【0046】
本発明において、使用されるカリウムアルコラートの量は、活性リチウム1モル当たり0.01~0.5モルである。活性リチウム1モル当たり0.02~0.4モルの量が好ましい。最も好ましい量は、活性リチウム1モル当たり0.03~0.3モルである。
【0047】
本発明において使用される電子供与体添加剤は、重合において使用され且つ周知の任意の添加剤から選択することができる。例えば、分子の構造中に1つ、2つ、又はそれより多いヘテロ原子を有するEDを使用することができる。
【0048】
この方法において使用される1つのヘテロ原子を有するEDの例は、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、又はそれらの混合物である。
【0049】
1つのヘテロ原子をもつ好ましいEDはテトラヒドロフラン(THF)である。
【0050】
本発明の方法において使用される2つ以上のヘテロ原子を有するEDは、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、2,2-ビス(2'-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、メチルテトラヒドロフルフリルエーテル、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、プロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、イソプロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、sec-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、イソブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、tert-ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ペンチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、エチレングリコールメチルtert-ブチルエーテル、エチレングリコールエチルtert-ブチルエーテル(EGETBE)、ジテトラヒドロフルフリルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジイソブチルエーテル、又はそれらの混合物であることができる。
【0051】
2つ以上のヘテロ原子を有する好ましいEDは、ジテトラヒドロフルフリルプロパン(DTHFP)、N,N,N ',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、メチルテトラヒドロフルフリルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルtert-ブチルエーテル、ジテトラヒドロフルフリルエーテルである。
【0052】
DTHFP及びTMEDAは、2つ以上のヘテロ原子をもつEDとして最も好ましい。
【0053】
使用されるEDの量は、活性リチウムに基づいて計算され、したがって、EDの使用量は、好ましい共重合体の微細構造に応じて変わる。使用されるEDの量が多ければ多いほど、共重合体中の1,2-単位の含有量がより多くなる。
【0054】
1つのヘテロ原子を有するEDは、活性リチウムに添加されたEDの量が活性リチウム1モル当たり0.3~2モルの範囲で、本発明による技術的結果をもたらす。活性リチウム1モル当たり0.4~1モルの量が好ましい。最も好ましい量は、活性リチウム1モル当たり0.5~0.8モルである。
【0055】
2つ以上のヘテロ原子をもつEDは、この実施形態では、活性リチウム1モル当たり0.01~0.3モルの範囲の量で使用される。活性リチウム1モル当たり0.02~0.2モルの量が好ましい。最も好ましい量は、活性リチウム1モル当たり0.03~0.1モルである。
【0056】
本発明の方法において開始剤として使用される有機リチウム化合物は、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム、メチルリチウム、2-ナフチルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、3-ジメチルアミノプロピルリチウム、又は3-ジエチルアミノプロピルリチウムであることができる。
【0057】
n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、及び3-ジメチルアミノプロピルリチウムが好ましい。
【0058】
n-ブチルリチウムが、有機リチウム開始剤として最も好ましい。
【0059】
使用する有機リチウム開始剤の量は、得られる共重合体の目標とするムーニー粘度値に応じて変わる。工業生産の規模では、有機リチウム開始剤の最適量は、モノマー1トン当たり4~11モルである。
【0060】
本発明によれば、共役ジエンには、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン(ピペリレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、3-メチル-1,3-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、3-メチル-1,3-ヘプタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、フェニル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ-n-プロピル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエンが含まれる。
【0061】
1,3-ブタジエン、イソプレン、及びピペリレンが好ましい。
【0062】
1,3-ブタジエンが最も好ましい。
【0063】
本発明において用いられるビニル芳香族化合物は、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、1-メチル-2-ビニルベンゼン、1-メチル-3-ビニルベンゼン、1-メチル-4-ビニルベンゼン、1,4-ジメチル-3-ビニルベンゼン、1,3-ジメチル-5-ビニルベンゼン、2-エチル-2-ビニルベンゼン、1-エチル-3-ビニルベンゼン、1-エチル-4-ビニルベンゼン、1-エチル-4-メチル-3-ビニルベンゼン、1,4-ジエチル-3-ビニルベンゼン、及び1-エチル-3-メチル-4-ビニルベンゼンから選択される。
【0064】
スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、及びジイソプロペニルベンゼンが、好ましいビニル芳香族化合物である。
【0065】
スチレン及びα-メチルスチレンが最も好ましいビニル芳香族化合物である。
【0066】
本発明の最も好ましい実施形態は、ブタジエン-スチレン共重合体を提供する。
【0067】
本発明は、ビニル芳香族モノマーに対するジエンモノマーの様々な比率をもつ共重合体を提供する。
【0068】
好ましくは、共役ジエン:ビニル芳香族化合物の比は、それぞれ、(95~60):(5~40)質量部の範囲である。
【0069】
共役ジエン:ビニル芳香族化合物の最も好ましい範囲は、(90~80):(10~20)質量部である。
【0070】
40%以上の1,2-単位含有量によって特徴づけられる共重合体は、高いビニル含有量をもつ共重合体に分類される。低いビニル含有量をもつ共重合体は、(13~23):(5~15)のスチレン:ビニル単位の比によって特徴づけられ、トラックのタイヤトレッドに使用する天然ゴムの代替品と考えられ、トラックのタイヤトレッドの製造において高ビニル共重合体の使用は不可能である。
【0071】
本発明の方法は炭化水素溶媒の使用を含む。そこで使用される炭化水素溶媒は、脂環式溶媒を含めた脂肪族溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン;ガソリン留分、又は芳香族溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、又はキシレンあるいはそれらの混合物であることができる。
【0072】
炭化水素溶媒としてヘキサン又はヘキサンとガソリン留分の混合物を使用することが好ましい。
【0073】
最も好ましい炭化水素溶媒は、(65~70):(30~35)の比率のシクロヘキサンとネフラスの混合物であり、ここでネフラスとは、65~75℃の沸点限度をもつ接触リフォーミングの脱芳香族ガソリンのパラフィン系炭化水素のヘキサン-ヘプタン画分である。
【0074】
重合の温度は70~130℃の範囲である。
【0075】
プロセスの好ましい温度は80~120℃の範囲である。
【0076】
最も好ましい温度は90~110℃の範囲である。
【0077】
示した温度範囲で及び本発明による電子供与体システムの存在下での重合プロセスは、ランダム構造及び低ビニル含有量を有する共重合体をもたらす。さらに、本発明にしたがう方法による重合プロセスは、リサイクルされた溶媒の回収に関連するエネルギー消費を低減する(重合プロセスの高い温度によって、溶媒の大部分は、重合生成物から容易に分離される)。
【0078】
本発明による共重合体の重合後の修飾は、シリカ及びカーボンフィラーに対するその優れた親和性を確実なものにする。
【0079】
シクロシロキサン、オキソシクロシロキサン、ラクタム、又はビニルピリジンの群から選択される化合物を、末端修飾剤として使用する。
【0080】
ヘキサメチルシクロトリシロキサン(HMCS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、デカメチルペンタシクロシロキサン(DMPCS)、プロピルメタクリレート-ヘプタ-ブチルシクロシロキサン、1,3-グリシジルプロピル-ヘプタン-イソブチル-シクロシロキサン、1,1-ジメチル-1-シラ-2-オキサシクロシロキサン、2,2,4-トリメチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン、N-メチル-イプシロン-カプロラクタム、N-メチルピロリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジンが、末端修飾剤として好ましい。
【0081】
最も好ましい末端修飾剤は、1,1-ジメチル-1-シラ-2-オキソシクロシロキサン及び2-ビニルピリジンである。
【0082】
末端修飾剤は、脂肪族又は芳香族溶媒中の1~20%の溶液の形態で用いられる。この修飾剤の溶液は、予め、又は使用直前に調製される。
【0083】
末端修飾剤に加えて、様々な分岐剤を本発明の方法において用いることができる。
【0084】
一般的に使用される分岐剤には、四塩化スズ(IV)、四塩化ケイ素(IV)、ヘキサクロロパラキシレン、ヘキサクロロジシラン、1,3-ビス-トリクロロシラニルプロパン-1,4-ビス-トリクロロシラニルブタン、ビス-トリクロロシラニルエタン、及びトリクロロシリルベンゼンが含まれる。
【0085】
四塩化スズ(IV)、四塩化ケイ素(IV)、ヘキサクロロパラキシレン、ヘキサクロロジシラン、及びビス-トリクロロシラニルエタンが好ましい。
【0086】
最も好ましい分岐剤は、四塩化スズ(IV)及び四塩化ケイ素(IV)である。
【0087】
分岐剤は、脂肪族又は芳香族溶媒中の1~20%の溶液の形態で用いられる。この分岐剤溶液は、予め、又は使用直前に調製される。
【0088】
モノマー転化率が95~100%に達した後、修飾剤及び(必要に応じて)分岐剤の溶液を重合生成物に添加する。この反応剤は、一定の撹拌の下で10~20分間、連続的に又はバッチ方式で投入される。
【0089】
重合プロセスは、1つ又は複数の反応器中で連続的に又はバッチ方式で実施される。
【0090】
連続共重合プロセスは、一連の2つ以上の金属反応器中で実施される。連続共重合プロセスは、好ましくは一連の3~6つの金属反応器中で実施される。バッチ式プロセスは、1つ又は複数の相互に接続されていない金属反応器中で実施される。全ての反応器は、撹拌機、熱を供給/除去するためのジャケット、及び原材料を投入し、反応生成物を取り出すための付属設備を備えている。この重合プロセスはまた、単一の反応器中で実施することができ、その後、得られた重合生成物を2つの流れに分割し、その一方には分岐剤を投入し、他方には修飾剤を投入して、同時に分岐及び修飾された共重合体を調製する。
【0091】
プロセスの開始時に、反応器に、全ての計算された量の共役ジエン、全ての計算された量のビニル芳香族モノマー、及び全ての体積の炭化水素溶媒を充填し、その混合物を必要な温度に加熱する。混合物の投入及び加熱の後、反応器に触媒システムの構成成分を投入し、ここで、カリウムアルコラート及びEDを最初に一緒に又は任意の順序で別々に入れる。次に、有機リチウム開始剤を投入し、95%以上のモノマー転化率に達するまで重合プロセスを行う。プロセスの開始時、反応混合物の温度は50~60℃である。共重合反応が進むにつれて、媒体の自己発熱により反応混合物の温度は70~130℃に上昇し、温度がこの範囲を超え又はこの範囲に達しなかった場合は、反応熱制御システムによって指定されたレベルに温度を維持する。
【0092】
モノマー転化率が少なくとも95%の値に達したら、末端修飾剤と、必要に応じて分岐剤を、重合生成物に投入する。この分岐及び修飾プロセスは、同じモードで、連続的に撹拌しながら10~20分間実施する。次に、この時間の後、重合生成物は、0.2~0.7質量%、最も好ましくは0.3~0.6質量%の量の酸化防止剤、好ましくはフェノール系又はアミン系酸化防止剤で安定化される。さらに、重合生成物を脱気(脱ガス)工程に送り、次いで0.8質量%以下の水分含有量になるまで乾燥させる。
【0093】
得られた共重合体は、8~12質量%の1,2-単位含有量、1.12~1.85の分子量分布、及び66~76MU(ムーニー単位)のムーニー粘度によって特徴づけられる。
【0094】
本発明はまた、本発明の方法によって調製された共重合体に基づくゴム混合物に関する。
【0095】
ゴム混合物は、上記共重合体に加えて、当業者に周知のその他の添加剤、例えば、充填剤(フィラー)、活性化剤(アクチベーター)、及び加硫促進剤、硬化剤、様々な柔軟化剤及び他の加工助剤を含む標準的な配合に従って調製される。添加剤の総含有量は、共重合体100部当たり40~100部である。
【0096】
充填剤として、例えば、カーボンブラック、酸化ケイ素、チタン、亜鉛などを使用することができる。
【0097】
例えば、鉛、亜鉛、マグネシウム、アセトアニリド、ステアリン酸、スルフェンアミド、ジフェニルグアニジンなどが、活性化剤及び加硫促進剤として適している。
【0098】
例えば、硫黄、有機過酸化物、及びポリハロゲン化アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、オリゴエーテルアクリレ-ト、並びに他の不飽和化合物などの化合物を加硫剤として使用することができる。
【0099】
ナフテン油、ステアリン酸、及びオレイン酸、パラフィン、ロジンなどは、柔軟化剤及び加工添加剤(加工助剤)として使用することができる。
【0100】
上記の共重合体に基づいて調製されたゴム混合物は、高い耐摩耗性及び高いウェットグリップによって特徴づけられる。
【0101】
本発明によるゴム混合物は、特に、GOST R 54555-2011による配合(表1)で調製することができる。得られたゴム混合物は、製品の技術的要求事項、特に一般に入手可能な規格ASTM D3185-07に完全に準拠している。
【0102】
【表1】
【0103】
混合物をロールミルで調製する場合、ゴム及びカーボンブラックを1.0gの精度で計量し、硫黄及び加硫促進剤(0.02gの精度)、並びにその他の成分(0.1gの精度)を計量する。
【0104】
混合物をインターナルミキサー(内部ミキサー)中で調製する場合、ゴム及びカーボンブラックを0.1gの精度で計量し、成分の混合物を0.01gの精度で、及び別個に添加する成分(それがある場合は)を0.001の精度で計量する。
【0105】
本発明の実施形態
本発明の実施形態を以下に開示する。当業者は、本発明が、提示された例のみに限定されず、請求項に係る発明の目的を超えることなく、他の実施形態において同じ効果を達成できることを理解するであろう。
【0106】
請求項に係る方法によって調製された共重合体の特性を評価するために使用される試験方法:
【0107】
1)100℃におけるゴムのムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、MV2000ムーニー粘度計で、ASTM D1646-07に準拠して測定した。
【0108】
2)ゴムの分子量特性は、内部手順に従ってゲル浸透クロマトグラフィーによって決定した。測定は、屈折率検出器を備えたゲルクロマトグラフWaters Breezeを使用して実施した。テスト条件:Styragel(HR3、HR4、HR5、HR6)を充填した一連の4本の高分解能カラム(長さ300mm、直径7.8mm)(500~1×10a.m.u.の分子量をもつポリマーの分析を可能にする);溶媒 - テトラヒドロフラン、流量 - 1cm/分;カラム及び屈折率検出器のサーモスタットの温度 - 30℃;計算 - Kuhn-Mark-Houwink定数(ブタジエン-スチレン共重合体の場合、K=0.00041、α=0.693)を使用するポリスチレン標準品を用いたユニバーサル校正。ゴムサンプルを、新たに蒸留したばかりのテトラヒドロフランに溶かし、溶液中のポリマーの質量濃度は2mg/mlだった。
【0109】
3)ブタジエン-スチレン共重合体のサンプル中の結合したスチレンと1,2-単位の質量比は、TU38.40387-2007(c1.5.8)規格に準拠してフーリエ変換IR分光法によって決定した。この方法は、スチレンのベンゼン環のCH振動に対応する700cm-1の吸収帯の強度と、1,2-ポリブタジエン単位の振動に対応する910cm-1の吸収帯の強度を測定することに基づいている。IR分光計は、NMR分光法によって決定した、ポリマー鎖の結合スチレン及びブタジエン部分中の1,2-単位の既知の質量比をもつランダムブタジエン-スチレンゴムの組成及び微細構造の標準サンプルの組を使用して較正した。
【0110】
4)ポリマー中の残留修飾剤の含有量の決定は、エチルアルコールによる修飾剤の前もっての抽出と、それに続くクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器分析に基づく。残存修飾剤は、内部標準法を使用して計算した。
【0111】
5)ポリマーの修飾の程度は、以下の式によって計算した:
X,%=(w,g-w,g)×100%/W,g
式中、Xは修飾の程度であり、
は、導入した修飾剤の質量であり、
は、残存修飾剤の質量である。
【0112】
5)リチウム触媒の溶液中の活性リチウムの含有量は、有機リチウム化合物と赤橙色の錯体を生成するo-フェナントロリンの存在下で、キシレン中のイソプロピルアルコールの溶液を用いる活性リチウムの直接滴定に基づく方法によって決定した。
【0113】
6)転がり抵抗(60℃におけるtanδ)などのゴムコンパウンドの性能特性を、ゴムプロセスアナライザー(RPA-2000 - Alpha Technologies社)で評価した:周波数 - 10Hz、シフト振幅 - 10%、温度 - 60℃。
【0114】
提案した技術的解決策の本質は、本発明の範囲を限定することなく、説明する特定の実施形態の以下の例によって説明される。当業者は、本発明がそれらに限定されず、同等の配合を適用することによって同じ効果を達成できることを理解するであろう。
【実施例
【0115】
例1.プロトタイプによる
シクロヘキサンとネフラス(nefras,石油からのn-ヘキサン画分)の混合物2800g、スチレン80g、ブタジエン360g、シクロヘキサン/ネフラス中のメチルtert-ブチルエーテルの1M溶液7ミリモル(ED/BuLiモル比1.9)、シクロヘキサン/ネフラス中のn-ブチルリチウムの0.5M溶液3.6ミリモル(モノマー1kg当たりの開始剤使用量,8.2ミリモル)、及びシクロヘキサン/ネフラス中のモノ-、ジ-、トリ-(メチルベンジル)フェノールの混合物のカリウム誘導体の0.05M溶液0.14ミリモル(ブチルリチウムに対するカリウムフェノラート混合物のモル比0.04(カリウムに基づく))を窒素雰囲気下で反応器に導入した。撹拌下で、反応物を75℃に加熱し、1.5時間熟成させた。
【0116】
重合が完了した後、酸化防止剤(4%のメチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール(イオノール))を0.6%の量でポリマーに添加し、溶媒のスチームストリッピングによってポリマーを分離した。その湿ったかたまりを90℃において空気乾燥機中で乾燥させた。ポリマーの収量は440g(100%)だった。
【0117】
例2.本発明による
ブタジエンとスチレンの共重合のプロセスを、混合機、熱を供給/除去するためのジャケット、並びに原料を投入し及び生成物を抜き出すための付帯設備を備えた10リットルの金属反応器中で実施した。
【0118】
共重合体は、1,3-ブタジエン及びスチレンからなる前もって調製したブタジエン-スチレン仕込み原料並びに炭化水素溶媒の全量を反応器に充填することによって調製した。使用した溶媒は、ネフラスとシクロヘキサンの70:30の比の混合物である。仕込み原料中のブタジエン/スチレンの質量比はそれぞれ82:18だった。仕込み原料を投入した後、その反応物質を90℃に加熱し、有機リチウム開始剤及び電子供与体システム(カリウムアルコラート及びED)からなる触媒システムの成分をその反応原料に投入した。有機リチウム開始剤はn-BuLiであり、n-BuLiの計算量は、モノマー1kg当たり9.2ミリモルだった。カリウムアルコラートはカリウムtert-アミレートであり、n-BuLiに対するカリウムアルコラートのモル比は0.05だった。EDはTMEDAであり、n-BuLiに対するEDのモル比は0.05だった。末端修飾剤は2-ビニルピリジンであり、n-BuLiに対する2-ビニルピリジンのモル比は5だった。修飾は15分間行った。修飾の後、分岐剤を反応器に投入し、分岐剤は四塩化スズであり、ブチルリチウムに対する四塩化スズのモル比は0.25だった。反応の15分後、酸化防止剤を、ポリマーを基準にして0.6%の量で導入し、その後、ポリマーを水の脱気によって分離した。調製したポリマー及びそのポリマーに基づくゴムコンパウンドの特性を表3に示す。
【0119】
例3
共重合プロセスを例2と同様に実施したが、使用したEDがトリエチルアミン(TEA)だった点で異なる。
修飾され且つ分岐したポリマーを得るための修飾及び分岐工程は、それぞれ、異なる反応器中で行い、続いて、高効率ミキサーを備えた別個の装置(averager, 平均化器)中で線状及び分岐状ポリマーを混合した。
【0120】
例4
共重合プロセスを例2と同様に実施したが以下の点で異なる。N,N-ジメチルテトラヒドロフルフリルアミン(DMTA)をEDとして用いた。ビニル芳香族化合物はα-メチルスチレンだった。カリウムアルコラートはカリウムヘプタノレートであり、4-ビニルピリジンを末端修飾剤として用いた。
【0121】
例5
共重合プロセスを例2と同様に実施したが以下の点で異なる。sec-ブチルリチウムを有機リチウム開始剤として用いた。ナトリウムカリウムラプラモラート(K/Naモル比=2)をアルコラートとして用いた。N-メチルピロリドン(NMP)を末端修飾剤として用い、用いた分岐剤は四塩化ケイ素だった。
【0122】
修飾され且つ分岐したポリマーを得るための修飾及び分岐工程はそれぞれ異なる反応器で行ない、次に、高効率ミキサーを備えた別個の装置(平均化器)で線状及び分岐ポリマーを混合した。
【0123】
例6
共重合プロセスを例2と同様に実施したが以下の点で異なる。カリウムアルコラートはカリウムtert-ブチレートであり、DMTAをEDとして用いた。末端修飾剤はオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)であり、四塩化ケイ素を分岐剤として用いた。
【0124】
例7
共重合プロセスを例2と同様に実施したが以下の点で異なる。共役ジエンはイソプレンだった。EDはメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)であり、末端修飾剤はOMCTSだった。このポリマーの調製方法は分岐剤を使用せずに行った。
【0125】
例8
共重合プロセスを例2と同様に実施した。TEAをEDとして用い、1,1-ジメチル-1-シラ-2-オキソシクロヘキサン(DSO)を末端修飾剤として用いた。
【0126】
例9
共重合プロセスを例2と同様に実施した。共役ジエンはイソプレンであり、TEAをEDとして用い、そしてカリウムアルコラートはカリウムヘキサノレートだった。修飾され且つ分岐したポリマーを得るための修飾及び分岐工程は、それぞれ、異なる反応器で実施し、続いて、別個の装置(平均化器)中で線状及び分岐状ポリマーを混合した。
【0127】
例10
共重合プロセスを例2と同様に実施した。共役ジエンはイソプレンであり、MTBEをEDとして用い、カリウムアルコラートとしてカリウムナトリウムラプロモラート(K/Naモル比=2)を用いた。OMCTSを末端修飾剤として用いた。分岐剤は四塩化ケイ素だった。
【0128】
例11
共重合プロセスを例2と同様に実施する。共役ジエンはイソプレンであり、THFをEDとして用い、カリウムアルコラートとしてカリウムナトリウムラプロモラート(K/Naモル比=2)を用いた。NMPを末端修飾剤として用いた。分岐剤は四塩化ケイ素だった。修飾され且つ分岐したポリマーを得るための修飾及び分岐工程は、それぞれ、異なる反応器中で行い、次に、別個の装置(平均化器)中で線状及び分岐状ポリマーを混合した。
【0129】
例12
共重合プロセスを例2と同様に実施した。EDはジグライムであり、カリウムアルコラートはカリウムヘプタノレートだった。4-ビニルピリジンを末端修飾剤として用いた。
【0130】
例13
共重合プロセスを例2と同様に実施した。EDはMTBEであり、カリウムアルコラートはカリウムtert-ブチレートだった。
【0131】
例14
共重合プロセスを例2と同様に実施した。共役ジエンはイソプレンであり、TEAをEDとして用い、カリウムアルコラートはカリウムtert-ブチレートだった。四塩化ケイ素を使用してポリマーを分岐させた。OMCTSを末端修飾剤として用いた。
【0132】
例15
共重合プロセスを例2と同様に実施した。ビニル芳香族化合物はα-メチルスチレンであり、ジグライムをEDとして用いた。共重合体の末端修飾はOMCTSを用いて行い、分岐は四塩化ケイ素を使用して行った。修飾されかつ分岐したポリマーを得るための修飾及び分岐工程は、それぞれ、異なる反応器中で実施し、次に、別個の装置(平均化器)中で線状及び分岐状ポリマーを混合した。
【0133】
例16
共重合プロセスを例2と同様に実施した。2,2-ビス(2'-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP)をEDとして使用し、カリウムアルコラートとして、カリウムナトリウムラプロモラート(K/Naモル比=2)を用いた。
【0134】
例17
共重合プロセスを例2と同様に実施した。共役ジエンは1,3-ヘキサジエンであり、MTBEをEDとして使用し、そしてカリウムアルコラートはカリウムヘキサノレートだった。末端修飾はOMCTSを使用して行い、分岐は四塩化ケイ素を使用して実施した。
【0135】
例18
共重合プロセスを例2と同様に実施した。EDはTHFであり、4-ビニルピリジンを末端修飾剤として用いた。修飾されかつ分岐状のポリマーを得るための修飾及び分岐工程を異なる反応器中で実施し、次に別の装置(平均化器)中で線状及び分岐状ポリマーを混合した。
【0136】
例19
共重合プロセスを例2と同様に実施した。開始剤はsec-ブチルリチウムであり、ジグライムをEDとして用いた。カリウムアルコラートはカリウムヘプタノレートだった。末端修飾はNMPを用いて行い、分岐は四塩化ケイ素を用いて行った。
【0137】
例20
共重合プロセスを例2と同様に実施した。MTBEをEDとして用いた。カリウムアルコラートはカリウムヘプタノレートだった。末端修飾はNMPを用いて行い、分岐は四塩化ケイ素を用いて行った。修飾され分岐したポリマーを得るための修飾及び分岐工程は、それぞれ、異なる反応器中で実施し、次に、別個の装置(平均化器)中で線状及び分岐状ポリマーを混合した。
【0138】
例21
共重合プロセスを例2と同様に実施したが以下の点で異なる。共役ジエンはイソプレンであり、アルコラートカリウムはカリウムブチレートだった。分岐及び末端修飾はこの場合には行わなかった。得られたゴムは、修飾したゴムのサンプルに対して、弾性ヒステリシス特性で劣っていた。
【0139】
例において記載した方法によって調製された共重合体のプロセスパラメータ及び処方を表2に示す。使用量は物質ごとに示し、値は無次元である。
【0140】
ゴム混合物の調製例
ポリマー組成物を加硫することによってゴム混合物を調製した。ポリマー及びゴム混合物の成分組成の選択は、生成物、製造方法の、目的、操作条件、技術的要求事項、及びその他の側面によって決定した。
【0141】
ゴムを調製するプロセスは、特別なミキサー又はロールミルでゴムを成分と混合し、ゴムから作られた半製品を剪断及び切断し(形状及び大きさは、得られるゴムの計画されているさらなる用途、特に計画されている試験方法に左右される)、特別な装置(プレス、オートクレーブ、加硫形成機、及びその他)中で半製品を加硫することを含む
【0142】
本発明との関連において、ゴム混合物は、表1に示した配合に従って調製した。ゴムコンパウンドの調製は、バンバリー型ローターを備えた小型のインターナルミキサー中で実施した。各混合ステップの後、ゴム混合物を、50±5℃のミル温度において、ASTM D 3182に準拠してロールミル上で処理した。
【0143】
例に記載した共重合体を調製するためのプロセスのパラメータ及び使用量を表2に示す。使用量は活性リチウムに対して示しており、値は無次元である。
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【0146】
【表4】
【0147】
【表5】
【0148】
略語のリスト
TMEDA - N,N,N’N’-テトラメチルエチレンジアミン
TEA - トリエチルアミン
DMTA - N,N-ジメチルテトラヒドロフルフリルアミン
MTBE - メチル-tert-ブチルエーテル
Diglyme(ジクライム) - ジエチレングリコールジメチルエーテル
THF - テトラヒドロフラン
DTHFP - 2,2-ビス(2’-テトラヒドロフルフリル)プロパン
n-BuLi - ノルマルブチルリチウム
sec-BuLi - sec-ブチルリチウム
OMCTS - オクタメチルシクロテトラシロキサン
SnCl4 - 四塩化スズ
SiCl4 - 四塩化ケイ素
NMP - N-メチルピロリドン
DSO - 1,1-ジメチル-1-シラ-2-オキソシクロヘキサン
【0149】
【表6】
【0150】
【表7】
【0151】
表2及び表3に示したデータを比較すると、本発明による方法が、分子量分布及びムーニー粘度が制御された、分子中のモノマー単位の統計的分布を有する低ビニル共重合体をもたらすことは明らかである。
【0152】
さらに、本発明による方法によって調製された修飾された共重合体は、カーボンブラックに対して優れた親和性を有し、これは、ゴムに加工した場合、ゴムに高い弾性ヒステリシス特性を付与する。このことは、+60℃におけるtanδ(転がり抵抗)及び0℃におけるtanδ(ウェットグリップ)の値で確かめられる。これらの指標は非常に重要であり、なぜなら、それらはこれらの共重合体から製造される自動車用タイヤの品質に直接影響を及ぼし、タイヤの安全性を確保し、車両のハンドリングを向上させ、燃料消費量を低減させるからである。