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特許7301139成長評価装置、成長評価方法および成長評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】成長評価装置、成長評価方法および成長評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
A01K29/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021543771
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020033006
(87)【国際公開番号】W WO2021045034
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019162721
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229519
【氏名又は名称】日本ハム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102728
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】助川 慎
(72)【発明者】
【氏名】内田 大介
(72)【発明者】
【氏名】奥田 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】大城 祐介
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/058752(WO,A1)
【文献】特開2016-059300(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0064432(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0125276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 11/00-29/00
A01K 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の豚が集団飼育されているペンに向けて設置されたカメラによって撮像された画像から豚の臀部が正対する臀部画像を抽出する抽出部と、
前記臀部画像から臀部幅を演算する演算部と、
対象となる豚を識別することなくランダムに蓄積された、前記演算部によって演算された規定数以上の前記臀部幅に基づいて前記複数の豚の全体の成長度合を評価する評価部と
を備える成長評価装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記臀部幅を推定体重に変換して、前記複数の豚の平均推定体重を出力する請求項1に記載の成長評価装置。
【請求項3】
前記ペンでの飼育開始時点における前記複数の豚の体重を取得する取得部を備え、
前記評価部は、前記体重と、前記演算部によって演算された規定数以上の前記臀部幅の一定期間に亘る変化とに基づいて前記成長度合を評価する請求項1または2に記載の成長評価装置。
【請求項4】
前記抽出部は、尾部が臀部の幅方向の中心に位置する画像を前記臀部画像として抽出し、
前記演算部は、前記尾部を高さ方向の中心とする予め定められた範囲における最大幅を前記臀部幅として演算する請求項1から3のいずれか1項に記載の成長評価装置。
【請求項5】
前記画像は、前記ペンの所定位置に向けて設置された前記カメラが出力する2D画像である請求項1から4のいずれか1項に記載の成長評価装置。
【請求項6】
記所定位置は、前記ペンに設置された給餌場および給水場の少なくとも何れかである請求項5に記載の成長評価装置。
【請求項7】
前記画像は、前記カメラが出力する距離画像であり、
前記演算部は、前記カメラから前記画像に写る豚の臀部までの距離に基づいて前記臀部幅を修正する請求項1から4のいずれか1項に記載の成長評価装置。
【請求項8】
前記画像は、前記複数の豚に対して餌が供給される給餌時間に撮像された画像である請求項1から7のいずれか1項に記載の成長評価装置。
【請求項9】
前記画像は、作業員が前記ペン内で作業する作業時間に撮像された画像である請求項1から8のいずれか1項に記載の成長評価装置。
【請求項10】
複数の豚が飼育されているペンに向けて設置されたカメラによって撮像された画像から豚の臀部が正対する臀部画像を抽出する抽出ステップと、
前記臀部画像から臀部幅を演算する演算ステップと、
対象となる豚を識別することなくランダムに蓄積された、前記演算ステップによって演算された規定数以上の前記臀部幅に基づいて前記複数の豚の全体の成長度合を評価する評価ステップと
を有する成長評価方法。
【請求項11】
複数の豚が飼育されているペンに向けて設置されたカメラによって撮像された画像から豚の臀部が正対する臀部画像を抽出する抽出ステップと、
前記臀部画像から臀部幅を演算する演算ステップと、
対象となる豚を識別することなくランダムに蓄積された、前記演算ステップによって演算された規定数以上の前記臀部幅に基づいて前記複数の豚の全体の成長度合を評価する評価ステップと
をコンピュータに実行させる成長評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長評価装置、成長評価方法および成長評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の体重を計測する場合には、一頭ずつケージへ誘導してケージ内に設置された体重計に載せる必要があった。体重計に載せる代わりに距離計を用いて家畜までの距離を体重に変換する技術なども知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-175050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
豚を飼育する場合には、一般的にペンと呼ばれる檻や区切られた区画を用いて集団で飼育する手法が多く採用される。ペンに収容された複数の豚は、比較的自由に動き回ることができるので、豚の健康管理の観点からは好ましい。しかし、出荷判断や成長度合の確認のためにペン内の豚の体重を計測しようとすると、一頭ずつケージへ誘導する作業が負担となっていた。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、集団で飼育されている豚の成長度合を、一頭ずつケージへ誘導することなく、簡便に評価する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様における成長評価装置は、複数の豚が集団飼育されているペンに向けて設置されたカメラによって撮像された画像から豚の臀部が正対する臀部画像を抽出する抽出部と、臀部画像から臀部幅を演算する演算部と、演算部によって演算された規定数以上の臀部幅に基づいて複数の豚の全体の成長度合を評価する評価部とを備える。
【0007】
本発明の第2の態様における成長評価方法は、複数の豚が飼育されているペンに向けて設置されたカメラによって撮像された画像から豚の臀部が正対する臀部画像を抽出する抽出ステップと、臀部画像から臀部幅を演算する演算ステップと、演算ステップによって演算された基準数以上の臀部幅に基づいて複数の豚の全体の成長度合を評価する評価ステップとを有する。
【0008】
本発明の第3の態様における成長評価プログラムは、複数の豚が飼育されているペンに向けて設置されたカメラによって撮像された画像から豚の臀部が正対する臀部画像を抽出する抽出ステップと、臀部画像から臀部幅を演算する演算ステップと、演算ステップによって演算された基準数以上の臀部幅に基づいて複数の豚の全体の成長度合を評価する評価ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、集団で飼育されている豚の成長度合を、一頭ずつケージへ誘導することなく、簡便に評価する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る評価装置を採用した養豚環境の全体像を示す図である。
図2】評価装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】豚の日齢と臀部幅の関係を示すグラフである。
図4】豚の日齢と体重の関係を示すグラフである。
図5】豚の臀部幅と体重の関係を示すグラフである。
図6】臀部画像を説明する図である。
図7】臀部幅の演算手法を説明する図である。
図8】評価装置が日ごとに実行する処理を説明するフロー図である。
図9】他の成長評価の手法を説明する図である。
図10】更に他の成長評価の手法を説明する図である。
図11】ステレオカメラを利用した場合の養豚環境の全体像を示す図である。
図12】ステレオカメラを利用した場合の臀部画像の生成手法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る評価装置200を採用した養豚環境の全体像を示す図である。評価装置200は、成長評価装置の一実施形態である。養豚場では、観察対象となる豚101がペン102に集団で収容されている。ペン102での飼育開始時点においてこれらの豚101は同程度の体格であり、出荷可能な大きさに成長するまで集団で飼育される。すなわち、ペン102への収容およびペン102からの退出は、原則として、豚101の集団に対して一斉に実施される。したがって、ペン102に収容される豚101は、集団として管理され、以下に説明する成長の評価も集団単位で行われる。なお、ペン102で飼育される豚101の頭数は、例えば20頭程度であり、豚101の品種や飼育環境に応じて調整され得る。
【0013】
カメラユニット110は、ペン102内の所定位置を俯瞰して撮像できる撮像センサを備えており、撮像センサで撮像した2D画像を画像データに変換し、インターネット900を介してサーバ210へ送信する。カメラユニット110は、例えば給餌容器103に頭部を没入して採餌する豚101を背後から俯瞰する画角Frの範囲を撮像するように設置されている。このように設置されたカメラユニット110によれば、採餌中の豚101の臀部が正対する画像を取得できる。
【0014】
カメラユニット110は、給餌容器103付近を所定位置とする場合に限らず、ペン102内を動き回る豚101の臀部を正対した状態で撮像することが期待できるのであれば、そのような場所を所定位置として設置して良い。例えば、給水容器104付近を所定位置としても良い。給餌場や給水場は、収容されている豚101が入れ替わり立ち替わり訪れる場所であるので、ランダムに多くの豚101の臀部画像を取得するのに都合が良い。
【0015】
管理施設には、観察対象となる豚101の成長を評価する評価装置200が設置されている。評価装置200は、サーバ210と、サーバ210に接続された表示モニタ220等によって構成され、サーバ210は、インターネット900と接続されている。サーバ210は、インターネット900を介してカメラユニット110から送られてくる画像データを受け取り、当該画像データに基づいてペン102に収容された豚101全体の成長度合を評価する。サーバ210は、評価結果を表示モニタ220へ表示する。養豚場で作業する作業員から作業員端末120を介して評価結果を求められた場合には、インターネット900を介して、評価結果を作業員端末120の表示部へ表示する。作業員端末120は、例えば、タブレット端末やスマートフォンである。
【0016】
なお、カメラユニット110と評価装置200を接続する回線は、インターネット900に限らず、イントラネット等であっても良い。養豚場内に管理施設が設けられるような場合には、近距離無線通信が採用されても良い。
【0017】
図2は、評価装置200のハードウェア構成を示す図である。評価装置200は、上述のように主にサーバ210と表示モニタ220によって構成される。表示モニタ220は、例えば液晶パネルを備え、演算部230が生成する映像信号を視認可能な映像に変換して表示する。サーバ210は、主に、演算部230、画像処理部240、データ蓄積部250、メモリ260および通信ユニット270を備える。
【0018】
演算部230は、例えばCPUであり、メモリ260から読み込んだ各種プログラムを実行することにより、評価装置200の全体を制御したり諸々の演算処理を実行したりする。例えば、抽出部231としての処理を実行する場合には、画像処理部240と協働して、カメラユニット110から送られてくる画像から豚101の臀部が正対する臀部画像を抽出する。幅演算部232としての処理を実行する場合には、抽出部231が抽出した臀部画像から、そこに写る豚101の臀部幅を演算する。評価部233としての処理を実行する場合には、幅演算部232によって演算された規定数以上の臀部幅に基づいてペン102に収容された豚101の全体の成長度合を評価し、表示モニタ220や作業員端末120へ出力する。具体的な処理については、後に詳述する。
【0019】
画像処理部240は、例えば画像処理用のASICであり、カメラユニット110から受け取った画像データから対象豚の臀部領域を切り出した臀部画像を生成するなどの画像処理を実行する。データ蓄積部250は、例えばHDD(Hard Disc Drive)であり、臀部画像から演算した臀部幅等を蓄積する。
【0020】
メモリ260は、例えばSSD(Solid State Drive)であり、評価装置200を制御するための制御プログラムや豚101の成長度合を評価する成長評価プログラムの他にも、様々なパラメータ値、関数、ルックアップテーブル等を記憶している。特に、臀部幅を推定体重へ変換する変換テーブル261を記憶している。
【0021】
通信ユニット270は、例えば有線LANユニットである。演算部230は、通信ユニット270を介して、インターネット900に接続されたカメラユニット110へ画像データを要求し、これに呼応してカメラユニット110から送られてくる画像データを受信する。また、評価部233は、通信ユニット270を介して受信した作業員端末120からの要求に応じて、評価結果を当該作業員端末120へ送信する。
【0022】
ペンを用いて豚を飼育する場合、ペンに収容された豚は比較的自由に動き回ることができるので、豚の健康管理の観点からは好ましい。しかし、出荷判断や成長度合の確認のためにペン内の豚の体重を計測しようとすると、従来は、体重計が設置されたケージへ一頭ずつ誘導する必要があり、作業員にはその作業が負担となっていた。本願発明者は、ペンに収容された豚の成長度合をより簡便に評価する手法の研究を重ねた結果、豚の臀部の幅である臀部幅と当該豚の体重には強い相関があることを見出した。豚のいずれかの体部の大きさと体重の間には一般的にはある程度の相関があるものとされるが、臀部幅と体重の間の相関性は、個体間のばらつきが少なく、他の部位と体重の間の相関性よりも特に強いことがわかった。また、豚の臀部を観察対象とすれば、その位置や皮膚形状から、正確かつ簡易に画像による解析を行うことができることもわかった。
【0023】
臀部幅と体重の相関について説明する。図3は、豚の日齢と臀部幅の関係を示すグラフである。横軸は日齢であり、縦軸は臀部幅である。グラフは、観察対象となる豚をペンに収容した時点から、毎日決められた時間に計測した臀部幅(mm)をプロットした結果である。観察対象となった豚は、観察した期間において良好な健康状態であった。図示するように、グラフは、多少の揺らぎがあるものの、概ね日齢と共に漸増する曲線を描いている。
【0024】
図4は、豚の日齢と体重の関係を示すグラフである。横軸は日齢であり、縦軸は体重である。グラフは、図3の観察対象と同一の豚について、臀部幅の計測に続いて、体重計に乗せて計測した体重(kg)をプロットした結果である。図示するように、グラフは、図3のグラフと似通った推移を辿り、概ね日齢と共に漸増する曲線を描いている。
【0025】
図5は、臀部幅と体重の関係を示すグラフである。横軸は臀部幅であり、縦軸は体重である。実線のグラフは、図3および図4で観察した豚の実測値をプロットした結果である。点線のグラフは、同様に観察した他の豚の実測値も対象として統計処理した回帰直線である。図示するように、豚の体重は、臀部幅との間に強い相関を有し、臀部幅から体重を精度良く推定できることがわかる。すなわち、同一種類の豚が飼育される場合には、このような臀部幅を推定体重に変換する変換式あるいは変換テーブルを予め実験を通じて作成しておけば、その後の飼育においては、観察対象の豚の臀部幅を計測すればその体重を推定できることがわかる。
【0026】
本実施形態においては、このような性質を利用して、ペンに収容された豚101全体の成長度合を、平均推定体重により評価する。その具体的な手順について説明する。まず、上述のように、給餌容器103へ入れ替わり立ち替わり訪れる豚101の撮像画像をカメラユニット110から逐次取得し、その中から臀部が正対する臀部画像を抽出する。図6は、臀部画像を説明する図である。
【0027】
抽出部231は、カメラユニット110から送られてくる撮像データの撮像画像から尾部付近の領域を切り出した切出し画像を画像処理部240に生成させる。具体的には、画像処理部240は、例えば尾部画像として予め多数用意されたテンプレート画像とマッチング処理を行うことにより、対象画像から尾部の領域を見つけ出す。そして、抽出部231は、見つけ出した尾部の領域とその周囲を予め設定された画像サイズで切り出して切出し画像を生成する。なお、切出し画像の画像サイズは、成長した豚であっても幅方向にその体躯が収まる大きさに設定されている。また、尾部の切出しは、撮像画像を入力とする例えばCNN等の学習済みモデルを用いて切出し画像を生成しても良い。
【0028】
抽出部231は、切出し画像に対してエッジ処理を施すことにより、尾部の中心から左側の体躯境界までのピクセル数DLと右側の体躯境界までのピクセル数DRを計算する。図6(A)の場合は、豚101は斜めを向いているのでDL≠DRであり、臀部が正対していないと判断し、この切出し画像を臀部画像として採用しない。一方、図6(B)の場合は、豚101は正面を向いているのでDL=DRであり、臀部が正対していると判断し、この切出し画像を臀部画像として採用する。換言すれば、尾部が臀部の幅方向の中心に位置する画像を抽出して臀部画像とする。なお、抽出部231は、切出し画像の横幅のピクセル数に応じて設定される許容誤差を考慮してDLとDRが等しいか等しくないかを判断する。
【0029】
このように抽出部231が臀部画像を抽出したら、幅演算部232は、当該臀部画像から豚101の臀部幅を演算する。図7は、臀部幅の演算手法を説明する図である。
【0030】
上述のように尾部の中心位置は抽出部231によって認識されているので、幅演算部232は、当該中心位置から背中側へp0ピクセルの範囲と足元側へp0ピクセルの範囲に挟まれた帯状範囲を、臀部幅を検出する範囲と定める。そして、この帯状範囲の中で水平方向に左側の体躯境界から右側の体躯境界までのピクセル数を順次カウントし、そのカウント数が最大となる水平位置における幅を臀部幅と決定する。すなわち、幅演算部232は、尾部の中心を高さ方向の中心とする予め定められた範囲における最大幅を臀部幅(ピクセル)とする。
【0031】
本実施形態においては、カメラユニット110をペン102内の所定位置へ向けて設置しており、また、当該所定位置で観察される豚101の臀部は、いずれの撮影時においてもカメラユニット110からほぼ一定の距離に位置する。したがって、実際の豚の臀部幅(mm)と臀部画像から決定される臀部幅(ピクセル)は、一対一に対応する。具体的には、カメラユニット110の画角や、想定される豚の臀部までの距離等に応じて換算式が確定する。つまり、臀部画像から決定された臀部幅(ピクセル)は、この確定された換算式により実際の臀部幅(mm)に換算される。そして、図5で説明した変換式あるいは変換テーブルにより推定体重(kg)に変換され得る。
【0032】
本実施形態においては、特定の一頭の豚の体重を推定したいのではなく、ペン102内にいる豚全体の平均体重を推定したい。正確な平均体重を算出するのであれば、一頭一頭の豚の臀部を撮像して臀部幅を演算する必要がある。しかし、本実施形態においては、ペン102での飼育開始時点においていずれの豚も同程度の体格であることを想定しているので、ランダムに規定数以上の豚の臀部幅を演算できれば、集団としての平均体重を簡便に推定することができる。このような考え方に基づいて、評価装置200は、日ごとに規定数以上の臀部幅を演算し集積して、平均推定体重を出力する。具体的にその処理の流れについて説明する。
【0033】
図8は、評価装置200が日ごとに実行する処理を説明するフロー図である。フローは、毎日予め設定された時刻に開始される。
【0034】
演算部230は、ステップS101で、カメラユニット110へ撮像指示信号を送信し、これに呼応してカメラユニット110が撮像した撮像画像の画像データを、通信ユニット270を介して取得する。抽出部231は、取得した画像データから、図6を用いて説明したように、臀部画像が抽出できるか否かを試みる。臀部画像が抽出できなければステップS101へ戻る。臀部画像が抽出できればステップS103へ進む。
【0035】
幅演算部232は、抽出部231から受け取った臀部画像から、図7を用いて説明したように、臀部幅を演算する。そして、その結果をデータ蓄積部250へ記録する。評価部233は、ステップS105で、データ蓄積部250に記録された臀部幅の数が規定数に到達したか否かを確認する。到達していなければステップS101へ戻る。到達していればステップS106へ進む。なお、規定数に達していても、所定時間の間はステップS101へ戻って臀部幅の収集を継続するように構成しても良い。
【0036】
評価部233は、ステップS106で、データ蓄積部250に記録された臀部幅の平均値を算出し、メモリ260から読み出した変換テーブル261を用いて、臀部幅の平均値を推定体重に変換する。そして、その推定体重を、ペン102内に収容された豚101全体の平均推定体重として、表示モニタ220や作業員端末120へ出力する。例えば、表示モニタ220には、「○月○日/ペンNo.○○/平均推定体重○○kg」のように表示される。平均推定体重の出力を終えたら、一連の処理を終了する。
【0037】
なお、日ごとに上記の処理を実行する時間帯は、豚101に餌が与えられる給餌時間帯や、作業員がペン102内で作業する作業時間帯に設定されることが好ましい。給餌時間の間は、ペン102内に収容されている豚101が入れ替わり立ち替わり給餌容器103を訪れるので、ランダムでたくさんの臀部画像を得られる。作業時間の間は、ペン102内に収容されている豚101を動き回らせることになるので、やはりランダムでたくさんの臀部画像を得られるので都合が良い。
【0038】
これまで説明した上記の実施形態においては、評価部233は、ペン102に収容された豚101の全体の成長度合を評価日における平均推定体重として評価した。しかし平均推定体重でなくても、ペン102に収容された豚101の全体の成長度合を評価する手法を考え得る。以下にいくつかの評価手法について説明する。
【0039】
図9は、他の成長評価の手法を説明する図であり、豚の日齢とペン102に収容された豚101の平均臀部幅の関係を示すグラフである。横軸は日齢であり、縦軸は平均臀部幅である。グラフは、観察対象となる豚101をペンに収容した観察開始日から評価日まで、毎日決められた時間に計測した平均臀部幅をプロットした結果である。
【0040】
上述の実施形態のように平均推定体重を出力するためには、同一種類の豚ごとに臀部幅を推定体重に変換する変換式あるいは変換テーブルを予め実験を通じて作成する手間がかかる。そこで、本評価手法においては、この手間を省き、平均臀部幅の増加率により豚101の全体の成長度合を評価する。
【0041】
具体的には、日ごとに規定数以上の臀部幅を演算して集積し、その平均値をその日の平均臀部幅として記録する。そして、評価部233は、その日観察された平均臀部幅が、観察開始日の平均臀部幅に対してどれくらいの割合で増加しているかを計算し、その増加率αを成長度合として出力する。システムオペレータや作業員は、増加率αがどれくらいの値に到達したら出荷時期であるかを経験的に把握しているので、このように評価装置200が増加率αを出力するだけでも、豚101全体の成長度合の評価になり得る。特に、ペン102での飼育開始時点において豚101のそれぞれの体重を計測しておき、評価装置200がこれを取得しておけば、飼育開始時点の総体重と増加率αで成長度合を評価することができる。評価装置200は、例えば現時点の推定体重として、飼育開始時点の総体重に増加率αを乗じた値を出力することができる。なお、飼育開始時点の体重は、評価装置200の入力装置を介して作業員が入力しても良いし、体重計と連動して自動的に取得するように構成しても良い。この場合、入力装置や自動取得インタフェースは、評価装置200において複数の豚の体重を取得する取得部としての機能を担う。
【0042】
図10は、更に他の成長評価の手法を説明する図であり、豚の日齢とペン102に収容された豚101の平均臀部幅の関係を示すグラフである。横軸は日齢であり、縦軸は平均臀部幅である。実線のグラフは、観察対象となる豚101をペンに収容した観察開始日から評価日まで、毎日決められた時間に計測した平均臀部幅をプロットした結果である。点線のグラフは、標準的な平均臀部幅の推移を示す成長曲線である。成長曲線は、例えば同じペン102で過去に飼育された豚の観察結果から計算された平均値をプロットしたものである。
【0043】
評価部233は、評価日において観察された平均臀部幅が、標準的な成長曲線に対してどれくらいの割合で乖離しているかを計算し、その乖離率βを成長度合として出力する。システムオペレータや作業員は、乖離率βがどれくらいの値に収まっていれば順調に成長していると判断できるかを把握しているので、このように評価装置200が乖離率βを出力するだけでも、豚101全体の成長度合の評価になり得る。システムオペレータや作業員は、乖離率βが大きくなったら、原因の究明など適切な処置を取ることができる。なお、図9の例と同様に、飼育開始時点において豚101の総体重が取得できているのであれば、当該飼育開始時点の総体重と乖離率βで成長度合を評価することができる。評価装置200は、例えば乖離率βを飼育開始時点の総体重と日齢によって評価することにより、注意喚起情報を出力することができる。
【0044】
以上説明した本実施形態においては、給餌容器103等を俯瞰する比較的狭い画角Frで撮像するように設定されたカメラユニット110を用いた。また、カメラユニット110は2D画像を出力するので、カメラユニット110から豚の臀部までの距離を一定の距離とするとの前提を設けて、臀部画像から決定される臀部幅(ピクセル)を実際の豚の臀部幅(mm)へ換算した。しかし、カメラユニット110を、距離画像を出力できるカメラユニットとすれば、これらの前提に制約されず、より多くの臀部画像を抽出することも可能である。距離画像を出力するカメラユニットとして、ステレオカメラやTOFカメラなどを採用し得るが、ここでは、ステレオカメラを採用した場合について説明する。
【0045】
図11は、ステレオカメラを内蔵するカメラユニット110’を利用した場合の養豚環境の全体像を示す図である。図11で示す構成は、図1で示す構成に対して、カメラユニット110’がステレオカメラを採用している点と、撮像範囲である画角Frが広くなっている点で異なる。カメラユニット110'は、画角Frが広い分、多くの豚101を一度に撮像することができる。
【0046】
図12は、カメラユニット110’を採用した場合の臀部画像の生成手法を説明する図である。カメラユニット110’で撮像された撮像画像には、多くの豚101が写り込んでいる場合が多い。そこで、抽出部231は、ステレオ画像の一方から臀部が正対する豚101の臀部領域を全て切り出す。具体的には、図6を用いて説明した手法と同様に、尾部が臀部の幅方向の中心に位置する画像領域を切り出して臀部画像とする。このとき、切出し画像の画像サイズは、固定サイズではなく、それぞれの豚の左右の体躯境界が含まれるように個別に調整される。
【0047】
例えば、図示するようにPic1からPic3までの3つの臀部画像が抽出されると、抽出部231は、それぞれに対応する領域をもう一方のステレオ画像から切り出す。そして、対応する2つの臀部画像間のずれ量を用いて、カメラユニット110’からそれぞれの臀部までの距離d1、d2、d3を算出する。
【0048】
幅演算部232は、図7を用いて説明したように一方のステレオ画像から臀部幅を演算し、それぞれの距離を用いて、標準距離d0(例えば1m)に対する臀部幅に修正する。このように修正を施せば、臀部幅を一律に比較検証できる。したがって、評価部233は、標準距離d0を前提として作成されている変換式あるいは変換テーブルを利用して、臀部幅を推定体重に変換することができる。あるいは、増加率αや乖離率βを計算することができる。また、ひとつの撮像画像から多くの臀部画像を抽出し得るので、より短時間に、あるいはより精度良く成長度合を評価することができる。
【符号の説明】
【0049】
101 豚、102 ペン、103 給餌容器、104 給水容器、110、110' カメラユニット、120 作業員端末、200 評価装置、210 サーバ、220 表示モニタ、230 演算部、231 抽出部、232 幅演算部、233 評価部、240 画像処理部、250 データ蓄積部、260 メモリ、261 変換テーブル、270 通信ユニット、900 インターネット
図1
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図12