(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】蛍光体変換器の接合
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20230623BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H01L33/50
G02B5/20
(21)【出願番号】P 2021571912
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(86)【国際出願番号】 EP2020062258
(87)【国際公開番号】W WO2020244857
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-12-03
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500507009
【氏名又は名称】ルミレッズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ベクテル,ハンス-ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ハイデマン,マティーアス
【審査官】淺見 一喜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0122993(US,A1)
【文献】特表2019-537058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0074835(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0044038(US,A1)
【文献】特開2016-100485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
表面がある構成要素;
前記構成要素に接合され、かつ、前記構成要素の表面と向かい合う表面がある、蛍光体変換器本体;かつ
前記構成要素と前記蛍光体変換器本体との間の接合層;
を含む、装置であって、前記接合層は以下の:
前記構成要素の表面と前記蛍光体変換器本体の表面との間にあり、かつ、それらと接触する、複数の粒子;並びに
前記粒子の少なくとも一部、前記構成要素の表面の少なくとも一部、及び前記蛍光体変換器本体の表面の少なくとも一部にあり、かつそれらと接触する無機被覆;
を含み、
前記粒子は少なくとも1つの発光物質を含み、かつ、
前記構成要素の表面と前記蛍光体変換器本体の表面との間の距離が1μm~20μmである、
装置。
【請求項2】
前記粒子のD50のサイズが、0.2μmより大きくかつ20μm未満である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記粒子が、SCASN及び258型蛍光体、SLA型蛍光体、ガーネット蛍光体、及びMn(V)ドープフッ化物からなる群から選択される少なくとも1つの発光物質を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記発光物質が、前記蛍光体変換器本体に含まれる蛍光体と同一材料である、請求項
3に記載の装置。
【請求項5】
前記無機被覆が金属酸化物を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記無機被覆が、Al
2O
3、SiO
2、SnO
2、CrO
2、ZrO
2、HfO
2、Ta
2O
5、TiO
2、ZnO、TiN、TaN、V
2O
5、PtO
2、B
2O
3、CdSのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記無機被覆の厚さは、50nm~500nmである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記蛍光体変換器本体は、セラミックタイルである、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記構成要素が発光ダイオードを含み、上部の表面がGaNである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
以下の:
構成要素の表面上に複数の粒子を堆積させる工程;
前記構成要素の反対側の粒子上に蛍光体変換器本体を配置する工程;かつ
原子層堆積法を用いて、前記構成要素と前記蛍光体変換器本体との間の粒子上に無機被覆を堆積させる工程;
を含む、方法であって、ここで、
前記粒子は少なくとも1つの発光物質を含み、
前記構成要素の表面と前記蛍光体変換器本体の表面との間の距離が1μm~20μmである、
方法。
【請求項11】
前記粒子のD50のサイズが、D50で0.2μmより長く20μm未満である、請求項1
0に記載の方法。
【請求項12】
前記無機被覆の厚さが、50nm~500nmであり、かつ、Al
2O
3、SiO
2、SnO
2、CrO
2、ZrO
2、HfO
2、Ta
2O
5、TiO
2、ZnO、TiN、TaN、V
2O
5、PtO
2、B
2O
3、又はCdSのうちの少なくとも1つを含む、請求項1
0に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子が、SCASN及び258型蛍光体、SLA型蛍光体、ガーネット蛍光体、及びMn(V)ドープフッ化物からなる群から選択される少なくとも1つの発光物質を含む、請求項1
0に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
半導体発光ダイオード及びレーザダイオード(本明細書では「LED」と総称する)は、現在利用可能な最も効率的な光源の一つである。LEDの発光スペクトルは、通常、装置の構造及びLEDが構成される半導体物質の組成によって決定される波長において、単一の狭いピークを示す。装置構造及び物質系を適当に選択することにより、LEDを、紫外線、可視光線、又は赤外線波長で作動するように設計することができる。
【0002】
LEDは、LEDによって発光される光を吸収し、より波長の長い光を発光する1つ以上の波長変換物質(一般に、ここでは「蛍光体」という)と組み合わせることができる。当該蛍光体変換LED(「pcLED」)では、蛍光体によって吸収されるLEDによって発光される光の比率は、LEDによって発光される光の光路中の蛍光物質の量により、例えば、LED上又はその周囲に配置される蛍光層中の蛍光物質の濃度及び層の厚さによる。蛍光体は、LEDによって放射される光の経路に配置されるセラミックタイルに形成されてよい。
【0003】
蛍光体変換されたLEDは、LEDによって放射された光の全てが1つ以上の蛍光体によって吸収されるように設計することができ、その場合、pcLEDからの発光は、完全に蛍光体由来である。このような場合、蛍光体は、例えば、LEDによって直接的かつ効率的に生成されない狭いスペクトル領域の光を放射するように選択することができる。
【0004】
あるいは、pcLEDは、LEDによって発光された光の一部のみが蛍光体によって吸収されるように設計されてもよく、その場合、pcLED由来の発光は、LEDによって発光された光と蛍光体によって発光された光との混合物である。LED、蛍光体、及び蛍光体組成物を適当に選択することで、そのようなpcLEDを、例えば、所望の色温度及び所望の演色特性がある白色光を放射するように設計することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願2018/0122993号明細書
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1a~1cは、蛍光体変換器本体と光源との接合を示す図である。
【
図2】蛍光体変換器本体を光源に接合する方法を示すフロー図である。
【
図3】蛍光体変換器本体を光源に接合する方法の実施形態を示すフロー図である。
【
図4】
図4a~4cは、孔がある蛍光体変換器本体の光源への結合を示す図である。
【
図5】蛍光体粉末の粒子径分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書は、蛍光体変換器を基板又は発光体に接合するのに用いることができる方法、及び接合された蛍光体変換器が取り付けることができる装置を開示する。当該蛍光体変換器は、蛍光体変換器と発光体又は基板との間の粒子の層を無機被覆と組み合わせて導入することによって、発光体又は基板に結合させることができる。
【0008】
本明細書で用いられる空間的に相対的な用語、例えば「下」、「下」、「上」、「上」等は、本明細書では説明を容易にするために用いられ、図面で示されている他の構成要素又は特徴に対する1つの構成要素又は特徴の関係を説明することができる。空間的に相対的な用語は、図面に示されている配向と、使用中又は作動中の装置の異なる配向を包含するように意図されていることが理解されよう。例えば、図中の装置が反転されると、「下」又は「下部」に記載されている他の構成要素又は特徴は、他の構成要素又は特徴の「上」に配向される。従って、例えば、用語「下」は、装置の配向に応じて、上下の両方の配向を包含し得る。装置は、他の方向(90度回転されるか、又は他の方向)であってよく、本明細書で用いられる空間的に相対的な記述子は、そのように解釈されることができる。
【0009】
pcLEDを形成する一つの方法は、蛍光体変換物質を基板又は他の形状に他々に形成して、蛍光体変換器本体を形成することである。次いで、蛍光体変換器本体は、他個に形成されたLEDに取り付けられるか、又は接合される。当該蛍光体変換器本体は、当技術分野で公知であり、以下により詳細に記載されるように、例えば、ルミラミック(Lumiramic(商標))を含む。蛍光体変換器本体は、通常、蛍光体変換器本体をLEDに取り付ける接着剤又はシリコン物質を用いてLED又は基板に接合される。しかしながら、接着剤又はシリコンを用いる場合、欠点が多々あり、結果として得られる装置に問題を生じ、その結果として得られる装置の用途及び使用の機会が限定される。そのような欠点としては、シリコンの褐色化及び/又は亀裂及び/又は剥離による結果として生じる装置の信頼性の制限;パッケージの効率の制限;熱放散の制限(垂下率が高まる);発光スペクトル又は装置を調整する機能の制限;蛍光体のドーズの精度及びLED上の蛍光体変換器板又は蛍光体基板の位置合わせの制限;レオロジーの変化を伴うシリコン硬化工程;及びシリコン由来の溶剤及び硬化剤によるVOCの不適合性があげられる。
【0010】
図1及び
図2は、装置を形成するために、蛍光体変換器本体を構成要素に接合して結合する方法100、200を示す。
【0011】
図1a及び
図2のS210に示すように、粒子110の層を、構成要素120の上面125上に堆積して、粒子110の一部を表面125と接触させる。
【0012】
図1b及び
図2のS220に示すように、蛍光体変換器本体130を粒子110上に配置させて、構成要素120に面する蛍光体変換器本体130の下面135を、粒子110の一部と接触させる。
【0013】
図2の
図1c及びS230に示すように、無機被覆140の薄層が塗布される。無機被覆140の薄層は、粒子110を被覆し、蛍光体変換器本体130と構成要素120との間に複数の接続点のネットワークを形成する。従って、無機被覆140の薄層は、互いに、また隣接する蛍光体変換器本体130及び構成要素120と共に、粒子110を連結する。
【0014】
無機被覆140は、以下により詳細に説明するように、原子層堆積(ALD)を用いて塗布することができ、この場合、アスペクト比の大きい表面又はギャップ上でも、コンフォーマルかつ高品質の被覆を達成することができ、ALDプロセスは、特に、粒子110、構成要素120、及びリン蛍光体変換器本体130の間の空間を無機被覆140で充填するのに適する。
【0015】
場合によっては、無機被覆140のALDを行う前に、構成要素120及び蛍光体変換器本体130の上部及び側部を被覆して、無機被覆140が装置150のこれらの部分を被覆することを防止することができる。あるいは、ALDは、蛍光体変換器130及び構成要素120を被覆せずに行ってよく、必要な場合は、例えば化学エッチング又は機械的研磨を用いて、最終研磨工程を実施して、無機被覆140が必要ない装置150の部分から除去することができる。
【0016】
得られた装置150は、モノリシックな、シリコン非含有装置構造であり、蛍光体変換器本体130は、粒子110及び無機被覆140の中間層によって構成要素120に安定に接合される。さらに、蛍光体変換器本体130の構成要素120への結合は、接着剤又はシリコンを添加せずに、開示された方法を用いて達成することができる。当該装置は、例えば、自動車、一般照明、及び閃光発光装置及びディスプレイに応用できる。特に、当該装置では接着剤やシリコンが分解されないため、耐久性が高く、かつ、接着方法によってさらなる安定性がもたらされるため、装置150は、より高出力の用途に用いることができる。
【0017】
さらに、蛍光体変換器本体130を構成要素120に接合する、本明細書に開示された方法は、製造プロセスを簡素化する。開示された方法を用いると、蛍光体変換器本体130を構成要素120へ他の支持体を用いず接合することが達成され、蛍光体変換器本体130と構成要素120との間にギャップを提供することができるが、これは、粒子110により、他の支持体を用いなくても、無機被覆140の前駆体が、蛍光体変換器本体130と構成要素120との間に流入することができるからである。さらに、蛍光体変換器本体130又は構成要素120の表面に前処理又は粗面化を施さなくても、無機被覆に表面領域がもたらされる。
【0018】
他の実施形態では、
図3に示すように、粒子110は、蛍光体変換器本体130の上部表面上に堆積されることができ(S310)、次いで、構成要素120は、蛍光体変換器本体130と向かい合う構成要素120の下面が、粒子110の一部と接触するように、粒子110上に配置され(S320)、次いで、(S330)互いに、及び隣接する蛍光体変換器本体130及び構成要素120をも連結する無機被覆140の薄層が塗布され、その結果として、蛍光体変換器本体が構成要素120に接合される装置150(
図1)が得られる。
【0019】
他の実施形態では、
図4a~4cに示すように、蛍光体変換器430には、蛍光体変換器430の厚み部分全体にわたって小さな孔439があってよく、これにより、ALD用の前駆体ガスが、蛍光体変換器430と構成要素120との間を流れ、粒子110の層へ流れることができる。この小さな孔439は、例えばレーザーを用いていかなる適当な手段によっても形成することができる。当該孔の直径は、例えば、100nm~100μmであってよい。
【0020】
粒子
粒子110のD50値は、例えば、0.2μmより大きく、かつ20μm未満であってよく、いくつかの実施形態では、粒子110のD50値は、例えば、1μmより大きく、かつ10μm未満であってよい。ここで、Dは粉体粒子の直径を表し、D50は累積直径が50%となる点(又は50%の粒子が通過するサイズ)を意味し、平均粒子サイズ又は中央径といってよい。
【0021】
粒子のD50値は、粉末粒子物質の供給者によって提供されるか、又は測定されてよい。例えば、
図5は、堀場製作所製のPA-950レーザー粒子径分析器を用いて分析したガーネット蛍光体粉末の0.01μm~3000μmの測定範囲で測定した粒子径分布を示す。測定原理は広い角度範囲の散乱光パターンの測定に基づく。散乱光のこの分布は、当業者によって理解されるように、メイ理論を用いた粒度分布の計算に用いられる。
図4に示すデータでは、D(v,0.1)=3.10017(μm)、D(v,0.5)、すなわちD50、=5.26114(μm)、及びD(v,0.9)=8.17130(μm)である。ここで、D(v,x.x)は、分布の10%、50%及び90%の累積粒子体積に対する粒子サイズを定義する。構成要素120が光出力カップリングを可能にする光源である場合、粒子110の粒子サイズを、光の散乱を促進するように選択することができる。
【0022】
粒子110の層は、蛍光体粒子及び/又はボイドの複数の層を含むのに十分な厚さであってよい。しかし、この層は、変換器機能全体を満たすほどは厚くはない。装置150内の構成要素120の上部表面125と蛍光体変換器本体130の下部表面135との間の距離D(
図1c)は、例えば、100nm~5μmの範囲であってよい。(以下に記載されるように)発光物質から形成される粒子110の場合、厚さDは、1μm~20μmの範囲であってよい。
【0023】
粒子110は、沈降、電気泳動堆積(EPD)、電気ステンシル化、静電粉塵処理、揮発性媒体への分配等のいかなる適用可能な技術を用いて、構成要素120上に堆積されることができる。
【0024】
粒子110を、蛍光体変換器本体130で用いられる物質の屈折率に近い、又はそれに一致する物質から作製して、光の透過を容易にすることができる。
【0025】
粒子110は、非発光物質から作製することができ、かつ、非吸収性又はほぼ吸収性の金属酸化物物質であってよく、構成要素120からの結合効率及び熱伝導率を高めるための散乱層として機能することができる。
【0026】
当該粒子を形成するために用いられる物質の例としては、Al2O3、SiO2、MgO2、SnO2、TiO2、及びZnO2が挙げられる。
【0027】
粒子110は、発光物質で作製することができる。例えば、粒子110は、蛍光体変換器本体130で用いられるのと同じ蛍光物質から作製することができる。
【0028】
蛍光体変換器本体130に用いられる発光物質から作られる場合、すなわち、粒子110の層は、変換器機能を備えないよう十分に小さく維持されてよい(すなわち、Dの値は十分に低い)。
【0029】
粒子110は、蛍光体変換器本体内の物質とは異なる発光物質で作製することができる。例えば、粒子110は、蛍光体変換器本体130を形成するのに用いられる蛍光物質と比較して、赤方偏移変換(より長い波長)を示す物質であってよい。粒子100由来の変換された光は、蛍光体変換器本体130に吸収されない。蛍光体変換器本体と粒子110内物質が異なる組み合わせの場合、広範な発光スペクトルを修正できる。
【0030】
粒子110に用いられてよい発光物質としては、以下に記載されるように、SCASN及び258型蛍光体、SLA型蛍光体、ガーネット蛍光体、及びMn(V)ドープフッ化物があげられる。
【0031】
SCASN及び258型蛍光体:
(Ba、Sr、Ca)AlSiN3:Eu及び(Ba、Sr、Ca)2Si5-xAlxOxN8-x:Eu:
これらの化合物では、ユウロピウム(Eu)は実質的に又は二価のみであり、示された二価カチオンの1つ以上を置換する。
【0032】
一般に、Euは、カチオンの10%を超える量、それが置換するカチオンに対して、特に約0.5~10%の範囲、より特に、約0.5~5%の範囲では存在しない。用語「Eu」又は「Eu2+」は、金属イオンの一部がEu(これらの例ではEu2+)で置換されていることを示す。例えば、CaAlSiN3:EuにおけるEuを2%と仮定すると、正しい式は(Ca0.98Eu0.02)AlSiN3であり得る。二価のユウロピウムは、一般に、上記の二価のアルカリ土類カチオン、特にCa、Sr又はBa等の二価のカチオンに置換される。
【0033】
さらに、物質(BaSrCa)2Si5-xAlxOxN8-x:Euはまた、Mがバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択される1つ以上の元素であるM2Si5-xAlxOxN8-x:Euとして示されることができ、特に、Mはこの化合物においてSr及び/又はBaを含む。さらなる具体的な実施形態では、Mは、Sr及び/又はBa(Euの存在を考慮しない)、特に50~100%、特に50~90%のBa及び50~0%、特に50~10%のSr、例えばBa1.5Sr0.5Si5N8:Eu(すなわち、75%のBa;25%のSr)からなる。ここで、Euが導入され、Mの少なくとも一部、すなわち、Ba、Sr、及びCaの1つ以上を置換する。同様に、物質(Sr、Ca、Mg)AlSiN3Euは、Mがマグネシウム(Mg)ストロンチウム(Sr)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択される1つ以上の元素であるMAlSiN3Eu5としても示すことができ、特に、Mはこの化合物中にカルシウムもしくはストロンチウム、又はカルシウム、特に、カルシウムを含む。ここで、Euは、Mの少なくとも一部(すなわち、Mg、Sr、及びCaの1つ以上)を導入され、置換する。好ましくは、実施形態では、第1の赤色発光物質は、(Ca、Sr、Mg)AlSiN3:Eu、好ましくはCaAlSiN3:Euを含む。さらに、前者と組み合わせることができる他の実施形態では、第1の赤色発光物質は、(Ca、Sr、Ba)2Si5-xAlxOxN8-x:Eu、好ましくは(Sr、Ba)2Si5N8:Euを含む。用語「(Ca、Sr、Ba)」は、対応するカチオンがカルシウム、ストロンチウム、又はバリウムによって占有され得ることを示す。また、このことは、当該物質において、カチオンに対応する部位がカルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択されるカチオンで占有されている可能性があることを示す。従って、当該物質は、例えば、カルシウム及びストロンチウム、又はストロンチウムのみを含む場合がある。
【0034】
SLA型蛍光体:
M1-x-y-zZzAaBbCcDdEeN4-nOn:ESx、REyM=二価のMg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Zn(亜鉛)、及びZn(亜鉛)からなる群より選択され;Zは一価のNa(ナトリウム)、K(カリウム)及びRb(ルビジウム)からなる群より選択され;Aは、二価のMg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Zn(亜鉛)及びCd(カドミウム)からなる群より選択され、(さらにAは、特に二価のMg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、及びZn(亜鉛)からなる群より選択され、さらにより特に、二価のMg(マグネシウム)、Mn(マンガン)からなる群より選択され);B=三価のB(ホウ素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)からなる群より選択され、C=四価のSi(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、Ti(チタン)及びHf(ハフニウム)からなる群より選択され;Dは、一価のLi(リチウム)及びCu(銅)からなる群より選択され;Eは、P(元素蛍光体)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)及びTa(タンタル)からなる群より選択され;ESは、二価Eu(ユウロピウム)、Sm(サマリウム)及びイッテルビウムからなる群より選択され、特に、二価Eu及びSmからなる群より選択され;RE=は、三価のCe(セリウム)、Pr(プラセオジウム)、Nd(ネオジム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)及びTm(ツリウム)からなる群より選択され;0≦x≦0.2;0≦y≦0.2;0<x+y≦0.4;0≦z<1;0≦n≦0.5;0≦a≦4(例えば、2≦a≦3等)、0≦b≦4、0≦c≦4;0≦d≦4;0≦e≦4;a+b+c+d+e=4;及び2a+3b+4c+d+5e=10-y-n+zである。特に、z≦0.9、例えばz≦0.5である。さらに、特にx+y+z≦0.2である。
【0035】
式a+b+c+d+e=4;及び2a+3b+4c+d+5e=10-y-n+zは、特に格子中のZ、A、B、C、D及びEカチオンならびにO及びNアニオンを決定し、それによって系の電荷中性を定義する。例えば、電荷補償は、式2a+3b+4c+d+5e=10-y-n+zでカバーされる。例えば、O含有量を減らすことによる電荷補償、あるいはCをBカチオンで、又はBカチオンをAカチオンで置換することによる電荷補償等をカバーする。例えば、x=0.01、y=0.02、n=0、a=3;次に6+3b+4c=10-0.02;a+b+c=4;b=0.02及びc=0.98である。
【0036】
当業者にとって明らかなように、a、b、c、d、e、n、x、y、zは常にゼロ以上である。aがa+b+c+d+e=4;及び2a+3b+4c+d+5e=10-y-n+zと組み合わせて定義される場合、原則としてb、c、d、eを定義する必要はない。ただし、完全性のため、0≦b≦4;0≦c≦4;0≦d≦4;0≦e≦4と定義される。
【0037】
SrMg2Ga2N4:Eu等の系を仮定するとしよう。ここで、a=2、b=2、c=d=e=y=z=0である。当該システムでは、2+2+0+0+0=4及び2*2+3*2+0+0+0=10-0-0+0=10である。従って、両方の方程式を満たすことができる。0.5Oが導入されると仮定するとしよう。例えば、0.5Ga-Nを0.5Mg-O(電荷中立置換)に置換すると、0.5Oの系が得られる。この結果、SrMg2.5Ga1.5N3.5O0.5:Euとなる。ここで、当該システムでは、2.5+1.5+0+0+0=4及び2*2.5+3*1.5+0+0+0=10-0-0.5+0=9.5である。したがって、ここでも両方の方程式に従っていることになる。
【0038】
上記のように、有利な実施形態では、d>0及び/又はz>0、特に少なくともd>0である。特に、蛍光体は、少なくともリチウムを含む。
【0039】
さらに他の実施形態では、2≦a≦3ポンド、特にd=0、e=0及びz=0である。この場合、蛍光体は、とりわけ、a+b+c=4;及び2a+3b+4c=10-y-nによって特徴付けられる。
【0040】
さらなる特定の実施形態では、上記の実施形態でe=0と組み合わせることができる。上記の実施形態と組み合わせることができるさらなる特定の実施形態では、MはCa及び/又はSrである。
【0041】
したがって、特定の実施形態では、蛍光体には、以下の式M(Ca及び/又はSr)1-x-yMgaAlbSicN4-nOn:ESx、REy(I)があり、ES=は、二価のEu(ユウロピウム)又はSm(サマリウム)又はYb(イッテルビウム)からなる群から選択され、RE=は、三価のCe(セリウム)、Pr(プラセオジウム)、Nd(ネオジム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、及びTm(ツリウム)からなる群から選択され、ここで、y/x<0.1、特に<0.01、n≦0.1、特に<0.01、さらに特に<0.001、さらに特に<0.0001である。したがって、この実施形態では、実質的にサマリウム及び/又はユウロピウムを含有する蛍光体が記載される。例えば、二価のEuが存在する場合、x=0.05であり、例えば、Prのy1は0.001であり、Tbのy2は0.001であり、y=y1+y2=0.002となる。この場合、y/x=0.04となる。さらに詳細には、y=0である。しかし、Eu及びCeを適用した場合、他の箇所で示されているように、y/x比は、0.1よりも大きくてよい。
【0042】
条件0<x+y≦0.4は、ES及び/又はREの合計でMを40%まで置換することができることを示している。xとyが0から0.2の間にある条件「0<x+y≦0.4」は、ESとREの少なくとも1つが存在することを示す。必ずしも両方が存在するわけではない。上記のように、ES及びREは各々、Sm及びEuの1つ以上を参照するES等の1つ以上の亜種を個別に参照することができ、また、REは、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びTmの1つ以上を参照することができる。
【0043】
特に、ユウロピウムが二価の発光種又はドーパントとして適用される場合、サマリウムとユウロピウム(Sm/Eu)のモル比率は、<0.1、特に<0.01、特に<0.001である。
【0044】
ユウロピウムとイッテルビウムを併用する場合も同様である。ユウロピウムを二価の発光種又はドーパントとして適用した場合、イッテルビウムとユウロピウム(Yb/Eu)のモル比率は<0.1、特に<0.01、特に<0.001である。3つすべてをともに適用すると、同じモル比率、すなわち、((Sm+Yb)/Eu)は<0.1、特に<0.01、特に<0.001、が適用される場合がある。
【0045】
特に、xは、0.002~0.2のように、0.005~0.1、特に0.005~0.08等の、0.001~0.2(すなわち、0.001~0.2)の範囲である。特に、本明細書に記載された系の二価のユウロピウムの場合、モル比率は、0.5~2%のように、0.2~5%のように、0.1~5%(0.001≦x≦0.05)の範囲であってよい。他の発光イオンについては、実施形態では、xは、1%以上と等しい(xは、0.01以上)であってよい(ただし、必ずしもそうではない)。
【0046】
特定の実施形態では、蛍光体は、(Sr,Ca)Mg3SiN4:Eu、(Sr,Ca)Mg2Al2N4:Eu、(Sr,Ca)LiAl3N4:Eu、(Sr,Ca)LiAl3N4:Eu、及び(Sr,Ca)LidMgaAlbN4:Eu(ここでa、b、dは上記定義のとおりである)からなる群から選択される。
【0047】
また、本明細書に示されているように、「(Sr,Ca)」の表記及び他の要素との類似の表記は、M-位置がSr及び/又はCaカチオン(又は他の各要素)で占有されていることを示す。
【0048】
さらなる特定の実施例では、蛍光体はBa.95Sr.05Mg2Ga2N4:Eu、BaMg2Ga2N4:Eu、SrMg3SiN4:Eu、SrMg2Al2N4:Eu、SrMg2Ga2N4:Eu、BaMg3SiN4:Eu、CaLiAl3N4:Eu、SrLiAl3N4:Eu、CaLi0.5MgAl2.5N4:Eu、及びSrLi0.5MgAl2.5N4:Euからなる群から選択される。
【0049】
そのような蛍光体のさらなる(非限定的な)例は、例えば、(Sr0.8Ca0.2)0.995LiAl2.91Mg0.09N3.91O0.09:Eu0.005;(Sr0.9Ca0.1)0.905Na0.09LiAl3N3.91O0.09:Eu0.005;(Sr0.8Ca0.03Ba0.17)0.989LiAl2.99Mg0.01N4:Ce0.01,Eu0.001;Ca0.995LiAl2.995Mg0.005N3.995O0.005:Yb0.005(YB(II));Na0.995MgAl3N4:Eu0.005;Na0.895Ca0.1Mg0.9Li0.1Al3N4:Eu0.005;Sr0.99LiMgAlSiN4:Eu0.01;Ca0.995LiAl2.955Mg0.045N3.96O0.04:Ce0.005;(Sr0.9Ca0.1)0.998Al1.99Mg2.01N3.99O0.01:Eu0.002;(Sr0.9Ba0.1)0.998Al1.99Mg2.01N3.99O0.01:Eu0.002である。
【0050】
さらなる具体的な実施形態では、蛍光体は、(Sr,Ca)Mg3SiN4:Eu及び(Sr,Ca)Mg2Al2N4:Euからなる群から選択される。さらに他の特定の実施形態では、蛍光体は、Ba0.95Sr0.05Mg2Ga2N4:Eu、BaMg2Ga2N4:Eu、SrMg3SiN4:Eu、SrMg2Al2N4:Eu、SrMg2Ga2N4:Eu、及びBaMg3SiN4:Euからなる群から選択される。特に、これらの蛍光体、特に(Sr,Ca)Mg3SiN4:Eu及び(Sr,Ca)Mg2Al2N4:Euは、特に、発光のスペクトル位置及び分布に関して発光特性が良好な蛍光体でありうる。
【0051】
特に興味深いのは、蛍光体であって、当該蛍光体は、0≦x≦0.2、y/x<0.1を満たし、Mが少なくともSr、z≦0.1、a≦0.4、2.5≦b≦3.5を含み、Bが少なくともAl、c≦0.4、0.5≦d≦1.5を含み、Dが少なくともLi、e≦0.4、n≦0.1を含み、ESが少なくともEuを含む蛍光体である。
【0052】
特に、y+z≦0.1である。さらに、特にx+y+z≦0.2である。さらに、特にaは0又はゼロに近似する。さらに、bは約3である。さらに、特にcは0又はゼロに近似する。さらに、dは約1である。さらに、特にeは0又はゼロに近似する。さらに、特にnは0又はゼロに近似する。さらに、特にyは0又はゼロに近似する。
【0053】
特に、量子効率及び加水分解安定性に関して良好な系は、z+d>0の系であり、すなわち、Na、K、Rb、Li及びCu(I)の1つ以上が利用可能であり、特に、上記で定義したa、b、dを備える少なくともLi、例えば、(Sr,Ca)LiAl3N4:Eu及び(Sr,Ca)LidMgaAlbN4:Euが利用可能である。さらなる具体的な実施形態では、蛍光体は、CaLiAl3N4:Eu、SrLiAl3N4:Eu、CaLi0.5MgAl2.5N4:Eu、及びSrLi0.5MgAl2.5N4:Euからなる群から選択される。
【0054】
さらに、(Sr,Ca,Ba)(Li,Cu)(Al,B,Ga)3N4:Euは、Mイオンとして少なくともSr、Bイオンとして少なくともAl、及びDイオンとして少なくともLiを含む。
【0055】
ガーネット蛍光体:
AがSc、Y、Tb、Gd、及びLuからなる群より選択され、かつ、BがAl及びGaからなる群より選択されるA3B5O12:Ce3+である。好ましくは、Mは少なくとも1以上のY及びLuを含み、かつBは少なくともAlを含む。これらの物質の効率は最も優れてよい。特定の実施形態では、第2の発光物質は、A3B5O12:Ce3+の系の少なくとも2つの発光物質を含み、ここで、Aは、Y及びLuからなる群から選択され、Bは、Alからなる群から選択され、Y:Lu比は、少なくとも2つの発光物質について異なる。例えば、それらのうちの1つは、Y3Al5O12:Ce3+等のYに純粋に基づいていてよく、それらのうちの1つは、(Y0.5Lu0.5)3Al5O12:Ce3+等のY,Luに基づく系であってよい。ガーネットの実施形態としては、特にA3B5O12ガーネットがあげられ、ここで、Aは少なくともイットリウム又はルテチウムを含み、Bは少なくともアルミニウムを含む。当該ガーネットは、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、又はセリウムとプラセオジウムと併用されてドープされてよいが、特にCeでドープされてよい。Bはアルミニウム(Al)を含んでよいが、Bは部分的にガリウム(Ga)及び/又はスカンジウム(Sc)及び/又はインジウム(In)を含んでよく、特にAlの約20%、特に約10%までのAl(すなわち、Bイオンは、実質的には、Alの90以上のモル%及びGa、Sc及びInの1つ又は複数のモル%の10以下のモル%からなる)を含んでよく、Bは、特にガリウムを約10%以下含んでよい。他の変形では、B及びOは、少なくとも部分的にSi及びNで置換されてよい。元素Aは、特に、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)及びルテチウム(Lu)からなる群から選択されてよい。さらに、Gd及び/又はTbは、特に、Aの約20%までのみ存在する。特定の実施形態では、ガーネット発光物質は、(Y1-xLux)3Al5O12:Ceを含み、xは、0以上、1以下である。用語「:Ce」又は「:Ce3+」(又は類似の用語)は、発光物質中の金属イオンの一部(すなわち、ガーネット中の「M」イオンの一部)が、Ce(又は、用語(複数可)が「:Yb」のように、他の発光種)に置換することを示す。例えば、(Y1-xLux)3Al5O12:Ceと仮定すると、Y及び/又はLuの一部がCeに置換される。この表記は、当業者には公知である。CeはMの代わりに10%以下であり、Ce濃度は0.1~4%、特に0.1~2%(M比)であり、1%Ceと10%Yを仮定すると、(Y0.1Lu0.89Ce0.01)3Al5O12となる。ガーネット中のCeは、当業者に知られているように、実質的に又は単に3価の状態である。
【0056】
Mn(IV)ドープフッ化物:
赤色発光物質は、Mn4+(すなわち、A位置)でドープされたM2AX6系であり、Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、NH4(特に少なくともカリウム(K)を含む)からなる群より選択される一価のカチオンを含み、Aは、Si、Ti、Ge、Sn、及びZrからなる群より選択される四価のカチオンを含み、特に少なくともシリコン(Si)を含み、Xは、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択される一価のアニオンを含むが、少なくともFを含む。一例を挙げると、Mが少なくともKを含む場合、これは、種又は一価カチオンM(又はMのホスト格子位置)がKの>0%を100%まで含む実施形態を意味してよい。したがって、例えば、(K0.01Rb0.99)SiF6:Mn、RbKSiF6:Mn、及びK2SiF6:Mn等の実施形態が含まれる。
【0057】
当技術分野で知られているように、記載「Mn4+でドープされたM2AX6」は、M2AX6:Mn4+としても示すことができる。ここで、用語「:Mn」又は「:Mn4+」は、四価Aイオンの一部が四価Mnで置換されていることを示す。用語「四価マンガン」は、Mn4+を意味する。これはよく知られた発光イオンである。上記の式では、四価カチオンA(Si等)の一部がマンガンに置換されている。したがって、四価マンガンをドープしたM’xM2-2xAX6も、M’xM2-2xA1-μmnmX6として示されてよい。マンガンのモル比率、すなわち四価カチオンAを置換する比率は、一般に0.1~15%、特に1~12%、すなわちmは0.001~0.15、特に0.01~0.12の範囲である。
【0058】
Aは四価カチオンを含み、特に少なくともシリコンを含む。Aは、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)の1つ以上を、場合によっては、さらに含んでよい。好ましくは、少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、例えばMの少なくとも95%はシリコンからなる。したがって、特定の実施形態では、M2AX6は、M2A1-m-t-s-zrMnmTitGegSnsZrzrX6と記載することもでき、ここで、mは上記の通りであり、t,s,zrは各々、好ましくは0~0.2、特に0~0.1、さらに特に0~0.05の範囲であり、t+g+s+zrは1未満、特に0.2以下、好ましくは0~0.2、特に0~0.1、さらに特に0~0.05であり、Aは特にSiである。
【0059】
上記のように、Mは一価カチオンに関するが、特に少なくとも1つ以上のカリウム及びルビジウムを含む。Mによってさらに構成されうる他の一価カチオンは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、セシウム(Cs)及びアンモニウム(NH+4)からなる群から選択することができる。好ましくは、少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、例えばMの95%は、1つ以上のカリウム及びルビジウムを含む。具体的な実施形態では、M2AX6も記載することができ(K1-r-l-n-c-nhRbrLilNanCsc(NH4)nh)2AX6であって、ここで、rは0~0.8の範囲であり(ここで、カリウム-ルビジウムの比は好ましくは上記の通り)、ここで、l、n、c、nhは各々、好ましくは0~0.2の範囲であり、特に0~0.1の範囲であり、さらに特に0~0.05の範囲であり、l+n+c+nhは1より小さく、特に0.2以下、好ましくは0~0.2の範囲であり、さらに特に0~0.1の範囲である。従って、本発明はまた、(K1-r-l-n-c-nhRbrLilNanCsc(NH4)nh)2AX6:Mn及び類似の狭バッド発光物質を提供する。
【0060】
上記のように、Xは一価のアニオンに関するが、少なくともフッ素を含む。場合によっては、存在し得る他の一価アニオンは、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択されてよい。好ましくは、少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、例えば、95%のXはフッ素からなる。従って、特定の実施形態では、M2AX6は、M2A(F1-cl-b-iClclBrbIi)6とも記載することができ、ここで、cl,b,iは各々、好ましくは、0~0.2、特に0~0.1、さらに特に0~0.05の範囲であり、cl+b+iは、1未満、特に0.2以下、好ましくは、0~0.2、特に0~0.1以下、さらにより具体的には0~0.05である。
【0061】
従って、M2AX6は、(K1-r-l-n-c-nhRbrLilNanCsc(NH4)nh)2Si1-m-t-g-s-zrMnmTitGegSnsZrzr(F1-cl-b-iClclBrbIi)6とも記載することができ、r、l、n、c、nh、m、t、g、s、zr、cl、b、iの値は上記の通りである。従って、本発明はまた、(K1-r-l-n-c-nhRbrLilNanCsc(NH4)nh)2Si1-m-t-gs-zrMnmTitGegSnsZrzr(F1-cl-b-iClclBrbIi)6:Mn及び同様の類似の狭バッド発光物質を提供する。しかしながら、赤色光の第2の源は、特に、K2SiF6:Mnを含む前記第2の赤色発光物質を含む。
【0062】
マンガンはホスト格子イオンの一部を置換し、特定の機能を発揮するため、「ドーパント」又は「アクチベーター」としても示される。従って、ヘキサフルオロケイ酸塩はマンガン(Mn4+)でドープ又は活性化される。
【0063】
無機被覆
無機被覆140は、原子層堆積によって堆積されてよい。ALDはパルス化学気相成長(CVD)プロセスであり、サイクル当たり1原子層の物質を適用することで薄層が成長できる。当該プロセスは自己制限的であり、
図1cに示すように、粒子上の被覆であっても極めて制御されコンフォーマルになる。
【0064】
ALD反応は(少なくとも)2つの部分からなる。第1段階では、金属(酸化物)前駆体が反応器に供給され、表面上の反応基と吸着及び/又は反応し、次いで実質的に全ての未反応又は吸着前駆体分子が反応器パージによって除去される。第2段階では、酸素源が反応器に供給され、粒子表面上の金属源と反応し、続いて反応器をパージして実質的に全ての残存する酸素源分子及び縮合反応によって形成された加水分解生成物を除去する。トリメチアルミニウム(TMA)を用いてAl
2O
3を形成する、典型的な2つの部分ALD反応を
図6に示す。
【0065】
この二つの段階は、表面反応の自己制限的な性質のために原子層(あるいは単分子層)を形成する。これらの反応原子層工程を複数回繰り返して、最終ALD被覆が形成される。
【0066】
ALDの反応は自己終結的であるため、この技術では、原子層が完成するまで、他の領域に第二の原子層を作らずに待つことができる。従って、ALDは、アスペクト比が大きい表面又はギャップにおいても、被覆をコンフォーマルかつ高品質することができる技術であり、このプロセスは、特に、粒子100、構成要素120及び蛍光体変換器130の間の空間を覆う無機被覆140を堆積するのに適する。
【0067】
ALDは、低温(50℃~350℃)で行うことができ、従って、例えば、シリコン等のLED物質を含む様々な物質と適合性がある。通常のパージ時間は、2秒~60秒の範囲である。
【0068】
用語「金属酸化物前駆体」は、特に、金属酸化物の前駆体を示す。前駆体自体は金属酸化物でなくてよいが、例えば金属有機分子を含んでよい。従って、ALD用の金属(酸化物)前駆体としては、通常、金属ハロゲン化物、アルコキシド、アミド、及び他の金属(有機)化合物があげられる。
【0069】
無機被覆140は、Al2O3であってよい。Al2O3層は、水、オゾン、又は酸素源と組み合わせたAl(CH3)3(TMA)、AlCl3、又はHAl(CH3)2前駆体を用いて堆積することができる。ALDを用いたAl2O3被覆の形成に関するさらなる詳細は、Dillon、Ott、Way、及びGeorge、Surface Science、322(1995)230-242に記載されている。
【0070】
さらなる実施形態では、無機被覆140は、当業者によって理解される前駆体及び方法を有するALDを用いて、SiO2、SnO2、CrO2、ZrO2、HfO2、Ta2O5、TiO2、ZnO、TiN、TaN、V2O5、PtO2、B2O3、CdS等の他の物質と共に形成され得る。無機被覆140は、多層構造を形成することによって、金属酸化物物質を組み合わせて形成することができる。
【0071】
蛍光体変換器本体
蛍光体変換器130は、蛍光体を含むいかなる自己支持体であってよい。例えば、蛍光体変換器本体130は、ガラス又はシリコーンマトリックス中に含まれ、プレート、小板又は他の形状に形成された蛍光体であってよい。蛍光体変換器本体130は、セラミックタイル又はプレートであるルミラミック(商標)であってよい。当該セラミックタイルは、粉末プレス/圧密後の焼結及びダイシング、粉砕又は研磨等の機械的処理の工程を含むセラミック処理によって製造される自立型多結晶物質である。焼結工程は、セラミック蛍光体粒子をともに融合し、多結晶体又はセラミックタイルを形成する。その全体が参照により本明細書に援用される特許文献1には、さらに、蛍光体変換器本体130として用いられうる様々なルミラミック(商標)が記載されている。
【0072】
構成要素
構成要素120は、基板、例えば、透明ガラス、サファイア又はシリコン基板、又は反射性基板であってよく、当該基板に結合された蛍光体変換器本体130を用いて、他の装置を形成することができる。
【0073】
構成要素120は、光源、例えば、発光ダイオードであってよい。構成要素120が発光ダイオード等の光源である装置150では、光源によって放射された光は、蛍光体変換器本体130内の蛍光体によって吸収され、異なる波長で装置から放射される。
【0074】
構成要素120は、青色又はUV光を放射するIII族窒化物LED等の発光ダイオードであってよいが、LED以外の半導体発光装置、例えば、レーザダイオード、及び他のIII-V物質、III-リン化物、III-ヒ素化物、II-VI物質、ZnO、又はSi系物質等の他の物質系から作製された半導体発光装置を用いてよい。
【0075】
そのような発光ダイオードは、種々の基板、例えば、サファイア、SiC、Si、GaN、又は複合基板上に形成することができ、その基板は、粒子が堆積される構成要素120の表面125である(
図1a)。
【実施例】
【0076】
この方法は、一般に、異なるエミッタ構造アーキテクチャに適用できるが、セラミックカバープレート(ルミラミック(商標))をGaN又はサファイア基板に接合する場合特に有用である。一実施形態では、ルミラミック(商標)タイルを、GaN層表面を備えるLEDに接合した。D50値が1μmであるAl2O3の粒子を、堆積を用いてLED格子上に堆積した。粒子層の厚さは約3μmであった。乾燥後、YAGで形成したルミラミック(商標)タイルを粒子層上に配置した。
【0077】
次に、Al2O3被覆をPicosun Oy ALD反応器に適用した。前駆体物質はトリメチアルミニウム(STREM、製品番号93-1369)とH2OでAl2O3膜を作製した。堆積温度は150℃に設定し、前駆体を導入したパルス時間は100ms、窒素ガスによるパージは30秒、気相水によるパルスは100ms、窒素ガスによるパージは30秒であった。すべての前駆体のパルス後に、粒子、ルミラミック(商標)、及びLED表面と反応させる時間である。このサイクルを繰り返して、膜厚が50~500nmのAl2O3無機被覆を形成させた。