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特許7301187斑紋あり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ品種の育成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】斑紋あり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ品種の育成方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20230623BHJP
   A01G 17/00 20060101ALI20230623BHJP
   A01G 2/30 20180101ALI20230623BHJP
【FI】
A01G7/00 601Z
A01G17/00
A01G2/30
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022043326
(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公開番号】P2023020859
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】202110865008.4
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522110083
【氏名又は名称】▲楊▼▲鳳▼考
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【弁理士】
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲鳳▼考
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-176633(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105123281(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101790940(CN,A)
【文献】Joelle Chat,Cold Hardiness within the Genus Actinidia,HortScience,1995年,Vol.30 Issue2,p.329-332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 17/00
A01G 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斑紋あり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ品種の育成方法であって、
冬の0℃~-13℃の低温がいつも3ヶ月以上続く、標高が1800~2100メートルの高寒地域に雲南産の毛なしのキウイフルーツを人工的に選択して栽培して繁殖し、低温変異誘発及び育種を行う第1のステップ1)と、
いつも3ヶ月以上続く冬の0℃~-13℃の低温下での、キウイフルーツの1年目の成長状況に対する観察を通じて、キウイフルーツ樹の樹勢、耐病性、耐寒性、かいよう病耐性、及び果実の外観を観察し、0℃~-13℃の低温下で凍結され、成長が悪く、寒さに耐えず、かいよう病に感染した株を人工的に除去し、樹勢が旺盛で、凍結されず、かいよう病のない株を残す第2のステップ2)と、
第2のステップにおいて選択した雲南産の毛なしのキウイフルーツの地上の一部の枝を3年連続して、上記冬の0℃~-13℃で変異誘発し、低温で突然変異した枝を選択し、これらの枝における果実の果皮、大きさ、一致度、模様を観察し、果実の大きさが一致し、果皮に毛がなく、枝がきちんと成長し、果実が徐々に成熟するとき、斑紋が徐々についた枝を接ぎ木のために選択する第3のステップ3)と、
選択した、果実の大きさが一致し、果皮に毛がなく、枝がきちんと成長し、果実が成熟するとき斑紋が徐々についた枝における果実の甘酸っぱさ、風味、重さ、香りを2~3年間観察する第4のステップ4)と、
キウイフルーツ樹の樹勢が旺盛で、寒さに耐え、かいよう病に耐え、果皮に斑紋があり、風味が独特で、重さと果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ枝を残して接ぎ木繁殖を行う第5のステップ5)と、を含む、ことを特徴とする斑紋あり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ品種の育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キウイフルーツ育成の技術分野に関し、具体的には、皮に斑紋あり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ品種の育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キウイフルーツは、陽桃、毛桃、山洋桃、毛梨桃などとも呼ばれ、中国原産の古い野生つる果樹である。従来のキウイフルーツは、耐寒性が弱く、耐湿性が弱く、糖分含有量が大きく、高齢者や糖尿病人には向いていない。従って、寒さに耐え、糖分含有量が低く、高齢者や糖尿病人に適したキウイフルーツ品種を育成する必要があり、晩生性により、キウイフルーツの大量販売による果物の滞留を避けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記存在する技術的欠陥に対して、本発明は、斑紋あり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強いキウイフルーツ品種の育成方法を提供することを目的とし、前記キウイフルーツ品種は、雲南産の毛なしのキウイフルーツに対して低温変異誘発を行い、芽条突然変異に対して人工育種を行い、そして、実生選択育成して得られたものであり、皮に斑紋があり、美しく、観賞性が高く、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強く、成熟が遅い。
【0004】
上記技術課題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決手段を用いる。
【0005】
斑紋あり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ品種の育成方法であって、
冬の0℃~-13℃の低温がいつも3ヶ月以上続く、標高が1800~2100メートルの高寒地域に雲南産の毛なしのキウイフルーツを人工的に選択して栽培して繁殖し、低温変異誘発及び育種を行う第1のステップ1)と、
いつも3ヶ月以上続く冬の0℃~-13℃の低温下での、キウイフルーツの1年目の成長状況に対する観察を通じて、キウイフルーツ樹の樹勢、耐病性、耐寒性、かいよう病耐性、及び果実の外観を観察し、0℃~-13℃の低温下で凍結され、成長が悪く、寒さに耐えず、かいよう病に感染した株を人工的に除去し、樹勢が旺盛で、凍結されず、かいよう病のない株を残す第2のステップ2)と、
第2のステップにおいて選択した雲南産の毛なしのキウイフルーツの地上の一部の枝を3年連続して0℃~-13℃の低温で変異誘発し、低温で突然変異した枝を選択し、これらの枝における果実の果皮、大きさ、一致度、模様を観察し、果実の大きさが一致し、果皮に毛がなく、枝がきちんと成長し、果実が徐々に成熟するとき、斑紋が徐々についた枝を接ぎ木のために選択する第3のステップ3)と、
選択した、果実の大きさが一致し、果皮に毛がなく、枝がきちんと成長し、果実が成熟するとき斑紋が徐々についた枝における果実の甘酸っぱさ、風味、重さ、香りを2~3年間観察する第4のステップ4)と、
キウイフルーツ樹の樹勢が旺盛で、寒さに耐え、かいよう病に耐え、果皮に斑紋があり、風味が独特で、重さと果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ枝を残して接ぎ木繁殖を行う第5のステップ5)と、を含む、ことを特徴とする。
【0006】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。1、皮に斑紋があり、美しく、観賞性が高い。2、寒さに耐え、0℃~-23℃の低温に3~4ヶ月耐えることができ、果樹の皮が割れることなく、キウイフルーツの生産高及び成長に影響を与えず、西蔵の一部の地域、東北の低温地域に普及することができ、キウイフルーツの北への普及、栽培にとって重要な意味を有する。3、糖含有量が低く、当該キウイフルーツ品種の中等体積の果実の100グラム当たりの糖含有量は7グラム±1グラムであるが、リンゴの100グラム当たりの糖含有量は10グラム±1グラム、オレンジの100グラム当たりの糖含有量は14グラム±1グラムである。高齢者及び糖尿病患者は安心して食用することができる。4、果物の香りが強く、風味が独特である。5、成熟が遅く、当該キウイフルーツ品種の成熟と収穫は11月中旬に始まるが、赤陽キウイフルーツの成熟と収穫は9月に始まり、軟棗キウイフルーツの成熟と収穫は10月初旬に始まり、キウイフルーツの大量販売による果物の滞留を避けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態に関連して、本発明の実施形態における技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、説明された実施形態は本発明の一部の実施形態にすぎず、すべての実施形態ではないことは明らかである。本発明の実施例によれば、当業者が創造的な労働を行わずに得た他の実施例はすべて本発明の保護の範囲に属する。
【0008】
(実施例1)
斑紋あり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強いキウイフルーツ品種の育成方法であって、
冬の0℃~-10℃の低温がいつも3ヶ月半以上続く、標高が2000メートルの高寒地域に雲南産の毛なしのキウイフルーツを人工的に選択して栽培して繁殖し、低温変異誘発及び育種を行う第1のステップ1)と、
いつも3ヶ月半以上続く冬の0℃~-10℃の低温下での、キウイフルーツの1年目の成長状況に対する観察を通じて、キウイフルーツ樹の樹勢、耐病性、耐寒性、かいよう病耐性、及び果実の外観を観察し、0℃~-10℃の低温下で凍結され、成長が悪く、寒さに耐えず、かいよう病に感染した株を人工的に除去し、樹勢が旺盛で、凍結されず、かいよう病のない株を残す第2のステップ2)と、
第2のステップにおいて選択した雲南産の毛なしのキウイフルーツの地上の一部の枝を3年連続して0℃~-10℃の低温で変異誘発し、低温で突然変異した枝を選択し、これらの枝における果実の果皮、大きさ、一致度、模様を観察し、果実の大きさが一致し、果皮に毛がなく、枝がきちんと成長し、果実が徐々に成熟するとき、斑紋が徐々についた枝を接ぎ木のために選択する第3のステップ3)と、
選択した、果実の大きさが一致し、果皮に毛がなく、枝がきちんと成長し、果実が成熟するとき斑紋が徐々についた枝における果実の甘酸っぱさ、風味、重さ、香りを3年間観察する第4のステップ4)と、
キウイフルーツ樹の樹勢が旺盛で、寒さに耐え、かいよう病に耐え、果皮に斑紋があり、風味が独特で、重さと果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ枝を残して接ぎ木繁殖を行う第5のステップ5)と、を含む。
【0009】
(実施例2)
斑紋あり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強いキウイフルーツ品種の育成方法であって
冬の0℃~-6℃の低温がいつも4ヶ月以上続く、標高が2100メートルの高寒地域に雲南産の毛なしのキウイフルーツを人工的に選択して栽培して繁殖し、低温変異誘発及び育種を行う第1のステップ1)と、
いつも4ヶ月以上続く冬の0℃~-6℃の低温下での、キウイフルーツの1年目の成長状況に対する観察を通じて、キウイフルーツ樹の樹勢、耐病性、耐寒性、かいよう病耐性、及び果実の外観を観察し、0℃~-6℃の低温下で凍結され、成長が悪く、寒さに耐えず、かいよう病に感染した株を人工的に除去し、樹勢が旺盛で、凍結されず、かいよう病のない株を残す第2のステップ2)と、
第2のステップにおいて選択した雲南産の毛なしのキウイフルーツの地上の一部の枝を3年連続して0℃~-6℃の低温で変異誘発し、低温で突然変異した枝を選択し、これらの枝における果実の果皮、大きさ、一致度、模様を観察し、果実の大きさが一致し、果皮に毛がなく、枝がきちんと成長し、果実が徐々に成熟するとき、斑紋が徐々についた枝を接ぎ木のために選択する第3のステップ3)と、
選択した、果実の大きさが一致し、果皮に毛がなく、枝がきちんと成長し、果実が成熟するとき斑紋が徐々についた枝における果実の甘酸っぱさ、風味、重さ、香りを3年間観察する第4のステップ4)と、
キウイフルーツ樹の樹勢が旺盛で、寒さに耐え、かいよう病に耐え、果皮に斑紋があり、風味が独特で、重さと果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ枝を残して接ぎ木繁殖を行う第5のステップ5)と、を含む。
【0010】
(実施例3)
斑紋あり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強いキウイフルーツ品種の育成方法であって、
冬の0℃~-13℃の低温がいつも3ヶ月以上続く、標高が1800メートルの高寒地域に雲南産の毛なしのキウイフルーツを人工的に選択して栽培して繁殖し、低温変異誘発及び育種を行う第1のステップ1)と、
いつも3ヶ月以上続く冬の0℃~-13℃の低温下での、キウイフルーツの1年目の成長状況に対する観察を通じて、キウイフルーツ樹の樹勢、耐病性、耐寒性、かいよう病耐性、及び果実の外観を観察し、0℃~-13℃の低温下で凍結され、成長が悪く、寒さに耐えず、かいよう病に感染した株を人工的に除去し、樹勢が旺盛で、凍結されず、かいよう病のない株を残す第2のステップ2)と、
第2のステップにおいて選択した雲南産の毛なしのキウイフルーツの地上の一部の枝を3年連続して0℃~-13℃の低温で変異誘発し、低温で突然変異した枝を選択し、これらの枝における果実の果皮、大きさ、一致度、模様を観察し、果実の大きさが一致し、果皮に毛がなく、枝がきちんと成長し、果実が徐々に成熟するとき、斑紋が徐々についた枝を接ぎ木のために選択する第3のステップ3)と、
選択した、果実の大きさが一致し、果皮に毛がなく、枝がきちんと成長し、果実が成熟するとき斑紋が徐々についた枝における果実の甘酸っぱさ、風味、重さ、香りを2年間観察する第4のステップ4)と、
キウイフルーツ樹の樹勢が旺盛で、寒さに耐え、かいよう病に耐え、果皮に斑紋があり、風味が独特で、重さと果物の香りが強く、成熟が遅いキウイフルーツ枝を残して接ぎ木繁殖を行う第5のステップ5)と、を含む。
【0011】
結果:
実施例1で得られた果実は、0℃~-20℃の低温に3~3ヶ月半耐えることができ、果樹の皮は割れることなく、100グラムの糖含有量は7グラムであるが、リンゴの100グラム当たりの糖含有量は10グラム、オレンジの100グラム当たりの糖含有量は14グラムである。
【0012】
実施例2で得られた果実は、0℃~-23℃の低温に3~4ヶ月耐えることができ、果樹の皮は割れることなく、100グラムの糖含有量は6グラムであるが、リンゴの100グラム当たりの糖含有量は9グラム、オレンジの100グラム当たりの糖含有量は14グラムである。
【0013】
実施例3で得られた果実は、0℃~-18℃の低温に3ヶ月半耐えることができ、果樹の皮は割れることなく、100グラムの糖含有量は7.5グラムであるが、リンゴの100グラム当たりの糖含有量は11グラム、オレンジの100グラム当たりの糖含有量は14グラムである。
【0014】
本発明のキウイフルーツ育成方法は、雲南産の毛なしのキウイフルーツを低温で変異誘発することによって、芽条突然変異に対して人工育種を行い、そして、実生育種を行う。該品種は、皮に斑紋があり、寒さに耐え、糖含有量が低く、果物の香りが強いキウイフルーツであり、以下の利点備える。1、皮に斑紋があり、美しく、観賞性が高い。2、寒さに耐え、0℃~-23℃の低温に3~4ヶ月耐えることができ、果樹の皮が割れることなく、キウイフルーツの生産高及び成長に影響を与えず、西蔵の一部の地域、東北の低温地域に普及することができ、キウイフルーツの北への普及、栽培にとって重要な意味を有する。3、糖含有量が低く、当該キウイフルーツ品種の中等体積の果実の100グラム当たりの糖含有量は7グラム±1グラムであるが、リンゴの100グラム当たりの糖含有量は10グラム±1グラム、オレンジの100グラム当たりの糖含有量は14グラム±1グラムである。高齢者及び糖尿病患者は安心して食用することができる。4、果物の香りが強く、風味が独特である。5、成熟が遅く、当該キウイフルーツ品種の成熟と収穫は11月中旬に始まるが、赤陽キウイフルーツの成熟と収穫は9月に始まり、軟棗キウイフルーツの成熟と収穫は10月初旬に始まり、キウイフルーツの大量販売による果物の滞留を避けることができる。
【0015】
明らかに、当業者は本発明の精神及び範囲から逸脱せずに本発明に対して様々な修正及び変形を行うことができる。このように、本発明のこれらの修正及び変形が本発明の請求項及びその同等技術の範囲内に属すれば、本発明もこれらの修正及び変形を含むことを意図する。