(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】身体貼付用シート
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20230623BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230623BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230623BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230623BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61K9/70 405
A61K8/02
A61K8/26
A61K8/73
A61K8/81
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/38
(21)【出願番号】P 2022059579
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2021099341
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 翔平
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-124870(JP,A)
【文献】特開2020-59697(JP,A)
【文献】特開2001-64161(JP,A)
【文献】特開昭55-17347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/70
A61K 8/02
A61K 8/26
A61K 8/73
A61K 8/81
A61K 47/02
A61K 47/32
A61K 47/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル層を有する身体貼付用シートであって、
該ゲル層は、次の成分(A)~(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C)アルミニウム原子
(D)ポリビニルアルコール
を含有し、
該ゲル層中の成分(A)の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、
該ゲル層中の成分(D)の含有量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C)]が70以上800以下である、身体貼付用シート。
【請求項2】
前記ゲル層中で、前記成分(B)が前記成分(C)により架橋された架橋構造を有する、請求項1に記載の身体貼付用シート。
【請求項3】
前記成分(D)の重量平均分子量が150,000以下である、請求項1又は2に記載の身体貼付用シート。
【請求項4】
前記成分(D)のケン化度が75モル%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の身体貼付用シート。
【請求項5】
前記ゲル層の、JIS Z0237:2009に従って傾斜板の角度30°、温度23℃、50%R.H.の条件下で行われるボールタック試験におけるボールナンバーが15以上30以下である、請求項1~4のいずれかに記載の身体貼付用シート。
【請求項6】
前記ゲル層の、温度25℃、周波数0.1Hzでの動的粘弾性測定における損失正接が0.20以上である、請求項1~5のいずれかに記載の身体貼付用シート。
【請求項7】
下記工程(I)~工程(III)をこの順で含む、ゲル層を有する身体貼付用シートの製造方法。
工程(I) 次の成分(A)、(B)、(C1)及び(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C1)アルミニウム含有化合物
(D)ポリビニルアルコール
を配合してなり、
成分(A)の配合量が50質量%以上85質量%以下であり、
成分(D)の配合量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C1)]が25以上140以下であるゲル形成用組成物を調製する工程
工程(II) 基材と剥離フィルムとの間に前記ゲル形成用組成物を充填し、基材、ゲル形成用組成物層、及び剥離フィルムを順に有する積層シートを作製する工程
工程(III) 前記積層シートを包装体内に密封し、次いで該包装体内で前記ゲル形成用組成物層を架橋させる工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体貼付用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
含水ゲル組成物を用いて作製され、種々の効能を付与した貼付用シートが開発されている。含水ゲル組成物を構成する水以外の主成分としては、通常水溶性高分子化合物が用いられる。
例えば特許文献1には、支持体と、当該支持体の少なくとも一方の面上に配置された粘着剤層と、を備える貼付剤であって、前記粘着剤層がβ-グルカンを含む粘着基剤から形成されることを特徴とする貼付剤が、使用感に優れ、かつ、充分な粘着力を有することが開示されている。
特許文献2には、少なくともゲル基体層、支持体層、及び粘着層を有し、かつこの順で積層された層構造を有する、ゲル基体層の他の層が接していない側の表面の一部又は全部と冷却対象部位が、直接触れるように装着して使用する衣料装着用冷却シートであって、ゲル基体層がポリビニルアルコールを含む冷却用組成物から形成され、ポリビニルアルコールを所定量含む衣料装着用冷却シートが、人体の皮膚等の冷却対象部位に触れても、べたつかず、冷却及び保冷効果に優れることが開示されている。
【0003】
特許文献3には、所定量の水、カルボキシメチルセルロース又はその塩を所定量以上含むアニオン性水溶性高分子化合物、アニオン性官能基とイオン架橋を形成する架橋剤、及び所定量及び所定構造のノニオン性水溶性高分子化合物を含有する含水ゲル組成物が、優れた使用感を発揮するとともに、ゲルの安定性にも優れることが開示されている。
特許文献4には、ゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体、及びL-メンチルグリセリルエーテルをそれぞれ所定量含有する貼付剤用基剤が、清涼化剤としてL-メンチルグリセリルエーテルを用いた場合であっても、基剤の粘着力を保持しつつ、不快な臭いの発生が抑制された貼付剤用基剤及びそれを用いた貼付剤を提供できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-314290号公報
【文献】特開2013-79198号公報
【文献】特開2016-124870号公報
【文献】国際公開第2018/155310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、身体貼付用シートへの高機能性が求められ、身体貼付用シートは貼付直後の密着性、及び追従性が高いことに加え、種々の生活行動を経ても剥がれにくいだけの十分な粘着力を備えることが望まれるようになっている。例えば、曲率の高いひじ、ひざ等の関節部分に貼付して貼付部分に動きを加えた場合、一度皮膚に貼付した後に剥がして再貼付する場合、ボディクリームを塗った後の皮膚に貼付する場合、長時間貼付した場合等においても皮膚への密着性が保たれ、剥がれにくい身体貼付用シートが求められている。これは、様々な生活場面での使用中において、快適に種々の生理効果を得たいという需要が増えているためである。
しかし、従来の身体貼付用シートでは、身体貼付用シートを皮膚に貼付する際にシートの粘着面の指へのべたつきを感じたり、剥離フィルムを剥がした後にシートの粘着面同士が貼り付いた際、元の状態に戻しにくい等、取り扱い性の問題も生じ得る。すなわち、密着性を高めようとすると取り扱い性に問題が生じ、また、取り扱い性を高めようとすると密着性が劣る結果となる。以上の点で、従来の身体貼付用シートにおいては改善の余地があった。
【0006】
本発明の課題は皮膚への密着性、特に、曲率の高いひじ、ひざ等の関節部分に貼付して貼付部分に動きを加えた場合にも密着性が良好で、且つ貼付時の取り扱い性に優れる身体貼付用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ゲル層を有する身体貼付用シートであって、該ゲル層が所定量の水、カルボキシメチルセルロース又はその塩、アルミニウム原子、及び所定量のポリビニルアルコールを含有し、カルボキシメチルセルロース又はその塩とアルミニウム原子との質量比を所定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、下記に関する。
[1]ゲル層を有する身体貼付用シートであって、
該ゲル層は、次の成分(A)~(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C)アルミニウム原子
(D)ポリビニルアルコール
を含有し、
該ゲル層中の成分(A)の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、
該ゲル層中の成分(D)の含有量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C)]が70以上800以下である、身体貼付用シート。
[2]下記工程(I)~工程(III)をこの順で含む、ゲル層を有する身体貼付用シートの製造方法。
工程(I) 次の成分(A)、(B)、(C1)及び(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C1)アルミニウム含有化合物
(D)ポリビニルアルコール
を配合してなり、
成分(A)の配合量が50質量%以上85質量%以下であり、
成分(D)の配合量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C1)]が25以上140以下であるゲル形成用組成物を調製する工程
工程(II) 基材と剥離フィルムとの間に前記ゲル形成用組成物を充填し、基材、ゲル形成用組成物層、及び剥離フィルムを順に有する積層シートを作製する工程
工程(III) 前記積層シートを包装体内に密封し、次いで該包装体内で前記ゲル形成用組成物層を架橋させる工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮膚への密着性、特に曲率の高いひじ、ひざ等の関節部分に貼付して貼付部分に動きを加えた場合にも密着性が良好で、且つ貼付時の取り扱い性に優れる身体貼付用シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1及び比較例4で得られた身体貼付用シートのゲル層の粘弾性挙動(測定周波数と損失正接(tanδ)との関係)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[定義]
以下の記載において、「(身体貼付用シートの)皮膚への密着性が良好である」とは、少なくとも、皮膚への貼付直後の密着性、及び、負荷条件下での密着性がともに良好であることをいう。「貼付直後の密着性」とは、関節以外の部分(例えばふくらはぎ)に身体貼付用シートを貼付した直後に日常動作を行った場合の密着性を意味する。また「負荷条件下での密着性」とは、曲率の高い部分(例えばひざ等の関節部分)に身体貼付用シートを貼付した直後に、貼付部分に動きを加えた場合の密着性を意味する。皮膚への貼付直後の密着性、及び、負荷条件下での密着性は、実施例に記載の方法により評価できる。
さらに、本発明の身体貼付用シートは長時間貼付時の剥がれにくさ、油分の存在する皮膚への密着性、並びに再貼付性も良好である。
本発明において、「(身体貼付用シートの)貼付時の取り扱い性に優れる」とは、少なくとも、身体貼付用シートを皮膚に貼付しやすいことを意味する。シートの皮膚への貼付しやすさは、実施例に記載の方法により評価できる。
さらに、本発明の身体貼付用シートは、シートの粘着面の指へのべたつきが抑制されること、貼付時にシートの粘着面同士が貼り付いた際に、粘着面同士を離しやすい(元の状態に戻しやすい)ことにも優れる。
なお、本発明の身体貼付用シートの粘着面とは、該シートのゲル層面を意味する。また、以下の記載において「貼付時にシートの粘着面同士が貼り付いた際に、粘着面同士を離しやすい(元の状態に戻しやすい)こと」を「粘着面同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすい」ともいう。
【0011】
[身体貼付用シート]
本発明の身体貼付用シート(以下、単に「本発明のシート」ともいう)は、ゲル層を有する身体貼付用シートであって、該ゲル層は、次の成分(A)~(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C)アルミニウム原子
(D)ポリビニルアルコール
を含有し、
該ゲル層中の成分(A)の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、
該ゲル層中の成分(D)の含有量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C)]が70以上800以下である。
本発明の身体貼付用シートは上記構成を有することにより、皮膚への密着性に優れるとともに、貼付時の取り扱い性に優れるものとなる。
【0012】
本発明のシートが上記構成を有することにより本発明の効果を奏する理由については定かではないが、以下のように推察される。
成分(B)はカルボキシ基を有するポリマーであり、成分(C)のイオン化物である3価のアルミニウムイオンとのイオン間相互作用により架橋構造を形成し得る。すなわち該アルミニウムイオンは成分(B)の架橋剤として作用し得る。よって本発明のシートを構成するゲル層中で、成分(B)は成分(C)により架橋された架橋構造を有していると考えられる。
一方、成分(D)はアルミニウムイオンによる架橋形成能を有さないポリマーであり、ゲル層中では、成分(B)と成分(C)とから構成される架橋マトリックス内に成分(D)の高分子鎖が流動可能な状態で存在していると考えられる。
そして本発明のシートを構成するゲル層は、成分(B)と成分(C)とを特定の比率で含有し、且つ成分(D)を所定量含有させることで、従来のゲル層よりも広い周波数領域で粘性的性質を示すものとなる。さらに該ゲル層は、低周波数領域では粘性的性質が強く、高周波数領域に移行するにつれて粘性的性質がより強くなるという特徴的な粘弾性挙動を示した。そして、このような粘弾性挙動を示すゲル層は、皮膚への高い密着性を発現し、貼付時の貼り付け性に優れるだけでなく、貼付時のべたつきが抑えられ、粘着面(すなわちゲル層)同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすいことが見出された。このような粘着物性が発現した作用機構としては、ゲル層における質量比[(B)/(C)]を所定値以下とし、且つ成分(D)の存在割合を増加させることにより、架橋点が少なく変形しやすいゲル構造が形成されるため、シートの皮膚への密着性が向上したと考えられる。またゲル層において、成分(D)の存在割合を増加させるとゲル層のタック力向上により皮膚への密着性も向上するが、質量比[(B)/(C)]を所定値以上とすることで過度なタック力の向上を抑え、貼付時の取り扱い性を良好に保つことができたと考えられる。
【0013】
<ゲル層>
本発明の身体貼付用シートは、次の成分(A)~(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C)アルミニウム原子
(D)ポリビニルアルコール
を含有し、成分(A)の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、成分(D)の含有量が8質量%以上であり、質量比[(B)/(C)]が70以上800以下であるゲル層を有する。
該ゲル層中で、成分(B)は成分(C)により架橋された架橋構造を有している。該ゲル層を有する本発明のシートは皮膚への密着性に優れるとともに、貼付時の取り扱い性に優れるものとなる。
【0014】
(ゲル層の物性)
本発明において、ゲル層の粘性的性質及び弾性的性質は、損失正接(tanδ)の値を指標として評価することができる。損失正接の値が大きいゲル層は、より粘性的性質が高いことを意味する。
【0015】
より詳細には、本発明のシートを構成するゲル層は、皮膚への密着性を向上させる観点から、温度25℃、周波数0.1Hzでの動的粘弾性測定における損失正接が、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.22以上、よりさらに好ましくは0.25以上、よりさらに好ましくは0.28以上である。また、取り扱い性の観点、特にシート貼付時のべたつきを抑制する観点と粘着面同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすくする観点から、好ましくは0.70以下、より好ましくは0.60以下、さらに好ましくは0.58以下、よりさらに好ましくは0.50以下である。そして、本発明のシートを構成するゲル層の、温度25℃、周波数0.1Hzでの動的粘弾性測定における損失正接は、好ましくは0.18以上0.70以下、より好ましくは0.20以上0.60以下、さらに好ましくは0.22以上0.58以下、よりさらに好ましくは0.25以上0.58以下、よりさらに好ましくは0.28以上0.50以下である。
ゲル層の損失正接は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0016】
また、本発明のシートを構成するゲル層はタック力が高いものである。タック力とは、軽い力で短時間の接着力を発現することの指標である。すなわち、タック力が高いシートは、皮膚への貼付直後の密着性が高いことを示すものである。より詳細には、ゲル層の、JIS Z0237:2009に従って傾斜板の角度30°、温度23℃、50%R.H.の条件下で行われるボールタック試験におけるボールナンバーが、好ましくは15以上、より好ましくは18以上、さらに好ましくは19以上、よりさらに好ましくは20以上である。また、取り扱い性の観点、特に、シート貼付時のべたつきを抑制する観点と粘着面同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすくする観点からは、該ボールナンバーは、好ましくは32以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは28以下、よりさらに好ましくは26以下である。そして、前記ボールナンバーは、好ましくは15以上32以下、より好ましくは15以上30以下、さらに好ましくは18以上28以下、さらに好ましくは19以上28以下、よりさらに好ましくは20以上26以下である。
ボールタック試験は、具体的には実施例に記載の方法により行うことができる。
【0017】
前記物性を有するゲル層は、前記成分(A)~(D)を含有し、且つ該ゲル層中の成分(A)の含有量、成分(D)の含有量、及び質量比[(B)/(C)]を所定の範囲とすることにより得られる。以下、該ゲル層に含有される各成分について説明する。
【0018】
(成分(A):水)
本発明のシートを構成するゲル層は水を含有することで、薬効成分、冷感成分等の有効成分を皮膚に効果的に浸透させることができる。
成分(A)としては例えば、脱イオン水、蒸留水、高純水、超純水等の精製水を用いることができる。
ゲル層中の成分(A)の含有量は、有効成分を皮膚に効果的に浸透させる観点から、50質量%以上であり、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上である。また、皮膚への密着性を向上させる及びゲル層の密着性及び安定性を確保する観点からは、85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは78質量%以下、さらに好ましくは77質量%以下である。そして、ゲル層中の成分(A)の含有量は、50質量%以上85質量%以下であり、好ましくは55質量%以上80質量%以下、より好ましくは60質量%以上78質量%以下、さらに好ましくは65質量%以上77質量%以下である。
【0019】
(成分(B):カルボキシメチルセルロース又はその塩)
本発明のシートを構成するゲル層は、成分(B)としてカルボキシメチルセルロース又はその塩を含有する。成分(B)は、成分(B)はカルボキシ基を有するポリマーであり、成分(C)のイオン化物である3価のアルミニウムイオンとのイオン間相互作用により架橋構造を形成し得る。
カルボキシメチルセルロースの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。入手容易性等の観点から、カルボキシメチルセルロースの塩としてはカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(カルボキシメチルセルロースナトリウム)がより好ましい。
【0020】
成分(B)のエーテル化度は、ゲル層の適度な保形性を得る観点、及びゲル層の保存安定性を確保する観点から、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.65以上であり、また、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.95以下である。
なお、成分(B)のエーテル化度とは、成分(B)のグルコース単位あたりのカルボキシメチル基の置換度をいう。成分(B)がカルボキシメチルセルロースナトリウムである場合、そのエーテル化度は、例えばCMC工業会分析法(灰化法)に従い、以下の方法により測定できる。
〔カルボキシメチルセルロースナトリウムのエーテル化度の測定〕
カルボキシメチルセルロースナトリウム1gを精秤し、磁性ルツボに入れて600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムをN/10硫酸でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、カルボキシメチルセルロースナトリウム1gあたりの滴定量YmLを次式に入れて計算し、求めたエーテル化度を示すことができる。
エーテル化度=(162×Y)/(10,000-80×Y)
【0021】
成分(B)は、ゲル層の適度な保形性を得る観点、及びゲル層の安定性を確保する観点から、1質量%水溶液としたときの25℃における粘度が、B型粘度計における測定において、好ましくは1,000mPa・s以上、より好ましくは1,200mPa・s以上、さらに好ましくは1,500mPa・s以上であり、好ましくは7,000mPa・s以下、より好ましくは6,000mPa・s以下、さらに好ましくは5,000mPa・s以下である。そして、成分(B)の、1質量%水溶液としたときの25℃における粘度は、好ましくは1,000mPa・s以上7,000mPa・s以下、より好ましくは1,200mPa・s以上6,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,500mPa・s5,000mPa・s以下である。
【0022】
成分(B)は1種又は2種以上を用いることができる。中でも、入手容易性等の観点から、成分(B)としては、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、カルボキシメチルセルロースナトリウムがより好ましい。成分(B)として用いられる市販のカルボキシメチルセルロースナトリウムとしては、例えば、(株)ダイセル製のCMCダイセルシリーズ、日本製紙(株)製のサンローズシリーズ等が挙げられる。
【0023】
ゲル層中の成分(B)の含有量は、ゲル層の適度な保形性を得る観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、よりさらに好ましくは2.3質量%以上、よりさらに好ましくは2.5質量%以上である。また、皮膚への密着性を保持する観点、及び、取り扱い性の観点、特に、シート貼付時のべたつきを抑制する観点と粘着面同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすくする観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.8質量%以下、よりさらに好ましくは3.4質量%以下である。そして、ゲル層中の成分(B)の含有量は、好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以上4.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以上3.8質量%以下、よりさらに好ましくは2.3質量%以上3.4質量%以下、よりさらに好ましくは2.5質量%以上3.4質量%以下である。
なお成分(B)がカルボキシメチルセルロースの塩である場合、ゲル層中の成分(B)の含有量とは、塩としての含有量を意味する。
【0024】
(成分(C):アルミニウム原子)
本発明のシートを構成するゲル層は、成分(C)としてアルミニウム原子を含有する。成分(C)のイオン化物である3価のアルミニウムイオンは成分(B)の架橋剤として作用し得、ゲル層中では、成分(B)とのイオン間相互作用により架橋構造を形成していると考えられる。
成分(C)であるアルミニウム原子の供給源は、アルミニウム含有化合物(以下「成分(C1)」ともいう)である限り特に制限されないが、成分(B)を架橋し得るアルミニウムイオンとしての供給しやすさの観点、及び水溶性であることから、好ましくはアルミニウムを含有する無機金属塩である。
【0025】
成分(C)の供給源となる、成分(B)の架橋剤として作用し得るアルミニウム含有化合物(C1)としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムマグネシウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、炭酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、(メタ)ケイ酸アルミン酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、アルミニウムグリシネート、安息香酸アルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
上記の中でも、アルミニウムイオンの供給しやすさの観点、及び水溶性であるという観点から、成分(C1)としては水酸化アルミニウム及び(メタ)ケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。また、ゲル層の保存安定性を向上させる観点から、成分(C1)は2種以上のアルミニウム含有化合物を含むことが好ましく、少なくとも(メタ)ケイ酸アルミン酸マグネシウムを含むことがより好ましく、水酸化アルミニウム及び(メタ)ケイ酸アルミン酸マグネシウムであることがさらに好ましい。
【0026】
ゲル層中の成分(C)の含有量は、取り扱い性の観点、特に、シート貼付時のべたつきを抑制する観点と粘着面同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすくする観点、並びに保存安定性を向上させる観点から、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上、よりさらに好ましくは0.0062質量%以上、よりさらに好ましくは0.008質量%以上である。また、広い周波数領域で粘性的性質を示すゲル層を形成して、皮膚への密着性を向上させる観点からは、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.04質量%以下、さらに好ましくは0.035質量%以下、よりさらに好ましくは0.02質量%以下である。そして、ゲル層中の成分(C)の含有量は、好ましくは0.002質量%以上0.05質量%以下、より好ましくは0.003質量%以上0.05質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上0.04質量%以下、よりさらに好ましくは0.0062質量%以上0.035質量%以下、よりさらに好ましくは0.008質量%以上0.02質量%以下である。
なお、ゲル層中の成分(C)の含有量は、日本薬局方 一般試験法 誘導結合プラズマ発光分光分析法及び誘導結合プラズマ質量分析法に従って測定することができる。
【0027】
ゲル層中の質量比[(B)/(C)]は、広い周波数領域で粘性的性質を示すゲル層を形成して、皮膚への密着性を向上させる観点から、70以上であり、好ましくは85以上、より好ましくは100以上である。また、取り扱い性を向上させる観点、特に、シート貼付時のべたつきを抑制する観点と粘着面同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすくする観点、並びに保存安定性を向上させる観点から、800以下であり、好ましくは600以下、より好ましくは500以下である。そして、ゲル層中の質量比[(B)/(C)]は、70以上800以下であり、好ましくは85以上600以下、より好ましくは100以上500以下である。
【0028】
(成分(D):ポリビニルアルコール)
本発明のシートを構成するゲル層は、成分(D)としてポリビニルアルコールを含有する。前記成分(B)及び成分(C)に加えて成分(D)を含有させることにより、ゲル層のタック力及び低周波数領域の粘性的性質が向上し、これにより皮膚への密着性を向上させることができる。
【0029】
成分(D)の重量平均分子量は特に制限されないが、ゲル層の適度な保形性を得る観点から、好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは70,000以上である。また、ゲル層のタック力を向上させることによりシートの皮膚への密着性を向上させる観点から、好ましくは150,000以下、より好ましくは110,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。そして、成分(D)の重量平均分子量は、好ましくは30,000以上150,000以下、より好ましくは50,000以上110,000以下、さらに好ましくは70,000以上100,000以下である。
成分(D)の重量平均分子量が好ましくは150,000以下、より好ましくは110,000以下、さらに好ましくは100,000以下であると、ゲル層中での成分(D)の高分子鎖の絡み合いが少なく、より変形しやすいゲル構造を形成できると考えられる。この効果によりゲル層のタック力がより向上し、皮膚への密着性も向上すると考えられる。
成分(D)の粉末原料の重量平均分子量は、下記条件で、粉末原料を水に溶解させた水溶液をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定することで得られる。なお「成分(D)の粉末原料」とは、ゲル層又は後述するゲル形成用組成物に配合する前の、粉末状態の成分(D)を意味する。また、ゲル層中の成分(D)の重量平均分子量は、下記条件で、ゲル層の抽出液をSECで測定することで得られる。
<SEC測定条件>
測定装置:東ソー(株)製「SEC-8320」
溶離液:0.2mol/Lリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1(V/V%)
ガードカラム:東ソー(株)製「PWXL(6mm×4cm)」
分析カラム:東ソー(株)製「G4000PWxL+G2500PWxL(7.8mm×30cm)
流量:1mL/min
カラム温度:40℃
注入量:100μL
サンプルサイズ:1mg/mL
分子量換算標準:東ソー(株)製PEO(SE-150(97.7万)、SE-70(58万)、SE-30(39.4万)、SE-15(14.3万)、SE-8(10.1万)、SE-2(2.1万))
検出器:RI
【0030】
成分(D)のケン化度は、ゲル層のタック力を向上させることによりシートの皮膚への密着性を向上させる観点から、好ましくは75モル%以上、より好ましくは82モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上である。また、成分(D)のケン化度は100モル%以下であればよく、成分(D)の水溶性を高める観点、及びその取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは98モル%以下、より好ましくは96モル%以下である。そして、成分(D)のケン化度は、好ましくは75モル%以上98モル%以下、より好ましくは82モル%以上98モル%以下、さらに好ましくは85モル%以上96モル%以下である。
成分(D)のケン化度は、JIS K6726:1994に従って測定することができる。
【0031】
成分(D)は、未変性のポリビニルアルコールであることが好ましいが、必要に応じイオン性基等が導入された変性ポリビニルアルコールを用いることもできる。
但し成分(D)としては、アルミニウムイオンとのイオン間相互作用により架橋構造を形成し得る官能基の含有量が少ないことが好ましい。成分(B)の架橋構造の形成を阻害させないためである。例えば成分(D)中のカルボキシ基の含有量は、好ましくは0.1モル%以下、より好ましくは0.01モル%以下であり、さらに好ましくは0モル%である。
【0032】
成分(D)として用いられる市販のポリビニルアルコールとしては、例えば、日本合成化学工業(株)製のゴーセノールシリーズ、(株)クラレ製のクラレポバールシリーズ、日本酢ビ・ポバール(株)のJポバールシリーズが挙げられる。
【0033】
ゲル層中の成分(D)の含有量は、皮膚への密着性を向上させる観点から、8質量%以上であり、好ましくは8.3質量%以上、より好ましくは8.5質量%以上である。また、皮膚への密着性を向上させる観点、及び、取り扱い性の観点、特に、シート貼付時のべたつきを抑制する観点と粘着面同士の貼り付きを元の状態に戻しやすくする観点から、好ましくは18質量%以下、より好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。そして、ゲル層中の成分(D)の含有量は、8質量%以上であり、好ましくは8質量%以上18質量%以下、より好ましくは8.3質量%以上14質量%以下、さらに好ましくは8.5質量%以上12質量%以下である。
ゲル層中の成分(D)の含有量は、下記条件で、ゲル層の抽出液を1H-NMRで測定することで得られる。
<1H-NMR測定条件>
測定装置:JEOL製「MR-400」
観測核:1H
周波数:300MHz以上
パルス遅延時間:25秒
積算回数:32回
モード:Presaturation
溶媒:D2O
内部標準:0.1%トリメチルプロピオン酸Na
サンプルサイズ:10mg/mL
【0034】
また、ゲル層中の質量比[(D)/(B)]は、皮膚への密着性を向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは2.4以上、さらに好ましくは2.8以上、よりさらに好ましくは3以上である。また、皮膚への密着性を向上させる観点、及び、取り扱い性の観点、特に、シート貼付時のべたつきを抑制する観点と粘着面同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすくする観点から、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下、よりさらに好ましくは4.5以下、よりさらに好ましくは4以下である。そして、ゲル層中の質量比[(D)/(B)]は、好ましくは2以上8以下、より好ましくは2.4以上6以下、さらに好ましくは2.8以上5以下、よりさらに好ましくは3以上4.5以下、よりさらに好ましくは3以上4以下である。
【0035】
ゲル層中の前記成分(A)~(D)の合計含有量は、本発明の効果を得る観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0036】
(その他の成分)
ゲル層は、本発明の目的を損なわない範囲で前記成分(A)~(D)以外の成分を適宜含有してもよい。その他の成分としては、例えば、化粧品、香粧品、医薬品、医薬部外品等に一般的に使用される成分等が挙げられる。
これらの製品に一般的に使用される成分としては、例えば、成分(B)及び成分(D)以外の水溶性ポリマー、保湿剤、美白剤、血行促進剤、消炎剤、殺菌剤、紫外線吸收剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、香料、油剤、pH調整剤、キレート剤、保水剤、薬剤、冷感剤、温感剤、アルコール類等が挙げられる。
【0037】
なお、ゲル層は、取り扱い性を向上させる観点、特に、シート貼付時のべたつきを抑制する観点と粘着面同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすくする観点から、ポリアクリル酸又はその塩の含有量が少ないことが好ましい。具体的には、ゲル層中のポリアクリル酸又はその塩の含有量は、好ましくは4質量%未満であり、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは2質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0質量%である。市販のポリアクリル酸又はその塩としては、例えば、東亞合成(株)製のアロンビスシリーズ、ジュリマーシリーズ、(株)日本触媒製のアクアリックシリーズが挙げられる。
【0038】
ゲル層の厚さは、強度を確保する観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、また、皮膚への密着性を向上させる観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。
【0039】
<ゲル形成用組成物>
本発明のシートを構成する上記ゲル層は、次の成分(A)~(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C)アルミニウム原子
(D)ポリビニルアルコール
を含有し、成分(A)の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、成分(D)の含有量が8質量%以上であり、質量比[(B)/(C)]が70以上800以下であるゲル形成用組成物を用いて形成することができる。なお本発明においては、ゲル層中の各成分の含有量は、該ゲル層の形成に用いたゲル形成用組成物中の各成分の含有量又は配合量と同じであるとみなすことができる。
【0040】
また、本発明のシートを構成する上記ゲル層は、次の成分(A)、(B)、(C1)及び(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C1)アルミニウム含有化合物
(D)ポリビニルアルコール
を配合してなり、
成分(A)の配合量が50質量%以上85質量%以下であり、
成分(D)の配合量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C1)]が25以上140以下であるゲル形成用組成物を用いて形成することが好ましい。
ゲル形成用組成物に配合される成分(A)、(B)、(C1)及び(D)、その他の成分、並びにこれらの好適態様については、特に断りのない限り、前記ゲル層において記載した内容と同じである。
【0041】
ゲル形成用組成物に配合される成分(A)、(B)、及び(D)の量並びにその好適範囲は、前記ゲル層中の成分(A)、(B)、及び(D)の含有量並びにその好適範囲と同じである。
【0042】
成分(D)として2種以上のポリビニルアルコールを配合する場合には、各々のポリビニルアルコールの重量平均分子量が、いずれも前記範囲であることが好ましい。ここでいう2種以上のポリビニルアルコールとは、重量平均分子量、ケン化度、又はその両方が相互に異なるポリビニルアルコールを意味する。
【0043】
ゲル形成用組成物において、成分(C1)の配合量に対する成分(B)の配合量(質量比[(B)/(C1)])は、広い周波数領域で粘性的性質を示すゲル層を形成して、皮膚への密着性を向上させる観点から、好ましくは25以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは60以上である。また、取り扱い性を向上させる観点、特に、シート貼付時のべたつきを抑制する観点と粘着面同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすくする観点、並びに保存安定性を向上させる観点からは、好ましくは140以下、より好ましくは130以下、さらに好ましくは120以下、よりさらに好ましくは100以下、よりさらに好ましくは95以下である。そして、質量比[(B)/(C1)]は、好ましくは25以上140以下、より好ましくは25以上130以下、さらに好ましくは50以上120以下、よりさらに好ましくは50以上100以下、よりさらに好ましくは60以上95以下である。
【0044】
ゲル形成用組成物に配合される成分(C1)の量は、質量比[(B)/(C1)]が上記範囲となる量であればよい。取り扱い性を向上させる観点、特に、シート貼付時のべたつきを抑制する観点と粘着面同士が一旦貼り付いても元の状態に戻しやすくする観点、並びに保存安定性を向上させる観点から、ゲル形成用組成物中、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上となる量である。また、広い周波数領域で粘性的性質を示すゲル層を形成して、皮膚への密着性を向上させる観点からは、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.06質量%以下、よりさらに好ましくは0.04質量%以下となる量である。そして、ゲル形成用組成物に配合される成分(C1)の量は、好ましくは0.005質量%以上0.2質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上0.06質量%以下、よりさらに好ましくは0.02質量%以上0.04質量%以下となる量である。
【0045】
ゲル形成用組成物中の前記成分(A)、(B)、(C1)及び(D)の合計含有量は、本発明の効果を得る観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0046】
ゲル形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で成分(C1)以外の架橋剤成分を配合してもよいが、その配合量は少ないことが好ましい。成分(C1)以外の架橋剤成分の配合量は、全架橋剤成分中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%である。
【0047】
ゲル形成用組成物の調製方法は特に制限されないが、成分(D)については、予め水に溶解させた水溶液を調製し、水溶液の状態で他の成分と混合することが好ましい。その後、その他の全成分を混練機に投入して混合してもよく、一部の成分を混合又は分散後に混練機に投入して混合してもよい。
【0048】
<身体貼付用シートの構成>
本発明の身体貼付用シートの構成は、前記ゲル層を有する限り特に制限されないが、シートの取り扱い性及び強度の観点から、該ゲル層と、基材とを有することが好ましい。すなわち本発明の身体貼付用シートは、前記ゲル層と基材とを積層した2層構成とすることができる。また、ゲル層において基材が積層されていない面には、剥離フィルムを積層してもよい。剥離フィルムは、ゲル層を保護するために用いられ、シートの貼付時にはゲル層から剥離されるフィルムであり、例えば無軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。これらの中でも、優れた剥離性を付与する観点から、エンボス加工が施されているものが好ましく、エンボス加工が施された無軸延伸ポリプロピレンフィルムがより好ましい。
シートの取り扱い性の観点から、本発明の身体貼付用シートは基材、ゲル層、及び剥離フィルムをこの順で有する3層構成であることが好ましい。
【0049】
(基材)
本発明のシートを構成する基材としては、織布、不織布、偏布、合成樹脂フィルム、耐水紙等のシート状の基材を用いることができる。また、これらのシート状基材が複数積層されてなる積層基材を使用することもできる。
具体的には、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン等からなる合成繊維の織布又は不織布;絹、綿、麻、レーヨン、コラーゲン等からなる天然繊維の織布又は不織布;ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン等の合成樹脂からなるフィルム;プルラン、デンプン等からなるシート状基材;又は、これらが複数積層されてなる積層基材等が挙げられる。
上記の中でも、シートの取り扱い性、ゲル層の積層しやすさ、追従性の観点から、基材としては、好ましくは不織布であり、より好ましくはナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、又はポリエチレンからなる不織布である。
【0050】
基材の厚さは特に制限されないが、シートの取り扱い性、ゲル層の積層しやすさの観点から、好ましくは0.1mm以上であり、また、追従性を向上させる観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。
基材の坪量は特に制限されないが、シートの取り扱い性、ゲル層の積層しやすさの観点から、好ましくは10g/m2以上であり、また、追従性を向上させる観点から、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下、さらに好ましくは120g/m2以下である。
【0051】
[身体貼付用シートの製造方法]
本発明は、下記工程(I)~工程(III)をこの順で含む、ゲル層を有する身体貼付用シートの製造方法を提供する。該製造方法により、本発明の身体貼付用シートを効率よく製造することができる。
工程(I) 次の成分(A)、(B)、(C1)及び(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C1)アルミニウム含有化合物
(D)ポリビニルアルコール
を配合してなり、
成分(A)の配合量が50質量%以上85質量%以下であり、
成分(D)の配合量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C1)]が25以上140以下であるゲル形成用組成物を調製する工程
工程(II) 基材と剥離フィルムとの間に前記ゲル形成用組成物を充填し、基材、ゲル形成用組成物層、及び剥離フィルムを順に有する積層シートを作製する工程
工程(III) 前記積層シートを包装体内に密封し、次いで該包装体内で前記ゲル形成用組成物層を架橋させる工程
【0052】
<工程(I)>
工程(I)では、次の成分(A)、(B)、(C1)及び(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C1)アルミニウム含有化合物
(D)ポリビニルアルコール
を配合してなり、
成分(A)の配合量が50質量%以上85質量%以下であり、
成分(D)の配合量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C1)]が25以上140以下であるゲル形成用組成物を調製する。ゲル形成用組成物及びその調製方法、並びにその好適態様については前記の通りである。
【0053】
<工程(II)>
工程(II)では、基材と剥離フィルムとの間に前記ゲル形成用組成物を充填し、基材、ゲル形成用組成物層、及び剥離フィルムを順に有する積層シートを作製する。基材及び剥離フィルムについては前記の通りである。
基材と剥離フィルムとの間にゲル形成用組成物を充填し、積層する方法としては、例えば、基材と剥離フィルムとの間にゲル形成用組成物を挟み込み、次いで、ベーカー式アプリケーター等を用いて所望の厚さに展延する方法;剥離フィルム上にゲル形成用組成物を所望の厚さとなるように塗工し、次いで基材を積層する方法;等が挙げられる。あるいは、基材と剥離フィルムとを対面させてそれぞれ搬送ロールにて走行させ、基材と剥離フィルムとの間にゲル形成用組成物を充填し、ロールで押圧しながら送り出して積層シート化することもできる。この際、2つのロール間距離を調整することにより、ゲル形成用組成物層を所望の厚さに調整できる。
工程(II)で得られた積層シートは、必要に応じ、所望の大きさに切断してから工程(III)に供する。
【0054】
<工程(III)>
工程(III)では、工程(II)で得られた積層シートを包装体内に密封し、次いで該包装体内で前記ゲル形成用組成物層を架橋させる。これにより、架橋構造を有するゲル層を形成できる。
【0055】
工程(III)で用いられる包装体は、水分バリア性を有することが好ましく、包装体内の揮発性成分の揮散を抑制する観点、及び保存安定性の観点から、ガスバリア性を有する包装体であることがより好ましい。該包装体の具体例としては、ケイ素、アルミニウム、又はこれらの酸化物からなる層を少なくとも有する包装体が挙げられる。水分バリア性、ガスバリア性、及び経済性の観点からは、該包装体はアルミニウムの層を含む包装体が好ましい。
【0056】
ゲル形成用組成物層の架橋条件は特に制限されないが、ゲル形成用組成物及び該組成物からなるゲル層を有する身体貼付用シートの生産性を向上させる観点から、架橋温度としては好ましくは15~60℃、より好ましくは15~30℃であり、架橋時間(熟成時間)としては好ましくは1~21日間、より好ましくは1~14日間である。
【0057】
工程(I)~工程(III)を行って得られた身体貼付用シートは、包装体内に密閉した状態で製品とすることができる。身体貼付用シートは、使用時に包装体から取り出し、剥離フィルムを剥がして、ゲル層面を身体に貼付して用いる。
【0058】
本発明の身体貼付用シートは、外皮(頭皮を除く)に貼付して用いられる。身体部位は特に制限されず、ひじ、ひざ等の高曲率部位に貼付した場合でも動きに追従して剥がれにくく、油分に対しても強く、再貼付性、長時間貼付性も良好である。
【0059】
以下、上述した実施形態に関し、本発明はさらに下記を開示する。
<1>
ゲル層を有する身体貼付用シートであって、
該ゲル層は、次の成分(A)~(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C)アルミニウム原子
(D)ポリビニルアルコール
を含有し、
該ゲル層中の成分(A)の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、
該ゲル層中の成分(D)の含有量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C)]が70以上800以下である、身体貼付用シート。
<2>
前記ゲル層中の成分(A)の含有量が、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは78質量%以下、さらに好ましくは77質量%以下である、<1>の身体貼付用シート。
<3>
前記ゲル層中の成分(B)の含有量が、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、よりさらに好ましくは2.3質量%以上、よりさらに好ましくは2.5質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.8質量%以下、よりさらに好ましくは3.4質量%以下である、<1>又は<2>の身体貼付用シート。
<4>
前記ゲル層中の成分(C)の含有量が、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上、よりさらに好ましくは0.0062質量%以上、よりさらに好ましくは0.008質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.04質量%以下、さらに好ましくは0.035質量%以下、よりさらに好ましくは0.02質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1の身体貼付用シート。
<5>
前記質量比[(B)/(C)]が、好ましくは85以上、より好ましくは100以上であり、好ましくは600以下、より好ましくは550以下、さらに好ましくは500以下である、<1>~<4>のいずれか1の身体貼付用シート。
<6>
前記成分(D)の重量平均分子量が、好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは70,000以上であり、好ましくは150,000以下、より好ましくは120,000以下、さらに好ましくは100,000以下である、<1>~<5>のいずれか1の身体貼付用シート。
<7>
前記成分(D)のケン化度が、好ましくは75モル%以上、より好ましくは82モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上であり、好ましくは98モル%以下、より好ましくは96モル%以下である、<1>~<6>のいずれか1の身体貼付用シート。
<8>
前記ゲル層中の成分(D)の含有量が、好ましくは8.3質量%以上、より好ましくは8.5質量%以上であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である、<1>~<7>のいずれか1の身体貼付用シート。
<9>
前記ゲル層中の質量比[(D)/(B)]が、好ましくは2以上、より好ましくは2.4以上、さらに好ましくは2.8以上、よりさらに好ましくは3以上であり、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下、よりさらに好ましくは4.5以下、よりさらに好ましくは4以下である、<1>~<8>のいずれか1の身体貼付用シート。
<10>
前記ゲル層中の前記成分(A)~(D)の合計含有量が、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、また、100質量%以下である、<1>~<9>のいずれか1の身体貼付用シート。
【0060】
<11>
前記ゲル層中のポリアクリル酸又はその塩の含有量が、好ましくは4質量%未満であり、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは2質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0質量%である、<1>~<10>のいずれか1の身体貼付用シート。
<12>
前記ゲル層中で、前記成分(B)が前記成分(C)により架橋された架橋構造を有する、<1>~<11>のいずれか1の身体貼付用シート。
<13>
前記ゲル層の、JIS Z0237:2009に従って傾斜板の角度30°、温度23℃、50%R.H.の条件下で行われるボールタック試験におけるボールナンバーが好ましくは15以上、より好ましくは18以上、さらに好ましくは19以上、よりさらに好ましくは20以上であり、好ましくは32以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは28以下、よりさらに好ましくは26以下である、<1>~<12>のいずれか1の身体貼付用シート。
<14>
前記ゲル層の、温度25℃、周波数0.1Hzでの動的粘弾性測定における損失正接が好ましくは0.18以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.22以上、よりさらに好ましくは0.25以上、よりさらに好ましくは0.28以上であり、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.58以下、さらに好ましくは0.50以下である、<1>~<13>のいずれか1の身体貼付用シート。
<15>
前記ゲル層の厚さが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下である、<1>~<14>のいずれか1の身体貼付用シート。
<16>
前記身体貼付用シートが、前記ゲル層と基材とを積層した2層構成、又は、基材、前記ゲル層、及び剥離フィルムをこの順で有する3層構成である、<1>~<15>のいずれか1の身体貼付用シート。
<17>
前記基材が、好ましくは不織布、より好ましくはナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、又はポリエチレンからなる不織布である、<16>の身体貼付用シート。
<18>
ゲル層を有する身体貼付用シートであって、
該ゲル層は、次の成分(A)、(B)、(C1)及び(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C1)アルミニウム含有化合物
(D)ポリビニルアルコール
を配合してなるゲル形成用組成物であって、成分(A)の配合量が50質量%以上85質量%以下であり、成分(D)の配合量が8質量%以上であり、質量比(B)/(C1)が25以上140以下であるゲル形成用組成物を用いて形成され、
成分(B)が成分(C1)により架橋されてなる、身体貼付用シート。
<19>
次の成分(A)~(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C)アルミニウム原子
(D)ポリビニルアルコール
を含有し、成分(A)の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、成分(D)の含有量が8質量%以上であり、質量比[(B)/(C)]が60以上800以下である、ゲル形成用組成物。
<20>
次の成分(A)、(B)、(C1)及び(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C1)アルミニウム含有化合物
(D)ポリビニルアルコール
を配合してなり、
成分(A)の配合量が50質量%以上85質量%以下であり、
成分(D)の配合量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C1)]が25以上140以下である、ゲル形成用組成物。
<21>
前記ゲル形成用組成物に配合される成分(C1)の量が、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.06質量%以下、よりさらに好ましくは0.04質量%以下である、<18>の身体貼付用シート又は<20>のゲル形成用組成物。
<22>
前記成分(C1)の配合量に対する成分(B)の配合量(質量比[(B)/(C1)])が、より好ましくは50以上、さらに好ましくは60以上であり、より好ましくは130以下、さらに好ましくは120以下、よりさらに好ましくは100以下、よりさらに好ましくは95以下である、<18>の身体貼付用シート、<20>又は<21>のゲル形成用組成物。
<23>
前記成分(C1)が、好ましくは水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムマグネシウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、炭酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、(メタ)ケイ酸アルミン酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、アルミニウムグリシネート、安息香酸アルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウムからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくは水酸化アルミニウム及び(メタ)ケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくは(メタ)ケイ酸アルミン酸マグネシウムを含み、よりさらに好ましくは水酸化アルミニウム及び(メタ)ケイ酸アルミン酸マグネシウムである、<18>の身体貼付用シート、<20>~<22>のいずれか1のゲル形成用組成物。
【0061】
<24>
下記工程(I)~工程(III)をこの順で含む、ゲル層を有する身体貼付用シートの製造方法。
工程(I) 次の成分(A)、(B)、(C1)及び(D):
(A)水
(B)カルボキシメチルセルロース又はその塩
(C1)アルミニウム含有化合物
(D)ポリビニルアルコール
を配合してなり、
成分(A)の配合量が50質量%以上85質量%以下であり、
成分(D)の配合量が8質量%以上であり、
質量比[(B)/(C1)]が25以上140以下であるゲル形成用組成物を調製する工程
工程(II) 基材と剥離フィルムとの間に前記ゲル形成用組成物を充填し、基材、ゲル形成用組成物層、及び剥離フィルムを順に有する積層シートを作製する工程
工程(III) 前記積層シートを包装体内に密封し、次いで該包装体内で前記ゲル形成用組成物層を架橋させる工程
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお、本実施例における各種測定は下記方法により行った。
【0063】
<成分(B)の1質量%水溶液粘度>
成分(B)の1質量%水溶液の粘度は、25℃において、B型粘度計(東機産業(株)製「TVB-10」)を用いて測定した。
【0064】
<成分(D)の重量平均分子量>
成分(D)の粉末原料の重量平均分子量は、下記条件で、粉末原料を水に溶解させた水溶液をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定することにより求めた。またゲル層中の成分(D)の重量平均分子量は、下記条件で、ゲル層の抽出液をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定することにより求めた。表中に記載の成分(D)の重量平均分子量は、粉末原料及びゲル層中の成分(D)の重量平均分子量である。
<SEC測定条件>
測定装置:東ソー(株)製「SEC-8320」
溶離液:0.2mol/Lリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1(V/V%)
ガードカラム:東ソー(株)製「PWXL(6mm×4cm)」
分析カラム:東ソー(株)製「G4000PWxL+G2500PWxL(7.8mm×30cm)」
流量:1mL/min
カラム温度:40℃
注入量:100μL
サンプルサイズ:1mg/mL
分子量換算標準:東ソー(株)製PEO(SE-150(97.7万)、SE-70(58万)、SE-30(39.4万)、SE-15(14.3万)、SE-8(10.1万)、SE-2(2.1万))
検出器:RI
【0065】
実施例1~27、比較例1~9(ゲル形成用組成物の調製、身体貼付用シートの製造及び評価)
(ゲル形成用組成物の調製)
表に示す処方に従ってゲル形成用組成物を調製した。具体的には、プロピレングリコールにパラオキシ安息香酸メチル及びメントールを加温溶解させた溶液と、ポリビニルアルコール及びpH調整剤を含有した水溶液とを予め調製した。ポリビニルアルコール及びpH調整剤を含有した水溶液を混練機に投入し、次いでその他の全成分を添加して混合し、ゲル形成用組成物を調製した。なお、表に記載した配合量は、各成分の有効成分量(質量%)である。また表中、アルミニウムイオンによる架橋形成能を有し且つ成分(B)に属さないポリマーを「成分(B’)」と表記した。
【0066】
(身体貼付用シートの製造)
上記ゲル形成用組成物を、基材であるポリエステル不織布(厚さ0.7mm)と、ポリプロピレン剥離フィルムとの間に挟み込み、ベーカー式アプリケーターによってゲル形成用組成物層の厚さを1.5mmに調整して展延することで、不織布、ゲル形成用組成物層、及び剥離フィルムが順に積層されたシートを得た。該シートを12.5cm×8.5cmにカットしアルミピロー(120mm×170mm、アズワン製)に密封した後、表に記載の条件下にて熟成し、ゲル形成用組成物層の架橋反応を進行させて、不織布、ゲル層、及び剥離フィルムをこの順で有する3層構成の身体貼付用シートを製造した。
得られた身体貼付用シートを用いて、以下の方法で評価を行った。結果を表1~5に示す。
【0067】
<ボールタック試験>
各例の身体貼付用シートのゲル層のボールタック試験は、JIS Z0237:2009に準拠して、傾斜板の角度30°、温度23℃、50%R.H.の条件下で行った。各例の身体貼付用シートをアルミピローから取り出し、剥離フィルムを剥がした後に速やかにボールタック試験機に設置してボールタック試験を実施し、ゲル層の粘着領域で5秒以上停止する最大のボールナンバーを表に示した。
【0068】
<損失正接(tanδ)>
各例の身体貼付用シートのゲル層の損失正接(tanδ)は、レオメータ(アントンパール(株)製「Physica MCR301」)を用いて測定した。各例の身体貼付用シートを直径25mmの円に切り出し、不織布側を両面テープでレオメータの試料部(直径25mmの平行平板)に固定した。次いで剥離フィルムをはがして、以下の条件でゲル層の損失弾性率及び貯蔵弾性率を測定し、これらの値から損失正接(tanδ)を算出した。測定は複数回(3回以上)行い、その平均値を採用した。
〔測定条件〕
・ノーマルフォース:1N
・ギャップ間隔:1~2mm
・ゲル層の質量:0.5~1.0g
・測定周波数:0.1Hz
・歪:2%
・温度:25℃
【0069】
<密着性(ふくらはぎ)>
貼付直後の密着性
各例の身体貼付用シートをアルミピローから取り出し、剥離フィルムを剥がした直後に、専門パネラーのふくらはぎに、シート長辺がふくらはぎの周方向に対し垂直となるよう貼付した。貼付から10秒経過後に、専門パネラーが足首の底背屈運動を10回行い、身体貼付用シートがふくらはぎから浮いている部分、すなわち該ふくらはぎから剥がれている部分の面積を測定した。身体貼付用シート全体の面積に対する、該シートが剥がれている部分の面積の割合(%)を求め、下記基準にしたがって評価した。評価の数値が高いほど、貼付直後の密着性が優れていることを表している。
なお、本実施例の専門パネラーによる評価は、いずれも3名のパネラーにより行われ、表に示した評価の数値は3名のパネラーの平均値である。
〔評価基準〕
7:シートが剥がれている部分の面積の割合が5%以下。
6:シートが剥がれている部分の面積の割合が5%超10%以下。
5:シートが剥がれている部分の面積の割合が10%超20%以下。
4:シートが剥がれている部分の面積の割合が20%超30%以下。
3:シートが剥がれている部分の面積の割合が30%超40%以下。
2:シートが剥がれている部分の面積の割合が40%超50%以下。
1:シートが剥がれている部分の面積の割合が50%超。
【0070】
再貼付性
各例の身体貼付用シートを前記と同様に専門パネラーのふくらはぎに貼付し、貼付から10秒経過後に剥離した。同試行を再度実施した後、専門パネラーのもう片方のふくらはぎに、剥離した身体貼付用シートを前記と同様に再度貼付し、10秒経過後に足首の底背屈運動を10回行った。前記と同様の方法で身体貼付用シートがふくらはぎから剥がれている部分の面積を測定し、前記基準にしたがって評価した。評価の数値が高いほど、貼り直し後の密着性が優れていることを表している。
【0071】
クリーム塗布後の密着性
市販のボディクリーム(油剤:11%、乳化剤:2.5%、ポリオール:12%、水:72%、その他:2.5%)を専門パネラーのふくらはぎに塗布した。次いで前記と同様に、各例の身体貼付用シートを専門パネラーのふくらはぎに貼付し、貼付から10秒後に、専門パネラーが足首の底背屈運動を10回行った。前記と同様の方法で身体貼付用シートがふくらはぎから剥がれている部分の面積を測定し、前記基準にしたがって評価した。評価の数値が高いほど、ボディクリーム塗布後の密着性が優れていることを表している。
【0072】
長時間密着性
各例の身体貼付用シートを前記と同様に専門パネラーのふくらはぎに貼付した。3時間貼付した後の剥がれにくさを5段階(5点:非常に剥がれにくい、4点:剥がれにくい、3点:やや剥がれにくい、2点:やや剥がれやすい、1点:剥がれやすい)で評価した。評価の数値が高いほど、長時間貼付後の密着性が優れていることを表している。
【0073】
<密着性(ひざ)>
負荷条件下の密着性
負荷条件を課した状態での密着性を評価した。この負荷条件は、曲率の高い部分へ身体貼付用シートを貼付し、且つ、貼付した部分に動きを加えるものであり、曲率の高い部位への貼付直後の密着性及び追従性を評価できる。
各例の身体貼付用シートをアルミピローから取り出し、剥離フィルムを剥がした直後に、専門パネラーのひざに、シート長辺が膝の周方向に対し並行となるよう貼付した。貼付から10秒経過後に、専門パネラーがひざの曲げ伸ばし(90°~180°)運動を10回行い、身体貼付用シートがひざから浮いている部分、すなわちひざから剥がれている部分の面積を測定した。身体貼付用シート全体の面積に対する、該シートが剥がれている部分の面積の割合(%)を求めた。評価基準はふくらはぎへの粘着性と同じである。評価の数値が高いほど、負荷条件下の密着性が優れていることを表している。
【0074】
<取り扱い性>
(貼付しやすさ)
各例の身体貼付用シートをアルミピローから取り出し、剥離フィルムを剥がした直後に、専門パネラーのふくらはぎに、シート長辺がふくらはぎの周方向に対し垂直となるように貼付した。その際の貼付しやすさを5段階(5点:非常に貼付しやすい、4点:貼付しやすい、3点:やや貼付しやすい、2点:やや貼付しにくい、1点:貼付しにくい)で評価した。評価の数値が高いほど、容易かつきれいに身体貼付用シートを貼付しやすいことを表しており、数値が低いほど皺等が生じて身体貼付用シートをきれいに貼付しにくいことを表している。
【0075】
(指へのべたつき)
各例の身体貼付用シートを上記と同様に貼付した際の粘着面(ゲル層)の指へのべたつきを5段階(5点:べたつかない、4点:あまりべたつかない、3点:ややべたつく、2点:べたつく、1点:非常にべたつく)で評価した。評価の数値が高いほど、指へのべたつきの度合いが低いことを表している。
【0076】
(粘着面同士の離しやすさ)
各例の身体貼付用シートをアルミピローから取り出し、剥離フィルムを剥がしてシートを二つ折りにして、粘着面同士を接着させた。次いで、粘着面を離すときの離しやすさを5段階(5点:離しやすい、4点:やや離しやすい、3点:やや離しにくい、2点:離しにくい、1点:非常に離しにくい)で評価した。評価の数値が高いほど、粘着面同士が一旦貼り付いても離しやすく(元の状態に戻しやすく)、取り扱い性が良好であることを表している。
【0077】
<保存安定性>
各例の身体貼付用シートを、アルミピローに封入した状態で50℃の恒温槽で1か月保管した後、25℃に戻した。アルミピローから身体貼付用シートを取り出し、外観及びゲル性状の保存安定性を下記基準で5段階評価した。評価の数値が高いほど、保存安定性が高いことを表している。
(外観)
5:保存前の状態と同等
4:ゲルの変色、不織布への染みだしが若干みられる
3:ゲルの変色、不織布への染みだしがややみられる
2:ゲルの変色、不織布への染みだしがみられる
1:シートとして使用困難
(ゲル性状)
各例の身体貼付用シートをアルミピローから取り出し、専門パネラーの前腕部に30分貼付後に剥離した際の肌へのゲル残りを5段階で評価した。
5:保存前の状態と同等(ゲルが肌に残らない)
4:ゲルがわずかに肌に残る
3:ゲルがやや肌に残る
2:ゲルが脆く、多量のゲルが肌に残る
1:シートとして使用困難
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
表1~5より、本実施例の身体貼付用シートは皮膚への貼付直後の密着性及び負荷条件下の密着性がともに良好であり、長時間貼付時の剥がれにくさ、油分の存在する皮膚への密着性、並びに再貼付性も良好である。さらに、貼付時の取り扱い性にも優れており、ゲル層の経時劣化が少なく保存安定性も良好である。これに対し本比較例の身体貼付用シートでは、皮膚への貼付直後の密着性及び負荷条件下の密着性と、皮膚への貼付しやすさとのすべてを充足することができなかった。
【0084】
なお、
図1は、実施例1及び比較例4で得られた身体貼付用シートのゲル層の粘弾性挙動(測定周波数と損失正接(tanδ)との関係)を示すグラフである。
図1に示すように、実施例1のゲル層は比較例4と比べ、より広い周波数領域で損失正接が0.20以上となり、粘性的性質を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、皮膚への密着性、特に曲率の高いひじ、ひざ等の関節部分に貼付して貼付部分に動きを加えた場合にも密着性が良好で、且つ貼付時の取り扱い性に優れる身体貼付用シートを提供できる。