(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】変速部を内蔵した電気モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20230623BHJP
F16H 3/52 20060101ALI20230623BHJP
F16H 3/66 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H3/52
F16H3/66
(21)【出願番号】P 2022506719
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 KR2020016746
(87)【国際公開番号】W WO2022034977
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0101888
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522042991
【氏名又は名称】クォン,ジョンウ
【氏名又は名称原語表記】KWON, Jungwoo
【住所又は居所原語表記】1006ho, 101dong, 785, Manghyang-ro, Seonggeo-eup, Seobuk-gu, Cheonan-si, Chungcheongnam-do,KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ジョンウ
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0012177(KR,A)
【文献】特開2005-287215(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0006370(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-0911151(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00- 7/20
F16H 3/52
F16H 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内周面に配置され、電磁力を発生する第1部材を備える固定子と、
前記固定子の内周面に対向する外周面に配置されて前記第1部材と共に電磁力を発生する第2部材を備える回転子と、
前記回転子の内部に備えられ、変速可能に形成されたギアアセンブリと、
前記ギアアセンブリを制御する制御部と、
を含み、
前記回転子の内部には、前記ギアアセンブリに備えられたギアプレートに結合されるギア歯が形成され、
前記ギアアセンブリは、前記回転子が回転することにより、出力シャフトに動力が伝達されるように構成され
、
前記ギアアセンブリは、
前記回転子が回転することにより回転する少なくとも1つのギアプレートと、
前記少なくとも1つのギアプレートのいずれかと選択的に結合するように形成された連結ギアと、
前記連結ギアを軸方向に移動させる移動部と、
前記連結ギアが回転することにより共に回転して回転力を外部に伝達する出力シャフトと、
を含み、
前記制御部は、変速信号に応じて前記移動部を移動させ、前記連結ギアが前記少なくとも1つのギアプレートのいずれかに結合されるか、又は結合が解除されるようにして前記出力シャフトを制御する、
変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項2】
前記第1部材は、電流が供給されるコイル部であり、
前記第2部材は、磁石である、
請求項1に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのギアプレートは、少なくとも1つの衛星ギアを含む、請求項
1に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのギアプレートは、
前記回転子の回転速度より遅い速度で回転する第1ギアプレートと、
前記第1ギアプレートより速い速度で回転する第2ギアプレートと、
前記第2ギアプレートより速い速度で回転する第3ギアプレートと、
を含む、請求項
3に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのギアプレートのそれぞれは、前記連結ギアに結合するように凹凸形状の内周面を有する連結部を含む、請求項
1に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項6】
前記衛星ギアは、
回転子の内部に形成されるギア歯(Gear Tooth)に噛み合うように配置された第1衛星ギアと、
前記第1衛星ギアが回転することにより回転し、前記連結ギアが結合できるようにする結合中空が形成された中心ギア又はキャリアと、
を含む、請求項
3に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項7】
前記衛星ギアは、前記第1衛星ギアに噛み合って前記第1衛星ギアの回転により回転する第2衛星ギアをさらに含み、
前記中心ギアは、前記第2衛星ギアに噛み合って回転する、
請求項
6に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのギアプレートのうち、前記連結ギアが連結されていないギアプレートのギアプレートキャリア又は中心ギアは、筐体との固定が解除されるように形成されている、請求項
7に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのギアプレートの少なくとも1つは、
隣接するギアプレート間に設けられ、前記連結ギアの外周部より大きい内径の中空が形成されるニュートラル領域を含む、
請求項
5に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項10】
前記連結ギアは、前記出力シャフトに嵌合され、
前記連結ギアが前記少なくとも1つのギアプレートのいずれかに連結され、前記出力シャフトが回転するように前記連結ギアの移動を制御する制御部を含む、
請求項
9に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項11】
前記制御部は、前記連結ギアが前記ニュートラル領域から前記少なくとも1つのギアプレートのいずれかに連結されるように前記移動部により移動すると、前記連結ギアに連結されるギアプレートを前記連結ギアと同程度の速度で回転させるように構成されている、請求項
10に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項12】
前記移動部は、
一側にネジ山が形成され、前記出力シャフトを覆う移動ロッドと、
回転することにより、前記移動ロッドに形成されたネジ山に噛み合って前記連結ギアを移動させるベベルギアと、
前記移動ロッドの位置及び移動距離を保存するエンコーダと、
前記ベベルギアを回転させる移動モータと、
を含む、請求項
10に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項13】
前記移動ロッドのネジ山が形成された領域には、両側に扁平な回転制限面が備えられ、
前記移動ロッドは、前記回転制限面により前記ベベルギアの回転に応じて直線移動するように構成されている、
請求項
12に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【請求項14】
前記移動部は、移動ロッド固定装置をさらに含み、
前記移動ロッド固定装置は、前記移動モータの回転がない場合、前記連結ギアが軸方向に移動せずに前記移動ロッドが固定されるように構成されている、
請求項
12に記載の変速部を内蔵した電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速部を内蔵した電気モータに関し、電気モータの内部に変速可能な少なくとも1つのギアプレートを含む、変速部を内蔵した電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する関心や認識が高まっており、自動車産業のパラダイムは、温室ガス低減のための様々な環境規制強化に応じた燃費向上を目標とする。
【0003】
よって、ハイブリッド自動車の出現をはじめとして、近年、プラグインハイブリッド、電気自動車、水素燃料電池自動車などの電力ベース自動車の開発及び商用化が全世界的に徐々に拡大している現状である。
【0004】
このような電力ベース自動車のコア構成要素の1つが駆動用モータである。
【0005】
現在は、従来のエンジン自動車の構造を用いており、モータがエンジンを代替して動力を供給する。しかし、効率面でエンジン自動車よりは良いものの、依然として低い効率であり、電気自動車固有の機能を実現することができない。その理由は、電気モータに適用する変速システムが十分に開発されていないからである。
【0006】
特に、インホイールモータ(In-wheel motor)においては、自動車の車体構造とは独立して動作するので、エンジンなどのパワートレイン部品を用いなくても各車輪の駆動力を制御することができる。各車輪にそれぞれ配置されて駆動力を独立して制御するので、動力損失を最小限に抑えることができ、環境改善に役立ち、性能が改善される。また、重心が下部に移動するので、安全性が向上し、自動車製造時の効率性が向上し、車体重量が減少する。さらに、内部に配置される部品が減少するので、車内の空間をさらに大きくすることができる。
【0007】
現在、主な電気自動車会社は、電気自動車のための変速機を開発することができず、減速機のみ追加したモータを用いている現状である。しかし、減速機のみでは、登坂能力が著しく低下し、高速、定速走行時に過度な速度でモータを駆動するので、エネルギー効率が低く、走行距離も短く、バッテリー消費量も大きい。
【0008】
以前から自動車の減速機に多く用いられていたのが遊星ギアである。特に、エンジン自動車の自動変速機に採用されており、耐久性、性能などが確保されている。しかし、変速衝撃をなくすために、クラッチ、トルクコンバータ、シンクロナイザーなど、含まれる部品点数が多く、それを駆動するための油圧システムを必要とするので、部品のサイズが大きくなり、重量が増える。また、エネルギー効率も大幅に低下せざるを得ない。
【0009】
電気自動車においては、加速及び坂道走行に必要な大きな駆動トルクと高速時の十分な速度とを得るためにモータを大きくし、高機能で用いると、エネルギー効率が低くなるので、相対的に大きなバッテリーが必要になる。よって、電気自動車の価格が上昇し、重量が増加するという問題があった。
【0010】
電気モータは、低いRPMでも大きなトルクを発生するという利点がある。また、短時間で高いRPMに達して動作することができる。自動車の速度が低速であれば減速比が大きいギア比を用いて出力を大きくし、高速や定速であれば減速比が小さいギア比を用いてモータの回転速度を効率よく維持するので、エネルギー効率が高くなる。
【0011】
電気自動車用変速機は、モータの速度/トルク特性がよいので、従来のエンジン自動車用変速機の構造を採用することなく簡単に製作することができる。特に、インホイールモータにおいては、限られた空間内に配置するために、小型化が必須である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、電気自動車の動力である電気モータに変速機能を組み込み、制御可能な変速部を内蔵した電気モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータは、筐体の内周面に配置され、電磁力を発生する第1部材を備える固定子と、前記固定子の内周面に対向する外周面に配置されて前記第1部材と共に電磁力を発生する第2部材を備える回転子と、前記回転子の内部に備えられたギアアセンブリと、前記ギアアセンブリを制御する制御部とを含み、前記ギアアセンブリは、前記回転子が回転することにより回転する少なくとも1つのギアプレートと、前記少なくとも1つのギアプレートのいずれかと選択的に結合するように形成された連結ギアと、連結ギアを所望のギアプレート位置に移動させる移動部と、前記連結ギアが回転することにより共に回転して回転力を外部に伝達する出力シャフトとを含み、前記制御部は、変速信号に応じて前記連結ギアが前記少なくとも1つのギアプレートのいずれかに結合されるか、又は結合が解除されるように前記移動部を制御する。
【0014】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記第1部材は、電流が供給されるコイル部であってもよく、前記第2部材は、磁石であってもよい。
【0015】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記少なくとも1つのギアプレートは、少なくとも1つの衛星ギアを備え、前記回転子の回転速度より遅い速度で回転するキャリアを備える第1ギアプレートと、前記回転子と同じ速度で回転する第2ギアプレートと、少なくとも1つの衛星ギアを備え、前記回転子の回転速度より速い速度で回転する中心ギアを備える第3ギアプレートとを含んでもよい。
【0016】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記少なくとも1つのギアプレートは、前記連結ギアに結合するように凹凸形状の内周面を有する連結部を含んでもよい。
【0017】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記少なくとも1つのギアプレートは、少なくとも1つの衛星ギアを備え、前記第1ギアプレートのキャリアの回転速度より遅い速度で回転するキャリアを備える第4ギアプレートと、少なくとも1つの衛星ギアを備え、前記第3ギアプレートの中心ギアの回転速度より速い速度で回転する中心ギアを備える第5ギアプレートとを含んでもよい。
【0018】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記ギアプレートは、回転子の内部に形成されるギア歯(Gear Tooth)に噛み合うように配置された第1衛星ギアと、前記第1衛星ギアに噛み合って回転し、前記連結ギアが結合できるようにする結合中空が形成された中心ギア又はキャリアとを含んでもよい。
【0019】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記ギアプレートは、前記第1衛星ギアに噛み合って前記第1衛星ギアの回転により回転する第2衛星ギアをさらに含み、前記中心ギアは、前記第2衛星ギアに噛み合って回転する。
【0020】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記少なくとも1つのギアプレートのうち、前記連結ギアが連結されていないギアプレートが減速ギアである場合、筐体に固定されていた中心ギアの固定が解除されるように構成されてもよい。
【0021】
また、本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、増速ギアである場合、筐体に固定されていたギアプレートキャリアの固定を解除して増速機能を行わないようにすることにより、ギアの寿命を延長し、負荷を減らすように動作するようにしてもよい。
【0022】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記少なくとも1つのギアプレートの少なくとも1つは、隣接するギアプレート間に設けられ、前記連結ギアの外周部より大きい内径の中空が形成されるニュートラル領域を含んでもよい。
【0023】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記ニュートラル領域は、前記少なくとも1つのギアプレートのいずれかから突設されてもよい。
【0024】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記連結ギアは、前記出力シャフトに嵌合され、前記連結ギアが前記少なくとも1つのギアプレートのいずれかに連結され、前記出力シャフトが回転するように前記連結ギアの移動を制御する移動部を含んでもよい。
【0025】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記ニュートラル領域から前記少なくとも1つのギアプレートのいずれかに連結されるように前記移動部により移動すると、連結されるギアプレートが連結ギアと同程度の速度で回転して前記連結ギアと容易に結合するようにしてもよい。
【0026】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記移動部には、前記連結ギアの一側にネジ山が形成され、ベベルギアと、エンコーダと、移動モータとを含んでもよい。ベベルギアは、回転することにより、前記移動ロッドに形成されたネジ山に噛み合って前記連結ギアを軸方向に移動させる。エンコーダは、前記連結ギアの位置及び移動距離が分かるようにし、移動モータは、前記ベベルギアを回転させる。
【0027】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記移動ロッドのネジ山が形成された領域には、両側に扁平な回転制限面が備えられ、前記移動ロッドは、前記回転制限面により前記ベベルギアの回転に応じて直線移動するように構成されてもよい。
【0028】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、前記移動部は、前記移動モータの回転がない場合、前記軸方向に移動せずに固定されるように構成されてもよい。
【0029】
本発明の一態様による変速部を内蔵した電気モータにおいて、連結ギアは、移動部に結合され、連結ギアは、出力シャフトに嵌合されて共に回転し、移動部は、扁平な回転制限面により連結ギアと出力シャフトが回転しても回転せず、直線方向に連結ギアを移動させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータは、連結ギアがニュートラル領域から少なくとも1つのギアプレートのいずれかに連結されるように移動部により移動すると、ギアプレートが連結ギアと同程度の速度で回転する。よって、連結ギアが回転するギアプレートに連結される際に発生し得る衝撃を低減することができる。
【0031】
また、本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータは、回転子の内部に変速機能を有するギアアセンブリを含むため、外部に別途の変速機を備えなくてもよいので、電気モータのサイズを小さくすることができるという利点がある。
【0032】
さらに、本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータは、回転子の内部に5段以上の多重ギアを有する電気モータを実現することができ、より狭い空間に高効率、高出力を達成するモータを実現することができる。
【0033】
さらに、本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータは、モータのサイズを増加させることなく、変速部を追加することができる。よって、サイズと重量が減少するので、同じ容量のバッテリーであってもより長い距離の運行が可能であり、バッテリー効率を向上させることができる。
【0034】
さらに、本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータは、小さなサイズに製作することができるので、インホイールモータ(In-Wheel Motor)として容易に用いられるという利点がある。インホイールモータであれば、ホイールサイズに合わせてモータの外径を大きくすることができるので、モータのサイズに囚われることなく、出力が大きなモータを装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータを示す斜視図である。
【
図3】
図1の変速部を内蔵した電気モータの変速機部分を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータについて説明するために構成の一部を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータについて説明するために構成の一部を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータについて説明するために構成の一部を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータについて説明するために構成の一部を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータについて説明するために構成の一部を示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータについて説明するために構成の一部を示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータにおける変速について説明するための概念図である。
【
図11A】本発明の他の実施形態による変速部を内蔵した電気モータの変速機部分を示す分解斜視図である。
【
図11B】本発明の他の実施形態による変速部を内蔵した電気モータの変速機部分を示す分解斜視図である。
【
図12】
図11A及び
図11Bの変速部を内蔵した電気モータにおけるギアの変速について説明するための概念図である。
【
図13】本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータを用いる変速制御方法について説明するためのフローチャートである。
【
図14】本発明の第1実施形態による変速部を内蔵した電気モータを用いた加速及び減速について説明するためのグラフである。
【
図15】本発明の第2実施形態による変速部を内蔵した電気モータを用いた加速及び減速について説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明には様々な変形を加えることができ、様々な実施形態が可能であるため、特定の実施形態を例示して詳細に説明する。しかし、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲におけるあらゆる変換、均等物又は代替物を含むものと理解されるべきである。
【0037】
本発明において用いる用語は、単に特定の実施形態について説明するために用いるものであり、本発明を限定するものではない。単数の表現には、特に断らない限り複数の表現が含まれる。本発明における「含む」、「有する」などの用語は、明細書に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はそれらの組み合わせが存在することを示すものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はそれらの組み合わせの存在又は付加可能性を予め排除するものではないことが理解されるべきである。
【0038】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ここで、添付図面において、同一構成要素にはできる限り同一符号を付す。また、本発明の要旨を不明にするおそれのある公知の機能や構成についての詳細な説明は省略する。同じ理由により、添付図面において、一部の構成要素を誇張したり、省略したり、概略的に示すこともある。
【0039】
図1及び
図2は本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータを示す斜視図である。
図3は
図1の変速部を内蔵した電気モータの変速機部分を示す分解斜視図である。
図4~
図9は本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータについて説明するために構成の一部を示す斜視図である。
【0040】
本発明においては、一例として遊星ギアの実施形態を挙げて説明するが、遊星ギアを変更して用いることもでき、遊星ギア以外の方式を用いることもできる。また、一般的には減速を多く用いるが、実施形態を詳細に説明するために、増速、等速も追加した。
【0041】
また、本発明の一実施形態とは異なり、ギアプレートが1つのみ備えられてもよい。例えば、変速部にギアプレートが1つのみ備えられてもよい。よって、電気モータの回転子は短時間で非常に速い回転速度に達して回転するので、ギアプレートを回転子の回転速度の減速のために用いてもよい。
【0042】
本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータMは、電気モータを用いる自動車などの運送手段に設置される。特に、電気モータは、そのサイズが小さく、制御が容易であるため、空間の制約をそれほど受けないので、自動車のホイールの近傍に配置される。
【0043】
本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータMは、固定子100と、回転子200と、ギアアセンブリGAと、制御部400とを含む。
【0044】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、固定子100は、変速部を内蔵した電気モータMの少なくとも一部を覆うように形成される。固定子100の外面には、モータなどを覆う追加カバーがさらに備えられる。
【0045】
固定子100は、固定子100の内周面に配置されて電磁力を発生する第1部材を含む。固定子100は回転しない。第1部材、及び後述する第2部材に印加される電磁力により、後述する回転子200が回転する。一方、固定子100を覆う筐体には、放熱板101が備えられる。回転子200には、固定子100の内周面に対向する外周面に配置されて第1部材と共に電磁力を発生する第2部材が備えられている。回転子200が回転することにより、第1部材と第2部材とが互いに近づく動作と遠ざかる動作が繰り返して行われる。第1部材と第2部材間に形成される電磁力により、回転子200が回転する。
【0046】
回転子200の内部には、ギア歯205が形成されている。回転子200のギア歯205に少なくとも1つのギアプレート300が連結されて回転する。すなわち、回転子200が回転することにより、回転子200の内部に配置される少なくとも1つのギアプレート300が回転する。
【0047】
一方、固定子100の第1部材は電流が供給されるコイルであり、回転子200の第2部材は磁石である。また、上記説明とは異なり、第1部材は磁石であり、第2部材は電流が供給されるコイルであってもよい。
【0048】
また、前述した実施形態とは異なり、固定子100と回転子200の位置が入れ替わって形成されてもよい。その場合は、回転子200が固定子100に比べて長く形成され、回転子200の内部に形成されるギア歯に少なくとも1つのギアプレート300が連結されて回転するようにしてもよい。また、回転子の中心に回転軸を形成し、固定子の内面にギア歯を形成し、そこに少なくとも1つのギアプレートを備えて変速するようにしてもよい。
【0049】
ギアアセンブリGAは、回転子200の内部に備えられる。具体的には、ギアアセンブリGAは、回転子200の内部に備えられ、モータのギアが変速できるようにする。
【0050】
図2及び
図3に示すように、ギアアセンブリGAは、少なくとも1つのギアプレート300と、連結ギア410と、移動部420と、出力シャフト421とを含む。
【0051】
ギアプレートは、平行に複数配置される。ギアプレートのそれぞれは、回転子200が回転することにより回転するように構成される。
【0052】
具体的には、少なくとも1つのギアプレート300は、第1ギアプレート310と、第2ギアプレート320と、第3ギアプレート330とを含む。ここで、第1ギアプレート310及び第3ギアプレート330は、少なくとも1つの衛星ギア及び衛星ギアを固定するためのキャリアを含む。
【0053】
図7の(a)及び(b)は連結ギア410と第1ギアプレート310が連結された状態を異なる方向から見た図である。
【0054】
第1ギアプレート310は、少なくとも1つの衛星ギアを備え、回転子200の回転速度より遅い速度で回転するギアプレートキャリア310を含む。
【0055】
具体的には、
図3に示すように、第1ギアプレート310は、第1衛星ギア311と、中心ギア315と、第1ギアプレートキャリア310aとを含む。
【0056】
第1衛星ギア311は、前述した回転子200の内部のギア歯205に連結されるように配置される。すなわち、第1衛星ギア311は、回転子200の内部に形成されるギア歯(Gear Tooth)に噛み合うように配置される。よって、第1衛星ギア311は、回転子200が回転することにより直接回転する。
【0057】
中心ギア315は、第1衛星ギア311に噛み合うように配置され、ピン301により筐体に固定されている。
【0058】
中心ギア315の中心には連結ギア410が貫通しており、連結ギア410と第1ギアプレート310との連結が解除されるニュートラル領域が形成される。
【0059】
また、第1ギアプレートキャリア310aの内部に、結合中空が形成される。
【0060】
図8は第2ギアプレート320と連結ギア410が連結された状態を示す図である。
【0061】
第2ギアプレート320は、回転子200と同じ速度で回転する。具体的には、第2ギアプレート320の外周面に形成されたギア歯と、回転子200の内周面に形成されたギア歯とが噛み合って回転するので、第2ギアプレート320は、回転子200の回転速度と同じ速度で回転する。
【0062】
図4の(b)に示すように、第2ギアプレート320は、第1ギアプレート310及び第3ギアプレート330に向かって突設されるニュートラル領域329を含む。具体的には、
図4の(b)に示すように、第2ギアプレート320の連結部328を中心に、両側に突出した第1ニュートラル領域329a及び第2ニュートラル領域329bが配置される。ただし、設計上の理由から、第2ギアプレート320のニュートラル領域が1つのみ備えられるようにしてもよい。
【0063】
図6に示すように、第3ギアプレート330は、少なくとも1つの衛星ギアを含み、回転子200の回転速度より速い速度で回転する中心ギア335を含む。
【0064】
図9の(a)及び(b)は第3ギアプレート330と連結ギア410が連結された状態を異なる方向から見た図である。第3ギアプレート330は、第1衛星ギア331と、第2衛星ギア332と、中心ギア335とを含む。
【0065】
第1衛星ギア331は、回転子200に噛み合って回転する。すなわち、第1衛星ギア331と回転子200の内側のギア歯が噛み合って回転する。また、第2衛星ギア332は、第1衛星ギア331に噛み合って第1衛星ギア331の回転により回転する。さらに、中心ギア335は、第2衛星ギア332に噛み合って回転する。
【0066】
すなわち、回転子200から伝達される回転力は、第3ギアプレート330の第1衛星ギア331、第2衛星ギア332及び中心ギア335を介して連結ギア410に伝達される。ここで、中心ギア335は、第1衛星ギア331及び第2衛星ギア332が配置されるので、相対的に直径が小さくなる。中心ギア335の直径が小さく形成されるので、回転子200が1回転すると、第3ギアプレート330の中心ギア335はそれより多く回転する。
【0067】
図2に示すように、第3ギアプレート330に連結された連結ギア410も、それより多く回転する。よって、連結ギア410に連結された出力シャフト421がそれより多く回転する。
【0068】
図1に示すように、第3ギアプレート330は、電気モータのカバーなどに固定されるように、第3ギアピン331を備える。第3ギアピン331は、第3ギアプレートキャリア330aを電気モータのカバーに固定する。
【0069】
図4の(a)に示すように、ギアアセンブリGAは、移動部420のネジ山が形成された部分から一側に向かって、第1ギアプレート310、第2ギアプレート320及び第3ギアプレート330が整列して配置される。第1ギアプレート310と第2ギアプレート320間には、第1ニュートラル領域329aが形成され、第2ギアプレート320と第3ギアプレート330間には、第2ニュートラル領域329bが形成される。また、第1ギアプレート310の中心ギア315の内周面にも、ニュートラル領域が形成される。
【0070】
前述した少なくとも1つのギアプレート300のそれぞれは、連結ギア410に結合されるように、凹凸形状の内周面を有する連結部を含む。
【0071】
具体的には、中心ギア315の内周面が連結部318となる。ただし、第2ギアプレート320においては、中心ギアが備えられないので、第2ギアプレートキャリア320に連結部328が形成される。
【0072】
各ギアプレートの連結部は、各ギアプレートと連結ギア410の外周面とを結合するので、回転子200から伝達される回転力により連結ギア410を回転させる。よって、連結ギア410に連結された出力シャフト421に回転力が伝達される。
【0073】
一方、少なくとも1つのギアプレート300のうち、連結ギア410が連結されていないギアプレートのキャリア330a又は中心ギア315は、筐体から固定解除される。
【0074】
例えば、連結ギア410が第1ギアプレート310に連結される場合、第3ギアプレート330の第3ギアプレートキャリア330aは筐体から固定が解除されるように構成されている。具体的には、第3ギアプレートキャリア330aと筐体を連結するピンが解除されるので、増速機能を行うことなく、回転子と同じ回転速度で回転する。よって、第3ギアプレート330に加えられる駆動力が減少するので、回転子200に印加される負荷が減少し、ギアの寿命が延びる。
【0075】
本発明の一実施形態による少なくとも1つのギアプレート300の少なくとも1つは、隣接するギアプレート間に設けられて、連結ギア410の外周部より大きい内径の中空が形成されるニュートラル領域を含む。
【0076】
ニュートラル領域は、少なくとも1つのギアプレート300のいずれかから突設される。
図3に示すように、第2ギアプレート320は、第2ギアプレート320から両側に突出した2つのニュートラル領域を含む。具体的には、第2ギアプレート320は、第1ギアプレート310に向かって突出した第1ニュートラル領域329aと、第3ギアプレート330に向かって突出した第2ニュートラル領域329bとを含む。また、第1ギアプレート310においては、中心ギア315の内面にニュートラル領域が含まれている。
【0077】
一方、本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータMは、移動部420を含む。移動部420は、連結ギア410が少なくとも1つのギアプレート300のいずれかに連結されるように連結ギア410を移動させる。ここで、制御部400は、信号に応じて移動部420を移動させる。移動部420については詳細に後述する。
【0078】
連結ギア410は、少なくとも1つのギアプレート300のいずれかに選択的に結合されるように形成される。連結ギア410は、前述した各ギアプレートの連結部に結合されるように、外周面にギア歯が形成される。
【0079】
連結ギア410は、出力シャフト421に嵌合されている。すなわち、連結ギア410は、出力シャフト421に沿って移動可能に形成されている。よって、出力シャフト421は、連結ギア410がギアプレートに結合されて回転することにより、共に回転して回転力を外部に伝達する。
【0080】
また、出力シャフト421は、車両のホイールに連結される。さらに、連結ギア410は、出力シャフト421に連結される。よって、車両のホイールの回転はすなわち連結ギア410の回転である。また、連結ギア410の回転はすなわち出力シャフト421の回転である。
【0081】
出力シャフト421の一側に、回転速度検出用エンコーダ420aが設けられている。回転速度検出用エンコーダ420aは、移動ロッド425の内部で回転する出力シャフト421の回転速度を検出する。
【0082】
また、移動ロッド425の内部には、出力シャフト421が存在する。出力シャフト421は、ネジ山が形成された領域の後ろまで延びている。また、連結ギア410は、出力シャフト溝422に嵌合される(
図7参照)。
【0083】
一方、連結ギア410がニュートラル領域から少なくとも1つのギアプレート300のいずれかに連結されるように移動部420により移動すると、ギアプレートが連結ギア410の回転速度と同程度の速度に瞬間的に加速又は減速される。これは、ギアプレートの回転速度が連結される連結ギア410と同程度の速度に合わせられることを意味する。こうして、連結ギア410の回転速度が、連結されるギアプレートの回転速度と同程度になり、連結ギア410とギアプレートが容易に結合されるようにする。
【0084】
ここで、連結ギア410が連結されるギアプレートに応じて、回転子200の回転速度が変化することがある。これは、各ギアプレートの連結部が連結ギア410に変速衝撃が生じることなく連結されるために必要な回転速度になるからである。
【0085】
例えば、連結ギア410が一定の速度で回転していると仮定すると、第1ギアプレート310に連結されるために必要な回転子200の回転速度は、第2ギアプレート320や第3ギアプレート330に連結されるために必要な回転子200の回転速度より大きい。
【0086】
すなわち、連結ギア410が第1ギアプレート310、第2ギアプレート320、及び第3ギアプレート330に連結された状態で回転子200が同じ1の回転速度で回転する場合、連結ギア410に伝達される回転速度はそれぞれ0.5、1及び2である。
【0087】
逆に、連結ギア410の回転速度が同じ1である場合、連結ギア410が第1ギアプレート310、第2ギアプレート320及び第3ギアプレート330に連結されるために必要な回転子200の回転速度はそれぞれ2、1及び0.5である。
【0088】
図5に示すように、制御部400は、出力シャフト421とギアアセンブリGAとの間に配置される。制御部400は、ギアアセンブリGAを制御する。具体的には、制御部400は、変速のために、ギアアセンブリGAから出力シャフト421に連結されるギアを選択して連結を制御する。
【0089】
制御部400は、変速信号に応じて、連結ギア410が少なくとも1つのギアプレート300のいずれかに結合されるか、又は結合が解除されるように、移動部420を制御する。
【0090】
例示したギアプレートは、中心ギアと、衛星ギアと、キャリアとを含む遊星ギアセットである。ここで、回転子の内周面に加工されたギアが遊星ギアの入力となるリングギアの役割を果たす。また、減速ギアにおいては、中心ギアを固定し、キャリアに連結部を形成してギアプレートの出力として用いる。逆に、増速ギアにおいては、キャリアを固定し、中心ギアに連結部を形成してギアプレートの出力として用いる。
【0091】
制御部400は、連結ギア410がニュートラル領域329に位置し、連結ギア410が特定ギアプレートに結合されるようにする信号を受信すると、次のように変速部を内蔵した電気モータMを制御する。制御部400は、連結ギア410がどのギアプレートに連結されているかを把握し、その後当該ギアプレートの連結部の回転速度と連結ギア410の回転速度が同程度になるように、回転子200を回転させる。
【0092】
図6に示すように、移動部420において、連結ギア410の一側には、ネジ山が形成される。移動部420のネジ山は、ベベルギア430に噛み合い、ベベルギアの回転により移動部420を軸方向に移動させる。
【0093】
移動部420のネジ山が形成された領域には、両側に扁平な回転制限面426が備えられる。具体的には、回転制限面426は、移動部420のネジ山が形成された領域において、移動部420の両側に整列して形成されている。
【0094】
回転制限面426は、前述したベベルギア430の内面に形成されたネジ溝に噛み合わない。また、筐体の回転制限面426の形態に応じた孔を通過する。よって、移動部420に回転制限面426が形成されるので、ベベルギア430が回転しても回転しない。すなわち、移動部420の周囲にネジ山と回転制限面426が形成されるので、ベベルギア430が回転すると、回転運動ではなく、直線移動が行われる。
【0095】
一方、移動部420を固定する固定装置440は、移動モータ450の回転がないときは移動部420が軸方向に移動しないように、移動部420の移動を固定するように構成されている。具体的には、連結ギア410が特定のギアプレートに連結されて回転する場合、連結ギア410に連結された移動部420の移動が制限される必要がある。よって、連結ギア410が特定のギアプレートに連結されて回転する間、固定装置440は、連結ギア410が出力シャフト421の軸方向に移動しないように、移動部420の移動を制限する。
【0096】
移動部420は、移動ロッド425と、ベベルギア430と、エンコーダ(移動位置確認用)と、移動モータ450とを含む。
【0097】
ベベルギア430は、移動モータ450により回転する。ベベルギア430の内面には、移動部420に形成されたネジ山に噛み合うように形成された溝が形成されている。
【0098】
ベベルギア433が回転することにより、移動部420に取り付けられたベベルギア430が回転し、このベベルギア430が移動部420に形成されたネジ山に噛み合い、移動部420を軸方向に移動させる。移動部420が軸方向に移動することにより、移動部420に連結された連結ギア410が少なくとも1つのギアプレート300のいずれかに連結されるか、又はそこから分離される。
【0099】
前記エンコーダは、連結ギア410の位置及び移動距離を保存する。エンコーダは、後述する移動モータ450の内部に含まれている。また、保存されている連結ギア410の位置及び移動距離は、制御部400に伝送される。よって、制御部400は、連結ギア410が連結されているか、連結されていないか、どのギアプレートに連結されているかを把握することができる。すなわち、制御部400は、連結ギア410の位置を把握することができる。
【0100】
移動モータ450は、動力が供給されると、ベベルギア430を回転させる。よって、移動部420が軸方向に移動する。
【0101】
本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータMは、回転子200の内部に変速機能を有するギアアセンブリGAを含む。そのため、別途の変速機を備えなくてもよいので、電気モータのサイズを小さくすることができるという利点がある。
【0102】
また、本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータは、衛星ギアを含む遊星ギアの形式ではない一般的なギアを用いるようにしてもよい。その場合も、回転子の内部にギアアセンブリを含むので、電気モータのサイズを小さくすることができる。
【0103】
一方、前述した実施形態とは異なり、少なくとも1つのギアプレートは、全て減速のためのギアプレートであってもよい。すなわち、電気モータの回転子の回転速度(rpm)は、非常に速い回転速度であるので、少なくとも1つのギアプレートのそれぞれが回転子に対して異なる減速比を有するように配置されてもよい。
【0104】
図10は本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータMにおける変速について説明するための概念図である。
【0105】
図10の(a)は、連結ギア410と第1ギアプレート310の連結が解除された状態である。モータの変速が行われない基本状態ともいう。
【0106】
図10の(b)は、移動部により連結ギア410が第1ギアプレートキャリア310a側に移動した状態である。すなわち、連結ギア410は、第1ギアプレート310のギアプレートキャリア310aに連結された状態である。ここでは、連結ギア410が回転子200の回転速度より遅い角速度で回転する。自動車のギアで言えば、1速のローギアに入った状態と言える。
【0107】
図10の(c)は、移動部により連結ギア410が移動し、連結ギア410が第1ニュートラル領域329aに配置された状態である。
【0108】
図10の(d)は、移動部により連結ギア410が移動し、連結ギア410が第2ギアプレート320に連結された状態である。ここでは、連結ギア410が回転子200の回転速度と同じ角速度で回転する。自動車のギアで言えば、2速のセカンドギアに入った状態と言える。
【0109】
図10の(e)は、移動部により連結ギア410が移動し、連結ギア410が第2ニュートラル領域329bに配置された状態である。
【0110】
図10の(f)は、移動部により連結ギア410が移動し、連結ギア410が第3ギアプレート330に連結された状態である。ここでは、連結ギア410が回転子200の回転速度より速い角速度で回転する。自動車のギアで言えば、3速のサードギアに入った状態と言える。
【0111】
前述したように、連結ギア410は、少なくとも1つのギアプレート300のいずれかに連結されるか、又はギアプレートに連結されていないニュートラル領域に配置される。
【0112】
連結ギア410がニュートラル領域にあるとき、ギアプレートから連結ギア410には回転力が伝達されないが、連結ギア410は、出力シャフト421及びホイールに連結されているので、ホイール及び出力シャフト421の速度で回転する。
【0113】
ここで、連結ギア410がニュートラル領域から、少なくとも1つのギアプレート300のいずれかに連結されるように、移動部により移動する際に、前記ギアプレートのうち連結ギア410に連結されるギアプレートは、前記連結ギアと同程度の速度で回転するように、制御部400により回転子200の回転速度が制御される。よって、連結ギア410が回転するギアプレートに連結される際に発生し得る衝撃を低減することができる。
【0114】
図11A及び
図11Bは本発明の他の実施形態による変速部を内蔵した電気モータの変速機部分を示す分解斜視図である。
図12は
図11A及び
図11Bの変速部を内蔵した電気モータにおけるギアの変速について説明するための概念図である。
【0115】
本実施形態による変速部を内蔵した電気モータは、
図1~
図10で説明した変速部を内蔵した電気モータと比較して、ギアプレートを2つ多く備えるという差異があるだけにすぎず、他の構成要素は同一又は類似するので、同一又は類似する構成要素についての説明は省略する。
【0116】
本実施形態において、変速部を内蔵した電気モータM’は、第1ギアプレート310と、第2ギアプレート320と、第3ギアプレート330とを含む。あるいは、第1ギアプレート310に類似した形態のギアプレートをいくつか含むようにしてもよい。
【0117】
第1ギアプレート310は、連結ギア410を回転子200の回転速度より遅い速度で回転させるためのギアプレートであり、第2ギアプレート320は、連結ギア410を回転子200の回転速度と同じ速度で回転させるためのギアプレートである。第3ギアプレート330は、連結ギア410を回転子200の回転速度より速い速度で回転させるためのギアプレートである。
【0118】
ここで、本発明の一実施形態による少なくとも1つのギアプレート300は、第4ギアプレート340と、第5ギアプレート350とをさらに含む。
【0119】
図11Aに示すように、第4ギアプレート340、第1ギアプレート310、第2ギアプレート320、第3ギアプレート330、第5ギアプレート350の順に配置される。第4ギアプレート340のギアの段数が最も低く、第1ギアプレート310、第2ギアプレート320、第3ギアプレート330、第5ギアプレート350へ行くほどギアの段数が高くなる。
【0120】
第4ギアプレート340は、少なくとも1つの衛星ギアを含み、筐体に固定された中心ギア345を含む。
【0121】
図11Aに示すように、第4ギアプレート340は、第4ギアプレートキャリア340aの一側に配置される第1衛星ギア341と、中心ギア345とを含む。また、
図11Bに示すように、第4ギアプレート340は、第4ギアプレートキャリア340aの他側に配置される動力伝達ギア347を含む。
【0122】
動力伝達ギア347は、第4ギアプレートキャリア340aの回転力を第1ギアプレート310の衛星ギアに伝達する。具体的には、同図に示すように、動力伝達ギア347は、第1ギアプレート310の第1衛星ギア311に噛み合って回転する。
【0123】
第1ギアプレート310は、第1衛星ギア311と、第1ギアプレートキャリア310aとを含む。前述したように、第1衛星ギア311は、第4ギアプレート340の動力伝達ギア347に連結される。ここで、動力伝達ギア347は、第1ギアプレートの中心ギアの役割を果たす。第1衛星ギア311が回転することにより、第1ギアプレートキャリア310aが回転する。第1ギアプレートキャリア310aには、連結部318が配置される。
【0124】
第2ギアプレート320は、第2ギアプレートキャリア320自体が回転子200に噛み合って回転するように形成される。第2ギアプレートキャリア320の内部には、連結部328が配置される。
【0125】
第3ギアプレート330は、第1衛星ギア331と、中心ギア335と、第3ギアプレートキャリア330aとを含む。
【0126】
第3ギアプレート330の第1衛星ギア331は、回転子200に連結されるのではなく、第5ギアプレート350に配置される第5ギアプレート350の第1衛星ギア351に連結される。第3ギアプレート330の中心ギア335は、第3ギアプレート330の第1衛星ギア331に連結されて回転する。
【0127】
第3ギアプレート330の第1衛星ギア331は、第5ギアプレート350の第1衛星ギア351に連結され、第5ギアプレート350の第1衛星ギア351が回転することにより回転する。第3ギアプレート330の第1衛星ギア331が回転することにより、第3ギアプレート330の中心ギア335の内側に形成された連結部338が回転し、連結ギア410は、第3ギアプレート330の連結部338に連結されて回転する。
【0128】
第5ギアプレート350は、少なくとも1つの衛星ギアを含み、第3ギアプレート330の連結部338の回転速度より速い速度で回転する中心ギア355を含む。すなわち、第5ギアプレート350は、第3ギアプレート330よりギアの段数が高いギアプレートである。
【0129】
第5ギアプレート350は、第1衛星ギア351と、第2衛星ギア352と、中心ギア355と、第5ギアプレートキャリア350aとを含む。ここで、増速動作のために、第5ギアプレートキャリア350aは、筐体に固定される。
【0130】
第5ギアプレート350の第1衛星ギア351は、回転子200に連結されて回転力が伝達される。第1衛星ギア351に伝達された回転力は、第2衛星ギア352に伝達され、第2衛星ギア352は、第5ギアプレート350の中心ギア355を回転させる。連結ギア410は、第5ギアプレート350の中心ギア355の内周面に形成された連結部358に連結される。
【0131】
一方、前述したように、第5ギアプレート350の第1衛星ギア351は、厚く形成されている。よって、第5ギアプレート350の第1衛星ギア351は、第3ギアプレート330の第1衛星ギア331を回転させる。
【0132】
本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータM’は、回転子200の内部に5段以上の多重ギアを有する電気モータを実現することができ、より狭い空間に高効率を達成するモータを実現することができる。
【0133】
図13は本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータを用いる変速制御方法について説明するためのフローチャートである。
【0134】
次に、本発明の一実施形態による変速部を内蔵した電気モータを用いる変速制御方法について説明する。
【0135】
自動車走行状況であると仮定して、ユーザが連結ギア410を変速するために信号を発生させた場合、連結ギアが各ギアプレートに連結された状態であれば、容易に分離できるようにモータの負荷が小さくなる速度で回転子200の駆動が維持される(S100)。
【0136】
次に、移動部420は、変速する方向のニュートラル領域329に連結ギア410を移動させる(S200)。具体的には、連結ギア410が第1ギアプレート310に連結された状態で、ギアの段数を高くする信号が発生すると、移動部は、連結ギア410を第2ギアプレート320と第1ギアプレート310間に形成されるニュートラル領域329aに移動させる。
【0137】
次に、制御部400は、連結ギア410がニュートラル領域329に位置しているかを判断する(S250)。ここで、連結ギア410がニュートラル領域329に位置していない場合、移動部は、変速する方向のニュートラル領域329に連結ギア410を再度移動させる。
【0138】
次に、変速するギアプレートの回転速度が連結ギア410の回転速度と同程度になるように、モータの回転速度を調節する(S300)。
【0139】
具体的には、連結ギア410とギアプレートが連結される際に、連結ギア410及びギアプレートから発生し得る衝撃を緩和するために、ギアプレートの回転速度を連結ギア410の回転速度と同程度の値に調節する。
【0140】
次に、制御部400は、ギアプレートの回転速度と連結ギア410の回転速度が同程度であるか否かを判断する(S400)。ここで、ギアプレート及び連結ギア410の回転速度が同程度であるとは、一方の回転速度が他方の回転速度の95%以上、105%以下の範囲であることを意味する。連結ギア410の回転速度は、出力シャフトの端部に取り付けられたエンコーダ420aの値を参照すればよい。
【0141】
次に、連結ギア410が変速するギアプレートに連結されるように、連結ギア410を移動させる(S500)。すなわち、連結ギア410を目的とする変速機の位置に移動させる。ここで、連結ギア410の移動中に、2つのギアの回転速度の差により、2つのギアが結合される時点が到来する。
【0142】
次に、制御部400は、連結ギア410が目的とするギアプレートに連結されたか否かを判断する(S600)。すなわち、移動モータ450に連結又は内蔵されたエンコーダの値を読み取って判断する。
【0143】
ここで、連結ギア410が目的とする変速機(ギアプレート)に位置していない場合、移動モータを動作させて連結ギア410を目的とする位置に再度移動させる。
【0144】
次に、出力シャフト421の回転速度が所望の速度となるように、モータを制御する(S700)。具体的には、出力シャフト421及び連結ギア410を目的とするギアプレートに連結する過程において、ギアプレートの回転速度は、前述したように、モータの負荷が小さくなる速度に維持される。これは、連結ギア410がギアプレートに連結されている場合に、容易に分離できるようにするためである。
【0145】
また、連結ギア410及びギアプレートを結合する過程において、ギアプレートの回転速度を連結ギア410と同程度にすることが好ましい。これは、連結ギア410とギアプレートの連結部を連結する過程において、変速衝撃を少なくするためである。
【0146】
また、連結終了後に、制御部400は、連結ギア410及びギアプレートが互いに連結された状態で、ギアプレートの回転速度を目的とするトルク値及び回転速度となるようにモータを制御する。
【0147】
図14及び
図15はそれぞれ本発明の各実施形態による変速部を内蔵した電気モータを用いた加速及び減速について説明するためのグラフである。
【0148】
図14はギアプレートが3つである第1実施形態によるモータの回転速度及び出力シャフト421に伝達される回転速度を示すグラフである。
図15はギアプレートが5つである第2実施形態によるモータの回転速度及び出力シャフト421に伝達される回転速度を示すグラフである。
【0149】
まず、
図14に示すように、連結ギア410が第1ギアプレート310に連結されたときのモータスピード(Motor Speed)をLで表す。また、連結ギア410が第2ギアプレート320に連結されたときのモータスピードをEで表す。さらに、連結ギア410が第3ギアプレート330に連結されたときのモータスピードをHで表す。
【0150】
連結ギア410が第1ギアプレート310に連結されると、連結ギア410に伝達される回転速度は低いが、トルク値は大きい。主に、自動車などが出発するときや、大きな力が必要で、少ない回転速度が求められるときに用いられる。すなわち、連結ギア410が第1ギアプレート310に連結されると、変速機における低段の役割を果たす。
【0151】
よって、グラフを見ると、L部分においては、モータスピードより出力シャフト421により外部に出力される回転速度(Output Speed)の傾きの方が小さい。
【0152】
L部分からE部分に変速する際には連結ギア410がニュートラル領域329を通過するが、そこでは、モータスピードは減少し、出力スピードはしばらく慣性により維持される。
【0153】
E部分においては、連結ギア410が第2ギアプレート320に連結される。前述したように、第2ギアプレート320は回転子200に連結されるので、モータスピードの傾きと出力スピードの傾きが同一である。また、L部分と比較して、出力スピードを同様に上昇させるために、モータスピードの傾きは小さくなる。
【0154】
H部分においては、連結ギア410が第3ギアプレート330に連結される。第3ギアプレート330は少なくとも1つの衛星ギアを用いるため、回転子200の回転速度より第3ギアプレート330の中心ギア335の回転速度の方が速いので、第3ギアプレート330に連結された連結ギア410の回転速度はモータスピードより速い。
【0155】
よって、モータスピードよりも出力スピードの方が速くなる。すなわち、Hは、高速で走行する際に用いられる変速状態である。
【0156】
減速する場合も、連結ギア410が第3ギアプレート330に連結されるH状態から、連結ギア410が第2ギアプレート320に連結されるE状態、連結ギア410が第1ギアプレート310に連結されるL状態の順に減速される。
【0157】
減速する場合も、H状態においてモータスピードが減速する傾きより、出力スピードが減速する傾きの方が大きい。また、E状態においては、モータスピードが減速する傾きと出力スピードが減速する傾きが同一である。L状態においては、モータスピードが減速する傾きの方が、出力スピードが減速する傾きより大きい。
【0158】
図15は、
図14で説明したものと比較して、第4ギアプレート340及び第5ギアプレート350が存在し、L2、L1、E、H1、及びH2区間が存在し、各区間の間にニュートラル領域329が存在するという差異があるにすぎず、それ以外は同一又は類似するので、その説明は省略する。
【0159】
図15に示すように、L2区間においては、連結ギア410が第4ギアプレート340に連結される。これは、ギアに例えれば、1段に相当する。L1区間においては、連結ギア410が第1ギアプレート310に連結される。これは、ギアに例えれば、2段に相当する。E区間においては、連結ギア410が第2ギアプレート320に連結される。これは、ギアに例えれば、3段に相当する。H1区間においては、連結ギア410が第3ギアプレート330に連結される。これは、ギアに例えれば、4段に相当する。H2区間においては、連結ギア410が第5ギアプレート350に連結される。これは、ギアに例えれば、5段に相当する。
【0160】
グラフに示すように、加速区間において出力スピードの傾きは一定であるが、L2、L1、E、H1、H2へ行くほどモータスピードの傾きが小さくなることが分かる。すなわち、回転子200の回転速度が同一であると仮定すると、出力シャフト421の回転速度は次第に速くなる。
【0161】
減速区間においては、出力スピードの傾きは一定の割合で小さくなるが、L2、L1、E、H1、H2の順にモータスピードの傾きが大きくなることが分かる。
【0162】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲で構成要素の付加、変更、削除、追加などにより本発明を様々に修正及び変更することができ、それらも本発明に含まれるものである。