(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20230626BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20230626BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230626BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M50/449
H01M50/443 E
(21)【出願番号】P 2019517512
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2018015014
(87)【国際公開番号】W WO2018207530
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2017095744
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草田 英夫
(72)【発明者】
【氏名】塚越 貴史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信介
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522553(JP,A)
【文献】特開2011-023186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00
H01M 4/00
H01M 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1電極と複数の第2電極とがセパレータを介して交互に積層されてなる電極体を備えた非水電解質二次電池であって、
前記セパレータは、多孔質の樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の面に形成され、前記樹脂基材よりも表面凹凸が大きな多孔質の耐熱層とで構成され、
前記電極体は、
前記第1電極と前記耐熱層とを接着する第1接着粒子と、
前記第2電極と前記樹脂基材とを接着する第2接着粒子と、
を有し、
前記第1電極と前記耐熱層との第1界面における単位面積当たりの前記第1接着粒子の質量及び数(A)は、前記第2電極と前記樹脂基材との第2界面における単位面積当たりの前記第2接着粒子の質量及び数(B)よりも多く、
前記第1接着粒子の数(A)と前記第2接着粒子の数(B)との粒子数比率(A/B)は、1.01~2.5であ
り、
前記第1電極と前記耐熱層との接着力(S1)及び前記第2電極と前記樹脂基材との接着力(S2)は、それぞれ3N/m以上10N/m未満であり、
前記接着力(S1)と前記接着力(S2)との接着力比率(S1/S2)は、0.5~1.5であり、
前記粒子数比率(A/B)及び前記接着力比率(S1/S2)が、
[1](A/B=1.01,S1/S2=0.70)
[2](A/B=2.00,S1/S2=0.50)
[3](A/B=2.50,S1/S2=0.60)
[4](A/B=2.50,S1/S2=1.50)
[5](A/B=1.60,S1/S2=1.25)
を頂点とする五角形の範囲内にある、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記第1接着粒子及び前記第2接着粒子には、同じ接着粒子が用いられる、請求項
1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記耐熱層は、前記第1接着粒子よりも平均粒子径が大きな無機化合物粒子で構成されている、請求項1
又は2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の正極と複数の負極とをセパレータを介して交互に積層されてなる積層型の電極体を備えた非水電解質二次電池が広く知られている。積層型の電極体では、電池の製造時、或いは使用時において、セパレータの位置ずれが生じる可能性があるため、セパレータを電極表面に接着して当該位置ずれを防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、特定の接着粒子を用いてセパレータと電極との間に介在する接着層を形成する方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、正極と負極との間に、樹脂製のセパレータと、多孔質の耐熱層とを介在させた非水電解質二次電池が開示されている。特許文献2では、正極又は負極の表面に耐熱層を形成することが開示されているが、耐熱層が表面に形成されたセパレータも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/081035号
【文献】特開2007-12598号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、一方の表面のみに耐熱層が形成されたセパレータを接着粒子を用いて電極に接着する場合、耐熱層の表面凹凸が大きいため、接着粒子が耐熱層の凹部に完全に入り込み、十分な接着力が確保できないことが想定される。かかる場合に、耐熱層と電極との接着力を高めるべく、接着時の圧力、温度等の接着条件を変更すると、セパレータの他方の表面と電極との界面で接着粒子が大きく潰れてセパレータの表面を広く覆い、セパレータのイオン透過性を阻害する可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、一方の表面に多孔質の耐熱層が形成されたセパレータを用いて、セパレータのイオン透過性、セパレータと電極との接着性が共に良好な非水電解質二次電池を提供することである。
【0007】
本開示に係る非水電解質二次電池は、複数の第1電極と複数の第2電極とがセパレータを介して交互に積層されてなる電極体を備えた非水電解質二次電池であって、前記セパレータは、多孔質の樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の面に形成され、前記樹脂基材よりも表面凹凸が大きな耐熱層とで構成され、前記電極体は、前記第1電極と前記耐熱層とを接着する第1接着粒子と、前記第2電極と前記樹脂基材とを接着する第2接着粒子とを有し、前記第1電極と前記耐熱層との第1界面における単位面積当たりの前記第1接着粒子の質量は、前記第2電極と前記樹脂基材との第2界面における単位面積当たりの前記第2接着粒子の質量よりも多いことを特徴とする。
【0008】
本開示の一態様によれば、一方の表面に多孔質の耐熱層が形成されたセパレータを用いて、セパレータのイオン透過性、セパレータと電極との接着性が共に良好な非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の一例である非水電解質二次電池の斜視図である。
【
図2】実施形態の一例である電極体の断面図である。
【
図3】粒子数比率(A/B)及び接着力比率(S1/S2)の好適な範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係る非水電解質二次電池は、多孔質の樹脂基材と、当該樹脂基材の一方の表面に形成された多孔質の耐熱層とを含むセパレータを備える。セパレータの表面に耐熱層を形成することにより、例えば混入異物、釘刺し等によるセパレータの破断が発生し難くなり、また温度上昇時のセパレータの収縮を抑制することができる。耐熱層を樹脂基材の一方の表面のみに形成することで、電極体の厚みの増加を抑え、かつ材料コストの低減を図りながら、上記効果を得ることができる。
【0011】
なお、本開示に係る非水電解質二次電池では、粒子状の接着剤を用いてセパレータの両面を電極に接着することで、セパレータのイオン透過性を阻害することなく、電池の製造時、使用時におけるセパレータの位置ずれを防止できる。
【0012】
しかし、上述のように、一方の表面に耐熱層が形成されたセパレータを用いた場合は、樹脂基材側と耐熱層側とで表面状態が大きく異なるため、電極に対する接着力をセパレータの両面について適正な範囲に制御することは容易ではない。例えば、接着過程で軟化又は溶融した接着粒子は、樹脂基材表面の凹部に一部が入り込み、いわゆるアンカー効果により接着力を発現するが、耐熱層の表面には樹脂基材の表面よりも大きな凹凸が存在するので、アンカー効果が働き難い。
【0013】
つまり、接着粒子が耐熱層の表面の凹部に完全に入り込んでしまうため、接着力が発現し難い。他方、接着時の圧力、温度を高くすれば、耐熱層と電極との接着力をある程度高くすることはできるが、この場合は、樹脂基材と電極との界面で接着粒子が大きく潰れて樹脂基材の表面を広く覆い、セパレータのイオン透過性を阻害する可能性がある。
【0014】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、電極と耐熱層との界面における単位面積当たりの接着粒子の質量を、電極と樹脂基材との界面における単位面積当たりの接着粒子の質量よりも多くすることで、上記課題を解消することに成功した。特に、当該各界面における接着粒子数の比率及び接着力の比率を特定の範囲内に制御することで、高容量で、且つ出力特性に優れた非水電解質二次電池を実現することができる。
【0015】
以下、本開示に係る正極及び非水電解質二次電池の実施形態の一例について詳細に説明する。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。本明細書において、「数値(1)~数値(2)」との記載は、特に断らない限り、「数値(1)以上、数値(2)以下」を意味する。
【0016】
図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池10を示す斜視図である。
図2は、非水電解質二次電池10を構成する電極体11の断面図である。
図1及び
図2に例示するように、非水電解質二次電池10は、複数の正極20(第2電極)と複数の負極30(第1電極)とがセパレータ40を介して交互に積層されてなる電極体11と、非水電解質(図示せず)とを備える。非水電解質二次電池10の好適な一例は、リチウムイオン電池である。
【0017】
電極体11は、1枚のセパレータ40をつづら折りして正極20と負極30との間に介在させた積層構造を有していてもよいが、本実施形態では、複数のセパレータ40を備えるものとする。即ち、電極体11は、負極30、セパレータ40、正極20、セパレータ40の順で、複数の正極20、複数の負極30、及び複数のセパレータ40が積層された構造を有する。電極体11の積層方向の両端の電極は、一般的に負極30が配置される。
【0018】
詳しくは後述するが、セパレータ40は、多孔質の樹脂基材41と、樹脂基材41の一方の面に形成された多孔質の耐熱層42とで構成される。即ち、電極体11において、正極20及び負極30の一方がセパレータ40の樹脂基材41と対向し、正極20及び負極30の他方がセパレータ40の耐熱層42と対向する。
図2に例示する形態では、耐熱層42が負極30側を向くようにセパレータ40を設けているが、耐熱層42が正極20側を向くようにセパレータ40を設けてもよい。
【0019】
電極体11では、各セパレータ40が粒子状の接着剤を用いて、隣接する正極20及び負極30に接着されている。このため、電池の製造時、使用時におけるセパレータ40の位置ずれを防止できる。また、粒子状の接着剤を用いることで、セパレータ40の良好なイオン透過性を確保しながら、接着力を得ることができる。電極体11は、正極20と樹脂基材41とを接着する接着粒子50(第2接着粒子)と、負極30と耐熱層42とを接着する接着粒子60(第1接着粒子)とを有する。
【0020】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質(非水電解液)に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。非水溶媒には、例えばエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピオン酸メチル(MP)等のエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。電解質塩には、例えばLiBF4、LiPF6等のリチウム塩を用いることができる。
【0021】
非水電解質二次電池10は、電極体11及び非水電解質を収容する電池ケース14を備える。電池ケース14は、略箱形状のケース本体15と、ケース本体15の開口部を塞ぐ封口体16とによって構成される。ケース本体15及び封口体16は、例えばアルミニウムを主成分とする金属材料で構成される。電池ケース14には従来公知の構造を適用できる。なお、
図1では角形電池を例示しているが、非水電解質二次電池10は、角形電池に限定されず、例えばラミネートフィルムからなる外装体を備えた、いわゆるラミネート電池であってもよい。
【0022】
封口体16上には、各正極20と電気的に接続された正極端子12と、各負極30と電気的に接続された負極端子13とが設けられている。正極端子12には、正極集電体21の表面が露出した正極リード部が直接、又は他の導電部材を介して接続される。負極端子13には、負極集電体31の表面が露出した負極リード部が直接、又は他の導電部材を介して接続される。
【0023】
封口体16の横方向両側には、図示しない貫通孔がそれぞれ形成されており、正極端子12及び負極端子13、又は各端子に接続された導電部材は当該各貫通孔から電池ケース14内に挿入される。正極端子12及び負極端子13は、例えば貫通孔に設置される絶縁部材17を介して封口体16にそれぞれ固定される。なお、一般的に封口体16にはガス排出機構(図示せず)が設けられている。
【0024】
以下、電極体11の構成について、さらに詳説する。
【0025】
[正極(第2電極)]
図2に例示するように、正極20は、正極集電体21と、当該集電体上に形成された正極合材層22とを備える。正極集電体21には、アルミニウムなどの正極20の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層22は、正極活物質、導電材、及び結着材を含むことが好適である。正極合材層22は、一般的に正極集電体21の両面に形成される。正極20は、例えば正極集電体21上に正極活物質、導電材、及び結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して正極合材層22を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0026】
正極活物質には、リチウム含有遷移金属酸化物を用いることが好ましい。リチウム含有遷移金属酸化物を構成する金属元素は、例えばマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)、鉛(Pb)、およびビスマス(Bi)から選択される少なくとも1種である。中でも、Co、Ni、Mn、Alから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0027】
導電材の例としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。また、結着材の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
[負極(第1電極)]
負極30は、負極集電体31と、当該集電体上に形成された負極合材層32とを備える。負極集電体31には、銅などの負極30の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層32は、負極活物質の他に、結着材を含むことが好適である。負極合材層32は、一般的に負極集電体31の両面に形成される。負極30は、例えば負極集電体31上に負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して負極合材層32を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0029】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、ケイ素(Si)、錫(Sn)等のリチウムと合金化する金属、又はSi、Sn等の金属元素を含む合金、複合酸化物などを用いることができる。負極活物質は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
負極合材層32に含まれる結着材としては、正極20の場合と同様にフッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。水系溶媒を用いて負極合材スラリーを調製する場合は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いてもよい。
【0031】
[セパレータ・接着粒子]
セパレータ40は、上述の通り、多孔質の樹脂基材41と、樹脂基材41の一方の面上に形成された多孔質の耐熱層42とで構成される。耐熱層42を設けることで、例えば混入異物、釘刺し等によるセパレータ40の破断が発生し難くなり、また温度上昇時のセパレータ40の収縮を抑制できる。電極体11の厚みの増加を抑えつつ、コスト対効果を高めるためには、樹脂基材41の一方の表面のみに耐熱層42を形成することが好適である。
【0032】
多孔質の樹脂基材41は、単独でもセパレータとして機能するものである。樹脂基材41には、イオン透過性及び電気絶縁性を有する多孔質フィルムが用いられる。樹脂基材41の厚みは、例えば1μm~20μmである。樹脂基材41の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンの共重合体、エチレン、プロピレン、その他のαオレフィンとの共重合体等のオレフィン樹脂が例示できる。樹脂基材41の融点は、一般的に200℃以下である。
【0033】
樹脂基材41を構成する多孔質フィルムは、リチウムイオンを透過させるための多くの孔を有するが、その表面の凹凸は耐熱層42の表面凹凸よりも小さく、耐熱層42に比べると表面は平坦である。樹脂基材41の表面に存在する孔又は凹部の大きさ(最大長さ)は、例えば0.5μm未満であり、好ましくは0.3μm未満である。
【0034】
多孔質の耐熱層42は、樹脂基材41を構成する樹脂よりも融点又は軟化点の高い樹脂、例えばアラミド樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等で構成されてもよいが、好ましくは無機化合物を主成分として構成される。耐熱層42は、絶縁性の無機化合物粒子と、当該粒子同士及び当該粒子と樹脂基材41とを結着する結着材とで構成されることが好ましい。耐熱層42は、樹脂基材41と同様に、イオン透過性と電気絶縁性を有する。耐熱層42の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~6μmである。
【0035】
耐熱層42の主成分となる無機化合物粒子としては、例えばアルミナ、ベーマイト、シリカ、チタニア、及びジルコニアから選択される少なくとも1種を用いることができる。中でも、アルミナ、又はベーマイトを用いることが好ましい。無機化合物粒子の含有量は、耐熱層42の質量に対して、85質量%~99.9質量%が好ましく、90質量%~99.5質量%がより好ましい。
【0036】
無機化合物粒子の形状は特に制限はなく、例えば球状、四角柱状などの粒子を用いることができる。球状粒子の平均粒径あるいは四角柱状粒子の1辺の平均長さは、0.1μm~1.5μmが好ましく、0.5μm~1.2μmがより好ましい。無機化合物粒子の粒径が当該範囲内であれば、イオン透過性が良好で耐久性に優れた耐熱層42を形成できる。無機化合物粒子の平均粒径や辺の平均長さは、耐熱層42の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより測定される。具体的には、耐熱層42のSEM画像中の無機化合物粒子をランダムに100個選択し、各粒子の外接円の直径あるいは辺の長さを測定して平均化することで算出される。
【0037】
耐熱層42を構成する結着材には、例えばPVdF等のフッ素系樹脂、SBRなど、正極合材層22及び負極合材層32に含まれる結着材と同様のものを使用できる。結着材の含有量は、耐熱層42の質量に対して、0.1質量%~15質量%が好ましく、0.5質量%~10質量%がより好ましい。耐熱層42は、例えば無機化合物粒子及び結着材を含有するスラリーを樹脂基材41を構成する多孔質フィルムの一方の面に塗布し、塗膜を乾燥させることで形成される。以上のように耐熱層42を樹脂基材41の上に形成することにより、耐熱層42の表面には隣接しあう無機化合物粒子との間に溝、凹部が形成される。
【0038】
セパレータ40は、上述の通り、粒子状の接着剤である接着粒子50,60を用いて正極20の正極合材層22及び負極30の負極合材層32にそれぞれ接着される。本実施形態では、セパレータ40の樹脂基材41と正極合材層22とが接着粒子50によって接着され、セパレータ40の耐熱層42と負極合材層32とが接着粒子60によって接着されている。
【0039】
即ち、電極体11は、接着粒子50,60によりセパレータ40と各電極との間にそれぞれ形成される接着層を備える。当該接着層の厚みは、例えば0.1μm~1μm、又は0.2μm~0.9μmであり、接着粒子50,60の量と、その粒径等によって決定される。接着層は、例えば接着粒子50,60を含有するスラリーをセパレータ40の表面に塗布し、乾燥させることで形成される。接着粒子50,60のスラリーには、微小な接着粒子が水中に分散した、いわゆるエマルジョンを使用できる。この場合、両面に接着粒子50,60からなる接着層が形成された接着層付きセパレータ40が得られる。
【0040】
なお、電極体11は、負極30/接着層付きセパレータ40/正極20/接着層付きセパレータ40の順に積層し、熱プレスすることで得られる。温度、圧力、圧力印加時間等の熱プレス条件を変更することにより、セパレータ40と各電極との接着力を調整できるが、セパレータ40と正極20との界面Yと、セパレータ40と負極30との界面Xとで、熱プレス条件を異ならせることはできない。
【0041】
接着粒子50,60には、互いに異なる種類の接着粒子を用いてもよいが、生産性等を考慮すると、同じ接着粒子を用いることが好ましい。つまり、樹脂基材41と正極20との間、耐熱層42と負極30との間には、同じ接着粒子が存在することが好ましい。ここで、同じ接着粒子とは、例えば同じ製品として提供されているものを意味し、製造ロットは異なっていてもよい。
【0042】
接着粒子50,60の平均粒径は、例えば0.1μm~1μmであり、好ましくは0.5μm~0.7μmである。接着粒子50,60の平均粒径は、耐熱層42を構成する無機化合物粒子の平均粒径と同様に、セパレータ40の表面をSEMを用いて観察することにより測定される。接着粒子50,60の平均粒径は、例えば耐熱層42を構成する無機化合物粒子の平均粒径よりも小さい。このため、接着粒子60は、耐熱層42の表面に存在する凹部に完全に入り込む場合がある。一方、接着粒子50の平均粒径は、例えば樹脂基材41の表面に存在する溝又は凹部よりも大きい。
【0043】
接着粒子50,60は、上記熱プレス工程で溶融又は軟化することが好ましい。接着粒子50,60が溶融又は軟化することで、当該粒子がセパレータ40及び各電極の表面に強く密着し、良好な接着性が得られる。接着粒子50,60は、例えばガラス転移温度が室温(25℃)以下の樹脂で構成される。接着粒子50,60を構成する樹脂としては、アクリル重合体、ジエン重合体、ポリウレタン等が例示できる。具体的には、上述の特許文献1で開示される粒子状重合体を用いることができる。中でも、アクリル重合体が好ましい。
【0044】
電極体11では、負極30の負極合材層32と耐熱層42との界面Xにおける単位面積当たりの接着粒子60の質量が、正極20の正極合材層22と樹脂基材41との界面Yにおける単位面積当たりの接着粒子50の質量よりも多くなっている。界面Xにおける単位面積当たりの接着粒子60の質量は、負極合材層32の表面、及び耐熱層42の表面に付着する接着粒子60の数を計測し、粒子の総体積に粒子の比重を乗じて算出できる。界面Yにおける単位面積当たりの接着粒子50の質量についても、同様の方法で算出できる。
【0045】
セパレータ40の樹脂基材41と耐熱層42の表面状態は大きく異なるため、電極に対する良好な接着力をセパレータ40の両面で確保することは容易ではないが、接着粒子50の質量<接着粒子60の質量とすることで、電池性能を損なうことなく、セパレータ40の両面について良好な接着力を確保できる。例えば、界面X,Yにおける接着力を同等にすることも可能である。接着層付きセパレータ40を用いる場合は、耐熱層42の表面に存在する接着粒子60の質量を、樹脂基材41の表面に存在する接着粒子50の質量よりも多くする必要がある。
【0046】
正極合材層22と樹脂基材41との界面Yにおける単位面積当たりの接着粒子50の質量は、0.1g/m2~0.8g/m2以下が好ましく、0.2g/m2~0.6g/m2以下がより好ましい。界面Yにおける接着粒子50の質量が、当該範囲内であれば、セパレータ40のイオン透過性を良好に維持でき、電池性能を損なうことなく、正極合材層22との良好な接着性を確保することができる。なお、負極合材層32と耐熱層42との界面Xにおける単位面積当たりの接着粒子60の質量は、例えば0.2g/m2~2.0g/m2である。
【0047】
また、界面Xにおける単位面積当たりの接着粒子60の数(A)は、界面Yにおける単位面積当たりの接着粒子50の数(B)よりも多くなっている。生産性を向上させるべく、接着粒子50,60に同じ接着粒子を用いた場合は、界面Xにおける接着粒子の質量、粒子数(A)が共に、界面Yにおける接着粒子の質量、粒子数(B)よりも多くなる。粒子数(A)>粒子数(B)とすることで、電池性能を損なうことなく、セパレータ40の両面について良好な接着力を確保できる。
【0048】
粒子数(A)と粒子数(B)との粒子数比率(A/B)は、1.01~2.5が好ましい。粒子数比率(A/B)は、より好ましくは1.50~2.50であり、特に好ましくは2.00~2.50である。粒子数比率(A/B)を当該範囲内に制御することで、出力特性等の電池性能と、セパレータ40の接着性とを両立することが容易になる。
【0049】
電極体11では、負極合材層32と耐熱層42との接着力(S1)、及び正極合材層22と樹脂基材41との接着力(S2)が、それぞれ3N/m以上10N/m未満であることが好ましい。接着力(S1,S2)が3N/m未満では、接着力が十分ではなく、例えば電極体11を製造する際に電極及びセパレータ40の位置ずれが発生し易くなる。一方、接着力(S1,S2)が10N/m以上では、界面X,Yが接着粒子50,60で埋め尽くされることとなり、良好な電池特性を維持することが難しくなる。接着力(S1,S2)は、後述する剥離試験により測定される。
【0050】
また、接着力(S1)と接着力(S2)との接着力比率(S1/S2)は、0.5~1.5以下であることが好ましい。接着力比率(S1/S2)は、1.0であってもよく、この場合、接着力(S1)と接着力(S2)が同等となる。接着力比率(S1/S2)を当該範囲内に制御することで、出力特性等の電池性能と、セパレータ40の接着性とを両立することが容易になる。
【0051】
さらに、
図3に示すように、粒子数比率(A/B)及び接着力比率(S1/S2)は、各々を縦軸、横軸としてプロットしたときに、下記5点を頂点とする五角形の範囲内に調整されることが好ましい。
【0052】
[1](A/B=1.01,S1/S2=0.70)
[2](A/B=2.00,S1/S2=0.50)
[3](A/B=2.50,S1/S2=0.60)
[4](A/B=2.50,S1/S2=1.50)
[5](A/B=1.60,S1/S2=1.25)
粒子数比率(A/B)及び接着力比率(S1/S2)が当該五角形の範囲内にある場合に、高容量で、且つ出力特性に優れた非水電解質二次電池10を実現することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実験例により本開示をさらに詳説するが、本開示はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0054】
<実験例1>
[正極]
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2で表されるリチウム含有遷移金属酸化物を93質量部と、アセチレンブラック(AB)を5質量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を2質量部とを混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合材スラリーを調製した。次に、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面にリード部を残して正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた。ローラーを用いて塗膜を圧延した後、所定の電極サイズに切断し、正極集電体の両面にそれぞれの厚みが70μmの正極合材層が形成された正極を作製した。
【0055】
[負極]
黒鉛粉末を96質量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)を2質量部と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を2質量部とを混合し、さらに水を適量加えて、負極合材スラリーを調製した。次に、厚みが8μmの銅箔からなる長尺状の負極集電体の両面にリード部を残して負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた。ローラーを用いて塗膜を圧延した後、所定の電極サイズに切断し、負極集電体の両面にそれぞれの厚みが70μmの負極合材層が形成された負極を作製した。
【0056】
[セパレータ]
多孔質の樹脂基材と、樹脂基材の一方の面に形成された多孔質の耐熱層とを含むセパレータを準備した。樹脂基材及び耐熱層は、下記の通りである。
【0057】
樹脂基材:厚み12μmのポリエチレン製多孔質フィルム
耐熱層:1辺の平均長さが0.5μmである四角柱状のベーマイト粒子を主成分とする層。この層の表面には粒径が0.5μm程度の接着粒子が大きく変形することなく入り込むことができる大きさを有する溝や凹部が多数観察された。
【0058】
上記セパレータ(長尺体)の両面に、アクリル重合体を主成分として構成される接着粒子の分散体(エマルジョン)を塗布し、乾燥させた後、所定のセパレータサイズに切断して、接着層付きのセパレータを作製した。このとき、樹脂基材側と耐熱層側とでエマルジョンの塗布量を変更し、基材表面における接着粒子の数を46個/100μm2(目付け量:0.3g/m2)、耐熱層表面における接着粒子の数を54個/100μm2(目付け量:0.35g/m2)とした。SEM観察により計測した接着粒子の平均粒径は、0.5μmである。
【0059】
[電解液]
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)を、3:3:4の体積比で混合した。当該混合溶媒に、LiPF6を1.2mol/Lの濃度で溶解させて電解液を調製した。
【0060】
[試験セル]
負極/セパレータ/正極/セパレータの順に、セパレータの耐熱層が負極と対向するように、正極8枚、負極9枚をセパレータを介して交互に積層し、熱プレス装置を用いて1.5MPaの圧力で60秒間熱プレスすることにより、積層型の電極体を作製した。その後、正極のリード部にアルミニウム製のタブを、負極のリード部にニッケル製のタブを、それぞれ超音波溶着機を用いて溶着した。この電極体を絶縁性のラミネートフィルムで包み、当該フィルムの一方を残して三方を熱溶着した後、80℃で4時間、真空乾燥した。
【0061】
次に、アルゴンガス雰囲気のドライボックス内で、電解液をラミネートフィルムからなる外装体内に注入し、外装体の開口部(残りの一方)を熱溶着して、試験セルを作製した。
【0062】
<実験例2>
セパレータの基材表面、及び耐熱層表面における接着粒子の単位面積当たりの粒子数、質量(目付け量)を表1に示すものとしたこと以外は、実験例1と同様にして電極体、及び試験セルを作製した。
【0063】
<実験例3>
セパレータの基材表面、及び耐熱層表面における接着粒子の単位面積当たりの粒子数、質量(目付け量)を表1に示すものとし、熱プレス時間を90秒としたこと以外は、実験例1と同様にして電極体、及び試験セルを作製した。
【0064】
<実験例4>
セパレータの基材表面、及び耐熱層表面における接着粒子の単位面積当たりの粒子数、質量(目付け量)を表1に示すものとし、熱プレス時間を120秒としたこと以外は、実験例1と同様にして電極体、及び試験セルを作製した。
【0065】
<実験例5>
セパレータの基材表面、及び耐熱層表面における接着粒子の単位面積当たりの粒子数、質量(目付け量)を表1に示すものとし、熱プレス時の圧力を5.0MPa、時間を30秒としたこと以外は、実験例1と同様にして電極体、及び試験セルを作製した。
【0066】
<参考例>
セパレータの表面に接着層を形成することなく、温度70℃、圧力5.0MPa、時間60秒の条件で熱プレスしたこと以外は、実験例1と同様にして電極体、及び試験セルを作製した。
【0067】
<実験例6>
セパレータの基材表面、及び耐熱層表面における接着粒子の単位面積当たりの粒子数、質量(目付け量)を表1に示すものとしたこと以外は、実験例5と同様にして電極体、及び試験セルを作製した。
【0068】
<実験例7>
セパレータの基材表面、及び耐熱層表面における接着粒子の単位面積当たりの質量、粒子数を表1に示すものとしたこと以外は、実験例4と同様にして電極体、及び試験セルを作製した。
【0069】
<実験例8>
セパレータの基材表面、及び耐熱層表面における接着粒子の単位面積当たりの質量、粒子数を表1に示すものとし、圧力印加時間を60秒としたこと以外は、実験例5と同様にして電極体、及び試験セルを作製した。
【0070】
<実験例9>
セパレータの基材表面、及び耐熱層表面における接着粒子の単位面積当たりの質量、粒子数を表1に示すものとし、圧力印加時間を40秒としたこと以外は、実験例5と同様にして電極体、及び試験セルを作製した。
【0071】
<実験例10>
セパレータの基材表面、及び耐熱層表面における接着粒子の単位面積当たりの質量、粒子数を表1に示すものとしたこと以外は、実験例4と同様にして電極体、及び試験セルを作製した。
【0072】
各実験例の電極体、及び試験セルについて、以下の方法で性能評価を行い、評価結果を表1に示した。各実験例の試験セルの電池特性は、セパレータと各電極との接着性を有さない参考例の試験セルを基準(100%)として評価したものである。
【0073】
[充放電特性(容量)の評価]
前処理として、試験セルを60mAで1時間定電流充電を行った後、60℃の恒温槽に1日放置し、初期充電時に発生する特異的なガスを除去した。このとき、発生したガスを外装体の端部に集め、電極体の収容部とガスが溜まった部分とを分けるように外装体を熱溶着し、ガスが溜まった部分を切除した。
【0074】
前処理を行った試験セルについて、4.2V、200mAで定電流定電圧充電(30mAカット)を行い、20分間休止した後、600mA、120mA、60mAの順で定電流放電(2.5Vカット)をそれぞれ20分の間隔をあけて行った。各電流値での放電容量を合算した値を試験セルの容量とした。
【0075】
[出力特性の評価]
試験セルの充電率(以下SOCと記載)が50%となるように、上記前処理後の試験セルを、4.2V、200mAで定電流定電圧充電した後、10秒間定電流放電して、到達電圧が3Vとなる放電電流を求め、電流×電圧から試験セルの出力を算出した。SOCが50%となるセルの電圧は、3.7Vであった。
【0076】
なお、到達電圧が3Vとなる放電電流は、10秒間の放電で3Vまで降圧しない電流値(例えば、6000mA)で放電したときの電圧(例えば、3.1V)を求め、次に、電圧が3.7Vとなるように6000mAで充電した後、3V以下まで降圧する電流値(例えば、7000mA)で放電したときの電圧(例えば、2.9V)を求め、電流と電圧をプロットすることにより求めた。
【0077】
[セパレータ表面における接着粒子の数、目付け量]
接着層付きセパレータの表面(基材表面及び耐熱層表面)をSEM観察し、SEM画像中の100μm2の範囲に存在する接着粒子の数を計測して、単位面積当たりの粒子数とした。また、接着粒子1個当たりの粒子径を0.5μm、比重を1.0g/cm3とし、SEM観察により計測した粒子数に基づいて目付け量(単位面積当たりの質量)を算出した。なお、セパレータを各電極に接着させた後に接着粒子の数を計測する場合は、セパレータ表面及び電極表面に存在する粒子数を合算する必要がある。
【0078】
[セパレータと各電極との接着力]
各試験セルについて、小型卓上試験機(日本電産シンポ(株)製、FGS-TV)に、デジタルフォースゲージ(同社製、FGP-5)を取り付けた装置を用いて、セパレータの耐熱層と負極の接合面(界面X)、及びセパレータの基材と正極の接合面(界面Y)の接着力を測定した。
【0079】
電解液注入前の試験セルを、接着力を測定する接合面を残して分解し、分解した試験片を20mm幅で短冊状に切断する。次に、短冊状の試験片の測定対象となる接合面と反対側の面を、両面テープを用いて平板に貼り付ける。平板は、上下方向には移動せず抵抗なく板面方向に移動するように制約した治具に設置する。続いて、試験片のセパレータの端部をデジタルフォースゲージの先端に取り付けられたクリップで摘み、電極面に対して90°の方向に引っ張り上げ、このときデジタルフォースゲージにかかる力を測定する。デジタルフォースゲージの測定値が0.2Nであった場合、測定対象の接合面の接着力は、0.2×1000/20=10N/mである。なお、接着力は電解液浸透前の電極体を用いて測定したが、以下の表1で示す接着力比率は電解液の浸透前後で変わらないと推測される。
【0080】
【0081】
図3は、表1に示す粒子数比率(A/B)を横軸に、接着力比率(S1/S2)を縦軸にそれぞれプロットしたグラフである。粒子数比率(A/B)及び接着力比率(S1/S2)が、
図3に示す五角形の範囲内にある実験例1~5の試験セルは、実験例10の試験セルと比べて、高容量で、且つ出力特性に優れていた。また、実験例1~5の試験セルは、実験例6~9の試験セルと比べて、出力特性に優れていた。つまり、粒子数比率(A/B)及び接着力比率(S1/S2)を、
図3に示す五角形の範囲内に制御することで、高容量で、且つ出力特性に優れた非水電解質二次電池を実現できる。
【0082】
なお、セパレータと電極の各界面における接着力(S1,S2)を3N/m以上としながら、接着力比率(S1/S2)を1.5以上とすることは困難であった。例えば、基材側の接着粒子の目付け量を、耐熱層側よりも極端に少なくし、低圧、短時間の熱プレス条件とすれば、接着力比率(S1/S2)を1.5以上にすることはできるが、その場合は、基材側の接着力(S2)を3N/m以上とすることは困難である。また、実験例で使用した接着粒子と接着力が異なるものを使用しても、好適な粒子数比率(A/B)及び接着力比率(S1/S2)は同じであることが容易に推測できる。また、実験例では、耐熱層と対向する電極を負極としたが、これを正極としても同様の結果が得られる。
【符号の説明】
【0083】
10 非水電解質二次電池
11 電極体
12 正極端子
13 負極端子
14 電池ケース
15 ケース本体
16 封口体
17 絶縁部材
20 正極
21 正極集電体
22 正極合材層
30 負極
31 負極集電体
32 負極合材層
40 セパレータ
41 樹脂基材
42 耐熱層
50,60 接着粒子