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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ナトリウム電池のための固体電解質
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/054 20100101AFI20230626BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230626BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230626BHJP
   H01B 1/10 20060101ALI20230626BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230626BHJP
【FI】
H01M10/054
H01B13/00 Z
H01B1/06 A
H01B1/10
H01M10/0562
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020538855
(86)(22)【出願日】2019-01-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 US2019013465
(87)【国際公開番号】W WO2019140368
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】62/616,854
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511248249
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ヒューストン システム
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(73)【特許権者】
【識別番号】591158276
【氏名又は名称】アイオア・ステート・ユニバーシティー・リサーチ・ファンデーション・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】IOWA STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チー,シャオウエイ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,スティーブ・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】クミーク,スティーブン・ジェイ
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-017108(JP,A)
【文献】特開2015-079623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0248094(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105594018(CN,A)
【文献】特開2012-121789(JP,A)
【文献】国際公開第2010/038313(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/030525(WO,A1)
【文献】特開2014-209430(JP,A)
【文献】特開2009-193727(JP,A)
【文献】Adriana Joyce,"Structural Investigation of Oxy-thio Phosphate glasses and their Physical Properties",Symposium on Undergraduate Research and Creative Expression,2017年04月11日,pp1-7,https://slideplayer.com/slide/13493845/
【文献】林 晃敏,全固体ナトリウム電池を指向したガラス系固体電解質の開発,科学研究費助成事業 研究成果報告書,日本,2017年06月12日,pp1-6,https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26289243/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/054
H01M 4/13
H01B 13/00
H01B 1/06
H01B 1/10
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Na S、P およびP を含む出発材料をボールミリングする工程と、
得られたボールミリングした材料をプレスして、固体電解質であるナトリウムオキシ硫化物ガラスを形成する工程と、
を含み、Na S、P およびP が、75:(25-y):y[式中、yは0ではない]のモル比で混合されている、電解質を形成する方法。
【請求項2】
0<y≦20である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ナトリウムオキシ硫化物ガラスが、NaPS4-x(式中、0<x≦2である)である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
x=0.25である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の硫化ナトリウム材料および少なくとも1種の酸化物材料を含む出発材料をボールミリングする工程と、
得られたボールミリングした材料をプレスして、固体電解質であるナトリウムオキシ硫化物ガラスを形成する工程と、
を含み、ボールミリングする工程が100℃またはそれ未満で実行される、電解質を形成する方法。
【請求項6】
少なくとも1種の硫化ナトリウム材料および少なくとも1種の酸化物材料を含む出発材料をボールミリングする工程と、
得られたボールミリングした材料をプレスして、固体電解質であるナトリウムオキシ硫化物ガラスを形成する工程と、
を含み、プレスする工程が100~450MPaの圧力で実行される、電解質を形成する方法。
【請求項7】
少なくとも1種の硫化ナトリウム材料および少なくとも1種の酸化物材料を含む出発材料をボールミリングする工程と、
得られたボールミリングした材料をプレスして、固体電解質であるナトリウムオキシ硫化物ガラスを形成する工程と、
を含み、固体電解質が傷のないガラスである、電解質を形成する方法。
【請求項8】
前記電解質が、主として無定形である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の硫化ナトリウム材料および少なくとも1種の酸化物材料を含む出発材料をボールミリングする工程と、
得られたボールミリングした材料をプレスして、固体電解質であるナトリウムオキシ硫化物ガラスを形成する工程と、
を含み、固体電解質の相対密度が95%またはそれより大きい、電解質を形成する方法。
【請求項10】
少なくとも1種の硫化ナトリウム材料および少なくとも1種の酸化物材料を含む出発材料をボールミリングする工程と、
得られたボールミリングした材料をプレスして、固体電解質であるナトリウムオキシ硫化物ガラスを形成する工程と、
を含み、固体電解質が、Na金属またはNaベースの合金の電極を0.2mA/cmで用いて250時間またはそれより長く性能を示すことが可能である、電解質を形成する方法。
【請求項11】
少なくとも1種の硫化ナトリウム材料および少なくとも1種の酸化物材料を含む出発材料をボールミリングする工程と、
得られたボールミリングした材料をプレスして、固体電解質であるナトリウムオキシ硫化物ガラスを形成する工程と、
を含み、ボールミリングする工程が500rpm以上で実行される、電解質を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[01]本出願は、参照により本明細書に組み入れられる2018年1月12日付けで出願された米国仮特許出願第62/616,854号の利益を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述
[02]本発明は、米国エネルギー省内のエネルギー高等研究計画局(Advanced Research Projects Agency-Energy;ARPA-E)による認可番号DE-AR0000654に基づく政府支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
[03]本発明は、連続ガラスに近い微細構造およびナトリウム金属またはナトリウムベースの合金との優れた化学的安定性を有するナトリウム電池のための固体電解質、およびその電解質を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
[04]液体電解質を使用する電池とは対照的に、固体電池は、より高いエネルギー密度、より高い安全性、およびより長い寿命を有する全固体電池を提供できる不燃性の機械的に安定な固体電解質(SE)を利用する。固体ナトリウム電池は、リチウム対応物よりコストが低いことから、ラージスケールのエネルギー貯蔵用途のために有望である。
【0005】
[05]固体ナトリウム金属電池(SSMB)は、グリッドスケールのエネルギー貯蔵用途にとって非常に有望な候補である。しかしながら、主としてNa金属との安定性を有する高い伝導性の固体電解質がないことから、これまで商品化されたSSMBはない。これまで、グリッドスケールのエネルギー貯蔵のための商品化されたNa金属電池の唯一の成功例は、NAS電池を含む(Wenら、「Main Challenges for High Performance NAS Battery: Materials and Interfaces.」Adv Funct Mater 23、1005~1018(2013))。Na-イオンSEの開発は主として、2つのカテゴリー、すなわち、酸化物(例えばβ”-AlおよびNASICON型セラミック)および硫化物(例えば加熱処理したNaPS、NaSbS)(図7a~7b)を含む。しかしながら、両方とも短絡や不安定なNa金属などの問題がある。
【0006】
[06]理想的なSEは、数々の主要なパラメーター:高いイオン伝導性、アノードおよびカソードとの化学的適合性、優れた機械的安定性および熱安定性、広範な電気化学的ウィンドウ、単純な合成およびフィルム形成プロセス、簡単なデバイス統合および低コストの組合せを必要とする。様々なSEのなかでも、硫化物ベースのSEは、高いイオン伝導性だけでなく素晴らしいフィルム成形性も有することから、かなりの注目を集めている。硫化物ベースのSE粉末は、室温でプレスしても十分な高密度化が可能であり、酸化物ベースのSEとは対照的に焼結プロセスは必要ではない。多くの高いイオン伝導性の硫化物ベースのSEが開発されており(米国特許第9640835号B2;Kimら、Small Methods 2017、1700219)、例えば、NaPS、カチオンドープしたNaPS(Na3+x1-x、M=Si、Ge、Sn;Na1-x、M=As)、アニオンドープしたNaPS(NaPS4-x、M=Se;Na3-xPS4-x、M=Cl、Br)、NaSbSおよびNa10SnP12などが挙げられる。一部の電解質は、液体電解質に匹敵する伝導性を示す。AsドープしたNaPS(Na0.62As0.38)、ClドープしたNaPS(Na2.9375PS3.9375Cl0.0625)およびNaSbSは、室温で、それぞれ1.46×10-3S・cm-1、1.38×10-3S・cm-1、および1.05×10-3S・cm-1のナトリウムイオン伝導性を示す。
【0007】
[07]現存する硫化物ベースのSEの主要な問題の1つは、ナトリウム金属またはナトリウムベースの合金との不良な化学的安定性である。それゆえに、ナトリウム金属またはナトリウムベースの合金は、固体電池におけるアノードとして使用するのに好適ではない。理論上の熱力学的計算から、ほとんどの硫化物電解質は狭い電気化学的ウィンドウを有することが実証されている(Y. Zhuら、ACS Appl. Mater. Interfaces 2015、7、23685-23693; Y. Tian、et al.、Energy Environ Sci. 2017、10、1150~1166.)。Na金属と固体電解質との望ましくない反応も実験的に示されている(Wenzelら、ACS Appl. Mater. Interfaces 2016、8、28216~28224)。
【0008】
[08]化学的不安定性の問題に加えて、他の侮れない問題は、全固体金属電池における短絡事象である。複数の調査グループが、LiまたはNa金属アノードと組み合わせた固体電解質は短絡事象を経験するケースを報告している。近年の研究から、失敗のメカニズムはグリフィスに似ており、その表面上にクラック、粒界または欠陥がない固体電解質は、短絡事象を抑制するのに理想的な電解質であると予想されることが示されている(Adv. Energy Mater. 2017、1701003)。したがって、連続ガラスに近い微細構造を有する高度に緻密な層を形成する固体電解質が極めて望ましい。
【0009】
[09]Tatsumisagoら、米国特許第9537174号B2、「硫化物固体電解質(Sulfide solid electrolyte)」において、yLiS-(100-x-y)P-xPの化学式を有するオキシ硫化物電解質が報告されており、これは、(1)強化された水分安定性、および(2)結晶相の性質を示すことが見出されている。
【0010】
[010]無定形ガラスは、典型的にはメルトクエンチ法により加工され、これは、電解質を溶融するのに高温を必要とし、電解質生産に複雑さを増加させる。理想的には、室温で圧縮された粉末を使用するガラス形成アプローチが、低コストの合成アプローチであることから好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第9640835号B2
【文献】米国特許第9537174号B2
【非特許文献】
【0012】
【文献】Wenら、「Main Challenges for High Performance NAS Battery: Materials and Interfaces.」Adv Funct Mater 23、1005~1018(2013)
【文献】Kimら、Small Methods 2017、1700219
【文献】Y. Zhuら、ACS Appl. Mater. Interfaces 2015、7、23685-23693
【文献】Y. Tian、et al.、Energy Environ Sci. 2017、10、1150~1166
【文献】Wenzelら、ACS Appl. Mater. Interfaces 2016、8、28216~28224
【文献】Adv. Energy Mater. 2017、1701003
【発明の概要】
【0013】
[011]固体電解質、例えばナトリウムオキシ硫化物を利用する方法、電池、および電解質が本明細書で論じられる。本明細書においてさらに論じられるこの新しいクラスのナトリウムイオン伝導性固体電解質は、粉末が低温で圧縮されると、Na金属またはNa合金電極と共に安定な低抵抗の境界を維持しながら、連続ガラスに近い高度に緻密な層を形成する。例えば、本明細書で論じられる電解質は、主として無定形であってもよく、および/または95%またはそれより大きい相対密度を有していてもよい。これらの電解質は、Na金属またはNa合金電極を有するナトリウム電池と共に利用することができる。さらに、これらの電解質は、Na金属またはNaベースの合金の電極を0.2mA/cmで用いて、250時間またはそれより長く作動することができる。この新しい電解質は、メルトプロセスによって形成された連続ガラスの利益を示すが、低コストで高度にスケーラブルな粉末スラリー方法を使用して形成できるという点で、変形可能である。
【0014】
[012]一部の実施態様において、電解質を形成する方法は、少なくとも1種の硫化ナトリウムおよび少なくとも1種の酸化物を含む出発材料のボールミリングを利用する。例えば、ボールミリングは、500rpm以上で実行してもよい。得られた材料を相対的に低い温度および圧力でプレスして、電解質が形成される。一部の場合において、材料は、100℃またはそれ未満の温度で、および/または100~450MPaでプレスすることができる。
【0015】
[013]このオキシ硫化物電解質は、NaPS4-x(0<x≦2)の基準の組成を有していてもよく、これは、NaS-P-Pの混合物を75:(25-y):y(0<y≦20)のモル比でボールミリングすることによって合成することができる。出発材料の例は、NaS、P、およびPを含み得る。
【0016】
[014]前述の内容は、以下に記載された特許請求の範囲および詳細な説明をよりよく理解できるように、本発明の開示の様々な特徴をかなり概略的に概説したものである。本開示の追加の特徴および利点を以下に記載する。
【0017】
[015]本発明の開示およびその利点をより十分に理解するために、ここで本開示の具体的な実施態様を記載する添付の図面と共に解釈される以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】[016]図1a~1dは、それぞれ150MPaおよび375MPaでコールドプレスすることによって形成された(a、b)NaPSガラスペレット対(c、d)NaPSOガラスペレットの断面SEM形態比較を示す。
図2】[017]図2a~2bは、比較例であるNaPS4-x(x=0、0.25、0.50および1.0)電解質の伝導性であって、(a)異なる温度における伝導性のアレニウス曲線;(b)NaPS4-xのx値に対する60℃における活性化エネルギーおよび伝導性を示す。
図3】[018]図3は、NaPSガラス-セラミック電解質およびNaPS4-x(x=0、0.25、0.50および1.0)電解質のシンクロトロンX線回折パターン、加えて、NaSの標準的なパターンを示す。
図4】[019]図4は、4種のNaPS4-x(x=0、0.25、0.50および1.0)電解質粉末の31P NMRスペクトルを示す。
図5】[020]図5a~5dは、概略図に示されるデバイスアーキテクチャーを有する1つのNaSn電極および1つのNa15Sn電極を有する非対称セルのサイクル挙動を示す。(a)NaPSガラス-セラミック電解質、(b)対応する電池のアーキテクチャー、(c)60℃で試験されたNaPS3.750.25|NaPSガラス-セラミック|NaPS3.750.25スタック、および(d)対応する電池のアーキテクチャー。試験は60℃で実行された。
図6】[021]図6a~6dは、概略図に示されるデバイスアーキテクチャーを有するNa金属電極を有する対称セルのサイクル挙動を示す。(a)NaPSガラス-セラミック電解質、(b)対応する電池のアーキテクチャー、(c)60℃で試験されたNaPSO|NaPSガラス-セラミック|NaPSOスタック、および(d)対応する電池のアーキテクチャー。試験は60℃で実行された。
図7】[022]図7a~7cは、異なるSEにおけるNa|SE境界現象を示す。a、Na樹枝状結晶の透過を引き起こす示差的な粒状物境界を有する酸化物。b、Na金属との不安定な界面層を有する硫化物。c、傷のない構造および安定な界面層を有する新たに設計されたオキシ硫化物ガラス。
図8】[023]図8は、NaPS4-x(x=0、0.25、0.50、および1.00)SEの実験に基づくX線回折(XRD)パターンを示す。
図9】[024]図9は、NaPS4-x(x=0、0.25、0.50、および1.00)SEの示差走査熱量計(DSC)曲線を示す。TおよびTは、それぞれガラス転移温度および結晶化温度を表す。
図10a】[025]図10a~10fは、NaPS4-x(x=0.00、0.25、0.50、および1.00)SEの構造的な特徴付けを示す。a、シンクロトロンX線回折パターン。b、ラマンスペクトル。c、31P-NMRスペクトル。d、構造単位および異なるx値に対するその相対的な含量依存性。e、フーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトル。f、X線光電子スペクトル(XPS)。
図10b】[025]図10a~10fは、NaPS4-x(x=0.00、0.25、0.50、および1.00)SEの構造的な特徴付けを示す。a、シンクロトロンX線回折パターン。b、ラマンスペクトル。c、31P-NMRスペクトル。d、構造単位および異なるx値に対するその相対的な含量依存性。e、フーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトル。f、X線光電子スペクトル(XPS)。
図10c】[025]図10a~10fは、NaPS4-x(x=0.00、0.25、0.50、および1.00)SEの構造的な特徴付けを示す。a、シンクロトロンX線回折パターン。b、ラマンスペクトル。c、31P-NMRスペクトル。d、構造単位および異なるx値に対するその相対的な含量依存性。e、フーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトル。f、X線光電子スペクトル(XPS)。
図10d】[025]図10a~10fは、NaPS4-x(x=0.00、0.25、0.50、および1.00)SEの構造的な特徴付けを示す。a、シンクロトロンX線回折パターン。b、ラマンスペクトル。c、31P-NMRスペクトル。d、構造単位および異なるx値に対するその相対的な含量依存性。e、フーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトル。f、X線光電子スペクトル(XPS)。
図10e】[025]図10a~10fは、NaPS4-x(x=0.00、0.25、0.50、および1.00)SEの構造的な特徴付けを示す。a、シンクロトロンX線回折パターン。b、ラマンスペクトル。c、31P-NMRスペクトル。d、構造単位および異なるx値に対するその相対的な含量依存性。e、フーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトル。f、X線光電子スペクトル(XPS)。
図10f】[025]図10a~10fは、NaPS4-x(x=0.00、0.25、0.50、および1.00)SEの構造的な特徴付けを示す。a、シンクロトロンX線回折パターン。b、ラマンスペクトル。c、31P-NMRスペクトル。d、構造単位および異なるx値に対するその相対的な含量依存性。e、フーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトル。f、X線光電子スペクトル(XPS)。
図11】[026]図11は、NaPS3.750.25SEの透過型電子顕微鏡(TEM)画像および制限視野電子回折(SAED)パターンを示す。
図12】[027]図12は、NaPS4-x(x=0、0.25、0.50、および1.00)SEのラマンスペクトルにおけるPS4モードのガウシアンフィッティングの結果を示す。
図13】[028]図13a~13dは、NaPS4-x(x=0.00、0.25、0.50、および1.00)ガラスSEおよびHT-NaPSガラスセラミックSEの機械特性を示す。a、表面(第1の行)および断面(第2の行)の形態のSEM画像、スケールバー10μm。b、相対密度対成形圧のプロット。c、ナノインデンテーションの荷重曲線。d、ヤング率および硬度に関する棒グラフ。
図14】[029]図14は、0.1mAh・cm-2のストリッピング/プレーティング能力を有する、0.1mA・cm-2の電流密度下での60℃におけるNa|HT-NaPS|Na対称セルのガルバノスタットのサイクリングを示す。
図15】[030]図15a~15fは、(c)150MPaおよび(d)375MPaでプレスされたNaPSO SEペレットと比較した、(a)150MPaおよび(b)375MPaでプレスされたNaPSSEペレット断面のSEM画像を示す。合成したままの(e)NaPS粉末および(f)NaPSO粉末のSEM画像。
図16】[031]図16は、NaPS3.750.25およびNaPS3.50.5ガラスSEのナノインデンテーションの荷重曲線を示す。
図17】[032]図17a~17cは、60℃におけるNa金属に対するNaPS4-x(x=0.00、0.25、0.50、および1.00)SEの化学的安定性を示す。a、新たに作製された、および5時間静置したNa|SE|Na対称セルの電気化学インピーダンススペクトル(EIS)発展。b、c、5時間の接触後におけるNaとSEとの境界面におけるP 2pおよびS 2p XPSスペクトル。
図18】[033]図18は、Na金属と接触した場合のNaPS4-x(x=0、0.25、0.50、および1.00)SEの総面積比抵抗(area specific resistance;ASR)変化を示す。
図19】[034]図19a~19bは、NaPS4-x(x=0、0.25、0.50、および1.00)SEのP 2pおよびS 2p軌道XPSスペクトルを示す。
図20】[035]図20a~20eは、NaPS4-x(x=0.00、0.25、0.50、および1.00)SEの電気特性および電気化学特性を示す。a、SEのNaイオン伝導性の温度依存性。b、Na|SE|ステンレス鋼非対称セルにおけるNaPSO|NaPS3.750.25|NaPSO三層電解質のサイクリックボルタンメトリー曲線。差し込み図は、セルの構成および三層電解質のSEM画像の略図を示す。c、60℃におけるNa|SE|Na対称セルで作動するNaPSO|NaPS3.750.25|NaPSO三層SEの臨界電流密度試験であり、電流密度増加の刻み幅は、0.05mA・cm-2であり、プレーティング/ストリッピング時間は、0.5時間である。差し込み図は、セルの構成の略図を示す。d、e、それぞれ0.2mA・cm-2および0.5mA・cm-2の電流密度下での60℃におけるNa|NaPSO|NaPS3.750.25|NaPSO|Na対称セルのガルバノスタットのサイクリング。
図21】[036]図21a~21bは、を示す(a)60℃におけるNaPS4-x(x=0、0.25、0.50、および1.00)SEの電気化学インピーダンススペクトル(EIS)。(b)NaPS4-xSEの酸素含量に対する60℃における活性化エネルギー(Ea)および伝導性のプロット。
図22】[037]図22は、報告されたNa|SE|Na対称セルの性能と本発明者らの研究との比較を示す。様々なSE:硫化物ベース(例えばポイント1~3:NaPS、NaSbS、Na2.9375PS3.9375Cl0.0625)、酸化物ベース、(例えばポイント4~5:Na3.1Zr1.95Mg0.05SiPO12、加熱処理したNaZr(PO)(SiO)、ホウ化物ベース(例えばポイント6:Na(B12120.5(B10100.5)、ポリマーベース(例えばポイント7~8:ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、中空メソポーラス有機ポリマー-PEO複合材料)、およびポリマー-酸化物複合材料(例えばポイント9:架橋されたポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(CPMEA)-NaZr(PO)(SiO)のものが網羅される。さらに、この図では、実用的な完全セルのエネルギー密度、出力密度およびサイクル寿命性能を決定する、3つの主要なパラメーター:サイクル毎にプレーティングされたNa金属の容量(丸の領域で示される)、電流密度、サイクル時間が例示される。
図23】[038]図23a~23eは、NaPSO|HT-NaPS|NaPSO対称セルのサイクル性能を示す:(a)三層電解質の略図;(b)三層電解質のSEM画像;(c)NaPSO(上の層)とHT-NaPS(下の層)との間の拡大した境界のSEM画像;(d)および(e)それぞれ0.2mA・cm-2および0.5mA・cm-2の電流密度下での60℃におけるNa|NaPSO|HT-NaPS|NaPSO|Na対称セルのガルバノスタットのサイクリング。
図24】[039]図24a~24cは、60℃におけるNa-S完全セル(S-KB-NaPS3.750.25|NaPS3.750.25|NaPSO|Na)の性能である。a、電荷/放電電圧プロファイル。b、容量およびクーロン効率対サイクル数。c、異なる電流密度下におけるレート容量およびサイクル安定性。
図25】[040]図25は、0.05mA・cm-2から0.35mA・cm-2の電流密度下での60℃におけるNa-S完全セル(S-KB-NaPS3.750.25|NaPS3.750.25|NaPSO|Na)の電圧プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[042]ここで図面を参照するが、描写された要素は、必ずしも原寸に比例して示されるとは限らず、似たような、または類似の要素は、複数の図にわたり同じ参照番号で示される。
【0020】
[043]全般的に図面を参照すると、例示は、本開示の特定の実施を説明する目的のためであり、それらに限定することは意図されないことが理解されると予想される。本明細書において使用される用語のほとんどは当業者にとって承認できるものであるが、明示的に定義されていない場合、用語は、現在容認された意味を採択すべきと当業者によって解釈されることが理解されるものとする。
【0021】
[044]前述の一般的な説明と以下の詳細な説明はいずれも単に典型的で説明的なものにすぎず、特許請求された発明を限定しないことが理解されると予想される。本出願において、単数形の使用は複数形を含み、言葉「1つの(a)」または「1つの(an)」は、「少なくとも1つの」を意味し、「または」の使用は、特に別段の規定がない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」、加えて他の形態、例えば「含む(includes)」および「含まれる(included)」の使用は、非限定的である。また、「エレメント」または「要素」などの用語も、特に別段の規定がない限り、1つの単位を含むエレメントまたは要素と、1つより多くの単位を含むエレメントまたは要素の両方を包含する。
【0022】
[045]ナトリウム電池のための固体電解質および対応する固体電解質を作製するための方法が本明細書で論じられる。この固体電解質は、ナトリウム金属との優れた化学的安定性を提供することができ、および/または連続ガラスに近い微細構造を有していてもよい。さらに、この固体電解質を作製するための方法は、電解質の作製プロセスを簡単にする。
【0023】
[046]この新しいクラスの電解質は、以下の観点で他のものと異なる:(1)新しい電解質は、Na金属またはNaベースの合金の電極とは強化された化学的安定性を示すが、周囲の水分とは化学的安定性を示さないこと;および(2)新しい電解質は、結晶化したガラス相の代わりに、主として非晶質相であること。
【0024】
[047]本明細書で論じられる固体電解質の新しい系統は、硫化物SEと酸化物SEの利点を組み合わせたガラス状SEであり、全ての他の公知のSEを超えるナトリウム金属との最良のサイクル安定性、ならびにロバストな機構および実質的な化学的/電気化学的安定性を有する、ほぼ完全に傷のないガラス状構造を作り出す室温での圧力によって誘発される焼結を受ける示差的な能力を実証する。微細構造分析から、オキシ硫化物SEより顕著に強い、より緻密なガラス状ネットワーク構造であり、NaPSの完全にイオン性の非ネットワーク構造と比較してより多くの架橋酸素単位を有することが解明される。一部の実施態様において、これらのSEは、全く最高のエネルギー密度(≧1800Wh・kg-1)を実証する。
【0025】
[048]一部の実施態様において、新しいSEは、容易な1工程の機械化学的なミリング方法を使用した、ほぼ傷のないガラスとして存在するオキシ硫化物SE(NaS-P-P)を含む。本明細書においてさらに論じられる三成分の電解質系は、以下を含むように慎重に設計された:第1の成分である低い融点を有するPは、構造的に欠陥のないバルクのガラスの形成を容易にすると考えられる強いガラス形成剤であり、これは、上記の純粋な酸化物SEにおけるNa樹枝状結晶の拡がりの問題への取り組みにとって重要である;第2の成分であるP-SのP-Sと比較してより強いP-Oの化学結合を有するPOは、よりロバストなガラスネットワークを形成することができ、それによって、機械的強度を押し上げ、純粋な硫化物SEの公知の電気/化学的分解を遅らせる;第3の成分であるNaSは、高いNa-イオン伝導性を達成するための傑出したガラス調節剤である。通常の単軸のコールドプレス中に、これらの新しいオキシ硫化物SEは、十分に緻密な、顕微鏡レベルで均一なガラスに自発的に変換されることが見出された(図7c)。この構造的な変換は、独特であり、Na金属に対して、優れた機構(20.9±0.7GPaの高いヤング率)、化学的安定性(ごくわずかな分解)、および電気化学サイクリング(2.3mA・cm-2の高い臨界電流密度および0.5mA・cm-2での数百時間のサイクリング)をもたらすのに必須であると考えられる。さらに、最先端のエネルギー密度(1819Wh・kg-1)を有する周囲温度での全固体Na-S電池の実証が、三層構造を使用して成功した。
【0026】
[049]ナトリウムオキシ硫化物電解質の合成
[050]一部の実施態様において、固体電解質は、1工程のボールミリングプロセスを介して合成することができる。得られた電解質は、あらゆる好適なナトリウムオキシ硫化物であってもよく、例えばNaPS4-xガラス(式中、0<x≦2である)である。一部の実施態様において、望ましいモル比での、少なくとも1種の硫化物または硫化ナトリウムおよび少なくとも1種の酸化物(例えばNaS、P、およびP)を含む出発材料の望ましい量を、ミリングボールを有する容器中に一緒に入れ、ボールミリングする工程を実行してもよい。ボールミリングは、500rpm以上の速度で実行してもよい。
【0027】
[051]非限定的な例として、NaPS4-x電解質(式中、0<x≦2である)は、75:(25-y):y(式中、yは0ではない)のモル比で混合されたNaS、P、およびPの出発材料を含む。さらに、一部の場合において、比率は0<y≦20である。例えば、約2gの総質量を、250mLのステンレス鋼ジャーにステンレス鋼ボール(2×直径16mm/20×直径10mmまたは2×直径10mm/20×直径6mm)と共に入れ、500rpmの高い回転速度で3~10時間ボールミリングした。
【0028】
[052]1工程のボールミリングを介して出発材料を合成した後、得られた材料は、任意選択で、プレスすることによって、例えば100℃もしくはそれ未満の温度で、または室温でプレスすることによってさらに高密度化してもよい。加えて、一部の実施態様において、プレスは、100~450MPaの圧力下で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスは、350~450MPaの圧力で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスは、250~350MPaの圧力で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスは、150~250MPaの圧力で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスは、100~150MPaの圧力で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスされた電解質は、95%に近いかまたはそれより大きい相対密度を有していてもよい。一部の実施態様において、プレスされた電解質は、100%に近い相対密度を有していてもよい。非限定的な例として、NaPS4-x(x=1.0)ガラス電解質は、室温で、100~450MPaの圧力下で高密度化してペレットにすることができる。注目すべきことに、この高密度化は、100%に近い相対密度を有するサンプルをもたらす。同じ条件で処理されたNaPSガラス電解質の先行技術は、約94%の相対密度をもたらす[M. Noseら、J. Mater. Chem. A、2015、3、22061]。一部の実施態様において、得られた電解質は、主として無定形であってもよいし、および/またはほぼ連続のガラスであってもよい。
【0029】
[053]図1a~1dは、それぞれ150および375MPaでコールドプレスされた先行技術のNaPSガラスおよびオキシ硫化物ガラスNaPS4-x(x=1.0)の砕いたペレットのSEM画像の比較断面を示す。明らかに、NaPS4-xガラスは、NaPSガラスで観察された孔および粒界(図1aおよびb)とは全く対照的に、連続ガラス(図1cおよびd)と一致する特徴を示す。重要なことに、150MPaでプレスされたNaPS4-xガラスは、375MPaで形成されたものと類似の形態を示す。NaPSガラスの場合、いくらか形態を改善するためには、375MPaの最低限の圧力が必要であるが、それよりかなり大きい圧力でも、孔またはクラックがなお観察される可能性がある。理論に縛られることはないが、このような2つの材料間における機械的な挙動および微細構造の差の原因は、化学組成にあると考えられ、オキシ硫化物ガラスNaPS4-xにおける酸素ドーピングは、ガラスの結合強度および粘弾性の挙動を顕著に変化させる。この新しい電解質は、メルトプロセスによって形成された連続ガラスの利益を示すが、低コストで高度にスケーラブルな粉末スラリー方法を低温または室温で使用して形成することができるという点で、変革的な技術である可能性がある。このような緻密なクラックのない電解質が、安定なNa金属サイクリングにとって重要であることを以下に示す。
【0030】
[054]一部の実施態様において、固体電解質は、少なくとも1種の硫化ナトリウム材料および少なくとも1種の酸化物材料を含むボールミリング出発材料の生成物である。非限定的な例として、75:(25-y):y(式中、0<y≦20である)のモルパーセンテージを有するNaS、PおよびPを利用することができる。得られた電解質は、一部の場合において、NaPS4-x電解質(式中、0<x≦2である)であり得る。さらに、xは、NaPS4-x電解質の場合、0.25であり得る。一部の実施態様において、出発材料は、例えばステンレス鋼ジャー中で、1工程のボールミリングアプローチに供される。その後、ボールミリングした材料を次いで、例えば室温で、または100℃またはそれ未満の温度で、任意選択でコールドプレスして、望ましいナトリウムオキシ硫化物固体電解質を生産することができる。一部の実施態様において、生産された固体電解質は、主として非晶質相であり、高度に伝導性の結晶相(例えばNaPS)は極めて少量である。本明細書において、少量の結晶相が例えば<1%で存在する場合、または本明細書の実験の実施例においてさらに論じられる特性を示す場合、電解質は、主として無定形と称され得ることが理解されるものとする。一部の実施態様において、得られた電解質は、ほぼ連続のガラスであってもよい。ほぼ連続のガラスは、穴、粒状物境界、または傷がほとんどない、ほぼ傷のない状態であってもよい。例えば、「ポップイン(pop-in)」現象を、ほぼ傷のないガラスからなくすことができ、またはほぼ傷のないガラスは、本明細書の実験の実施例においてさらに論じられる1つまたはそれより多くの特性を示すことができる。一部の実施態様において、固体電解質、例えばNaPS4-x(式中、0<x≦1または0<x≦2である)は、純粋な硫化物ガラス(x=0)より高いイオン伝導性を有する。一部の実施態様において、上記で論じられた固体電解質は、ほぼ傷のないガラスに近い極めて均質の緻密なペレットを形成でき、このようなペレットはまた、上記で論じられたように、得られたボールミリングした粉末をプレスする場合、主として無定形でもあり得る。プレスは、室温で、または100℃より低い温度で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスは、室温もしくは低温で、および/または低い圧力で行ってもよい。一部の実施態様において、プレスは、100~450MPaの圧力下で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスは、350~450MPaの圧力で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスは、250~350MPaの圧力で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスは、150~250MPaの圧力で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスは、100~150MPaの圧力で実行してもよい。一部の実施態様において、プレスされた電解質は、95%に近いかまたはそれより大きい相対密度を有していてもよい。一部の実施態様において、プレスされた電解質は、100%に近い相対密度を有していてもよい。
【0031】
[055]一部の実施態様において、上記で論じられた固体電解質は、ナトリウム電池で利用される。電解質は、Na金属またはNaベースの合金の電極と共に利用することができる。一部の実施態様において、電解質は、Na金属またはNaベースの合金(例えばSn、Sb、P、Si、Ge、Biなど)のアノードとの使用に好適である。一部の実施態様において、あらゆる好適なNa金属またはNaベースの合金(例えばSn、Sb、P、Si、Ge、Biなど)のカソードを利用することができる。対照的に、他の先行技術のSSEは、不良な長期安定性を実証し、短時間で劣化する。電解質は、一部の場合において、NaPS4-x電解質(式中、0<x≦2である)であり得る。さらに、NaPS4-x電解質の場合、xは、0.25であってもよい。一部の実施態様において、得られた電解質は、主として無定形および/またはほぼ連続のガラスであってもよい。一部の実施態様において、上記で論じられた電解質は、0.2mA/cmで、Na金属またはNaベースの合金と共に、500時間またはそれより長く性能を示すことができる。一部の実施態様において、上記で論じられた電解質は、0.2mA/cmで、Na金属またはNaベースの合金と共に、400時間またはそれより長い性能を示すことができる。一部の実施態様において、上記で論じられた電解質は、0.2mA/cmで、Na金属またはNaベースの合金と共に、300時間またはそれより長い性能を示すことができる。一部の実施態様において、上記で論じられた電解質は、0.2mA/cmで、Na金属またはNaベースの合金と共に、250時間またはそれより長い性能を示すことができる。一部の実施態様において、上記で論じられた固体電解質はまた、Na金属またはNaベースの合金の電極とは不安定な他の硫化物電解質と組み合わせることもできる。一部の実施態様において、上記で論じられた新しい電解質および他の(不安定な)硫化物電解質は、複数の層(例えば三層)の電解質を形成する。他の硫化物電解質は、一部の多層立体配置において、それをNa金属またはNaベースの合金から隔離するために、新しい電解質間に挟まれていてもよい。一部の実施態様において、上記で論じられた複数の層の電解質は、Na金属またはNaベースの合金(例えばSn、Sb、P、Si、Ge、Biなど)のアノードと適合するものでもよい。
【実施例
【0032】
[056]実験の実施例
[057]以下の実施例は、本発明の開示の特定の形態を実証するために記載される。以下の実施例に記載される方法は単に本開示の例示的な実施態様を示すにすぎないことが当業者には理解されるものとする。当業者は、本発明の開示の観点から、記載された具体的な実施態様において多くの変化をなすことができ、それでもなお、本発明の開示の本質および範囲から逸脱することなく、似たような、または類似の結果を得ることができることを理解しているものとする。
【0033】
[058]これまでに論じられた非限定的な例にしたがってNaPS4-x電解質を生産した。様々なオキシ硫化物電解質NaPS4-xのなかでも、図2aは、酸素ドーピングに対してイオン伝導性の傾向を示す。イオン伝導性はx=0.25で最大化し、次いでxが1.0に達したときに減少する。一実施態様において、NaPS3.750.25は、60℃で2.7×10-4S・cm-1のイオン伝導性を示し、これは、NaPSガラス電解質のイオン伝導性(x=0、4.4×10-5S・cm-1)より顕著に高く、60℃におけるNaPSガラス-セラミック電解質(3.9×10-4S・cm-1)のイオン伝導性に匹敵する。図2bに、アレニウス曲線の傾きから得られた活性化エネルギーを示す。
【0034】
[059]図3は、様々なオキシ硫化物電解質NaPS4-xのシンクロトロンX線粉末回折パターンを示す。x=0の場合、サンプルは純粋に無定形であり、これは、15~20°および30~35°での幅広なピークに反映される。x=0.25の場合、サンプルは微量のNaPS結晶相を示す。x=0.5の場合、サンプルは、より少ない結晶性NaPS相を示すが、未反応のNaSの量が増加している。x=1.0の場合、サンプルは、より一層少ないNaPSを示し、未反応のNaSがさらに増加している。
【0035】
[060]固体核磁気共鳴(NMR)は、Liの局所環境を決定するための有効な手段として示されている。材料組成の差をさらに理解するために、図4で示されるように、4つのNaPS4-x(x=0、0.25、0.50および1.0)サンプルの31P NMRスペクトルを測定した。x=0のサンプルの場合、スペクトルは、主としてP 4-(110ppm)およびPS 3-(85ppm)の構造単位に対応する110および85ppmにおける2つのピークで構成される。xが0.25の場合、P 4-単位の相対強度は、より弱い。xが0.5に増加している場合、より低い化学シフトにおける4つの新しい共鳴ピークが観察された。約60ppmおよび34ppmにおけるピークは、PS 3-およびPSO 3-単位に割り当てることができ、これは、酸素原子が、改善された化学的安定性に関与するP-S単位に取り込まれていることを示す。0および-18ppmに配置された共鳴ピークは、P 4-およびPO 単位による。x=1の場合、全ての4つの酸素を含有する単位(PS 3-、PSO 3-、P 4-およびPO )の共鳴ピークの強度はさらに増加した。一般的に言えば、P-O結合の結合強度は、O原子のサイズがより小さいため、P-S結合の結合強度よりかなり強い。それゆえに、理論に縛られることはないが、電解質を分解するにはより高いエネルギーが必要であり、それにより、優れた化学的安定性および機械特性がもたらされると考えられる。
【0036】
[061]実施例1:オキシ硫化物電解質とナトリウム-スズ合金アノードとの併用
[062]NaSn合金は、典型的には、化学的反応性に関する刺激性はNa金属より低いと考えられる。図5a~5dは、1つのNaSn電極および1つのNa15Sn電極を有する非対称セル様式におけるNaPSガラス-セラミック電解質およびNaPS4-xオキシ硫化物電解質の比較を示す。単一層のNaPSガラス-セラミック電解質を使用した場合(図5a、および対応する電池のアーキテクチャーを示す図5b)、133時間の連続的なサイクリングの後に、0.5mA/cmおよび0.5mAh/cm容量/半サイクルでのサイクル電圧プロファイルにおける段階的な増加が観察された。これは、150ohm/cmから640ohm/cmへの面積比抵抗(ASR)の増加に相当する。この結果は、NaPSガラス-セラミック電解質の化学的不安定を強く示す。対照的に、図5c(図5dに示される対応する電池のアーキテクチャー)で示されるように、NaSn合金と共にNaPS3.750.25オキシ硫化物電解質を使用した場合、800時間の連続的なサイクリングにわたり、より高い電流密度(1.0mA/cmおよび1.0mAh/cm容量/半サイクル)でも非常に安定な電圧プロファイルが観察された。これは、160ohm/cmから190ohm/cmへのASRの増加に対応する。この場合、薄い単一層を製作することが難しいため、三層構造が製作された。この三層構造は必ずしも必要ではなく、NaPS4-xオキシ硫化物電解質の単一層は、NaSn合金と類似の安定なサイクリングを示すと予想されることが当業者によって理解されるものとする。
【0037】
[063]実施例2:オキシ硫化物電解質とNa金属アノードとの併用
[064]図6a~6dは、対称NaセルにおけるNaPSガラス-セラミック電解質およびNaPS4-xオキシ硫化物電解質の比較を示す。試験は60℃で実行された。図6a(対応する電池のアーキテクチャーを示す図6b)は、0.1mA/cmおよび0.1mAh/cm/半サイクルの電流密度でのNaPSガラス-セラミック電解質の240時間のサイクルデータを示す。0.1mA/cmにおける電圧プロファイルにおける段階的な増加が観察された。これは、200時間目における120から1150ohm/cmへのASRの増加に対応する。その後、緩やかな短絡が観察された。
【0038】
[065]全く対照的に、図6c(対応する電池のアーキテクチャーを示す図6d)で示されるように、Na金属ストリッピング/プレーティング電圧プロファイルは、NaPS3.750.25/NaPSガラス-セラミック三層スタックにおいてほとんど変化を示さなかった。250時間の連続的なサイクリングにわたり、0.5mA/cmおよび0.5mAh/cm容量/半サイクルにおけるより高い電流密度でも、非常に安定な電圧プロファイルが観察された。これは、ASRの160ohm/cmから190ohm/cmの増加に対応する。上記で列挙した同じ理由で、NaPS4-xオキシ硫化物電解質の単一層も、Naと安定なサイクリングを示すことが予測される。
【0039】
[066]さらなる実験:ガラス状SEの形成および組成
[067]NaS-P-P(NaPS4-x)SEの特性への酸素付加の相乗効果を調査し、本明細書では高エネルギー機械化学ミリング(MCM)と称することもできる上記で論じられた電解質のための合成プロセスを介して合成されたx=0.00、0.25、0.50、1.00の異なる組成に対して系統的に特徴付けた。XRDパターン(図8)は、出発材料の回折ピークは検出されなかったことから、MCMの後に全ての原材料が無定形になったことを示す。DSC曲線(図9)はさらに、SE生成物の特徴的なガラス転移温度を明らかにする。MCMは、一般的に、ミリング中に高い局所温度を発生させ、ミリング後に急速に温度を下げることが認められ、これは、無定形材料の形成に関与する。しかしながら、メルトクエンチ系の場合とまったく同様に、必ずしも完全に無定形のガラスを得るのに十分な急冷速度であるとは限らず、MCM方法を介して合成された一部の系(例えばNaS-PおよびLiS-P)では少量の結晶相の存在を検出することができる。NaPS4-xSEにおける可能性のある結晶相をより詳細に調査するために、高エネルギーシンクロトロンXRDパターンを収集した。図10aにそれを示す。全ての合成されたSEは、弱いブラッグピークと重ね合わされた2つの広範なハロを特徴とし、これは、少数の微粒状の結晶相がまさに形成され、それ以外のガラス状マトリックスの大部分に埋め込まれていることを示す。図10aからわかるように、xが1.0に達すると、これらの結晶相は次第に消失し、その代わりにNaS相が出現する。より高い酸素置換におけるNaS出現の理由は、420cm-1を中心とするこの主要なラマンピークのガウシアンフィッティングから確認したところ(図10b)、不均化反応(2NaPS(P)→Na(P)+NaS)であった。図11は、NaPS3.750.25SEの透過型電子顕微鏡(TEM)画像および制限視野電子回折(SAED)パターンを示す。図12および表1に、詳細なラマンスペクトルおよび対応するピーク同定を示す。図10aおよび10bの両方から示された通り、NaPSおよびNaSの<1%の範囲内と推測される少量の結晶相を除いて、NaPS4-xSEの主要な組成物は、ガラス相である。したがって、生産された電解質は、主として無定形であると特徴付けることができる。
【0040】
【表1】
【0041】
[069]オキシ硫化物ガラス状SEにおける架橋酸素により強いガラスネットワークが生じる
[070]P MAS-NMRを使用して、リンガラスを形成するカチオン周辺の局所構造を調査することにより、これらのSEのガラス相へのさらなる洞察を得た。図10cおよび表1からわかるように、酸素の取込みにより、混合されたオキシ硫化物(PS(63ppm)およびPSO(32ppm))および酸化物(P(1ppm)およびPO(-17ppm))単位の形成による4つの新しいピークを明確に観察することができる。予測されたが消失したPSOオキシ硫化物単位のピークは、PS単位と本質的に同じ化学シフトを有するため、ほぼ識別できない程度である。本明細書において開発された方法に従って、この単位に加えて他の単位およびそれらの相対的な割合が、慎重なスペクトルデコンボリューションおよび電荷バランスの補正によって決定された。ガラスの化学的な短距離秩序を反映する様々な構造単位の集団への組成(x)依存性は、図10dで示され、予想通りに、混合されたオキシ硫化物単位の割合は、酸素ドーピングレベルに伴い劇的に増加し、xが1.00に達すると優勢な種になることを示す。PS4-xオキシ硫化物単位の出現はさらに、酸素がPS四面体単位に取り込まれていることを示唆し、それによりガラスネットワークが補強されると予測される。
【0042】
[071]FTIR分光法をさらに適用して、P-SおよびP-Oの化学結合を調査した。図10eに示されるFTIRスペクトルは、それぞれ末端硫黄P-S(400~630cm-1)、架橋酸素(BO)P-O-P(630~950cm-1)および末端非架橋酸素(NBO)P-OまたはP=O(950~1200cm-1)モードに対応する3つのセクションに分割することができる。表2に詳細なピーク同定を列挙する。ガラスマトリックスへの酸素の取り込みにより、NBO P-OおよびP=O結合の割合がわずかに増加し、BO P-O-P結合の割合が特に顕著に増加していることが明らかであり、この場合O原子は、2個のP原子間で架橋を形成する。酸素がNaPSに付加されたときのBO形成のさらなる証拠は、O1sXPSスペクトル(図10f)に見出すことができ、この場合、NBOの結合エネルギーより高い532.5eVの結合エネルギーを有するBOが、NaPS4-xSEにおいて、より大きいx値に対して酸素のより高い割合を占める。NaPSO組成のスペクトルデコンボリューションは、例えばx=1.00の場合、付加された酸素原子の90%より多くがガラス中でBOとして存在することを示す。この挙動は、類似のLiGeS4-xガラス系での本発明者らの以前の研究と完全に一致する。NaPSである純粋な硫化物の完全にイオン性の非ネットワーク構造と比較して、NaPSOオキシ硫化物におけるBO単位の形成は、最終的により多く相互連結したガラス構造をもたらし、それによりSEの化学的安定性を改善する充填密度、機械的弾性率、および結合強度を増加させたガラスが生産される。
【0043】
【表2】
【0044】
[073]機械特性が改善された傷のないガラス
[074]ほぼ欠陥のない機械的にロバストなSEは、樹枝状結晶の透過を効果的に抑制するための必要条件である。その結果、NaPS4-xSEの形態学的な構造および機械特性を続いて調査した。比較のために、広く研究された加熱処理した(HT-NaPS)ガラス-セラミックSEも研究した。典型的なグリフィスの傷である明らかな穴および粒状物境界が、ペレット化したHT-NaPSの表面および断面SEM画像で明確に観察される(図13a)。これらのグリフィスの傷は、図14で実証されたように、樹枝状結晶の透過を誘発し、最終的にNa金属電池におけるSEにわたり短絡を引き起こすと考えられる。図13aにおいて、NaPSガラスSE(x=0)は、HT-NaPSと比較してより少ない欠陥を示し、これらの両方とは際立って対照的に、酸素ドープしたNaPSOガラスSE(x=1)は、表面から内部にかけて傷がないように見える。この傷がなく十分緻密な形態は、本発明において、室温での簡単なコールドプレスによって製作されたあらゆるSEで初めて観察され、さらには約200℃での複雑な加熱プレスによって製作されたSEでさえも観察される。このような申し分のない形態は、傑出したNaPSOの成形性に密接に関連していると推測される。図13bおよび図15a~15fで示されるように、このSEは、150MPaもの低い圧力であってもほぼ完全に高密度化される。比較において、NaPSガラスおよびHT-NaPSの高い相対密度は、コールドプレス中により一層高い圧力を適用したとしても容易に達成できない。これらのオキシ硫化物SEの優れた成形性は、豊富なBO単位を有するガラスネットワークに起因する。全般的に、オキシ硫化物SEの場合、それらの独特な成形性および欠陥のない構造は、図7aで示されるように、疑いの余地なくそれらの機械的強度を強化し、Na金属アノードを使用した場合に樹枝状結晶によって誘発された短絡が起こる可能性を低減すると予想される。
【0045】
[075]SEの機械特性を定量するために、本発明者らのこれまでに報告されたナノインデンテーション技術を使用して、2つの重要なパラメーター:ヤング弾性率Eおよび硬度Hを測定した。典型的な荷重-変位曲線(図13bおよび追加された図16)は、HT-NaPSペレットが、荷重プロセス中にインデンター透過の突然の増加を経るが、これは、ガラス状NaPS4-xSEでは見出されないことを示す。これは、「ポップイン」と呼ばれる現象を指し、クラック生成に関連する。さらに、ガラス状材料の均一な特性から利益を得て、NaPS4-xSEは、図13dに示される棒グラフからわかるようにEおよびHに関して極めて小さい標準偏差を示す。さらに、酸素ドーピングは、SEのEおよびHの増加をもたらし、これは、酸素ドーピングが、ガラスネットワークにおいてより多くのBO単位を生じるという観察を裏付ける。NaPSOガラスのEおよびHを測定したところ、それぞれ20.9±0.7GPaおよび1.0±0.1GPaであった。これは、NaPS4-xSEのなかでも最大である。特定には、これらは、加熱プレスされたNa-イオンSE(E:19.2GPa)より優れている。
【0046】
[076]ポアソン比νが約0.3と仮定すると、NaPSOガラスの剪断弾性率Gは約8.0±0.3GPaであり、これは、モンローおよびニューマンの基準によって予測した場合のNa金属の樹枝状結晶の透過を抑制するのに十分である。したがって、電解質は、ほぼ傷のない、または欠陥のないガラスとして説明できる。
【0047】
[077]Na金属に対して化学的に安定なSE
[078]上述したように、Na金属アノードに対するSEの化学的および電気化学的安定性は、高性能SSMBの開発のために臨界的に重要である。図17aで示されるように、60℃で5時間静置する前およびその後におけるNa|NaPS4-x|Na対称セルのEIS変化をモニターすることによってNa/NaPS4-xSE境界を調査した。表3に示されるフィッティングパラメーターから、より多くの酸素がドープされると、総面積比抵抗(ASR)の変化がそれほど顕著でなくなることから、付加された酸素は、Na金属に対するSEの化学的安定性の改善に対して正の作用を有すると結論付けることができる。図18は、Na金属と接触した場合のNaPS4-x(x=0、0.25、0.50、および1.00)SEの総面積比抵抗(ASR)変化を示す。特定には、NaPSO SE、x=1の場合、それはバルク抵抗(R)および電荷移動抵抗(Rct)のごくわずかな変化をもたらすことから、NaPSOとNaとの間に化学的に安定な境界があることが示唆される。対照的に、全ての他のSEは、R、Rctを示し、特定には、時間によって変化する界面抵抗Rを示し、これは、不安定なNa/SE境界の指標である。
【0048】
【表3】
【0049】
高い周波数から中程度の周波数から低い周波数にわたり得られたEISスペクトルは、SEのバルク抵抗およびキャパシタンス(R+Rgb、C+Cgb)、10-6~10-7Fの特徴的なキャパシタンスを有するNaとSEとの間の界面抵抗およびキャパシタンス(R、C)、ならびに電荷移動抵抗およびキャパシタンス(Rct、Cct)にフィッテイングすることができる。注目すべきこととして、RctおよびRが、2つのNa|SE境界面で抵抗を含むことが挙げられる。
【0050】
[080]xが1ではないガラス状SEの場合の明らかに経時的に成長する固体電解質相間(SEI)組成を確認するために、Na金属を対称セルから取り外し、XPSによってSEの表面を探査した。初期SEのXPSスペクトルと比較して(図19a~19bは、NaPS4-x(x=0、0.25、0.50、および1.00)SEのP2pおよびS2p軌道のXPSスペクトルを示す)、P2pスペクトル(図17b)およびS2pスペクトル(図17c)は、NaPS4-x(x=0.00、0.25、および0.50)SEが、Na金属と接触した後に、より低い結合エネルギーで2つの新しい二重項の対を呈示したことを示し、これは、これらの電解質が、Na金属によって還元されて還元されたリン化物(NaP)および硫化物種(NaS)になったことを示し、その前者は、電解質の連続的な還元を引き起こす可能性がある混成の導体である。したがって、これらのSEにとって、不安定なSEIは、NaアノードとSEとの間で成長し、Naストリッピング/プレーティングプロセスを妨げる。対照的に、これらの還元された種からのXPSシグナルは、NaPSO SEに関してほぼ識別できない程度であり、これは、EIS測定によればASR増加はごくわずかであることを実証する。これは、Na金属に対して安定して非反応性のSEIを形成する最初の硫化物ベースのSEである。Na金属と接触したNaPSOの傑出した化学的安定性の理由は、第1に、上述したように、NaPSOは、純粋な硫化物単位より高い電子結合エネルギーを有し、より還元されにくいBO単位がより多く存在することから、他のSEより高度に相互連結したロバストなガラスネットワークを有すること;第2に、P-O単位における末端酸素が、Na金属と反応して、電子的に絶縁された安定な相間(NaO)を形成できることであると考えられる。
【0051】
[081]電気化学的に安定な、高度なNa -イオン伝導性を有する三層複合SE
[082]図20aは、NaPS4-x(x=0、0.25、0.50、1.00)SEのナイキストプロットから得られたNaイオン伝導性の温度依存性を示す(図21a~21bは、(a)60℃におけるNaPS4-x(x=0、0.25、0.50、および1.00)SEの電気化学インピーダンススペクトル(EIS)、(b)NaPS4-xSEの酸素含量に対する60℃における活性化エネルギー(Ea)および伝導性のプロットを示す)。図21bから、興味深いことに、イオン伝導性は、最初の酸素付加、x=0.25で6倍の増加を示し、NaPS3.750.25SEの伝導性は2.7×10-4S・cm-1もの高さになり、活性化エネルギーは41.5kJ・mol-1もの低さになった。このイオン伝導性の変則的な増加は、2つのはっきりと異なる作用に関連する可能性があり、その1つは、本発明者らがこれまでに研究したLiGeS2-xガラス状SEで観察されたような「ドアウェイ(doorway)」半径の増加であり、他方は、高度に伝導性のt-NaPS結晶相の存在である(図10a)。酸素のさらなる付加はSEの伝導性を単調に減少させる。その原因は、より多く酸素が付加されたSEは、Naイオン輸送に利用可能な自由体積を減少させる、よりコンパクトなガラスネットワークを有することにある。結果として、NaPSO SEの伝導性は相対的に低いが、60℃において8.2×10-5S・cm-1の評価できる値を有する。
【0052】
[083]NaPSO SEの素晴らしい成形性は、SE層の抵抗を非常に低くすることができる薄いSE層を製作する方法を提供することができる。SSMBにとって理想的なSEは、高いイオン伝導性と優れた機械的および化学的安定性の両方を必要とする。それゆえに、このようなSEを作り出すために、中央に最もイオン伝導性の高いNaPS3.750.25、外側に最も機械的および化学的に安定なNaPSOを有する三層のアーキテクチャーが設計され、これは、図20bの差し込み図に示される。SEM画像(図20bの差し込み図)から、NaPSOおよびNaPS3.750.25SEの両方の優れた成形性と高密度化のために、認識できる粒状物境界と境界面がまったくない全体的にガラスのSEセパレーターが達成された。三層SEベースの非対称セルNa|三層SE|SS(ここでSSはステンレス鋼である)のサイクリックボルタンメトリー曲線は、約0Vに一対の明確なNa酸化および還元ピークを示し、Na/Naに対して3Vまでに目立った酸化電流は示されなかった(図20b)。これらの結果はいずれも、SSMBにおける三層電解質の適応性、特定には、周囲温度でのNa-S電池の作動の適応性を示す。
【0053】
[084]しかしながら、完全セルを製作する前に、それぞれ図20cおよび図20dで示されるように、勾配電流および定電流試験を使用して、対称的なNa|三層SE|Naセルで三層SEのサイクル性能を研究した。図20cからわかるように、三層セパレーターの電圧プロファイルは、<2mA・cm-2の低い電流密度でオーム応答、V=IRを示すが、電流が2.3mA・cm-2を超えると明らかな電圧低下が起こり、これは、三層SEにとって臨界電流密度(CCD)であることが決定される。NaPSO SEは、Liベースの硫化物より、さらには酸化物SE(参照)よりも低いイオン伝導性および機械的弾性率を示すにもかかわらず、2.3mA・cm-2のCCDは、最先端のCCDの結果に匹敵する。表4を参照されたい。オキシ硫化物ガラス状SEのNa樹枝状結晶に耐える能力が増加する原因は、その均一な、ほぼ傷のない構造とロバストな機械特性にある。これらの観察は、彼らが、SEにおけるグリフィスの傷(穴、粒状物境界など)が樹枝状結晶の成長とSEへの透過を促進させることを観察した、金属アノードに対するSEの故障メカニズムに対する他者の意見と一致する。
【0054】
【表4】
【0055】
[086]定電流モードにおいて、図20dおよび図20eは、同じ三層SEを有する対称セルが、それぞれ0.2mA・cm-2および0.5mA・cm-2の電流密度で短絡を生じることなく数百時間にわたり安定してサイクリングできることを示す。さらに、図20dおよび20eの差し込み図は、各サイクルで極めて平坦な電圧プロファイルが観察されることを示す。この挙動は、Naプレーティング/ストリッピングプロセスが、Na/NaPSO境界において非常に迅速であることを示す。これは、わずか20.9Ω・cmのNa/NaPSOの小さい電荷移動抵抗(片側で、それは10.45Ω・cmである。表3)と一致する。図22は、本発明者らの電流の研究と異なるカテゴリーのSEを使用した報告されたNa|SE|Na対称セルとの比較を示す。この研究で開発された三層オキシ硫化物SEは、対称セルにおけるSEのサイクル時間および電流密度性能を顕著に拡張することは明らかであり、これは、電流密度およびサイクル時間における最先端技術の新しい標準と位置付けられる。
【0056】
[087]NaPSO SEをNaPS3.750.25と組み合わせて、安定な全てガラスのセパレーターを作り出すことができることが上記で示された。同様にして、三層のアーキテクチャーを使用して、NaPSOは、他の高度に伝導性の、ただし化学的に不安定な(Na金属に対して)SE、例えばガラス-セラミック、例えばHT-NaPS、またはセラミック、例えばNaSbSのSEなどを保護するのに使用することができる。この例は、図23a~23eに、NaPSO|HT-NaPS|NaPSOの三層SEに関して示される。予想通りに、相関する対称セルも、0.2mA・cm-2で最大500時間、非常に安定なNaプレーティング/ストリッピング電圧プロファイルを示す。
【0057】
[088]周囲温度全固体Na-S完全セル
[089]優れたNa-NaPSOの安定性は、SSMBの製作を可能にし、そのなかでも最も有望なものの一つは、非常に低コストで高比エネルギーを有する周囲温度Na-S電池である。三層SEの上記の研究に基づき、S-NaPS3.750.25|NaPS3.750.25|NaPSO|Naのアーキテクチャーを有するNa-S電池を設計し、60℃で試験した。図24aは、セルが、硫黄の理論上の容量(Na→NaS:1675mAh・g-1)の77%である1297mAh・g-1の高い初期の放電容量を達成でき、特に、液体NaおよびS電極ならびにNa→Naの放電限界を有する従来の高温Na-S電池の放電容量である558mAh・g-1よりもかなり高い放電容量を達成できることを示す。第1のサイクルのクーロン効率は、92%であり、これは、一般的に液体電解質ベースのセルで見出されるポリスルフィドの往復作用が、電流システムにおいて防止されていることを示す。40サイクル後、電池は、83%の容量保持で1070mAh・g-1の容量を達成する。図24bを参照されたい。これらの値は、表5で示されるように酸化物またはポリマーSEを使用した報告されたNa-S電池の値より顕著に優れている。放電電圧プロファイルは、Na/Naに対する1.9Vおよび1.25Vに配置された2つのプラトーを示し、その間に単一の傾きを有する。平均放電電位は、1.42Vであり、これは、アノードとしてNaSn合金を使用する他の純粋な硫化物SEベースのNa-S電池の放電電位より高い(表5)。それゆえに、ここで記載されるオキシ硫化物ベースのNa金属-硫黄電池システムは、全ての現在報告された固体Na電池システムのなかで最も高い比エネルギー密度である1819Wh・kg-1を提供することができる。さらに、セルは、それぞれ0.20および0.35mA・cm-2で908および574mAh・g-1の比容量(図25)、および0.10mA・cm-2で最大150サイクルの安定なサイクリング(図24c)を達成する優れたレート能をもたらす。本発明者らのNa-S電池の顕著に改善された性能の原因は、Naアノードに対するNaPSOの優れた安定性にあり、これは、高いレートでのNa金属の安定なプレーティング/ストリッピング、およびサイクリング中に一貫して優れた硫黄との接触を確実にするNaPS3.750.25の優れた成形性を可能にする。これらの理由のために、本発明者らは、これらの新しいオキシ硫化物SEが、低コストの、高エネルギー密度の、高い安全性の、長いサイクル寿命を有するNaベースのSSMBの開発にまったく新しい成功したアプローチを提供することができると考えている。
【0058】
【表5】
【0059】
[091]結論
[092]硫化物SEと酸化物SEの複合的な利点を有する新しいクラスのオキシ硫化物ガラスSEをうまく合成し、対称セルおよび完全セルの立体配置の両方で系統的に調査した。純粋な硫化物SEと比較して、酸素ドープしたNaPS4-xオキシ硫化物SEは、BOの特徴を有するより多くの酸化物およびオキシ硫化物単位の形成のために、よりかなり強く、より緻密なガラスネットワークを示す。また酸素の付加によっても、これらのオキシ硫化物SEが、これまで決して見られなかった、ガラス状粉末出発材料から連続的なほぼ傷のないガラス微細構造への、圧力によって誘発される均質化の能力を示す結果をもたらす。この劇的に改善された成形性は、形成されたままの状態で均一なオキシ硫化物SEが、より顕著に高い機械的強度およびNa金属に対してより劇的に高い化学的安定性を付与する結果をもたらす。NaPSO|NaPS3.750.25|NaPSOを含むほぼ傷のない三層複合SEは、報告されたNa金属対称セルのなかでも、最大2.3mA・cm-2の臨界電流密度および最大500時間のサイクリング寿命の記録を実証できるだけでなく、周囲温度Na-Sセルが、これまでの全ての公知の固体Naシステムのなかでも最大のエネルギー密度を達成することも可能にする。これらの新しいオキシ硫化物SEおよび三層複合SEは、エネルギー貯蔵デバイスのための汎用の新しい固体Na-S電池における、新しい高エネルギーの、安全な、低コストの、長いサイクル寿命を有するNa金属アノードベースのSSMBの開発に対する調査に、非常に将来性の高い達成方法を提供することができる。
【0060】
[093]方法
[094]Na PS 4-x SEの合成 NaS、P、およびP(シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、99%)を、それ以上精製せずに原材料として使用した。NaPS4-x(x=0.00、0.25、0.50および1.00)SEを高エネルギーMCM技術によって調製した。典型的には、適切な量のNaS、P5、およびP粉末の2gの混合物を、ステンレス鋼ミリングボールを含有するアルゴンで保護されたステンレス鋼ジャー中で、500rpmで3時間ミリングして、ガラス状SEを得た。ガラス状NaPS(x=0.00)を、真空中で、260℃で2時間加熱することによって、NaPSガラス-セラミックSE、すなわちHT-NaPSを得た。
【0061】
[095]Na PS 4-x SEの材料の分析 NaPS4-xSEが空気および水分に対して感受性であるため、特徴付けの全てをアルゴン保護下で実行した。実験に基づくX線回折(XRD)およびシンクロトロンXRDパターンを、それぞれリガク(Rigaku)のCuKα放射線(λ=1.5418Å)を有するミニフレックス(MiniFlex)600および0.1173ÅのX線波長を有する高度光子源(Advanced Photon Source)でのビームライン(Beamline)11-ID-Cを使用して収集して、原材料のアモルファス化およびNaPS4-x生成物の生じ得る結晶相を決定した。示差走査熱量測定、DSC、TA機器Q2000を使用して、キャリアガスとして窒素を使用して、SE粉末の熱的挙動を調査した。サンプルをTzeroアルミニウム鍋に入れ、アルゴンが充填されたグローブボックス内でクリンピングにより密封してシールした。DSC測定を、20℃・min-1の加熱速度で50℃から400℃にかけて行った。488nmのArレーザーおよび10mWの出力を採用するレニショー(Renishaw)のinViaラマン分光計を使用して、ラマンスペクトルを200cm-1から700cm-1にかけて収集した。SE粉末を、グローブボックス内の小さいプラスチックサンプルホルダーに入れ、透明なテープで覆い、データ収集中の空気への曝露を防止した。ブルカー(Bruker)のIFS66v/s真空IR分光計で、KBrビームスプリッターを使用して、400~1200cm-1の範囲で赤外(IR)スペクトルを獲得した。試験中、分光計の光学ベンチを真空中で保持して、サンプルを水分および空気から保護した。細かくグライディングしたガラスおよびガラス-セラミック粉末を、細かくグライディングし慎重に乾燥させたCsI粉末中の約2wt%に希釈することによってサンプルのIRスペクトルを取り、次いでプレスして小さいペレットにした。P固体のマジック角回転核磁気共鳴(MAS NMR)スペクトルを、JEOL ECA-500NMR分光計を使用して収集した。アルゴン充填したグローブボックス中で、SE粉末をシーラントを用いてアルミナのスピナーに充填した。スペクトルを、4.25μs、60°のパルス長、および20kHzの回転速度で200秒のリサイクル遅延を使用して収集した。NaHPOの化学シフトを外部から引用した。報告されたものと同じ方法を使用して弾性率Eおよび硬度Hを測定した。簡単に言えば、水分および空気の汚染を回避するためにアルゴン充填グローブボックス内のサンプルに対して、オリバー-ファー(Oliver-Pharr)の方法を使用して、バーコビッチ(Berkovich)インデンターを有するG200キーサイト(Keysight)ナノインデンターを使用してEおよびH値を測定した。1mNの最大のインデンテーション荷重でのインデンテーションを、SE表面の異なるスポットにプレスして、測定された結果の集中を確認した。試験中に荷重-変位曲線を記録した。Gemini LEO1525走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、SE粉末の形態、加えて高密度化したペレットの表面および断面を観察した。JEOL2100F透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、ガラス状SEに埋め込まれたナノ結晶を確認した。X線光電子分光(XPS)スペクトルを、単エネルギーのMgKα X線源を使用して、Na金属と接触させる前およびその後に、SEペレット上にフィジカルエレクトロニクス(Physical Electronics)のPHI5700を使用して収集した。XPSシグナルをC1sシグナル(284.8eV)に対して補正し、XPSPEAK41ソフトウェアを使用してフィッテイングした。
【0062】
[096]SEの電気化学的な分析 ペレット化したSEの温度依存性のイオン伝導性を、VMP3、バイオ-ロジック社(Bio-Logic Co.)の電気化学ワークステーションで、電気化学インピーダンス分光法(EIS、周波数:1MHz~0.1Hz、振幅:5mV)を使用して、25℃から90℃にかけて測定した。測定の前に、450MPaの圧力下で、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の試験セルのダイ(直径=13mm)中でSE粉末をコールドプレスし、次いで200MPaの圧力下で、電極としての20mgのナノ銅粉末(シグマ-アルドリッチ、40~60nm、≧99.5%)と共にプレスした。SEの両方の側にNa金属箔(厚さ約100μm)の2つの同じ断片を接着することによって組み立てられた対称セルNa|SE|Naの静止時間に対するインピーダンス変化をモニターすることによって、Na金属に対するSEの化学的安定性を研究した。ステンレス鋼|三層SE|Na非対称セルのサイクリックボルタンメトリーを、-0.3V~+3.0Vの電位範囲で0.05mV/sのスキャン速度を使用して行った。Na|三層SE|Na対称セルのガルバノスタットのサイクリングを、0.2mA・cm-2および0.5mA・cm-2で実行した。三層電解質の製作のために、まず、約150mgのNaPS3.750.25ガラスまたはNaPSガラス-セラミックSE粉末を75MPaでコールドプレスし、次いでプレスしたままのNaPS3.750.25ガラスまたはNaPSガラスセラミックペレットの両方の側に、約25mgのNaPSOガラス粉末を均一に分散させ、最後に3つの層を450MPaで共にプレスし、Na金属またはステンレス鋼箔と接着した。
【0063】
[097]Na-S完全セルの電気化学的な分析 NaPS3.750.25は、NaPS4-xSEのなかでも最も伝導性が高く、ケッチェンブラック(EC-600JD、アクゾノーベル(AkzoNobel))は、1400m・g-1の高い表面積を有するため、それらは、硫黄とブレンドして、複合カソードにおける硫黄活性材料のための迅速なイオンおよび電子経路の両方を作り出すために選ばれた。詳細に言えば、1:1の重量比を有する硫黄(99.5%、アルファ・エイサー(Alfa Aesar))およびケッチェンブラック(EC-600JD、アクゾノーベル)粉末を、メノウのジャーで、500rpmの回転速度で20時間ボールミリングして、硫黄/ケッチェンブラックナノ複合材料を得て、次いでこれを、350rpmの回転速度で30分、NaPS3.750.25電解質粉末と共にミリングした。硫黄:ケッチェンブラック:NaPS3.750.25複合カソードの重量比は、2:2:6である。Na-S電池を製作するために、約150mgのNaPS3.750.25電解質粉末をまず75MPaでプレスしてペレットにし、次いでその両方の側を、20~25mgのNaPSO電解質粉末および約2mgの複合カソード粉末で均一に覆った。最終的に三層を450MPaで一緒にプレスし、NaPSO電解質側の上にNa金属箔の断片と共に接着した。製作したままの完全セルのガルバノスタット試験を、Na/Naに対して1.0~3.0Vの電位範囲で、0.05~0.35mA・cm-2の異なる電流密度で実行した。全ての電気化学試験を60℃で実行した。
【0064】
[098]本明細書に記載される実施態様は、本発明の開示の特定の形態を実証するために記載される。本明細書に記載される実施態様は単に本開示の例示的な実施態様を示すにすぎないことが当業者には理解されるものとする。当業者は、本発明の開示の観点から、記載された具体的な実施態様において、記載された実施態様の異なるエレメント、要素、工程、特徴などの様々な組合せなどの多くの変化をなすことができ、それでもなお、本発明の開示の本質および範囲から逸脱することなく、似たような、または類似の結果を得ることを理解しているものとする。前述の説明から、当業者であれば、この開示の本質的な特徴を容易に確認でき、その本質および範囲から逸脱することなく、様々な変更および改変を施して本開示を様々な使用および条件に適合させることができる。上記で説明した実施態様は、単に例示目的で記載されたにすぎず、本開示の範囲を限定すると解釈されないものとする。
[1] 電解質を形成するための方法であって、
少なくとも1種の硫化ナトリウム材料および少なくとも1種の酸化物材料を含む出発材料をボールミリングする工程;および
得られたボールミリングした材料をプレスして、固体電解質であるナトリウムオキシ硫化物ガラスを形成する工程;
を含む、方法。
[2] 前記出発材料が、75:(25-y):y(式中、yは0ではない)のモル比で混合された、NaS、P、およびPである、[1]に記載の方法。
[3] 0<y≦20である、[2]に記載の方法。
[4] 前記ナトリウムオキシ硫化物ガラスが、NaPS4-x(式中、0<x≦2である)である、[2]に記載の方法。
[5] x=0.25である、[4]に記載の方法。
[6] 前記ボールミリングする工程が、100℃またはそれ未満で実行される、[1]に記載の方法。
[7] 前記プレスする工程が、100~450MPaの圧力で実行される、[1]に記載の方法。
[8] 前記電解質が、ほぼ傷のないガラスである、[1]に記載の方法。
[9] 前記電解質が、主として無定形である、[8]に記載の方法。
[10] 前記固体電解質の相対密度が、95%またはそれより大きい、[1]に記載の方法。
[11] 前記固体電解質が、Na金属またはNaベースの合金の電極を0.2mA/cmで用いて、250時間またはそれより長く性能を示すことが可能である、[1]に記載の方法。
[12] 前記ボールミリングする工程が、500rpm以上で実行される、[1]に記載の方法。
[13] 少なくとも1種のナトリウム金属またはナトリウムベースの合金の電極;
第2の電極;および
ナトリウムオキシ硫化物ガラス;
を含む固体電解質、を含む電池。
[14] 前記ナトリウムオキシ硫化物ガラスが、ほぼ傷のないガラスである、[13]に記載の電池。
[15] 前記ナトリウムオキシ硫化物ガラスが、主として無定形である、[14]に記載の電池。
[16] 前記ナトリウムオキシ硫化物ガラスが、NaPS4-x(式中、0<x≦2である)である、[13]に記載の電池。
[17] x=0.25である、[16]に記載の電池。
[18] 前記ナトリウムオキシ硫化物ガラスの相対密度が、95%またはそれより大きい、[13]に記載の電池。
[19] 前記電解質が、他の硫化物材料をさらに含み、該他の硫化物材料は、前記ナトリウムオキシ硫化物ガラスの間に挟まれている、[13]に記載の電池。
[20] 前記電解質が、前記ナトリウム金属または前記ナトリウムベースの合金の電極を0.2mA/cmで用いて、250時間またはそれより長く性能を示すことが可能である、[13]に記載の電池。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図10e
図10f
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25