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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/10 20060101AFI20230626BHJP
   B29C 43/58 20060101ALI20230626BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20230626BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20230626BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20230626BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20230626BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20230626BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
B29C70/10
B29C43/58
B29C43/34
B29C43/18
B29C70/42
B29C70/68
B29K101:12
B29K105:08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019156846
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021030695
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】592162922
【氏名又は名称】株式会社ユウホウ
(73)【特許権者】
【識別番号】302027675
【氏名又は名称】カジレーネ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】仲井 朝美
(72)【発明者】
【氏名】松下 将也
(72)【発明者】
【氏名】本近 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】井出 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】松本 信彦
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-199022(JP,A)
【文献】特開2013-010254(JP,A)
【文献】特開平02-080639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0017390(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29B 15/08
C08J 5/04
B29C 43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維(A1)と熱可塑性樹脂繊維(B1)とがランダムに分散している層と、
連続強化繊維(A2)と熱可塑性樹脂繊維(B2)とから構成される混繊糸を含む材料であって、
前記層上に、前記混繊糸を配置した状態で、該混繊糸が熱可塑性樹脂繊維(B3)によって保形されている材料に対し、
前記材料を、前記層側から、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)の融点以下の温度で加熱すること、および、
前記材料を、前記混繊糸が保形されている側から、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)を構成する熱可塑性樹脂(b3)の融点超の温度で加熱すること、によって、
前記熱可塑性樹脂繊維(B1)の99質量%超と、
前記熱可塑性樹脂繊維(B2)の99質量%超と、
前記熱可塑性樹脂繊維(B3)の前記混繊糸を配置した側に露出した部位の50質量%超90質量%以下と、
前記熱可塑性樹脂繊維(B3)の前記層側に露出した部位の1質量%超50質量%以下とを溶融させ、該溶融した状態で、成形を行うことを含む、立設部位を有する成形品の製造方法。
【請求項2】
前記層における密度が0.06~0.9mg/mm3である、請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
前記層の突き刺し強度が0.08~0.9Nである、請求項1または2に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂繊維(B3)を構成する熱可塑性樹脂(b3)の融点が、前記熱可塑性樹脂繊維(B2)を構成する熱可塑性樹脂(b2)の融点よりも高く、前記熱可塑性樹脂繊維(B1)を構成する熱可塑性樹脂(b1)の融点よりも高い、請求項1~3のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記層が不織布である、請求項1~のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
前記層における、熱可塑性樹脂繊維(B1)の強化繊維(A1)への含浸率が0.1%以上30%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
前記層が、強化繊維(A1)として、炭素繊維およびガラス繊維から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
前記層が、熱可塑性樹脂(b1)として、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項9】
前記層が、熱可塑性樹脂(b1)として、ジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項10】
前記混繊糸が、連続強化繊維(A2)として、炭素繊維およびガラス繊維から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項11】
前記混繊糸が、熱可塑性樹脂(b2)として、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項12】
前記混繊糸が、熱可塑性樹脂(b2)として、ジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形品の製造方法に関する。特に、リブ等の立設部位を有する成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化熱可塑性樹脂材料(fiber-reinforced thermoplastic,FRP)が注目されている。FRPは、軽量で高い強度を有することから、各種用途に広く用いられている。
一方、上記の様なFRPを用いて、リブ等の立設部位を有する成形品を製造することが検討されている。
例えば、特許文献1では、第一の部位と、前記第一の部位から立設している第二の部位を有する成形品の製造方法であって、長さ30mmを超える強化繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)を含む第一の材料であって、前記強化繊維(A)が、第一の材料中に、分散しており、かつ、前記熱可塑性樹脂(B)が前記強化繊維(A)に実質的に含浸していない第一の材料の表面に、長さ1~30mmの強化繊維(a)と熱可塑性樹脂(b)を含む第二の材料であって、前記強化繊維(a)が、第二の材料中に、分散しており、かつ、前記熱可塑性樹脂(b)が前記強化繊維(a)に実質的に含浸していない第二の材料を配置し、一回のプレス加工で第一の部位と第二の部位を同時に成形することを含み、前記熱可塑性樹脂(B)と前記熱可塑性樹脂(b)の密着強度が、2N/15mm以上である、成形品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/167136号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の方法は優れた方法であるが、FRPの需要拡大に伴い、リブ等の立設部位を有する成形品の新たな製造方法が求められている。特に、不織布等の強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とがランダムに分散している層を基材とし、その上に、混繊糸を保形した材料でリブ等の立設部位を成形する場合において、得られる成形品の立設部位の強度が劣ってしまう場合があることが分かった
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とがランダムに分散している層を基材とし、混繊糸を保形した材料を用いた成形品の製造方法であって、得られる成形品の立設部位の強度が高い成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、本発明者が検討を行った結果、成形時の材料の加熱温度を調整することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>強化繊維(A1)と熱可塑性樹脂繊維(B1)とがランダムに分散している層と、連続強化繊維(A2)と熱可塑性樹脂繊維(B2)とから構成される混繊糸を含む材料であって、前記層上に、前記混繊糸を配置した状態で、該混繊糸が熱可塑性樹脂繊維(B3)によって保形されている材料に対し、前記材料を、前記層側から、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)の融点以下の温度で加熱すること、および、前記材料を、前記混繊糸が保形されている側から、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)を構成する熱可塑性樹脂(b3)の融点超の温度で加熱すること、によって、前記熱可塑性樹脂繊維(B1)の99質量%超と、前記熱可塑性樹脂繊維(B2)の99質量%超と、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)の前記混繊糸を配置した側に露出した部位の50質量%超90質量%以下と、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)の前記層側に露出した部位の1質量%超50質量%以下とを溶融させ、該溶融した状態で、成形を行うことを含む、立設部位を有する成形品の製造方法。
<2>前記層における密度が0.06~0.9mg/mm3である、<1>に記載の成形品の製造方法。
<3>前記層の突き刺し強度が0.08~0.9Nである、<1>または<2>に記載の成形品の製造方法。
<4>前記熱可塑性樹脂繊維(B3)を構成する熱可塑性樹脂(b3)の融点が、前記熱可塑性樹脂繊維(B2)を構成する熱可塑性樹脂(b2)の融点よりも高く、前記前記熱可塑性樹脂繊維(B1)を構成する熱可塑性樹脂(b1)の融点よりも高い、<1>~<3>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<5>前記熱可塑性樹脂繊維(B2)を構成する熱可塑性樹脂(b2)の融点と、前記前記熱可塑性樹脂繊維(B1)を構成する熱可塑性樹脂(b1)の融点の差が2~70℃である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<6>前記層が不織布である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<7>前記層における、熱可塑性樹脂繊維(B1)の強化繊維(A1)への含浸率が0.1%以上30%以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<8>前記層が、強化繊維(A1)として、炭素繊維およびガラス繊維から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<9>前記層が、熱可塑性樹脂(b1)として、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<10>前記層が、熱可塑性樹脂(b1)として、ジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<11>前記混繊糸が、連続強化繊維(A2)として、炭素繊維およびガラス繊維から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<12>前記混繊糸が、熱可塑性樹脂(b2)として、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<13>前記混繊糸が、熱可塑性樹脂(b2)として、ジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂を含む、<1>~<12>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とがランダムに分散している層を基材とし、混繊糸を保形した材料を用いた成形品の製造方法であって、得られる成形品の立設部位の強度が高い成形品の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明で用いる材料を示す模式図である。
図2】本発明におけるプレス加工の工程の一例を示す模式図である。
図3図2の点線で示された丸印の部分の拡大図である。
図4】本発明におけるプレス加工の工程の他の一例を示す模式図である。
図5】混繊糸の断面図を顕微鏡観察した画像の一例である。
図6】実施例で用いる金型の上面模式図である。
図7】実施例で用いる金型の立設部位の断面形状を示す図である。
図8】実施例における成形品の強度の測定方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
【0009】
本発明の立設部位を有する成形品の製造方法は、強化繊維(A1)と熱可塑性樹脂繊維(B1)とがランダムに分散している層と、連続強化繊維(A2)と熱可塑性樹脂繊維(B2)とから構成される混繊糸を含む材料であって、前記層上に、前記混繊糸を配置した状態で、該混繊糸が熱可塑性樹脂繊維(B3)によって保形されている材料に対し、前記材料を、前記層側から、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)の融点以下の温度で加熱すること、および、前記材料を、前記混繊糸が保形されている側から、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)を構成する熱可塑性樹脂(b3)の融点超の温度で加熱すること、によって、前記熱可塑性樹脂繊維(B1)の99質量%超と、前記熱可塑性樹脂繊維(B2)の99質量%超と、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)の前記混繊糸を配置した側に露出した部位の50質量%超90質量%以下と、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)の前記層側に露出した部位の1質量%超50質量%以下とを溶融させ、該溶融した状態で、成形を行うことを含むことを特徴とする。
このように、強化繊維(A1)と熱可塑性樹脂繊維(B1)とがランダムに分散している層(以下、「不織布等の層」ということがある)側では、不織布等の層に含まれる熱可塑性樹脂繊維(B1)と混繊糸に含まれる熱可塑性樹脂繊維(B2)を溶融させることにより、不織布等の層と混繊糸の密着性を高めることができる。一方、混繊糸側において、混繊糸を保形している熱可塑性樹脂繊維(B3)を程よく溶融させることにより、混繊糸中の連続強化繊維(A2)の配列を維持しつつ、立設部位への材料の侵入をより容易にすることができる。結果として、混繊糸と不織布等の層の両方を立設部位に入り込ませることができ、立設部位の強度に優れた成形品が得られると推測される。
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0010】
[材料]
本発明で用いる材料は、強化繊維(A1)と熱可塑性樹脂繊維(B1)とがランダムに分散している層(不織布等の層)と、連続強化繊維(A2)と連続熱可塑性樹脂繊維(B2)とから構成される混繊糸を含む。さらに、混繊糸を不織布等の層に保形する熱可塑性樹脂繊維(B3)を含む。
図1は、本発明で用いる材料を示す模式図であって、1は不織布等の層を、2は混繊糸を、3は混繊糸を不織布等の層に保形する熱可塑性樹脂繊維(B3)を示している。(a)は、不織布等の層の面方向であって、混繊糸が設けられた側から見た図であり、(b)は、前記(a)の断面方向から見た図である。このような材料を用いることにより、混繊糸に含まれる連続強化繊維(A2)の配向がずれることなく成形することができ、立設部位の強度を高くすることができる。すなわち、混繊糸は、不織布等の層の上に(好ましくは表面に)、所望する成形品の形状に応じて、好ましくは立設部位に対応する位置に設けられるが、かかる混繊糸中の連続強化繊維(A2)の配向を維持したまた成形することにより、強度に優れた成形品(特に、立設部位)が得られる。
【0011】
<層>
本発明では、強化繊維(A1)と熱可塑性樹脂繊維(B1)とがランダムに分散している層(不織布等の層)を用いる。前記層は、不織布が例示される。また、不織布等の層は、平板状が好ましいが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、曲面であってもよく、また、多少の凹凸を有していてもよい。本発明で用いる不織布等の層は、通常、不織布等の層の90質量%以上が強化繊維(A1)および熱可塑性樹脂繊維(B1)で構成されることが好ましく、93質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。不織布等の層は、その全量(100質量%)が強化繊維(A1)および熱可塑性樹脂繊維(B1)で構成されていてもよい。
前記不織布等の層は、その一部は立設部位を有し、他は、成形品の本体(立設部位でない部分)を構成する。また、本発明の成形品において、不織布等の層の一部が立設部位にも入り込んで、成形されていると推測される。この結果、強度に優れた成形品が得られると推測される。不織布等の層が立設部位に入り込んでいる場合、成形品のより表層に近い側が相対的に不織布等の層に由来する部分が多くてもよいし、成形品の表層から遠い側が相対的に不織布等の層に由来する部分が多くてもよい。
不織布等の層は、1層のみを用いてもよいし、2層または3層以上を用いてもよい。上限は無いが、操作性を鑑みて10層以下が望ましい。
【0012】
不織布等の層は、密度が、0.06~0.9mg/mm3が好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の含浸性により優れる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、しなやかさでドレープ性能により優れる成形品が得られる傾向にある。
前記密度は、0.07mg/mm3以上であることが好ましく、0.08mg/mm3以上であることがより好ましく、0.09mg/mm3以上であることがさらに好ましい。また、前記密度は、0.8mg/mm3以下であることが好ましく、0.7mg/mm3以下であることがより好ましく、0.6mg/mm3以下であることがさらに好ましい。
密度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0013】
本発明では、前記不織布等の層において、前記層の突き刺し強度が0.08~0.9Nであることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、混繊糸の保形をより精度よく行うことができる。また、上記上限値以下とすることにより、保形するための針の損傷が抑えられ、連続生産性により優れる傾向にある。
前記突き刺し強度は、0.10N以上であることが好ましく、0.12N以上であることがより好ましく、0.15N以上であることがさらに好ましい。また、前記突き刺し強度は、0.87N以下であることが好ましく、0.85N以下であることがより好ましく、0.83N以下であることがさらに好ましい。
突き刺し強度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0014】
本発明では、前記不織布等の層の厚みは、0.1~4mmが好ましい。前記下限値以上とすることにより、混繊糸の保形をより精度よく行うことができる。また、上記上限値以下とすることにより、保形するための針の損傷が抑えられ、連続生産性に優れる傾向にある。
前記厚みは、0.1mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上であることがさらに好ましく、0.4mm以上であってもよい。また、前記厚みは、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0.6mm以下であることがさらに好ましい。
厚みは、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0015】
また、不織布等の層の厚みは、立設部位に相当する部分の金型の開口部の最も細い部分の幅の1/2以下であることが好ましく、1/2~1/4であることがより好ましい。1/2以下とすることにより、立設部位に不織布等の層がより入り込みやすくなり、得られる成形品の強度が向上する傾向にある。
【0016】
本発明では、前記不織布等の層において、熱可塑性樹脂繊維(B1)の強化繊維(A1)への含浸率が0.1%以上30%以下であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、毛羽立ちをより効果的に抑制することができる。また、上記上限値以下とすることにより、しなやかさでドレープ性能により優れる成形品が得られる傾向にある。
前記含浸率は、0.1%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、3%以上であることがさらに好ましい。また、前記含浸率は、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、16%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
前記不織布等の層における強化繊維(A1)は、本発明の技術分野において公知の強化繊維を広く用いることができる。強化繊維(A1)は、熱可塑性樹脂繊維(B1)よりも強度(例えば、弾性率)の高い繊維を意味する。例えば、強化繊維(A1)の弾性率は30GPa以上であることがあげられる。
【0018】
本発明で用いる強化繊維(A1)は、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)等の無機繊維、および、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、セルロース繊維(セルロースナノ繊維を含む)、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維などが挙げられる。なかでも、炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維の少なくとも1種を含むことが好ましく、炭素繊維およびガラス繊維から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、炭素繊維の少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
尚、上記強化繊維(A1)はリサイクル繊維であってもよく、特に、炭素繊維のリサイクル繊維であってもよい。
【0019】
本発明の好ましい実施形態で用いる強化繊維(A1)は、処理剤で処理されたものを用いることが好ましい。このような処理剤としては、集束剤や表面処理剤が例示され、特許第4894982号公報の段落番号0093および0094に記載のものが好ましく採用され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0020】
表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物からなるものが挙げられ、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等であり、シラン系カップリング剤が好ましい。
【0021】
また、集束剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シラン系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、ポリアミド樹脂の少なくとも1種であることが好ましく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シラン系カップリング剤、水不溶性ポリアミド樹脂および水溶性ポリアミド樹脂の少なくとも1種であることがより好ましく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、水不溶性ポリアミド樹脂および水溶性ポリアミド樹脂の少なくとも1種であることがさらに好ましく、水溶性ポリアミド樹脂であることが一層好ましい。
【0022】
前記処理剤の量は、強化繊維(A1)の0.001~1.5質量%であることが好ましく、0.1~1.2質量%であることがより好ましく、0.3~1.1質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
強化繊維(A1)の処理剤による処理方法は、公知の方法を採用できる。例えば、強化繊維(A1)を、処理剤を溶液に溶解させたものに浸漬し、強化繊維(A1)の表面に処理剤を付着させることが挙げられる。また、処理剤を強化繊維(A1)の表面にエアブローすることもできる。さらに、既に、表面処理剤や処理剤で処理されている強化繊維(A1)を用いてもよいし、市販品の表面処理剤や処理剤を洗い落してから、再度、所望の処理剤量となるように、表面処理しなおしてもよい。
【0024】
不織布等の層における強化繊維(A1)の数平均繊維長は、10mm以上100mm未満が好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の強度がより高くなる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形品の等方性により優れる傾向にある。
前記数平均繊維長は、12mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることがさらに好ましい。また、前記数平均繊維長は、95mm以下であることが好ましく、90mm以下であることがより好ましく、80mm以下であることがさらに好ましい。
【0025】
前記不織布等の層における、強化繊維(A1)の含有量は、不織布等の層の30~80質量%であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の強度により優れる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形品の含浸性により優れる傾向にある。
前記強化繊維(A1)の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有量は、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
前記不織布等の層における、強化繊維(A1)の含有量は、不織布等の層の17~75体積%であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の強度により優れる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形品の含浸性により優れる傾向にある。
前記強化繊維(A1)の含有量は、17体積%以上であることが好ましく、25体積%以上であることがより好ましく、30体積%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有量は、70体積%以下であることが好ましく、65体積%以下であることがより好ましく、60体積%以下であることがさらに好ましい。
上記強化繊維(A1)は1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0027】
前記不織布等の層における熱可塑性樹脂繊維(B1)は、本発明の技術分野において公知の熱可塑性樹脂繊維を広く用いることができる。
【0028】
本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維(B1)は熱可塑性樹脂組成物から形成することができる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(b1)の1種または2種以上のみからなってもよく、その他の成分を含んでいてもよい。
【0029】
熱可塑性樹脂(b1)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂(ポリアセタール樹脂)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン等のポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、全芳香族ポリイミド、半芳香族ポリイミド等の熱可塑性ポリイミド樹脂等を用いることができ、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、少なくともポリアミド樹脂を含むことがより好ましい。
【0030】
本発明で用いるポリアミド樹脂としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド66/6T、ポリキシリレンアジパミド、ポリキシリレンセバカミド、ポリキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT、ポリアミド6I/6T等が挙げられる。
【0031】
上述のようなポリアミド樹脂の中でも、成形性、耐熱性の観点から、ジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂(以下、「XD系ポリアミド」ということがある)であることが好ましい。
【0032】
また、ポリアミド樹脂が混合物である場合は、ポリアミド樹脂中のXD系ポリアミドの比率が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、さらには90質量%以上、特には95質量%以上であってもよい。
【0033】
XD系ポリアミドは、ジアミン由来の構成単位の、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が、炭素原子数が好ましくは4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
上記キシリレンジアミンは、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことが好ましく、30~100モル%のメタキシリレンジアミンと、70~0モル%のパラキシリレンジアミンからなることがより好ましく、50~100モル%のメタキシリレンジアミンと、50~0モル%のパラキシリレンジアミンからなることがさらに好ましい。
【0034】
XD系ポリアミドの原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1~25モル%、特に好ましくは5~20モル%の割合で用いる。
【0035】
ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸および/またはセバシン酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。
【0036】
上記炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0037】
ジカルボン酸成分として、炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸を用いることが挙げられる。これらを用いる場合、テレフタル酸、イソフタル酸の割合は、好ましくはジカルボン酸由来の構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1~30モル%、特に好ましくは5~20モル%の範囲である。
【0038】
本明細書において、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位とから構成されるとは、これらの成分を主成分とするが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよい。本発明では、ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
【0039】
本発明で用いるポリアミド樹脂の第一の実施形態は、ジアミン由来の構成単位の80モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の80モル%以上がアジピン酸に由来する態様である。
本発明で用いるポリアミド樹脂の第二の実施形態は、ジアミン由来の構成単位の10~90モル%がメタキシリレンジアミンに由来し、90~10モル%がパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の80モル%以上がセバシン酸に由来する態様である。
【0040】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)が6,000~30,000であることが好ましく、より好ましくは8,000~28,000であり、さらに好ましくは9,000~26,000であり、一層好ましくは10,000~24,000であり、より一層好ましくは11,000~22,000である。このような範囲であると、得られる成形品の耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好となる。
【0041】
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH2])
【0042】
ポリアミド樹脂の製造方法は、特開2014-173196号公報の段落0052~0053の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0043】
前記熱可塑性樹脂(b1)の融点は、130~320℃であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐熱性により優れる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形加工性により優れる傾向にある。
前記融点は、130℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。また、前記融点は、315℃以下であることが好ましく、310℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることがさらに好ましく、さらには280℃以下、270℃以下、250℃以下であってもよい。前記温度範囲にすることで、成形中に発生するガスがより軽減する傾向にある。
融点は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0044】
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維(B1)またはその原料となる熱可塑性樹脂組成物には、各種の含有成分を含めてもよい。例えば、エラストマー、強化繊維(A1)以外のフィラー、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤、滑剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130~0155の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0045】
本発明では、熱可塑性樹脂繊維(B1)の80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上)が、熱可塑性樹脂(b1)である形態が例示される。
【0046】
本発明における熱可塑性樹脂繊維(B1)は、熱可塑性樹脂繊維の処理剤を表面に有する熱可塑性樹脂繊維であることが好ましい。これらの詳細は、後述する熱可塑性樹脂繊維(B2)で述べる処理剤と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0047】
不織布等の層における熱可塑性樹脂繊維(B1)の数平均繊維長は、10~100mmが好ましい。前記下限値以上とすることにより、不織布等の層の強度により優れる傾向にある。前記数平均繊維長は、12mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることがさらに好ましい。また、前記数平均繊維長は、95mm以下であることが好ましく、90mm以下であることがより好ましく、80mm以下であることがさらに好ましい。
また、上記上限値以下とすることにより、不織布等の層の均質化により優れる傾向にある。特に、強化繊維(A1)と同程度の長さ(例えば、両者の数平均繊維長の差が3mm以下、さらには1mm以下)にすることで、層の均質性に優れるという効果がある。
【0048】
不織布等の層における熱可塑性樹脂繊維(B1)の数平均繊維径は、8~50μmが好ましい。前記下限値以上とすることにより、不織布等の層の強度により優れる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、不織布等の層のドレープ性能により優れる傾向にある。
前記数平均繊維径は、9μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることがさらに好ましい。また、前記数平均繊維径は、50μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましい。
【0049】
前記不織布等の層における、熱可塑性樹脂繊維(B1)の含有量は、不織布等の層の20~70質量%であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品における熱可塑性樹脂の含浸性により優れる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形品の強度により優れる傾向にある。
前記熱可塑性樹脂繊維(B1)の含有量は、22質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有量は、67質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
上記熱可塑性樹脂繊維(B1)は1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0050】
不織布の製造方法としては、特開2014-224333号公報の段落0023~0030の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0051】
<混繊糸>
本発明では、連続強化繊維(A2)と熱可塑性樹脂繊維(B2)とから構成される混繊糸を用いる。混繊糸の一部は、その一部は立設部位を有し、他は、成形品の本体(立設部位でない部分)を構成する。また、本発明の成形品においは、混繊糸の一部が立設部位にも入り込んで、成形されていると推測される。この結果、強度に優れた成形品が得られると推測される。混繊糸が立設部位に入り込んでいる場合、成形品のより表層に近い側が相対的に混繊糸に由来する部分が多くてもよいし、成形品の表層から遠い側が相対的に混繊糸に由来する部分が多くてもよい。
連続強化繊維(A2)は、熱可塑性樹脂繊維(B2)よりも強度(例えば、弾性率)の高い樹脂を意味する。
【0052】
混繊糸は、連続強化繊維(A2)と熱可塑性樹脂繊維(B2)を含み、これらの繊維が並列して、糸状、テープ状等の長尺状の材料となっている。本発明で用いる混繊糸は、通常、混繊糸の95質量%以上が連続強化繊維(A2)および熱可塑性樹脂繊維(B2)で構成されることが好ましく、97質量%以上がより好ましく、90質量%超 がさらに好ましい。混繊糸の全量(100質量%)が連続強化繊維(A2)および熱可塑性樹脂繊維(B2)で構成されていてもよい。
【0053】
混繊糸は、熱可塑性樹脂繊維(B2)の連続強化繊維(A2)への含浸率が0~20%であることが好ましい。上記下限値以上とすることにより、成形中に含浸がより効果的に進行する。また、上記上限値以下とすることにより、しなやかで保形性に優れる傾向にある。
前記含浸率は、1%以上であることが好ましく、2%以上であってもよい。また、前記含浸率は、18%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
混繊糸は、連続強化繊維(A2)の熱可塑性樹脂繊維(B2)に対する分散度が90%以上であることが好ましく、91%以上であることがより好ましく、92%以上であることがさらに好ましく、93%以上であることが一層好ましい。上限としては、100%であってもよく、99%以下であってもよい。分散度をこのように高くすることにより、ほつれやたるみ、切れを効果的に抑制することができる。
本発明において分散度とは、連続強化繊維(A2)と熱可塑性樹脂繊維(B2)とが均一に混ざり合っているかの指標であり、この値が100%に近いほど均一に混ざり合っていることを意味する。分散度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0055】
混繊糸に用いる連続強化繊維(A2)は、50mmを超える繊維をいい、例えば、10cm以上であり、1mを超えるものが実際的である。本発明における連続強化繊維(A2)の断面は、円形であってもよいし、扁平であってもよい。また、材料に成形する際に、カットして上記より長さが短くなる場合もあろう。
【0056】
本発明で用いる連続強化繊維(A2)は、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)等の無機繊維、および、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、セルロース繊維(セルロースナノ繊維を含む)、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維などが挙げられる。なかでも、炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維の少なくとも1種を含むことが好ましく、炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも1種を含むことがより好ましく、炭素繊維の少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
尚、上記連続強化繊維(A2)はリサイクル繊維であってもよく、特に、炭素繊維のリサイクル繊維であってもよい。
【0057】
本発明の好ましい実施形態で用いる連続強化繊維(A2)は、処理剤で処理されたものを用いることが好ましい。処理剤の詳細は上述した強化繊維(A1)で述べたものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0058】
混繊糸における、連続強化繊維(A2)の含有量は、混繊糸の30~80質量%であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の強度により優れる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形中に含浸がより効果的に進行する。
連続強化繊維(A2)の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有量は、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
混繊糸における、連続強化繊維(A2)の含有量は、混繊糸の17~75体積%であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の強度により優れる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形品の含浸性により優れる傾向にある。
前記連続強化繊維(A2)の含有量は、17体積%以上であることが好ましく、25体積%以上であることがより好ましく、30体積%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有量は、70体積%以下であることが好ましく、65体積%以下であることがより好ましく、60体積%以下であることがさらに好ましい。
上記連続強化繊維(A2)は1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0060】
本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維(B2)は、熱可塑性樹脂組成物から形成することができる。熱可塑性樹脂組成物の詳細は、上記熱可塑性樹脂繊維(B1)で述べたものと同様のものが採用できる。
熱可塑性樹脂繊維(B2)に用いる熱可塑性樹脂(b2)としては、熱可塑性樹脂(b1)で述べたものと同様のものが採用できる。特に、混繊糸が、熱可塑性樹脂(b2)として、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。また、混繊糸が、熱可塑性樹脂(b2)として、ジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂を含むことが好ましい。これらのより好ましい範囲は、熱可塑性樹脂(b1)で述べたものと同じである。
【0061】
前記熱可塑性樹脂(b2)の融点は、130~320℃が好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品が耐熱性に優れる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形加工性により優れる傾向にある。
前記融点は、130℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。また、前記融点は、320℃以下であることが好ましく、310℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることがさらに好ましく、280℃以下、270℃以下、250℃以下であってもよい。
【0062】
本発明では、熱可塑性樹脂繊維(B2)を構成する熱可塑性樹脂(b2)の融点と、前記前記熱可塑性樹脂繊維(B1)を構成する熱可塑性樹脂(b1)の融点の差が2~70℃であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、立設部位の強度により優れる傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形加工性により優れる傾向にある。
前記融点の差は、2℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることがさらに好ましい。また、前記融点の差は、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることがさらに好ましい。
【0063】
本発明で用いる、混繊糸中における熱可塑性樹脂繊維(B2)の体積(Vt)と連続強化繊維(A2)の体積(Vc)の比率は、Vt/Vcの比率で、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。上限としては、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。
【0064】
本発明における熱可塑性樹脂繊維(B1)は、熱可塑性樹脂繊維の処理剤を表面に有する熱可塑性樹脂繊維であることが好ましい。これらの詳細は、国際公開第2016/159340号の段落0064~0065の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
熱可塑性樹脂繊維(B1)が表面処理剤を有することにより、混繊糸の製造工程やその後の加工工程で、熱可塑性樹脂繊維(B1)の切れを抑制することができる。
熱可塑性樹脂繊維(B1)の表面処理剤の量は、例えば、熱可塑性樹脂繊維(B1)の0.1~2.0質量%である。下限値は、0.5質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましい。上限値としては、1.8質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。このような範囲とすることにより、熱可塑性樹脂繊維(B1)の分散が良好となる。
表面処理剤は、熱可塑性樹脂繊維(B2)や連続強化繊維(A2)を収束する機能を有するものであれば、その種類は特に定めるものではない。処理剤としては、エステル系化合物、アルキレングリコール系化合物、ポリオレフィン系化合物、フェニルエーテル系化合物、ポリエーテル系化合物、シリコーン系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、アミド系化合物、スルホネート系化合物、ホスフェート系化合物、カルボキシレート系化合物およびこれらを2種以上組み合わせたものが好ましく、エステル系化合物がより好ましい。
【0065】
熱可塑性樹脂繊維(B2)は、また、JIS L 1096に従って測定した水分率が5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、2%以下であることが一層好ましい。下限値は0%であってもよいが、0.001%以上が実際的である。
【0066】
熱可塑性樹脂繊維(B2)の表面処理剤による処理方法は、所期の目的を達成できる限り特に定めるものではない。例えば、熱可塑性樹脂繊維(B2)に、表面処理剤を溶液に溶解させたものを付加し、熱可塑性樹脂繊維(B2)の表面に処理剤を付着させることが挙げられる。あるいは処理剤を熱可塑性樹脂繊維(B2)の表面に対してエアブローすることによってもできる。
【0067】
混繊糸における熱可塑性樹脂繊維(B2)は、短い繊維をより合わせたもの等であってもよいが、通常は、連続熱可塑性樹脂繊維である。連続熱可塑性樹脂繊維とは、50mmを超える繊維をいい、1mを超えるものが実際的である。本発明における熱可塑性樹脂繊維(B2)の断面は、円形であってもよいし、扁平であってもよい。
【0068】
前記混繊糸における、熱可塑性樹脂繊維(B2)の含有量は、混繊糸の20~70質量%であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形中に含浸がより効果的に進行する。また、上記上限値以下とすることにより、得られる成形品の強度に優れる傾向にある。
前記熱可塑性樹脂繊維(B2)の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有量は、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
上記熱可塑性樹脂繊維(B2)は1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0069】
本発明において、混繊糸がテープ状である場合、その厚みは、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることがより一層好ましい。上限としては、5000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、250μm以下であることがより一層好ましい。
本発明において、混繊糸がテープ状である場合、その幅は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましく、5mm以上であることが一層好ましく、7mm以上であることがより一層好ましい。上限としては、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることがさらに好ましい。
【0070】
混繊糸の製造方法は、特に定めるものではないが、熱可塑性樹脂組成物を押出機にて溶融押出しし、ストランド状に押出し、ロールにて巻き取りながら延伸し、巻取体に巻き取った連続熱可塑性樹脂繊維束を得る。
上記で得た連続熱可塑性樹脂繊維(B2)の巻取体、および、あらかじめ準備された連続強化繊維(A2)の巻取体からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながらエアブローにより開繊する。開繊しながら、連続熱可塑性樹脂繊維(B2)および連続強化繊維(A2)を一束とする。このとき、複数のガイドを通しながらエアブローを与え、テープ状に混繊糸を調製しながら均一化を進めることが好ましい。このエアブローの際に連続強化繊維(A2)および連続熱可塑性樹脂繊維(B2)を上記の処理剤で表面処理してもよいし、あらかじめ表面処理した繊維束の繊維を巻取体から繰り出して用いてもよい。
【0071】
本発明では、混繊糸は、連続熱可塑性樹脂繊維束と連続強化繊維束を用いて製造することが好ましい。一本の混繊糸の製造に用いられる繊維の合計繊度(一本の混繊糸の製造に用いられる連続熱可塑性樹脂繊維(B2)の繊度の合計および連続強化繊維(A2)の繊度の合計を足し合わせた値)は、1000~100000dtexであることが好ましく、1500~50000dtexであることがより好ましく、2000~50000dtexであることがさらに好ましく、3000~30000dtexであることが特に好ましい。
【0072】
一本の混繊糸の製造に用いる繊維数の合計(連続熱可塑性樹脂繊維(B2)の繊維数の合計と連続強化繊維(A2)の繊維数の合計を合計した繊維数)は、繊維数の合計は、100~100000fであることが好ましく、1000~100000fであることがより好ましく、1500~70000fであることがさらに好ましく、2000~20000fであることが一層好ましい。このような範囲とすることにより、混繊糸の混繊性が向上し、物性と質感により優れた成形品が得られる。また、いずれかの繊維が偏る領域が少なく互いの繊維がより均一に分散し易い。
【0073】
本発明で用いる混繊糸は、撚りがかっていてもよい。ただし、本発明で用いる混繊糸は撚りがかかっていない(混繊糸に積極的に撚りをかけていないことをいう)ことが好ましい。
【0074】
本発明で用いる混繊糸は、部分的に含浸していてもよい。全体に均一に部分含浸した混繊糸でも良く、繊維の幅方向に含浸部分と未含浸部分が交互に存在する混繊糸でも良い。
【0075】
<保形>
本発明では、不織布等の層上に、混繊糸を配置した状態で、混繊糸が熱可塑性樹脂繊維(B3)によって保形されている。このように保形することによって、混繊糸中の連続強化繊維(A2)の配向を適切に保ち、強度に優れた成形品が得られる傾向にある。ここで、混繊糸は、金型の立設部位に対応するように設けられることが好ましい。また、立設部位となる部分以外に対応部位にも混繊糸が配置されていてもよいことは言うまでもない。
本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維(B3)は、通常、熱可塑性樹脂(b3)を主成分とする熱可塑性樹脂組成物からなる。熱可塑性樹脂繊維(B3)の原料である熱可塑性樹脂組成物は、通常、50質量%以上が熱可塑性樹脂(b3)であり、60質量%以上が熱可塑性樹脂(b3)であることが好ましく、70質量%以上を熱可塑性樹脂(b3)としてもよい。熱可塑性樹脂繊維(B3)は、強化繊維(A1)および連続強化繊維(A2)よりも強度(例えば、弾性率)が低いものである。
熱可塑性樹脂(b3)としては、公知のものを広く使用することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、熱可塑性ポリエーテルイミド、アラミド等の熱可塑性樹脂を用いることができる。本発明では、熱可塑性樹脂(b3)が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アラミド樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂であることがより好ましい。ポリアミド樹脂の具体例としては、上述の熱可塑性樹脂繊維(B1)で述べたポリアミド樹脂が好ましく採用できる。また、熱可塑性樹脂繊維(B3)の原料である熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂以外の成分を含んでいても良く、これらは、熱可塑性樹脂繊維(B1)で述べたものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0076】
熱可塑性樹脂(b3)の融点は、用いる樹脂の種類にもよるが、180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、前記融点は、320℃以下であることが好ましく、310℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることがさらに好ましい。
融点は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
本発明では、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)を構成する熱可塑性樹脂(b3)の融点が、前記熱可塑性樹脂繊維(B2)を構成する熱可塑性樹脂(b2)の融点よりも高いことが好ましく、2℃以上であることがより好ましく、5℃以上高いことがさらに好ましく、10℃以上高いことが一層好ましい。前記範囲とすることにより、保形する位置の精度がより優れる傾向にある。また、前記熱可塑性樹脂(b3)の融点と熱可塑性樹脂(b2)の融点の差は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることがさらに好ましい。前記範囲とすることにより、立設部位の形成性がより優れる傾向にある。
本発明では、また、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)を構成する熱可塑性樹脂(b3)の融点が、前記前記熱可塑性樹脂繊維(B1)を構成する熱可塑性樹脂(b1)の融点よりも高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましく、20℃以上高いことがさらに好ましい。前記範囲とすることにより、溶融樹脂の流動方向が制御され、樹脂の含浸性により優れる傾向にある。また、前記熱可塑性樹脂(b3)の融点と熱可塑性樹脂(b1)融点の差は、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。前記範囲とすることにより、表面外観により優れた成形品が得られる。
【0077】
本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維(B3)の長さは、混繊糸を保形できる限り特に定めるものでは無いが、加工の容易性から、6mm以上の長さを有する熱可塑性樹脂繊維が好ましく、20mm以上の長さを有する熱可塑性樹脂繊維であることがより好ましい。本発明では、1本の熱可塑性樹脂繊維(B3)で混繊糸を保形してもよいし、2本以上の熱可塑性樹脂繊維(B3)で混繊糸の別々の箇所を保形したものであってもよい。さらに、2本以上の束状の熱可塑性樹脂繊維(B3)を用いて混繊糸を保形してもよい。
熱可塑性樹脂繊維(B3)の繊度は、例えば、10~200dtex、好ましくは50~150dtex、さらに好ましくは100~150dtexとすることができる。熱可塑性樹脂繊維(B3)は利用の際、そのまま用いてもよく、2本撚り、3本撚りなど、複数本撚ったものを用いてもよい。
【0078】
[製造プロセス]
<加熱>
本発明の製造方法は、前記材料を、不織布等の層側から、熱可塑性樹脂繊維(B3)の融点以下の温度で加熱すること、および、前記材料を、混繊糸が保形されている側から、熱可塑性樹脂繊維(B3)を構成する熱可塑性樹脂(b3)の融点超の温度で加熱することを含む。このような構成とすることにより、不織布等の層に近い側では、熱可塑性樹脂繊維(B3)が溶融しにくく、不織布等と混繊糸の保形状態を保ちやすくなる。一方、混繊糸側では、熱可塑性樹脂繊維(B3)が程よく溶融し、立設部位へ、混繊糸および不織布等の層が入り込みやすくなる。
ここで、不織布等の層の側とは、本発明で用いる材料では、不織布等の層の上に混繊糸を設けるが、この混繊糸を設けていない側を意味する。例えば、図2におけるA側である。また、混繊糸が保形されている側とは、不織布等の層の上に混繊糸を設けるが、この混繊糸を設けている側を意味する。例えば、図2におけるB側である。
本発明では、上記加熱によって、熱可塑性樹脂繊維(B1)の99質量%超、熱可塑性樹脂繊維(B2)の99質量%超、前記熱可塑性樹脂繊維(B3)の前記混繊糸を配置した側に露出した部位の50質量%超90質量%以下(好ましくは、55~80質量%、より好ましくは55~75質量%)、および、熱可塑性樹脂繊維(B3)の不織布等の層側に露出した部位の1質量%超50質量%以下(好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~35質量%)を溶融させ、前記溶融した状態で、成形を行う。これらの溶融状態の割合の測定は、後述する実施例に記載の方法で測定される。特に、本発明では、混繊糸を配置した側に露出した部位の溶融割合と不織布等の層側に露出した部位の溶融割合の差が20~50質量%であることが好ましく、25~45質量%であることがより好ましい。このような溶融差のある状態で成形することにより、より精度および強度に優れた成形品が得られる傾向にある。
【0079】
不織布等の層側からの加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維(B3)の融点以下の温度であり、好ましくは融点-1℃以下であり、より好ましくは融点-4℃以下である。前記上限値以下とすることにより保形形状の精度により優れ、不織布層材料が混繊糸材料と共に立設部位に導入される傾向にある。前記不織布等の側からの加熱温度の下限は、好ましくは融点-10℃以上であり、より好ましくは融点-8℃以上である。前記下限値以上とすることにより立設部位に十分量の材料がより容易に導入される傾向にある。
不織布等の側からの加熱は、例えば、IRヒーターやブロックヒーター、熱風、マイクロ波によって行うことができる。
【0080】
混繊糸が保形されている側からの加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維(B3)の融点以上の温度であり、好ましくは融点+1℃以上であり、より好ましくは融点+3℃以上である。前記下限値以上とすることにより立設部位に溶融した混繊糸が、よりボイドが少ない状態で導入され、立設部位の強度により優れる傾向にある。前記混繊糸が保形されている側からの加熱温度の上限は、好ましくは融点+10℃以下であり、より好ましくは融点+7℃以下である。前記下限値以下とすることにより、立設部位により十分な量の材料が導入され、立設部位の強度により優れる傾向にある。
混繊糸側からの加熱は、例えば、IRヒーターやブロックヒーター、熱風、マイクロ波によって行うことができる。
【0081】
本発明の製造方法では、成形品は、金型成形やシリコーン型等によって成形できる。好ましくは、金型を用いたプレス加工によって成形できる。真空引きにより圧空成形することもできる。
図2は、本発明におけるプレス加工の工程の一例を示す模式図であって、1は不織布等の層を、2は混繊糸を、4は下金型を、5は上金型を、示している。図3は、図2の点線で示された丸印の部分の拡大図である。図2では、下金型4に、不織布等の層1の表面に混繊糸2を配置し、熱可塑性樹脂繊維(B3)(図示せず)で保形した材料を配置し、上金型5を用いてプレス加工している。本発明では、プレス加工により、両者を容易に強度高く密着させることができる。さらに、本発明では、強化繊維(A1)および連続強化繊維(A2)が、不織布等の層1と混繊糸2中に、それぞれ、分散しているため、プレス加工の段階で、熱可塑性樹脂が強化繊維(A1)および連続強化繊維(A2)中に含浸しやすく、結果として、予め含浸させていない材料を用いても、成形品を成形できる。もちろん、2段階以上の成形であってもよい。
本発明では、混繊糸2の総体積は、上金型5の凹部の容積未満であることが好ましい。特に、混繊糸2の総体積を、上金型5の凹部の容積未満と(例えば、2~20体積%程度少なく)すると、不織布等の層1の材料の一部が上金型5の凹部により入り込みやすくなり(図2図3の1’)、不織布等の層1と混繊糸2の密着性をより高めることができるとともに、立設部位の強度をより高くすることができる。本発明における成形品は、不織布等の層1および混繊糸2以外の他の部位を有している場合もあるが、かかる他の部位についても、同時にプレス加工で成形してもよいし、別途成形してもよい。
下金型と上金型に対し、不織布等の層1と混繊糸2の位置が逆転してもよい。すなわち、図4に示すように、不織布等の層1の表面に混繊糸2を配置し、熱可塑性樹脂繊維(B3)(図示せず)で保形した材料を、混繊糸2側が下金型4側となるように配置し、上金型5を重ねて成形してもよい。この場合でも熱可塑性樹脂が強化繊維(A1)および連続強化繊維(A2)中に含浸しやすく、強化繊維(A1)と強化繊維(A2)が共に、立設部位に導入される。強化繊維(A2)が不織布の層1を突き上げるように、立設部位が形成される。
【0082】
プレス成形の圧力は0.5~10MPaが好ましく、0.8~5MPaがより好ましい。特に、従来の含浸させた材料を使う方法では、通常、2MPaを超え5MPa以下程度の圧力で行われていたが、本発明の方法では、0.8~2.0MPa程度の圧力でも成形可能である。
また、プレス成形の時間は、1~20分が好ましく、3~15分がより好ましい。本発明では、特に、プレス成形の時間を、3~5分程度としても、熱可塑性樹脂の含浸を適切に進行させることができる点でも価値が高い。
【0083】
[立設部位]
本発明で得られる成形品は立設部位(図2の6)を有する。立設部位は、リブ等が該当する。立設部位は、強度が問題となりやすかったが、本発明では、上記材料を用い、適切に加熱温度を調整することにより、立設部位の強度を高めることができる。
立設部位6は、不織布等の層に由来する部位から立ち上がる方向に設けられている部位である。立ち上がる方向は、不織布等の層に由来する部位から略垂直であってもよいし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で角度を持っていてもよい。略垂直の例としては、立ち上がる方向が、例えば、89°~91°である例が挙げられる。また、プレス加工後、上型を開ける設計にすれば、さらに角度を持ったリブや複雑な形状のリブも形成可能である。上型は、2つに開ける設計の他、3つ以上に開ける設計とすることもきる。
【0084】
本発明では、立設部位の最も狭い部分に垂直な方向に、混繊糸の繊維長方向が最も多く存在するよう配置することが好ましい。このような構成とすることにより、立設部位に混繊糸がより上手く流れ込む傾向にある。
【0085】
本発明で用いる立設部位6は、その高さが、3~20mmであることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の強化がより効果的に達成される傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、立設部位6(特に、リブ)としての性能を十分に発揮でき、かつ、成形品としての軽量化も図ることができる。ここでの高さとは、不織布等の層からの垂直方向の高さを意味する。前記立設部位の高さは、3mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましい。また、前記立設部位の高さは、20mm以下であることが好ましく、17mm以下であることがより好ましく、15mm以下であることがさらに好ましい。
【0086】
本発明で用いる立設部位6は、その体積が、0.1~20cm3であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の強化がより効果的に達成される傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形品のさらなる軽量化を図ることができる。
立設部位の体積は、0.1cm3以上であることが好ましく、0.5cm3以上であることがより好ましく、1cm3以上であることがさらに好ましい。また、前記含有量は、20cm3以下であることが好ましく、15cm3以下であることがより好ましく、10cm3以下であることがさらに好ましく、8cm3以下であることが一層好ましい。
【0087】
さらに、成形品の全体積に対する立設部位の体積の割合は、1~20%であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の強化がより効果的に達成される傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、成形品のさらなる軽量化を図ることができる。
前記立設部位の体積の割合は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有量は、20%以下であることが好ましく、17%以下であることがより好ましく、14%以下であることがさらに好ましい。
【0088】
また、立設部位の開口部(成形品の主要部と接合している位置をいう、例えば、図3における符号Xの部位をいう。)の幅が0.5~10mmであることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、立設部位に混繊糸や不織布成分がより流入しやすくなる。また、上記上限値以下とすることにより、成形品のさらなる軽量化を図ることができる。
立設部位の開口部の幅は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることがさらに好ましく、さらには、4mm以上、5mm以上、6mm以上であってもよい。また、前記含有量は、10mm以下であることが好ましく、9mm以下であることがより好ましく、8mm以下であることがさらに好ましく、5mm以下、4mm以下であってもよい。
【0089】
<成形品の用途>
本発明の成形品は、立設部位を有する成形品に広く用いることができる。ここでの成形品は完成品の他、部品であってもよい。
本発明の成形品は、例えば、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話などの電気・電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭・事務電気製品などの部品やハウジング、さらには自動車、航空機、船舶などの部品に好適に利用することができる。
【実施例
【0090】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0091】
[不織布(層)]
<強化繊維(A1)の種類>
CF:炭素繊維、三菱ケミカル社製、Pyrofil-TR-50S-12000-AD、8000dtex、繊維数12000f、エポキシ樹脂で表面処理されている
GF:連続ガラス繊維、日東紡績社製、ECG 75 1/0 0.7Z、繊度687dtex、繊維数400f、集束剤で表面処理されている
<強化繊維(A1)の数平均繊維長(mm)>
任意の100本を取り出し、その数平均値とした。
【0092】
<熱可塑性樹脂(b1)の種類>
PP:ポリプロピレン樹脂、日本ポリプロピレン社製、ノバテックFY6
MXD6:メタキシリレンアジパミド樹脂(三菱ガス化学(株)製、グレードS6001)、数平均分子量16800
MP10:下記合成例により合成したキシリレンセバカミド樹脂、数平均分子量15400
【0093】
<<MP10の合成例>>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(伊藤製油(株)製TAグレード)10kg(49.4mol)および酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gを仕込み、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。
メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)とパラキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)のモル比が70/30である混合キシリレンジアミン6.647kg(メタキシリレンジアミン34.16mol、パラキシリレンジアミン14.64mol)を溶融したセバシン酸に撹拌下で滴下し、生成する縮合水を系外に排出しながら、内温を連続的に2.5時間かけて240℃まで昇温した。
滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて255℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化することにより、ポリアミド樹脂MP10を得た。
得られたMP10の融点は213℃、数平均分子量は15400であった。
【0094】
<熱可塑性樹脂(b1)の融点>
融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、試料量は約1mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30mL/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めた。
示差走査熱量計(DSC)は、島津製作所(SHIMADZU CORPORATION)製、DSC-60を用いた。
【0095】
<不織布の製造方法>
下記表に示す熱可塑性樹脂(b1)を直径30mmのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、60穴のダイからストランド状に押出し、ロールにて巻き取りながら延伸し、連続熱可塑性樹脂の繊維束を巻取体に800m巻き取った。溶融温度は、連続熱可塑性樹脂(b1)の融点+15℃とした。得られた熱可塑性樹脂繊維(B1)は、数平均繊維径20μmであった。
油剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王製、エマノーン 1112))を深型のバットに満たし、表面をゴム処理したローラーをローラーの下部分が油剤に接するように設置してローラーを回転させることで、常に油剤がローラー表面に付着している状態にした。上記連続熱可塑性樹脂繊維をこのローラーに接触させることで連続熱可塑性樹脂繊維の表面に油剤を塗布し、再度、巻取体に巻き取った。
特開2014-224333号公報の実施例1に記載の方法にて不織布を製造し、それを融点+5℃に加熱したヒートロールで加熱圧着し、目的の不織布を得た。尚、熱可塑性樹脂繊維(B1)は、数平均繊維長7.6mmにカットして用いた。
得られた不織布は、強化繊維(A1)の含有量が41体積%、熱可塑性樹脂繊維(B1)の含有量が59体積%であった。
【0096】
<密度(mg/m3)>
得られた不織布(層)を50mmx50mm切り取り、寸法をノギスおよびマイクロメーターで測定し、質量を精秤した。体積/質量から密度を算出した。5回繰り返し、その数平均値とした。
【0097】
<突き刺し強度(N)>
得られた不織布(層)を50mmx50mm切り取り試験片とした。東洋精機製、引張試験機、ストログラフEIIを用い、先端半径50μmのアルミニウム製針を用いて、圧縮モードにて得られた不織布(層)を突き刺し、かかる荷重を測定した。5回繰り返し、数平均値とした。
【0098】
<厚み(mm)>
不織布(層)の任意の5か所についてマイクロメーターで測定し、その数平均値とした。
【0099】
<不織布(層)における含浸率(%)>
測定対象となる不織布(層)を切り取り、不織布(層)の層に垂直な断面で切断して、その断面を研磨し、断面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影した。作製した試料の断面をデジタルマイクロスコープで観察した。得られた断面写真に対し、連続強化繊維(A1)の熱可塑性樹脂(b1)が含浸した領域を画像解析ソフトImageJを用いて選択し、その面積を測定した。含浸率は、連続強化繊維(A1)の熱可塑性樹脂(b1)が含浸した領域/断面積(単位%)として示した。
超深度カラー3D形状測定顕微鏡は、VK-9500(コントローラー部)/VK-9510(測定部)(いずれも、キーエンス製)を使用した。
【0100】
[混繊糸]
<連続強化繊維(A2)の種類>
CF:連続炭素繊維、三菱ケミカル社製、Pyrofil-TR-50S-12000-AD、8000dtex、繊維数12000f、エポキシ樹脂で表面処理されている
GF:連続ガラス繊維、日東紡績社製、ECG 75 1/0 0.7Z、繊度687dtex、繊維数400f、集束剤で表面処理されている
【0101】
<熱可塑性樹脂(b2)の種類>
PP:ポリプロピレン樹脂、日本ポリプロピレン社製、ノバテックFY6
MXD6:メタキシリレンアジパミド樹脂(三菱ガス化学(株)製、グレードS6001)、数平均分子量16800
MP10:上記合成例により合成したキシリレンセバカミド樹脂、数平均分子量15400
【0102】
<熱可塑性樹脂(b2)の融点(℃)>
上記熱可塑性樹脂(b1)の融点(℃)と同様の方法により、測定した。
【0103】
<連続熱可塑性樹脂繊維(B2)の製造>
下記表に示す熱可塑性樹脂(b2)を直径30mmのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、60穴のダイからストランド状に押出し、ロールにて巻き取りながら延伸し、連続熱可塑性樹脂の繊維束を巻取体に800m巻き取った。溶融温度は、連続熱可塑性樹脂の融点+15℃とした。
油剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王製、エマノーン 1112))を深型のバットに満たし、表面をゴム処理したローラーをローラーの下部分が油剤に接するように設置してローラーを回転させることで、常に油剤がローラー表面に付着している状態にした。上記連続熱可塑性樹脂繊維をこのローラーに接触させることで連続熱可塑性樹脂繊維の表面に油剤を塗布し、再度、巻取体に巻き取った。得られた熱可塑性樹脂繊維(B2)は、数平均繊維径20μmであった。
【0104】
<混繊糸の製造方法>
混繊糸は、以下の方法に従って製造した。
1m以上の長さを有する連続熱可塑性樹脂繊維(B2)の巻取体、および、1m以上の長さを有する連続強化繊維(A2)の巻取体からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながらエアブローにより開繊を行った。開繊しながら、連続熱可塑性樹脂繊維(B2)および連続強化繊維(A2)を一束とし、さらに、複数のガイドを通しながらエアブローを与え、均一化を進めた。
得られた混繊糸は、炭素繊維を用いたものが繊度約13000dtex、繊維数約13500f、ガラス繊維を用いたものが繊度約15000dtex、繊維数約10000f、連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維の体積比率が1:1、また、連続強化繊維の割合は、炭素繊維を用いた混繊糸が61質量%(44体積%)、ガラス繊維を用いた混繊糸が69質量%(50体積%)であった。得られた混繊糸の幅は10mm、厚さは0.2mmであった。
【0105】
<混繊糸における含浸率(%)>
測定対象となる混繊糸を切り取り、エポキシ樹脂で包埋し、混繊糸の断面部にあたる面を研磨し、断面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影した。作製した試料の断面をデジタルマイクロスコープで観察した。得られた断面写真に対し、連続強化繊維(A2)の熱可塑性樹脂(b2)が含浸した領域を画像解析ソフトImageJを用いて選択し、その面積を測定した。含浸率は、連続強化繊維(A2)の熱可塑性樹脂(b2)が含浸した領域/断面積(単位%)として示した。
超深度カラー3D形状測定顕微鏡は、VK-9500(コントローラー部)/VK-9510(測定部)(いずれも、キーエンス製)を使用した。
【0106】
<混繊糸における分散度(%)>
混繊糸をエポキシ樹脂で包埋し、混繊糸の長手方向に垂直な断面を研磨し、断面図を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影した。図5に示すように、撮影画像において、放射状に補助線を等間隔に6本ひき、各補助線上にある連続強化繊維(A2)領域の長さをa1, a2, a3・・・ai(i=n)と測量した。また、各補助線上にある連続熱可塑性樹脂繊維(B2)の領域の長さをb1, b2, b3・・・bi(i=m)と測量した。その結果に基づき、次式により分散度を算出した。
【数1】
超深度カラー3D形状測定顕微鏡は、VK-9500(コントローラー部)/VK-9510(測定部)(キーエンス製)を使用した。
【0107】
[保形糸(熱可塑性樹脂繊維(B3))]
<熱可塑性樹脂繊維(B3)に用いた熱可塑性樹脂(b3)の種類>
PA66:ポリアミド66、東レ社製、CM3001N
MXD6:メタキシリレンアジパミド樹脂(三菱ガス化学(株)製、グレードS6001)、数平均分子量16800
PE:ポリエチレン樹脂、グンゼ社製、グンゼGPT-30
アラミド:アラミド樹脂、FRP-ZONE.COMより購入。
【0108】
<熱可塑性樹脂(b3)の融点(℃)>
上記熱可塑性樹脂(b1)の融点(℃)と同様の方法により、測定した。
【0109】
<保形糸(熱可塑性樹脂繊維(B3))の製造方法>
下記表に示す熱可塑性樹脂(b3)を用い、以下の手法に従って繊維状にした。
熱可塑性樹脂(b3)を30mmφのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、60穴のダイからストランド状に押出し、ロールにて巻き取りながら延伸し、巻取体に巻き取った熱可塑性樹脂繊維束を得た。溶融温度は、融点+20℃とした。得られた熱可塑性樹脂繊維(B3)は、数平均繊維径20μmであった。
【0110】
[実施例1~10、比較例1~5]
<成形品の製造>
上記で得られた不織布(層)の表面に、混繊糸を、図1に示すように、繊維長方向が金型の立設部位とほぼ平行になるように配置した。次いで、保形糸を用いて、混繊糸を不織布に固定(ステッチング)し、材料を得た。
得られた材料について、混繊糸側と不織布側からそれぞれ表に示す温度で、10分間加熱し、80℃に加熱した金型に移送し、3MPaの圧力で3分間プレスした。
上金型は、図6に模式図を示すものを用いた。具体的には、上金型(図6の7)は、1辺が150mmの正方形であって、十文字型に立設部位を形成するための凹部8を設けたものを用いた。図7は、凹部8の拡大図であって、立設部位の断面図を示している。立設部位の体積は7.7cm3であり、立設部位の開口部(立設部位の根元となる部分)は、一辺が4mm×150mmの長方形であり、面積は6cm2である。成形品全体の体積は、53cm2であった。
また、下金型は、プレス板を用いた。
【0111】
<溶融した割合の確認>
不織布(層)、混繊糸および保形糸の溶融した割合は、以下の方法に従って測定した。
<<不織布(層)、混繊糸の溶融した割合>>
それぞれの部位を、エポキシ樹脂で包埋し、任意の方向に裁断し、断面を研磨し、保形糸を含まない領域の断面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影した。断面図から残存樹脂繊維と、溶融樹脂からなる領域を選択し、溶融した割合を算出した。
<<保形糸の溶融した割合>>
成形前と成形後の試験片表面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影した。画像から、成形前の表面に露出した保形糸の量と、成形後の表面に露出した未溶融の保形糸の量を選択し、溶融した割合を算出した。不織布(層)面の保形糸と、混繊糸面の保形糸それぞれに対して実施した。
【0112】
<成形品の立設部位の高さ>
成形品の立設部位の高さは、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を用いて測定した。成形品の開口部の平均面に対して、垂直な方向の高さが最も高い部分を立設部位の高さとした。
【0113】
<成形品強度>
図8(a)に示すように、精密万能試験機10(インストロン社製、品番:5967)を用いて、長さ150mmの支持ジグ(金床、Anvilともいう)11を支点間距離が64mmになるように設定し、図8(b)に示すように、接面長さ50mmの圧縮ジグ12が成形品13の立設部位6の交点に当たり、かつ、立設部位6が圧縮ジグ12の長さ方向に対して45度となるように成形品13を配置し、1mm/minの速度で、曲げ強度を測定した。混繊糸や保形糸を用いず、不織布(層)単体で同様の成形をした場合の曲げ強度と比較して以下の通り評価した。
A:2倍以上
B:1.5倍以上2倍未満
C:0倍超1.5倍未満
【0114】
<ボイド>
成形品を裁断し、断面を研磨し、断面図を超深度カラー3D形状測定顕微鏡で撮影した。ボイドを選択し、成形品中のボイド率を算出した。
【0115】
<立設部位の強度>
立設部位をジグ(1対の3mmx3mmのゴム+ネジ締め)でつまみ、東洋精機製引張試験機、ストログラフEIIを用い、1mm/minの速度で90度方向に折り曲げた。
A:とても良い(弾性を示した後にジグがはずれ、立設部位が破損せず)
B:普通に良い(一定の弾性を示した後に破損)
C:あまり良くないが実用レベル(測定開始直後に破損)
D:上記A~Dのいずれにも該当せず
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
上記結果から明らかなとおり、本発明の製造方法で得られた成形品は、金型の形状により対応した立設部位を有するものであった(実施例1~10)。また、得られた成形品の強度にも優れ、ボイドが少なかった。
これに対し、比較例の製造方法で得られた成形品は、成形品強度が劣っていたり、混繊糸を層(不織布)に保形できなかった(比較例1~5)。
【符号の説明】
【0120】
1 不織布等の層
2 混繊糸
3 熱可塑性樹脂繊維(B3)(保形糸)
4 下金型
5 上金型
6 立設部位
7 金型
8 凹部
10 精密万能試験機
11 支持ジグ
12 圧縮ジグ
13 成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8