(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】競走馬の潜在的能力予測プログラム、競走馬の潜在的能力予測方法、及び、競走馬の潜在的能力予測システム、並びに、種牡馬候補提示プログラム、種牡馬候補提示方法、及び、種牡馬候補提示システム、更にはこれらに用いられる予測生涯獲得賞金データベース作成プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/34 20120101AFI20230626BHJP
【FI】
G06Q50/34
(21)【出願番号】P 2019048702
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】519094433
【氏名又は名称】株式会社インター通信社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】宮古 裕治
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-004362(JP,A)
【文献】特開2003-050798(JP,A)
【文献】小川 恭子,機械学習およびニューラルネットワークによる競馬予測,電気学会研究会資料,日本,一般社団法人電気学会,2018年03月22日,p.57~60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
血統登録番号データ及び馬名データを含む競走馬データを入力する手順、
入力された前記競走馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データ
、適性評価データ及び潜在能力評価データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を実行させるための競走馬の潜在的競争能力予測プログラム
であって、
前記予測情報データは、複数の過去競走馬データ、並びに、前記過去競走馬データに対応する繁殖牝馬データ及び種牡馬データを含む血統データ、レース成績データ、並びに、前記レース成績データに対応する本賞金データ及び付加賞金データの合計である生涯獲得賞金実績データを含ませて機械学習を行うことで作成されたものである競走馬の潜在的競争能力予測プログラム。
【請求項2】
血統登録番号データ及び馬名データを含む競走馬データを入力する手順、入力された前記競走馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データ
、適性評価データ及び潜在能力評価データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を実行させるための競走馬の潜在的競争能力予測プログラムが記録されたコンピュータと、
複数の過去競走馬データ、並びに、前記過去競走馬データに対応する
繁殖牝馬データ及び種牡馬データを含む血統データ、レース成績データ、並びに、前記レース成績データに対応する本賞金データ及び付加賞金データの合計である生涯獲得賞金実績データを含ませて機械学習を行い、競走馬データ各々に対して
予測生涯獲得賞金データ、適性評価データ及び潜在能力評価データを含む予測情報データを作成して記録する手順、を実行させるための予測生涯獲得賞金データベース作成プログラムが記録されたコンピュータと、を備える競走馬の潜在的競争能力予測システム。
【請求項3】
コンピュータに、
複数の過去競走馬データ、並びに、前記過去競走馬データに対応する
繁殖牝馬データ及び種牡馬データを含む血統データ、レース成績データ、並びに、前記レース成績データに対応する本賞金データ及び付加賞金データの合計である生涯獲得賞金実績データを含ませて機械学習を行い、
血統登録番号データ及び馬名データを含む競走馬データ各々に対して予測生涯獲得賞金データ
、適性評価データ及び潜在能力評価データを含む予測情報データを作成して記録する手順、を実行させるための予測生涯獲得賞金データベース作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、競走馬の潜在的能力予測プログラム、競走馬の潜在的能力予測方法、及び、競走馬の潜在的能力予測システム、並びに、種牡馬候補提示プログラム、種牡馬候補提示方法、及び、種牡馬候補提示システム、更にはこれらに用いられる予測生涯獲得賞金データベース作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
競馬は、競走馬に所定の距離を走らせて観客にその着順を予測させ、その予測が的中した場合、当該観客に所定の配当金を支払う賭けをいい、競走馬の生産に関する産業も含め、日本国内だけで約3兆円の規模となっている。
【0003】
競走馬の潜在的能力は、その親に大きく依存する、すなわち遺伝的な要素が大きいといわれている。したがって、遺伝子検査を行うことでその潜在的能力を測定しようとする試みがなされている。
【0004】
このような遺伝子検査を請け負う企業として、2010年に世界で初めて設立されたアイルランドのエクイノム社(現プラスビタール社)がある。この会社は、本件特許出願日現在、競走馬の競争距離適性を遺伝子検査するサービスを提供し、調教師や馬主が当該競走馬を出走させるレースを決めるサポートを行っている。
【0005】
上記の記載からもわかるとおり、調教師にとって、競走馬が競争能力を最大限に発揮できるレースを選定することは重要な因子である。
【0006】
上記の観点に関し、遺伝子検査に関する公知の技術として、例えば下記特許文献1には、競走馬に対して遺伝子検査を行うことで、短距離タイプ、中距離タイプ、長距離タイプのいずれであるかを判断する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、単に競走馬の適性タイプを判定するだけであって、その競走馬が潜在的に有する能力についての評価には未だ課題が残る。
【0009】
ところで、現在のところ、競走馬の生産においては、伝統的に、専門的知識を持つ生産者又は所有者が、繁殖牝馬の競争成績、血統、体格、性格などを考慮し、種牡馬の産駒成績、血統、性格、交配金額、又は血統が近い馬の競争成績などを参考に、繁殖牝馬と交配する種牡馬を定めている。
【0010】
すなわち、数千万円から億単位の金額で取引される競走馬について、潜在的競争能力を見極める方法、又は潜在的競争能力の高い競走馬を生産するために繁殖牝馬と交配する種牡馬を選別する方法は、生産者等の経験や知識によって支えられているものの、その定量的、客観的な判断には課題が残る。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、競走馬の潜在的競争能力を定量化して最大化するための情報を予測可能な、競走馬の潜在的能力予測プログラム、競走馬の潜在的能力予測方法、及び、競走馬の潜在的能力予測システム、更にはこれらに用いられる予測生涯獲得賞金データベース作成プログラム、を提供することを目的の一つとする。
【0012】
また、本発明は、上記目的に関連し、更に、繁殖牝馬と種牡馬の関係にも着目し、上記を応用して、繁殖牝馬に対し最適な種牡馬を提示するための、種牡馬候補提示プログラム、種牡馬候補提示方法、及び、種牡馬候補提示システム、更にはこれらに用いられる予測生涯獲得賞金データベース作成プログラム、を提供することを他の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る競走馬の潜在的競争能力予測プログラムは、コンピュータに、競走馬データを入力する手順、入力された競走馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を実行させるためのものである。
【0014】
また、本発明の他の一観点に係る競走馬の潜在的競争能力予測方法は、競走馬データを入力する手順、入力された競走馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を有するものである。
【0015】
また、本発明の他の一観点に係る競走馬の潜在的競争能力予測システムは、競走馬データを入力する手順、入力された競走馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を実行させるための競走馬の潜在的競争能力予測プログラムが記録されたコンピュータと、複数の過去競走馬データ、並びに、過去競走馬データに対応する繁殖牝馬データ、種牡馬データ、及び、生涯獲得賞金実績データを含ませて機械学習を行い、競走馬データ各々に対して予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを作成して記録する手順、を実行させるための予測生涯獲得賞金データベース作成プログラムが記録されたコンピュータと、を備えるものである。
【0016】
また、本発明の他の一観点に係る種牡馬候補提示プログラムは、コンピュータに、繁殖牝馬データを入力する手順、入力された繁殖牝馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を実行させるためのものである。
【0017】
また、本発明の他の一観点に係る種牡馬候補提示方法は、繁殖牝馬データを入力する手順、入力された前記繁殖牝馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測報データを取得して表示する手順、を有するものである。
【0018】
また、本発明の他の一観点に係る種牡馬候補提示システムは 繁殖牝馬データを入力する手順、入力された前記繁殖牝馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を実行させるための種牡馬候補提示プログラムが記録されたコンピュータと、複数の過去競走馬データ、並びに、過去競走馬データに対応する繁殖牝馬データ、種牡馬データ、及び、生涯獲得賞金実績データを含ませて機械学習を行い、競走馬データ各々に対して予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを作成して記録する手順、を実行させるための予測生涯獲得賞金データベース作成プログラムが記録されたコンピュータと、を備えるものである。
【0019】
また、本発明の他の一観点に係る予測生涯獲得賞金データベース作成プログラムは、コンピュータに、複数の過去競走馬データ、並びに、過去競走馬データに対応する繁殖牝馬データ、種牡馬データ、及び、生涯獲得賞金実績データを含ませて機械学習を行い、競走馬データ各々に対して予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを作成して記録する手順、を実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0020】
以上、本発明によって、競走馬の潜在的競争能力を定量化して最大化するための情報を予測可能な、競走馬の潜在的能力予測プログラム、競走馬の潜在的能力予測方法、及び、競走馬の潜在的能力予測システムを提供することができる。
【0021】
また、本発明によって、更に、繁殖牝馬に対し最適な種牡馬を提示するための、種牡馬候補提示プログラム、種牡馬候補提示方法、及び、種牡馬候補提示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係るシステムに関する概略図である。
【
図2】実施形態1に係るシステムにおいて、顧客用コンピュータCSの入力画面の例を示す図である。
【
図3】
図2において競走馬の検索を選択した場合の画面のイメージ図である。
【
図4】実施形態1に係るシステムにおいて、出力の結果を示す画面の例を示す図である。
【
図5】実施形態2に係るシステムにおいて、顧客用コンピュータCSの入力画面の例を示す図である。
【
図6】
図5において繁殖牝馬の検索を選択した場合の画面のイメージ図である。
【
図7】実施形態2に係るシステムにおいて、出力の結果を示す画面の例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下の実施形態において具体的に示す例示にのみ限定的に解釈されるものではない。
【0024】
(実施形態1)
(競走馬の潜在的競争能力予測システム)
本実施形態に係る競走馬の潜在的競争能力予測システム(以下本実施形態において「本システム」という。)Sは、(1)競走馬データを入力する手順、入力された前記競走馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を実行させるための競走馬の潜在的競争能力予測プログラムが記録されたコンピュータC1と、(2)複数の過去競走馬データ、並びに、過去競走馬データに対応する繁殖牝馬データ、種牡馬データ、及び、生涯獲得賞金実績データを含ませて機械学習を行い、競走馬データ各々に対して予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを作成して記録する手順、を実行させるための予測生涯獲得賞金データベース作成プログラムが記録されたコンピュータC2と、を備える。
図1は、本システムSを実現するシステムに関する概略図である。
【0025】
説明の観点及びシステム提供をより効率的に行う観点から、上記のコンピュータC1とコンピュータC2は、同じコンピュータであってもよいが、コンピュータC1とコンピュータC2は、本図で示すように、インターネット等の電気通信回線Wを通じて接続されていることが好ましい。
【0026】
また、本システムSでは、このシステムを利用する顧客として、顧客用コンピュータCSが存在し、上記と同様、電気通信回線Wを通じて接続可能な状態となっている。
【0027】
(競走馬の潜在的競争能力予測プログラムが記録されたコンピュータ)
ここで、本システムSの各構成要素について具体的に説明していく。まず、上記の通り、本システムSは、競走馬データを入力する手順、入力された前記競走馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を実行させるための競走馬の潜在的競争能力予測プログラム(以下本実施形態において「本予測プログラム」という。)が記録されたコンピュータC1を有する。
【0028】
ここで、「コンピュータ」とは、電力の供給によって駆動し、所定の処理を実現することができる機械装置であって、例えば、所望の計算処理を行うことができる中央演算装置(CPU)、データを一時的に記録することができるRAM等のメモリや所定の期間安定的にデータを記録することができるハードディスクやフラッシュメモリ等の記録媒体、キーボードやマウス等所定の入力を行うことができる入力装置、これらを接続するバス、上記所望の処理を行った結果を表示するための液晶モニタ等のディスプレイ装置等を含んで構成されるものである。このコンピュータは、いわゆる普通のデスクトップパソコン、ノートパソコン等を含ませることができるが、場合によっては、入力装置及び表示装置等を一体化させて小型化したいわゆるスマートフォンやタブレット端末等も含ませることができる。なおこのコンピュータという場合において、同様である。よって、各箇所における用語の説明としては、特別な場合を除き省略する。
【0029】
上記の通り、本コンピュータC1では、ハードディスク等の記録媒体に、本予測プログラムを記録している。本予測プログラムは、使用者の所望の操作によって、RAM等の記録媒体に一時的に読み込まれるとともに、実行され、上記の手順を実現することができる。すなわち、本予測プログラムは実行されることで所定の方法を実現することができる。具体的には、上記所定の手順を備える競走馬の潜在的競争能力予測方法(以下「本予測方法」という。)を提供することができる。
【0030】
なお、「プログラム」の形態については限定されず、例えばウェブブラウザで表示ができるようHTML等の言語によって表現されたもの(ウェブサービス型)であってもよく、また、所定の言語で記述されダウンロード及びインストールすることによって初めて実行できるインストール型であってもよいが、本コンピュータC1にプログラムを保持し、顧客用コンピュータCSにおけるブラウザで読み込みながら所定の処理を行いつつ表示するウェブサービスや、アプリケーションを顧客用コンピュータCSにインストールさせる一方インターネット等のネットワークを介して必要なデータを本コンピュータC1、又はコンピュータC2と送受信するウェブサービス等の、いわゆるウェブサービス型であることは広く普及させる点において好ましい。なお、顧客用コンピュータCSにアプリケーションをインストールして直接コンピュータCSとデータの送受信を行わせようとする場合は、本コンピュータC1が顧客用コンピュータCSとして機能する場合に該当する。
【0031】
(本予測方法)
まず、上記のとおり、本予測プログラムによって実現される本予測方法は、(1-1)競走馬データを入力する手順、(1-2)入力された競走馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を有する。
【0032】
本予測方法における(1-1)競走馬データを入力する手順は、限定されるわけではないが、例えば顧客用コンピュータCSから、所望の競走馬データが送信され、入力されることにより行われる手順となる。顧客用コンピュータCSにより入力される画面の例について
図2に示しておく。
【0033】
ここで「競走馬データ」とは、競走馬に関する情報を含むデータであって、より具体的には、これから競走馬としてレースに出場した場合にどの程度活躍することができるのかを予測したい対象となる競走馬を特定するための情報を含むデータをいう。この競走馬データが含む情報に関しては、上記の限りにおいて限定されるわけではないが、例えば血統登録番号(血統登録番号データ)、馬名(馬名データ)、生年月日(生年月日データ)及びこれらの情報の組み合わせを含ませることができるがこれに限定されない。
【0034】
またこの競走馬データを入力する手順においては、競走馬データを検索するための手順を含ませてもよい。具体的には、複数の種牡馬データ、複数の繁殖牝馬データ、複数の生年月日データ、複数の馬名データ等をあらかじめ記録しておき、これをコンピュータの表示装置、例えば顧客用コンピュータCSの表示装置に表示し、これを操作する顧客からの操作に応じて選択することで、候補となりうる競走馬データを表示装置に表示させる等の検索のための手順を実行させることも好ましい。これにより、必ずしも競走馬の血統登録番号等がわからなくても、容易に対象となる競走馬を選択することができるといった利点がある。この場合の例を
図3に示しておく。本図は
図2において競走馬の検索を選択した場合の画面のイメージ図である。
【0035】
また、本予測方法における(1-2)入力された競走馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順は、具体的には、上記手順(1-1)の入力を受けた後、コンピュータC1がコンピュータC2に接続し、あらかじめ記録された予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得し、所望の対象に当該取得した予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを表示させる手順である。この所望の対象は、自身のコンピュータC1であってもよいが、当初に競走馬データの入力を行った顧客用コンピュータCSの表示装置であってもよい。
【0036】
ここで「予測生涯獲得賞金データ」とは、各競走馬データに対応して記録されるデータであって、当該競走馬が生涯において獲得できると予測される賞金に関する情報を含む数値のデータをいう。
【0037】
この「予測生涯獲得賞金データ」の詳細については、後述の記載からも明らかとなるが、単に包括的な金額のみの情報を含むデータであってもよいが、複数のレース情報及びこれに付随する情報を合計した情報を含むデータであることは好ましい。このようにすることで、より詳細な内容について検討することができるようになる。
【0038】
また、「予測情報データ」は、上記の予測生涯獲得賞金データを含むが、その他様々な情報を含むデータを含んでもよい。限定されるわけではないが、具体的には、「適性評価データ」や「潜在能力評価データ」を含んでもよい。
【0039】
ここで「適性評価データ」とは、各競走馬の適性に関する評価情報を含むデータであり、具体的には、芝適性、ダート適性、距離適性、競馬場適性、馬場適性、騎手適性等を例示することができる。競走馬に関する網羅的なデータを含ませることにより、使用者(顧客を含む)により正確な情報判断を可能とする。
【0040】
また、ここで「潜在能力評価データ」とは、競走馬の潜在能力に関する評価情報を含むデータであり、具体的には、レース初出走時期、レース引退時期、スタミナ評価、スピード評価、体質評価、成長度評価等を例示することができる。競走馬に関する網羅的なデータを含ませることにより、使用者(顧客を含む)により正確な情報判断を可能とする。
【0041】
ところで、本方法において、予測情報データは、コンピュータC1による要求を受けたコンピュータC2が要求を受けたときに作成し、コンピュータC1にその結果を出力するようにしてもよいが、予めコンピュータC2において作成してデータベースとして記録しておくことで、簡便かつ高速に本システムを実現することができて好ましい。すなわち、予測情報データを取得して表示する手順は、(2-1)複数の競走馬データと複数の競走馬データ各々に対応した予測情報データを記録しておき、入力された競走馬データに対応した予測情報データを取得して表示する手順であることが好ましい。
【0042】
なお、本方法において、結果の出力は、限定されるわけではないが、競走馬データを入力して結果を所望する者の使用するコンピュータ、具体的に顧客用コンピュータCSの画面に表示することが好ましい。
【0043】
そして、この予測情報データの記録方法としては、限定されるわけではないが、機械学習を用いて行うことが好ましい。機械学習を行わせることで、より多元的な観点を含む情報を処理し、正確な生涯獲得賞金データを得ることができる。顧客用コンピュータCSに表示される画面の例について
図4に示しておく。
【0044】
ここで、機械学習において用いられるデータとしては、限定されるわけではないが、複数の過去競走馬データと、この複数の過去競走馬データ各々に対応して記録される血統データ、生涯獲得賞金データ、生産者データ、生産地データ、生年月日データ、毛色データ、市場データ、取引時年齢データ、取引価格データ、レース成績データ、馬体画像データ等を例示することができるがこれに限定されない。
【0045】
ここで「過去競走馬データ」とは、予想対象となる「競走馬データ」とは別の競走馬データであって、機械学習用のデータとして活用される競走馬のデータである観点において「過去」という表示を行っているものであり、それ以外の点においては上記競走馬データと大きな差異はない。この観点において上記「競走馬データ」とは同様の情報を含ませることができる。
【0046】
ここで「血統データ」とは、該当する競走馬の血統に関する情報を含むデータであり、例えば繁殖牝馬(母)、種牡馬(父)、母の母、母の父、父の母、父の父、母の母の母、母の母の父、母の父の母、母の父の父、父の母の母、父の母の父、父の父の母、父の父の父といった3親等程度の血統に関する情報を例示することができるがこれに限定されない。
【0047】
また、ここで「生涯獲得賞金データ」とは、文字通り、当該過去競走馬が生涯において獲得した賞金の額に関する情報を含むデータであり、出走したレースとそのレースにおいて獲得した賞金の情報を含むデータの合計であることがより詳細な検討を行う上で好ましい。この場合、レース成績データに記録された賞金の情報を含むデータを合計することで求められる。なお、過去競走馬データが現役の競走馬である場合は、随時この値は更新されていくことになる。
【0048】
また、「生産者データ」とは、文字通り、当該競走馬を生産した者に関する情報を含むデータである。もちろんこのデータについては、上記血統データにおける父及び母等の馬に対しても対応させて記録してもよい。
【0049】
また、「生産地データ」とは、文字通り、当該競走馬が生産された場所に関する情報を含むデータである。もちろんこのデータについても、上記血統データにおける父及び母等のそれぞれの馬に対しても対応させて記録してもよい。
【0050】
また、「生年月日データ」とは、文字通り、当該競走馬の生年月日に関する情報を含むデータである。もちろんこのデータについても、上記血統データにおける父及び母等の馬に対しても対応させて記録してもよい。
【0051】
また、「毛色データ」とは、文字通り、当該競走馬の生年月日に関する情報を含むデータである。もちろんこのデータについても、上記血統データにおける父及び母等の馬に対しても対応させて記録してもよい。
【0052】
また、「市場データ」とは、文字通り、当該競走馬が取引された市場に関する情報を含むデータである。もちろんこのデータについても、上記血統データにおける父及び母等の馬に対しても対応させて記録してもよい。
【0053】
また、「取引時年齢データ」とは、文字通り、当該競走馬が取引された際の年齢に関する情報を含むデータである。もちろんこのデータについても、上記血統データにおける父及び母等の馬に対しても対応させて記録してもよい。
【0054】
また、「取引価格データ」とは、文字通り、当該競走馬が取引された際の価格に関する情報を含むデータである。もちろんこのデータについても、上記血統データにおける父及び母等の馬に対しても対応させて記録してもよい。
【0055】
また、「馬体画像データ」とは、文字通り、当該競走馬の見た目に関する情報を含むデータであって、より具体的には馬体を写真撮影して得られる画像データである。もちろんこのデータについても、上記血統データにおける父及び母等の馬に対しても対応させて記録してもよい。この馬体画像については、特定の年齢の際のデータであってもよく、また年齢の情報を含ませて複数の年齢における画像データを各々記録させているものであってもよい。
【0056】
また、「レース成績データ」とは、文字通り、当該競走馬のレース成績に関する情報を含むデータである。ここでレース成績に関する情報にはレースの条件などを含ませておくことが好ましい。このレース成績に関する情報としては、限定されるわけではないが、例えば、日付(日付データ)、天気(天気データ)、競馬場(競馬場データ)、馬場状態(馬場状態データ)、レース番号(レース番号データ)、レース名(レース名データ)、グレード(グレードデータ)、レースクラス(レースクラスデータ)、レース条件(レース条件データ)、芝ダート区分(芝ダート区分データ)、右左回り(左右回りデータ)、距離(距離データ)、内外(内外データ)、本賞金(本賞金データ)、付加賞金(付加賞金データ)、枠番(枠番データ)、馬番(馬番データ)、着順(着順データ)、負担重量(負荷重量データ)、タイム(タイムデータ)、着差(着差データ)、人気(人気データ)、オッズ(オッズデータ)、騎手(騎手データ)等を例示することができるがこれに限定されない。またこのレース成績は、一の競走馬に対して多数記録されることが好ましい。また、現役の競走馬に関しては、このデータは随時追加することが好ましい。なお本賞金及び付加賞金が分けて記録される場合、この合計である総賞金を、賞金データとして扱うことが好ましい。
【0057】
なお、上記において本賞金又は付加賞金等の賞金の情報を含む賞金データについては、修正を加えて記録させておくことも好ましい。本システムでは、今後将来にわたって獲得する賞金を予想するものである一方、現在の状況とレースの賞金額等が異なっている場合も少なくない。このような場合、予めこのデータ、またはレースの賞金に関する情報について修正を加えておくことで、より正確な予想賞金を予想することが可能となる。
【0058】
また、「レース成績データ」には、上記各レースの情報だけでなく、レース初出走日時、レース引退時期に関する情報を含ませることも好ましい。
【0059】
ここで、機械学習とは、いわゆる人工知能を用い、目標を示した入力データから規則性やルールを見つけ出し反復学習することで自ら判断力を向上させる技術である。人工知能に関しては、限定されるわけではないが、Google(登録商標)社の提供するTensorFlow(登録商標)が好適であるがこれに限定されない。
【0060】
また、機械学習の具体的なアルゴリズムとしては、回帰による線形回帰、ロジスティック回帰、サポートベクターマシーンや、木による決定木、回帰木、ランダムフォレスト、勾配ブースティング木、ベイズによる単純ベイズ、AR、MA、(S)ARIMAモデル、状態空間モデル、クラスタリングによるk近傍法、ブースティング、バギング、パーセプトロン、ニューラルネットワークによるディープラーニング、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、残差ネットワーク等を例示することができるがこれに限定されない。なお、限定されるわけではないが、人間の脳をモデルにした上記ニューラルネットワークによるディープラーニング等の手法の場合、例えばGoogle(登録商標)社のCloud ML Engine(登録商標)等のクラウドサーバーを用いることが好適である。
【0061】
以上、上記の記載から明らかなように、本システムでは、過去の競走馬に関するデータを多数用いて機械的に学習させる一方、このデータを予めこれからレースに出走するため市場に取引される予定の競走馬のデータを入力することで、その取引される予定の競走馬がどの程度の賞金を獲得することができるのか等、競走馬の潜在的競争能力を定量化し、最大化するための情報を得ることができるようになる。
【0062】
ところで、実際に電気通信回線を通じて顧客に対してサービスを提供する場合においては、金銭の授受が発生する場合がある。具体的には、上記データの提供に際してその対価の支払いの必要が発生する場合がある。このような場合、顧客を特定し、この顧客の現在のサービス提供の可否について判定しておくことは有用である。この場合の例について以下示す。
【0063】
まず、顧客用コンピュータCSに対し、(0-1)顧客識別番号データの入力及びそのパスワードデータの入力を要求する手順、(0-2)入力された顧客識別番号データ及びパスワードデータに基づき認証を行う手順、(0-3)認証された顧客識別番号データが有効な場合には、上記した競走馬データを入力する画面に移行させる一方、有効でない場合には、改めて上記顧客識別番号データ及びパスワードデータの入力を要求する又は処理の終了を行わせる手順、を備えていることが好ましい。このようにすることで、適切なサービス提供を可能とすることができる。
【0064】
なお、この場合において(0-2)の手順においては、顧客識別番号データとパスワードデータが対応しているか否かの単純なチェックだけでなく、顧客が有効に所定の額の支払いを行っているか否かについての顧客有効性についても判断することが好ましい。このようにすることで、適切なサービス提供を可能とする。なお、この手順を実現するためには、コンピュータC1又はC2、好ましくはコンピュータC1に、顧客識別番号データとそのパスワードデータ、更には顧客有効性に関するデータをデータベースとして記録しておくことが好ましい。
【0065】
なお、この場合では、予め顧客が登録手続を行い、その登録手続の結果をコンピュータC1が通知するとともに、予め顧客が所定の手数料を支払っておくこと(顧客事前登録制を採用すること)が好ましい態様であるが、場合によっては、顧客がデータを入手したいと考える都度金銭の授受を行うようにしてもよい。この場合、顧客識別番号データ及びパスワードデータに変わり、又は、加えて、クレジットカードや振り込みに関するクレジット情報を含むクレジットデータの入力を要求し、このデータを所定の金融機関に出力し、その回答が有効なものであると判断された場合に、上記競走馬データの入力画面に移行するようにしてもよい。
【0066】
以上、本システムSによって、競走馬の潜在的競争能力を定量化して最大化するための情報を予測可能な、競走馬の潜在的能力予測プログラム、競走馬の潜在的能力予測方法、及び、競走馬の潜在的能力予測システムを提供することができる。
【0067】
(実施形態2)
(種牡馬候補提示システム)
上記実施形態1に係るシステムによると、競走馬の潜在的能力を信頼性高く予測することができるようになる。そして、これを利用することによりまた新たなシステム、具体的には種牡馬候補を提示するシステム(以下「本提示システム」という。)を提供することが可能となる。以下具体的に説明する。なお、本実施形態では、送信(出力)及び受信(入力)するデータの関係が異なるだけであり、上記実施形態1と同じであって重複する部分については説明を省略する。
【0068】
本提示システムSの概略についても上記
図1と同様であるが、本提示システムSでは、(1)繁殖牝馬データを入力する手順、入力された繁殖牝馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を実行させるための種牡馬候補提示プログラムが記録されたコンピュータC1と、(2)複数の過去競走馬データ、並びに、過去競走馬データに対応する繁殖牝馬データ、種牡馬データ、及び、生涯獲得賞金実績データを含ませて機械学習を行い、競走馬データ各々に対して予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを作成して記録する手順、を実行させるための予測生涯獲得賞金データベース作成プログラムが記録されたコンピュータC2と、を備えるものである。
【0069】
本提示システムSは、具体的な顧客として競走馬の生産者及び所有者を想定しており、顧客用コンピュータCSから、自己の保有する繁殖牝馬をどの種牡馬と交配させることでより成績の良い競走馬が生まれるのかを予想するために用いられる。
【0070】
本提示システムSでは、上記の通り、(1-1)繁殖牝馬データを入力する手順、(1-2)入力された前記繁殖牝馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順、を実行させるための種牡馬候補提示プログラムが記録されたコンピュータC1を有する。
【0071】
ここで、「繁殖牝馬データ」とは、上記の記載からも明らかであるが、種牡馬と交配させたいと考えている繁殖牝馬を特定するための情報を含むデータである。この繁殖牝馬データとしては、限定されるわけではないが、上記実施形態1における競走馬データと同じものを採用することができ、例えば血統登録番号(血統登録番号データ)、馬名(馬名データ)、生年月日(生年月日データ)及びこれらの情報の組み合わせを含ませることができる。
【0072】
本提示システムSの(1-1)では、基本的に、実施形態1における「競走馬データ」を「繁殖牝馬データ」に読み替えることで対応できる。
【0073】
また、本提示システムSでは、上記実施形態1とは異なり、(1-2)入力された前記繁殖牝馬データに基づき、予測生涯獲得賞金データを含む予測情報データを取得して表示する手順を含む。ここで、「予想生涯獲得賞金データ」及び「予測情報データ」の定義については上記実施形態1と同様である。
【0074】
ただし、本提示システムSでは、「予測情報データ」は、当該入力した繁殖牝馬データに基づいて表示されるものではあるが、複数の「種牡馬データ」とその各々と交配した場合に生ずる競走馬における「予想情報データ」の組を複数表示させる。これによって、本提示システムでは、繁殖牝馬を特定した場合、どの種牡馬と交配させることでより生涯獲得賞金が多い競走馬が生まれるのかを評価することができるようになる。この場合において、情報の取得を望む顧客用コンピュータの入力における画面のイメージを
図5、6に、出力の結果を示す画面のイメージを
図7に示しておく。なお
図6は、
図5において検索手段を採用した場合の画面のイメージ図である。
【0075】
なお、種牡馬の数は多数であり、全数を算出、表示することも不可能ではないが、一定額以上の予測生涯獲得金額以上の組み合わせ、又は、上位から一定数の予測生涯獲得金額の組み合わせを選択して表示させることが好ましく、より好ましくは予測生涯獲得金額の多い順に表示させておくことが好ましい。このようにすることで顧客にとってより判断しやすい情報の提供が可能となる。
【0076】
そのため、本提示システムSでは、上記実施形態1と同様の手順により、人工知能を用いた機械学習によって 上記予測情報データを予め記録しておき、コンピュータC1からの入力があった場合に、この結果を表示させるため、複数の繁殖牝馬ごとに複数の種牡馬毎との交配の可能性を検討し、その種牡馬と当該繁殖牝馬との間の子供の識別番号データを付与し、その識別番号ごとに、予測情報データを作成し、予め記録させておくことが好ましい。
【0077】
以上、本提示システムSによって、上記実施形態1に加え、繁殖牝馬と種牡馬の関係にも着目し、上記を応用して、繁殖牝馬に対し最適な種牡馬を提示するための、種牡馬候補提示プログラム、種牡馬候補提示方法、並びに、種牡馬候補提示システム、更にはこれらに用いられる予測生涯獲得賞金データベース作成プログラム、を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、競走馬の潜在的能力予測プログラム、競走馬の潜在的能力予測方法、及び、競走馬の潜在的能力予測システム、並びに、種牡馬候補提示プログラム、種牡馬候補提示方法、並びに、種牡馬候補提示システム、更にはこれらに用いられる予測生涯獲得賞金データベース作成プログラムとして産業上の利用可能性がある。本発明では、競走馬生産において業務効率の改善を促し、より競争能力の高い競走馬を生産することに役立ち、競走馬取引及び競走馬出資における付加価値の高い情報を提供することで取引を活性化することに役立つ。更には、インターネット等の電気通信回線による情報提供、出版業にも使用することが可能であり、これにより競馬競争の産業拡大に資するものとなる。