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特許7301343健康管理装置、健康管理システム、健康管理プログラム、及び健康管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】健康管理装置、健康管理システム、健康管理プログラム、及び健康管理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20230626BHJP
   G16H 40/40 20180101ALI20230626BHJP
【FI】
A61B5/00 G ZDM
G16H40/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019063721
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020162649
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】谷田 千里
(72)【発明者】
【氏名】児玉 美幸
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-057552(JP,A)
【文献】国際公開第2003/036539(WO,A1)
【文献】特表2019-508146(JP,A)
【文献】特開2017-202235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
G16H 40/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の健康状態に関する複数の指標を管理する健康管理装置であって、
一又は複数の測定装置により測定された前記複数の指標の測定値を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された指標ごとに測定値の推移を示す推移データを生成する生成手段と、
前記測定装置により測定された前記測定値が異常であるか否かを、前記複数の指標の組み合わせの相関性と前記複数の指標の前記推移データとに基づいて判定する判定手段と、
を含む、
健康管理装置。
【請求項2】
利用者の健康状態に関する複数の指標を管理する健康管理装置であって、
一又は複数の測定装置により測定された前記複数の指標の測定値を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された指標の測定値の推移を示す推移データを生成し、互いに異なる指標のうち一方の指標の前記推移データと他方の指標の前記推移データとの相関性の程度を示す相関度を演算する生成手段と、
前記測定装置により測定された前記測定値が異常であるか否かを、前記相関度に基づいて判定する判定手段と、
を含む、
健康管理装置。
【請求項3】
利用者の健康状態に関する複数の指標を管理する健康管理装置であって、
一又は複数の測定装置により測定された前記複数の指標の測定値を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された指標の測定値の推移を示す推移データを生成する生成手段と、
前記指標の他の指標との相関度に基づいて、当該指標の測定値の異常の程度を示す指標異常レベルを設定変更し、設定変更した指標異常レベルに基づいて当該指標の測定値を出力した測定装置において、測定するための環境である測定環境に異常が発生していると判定する判定手段と、
を含む、
健康管理装置。
【請求項4】
利用者の健康状態に関する複数の指標を管理する健康管理装置であって、
一又は複数の測定装置により測定された前記複数の指標の測定値を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された指標の測定値の推移を示す推移データを生成し、互いに異なる指標のうち一方の指標の前記推移データと、前記一方の指標と相関性が高い他方の指標の前記推移データとの相関性の程度を示す相関度を演算する生成手段と、
前記測定装置により測定された前記測定値が異常であるか否かを、前記相関度に基づいて判定する判定手段と、
を含む、
健康管理装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2又は請求項4のいずれか一項に記載の健康管理装置であって、
前記判定手段は、異常であると判定された前記測定値を出力した測定装置において、測定するための環境である測定環境に異常が発生していると判定する、
健康管理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の健康管理装置であって、
前記指標は、体重、体脂肪量、筋肉量、活動量、血圧、及びアセトン濃度のうちの少なくとも一つを含む、
健康管理装置。
【請求項7】
利用者の健康状態を示す複数の指標を管理する健康管理システムであって、
前記複数の指標の測定値を取得する一又は複数の測定装置と、
前記測定装置から測定値を取得する管理サーバと、
を備え、
前記管理サーバは、前記測定装置により取得された指標ごとに測定値の推移を示す推移データを生成し、
前記測定装置により測定された前記測定値が異常であるか否かを、前記複数の指標の組み合わせの相関性と前記複数の指標の前記推移データとに基づいて判定する、
健康管理システム。
【請求項8】
利用者の健康状態に関する複数の指標を管理する健康管理プログラムであって、
一又は複数の測定装置により測定された前記複数の指標の測定値を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された指標ごとに測定値の推移を示す推移データを生成する生成ステップと、
前記測定装置により測定された前記測定値が異常であるか否かを、前記複数の指標の組み合わせの相関性と前記複数の指標の前記推移データとに基づいて判定する判定ステップと、
を含む、
健康管理プログラム。
【請求項9】
利用者の健康状態に関する複数の指標を管理する健康管理プログラムであって、
一又は複数の測定装置により測定された前記複数の指標の測定値を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された指標の測定値の推移を示す推移データを生成する生成ステップと、
前記指標の他の指標との相関度に基づいて、当該指標の測定値の異常の程度を示す指標異常レベルを設定変更し、設定変更した指標異常レベルに基づいて当該指標の測定値を出力した測定装置において、測定するための環境である測定環境に異常が発生していると判定する判定ステップと、
を含む、
健康管理プログラム。
【請求項10】
利用者の健康状態に関する複数の指標を管理する健康管理方法であって、
一又は複数の測定装置により測定された前記複数の指標の測定値を取得する取得工程と、
前記取得工程により取得された指標ごとに測定値の推移を示す推移データを生成する生成工程と、
前記測定装置により測定された前記測定値が異常であるか否かを、前記複数の指標の組み合わせの相関性と前記複数の指標の前記推移データとに基づいて判定する判定工程と、
を含む、
健康管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の健康状態を示す複数の指標を管理する健康管理装置、健康管理システム、健康管理プログラム、及び健康管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、重量検出部とは別に重量検出部の誤動作を自動的に検出する誤動作検出部を構成する回路が設けられた電子秤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-75034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような誤動作検出部を、利用者の健康状態を示す測定データを取得する測定装置に適用した場合には、測定装置において利用者の健康状態を測定する機能に加えて誤動作検出部を設ける必要があるため、構成が煩雑化してしまう。
【0005】
一方、上述の測定データを管理する健康管理装置においては、測定装置の誤動作等によって異常な測定データが取得されると、利用者の健康状態を正しく判定することが困難となる。
【0006】
本発明は、測定装置を簡易な構成にしつつ測定装置の誤動作等による測定値の異常を検出する健康管理装置、健康管理システム、健康管理プログラム、及び健康管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、利用者の健康状態に関する複数の指標を管理する健康管理装置であって、測定装置により測定された複数の指標の測定値を取得する取得手段と、取得手段により取得された指標の測定値の推移を示す推移データを生成する生成手段と、測定装置における測定値が異常であるか否かを、生成手段により生成された推移データに基づいて判定する判定手段と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、測定装置により測定される指標の推移データを利用して測定装置の誤作動における測定値の異常を検出するため、測定装置を簡易な構成にしつつ測定装置の誤作動における測定値の異常を検出する健康管理装置、健康管理システム、健康管理プログラム、及び健康管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る健康管理システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、健康管理システムの機能ブロックの一例を示す図である。
図3図3は、記憶部に記憶されている相関テーブルの一例を示す図である。
図4図4は、測定環境異常判定処理の一例を説明するフローチャートである。
図5図5は、指標異常レベル決定処理の一例を説明するフローチャートである。
図6図6は、健康管理システムにおいて測定値の異常を報知する画面の一例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る高い相関性を有する測定値の推移データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における健康管理システム10の概略構成を示す図である。本実施形態は、概して、測定装置で測定される測定値に異常が発生しているか判定し、その測定値を出力した測定装置において測定するための環境である測定環境に異常が発生していることを判定する健康管理システムである。ここにいう測定するための環境に発生する異常の類型としては、例えば、測定装置が経年劣化等に起因する誤作動発生等の不具合が発生していること、本来のユーザでない人によって測定されていること、測定姿勢が適切でない等の適切な測定方法で測定されていないこと等である。
【0012】
健康管理システム10は、利用者の生体情報を一括して管理することにより利用者の健康状態を管理する装置である。ここにいう生体情報に含まれるものとしては、例えば、体重、体脂肪量、筋肉量、活動量、血圧、及びアセトン濃度などの生体指標がある。
【0013】
本実施形態の健康管理システム10は、複数の測定装置1~nと、測定装置1~nにネットワーク9を介して接続されるサーバ30と、を備える。
【0014】
測定装置1~nのぞれぞれは、利用者の生体情報を示す一又は複数の生体指標の測定値を取得し、これらの測定値を、ネットワーク9を介してサーバ30へ送信する。
【0015】
測定装置1~nは、例えば、設置型又は携帯型の測定機器等により構成される。本実施形態の測定装置1~nは、それぞれ、設置型の体重計、設置型の体脂肪量計、携帯型の活動量計、設置型の血圧計、携帯型のアセトン濃度計によって構成されている。
【0016】
また、測定装置1は、種々の測定機器を接続することにより多様な生体指標を取得することも可能である。なお、測定装置1は、測定装置1~nの測定機能の各々を有するものであってもよい。すなわち、健康管理システム10に含まれる測定装置1は一つであってもよい。
【0017】
サーバ30は、測定装置1~nから受信した生体指標ごとに、その生体指標に関する測定値を、経時的な変化を示す一連の測定値からなる測定データとして記憶して生体指標の各々の測定データを管理する。例えば、サーバ30は、記憶した生体指標の各々の測定データを解析することにより利用者の健康状態を判定する。
【0018】
このように、本実施形態の健康管理システム10は、一つの測定装置1又は複数の測定装置1~nから利用者の健康状態を示す複数の生体指標の測定値を取得するサーバ30を用いて利用者の健康状態の管理を行う。
【0019】
[機能的構成]
次に、図2を参照してサーバ30の機能的な構成について説明する。サーバ30は、制御部31、データ取得部32、推移データ生成部33、判定処理部34、及び記憶部40を備える。
【0020】
制御部31は、サーバ30を統括的に制御することにより、複数の生体指標の測定値を処理する。本実施形態の制御部31は、データ取得部32、推移データ生成部33、判定処理部34、及び記憶部40を制御する。
【0021】
データ取得部32は、測定装置1~nから、利用者の生体情報を示す複数の生体指標の測定値を取得する。
【0022】
推移データ生成部33は、データ取得部32から複数の生体指標の測定値を受付けると、これらの測定値を用いて、生体指標ごとに測定値の推移を示す推移データを生成する。ここにいう推移データとは、例えば日ごとに取得された測定値の変化を示すデータである。
【0023】
判定処理部34は、測定装置1~nにより測定された一又は複数の生体指標の推移データ同士の組み合わせの相関性などを用いて、測定装置1~nの少なくも一つの測定装置における測定環境に異常が発生しているか否かを判定する。例えば、判定処理部34は、一つの推移データに示される各測定値間の差分、又は各測定値の変化率などのパラメータを求め、そのパラメータの値が予め定められた基準を超えたときにその測定装置において測定のための環境に異常が発生したと判定する。
【0024】
本実施形態の判定処理部34は、相関演算部35と異常環境判定部36とを有する。
【0025】
相関演算部35は、推移データ生成部33から受付けた生体指標の各々の推移データを用いて、異なる生体指標間の測定値の相関性を演算する。すなわち、ある生体指標の変動の傾向に応じて、同一人物の他の生体指標が変動する確率が高い程、これらの生体指標の相関性が高くなる。同様に、ある生体指標の変動の傾向と関係なく、同一人物の他の生体指標が変動する確率が高い程、これらの生体指標の相関性が低くなる。ここにいう相関性は、例えば、互いに異なる生体指標の推移データの相関性の程度を示す相関度によって定量化される。この相関度の具体例として、互いに異なる生体指標の推移データから導出される相関係数Cが挙げられる。
【0026】
本実施形態では、相関演算部35は、データ取得部32にて取得された生体指標のうち他の生体指標と相関性を有する生体指標を対象指標として抽出する。そして相関演算部35は、抽出した対象指標の中から、測定値の異常を検出するために一つの対象指標を選択する。そして相関演算部35は、選択した対象指標である選択指標に対して相関性が高い一又は複数の対象指標を参照指標として選択し、選択した参照指標の各々の推移データに対して選択指標の推移データの相関係数Cを算出する。
【0027】
異常環境判定部36は、相関演算部35から受付けた選択指標の相関係数Cを用いて、測定装置1~nのうち選択指標を測定する測定装置に該当する該当装置における測定値の異常の発生の有無を判定する。例えば、異常環境判定部36は、選択指標の相関係数Cが所定の基準に反する場合には、該当装置における測定値の異常が発生していると判定し、選択指標の相関係数Cが所定の基準を満たす場合には、該当装置における測定値の異常が発生していないと判定する。
【0028】
例えば、異常環境判定部36は、選択指標の相関係数Cの符号を検出し、検出した符号が基準となる符号と異なる場合、すなわち相関係数Cが所定の基準に反する場合には、該当装置における測定値の異常が発生していると判定する。
【0029】
具体的には、異常環境判定部36は、選択指標と参照指標との相関性の基準となる基準係数Bを相関テーブル記憶部43から取得し、選択指標の相関係数Cの符号が基準係数Bの符号と一致するか否かを判断する。そして、異常環境判定部36は、相関係数Cの符号が基準係数Bの符号と一致するとき選択指標の測定値に異常が生じていないと判定し、符号が一致しないとき測定値に異常が生じていると判定する。
【0030】
あるいは、相関テーブル記憶部43には、相関係数Cの数値と測定値の異常の有無との関係を示す判定テーブルが記憶されており、異常環境判定部36は、相関係数Cを取得すると、この判定テーブルを参照して測定値の異常を判定してもよい。
【0031】
さらに、異常環境判定部36は、上述した選択指標の測定値に対する異常の有無の判定の結果に基づいて、該当装置における測定値の異常の発生確率を示す指標異常レベルαの値を決定する。この指標異常レベルαは対象指標ごとに設定される。例えば、異常環境判定部36は、測定値に異常が生じていると判定した場合には、相関性が演算された選択指標及び参照指標の双方の指標異常レベルαの値をそれぞれ増加させ、測定値に異常が生じていないと判定した場合には、選択指標及び参照指標の双方の指標異常レベルαの値をそれぞれ減少させる。したがって、測定値に異常が生じたと判定される回数が多くなるほど指標異常レベルαの値は大きくなる。
【0032】
続いて、異常環境判定部36は、選択指標の指標異常レベルαが特定の基準を超える場合には、該当装置の測定環境に異常が発生していると判定し、指標異常レベルαが特定の基準を超えない場合には、該当装置の測定環境に異常が発生していないと判定する。
【0033】
記憶部40は、サーバ30と測定装置1~nとの間で送受信するデータ、及びサーバ30で生成されたデータなどを記憶する。記憶部40は、測定値記憶部41、指標異常レベル記憶部42、及び相関テーブル記憶部43を備える。
【0034】
測定値記憶部41は、データ取得部32が取得した対象指標ごとの測定値を、測定日時及び測定場所を示す情報と関連付けて記憶する。この測定値は、上記の推移データ生成部33における推移データの生成に用いられる。
【0035】
指標異常レベル記憶部42は、異常環境判定部36によって対象指標ごとに決定された指標異常レベルαをそれぞれ記憶する。
【0036】
相関テーブル記憶部43は、一対の対象指標ごとに定められた基準係数Bを示す相関テーブルを記憶している。相関テーブルは、利用者又は他の被験者の各指標を試験的に測定した測定データに基づいてあらかじめ定められてもよく、又は所定の理論式を適用したシミュレーション結果などに基づいて定められたものでもよい。
【0037】
[相関テーブル]
続いて、対象指標間の相関性の基準となる相関テーブルについて説明する。図3は、この相関テーブルの一例を示す図である。
【0038】
相関テーブル70は、複数の対象指標の組み合わせの相関性を示すテーブルである。相関テーブル70の測定項目64には対象指標D1~D6が示されている。また、相関テーブル70の中央には、対象指標D1~D6の各々の相関性を「-5」から「+5」までの十段階で表した基準係数Bが示されている。
【0039】
基準係数Bは、基準係数Bの絶対値が大きくなるにつれて相関性が高くなることを示している。例えば、基準係数Bが「+5」である場合においては、選択指標の測定値が増加するときに参照指標の測定値が高い確率で増加し、基準係数Bが「-5」である場合においては、選択指標の測定値が増加するときに参照指標の測定値が高い確率で減少する。
【0040】
図3に示すように、体脂肪量D2と筋肉量D3との基準係数Bは「1」であり、かっこ内の符号は「?」である。このように基準係数Bが「1」又は「2」である場合は、対象指標同士の相関性が低いため、基準係数Bは正負どちらの値もとりうる。例えば、体脂肪量D2が増加する場合、筋肉量D3が減少するときもあれば増加するときもある。このため、基準係数Bが「-2」から「+2」までの間の値をとる場合、選択指標の測定値が変化したとしても、参照指標の測定値はほとんど変化しない。すなわち、選択指標の測定値の異常を的確に検出できるほど、双方の対象指標は依存性を有していない。
【0041】
例えば、体重D1を選択指標とした場合には、他の対象指標D2~D6が参照指標として選択される。ここにいう参照指標とは、上述のとおり、一方の選択指標に対して、複数の対象指標の中で相対的に相関性が高い他の対象指標のことをいう。本実施形態の相関演算部35は、相関性が高い他の対象指標である参照指標として、一方の選択指標に対して基準係数Bの絶対値が「3」から「5」までの間の値をとる対象指標が選択される。
【0042】
このように、相関テーブル70には複数の対象指標間の相関性を示す基準係数Bが記録されている。本実施形態の判定処理部34は、この相関テーブル70を参照し、演算した相関係数Cに対応する基準係数Bを特定し、特定した基準係数Bと相関係数Cとの大小関係を利用して対象指標D1~D6の各々の測定値の異常を検出する。
【0043】
[測定環境異常判定処理]
続いて、上記の指標異常レベルαを用いた測定環境異常判定処理について説明する。図4は、本実施形態の測定環境異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS31において、異常環境判定部36は、次の図5に示す指標異常レベル決定処理を行うことにより、第1指標に関する指標異常レベルαを決定する。ここでは、図3に示した対象指標D1~D6のいずれか一つを第1指標と称する。第1指標及びその参照指標の指標異常レベルαが決定すると、異常環境判定部36は、ステップS31の処理からステップS32の処理に進む。
【0045】
同様に、ステップS32において、異常環境判定部36は、指標異常レベル決定処理を行うことにより、対象指標のうち第1指標とは異なる第2指標に関する指標異常レベルαを決定する。そして、次のステップにおいても同様に、異常環境判定部36は、第1及び第2指標とは異なる他の選択指標とその参照指標のそれぞれに紐づけられた指標異常レベルαを演算する。
【0046】
このように、異常環境判定部36は、各々の対象指標に関して指標異常レベル決定処理を繰り返し、ステップS33までに全ての対象指標D1~D6に関する指標異常レベルαを決定する。
【0047】
異常環境判定部36は、全ての対象指標に関する指標異常レベルαを決定すると、ステップS34の処理に進む。ステップS34において、異常環境判定部36は、ステップS33までの各ステップにおいて演算された指標異常レベルαを、対象指標ごとに合計した値を指標異常レベル記憶部42に記憶する。
【0048】
そして、対象指標ごとの指標異常レベルαの値が決定すると、異常環境判定部36は、ステップS35に進み、指標異常レベルαと警告閾値Thwとの比較を行う。この警告閾値Thwは、例えば、測定装置1が過去に測定環境に異常を起こしたときの測定値の統計データから導出される値である。
【0049】
指標異常レベルαが警告閾値Thwを上回る場合、異常環境判定部36は、ステップS36において、指標異常レベルαが警告閾値Thwを上回る対象指標に関して警告を報知する。ここにいう報知には、例えば、サーバ30上で表示されている測定値に対してハイライトHを付記することが含まれる。この報知の方法については、後に図6を用いて詳述する。
【0050】
このように、異常環境判定部36は、対象指標ごとに指標異常レベルαを演算するため、全ての対象指標のうち異常が生じている指標を特定して報知することができる。これにより、利用者は、測定値の異常が生じている指標を認識することができる。なお、上記の測定環境異常判定処理は、任意のタイミング、例えば、一週間ごと又は一日ごとに実行されてもよい。
【0051】
[指標異常レベル決定処理]
続いて、上記の指標異常レベルαを決定するための指標異常レベル決定処理の流れを説明する。図5は、図4のステップS31からステップS33においてサブルーチンとして実行される処理である。
【0052】
ステップS41において、データ取得部32は、測定装置1からネットワーク9を介して第1指標の測定値を取得する。データ取得部32は、この第1指標の測定値を測定値記憶部41に記憶するとともに推移データ生成部33に出力する。
【0053】
ステップS42において、推移データ生成部33は第1指標の推移データを生成するとともに測定値記憶部41に第1指標の推移データを記憶する。
【0054】
ステップS43において、推移データ生成部33は、測定値記憶部41を参照し、第1指標の測定値と対象指標の測定値が測定値記憶部41に記憶されているか否かを判定する。制御部31は、基準係数Bが「4」又は「5」である対象指標の測定値が測定値記憶部41に記憶されていないと判定すると、指標異常レベル決定処理を終了する。一方、制御部31は、このような参照指標の測定値が測定値記憶部41に記憶されていると判定すると、指標異常レベル決定処理をステップS44に進める。
【0055】
ステップS44において、相関演算部35は、第1指標の測定値と参照指標の測定値との相関性を示す指標としての相関係数Cを演算する。異常環境判定部36が相関演算部35から相関係数Cを取得すると、指標異常レベル決定処理はステップS45に移行する。
【0056】
ステップS45において、異常環境判定部36は、第1指標の測定値と参照指標の測定値とが異常な相関性を示すか否かを判定する。具体的には、異常環境判定部36は、図4を用いて説明したように、相関係数Cが相関テーブル70に示された基準係数Bの符号と一致しているか否かを判定する。
【0057】
異常環境判定部36は、相関係数Cが基準係数Bの符号と一致していない場合には、異常な相関性を示していると判定し、指標異常レベル決定処理をステップS46に進める。そして、ステップS46において、異常環境判定部36は、第1指標と参照指標とのそれぞれに紐づけられた双方の指標異常レベルαの値を増加させる。
【0058】
一方、異常環境判定部36は、相関係数Cが基準係数Bの符号と一致している場合には異常な相関性を示していないと判定し、ステップS45の処理をステップS47に進める。そして、ステップS47において、異常環境判定部36は、第1指標と参照指標とのそれぞれに紐づけられた双方の指標異常レベルαの値を減少させる。
【0059】
ステップS46又はステップS47の処理が終わると、指標異常レベル決定処理は終了する。このように、異常環境判定部36は、異なる指標の相関性を示す相関係数Cを用いて指標異常レベルαを決定する。なお、基準係数Bが「4」又は「5」の参照指標が複数ある場合には、各参照指標に対してステップS44~ステップS46又はステップS44~ステップS47の処理が行われる。
【0060】
なお、上記の指標異常レベルαの値を決定する際に、基準係数Bの絶対値が大きくなるにつれて指標異常レベルαの変化量を増やしてもよい。例えば、基準係数Bの絶対値が「5」の場合、符号が不一致するたびに指標異常レベルαの値を「2」増減させ、基準係数Bの絶対値が「4」の場合は指標異常レベルαの値を「1」増減させる。これにより、基準係数Bの絶対値が大きくなるほど、すなわち対象指標同士の相関性が高くなるほど、指標異常レベルαへの寄与度が大きくなるので、判定精度を向上させることができる。
【0061】
また、測定頻度の高い対象指標同士の指標異常レベルαは、常時算出されてもよい。この場合、所定期間内に算出された測定頻度の高い対象指標同士の指標異常レベルαの累計値を、これらの対象指標の指標異常レベルαとして図4及び図5の処理に用いてもよい。
【0062】
また、本実施形態の制御部31は、図3に示したように、体重D1、体脂肪量D2、筋肉量D3、活動量D4、血圧D5、アセトン濃度D6の順番に選択指標を決定し、指標異常レベル決定処理が重複しないように参照指標を省略している。しかしながら、制御部31は、参照指標を省略することなく指標異常レベル決定処理を2回実行してもよい。一対の対象指標に関して指標異常レベル決定処理を2回実行することにより、インクリメント又はディクリメントが2回行われることになるので、指標異常レベル決定処理を1回だけ実行する場合と比較して、指標異常レベルαの変化量は2倍になる。これにより、測定値に異常が生じている対象指標の指標異常レベルαの値は大きく増加するため、異常環境判定部36は異常が生じている対象指標をより早く特定することができる。
【0063】
[警告表示]
次に、上記の測定環境異常判定処理のステップS36における報知方法について説明する。図6は、健康管理システム10の測定環境の異常を報知する画面の一例を示す図である。
【0064】
表示画面60は、例えばサーバ30において表示される。表示画面60には、利用者情報61、期間情報62、及び測定情報67が含まれる。
【0065】
利用者情報61は、利用者が自己の測定結果であることを確認するための表示である。利用者情報61には、例えば利用者があらかじめ入力した利用者の氏名、性別、年齢、及び身長が含まれる。
【0066】
期間情報62は、利用者が自身の生体情報を測定した期間を特定するための表示である。例えば、利用者は全ての生体指標の生体情報を同日に測定することは難しい。したがって、利用者は、期間情報62に示すような所定の期間において、各生体情報をそれぞれ異なる日に測定する場合がある。期間情報62は、例えば一週間毎に表示が切り替わる。
【0067】
測定情報67には、例えば測定日時63、測定項目64、測定値65、及び増減66が含まれる。測定日時63には、利用者が測定項目64に示される指標の生体情報を測定した日時が表示される。測定項目64には、測定対象である生体情報を示す指標が表示される。測定値65には、測定対象の指標の測定値が表示される。期間情報62に示される期間内に測定がない測定項目64には、空欄、「-」、又は「/」の表示がされる。増減66には、前回の測定期間に測定された測定値と比較した増減を示す比較結果が表示される。
【0068】
具体的には、測定項目64の活動量としての「歩数」、又は「消費エネルギー」については、測定した前日の活動量、又は今回の測定期間の前日までの平均値が表示される。また、測定項目64の「呼気アセトン濃度」の増減66については、安静時における測定値が比較されることが望ましい。
【0069】
ここでは、上記アセトン濃度D6に対応する「脂質代謝評価」に関する測定値65の値が異常であることを示すように、測定項目64のうち「脂質代謝評価」の欄の測定値65にハイライトHが付されている。
【0070】
このように、利用者は表示画面60を視認することによって、測定装置1の測定環境に異常が生じている可能性を認識することができる。
【0071】
なお、上記の実施形態において、推移データ生成部33は全ての対象指標に関する測定値の推移データを生成している。しかしながら、推移データ生成部33は、全ての指標のうち基準係数Bの絶対値が「4」又は「5」となる対象指標の測定値だけの推移データを演算してもよい。これにより、推移データ生成部33の演算量が減少するため、サーバ30の処理負担を軽減することができる。
【0072】
以下では、本実施形態の作用効果について詳細に説明する。
【0073】
本実施形態によれば、サーバ30は、利用者の健康状態に関する複数の指標を管理する健康管理装置を構成する。そして、サーバ30は、一又は複数の測定装置1により測定された複数の指標の測定値を取得するデータ取得部32と、データ取得部32により取得された指標の測定値の推移を示す推移データを生成する推移データ生成部33と、測定装置1により測定された測定値が異常であるか否かを、推移データ生成部33により生成された推移データに基づいて判定する判定処理部34と、を含む。
【0074】
生体情報に含まれる複数の指標を測定する測定装置1としては、例えば、体組成計、活動量計、血圧計などの生体測定機器が挙げられ、これらによる測定データを一括してユーザの健康状態を正しく管理するためには、生体測定機器の各々が正しい測定データを取得していることが前提となる。例えば生体測定機器のいずれか一つに誤作動等が生じている場合には、ユーザが健康状態であるにも関わらず、誤作動等が生じた測定装置1によって測定された測定データの影響により、ユーザの健康状態が総合的に不健康と判定されてしまうことが考えられる。そのため、測定装置1が誤作動等している場合には、誤作動等の発生を認識できることが望ましい。
【0075】
そこで、本実施形態のサーバ30は、測定装置1の誤作動等の発生を検出するために、特定の対象指標に関して、対象指標の推移データを利用して測定値の妥当性を判定する。例えば、推移データを利用することにより、前回の測定値と今回の測定値との差分、又は測定値の平均と今回の測定値との差分などが、想定される範囲内に収まる場合に、測定値が妥当であると判定する。
【0076】
上記の差分は、単純な四則演算の組み合わせによって求められる。したがって、対象指標の推移データを生成する推移データ生成部33、及びその推移データを用いて測定値の異常を判定する判定処理部34は、複雑な演算が要求されるような他の処理に用いられる既存の演算回路を兼用することで、測定装置1の測定値の異常の発生を検出することができる。すなわち、本実施形態では、測定値の異常の有無を判定するためだけの回路を別途備える必要がない。
【0077】
また、本実施形態の推移データ生成部33は、対象指標ごとに推移データを生成し、判定処理部34は、複数の推移データの組み合わせの相関性と複数の指標の推移データとに基づいて測定値が異常であるか否かを判定する。
【0078】
図3を用いて説明したように、複数の対象指標の中から選択した選択指標に関して、選択指標と複数の対象指標との組み合わせの相関性を求めることによって、選択指標と単一の参照指標との相関性だけを求める場合と比較して、測定値の異常を検出しやすくなる。
【0079】
例えば、一つの選択指標に対して相関性の高い二つの参照指標がある場合、二つの参照指標のうちの一つの参照指標に対する相関性が高いにもかかわらず、もう一方の参照指標に対する相関性が低いときは、その選択指標の測定値に異常が生じているおそれがある。
【0080】
このように、選択指標に対する複数の参照指標の相関性を求めることによって、一つの参照指標との相関性を検出する場合に比べて精度の高い測定値の異常の判定を行うことができる。さらに、対象指標間の相関性についても、四則演算の組み合わせによって簡単に求められるので、上記の推移データを生成する場合と同様に、相関性を演算するための回路構成を別途備える必要がない。
【0081】
したがって、対象指標の組み合わせの相関性を求めることにより、回路構成を追加することなく、測定装置1の誤動作等による測定値の異常の検出精度を高めることができる。
【0082】
また、本実施形態のサーバ30の相関演算部35は、互いに異なる対象指標のうち、一方の指標である選択指標の推移データと他方の指標である参照指標の推移データとの相関性の程度を示す相関度を演算し、異常環境判定部36は、演算された相関度に基づいて測定値が異常であるか否かを判定する。選択指標の相関度としては、図4に示した相関係数C、又は後述のマッチング指標Mなどが挙げられる。
【0083】
このように、測定値の異常が検出されるよう相関度の基準を設定することにより、選択指標の相関度が正常な範囲を超えて変化するのを的確に検出することができる。したがって、選択指標の測定値の異常を検出する精度を高めることができる。
【0084】
例えば、図3及び図4を用いて説明したように、所定の基準の一例として、相関係数Cの符号を特定するために閾値を設定することで相関性の異常を検出することができる。また、後述の変形例に示すマッチング指標Mに閾値を設定することで相関性の異常を検出することができる。このように、本実施形態のサーバ30は、相関度の変化を検出することにより、精度よく測定値の異常の有無を判定することができる。
【0085】
また、異常環境判定部36は、異常であると判定された測定値を出力した測定装置1において、測定するための環境である測定環境に異常が発生していると判定する。
【0086】
このように、本実施形態では、測定装置1で測定される測定値の異常に基づいて、測定装置1における測定環境の異常を判定することができる。この測定値の異常としては、例えば、測定装置1における制御部31等の動作の異常、利用者による測定装置1の使用方法に起因する異常、又は、測定装置1の設置場所の周辺環境の異常をはじめとする種々の測定環境の異常が挙げられる。利用者は、異常環境判定部36の判定結果により測定環境に異常があることを知ることによって、上述のいずれかの測定環境の異常を是正し、自己の生体指標として精度の良い測定値を知ることができる。
【0087】
また、本実施形態のサーバ30の異常環境判定部36は、選択指標の他の指標との相関度に基づいて、選択指標の測定値の異常の程度を示す指標異常レベルαを変更し、指標異常レベルαに基づいて当該指標の測定値を出力(算出)した測定装置1において、測定環境に異常が発生していると判定する。
【0088】
このように、相関度が基準に反する回数が増加するにつれて値が増加する指標異常レベルαを求めることにより、相関度が異常を示す頻度が高い選択指標の指標異常レベルαが特定の基準を超えやすくなるので、測定装置1の測定環境の異常の判定の精度を高めることができる。例えば、図4を用いて説明したように、測定値の異常が検出されるたびに指標異常レベルαがインクリメントされるので、測定環境の異常のレベルを定量化することができる。このとき、異常環境判定部36は、指標異常レベルαのインクリメント及びディクリメントの幅を、基準係数Bの絶対値の大小に応じて調節してもよい。これにより、基準係数Bに示される相関の程度を反映した測定値の異常を定量化できるので、測定装置1の測定環境の異常の有無を精度よく判定することができる。
【0089】
また、本実施形態のサーバ30の相関演算部35は、他方の指標である参照指標として、複数の対象指標のうち選択指標に対して相関性が高い対象指標を選択する。
【0090】
このように、選択指標に対して相関性が高い対象指標を参照指標として選択することにより、選択指標の測定値に異常が生じ、これに伴う測定値の変化量が大きくなるほど、選択指標と参照指標との相関性が低くなる。一方、選択指標に対して相関性が低い対象指標を参照指標として選択する場合には、選択指標の測定値に異常が生じて測定値が大きく変化しても、もともと相関性が低いため、相関性はそれほど低下しない。それゆえ、本実施形態によれば、選択指標に対して相関性が低い対象指標を参照指標として選択する場合に比べて、選択指標の測定値の異常を精度よく検出することができる。
【0091】
また、本実施形態の相関テーブル70では、全ての対象指標について基準係数Bが定められているので、全ての対象指標の基準係数Bのうち、相対的に基準係数Bの絶対値が大きい対象指標のみを的確に抽出することができる。このように、参照指標として相関性の高い対象指標を用いることにより、相関性が不明な生体指標を用いる場合に比べて、選択指標の測定値に異常が生じたときに相関性が大きく変化するので、より精度の高い測定環境の異常の判定を行うことができる。
【0092】
また、本実施形態のサーバ30において、対象指標は、体重D1、体脂肪量D2、筋肉量D3、活動量D4、血圧D5、及びアセトン濃度D6のうちの少なくとも一つを含む。
【0093】
上記の対象指標は、人の健康状態を表す指標として定期的に測定されることが多い。また、これらの指標は、日常生活の中で、例えば家庭又は病院に一般的に備え付けられている測定装置によって、容易に測定することができる指標である。このため、これらの対象指標の測定値は記憶部40に数多く記憶されている場合が多い。したがって、本実施形態のサーバ30は、このような数多くの測定値を用いて推移データ及び相関性を演算することにより、相関性の精度を高めることができる。
【0094】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る指標異常レベルαの演算手法について図7を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明する。
【0095】
図7は、体重D1の測定値と体脂肪量D2の測定値との推移を示す図である。体重D1と体脂肪量D2の基準係数Bは、図3に示したとおり「4」である。図中の実線は利用者の体重D1を示し、破線は利用者の体脂肪量D2を示す。図7の縦軸には体重D1及び体脂肪量D2が重ねて示されており、横軸には測定日が示されている。また、期間T1から期間T5は相関係数Cと基準係数Bとの符号が一致しなくなる期間を示している。
【0096】
期間T1に至るまで体重D1と体脂肪量D2とは測定値の相関性の程度を示す相関係数Cが正の値を示した状態で推移する。期間T1に至るまでの間、双方の指標異常レベルαの値は減少し続ける。
【0097】
そして、期間T1において、体重D1は減少し体脂肪量D2は増加するため、相関係数Cが負となる。このとき、図3に示したように体重D1と体脂肪量D2との基準係数Bの符号はともに正であるため、双方の符号は一致しなくなる。このため、異常環境判定部36は、双方の指標異常レベルαの値を増加させる。
【0098】
その後、期間T2に至るまで体重D1と体脂肪量D2とは相関係数Cが正となる。したがって、期間T1から期間T2までの間、双方の指標異常レベルαの値は徐々に減少する。
【0099】
そして、期間T2において相関係数Cの符号が反転し、相関係数Cが負となる。このとき、基準係数Bと相関係数Cとの符号は一致しなくなるため、双方の指標異常レベルαの値は再び増加する。その後も同様に、期間T3、期間T4、及び期間T5において双方の符号は一致しなくなるので、双方の指標異常レベルαの値は増加し、それ以外の期間において双方の指標異常レベルαの値は減少する。
【0100】
このように、所定期間における相関係数Cの符号と基準係数Bの符号との一致又は不一致に応じて双方の指標異常レベルαが増減する。すなわち、対象指標間の相関性が変動することにより、双方の指標異常レベルαが上昇する。このため、指標異常レベルαが特定の基準を超える場合には、その指標異常レベルαに対応する対象指標の一方の測定値が異常であると判定することが可能となる。
【0101】
(変形例1)
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。本変形例の健康管理システム10は、測定装置1だけではなく他の測定装置2~nの測定環境の異常も判定することが可能である。
【0102】
まず、相関演算部35は、測定装置1で測定された体重D1と、測定装置2で測定された筋肉量D2との相関性を演算する。ここで、図3に示される相関テーブル70によれば、体重D1と筋肉量D2との基準係数Bの値は「+5」であるため、これらの対象指標の測定値は相対的に高い相関性を示すことが予測される。したがって、仮にこれらの対象指標の測定値が基準係数Bの値に反して異常な相関を示す場合、測定装置1及び測定装置2のうちの少なくともいずれか一つに測定環境に異常が生じている可能性が高い。
【0103】
これに加えて、本変形例の判定処理部34は、上記と同様の処理を測定装置1と測定装置3との間で行い、これを測定装置nまで繰り返すことにより、測定装置1~nの全ての測定装置に対して測定環境の異常の有無を判定することができる。
【0104】
このように、判定処理部34は、測定装置1によって測定された生体指標の測定値と、他の測定装置2~nによってそれぞれ測定された生体指標の測定値と、の相関性を演算することにより測定装置2~nについても測定環境の異常の有無を判定することができる。
【0105】
(変形例2)
続いて、第1の実施形態の他の変形例について説明する。本変形例の健康管理システム10は、図5に示した測定環境異常判定処理を測定装置1の利用者が所有するスマートフォンなどの携帯機器において行う。
【0106】
変形例2では、図2に示した推移データ生成部33、判定処理部34、指標異常レベル42、及び相関テーブル記憶部43が、図示しない携帯機器に備えられている。この携帯機器は、サーバ30から複数の測定値を受信すると、第1の実施形態と同様の処理を実行し、測定装置1の測定環境の異常の有無を判定する。このように、図2に示したサーバ30の各構成を利用者が所有する携帯機器に適用することにより、利用者は、自身が普段使用している測定装置1についての測定環境の異常の有無を把握することができる。
【0107】
(変形例3)
次に、第1の実施形態の他の変形例について説明する。本変形例の健康管理システム10は、測定装置1単体で測定環境の異常の発生の有無を判定する。
【0108】
本変形例の健康管理システム10においては、第1の実施形態で示したサーバ30の構成の全てが測定装置1に備えられている。これにより、測定装置1において自己の測定環境の異常の有無を判定することができる。
【0109】
(変形例4)
続いて、第1の実施形態の他の変形例について説明する。本変形例では、上記の相関性は、相関係数Cではなくマッチング指標Mを用いて求められる。
【0110】
相関演算部35は、例えば図4に示すような、異なる対象指標の測定値をプロットした折れ線グラフを対象指標ごとに画像として生成する。相関演算部35は、これらの画像に対して周知の技術を用いてマッチング処理を行うことにより、画像の一致度を示すマッチング指標Mを演算する。
【0111】
そして、相関演算部35は、このようなマッチング指標Mが所定のマッチング閾値Thmを超えるか否かによって測定値の異常の発生の有無を判定する。具体的には、相関演算部35は、一対の対象指標の相関性が高いほどマッチング指標Mを大きく設定する場合、マッチング指標Mがマッチング閾値Thmを上回るときに測定値に異常は生じていないと判定し、下回るときに測定値に異常が生じていると判定する。
【0112】
なお、図3に示した相関テーブル70の基準係数Bの数値は、必ずしも十段階でなくもよく、例えば、相関性の高さを表す「低、中、高」の三段階又は「〇、×」の二段階であってもよい。また、相関テーブル70は、学術データ又は利用者の統計データから導出されてもよい。さらに、相関テーブル70は、利用者の性別ごとに設定されるものであってもよい。
【0113】
また、上記の実施形態において、判定処理部34は、相関係数Cの符号が一致するか否かだけを判定したが、これに代えて、又はこれとともに変位量を判定してもよい。ここにいう変位量とは、例えば、二つの指標の測定値の差分を定量化した数値である。この場合、基準係数Bの絶対値が大きいほど、測定値の異常を検出するために用いられる変位量についての閾値を小さく設定してもよい。
【0114】
また、上記の実施形態において、相関度として相関係数Cに限らず相関性を表す他の変数を用いてもよい。例えば、相関度としては、正規化相互相関係数、差分絶対値和、及びこれらの加工値が含まれる。
【0115】
また、上記の実施形態では、図3の相関テーブル70に示した対象指標D1~D6の基準係数Bを所定の基準として測定装置1の測定値の異常の有無を判定した。しかしながら、対象指標D1~D6の基準係数B以外に、例えば、全ての対象指標D1~D6の基準係数Bを包含する基準範囲を示す基準データを所定の基準として設定してもよい。
【0116】
また、上記の実施形態において、健康管理システム10が測定装置1を一つしか備えない場合であっても、測定装置1が複数の種類の生体指標を取得可能な場合には、これらの生体指標の相関性に基づいて測定装置1の測定環境の異常を判定することができる。
【0117】
また、健康管理システム10は、必ずしもサーバ30を備える必要はなく、複数の測定装置1~n同士で通信し合い、各測定装置1~nが自身の測定値が異常であるか否かを判定してもよい。この場合、図4および図5で説明した処理が各測定装置1~n内で実行されてもよい。
【0118】
また、複数の種類の生体指標を取得可能な一つの測定装置1のみで健康管理システム10が構成されていてもよい。この場合には、一つの測定装置1で取得した複数の種類の生体指標を用いて、この測定装置1内で図4および図5で説明した処理が実行されてもよい。
【0119】
また、上記で説明した対象指標は、生体指標に限られず、他の指標を含んでいてもよい。例えば、活動量計によって検出される利用者の身体活動の量を示す活動量の指標として、例えば、歩数(単位:歩)、歩行時間(単位:分)、歩行距離(単位:km)、総消費エネルギー量(単位:kcal)、活動消費エネルギー量(単位:kcal),脂肪燃焼量(単位:g)を挙げることができる。なお、総消費エネルギー量は身体活動による消費エネルギー量と基礎代謝量との和、活動消費エネルギー量は身体活動による消費エネルギー量、をそれぞれ意味する。その他にも、身体活動強度(単位:METs)、身体活動量(単位:エクササイズ、メッツ・時間)なども活動量の種別に含めてもよい。また、この活動強度は、ユーザの身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す数値であってもよい。なお、活動強度は、運動所要量・運動指針の策定検討会が、平成18年7月に策定した「健康づくりのための運動指針2006」における、「メッツ(METs)」に相当する。また、活動量は、活動強度に身体活動の実施時間を乗じた値であり、「健康づくりのための運動指針2006」における「エクササイズ」に相当する。
【符号の説明】
【0120】
1~n :測定装置
9 :ネットワーク
10 :健康管理システム
30 :サーバ
31 :制御部
32 :データ取得部
33 :推移データ生成部
34 :判定処理部
35 :相関演算部
36 :異常環境判定部
40 :記憶部
41 :測定値記憶部
42 :指標異常レベル
42 :指標異常レベル記憶部
43 :相関テーブル記憶部
60 :表示画面
61 :利用者情報
62 :期間情報
63 :測定日時
64 :測定項目
65 :測定値
66 :増減
67 :測定情報
70 :相関テーブル
B :基準係数
C :相関係数
D1 :体重
D2 :体脂肪量
H :ハイライト
M :マッチング指標
T1~T5:期間
Thm :マッチング閾値
Thw :警告閾値
α :指標異常レベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7