(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】粘着シート、医薬品包装材及び催吐成分貼り付け方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230626BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230626BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
C09J7/38
B65D65/40 D
B32B27/18 F
(21)【出願番号】P 2019150477
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-06-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年7月3日~5日に第21回インターフェックスジャパンにて展示・公開
(73)【特許権者】
【識別番号】592245535
【氏名又は名称】株式会社メタルカラー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高石 和樹
(72)【発明者】
【氏名】大▲えき▼ 凌太
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0104796(US,A1)
【文献】特開2012-062454(JP,A)
【文献】特開2019-070073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00-7/50
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離シートと、当該剥離シートの上に設けられた粘着層と、当該粘着層の上に設けられた催吐成分含有層と、当該催吐成分含有層の上に設けられ
前記粘着層を対象物に貼り合わせた後に剥離することにより除去される基材シートと、を備え
、前記催吐成分含有層は硝化綿ブチラール樹脂をバインダーとして用いている粘着シート。
【請求項2】
前記基材シートの一部は、前記催吐成分含有層の周縁からさらに外方に拡がっている、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記催吐成分含有層と前記基材シートとの間に、さらに剥離調整用粘着層を備えた、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記催吐成分含有層は、紙、不織布及び多孔性フィルムから選ばれた少なくとも1種からなるシートに催吐成分を含浸させてなる、請求項3に記載の粘着シート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の粘着シートを用いて対象物の表面に催吐成分を貼り付ける催吐成分貼り付け方法であって、
剥離シートを除去して粘着層を露出させる工程と、
露出した前記粘着層を対象物の表面に貼り合わせる工程と、
基材シートを剥がす工程と
を含み、
前記粘着層と前記対象物の表面との接着強度は、前記催吐成分含有層の破断強度よりも大きい、催吐成分貼り付け方法。
【請求項6】
医薬品を包装する医薬品包装材であって、請求項1から4のいずれか1つに記載の粘着シートを、剥離シートを除去して貼り合わせた、催吐成分が貼り付けられた医薬品包装材。
【請求項7】
前記医薬品包装材がPTP包装材である、請求項6に記載の催吐成分が貼り付けられた医薬品包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、医薬品包装材及び催吐成分貼り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、たばこや医薬品、玩具などを小児が誤飲してしまう事故が発生している。また、視力や認知能力が衰えた高齢者も医薬品を誤飲してしまう場合がある。誤飲をする物の中でも医薬品は薬理作用があり重篤な健康被害が発生した事例もあるので、誤飲を防ぐべき対象物として重要である。
【0003】
また、薬剤そのものを飲み込んでしまうことによる問題とともに、薬剤を包装しているPTP包装体が鋭利な角部を有するため、その角部によって食道が傷ついてしまうという問題も発生していた。この対策として、薬剤の包装物やおもちゃ等に苦味を付けて、誤って口の中に入れても吐き出させることが行われ、様々な技術が開示されている(例えば、特許文献1-5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-6111号公報
【文献】登録実用新案第3015632号公報
【文献】特開2012-97152号公報
【文献】特開2019-6459号公報
【文献】特開2019-1064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、包装材料そのものの表面に苦味催吐性塗膜を設けると、その包装材料を用いて薬剤等を包装する製造過程において、苦味催吐性の材料が製造用の機械に付着して、次にその機械で製造する別の製品に苦味嘔吐性の材料が混入してしまうという問題があった。また、幼児や高齢者のいない家庭では誤飲のおそれがないため、苦味催吐性塗膜を包装材表面に導入する必要がないにもかかわらず、全ての包装材料の表面に苦味催吐性の物質を設けると設けないときよりもコストがかかるため、必要な場合にだけ包装材料の表面に苦味催吐性の物質を設けるという使い分けを行う必要もある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、催吐成分を必要な部分にのみ簡単に付与することができる粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粘着シートは、剥離シートと、当該剥離シートの上に設けられた粘着層と、当該粘着層の上に設けられた催吐成分含有層と、当該催吐成分含有層の上に設けられた基材シートと、を備えた構成を有している。
【0008】
前記基材シートの一部は、前記催吐成分含有層の周縁からさらに外方に拡がっていることが好ましい。
【0009】
前記催吐成分含有層と前記基材シートとの間に、さらに剥離調整用粘着層を備えていてもよい。その場合、前記催吐成分含有層は、紙、不織布及び多孔性フィルムから選ばれた少なくとも1種からなるシートに催吐成分を含浸させてなっていてもよい。
【0010】
本発明の催吐成分貼り付け方法は、上述の粘着シートを用いて対象物の表面に催吐成分を貼り付ける催吐成分貼り付け方法であって、剥離シートを除去して粘着層を露出させる工程と、露出した前記粘着層を対象物の表面に貼り合わせる工程と、基材シートを剥がす工程とを含み、前記粘着層と前記対象物の表面との接着強度は、前記催吐成分含有層の破断強度よりも大きい構成を有している。ここで、催吐成分含有層の破断強度は、催吐成分含有層の厚み方向に平行な方向に応力をおよぼした場合の破断強度である。
【0011】
本発明の医薬品包装材は、医薬品を包装する医薬品包装材であって、上述の粘着シートを、剥離シートを除去して貼り合わせた、催吐成分が貼り付けられた構成を有している。
【0012】
前記医薬品包装材がPTP包装材であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着シート用いることにより、必要な場合に必要な部分にのみ安価に催吐成分層を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る粘着シートの構成を示す模式的な図である。
【
図2】実施形態に係る粘着シートから剥離シートを除去して対象物に貼り合わせた構成を示す模式的な図である。
【
図3】対象物に貼り合わせた実施形態に係る粘着シートから基材シートを剥離した構成を示す模式的な図である。
【
図4】別の実施形態に係る粘着シートの構成を示す模式的な図である。
【
図5】別の実施形態に係る粘着シートから剥離シートを除去して対象物に貼り合わせた構成を示す模式的な図である。
【
図6】他の実施形態に係る粘着シートの構成を示す模式的な図である。
【
図7】さらに別の実施形態に係る粘着シートの構成を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0016】
(実施形態1)
実施形態1に係る粘着シートの構成を
図1に示す。本実施形態に係る粘着シート100は、剥離シート40の上に粘着層30が設けられており、粘着層30の上に催吐成分含有層20が設けられており、さらに催吐成分含有層20の上に基材シート10が設けられている。催吐成分含有層20と基材シート10とは、比較的強固に接着している。
【0017】
[粘着シートの構成]
<基材シート>
基材シート10は、特に限定されないが、紙類やプラスチックフィルムを適宜用いることができる。紙類としては、キャストコート紙、アート紙、コート紙、上質紙、蒸着紙、合成紙などを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム等) 、ポリ塩化ビニルフィルム等を用いることができる。さらに、不織布や金属箔等を用いてもよく、これらの積層体を基材シートとして使用してもよい。なお、後述するように、基材シート10は最終的には剥離して除去するため、剥離・除去が行いやすいように30μm以上の厚みであることが好ましい。また、基材シート10の催吐成分含有層20が設けられる面とは反対側の面には文字や図柄、写真等の印刷を施すことができる。
【0018】
<粘着層>
粘着層30は、主として粘着剤からなっており、粘着剤としてはアクリル系、ウレタン系の粘着剤を好ましく使用することができる。粘着層30と貼り合わせ側の対象物との粘着強度が、基材シート10と催吐成分含有層20との接着強度よりも小さいと、基材シート10を剥離させて除去する際に、剥離のやり方によっては、催吐成分含有層20の多くが基材シート10に接着してしまい、粘着層30側に催吐成分含有層20がほとんど残らなくなってしまうおそれがある。そのため、粘着層30と貼り合わせ側の対象物との粘着強度が、基材シート10と催吐成分含有層20との接着強度よりも大きいことが好ましい。
【0019】
使用する粘着剤は、主剤を有機溶剤に溶解させた溶剤系の粘着剤であってもよいし、界面活性剤を用いて主剤を水中に乳化分散させたエマルジョン系の粘着剤であってもよい。溶剤系の粘着剤は有機溶剤が大気中に揮散して大気を汚染するため、エマルジョン系の粘着剤の方が環境負荷が少なくて好ましい。なお、粘着剤の塗布量が少ないと貼り付け対象物と粘着シートとの粘着力が小さくなってしまい、対象物に貼り付いて残る催吐成分含有層の量が少なくなるおそれがある。そのため、粘着剤の塗布量は10g/m2以上が好ましい。
【0020】
<催吐成分層>
催吐成分含有層20は、催吐性を有する催吐成分をバインダーと混合して形成される。バインダーは催吐成分が分散した塗膜を形成する。そして、基材シート10に催吐成分とバインダーとの混合物を塗布することにより、基材シート10の表面にバインダーによって催吐成分を接着させる。
【0021】
催吐成分は、苦味剤、辛味剤、酸味剤、渋味剤を用いることができる。そして、少量であれば健康に支障がない物質を催吐成分として用いる。
【0022】
苦味剤としては、例えば安息香酸デナトニウム、タンニン、カフェイン、アントシアニン、アミノ酸類、クルルビタシン、フェニルチオカルバミド、カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、カテキン類、アルカロイド類、アレカロイド類、キサンチン類、テルペン類、トリテルペノイド類、テルペン配糖体などを挙げることができる。
【0023】
辛味剤としては、カプサイシン、イソチオシアン酸エステル、シニグリンなどを挙げることができる。
【0024】
酸味剤としては、クエン酸、酒石酸、フマル酸、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸、アジピン酸などを挙げることができる。
【0025】
渋味剤としては、プロトシアニジン酸などを挙げることができる。
【0026】
以上列挙した催吐成分の中でも、催吐効果の高さという観点から、安息香酸デナトニウム、カテキン、タンニンが好ましく、さらに安息香酸デナトニウムがより好ましい。
【0027】
安息香酸デナトニウムを用いる場合、催吐成分含有層20における安息香酸デナトニウムの含有量は、催吐効果の観点から、固形分に対して10~50000ppm(質量比)であることが好ましく、20000~50000ppmであることがより好ましい。含有量が10ppmよりも少ないと、本実施形態の粘着シート100を貼り付けて催吐成分含有層20が露出している対象物を人が口に含んだ際に、人がはき出すほどには苦味を感じにくく、催吐の効果が低くなる。また、50000ppmよりも多く含有させても、催吐の効果が50000ppmの場合に比べて変わらない。
【0028】
催吐成分含有層20において、催吐成分が層の内部に集まって、表層に少なくなると催吐効果が低くなるので、催吐成分含有層20は厚みが小さい方が好ましく、そのため塗布量は0.5g/m2以上、1.5g/m2以下であることが好ましい。
【0029】
バインダーは有機系材料、無機系材料のいずれも使用することができる。有機系の材料としては、例えば、ニトロセルロース系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、エステル系、アルキッド系、オレフィン系、塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、メラミン系、フェノール系、ビニルブリラール系などの公知の樹脂を挙げることができる。無機の材料としては、例えば、シリコーン系、シリコン系、セラミック系などの公知の材料を用いることができる。
【0030】
また、水溶性樹脂をバインダーとして用いることもできる。水溶性樹脂は親水性基を有していて、水に溶解する樹脂であって、親水性基としてはヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基などがある。代表的なものとしては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドンを挙げることができる。また、コロイド分散系では、カゼインなどのタンパク質、水溶性デンプン、アルギン酸塩、カルボキシルメチルセルロースなどを挙げることができる。
【0031】
本実施形態においては、粘着シート100を対象物に貼り合わせた後に、基材シート10を剥離して除去する際に、バインダーがある程度の脆化性を有していることが好ましい。なぜならば、基材シート10と催吐成分層20とが比較的強固に接着していると、粘着シート100を安定して輸送・ハンドリングすることができるが、基材シート10を剥離時には基材シート10と催吐成分含有層20とが比較的強固に接着していて基材シート10側に催吐成分含有層20が貼り付いたまま基材シート10が剥離されるおそれがある。しかし、基材シート10を剥離する際の剥離開始時に催吐成分含有層20が破断すると、その後は基材シート10と催吐成分含有層20との界面が剥がれていくことになり、対象物の側に催吐成分含有層20が貼り付けられた状態になる。このように、基材シート10の剥離開始時に催吐成分含有層20が破断するようにするためには、粘着層30と貼り付け対象物との粘着強度が、催吐成分含有層20の破壊強度よりも大きい方が好ましい。このように脆化性を有する催吐成分含有層20とするには、バインダーは硝化綿ブチラール樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
さらには、催吐成分とバインダー以外に、必要に応じて溶剤を混合して調整し、基材シート10の上に塗布し、乾燥させて催吐成分層20を形成する。
【0033】
<剥離シート>
剥離シート40は、粘着テープ等に用いられる公知の剥離シートを用いることができる。例えば、紙に剥離剤を塗布した剥離紙や、PET等のプラスチックフィルムに剥離剤を塗布した剥離フィルムを挙げることができる。剥離剤は、粘着剤に合わせて適宜選択することができる。
【0034】
[対象物への貼り付け]
まず、本実施形態の粘着シート100から剥離シート40を剥離・除去して粘着層30を露出させる。それから、
図2に示すように露出した粘着層30を対象物90に密着させて貼り合わせる。それから
図3に示すように、基材シート10を剥離させる。こうして対象物90の表面に粘着層30によって催吐成分含有層20が粘着固定される。対象物は誤飲してしまうもの及びその包装であればどのようなものでも良いが、重篤な健康被害が生じやすい医薬品および医薬品包装体90を挙げることができる。
【0035】
(実施例1)
催吐成分として安息香酸デナトニウム、バインダーとしてブチラール樹脂、添加剤としてシリカを用い、これらを質量比で、2.43:90.29:7.28として混合した。
【0036】
希釈溶剤としてトルエンとメチルエチルケトンの1:1混合溶剤を用い、質量比で、催吐成分20.6に対し、溶剤79.4とした。
【0037】
上記の溶剤で希釈した催吐成分をバーコーターを用いて基材シートの上に、催吐成分が1.0±0.4g/m2となるように塗布して乾燥させ、催吐成分含有層を形成した。基材シートはPETフィルム(厚み12,25,38,50μm)、OPPフィルム(厚み40μm)を用いた。
【0038】
次に、催吐成分含有層の上に粘着剤を塗布して粘着層を形成した。粘着剤は、粘着剤A(アクリル系水性エマルジョン)、粘着剤B(アクリル系水性エマルジョン)の2種類を用いた。また、粘着剤の塗布量は4.5g/m2から30g/m2まで4段階とした。
【0039】
それから、粘着層の上に剥離シートを載せて、粘着シートを作製した。
【0040】
次に、作製した粘着シートから剥離シートを剥がして、医薬品包装の1種であるPTP包装のアルミ箔のオーバーコート面に粘着層を密着させて貼り合わせた。それから、基材シートをPTP包装から剥離させて催吐成分含有層をPTP包装の表面上に露出させた。このときの評価方法を以下に示す。
【0041】
A.催吐成分含有層の対象物(PTP包装)への転写具合
催吐成分含有層が全面転写している:○
催吐成分含有層が一部基材シート側に残っている:△
催吐成分含有層の大半が基材シート側に残っている:× 。
【0042】
B.粘着強度(粘着層の対象物への粘着強度)
アルミニウム箔(厚み20μm)の消し面に上記の粘着剤を上記の塗布量にて塗布し、PTP包装のアルミ箔のオーバーコート面にその粘着剤を貼り合わせた。貼り合わせた試験片を15mm幅の短冊状に切断し、JIS K6854に規定する180度剥離試験に準じて粘着強度を測定した。なお、JISでは試験片の幅は25mmであるが本測定では15mmとし、それ以外はJISと同じ方法で測定した。
【0043】
C.催吐成分含有層の破断強度
上記のように基材シートに催吐成分含有層を形成した後、催吐成分含有層にセロハンテープを貼り合わせた。そのセロハンテープをJIS K6854に規定する180度剥離試験に準じて剥離させて催吐成分含有層の破断強度を測定した。なお、JISでは試験片の幅は25mmであるが本測定では15mmとし、破断強度は破断開始時に現れる高強度のピーク値とした以外はJISと同じ方法で測定した。
【0044】
以上の評価結果を表1に示す。
【0045】
【0046】
12μm、25μmのPETフィルムを基材シートとした場合、腰がないため粘着強度が大きくなると基材シートを非常に剥離しにくくなった。そのため、12μm、25μmのPETフィルムにおいては、粘着剤塗布量を4.5g/m2よりも大きくして評価することを断念した。
【0047】
この評価においては、対象物に対する粘着強度から催吐成分層の破断強度を差し引いた差が0N/15mm以上になると、基材シートを剥離した場合に催吐成分含有層が一定の面積割合以上にて対象物表面に貼り合わされて露出している(△~○)ため、催吐効果を有していると判断した。なお、上述の差が3.0N/15mm以上になると転写具合が○の評価になるため、催吐効果の観点からはより好ましい。
【0048】
このように、対象物に対する粘着強度から催吐成分層の破断強度を差し引いた差の大きさによって転写具合が変わってくるのは、基材シートと催吐成分含有層との間の接着強度が比較的大きいため、この差が0N/15mm未満の場合は、基材シートを剥離させる際に催吐成分含有層が基材シートの側にほとんど付着して剥離されるからである。この差が0N/15mm以上になると基材シートと催吐成分含有層との間が破断して、催吐成分含有層の一部が粘着層側に付着して残るようになり、3.0N/15mm以上になれば催吐成分含有層の大半が粘着層側に付着して残る。
【0049】
なお、表1において、基材シート:OPP40μm、粘着剤A,B塗布量:20.0g/m2という条件の2つの実施例について、催吐成分の含有量を2倍にした別の実施例についても評価を行った。催吐成分の含有量を2倍にしても催吐成分含有層20の対象物への転写具合は同じであった。
【0050】
本実施形態の粘着シート100は、対象物90の任意の部分の表面に必要な面積だけ催吐成分含有層20をいつでも設けることができる。そのため、催吐成分含有層20が必要な部分にのみ催吐成分含有層20を設けることができ、無駄な催吐成分含有層20がないため、催吐成分含有層20の配置コストを下げることができる。また、対象物90の表面に初めから催吐成分含有層を塗布等によって設置すると、対象物90の製造工程や輸送工程、販売工程において対象物90の表面が接触する他の物体に、催吐成分含有層が付着してしまうという不具合が生じるが、本実施形態の粘着シート100を用いるのであれば、このような不具合は生じない。また、本実施形態の粘着シート100では、催吐成分を目的によって変更できるので、幼児用、高齢者用など適切な催吐成分を含有した催吐成分含有層20を対象物90に設けることができる。
【0051】
(実施形態2)
図4に示す実施形態2に係る粘着シート110は、基材シート10が催吐成分含有層20の外側にオーバーハングしていること以外は実施形態1の粘着シート100と同じであるので、以下の説明において実施形態1の粘着シート100と同じ部分についての説明は省略する。
【0052】
本実施形態の粘着シート110は、基材シート10が催吐成分層20の周縁21よりも外方に拡がっているオーバーハング部15を備えている。オーバーハング部15は催吐成分含有層20が塗布されていない。この構成により、剥離シート40を除去して
図5に示すように対象物90に粘着層30を貼り合わせた後、基材シート10を剥がす際にオーバーハング部15を指で摘まむことができる。従って基材シート10を剥がし始める際に力を込めやすく、剥がしやすくなる。
【0053】
(実施例2)
基材シートにオーバーハング部を設けた以外は実施例1の粘着シートと同じものを実施例2の粘着シートとして作製した。その評価結果を表2に示す。
【0054】
【0055】
基材シートを剥がしやすくなったため、転写している催吐成分含有層の面積が実施例1に比較して大きくなっている。そのため、基材として38μm厚みのPETフィルムを用い粘着剤Aを20g/m2塗布した場合、基材として50μm厚みのPETフィルムを用い粘着剤Bを10g/m2塗布した場合は、△から○に評価が向上している。
【0056】
実施形態2に係る粘着シート110は、実施形態1に係る粘着シート100の効果をそのまま備えている。
【0057】
(実施形態3)
図6に示す実施形態3に係る粘着シート120は、基材シート10と催吐成分含有層20との間に剥離調整用粘着層32を備えていること以外は実施形態2の粘着シート110と同じであるので、以下の説明において実施形態2の粘着シート110と同じ部分についての説明は省略する。
【0058】
本実施形態の粘着シート120は、基材シート10と催吐成分含有層20との間に剥離調整用粘着層32を備えており、この剥離調整用粘着層32によって基材シート10と催吐成分含有層20との間の粘着強度(実施形態1,2における催吐成分含有層20の破断強度に当たる)を調整することができる。すなわち、対象物に対する粘着強度から催吐成分層の基材シートとの粘着強度を差し引いた差が好ましくは0N/15mm以上、より好ましくは3.0N/15mm以上になるようにするために、剥離調整用粘着層32に用いる粘着剤及びその塗布量を種々検討・調整することができる。
【0059】
剥離調整用粘着層32に用いる粘着剤は、基材シート10との間の粘着強度が催吐成分含有層20との間の粘着強度よりも大きいと、基材シート10を剥離させる際に剥離調整用粘着層32が催吐成分含有層20から剥離されて基材シート10側に存在するようになるため、好ましい。
【0060】
また、剥離調整用粘着層32に用いる粘着剤はどのような粘着剤でも構わないが、健康被害が生じることを避けるために、人体に無害な粘着剤であることが好ましい。
【0061】
本実施形態の基材シート10のオーバーハング部15は、剥離調整用粘着層32に対してもその周縁よりも外方に拡がっている構成を有していて、基材シート10を剥がす際に摘まむことができるようになっている。
【0062】
実施形態3に係る粘着シート120は、実施形態2に係る粘着シート110の効果をそのまま備えている。
【0063】
(実施形態4)
図7に示す実施形態4に係る粘着シート130は、催吐成分含有層22の構成以外は実施形態3の粘着シート120と同じであるので、以下の説明において実施形態3の粘着シート120と同じ部分についての説明は省略する。
【0064】
本実施形態に係る粘着シート130の催吐成分含有層22は、紙や不織布等の保持シートに催吐成分を含浸させた構造を備えている。保持シートは、紙、不織布、多孔性プラスチックフィルム等を用いることができる。この保持シートに、催吐成分とバインダーとの混合物あるいは催吐成分のみを含浸させて催吐成分含有層22とする。催吐成分のみ、あるいは混合物は溶剤を加えて溶液として保持シートに塗布・含浸させると、催吐成分が保持シートに均一に含浸するため好ましい。保持シートは催吐成分がその表面に多く存在するようにするため、厚みは小さい方が好ましい。
【0065】
保持シートを含む催吐成分含有層22は、基材シート10との間は剥離調整用粘着層34により接着が行われており、催吐成分含有層22と剥離調整用粘着層34との粘着強度は、催吐成分含有層22と粘着層36との粘着強度よりも小さく設定されている。催吐成分含有層22の周縁23よりも外方に基材シート10が拡がっていて、オーバーハング部15が形成されている。
【0066】
本実施形態では催吐成分が保持シートの表面に多く露出しやすく、更には保持シートの表面に凹凸が存在しているので、保持シートの表面積が大きくなり、実施形態3よりも催吐成分含有層22の表面に催吐成分が多く存在することになり、催吐効果が大きくなる。実施形態3に係る粘着シート120のその他の効果を、実施形態4に係る粘着シート130は奏する。
【0067】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0068】
実施例に示した催吐成分、粘着剤、基材シート等の構成成分は、1つの例でありこれ以外の催吐成分、粘着剤、基材シートを用いてもよい。
【0069】
実施形態4において、保持シートは多層構造を備えていてもよい。例えば催吐成分が含浸する含浸層と含浸しない非含浸層との2層構造として、含浸層側を剥離調整用粘着層に接着させ、非含浸層側を粘着層に接着させるようにすると、少ない催吐成分でも催吐効果が大きくなる。
【符号の説明】
【0070】
10 基材シート
20 催吐成分含有層
21,23 催吐成分含有層の周縁
22 催吐成分含有層
30 粘着層
32,34 剥離調整用粘着層
36 粘着層
40 剥離シート
90 対象物
100 粘着シート
110 粘着シート
120 粘着シート
130 粘着シート