(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】熱ショックタンパク質のエピトープを含むワクチン及びこの用途
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20230626BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230626BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230626BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230626BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230626BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230626BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20230626BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20230626BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K48/00
C12N15/12
C07K14/47
C12M1/00 A
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2020543870
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2019001898
(87)【国際公開番号】W WO2019160383
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0019123
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0018119
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521548308
【氏名又は名称】アストン エスシーアイ. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク キョン ファ
(72)【発明者】
【氏名】カン ジン ホ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-532977(JP,A)
【文献】国際公開第2013/134116(WO,A1)
【文献】特表2015-525569(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186177(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/129379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列で表示されるエピトープ
及び配列番号2のアミノ酸配列で表示されるエピトープを含むことを特徴とする多重ペプチドワクチン。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列で表示されるエピトープをエンコードする核酸
及び配列番号2のアミノ酸配列で表示されるエピトープをエンコードする核酸を含む多重ペプチドワクチン遺伝子から製造された組み換え多重エピトープタンパク質を含むことを特徴とする請求項1に記載の多重ペプチドワクチン。
【請求項3】
配列番号1のアミノ酸配列で表示されるエピトープをエンコードする核酸
及び配列番号2のアミノ酸配列で表示されるエピトープをエンコードする核酸を含むことを特徴とする多重ペプチドワクチン遺伝子。
【請求項4】
配列番号1のアミノ酸配列で表示されるエピトープをエンコードする核酸は、配列番号3の塩基配列で表示され、
及び、配列番号2のアミノ酸配列で表示されるエピトープをエンコードする核酸は、配列番号4の塩基配列で表示されることを特徴とする請求項3に記載の多重ペプチドワクチン遺伝子。
【請求項5】
(1) 配列番号1のアミノ酸配列で表示されるエピトープ
及び配列番号2のアミノ酸配列で表示されるエピトープを含む多重ペプチドワクチン、又は、
(2) 配列番号1のアミノ酸配列で表示されるエピトープをエンコードする核酸
及び配列番号2のアミノ酸配列で表示されるエピトープをエンコードする核酸を含む多重ペプチドワクチン遺伝子と、
免疫補助剤とを含むことを特徴とするワクチン組成物。
【請求項6】
(1) 配列番号1のアミノ酸配列で表示されるエピトープ
及び配列番号2のアミノ酸配列で表示されるエピトープを含む多重ペプチドワクチン、又は、
(2) 配列番号1のアミノ酸配列で表示されるエピトープをエンコードする核酸
及び配列番号2のアミノ酸配列で表示されるエピトープをエンコードする核酸を含む多重ペプチドワクチン遺伝子を含むことを特徴とする癌予防又は治療用組成物。
【請求項7】
CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、LAG-3(Lymphocyte Activation Gene-3)、TIM-3(T-cell Immunoglobulin and Mucin-domain containing-3)、TIGIT(T-cell Immunoreptor with IG and ITIM domain)、及びVISTA(V-domain Ig Suppressor of T cell Activation)からなる群より選ばれた免疫チェックポイント阻害剤を含むことを特徴とする請求項6に記載の癌予防又は治療用組成物。
【請求項8】
更に、STINGアゴニストを含むことを特徴とする請求項6に記載の癌予防又は治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ショックタンパク質のエピトープを含むワクチン及びこの併用療法に関し、より詳しくは、配列番号1又は2のアミノ酸配列で表示される熱ショックタンパク質90のエピトープであるポリペプチド(polypeptide)、これを含むワクチン組成物、及び該当組成物を用いて癌を治療又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの疾病の治療が容易となり、治療が不可な病気はほとんどなくなっているが、癌は、他の疾病治療とは異なり、非常に大変で複雑な治療を要求しており、複雑な治療にもかかわらず、完璧で効果的ではない。最近、その対策として、免疫治療方法が台頭している。免疫治療は、患者体内の免疫反応を用いて、癌を治療する方法である。この免疫治療方法を用いて、癌の予防までも図ることができる。癌の免疫治療は、ワクチンの原理と同様に、癌の原因となる抗原を投与して、癌に特異的な免疫細胞を活性化した後、活性化された免疫細胞が体内で癌を特異的に攻撃して治療する方法である。一方、癌にかからない状態で、癌に特異的な抗原を体内に投与すると、活性化されていない免疫細胞が癌の特異的な記憶免疫細胞として活性化され、癌にかかった時、癌細胞を特異的に攻撃することになる。
【0003】
熱ショックタンパク質90(heat shock protein 90: Hsp90)は、多くの「クライアント」(client)タンパク質のタンパク質折畳み、成熟、及び立体形態の安定化のために要求されるATPase-依存型分子シャペロンである(Young et al.、2000; Kamal et al.、2003)。Hsp90は、成長因子レセプター、細胞周期調節剤、及びAktに類似した信号伝達キナーゼ、アンドロゲンレセプター(AR)、又はRaf-1を始めて、CRPCに連関する数個のタンパク質と相互作用する(Whitesell et al.、2005; Takayama et al.、2003)。腫瘍細胞は、陽性細胞に比べて、高いHsp90水準を発現し(Kamal et al.、2003; Chiosis et al.、2003)、Hsp90の阻害は、CRPC及びその他の癌でexciting targetとして生じる。多くのHsp90阻害剤は、ゲルダナマイシン及びその類似体、又は合成化合物などのような天然化合物を始めとして、そのATP-結合ポケットをターゲット化して発達した。これらの製剤は、Hsp90機能を阻害して、結腸、乳房、PCa、及びその他癌の前臨床研究で、アポトーシスを誘発することと見出された(Kamal et al.、2003; Solit et al.、2003; Solit et al.、2002)。
【0004】
近年、自家腫瘍細胞由来のgp96 HSPペプチド複合体を含むHSPPC-96(Oncophage(商標)、Antigenics、Inc.、New York、NY、USA)が、4期転移性腎臓癌患者において、IL-2と併合治療されると、優れた治療効果を示し、4期黒色腫患者において、従来の治療法と比較した3相臨床試験で生存期間の延長効果はないが、安全性、効果的な免疫反応誘導、及び長期間の免疫記憶現象などが報告されている。しかし、自家腫瘍細胞由来であるので、腫瘍細胞の獲得が困難な患者においては適用不可であり、ワクチンの製造コストが高く、製造工程及び効果に対する標準化が難しいため、商業化し難く、腫瘍特異タンパク質のエピトープが知られていないため、免疫反応に対するモニタリングが不可であるという不都合がある。
【0005】
これに、本発明者らは、多くの患者で汎用に使用可能であり、抗腫瘍の効果に優れたワクチン組成物を見出すために鋭意努力したところ、配列番号1又は2のアミノ酸配列で表示される熱ショックタンパク質90のエピトープであるポリペプチドを含むワクチン組成物を用いると、殆どの患者で汎用に使用可能で、産業化が容易であり、抗腫瘍効果に優れることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱ショックタンパク質90のエピトープであるポリペプチドを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記ポリペプチドを有効性分として含む癌の治療又は予防のためのワクチン組成物を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記ポリペプチドを有効性分として含む抗癌組成物を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の他の目的は、前記ワクチン組成物を癌患者に投与することを含む癌を治療又は予防する方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の更に他の目的は、前記ポリペプチドを特異的に認識する抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、配列番号1又は2のアミノ酸配列で表示される熱ショックタンパク質90のエピトープであるポリペプチドを提供する。
【0012】
本発明は、更に、前記ポリペプチドをエンコードする遺伝子、前記遺伝子を含む組み換えベクター、及び前記遺伝子又は前記組み換えベクターが導入された組み換え微生物を提供する。
【0013】
また、本発明は、(a) 前記組み換え微生物を培養して、前記ポリペプチドを生成するステップと、(b) 前記生成されたポリペプチドを得るステップとを含む前記ポリペプチドの製造方法を提供する。
【0014】
更に、本発明は、前記ポリペプチドを有効性分として含む癌の治療又は予防のためのワクチン組成物、及び前記ワクチン組成物を癌患者に投与することを含む癌の治療又は予防する方法を提供する。
【0015】
なお、本発明は、配列番号1又は2のアミノ酸配列で表示される熱ショックタンパク質90のエピトープを特異的に認識する抗体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱ショックタンパク質90のエピトープを含むワクチン組成物は、多くの患者で汎用に使用可能であり、産業化が容易であり、抗腫瘍効果が顕著に優れているので、経済的に癌を予防及び治療することに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明において、コンピュータアルゴリズムプログラムを用いて、Hsp90タンパク質の抗原決定基を予測した結果である。
【
図2】
図2は、本発明のHsp90多重ペプチドワクチンの免疫原性を確認した結果である。
【
図3】
図3は、本発明のマウスモデルにおいて、Hsp90多重ペプチドワクチンの抗腫瘍効果を確認した結果である。
【
図4】
図4は、マウスモデルにおいて、HSP90多重ペプチドワクチン、STINGアゴニスト(STING agonist)、及びCTLA-4阻害剤の併合治療抗腫瘍効果を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、配列番号1又は2のアミノ酸配列で表示される熱ショックタンパク質90のエピトープポリペプチドを含むワクチン組成物がTh1免疫反応を誘導し、抗腫瘍効果に優れていることを確認した。
【0019】
そこで、本発明は、一様態において、配列番号1又は2のアミノ酸配列で表示される熱ショックタンパク質90のエピトープであるポリペプチドに関する。
【0020】
本発明において、「エピトープ」は、特定抗体により認識される抗原結合部分のアミノ酸残基セット、又はT細胞では、T細胞レセプタータンパク質及び/又は主要組織適合遺伝子複合体(Major Histocompatibility Complex、MHC)のレセプターにより認識される残基である。エピトープは、抗体、T細胞レセプター、又はHLA分子により認識される部位を形成する分子で、1次、2次、及び3次ペプチド構造又は電荷を意味する。
【0021】
本発明の一実施例においては、Hsp90フルシーケンスを5つのアルゴリズムプログラムを用いて、通常のMHC class II対立遺伝子(allele)に結合親和性が良いと予想される15-merペプチドシーケンスを12個選択した後、MHC class II対立形質に結合親和性が良く、抗腫瘍効果に優れる2つのエピトープを得た。
【0022】
本発明は、他の様態において、前記ポリペプチドをエンコードする遺伝子に関する。
【0023】
本発明において、前記遺伝子は、配列番号3又は4の塩基配列で表示されることを特徴とする。
【0024】
本発明は、他の様態において、前記遺伝子を含む組み換えベクター、及び前記遺伝子又は前記組み換えベクターが導入された組み換え微生物に関する。
【0025】
本発明は、更に他の様態において、(a) 前記組み換え微生物を培養して、前記ポリペプチドを生成するステップと、(b) 前記生成されたポリペプチドを得るステップとを含む前記ポリペプチドの製造方法に関する。
【0026】
本発明において、ベクターとは、適当な宿主細胞でターゲットタンパク質を発現するように「適合な調節配列に作動可能に連結された、前記ターゲットタンパク質を暗号化するポリニュクレオタイドの塩基配列」を含むDNA製造物をいう。前記調節配列は、転写を開始するプロモーター、このような転写を調節するための任意のオペレータ配列、適合なmRNAリボゾーム結合部位をエンコードする配列、及び転写と解読の終決を調節する配列を含むことができ、目的によって多様に製造することができる。ベクターのプロモーターは、構成的又は誘導性である。ベクターは、適当な宿主に形質転換された後、宿主ゲノムに関係なく複製又は機能し、ゲノムその自体に統合されることができる。
【0027】
本発明で用いられるベクターは、宿主細胞中で複製可能なものなら、特に限定せず、当該分野で知られている任意のベクターを利用することができる。通常使用されるベクターの例としては、天然状態又は組み換え状態のプラスミド、ファージミド、コスミド、ウイルス、及びバクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクター又はコスミドベクターとして、pWE15, M13, λMBL3, λMBL4, λIXII、λASHII、λAPII、λt10、λt11、Charon4A、及びCharon21Aが使用可能であり、プラスミドベクターとして、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系、及びpET系が使用可能である。本発明で使用可能なベクターは、特に制限されるものではなく、公知の発現ベクターを使用することができる。
【0028】
「発現調節配列(expression control sequence)」とは、特定の宿主生物で作動可能に連結されたコーディング配列の発現に必須的なDNA配列をいう。このような調節配列は、転写を行うためのプロモーター、このような転写を調節するための任意のオペレータ配列、適合なmRNAリボゾーム結合部位をコーディングする配列、及び転写及び解読の終決を調節する配列を含む。例えば、原核生物に適した調節配列は、プロモーター、任意のオペレータ配列、及びリボゾーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーがこれに含まれる。プラスミドにおいて、遺伝子の発現量に最も影響する因子は、プロモーターである。高発現用のプロモーターとして、SRαプロモーターと、サイトメガロウイルス由来のプロモーターなどが好適に用いられる。
【0029】
本発明のDNA配列を発現するために、様々な発現調節配列を全てベクターに使用することができる。有用な発現調節配列の例としては、SV40又はアデノウイルスの初期及び後期プロモーター、lacシステム、trpシステム、TAC又はTRCシステム、T3及びT7プロモーター、ファージラムダの主要オペレータ及びプロモーター領域、fdコードタンパク質の調節領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ又は他のグリコール分解酵素に対するプロモーター、前記ホスファターゼのプロモーター、例えば、Pho5、酵母アルファ-交配システムのプロモーター、及び原核細胞又は真核細胞、又はこれらのウイルスの遺伝子の発現を調節することと知られた構成と、誘導のその他配列及びこれらの各種の組合わせが含まれる。T7RNAポリメラーゼプロモーターΦ10は、大腸菌でタンパク質NSPを発現することに有用に使用可能である。
【0030】
核酸は、他の核酸配列と機能的関系で配置され、「作動可能に連結」される。これは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が調節配列に結合されるとき、遺伝子発現を可能にする方式で連結された遺伝子及び調節配列の関系である。例えば、前駆配列(pre-sequence)又は分泌リーダーに対するDNAは、ポリペプチドの分泌に参加する全タンパク質として発現される場合、ポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結されるものであり、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響する場合、コーディング配列に作動可能に連結されるものであり、又はリボゾーム結合部位は、配列の転写に影響する場合、コーディング配列に作動可能に連結されるものであり、又はリボゾーム結合部位は、翻訳を容易に行うように配置される場合、コーディング配列に作動可能に連結されるものである。一般に、「作動可能に連結された」は、連結されたDNA配列が接触することを意味し、また、分泌リーダーの場合、接触し、リーディングフレーム内に存在することを意味する。しかし、エンハンサーは、接触する必要がない。これらの配列の連結は、便利な制限酵素部位でライゲーション(連結)により行われる。このような部位が存在しない場合、通常の方法による合成オリゴヌクレオチドアダプター、又はリンカーを用いる。
【0031】
本願明細書でに使用する用語である「発現ベクター」は、通常、異種のDNA断片が挿入した組み換えキャリアであって、一般に、二重ストランドのDNA断片をいう。ここで、異種のDNAは、宿主細胞で天然的に見出さないDNAであるヘテロDNAを意味する。発現ベクターは、一旦、宿主細胞内にあると、宿主染色体DNAに関係なく複製可能であり、ベクターの数個のコピー及びその挿入した(異種)DNAが生成される。
【0032】
当該分野において周知であるように、宿主細胞で形質感染遺伝子の発現水準を高めるためには、該当遺伝子が、選択された発現宿主内で機能を発揮する転写及び解読発現調節配列に作動可能に連結されなければならない。望ましくは、発現調節配列及び該当遺伝子は、細菌選択マーカー及び複製開始点(replication origin)を共に含んでいる1つの発現ベクター内に含まれることになる。発現宿主が真核細胞の場合は、発現ベクターは、真核発現宿主内で有用な発現マーカーを更に含まなければならない。
【0033】
本発明のポリペプチドをエンコードする遺伝子を発現するため、様々な発現宿主/ベクター組み合わせが用いられる。真核宿主に適した発現ベクターには、例えば、SV40、牛乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、アデノ連関ウイルス、サイトメガロウイルス、及びレトロウイルスから由来した発現調節配列を含む。細菌宿主に利用可能な発現ベクターには、pBluescript、pGEX2T、pUCベクター、colE1、pCR1、pBR322、pMB9、及びこれらの誘導体のように、例えば、E. coliから得られる細菌性プラスミド、RP4のようにより広い宿主範囲を有するプラスミド、λgt10、λgt11、NM989のように、様々なファージラムダ(phage lambda)誘導体として例示されるファージDNA、及び「M13」と「フィラメント性単一ストランドのDNAファージ」のようなその他のDNAファージが含まれる。酵母細胞に有用な発現ベクターとしては、2μプラスミド及びその誘導体がある。昆虫細胞に有用なベクターとしては、pVL941がある。
【0034】
上述した発現ベクターにより形質転換又は形質感染された宿主細胞は、本発明の他の側面である。本願明細書における「形質転換」は、DNAを宿主に導入させて、DNAが、染色体外因子として、又は染色体の統合完成により、複製可能となることを意味する。本願明細書における「形質感染」は、任意のコーディング配列が実際に発現されるか否かによらず、発現ベクターが宿主細胞により受容されることを意味する。
【0035】
本発明の宿主細胞は、1以上のターゲットタンパク質を暗号化するポリニュクレオタイドを有するベクターが導入された組み換え微生物であるか、1以上のターゲットタンパク質を暗号化するポリニュクレオタイドが微生物に導入され、ポリニュクレオタイドが染色体に統合して、ターゲットタンパク質を発現するように形質が感染した組み換え微生物を意味する。原核又は真核の生物細胞であり得る。通常、DNAの導入効率が高く、導入されたDNAの発現効率が高い宿主が使用される。大腸菌、シュードモナス、バリラス、ストレプトマイセス、真菌、酵母のような周知の真核及び原核宿主、ツマジロクサヨトウ(SF9)のような昆虫細胞、CHO及びハツカネズミ細胞のような動物細胞、COS1、COS7、BSC1、BSC40、及びBMT10のようなアフリカミドリザル細胞、及び組織培養された人間細胞は、使用可能な宿主細胞の例である。COS細胞を用いる場合は、COS細胞でSV40ラージTアンチゲン(large T antigen)が発現されているので、SV40の複製開始点を有するプラスミドは、細胞中で、多数のコピーのエピゾームとして存在することになって、通常よりも高い発現を期待し得る。導入されたDNA配列は、宿主細胞と同じ種から得られるか、宿主細胞と異なる種であるか、又はいずれのヘテロ又はホモDNAを含むハイブリッドDNA配列である。
【0036】
全てのベクターと発現調節配列が本発明のDNA配列を発現することにおいて、いずれも、等しく機能を発揮しないことは理解されるべきである。同様に、全ての宿主が同一の発現システムについて、同じく機能を発揮しない。しかし、当業者であれば、過度な実験的な負担なく、本発明の範囲を逸脱しないままで、ベクター、発現調節配列、及び宿主より、適切に選択することができる。例えば、ベクターを選択することに当たり、宿主を考えなければならないが、これは、ベクターがその中で複製されなければならないためである。ベクターの複製数、複製数を調節する能力、及び該当ベクターによりエンコードされる他のタンパク質、例えば、抗生剤マーカーの発現も考えるべきである。発現調節配列を選定することに当たっても、各種の因子を考える。例えば、配列の相対的強度、調節可能性、及び本発明のDNA配列との相溶性など、特に、可能性のある二次構造を考える。単細胞宿主は、選択されたベクター、本発明のDNA配列によりエンコードされる産物の毒性、分泌特性、タンパク質を正確に折り畳む能力、培養及び発酵要件、本発明のDNA配列によりエンコードされる産物を宿主から精製することの容易性などの因子を考えて選択しなければならない。これらの変数の範囲内で、当業者は、本発明のDNA配列を、「発酵又は大規模の動物培養で発現」させることができる各種のベクター/発現調節配列/宿主組合わせを選ぶことができる。発現クローニングにより、NSPタンパク質のcDNAをクローニングしようとするときのスクリーニング法として、バインディング法、パンニング法、フィルムエマルジョン法などが適用される。
【0037】
本発明において、前記遺伝子を宿主細胞の染色体上に挿入する方法としては、通常的に知られている遺伝子操作方法を利用可能であり、非ウイルス伝達方法は、セル穿孔法、リポフェクション、微細注射、弾道法、ビロゾーム、リポソーム、免疫リポソーム、多価陽イオン、又は脂質: 核酸接合体、ネイキッド(naked)DNA、人工ヴィロン、及び化学物質促進のDNA流入を含む。sonoporation、例えばSonitron 2000システム(Rich-Mar)を用いた方法も、核酸の伝達に利用可能であり、他の代表的な核酸伝達システムは、Amaxa Biosystems(Cologne、Germany)、Maxcyte、Inc.(Rockville、Maryland)、及びBTX Molesular Syetem(Holliston、MA)の方法を含む。リポフェクション方法は、米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号、及び米国特許第4,897,355号に開示されており、リポフェクション試薬は、商業的に市販されており、例えば、TransfectamTM及びLipofectinTMがある。ポリヌクレオチドの効果的なレセプター認識リポフェクションに適当な陽イオン又は中性脂質は、Felgnerの脂質を含み(WO91/17424及びWO91/16024)、生体外導入を通じて細胞に、生体内導入を通じてターゲット組織に伝達することができる。免疫脂質複合体などのターゲットリポソームを含む脂質:核酸複合体の製造方法は、当該分野でよく知られている(Crystal、Science.、270:404-410, 1995; Blaese et al.、Cancer Gene Ther.、2:291-297, 1995; Behr et al.、Bioconjugate Chem.、5:382389, 1994; Remy et al.、Bioconjugate Chem.、5:647-654, 1994; Gao et al.、Gene Therapy.、2:710-722, 1995; Ahmad et al.、Cancer Res.、52:4817-4820, 1992; 米国特許第4,186,183号; 米国特許第4,217,344号; 米国特許第4,235,871号; 米国特許第4,261,975号; 米国特許第4,485,054号; 米国特許第4,501,728号; 米国特許第4,774,085号; 米国特許第4,837,028号; 米国特許第4,946,787号)。
【0038】
レトロウイルスの親和性は、外部の外被タンパク質と一体化することで変わることが有り、ターゲット細胞の種類を拡大することができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入又は感染させて、高ウイルス力価を生成するレトロウイルスベクターである。ターゲット組織によって、レトロウイルス遺伝子伝達システムが決められる。レトロウイルスベクターは、6-10kb外部配列をパッケージングするシス作用性(cis-acting)の長い末端繰返しを含む。ベクターの複製とパッケージングのために、十分な最小のシス作用性LTRは、永久的なトランスジーンの発現のために、治療遺伝子をターゲット細胞に統合して使用することができる。広く用いられるレトロウイルスベクターは、ネズミ白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫欠乏ウイルス(SIV)、人間免疫欠乏ウイルス(HIV)、及びそれらの組み合わせウイルスを含む(Buchscher et al.、J. Virol.、66:2731-2739, 1992; Johann et al.、J. Virol.、66:1635-1640 1992; Sommerfelt et al.、Virol.、176:58-59, 1990; Wilson et al.、J. Virol.、63:2374-2378, 1989; Miller et al.、J. Virol.、65:2220-2224, 1991; PCT/US94/05700)。
【0039】
シュークロースホスホリラーゼタンパク質を一時的に発現する場合は、アデノウイルス基盤システムをより多く用い、アデノウイルス系ベクターは、多くの細胞で高効率に形質導入を起こすが、細胞分裂を要しない。前記ベクターを用いると、高い力価と高い水準の発現を得ることができ、簡単なシステムで大量で生産可能である。また、アデノ付きウイルス(AAV)ベクターは、ターゲット核酸を有した細胞に形質導入することに用いられる。例えば、生体外(ex-vivo)上で、核酸とペプチドの生産、並びに生体内(in-vivo)及び生体外(ex-vivo)上で遺伝子治療に用いられ(West et al.、Virology.、160:38-47, 1987; 米国特許第4,797,368号; WO93/24641; Kotin、HumanGene Therapy.、5:793-801,1994; Muzyczka、J. Clin. Invest.、94:1351, 1994)、組み換えAAVベクターの構成は、既に知られている(米国特許第5,173,414号; Tratschin et al.、Mol. Cell. Biol.、5:3251-3260, 1985; Tratschin、et al.、Mol. Cell. Biol.、4:20722081, 1984; Hermonat & Muzyczka、PNAS.、81:6466-6470, 1984; Samulski et al.、J Virol.、63:038223828, 1989)。臨床実験では、少なくとも6つのウイルスベクターを用いた遺伝子伝達方法が用いられているが、形質導入体を生成するヘルパー細胞ラインに遺伝子を挿入することで、欠陥のあるベクターを補う接近法である。pLASNとMFG-Sは、臨床実験で使用しているレトロウイルスの例であり(Dunbar et al.、Blood.、85:3048-305, 1995; Kohn et al.、Nat. Med.、1:1017-102, 1995; Malech et al.、PNAS.、94:(22)12133-12138, 1997)、PA317/pLASNは、遺伝子治療に使用された最初の治療ベクターであって(Blaese et al.、Science.、270:475-480, 1995)、MFG-Sパッケージングベクターの形質導入の効率は、50%又はその以上を見せている(Ellem et al.、Immunol Immunother.、44(1):10-20, 1997; Dranoff et al.、Hum.Gene Ther.、1:111-2, 1997)。
【0040】
組み換えアデノ連関ウイルスベクター(rAAV)は、欠陥があり、また、非病原性である第2型パルボウイルスアデノ連関ウイルスを基にする有望な代替遺伝子伝達システムである。全てのベクターは、トランスジーン発現カセットの側面に位置するAAV 145 bp逆位末端繰返し(inverted terminal repeat)を保有したプラスミドから由来する。形質導入された細胞のゲノムへの統合に起因する効率的な遺伝子伝達及び安定したトランスジーン伝達は、前記ベクターシステムの大きなメリットである(Wagner et al.、Lancet.、351:9117-17023, 1998; Kearns et al.、Gene Ther.、9:748-55, 1996)。
【0041】
本発明は、更に他の様態において、前記ポリペプチドを有効性分として含む癌の治療又は予防のためのワクチン組成物に関する。
【0042】
本発明において、前記ワクチン組成物は、Th1免疫反応を誘導する。
【0043】
本発明において、「Th1細胞」は、遺伝子発現、タンパク質分泌、及び機能的活性側面で特定されるヘルパーT細胞リンパ球のサブセットを意味する。例えば、Th1細胞は、IL-2及びIFN-γを合成するがIL-4、IL-5、IL-10、及びIL-13は合成しないサイトカイン発現パターンを示す。Th1細胞は、様々な細胞内病原菌に対する細胞-媒介免疫反応、器官-特異的な自己免疫疾患、及び遅延性過敏反応に関与する。
【0044】
本発明において、「CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)」は、免疫調節阻害剤であって、CD152(Cluster of Differentiation 152)としても知られており、免疫チェックポイントとして作用するタンパク質レセプターであって、免疫反応を減少させる。
【0045】
本発明において、「STING(STimulator of InterferoN Gene、インターフェロン遺伝子の促進剤)」は、STINGに関する信号伝達経路を活性化し、インターフェロンを含む炎症性サイトカインの生産を誘導して、抗癌効果を示す物質を意味する。
【0046】
本発明において、前記癌は、例えば、扁平細胞癌(squamous cell cancer、例えば、上皮の扁平細胞癌)、小型細胞肺癌、非小型細胞肺癌、肺癌、腹膜癌、結腸癌、胆道腫瘍、鼻咽頭癌、喉頭癌、氣管支癌、口腔癌、骨肉腫、胆嚢癌、腎臓癌、白血病、膀胱癌、黒色腫、脳癌、神経膠腫、脳腫瘍、皮膚癌、膵臓癌、乳房癌、肝癌、骨髓癌、食道癌、大腸癌、胃癌、子宮頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、頭頸部癌、及び直腸癌からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするが、これに限定されるものではない。
【0047】
本発明のワクチン組成物は、初期癌に適用可能である。
【0048】
本発明において、「抗癌補助剤」は、抗癌剤の抗癌効果を増大させ、抗癌剤の副作用を抑制又は改善するために用いられ、抗癌剤と併用して、患者に投与可能である。
【0049】
本発明において、「予防」は、本発明のHsp90エピトープタンパク質を発現する形質転換体、又は前記形質転換体を有効性分とする組成物の投与により、前記癌を抑制又は遅延させる全ての行為を言う。
【0050】
本発明において、「治療」は、本発明のHsp90エピトープタンパク質を発現する形質転換体、又は前記形質転換体を有効性分とする組成物の投与により、前記癌又は腫瘍が不死化されず、分裂を止めるか、良くする全ての行為を言う。
【0051】
本発明において、前記組成物は、配列番号1及び/又は2のアミノ酸配列で表示される熱ショックタンパク質90のエピトープを全て含むことを特徴とする。
【0052】
本発明において、「多重ペプチドワクチン」は、上述したポリペプチドエピトープが2以上含まれているワクチンを示すために定義された用語である。
【0053】
本発明において、前記組成物は、免疫抗癌剤を更に含むことを特徴とする。
【0054】
本発明において、前記免疫抗癌剤は、CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、LAG-3(Lymphocyte Activation Gene-3)、TIM-3(T-cell Immunoglobulin and Mucin-domain containing-3)、TIGIT(T-cell Immunoreptor with IG and ITIM domain)、及びVISTA(V-domain Ig Suppressor of T cell Activation)からなる群より選ばれるいずれか1つに対する免疫チェックポイント阻害剤であり、より望ましくはCTLA-4阻害剤であるが、これに制限されない。
【0055】
本発明において、前記組成物は、抗癌補助剤を更に含むことができ、より望ましくは、前記抗癌補助剤は、STINGアゴニストであるが、これに制限されない。
【0056】
本発明において、「免疫抗癌剤」は、癌自体を攻撃する従来の抗癌剤とは異なり、人工免疫タンパク質を体内に注入して免疫体系を刺激することで、免疫細胞が選択的に癌細胞のみを攻撃するように誘導する治療薬剤であって、癌細胞が獲得した免疫抑制又は免疫回避メカニズムを克服するために、免疫体系の腫瘍認知能力又は破壊能力を回復又は強化させるメカニズムの抗癌剤である。前記免疫抗癌剤は、免疫チェックポイント阻害剤、免疫細胞治療剤、及び免疫ウイルス治療剤を含むが、これに制限されない。
【0057】
本発明において、「免疫チェックポイント阻害剤」は、一部の癌細胞が体内免疫細胞であるT細胞の免疫チェックポイントを活用しながら、免疫を回避する場合、T細胞抑制に関与する免疫チェックポイントタンパク質の活性化を遮断し、T細胞を活性化して癌細胞を攻撃する作用を働く免疫抗癌剤の一種であって、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-1阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、及びVISTA阻害剤を含むが、これに制限されない。
【0058】
エピトープペプチドをワクチン組成物に用いる場合、前記有効性分は、単独で利用されることより、薬学で許容された担体に混入した形態で用いるのが望ましい。ここで、薬学で許容された担体は、製薬分野で通常用いられる担体、賦形剤、及び希釈剤を含む。
【0059】
本発明のワクチン組成物に利用可能な薬剤学的で許容された担体は、これに制限されるものではないが、ラックトス、デックストロス、スクロース、ソルビトル、マンニトール 、ジャイリトル、エリスリトル、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油が挙げられる。
【0060】
本発明のワクチン組成物はそれぞれ、通常の方法により、散剤、顆粒剤、精製、カプセル剤、懸濁液、乳液、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤、又は滅菌注射溶液の形態で剤形化して用いられる。製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調剤される。経口投与のための固形製剤には、製剤、環剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、有効性分に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを交ぜて調剤することができる。また、単なる賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用可能である。経口のための液状製剤としては、懸濁液剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤など該当し、一般に使われる希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に、各種の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれる。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水溶性溶剤、懸濁液剤、乳剤、凍結乾燥製剤、及び坐剤が含まれる。非水溶性溶剤、懸濁液剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使われる。坐剤のメカニズムとしては、ウィテブソル(witepsol)、トゥイーン(tween)61、ココアバター、ラウリン紙、グリセロゼラチンなどが用いられる。特に、液状製剤の場合は、バクテリア捕獲フィルターなどを用いたろ過により、殺菌剤などを混入して殺菌するのが望ましい。このように殺菌された組成物は、例えば、凍結乾燥により固化することができ、使用に際して、これを無菌水又は無菌希釈液で溶解させる。
【0061】
本発明によるワクチン組成物は、牛、ネズミ、家畜、犬、人間などの哺乳動物に多様な経路で投与される。投与のあらゆる方式が予想され、例えば、経口、静脈、筋肉、皮下、腹腔内注射により投与される。
【0062】
本発明によるワクチン組成物の投与量は、動物の年齢、体重、性別、身体状態などを考えて選択される。別の副作用なく、動物に免疫保護反応の誘導に必要とする量は、免疫原として使われたエピトープ及び賦形剤の任意存在により、多様である。通常、それぞれの容量は、本発明のポリペプチドの免疫原量の滅菌溶液mlあたり、0.1乃至1000μgのタンパク質、望ましくは、0.1乃至100μgを含有する。ワクチン組成物の場合は、必要によって、初期容量についで任意に繰返した抗原刺激を行うことができる。
【0063】
本発明は、他の様態において、前記ワクチン組成物を癌患者に投与することを含む癌を治療又は予防する方法に関する。
【0064】
本発明において、前記ワクチン組成物は、免疫抗癌剤と併用して投与すること特徴とし、抗体治療剤と併用して投与することを特徴とする。
【0065】
本発明のワクチン組成物と併用して用いられる免疫抗癌剤又は抗体治療剤は、相互同時に又は時間差を置いて、順次投与可能であり、適切な時間及び周期によって選択される。
【0066】
本発明において、前記ワクチン組成物は、免疫抗癌剤と併用して投与することができる。前記免疫抗癌剤は、CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、LAG-3(Lymphocyte Activation Gene-3)、TIM-3(T-cell Immunoglobulin and Mucin-domain containing-3)、TIGIT(T-cell Immunoreptor with IG and ITIM domain)、及びVISTA(V-domain Ig Suppressor of T cell Activation)からなる群より選ばるいずれか1つに対する免疫チェックポイント阻害剤であり、より望ましくは、CTLA-4阻害剤であるが、これに制限されない。
【0067】
本発明において、前記ワクチン組成物は、抗癌補助剤を更に併用投与することができ、前記抗癌補助剤は、STINGアゴニストであるが、これに制限されない。
【0068】
また、本発明は、配列番号1及び/又は2のアミノ酸配列で表示される熱ショックタンパク質90のエピトープを含む抗癌組成物を提供する。
【0069】
前記組成物は、前記エピトープの他に、有効性分の安定化のための他の成分を含むことができる。
【0070】
本発明において、「注射」又は「投与」は、投与対象の年齢、性別、体重などによって投与量が異なり、投与経路、疾病の程度、性別、体重、年齢などによっても、ワクチンの投与量が異なる。
【0071】
コンカナバリンA(concanavalin A; 陽性対照群、Positive control)は、T細胞を活性化させるが、B細胞は活性化させない(不溶化すると、B細胞も活性化される)。また、各種の癌細胞において、正常細胞に比べて、Con Aに対する高い凝集性を示すので、癌細胞膜構造の特異性を研究する手段として用いられている。
【0072】
本発明は、他の様態において、配列番号1又は2のアミノ酸配列で表示される熱ショックタンパク質90のエピトープを特異的に認識する抗体に関する。
【0073】
本発明において、前記抗体は、単クローン又は多クローンであることを特徴とする。
【0074】
本発明において、「抗体」は、免疫系内で抗原の刺激により作られる物質であって、免疫グロブリンとも言い、特定の抗原と特異的に結合して、リンパと血液中を漂い、抗原-抗体反応を起こす。抗体が特異的抗原に対する特異性を示すことに対して、免疫グロブリンは、抗体及び抗原特異性に欠けた抗体類似物質を全て含む。後者のポリペプチドは、例えば、リンパ系では、低い水準で生産され、骨髄腫によって増加した水準で生産される。本発明では、Hsp90エピトープタンパク質の一部を含む遺伝子配列の抗原に対する抗体であり、望ましくは、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列が融合した形態の抗原に対する抗体である。
【0075】
本発明において、有効性分と結合して用いられる「治療学的に有効な量」という用語は、対象疾患を予防又は治療することに有効な量をいい、本発明の組成物の治療的に有効な量は、多くの要素、例えば、投与方法、目的部位、患者の状態などによって異なる。そこで、人体への使用に際して、投与量は、安全性及び効率性を共に考えて、適量で決められるべきである。動物実験により決定した有効量から、人間に使われる量を推定することも可能である。
【0076】
以下、実施例により、本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は、本発明を例示することに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されることと解析されないことは、当該分野で通常の知識を有する者にとって、自明である。
【0077】
実施例1: in silicoアルゴリズムを用いたHsp90 MHC class II抗原決定基の発掘
熱ショックタンパク質90において、人間で最もよくあるMHC class II対立形質(allele)に結合親和性が良いと予想される15-merペプチドシーケンスを選定するために、SYFPEITHI(Institute for Cell Biology、Heidelberg、Germany)、ProPred(Institute of Microbial Technology、Chandigarh、India)、MHC-Thread(University of Aberdeen、AFPberdeen、United Kingdom)、Average Binding matrix method、Rankpep(Harvard、Boston、MA、USA)のコンピュータアルゴリズムを用いた(
図1)。
【0078】
人間で最もよくあるMHC class II対立形質は、DRB1*0101、DRB1*1501、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0404、DRB1*0405、DRB1*0701、DRB1*0802、DRB1*0901、DRB1*1101、DRB1*1201、DRB1*1302、DRB3*0101、DRB4*0101、DRB5*0101である。
【0079】
その結果、Hsp90 15-merペプチドシーケンスを、12個獲得した(表1)。前記獲得した12個のペプチドシーケンスは、ペプチド合成会社に依頼して、ペプチドとして合成した。
【0080】
この後、配列番号1及び2のアミノ酸配列で表示される2種(p485、p527)を、多重ペプチドワクチン用シーケンスとして選択した。
【0081】
下記の表1は、選定したHsp90 15-merペプチドシーケンスを示している。
【0082】
【0083】
実施例2: マウスモデルにおいて、Hsp90多重ペプチドワクチンの免疫原性を確認
マウスモデルにおいて、Hsp90多重ペプチドワクチンの免疫原性を確認するために、FVBマウス(6~8週齢)を、各群のあたり、5匹ずつ、生理食塩水(PBS)と免疫補助剤(CFA/IFA)群、又はHsp90ペプチドと免疫補助剤の群に分け、10日毎に3回ずつ、マウスなどに皮下注射で投与し、最後の投与から10日後、マウスの脾臓を摘出して脾細胞を分離し、インターフェロンガンマ(IFNγ)-固着化酵素抗体法(Eezyme Linked Immuno-SPOT assay、ELISPOT)を用いて、Hsp90多重ペプチド特異T細胞反応を観察した。
【0084】
マウス脾細胞の準備及び凍結に際して、機械装置及び物質は、下記表2の通りである。
【0085】
【0086】
マウスT細胞バッジ(Mouse T Cell Media)は、500mL RPMI-1640(L-Glut + Hepes)[Mediatech Cellgro]、5mLペニシリン-ストレプトマイシン溶液[Mediatech Cellgro、 #30-002-CI]、50mLの熱により不活性化されたウシ胎児血清[SAFC Biosciences、確認された場合、他のものも使用可能]、0.5mL 1000X 2-メルカブトエタンオル[GIBCO、 #21985]を用い、プラスチックウェアでフィルタリングした。凍結バッジは、45ml熱非働化(heat-inactivated)FBS及び5ml DMSOを含み、フィルタリング後、4℃条件で保管した。ACK溶解バッファー(Lysis Buffer)(RBC solution)は、1L ddH2O、8.29g NH4Cl(最終150mM)、及び1g KHCO3(最終濃度10mM)を含み、pH7.2-7.4であり、フィルタリングした。
【0087】
滅菌技術は、アッセイ(assay)の各ステップ毎に使用した。全ての実験者は、組織培養フード(tissue culture hood)で行っており、20個を超える脾細胞を準備すべきであるとしたら、9-12ステップはスキップした。
【0088】
摘出した脾臓から脾細胞を分離する方法は、Mouse T cellバッジを50mlチューブに適量取って、37℃の恒温槽で加熱した後、p100 dishに3mlのバッジと新鮮な脾臓だけを残し、捨てた。以後、脾臓を刃を用いて細く切る。50mlチューブにセルストレーナーを挟み、細かく切られた脾臓とバッジを入れた。1.5mlチューブの端に脾臓をセルストレーナー上でグラインドした後、10mlのwarm T cell mediaでセルストレーナーに分周して細胞をフィルタリングした。また、p100 dishの細胞も得た。以後、遠心分離機を用いて、1200rpmの条件で8分間、遠心分離を行った。上層液は除去した後、10mlのwarm Mouse T cell mediaを添加し、ペレット(pellet)を再懸濁(resuspend)した。以後、遠心分離機を用いて、1200rpmの条件で8分間遠心分離した後、上層液を除去した。 ACK Lysis Bufferの5mlでサスペンドした後に、5分間、培養を行った。以後、Mouse T cell mediaの10mlを添加し、遠心分離機を用いて、1200rpmの条件で8分間、遠心分離し、上層液を最大限で完全に除去した。その後、warm mouse matis mediaの10mlを添加し、15ulは新たなチューブに移して、細胞計数(cell counting)を行った。遠心分離機を用いて、1200rpmの条件で8分間遠心分離し、上層液を除去した。
【0089】
同日付で脾細胞を用いる場合、細胞に所望する濃度に合わせてバッジを入れた後、懸濁した。脾細胞を凍結する場合、2mlのfreeeze mediaを入れ、再懸濁した後、2つのチューブに1mlずつアリコート(aliquot)した。その後、-80度の冷凍庫で一晩保管した後、翌日、LN2に移した。
【0090】
インターフェロンガンマ(IFNγ)-固着化酵素抗体法(EezymeLinked Immuno-SPOT assay、ELISPOT)を行う場合、機械装置及び物質は、下記の表3の通りである。
【0091】
【0092】
Mouse T Cell Mediaは、前記と同じものを用いた。
【0093】
(Day 0)に、Prewet MAIPS 96-ウェルプレートで35%エタノールの30ulを1分培養した後、1xPBSの200ulを分周し、3回洗浄した(Ultra purewaterとエタノールは、Merckを用いて35%エタノールを製造し、PBSは、1xPBSを購入して用いた)。抗マウスIFNγ抗体(1mg/ml、stored at 4℃、green cap)を、1xPBSを用いて、10ug/mlで希釈した(10ul/ml)。製造した溶液を、それぞれのウェルに50ulずつ分周した。96-ウェルプレートあたり、5mlの量が必要である。プレートの蓋体を閉じ、ラップで覆った後、4℃の条件で16~24時間、培養した(この時、必ず、ラップを覆わなければならない)。
【0094】
(Day 1)に、プレートを取り出した後、マルチチャンネル・ピペットを用いて、抗体を除去した。1xPBS の200ulずつ分周し、3回洗浄した。最後の洗浄において、プレートに膜を損傷することなく、PBSを完全に除去した。Mouse T cell mediaの200ulを、それぞれのウェルに分周し、ブロッキングした。37℃のインキュベーターで2時間培養した後、プレートの蓋体と内側にラベルを付けた。
【0095】
サンプル・プレート・レイアウト:
ウェルA1-A6(No Antigen)=100uL cells + 100uL Mouse T-cell Media
ウェルA7-A12(Nonspecific peptide)=100uL cells + 100uL 2X HIV p17
ウェルB1-B6(Positive Control)=100uL cells + 100uL 2X Conclavin A
ウェルB7-B12(Vaccine Peptide)=100uL cells + 100uL 2X Peptide
(Continuing for each mouse or pool of cells)
ペプチドの濃度を、mouse T cell mediaで2倍とした後、ウェルあたり、100ulずつ分周できるようにし、n+1個に作った(表4)。
【0096】
【0097】
以後、ブロッキングバッジ(blocking media)を除去し、前記製造した抗原サンプルを互いに適したウェルに100ulずつ分周した。凍結又は新鮮な脾細胞をアッセイ(assay)に用いた。脾細胞の分離方法は、前記SOP IV-101(Mouse Splenocyte Preparation and Freezing protocol)を参考して実験を行った。Mouse T cell mediaで、mlあたり、3.0×106~3.5×106の最終濃度で再懸濁した。マルチチャンネル・ピペットを用いて、計数細胞をウェルあたり、100ul(3.0×105~3.5×105)ずつ分周した。但し、no antigenウェルは、mouse T-cell mediaの100ulずつ分周した。37℃のインキュベーターで70~72時間の間、培養した。細胞が反応すると、バッジ色が濃い黄色に変わることを確認した(Day 1 end)。
【0098】
(Day 4)には、70-72時間の間、培養した後、37℃のインキュベーターから取出して、プレートのバッジを、マルチチャンネル・ピペットで除去した。1xPBSの200ulずつ、2回洗浄し、1x PBS+0.05% tween-20の200ulずつ、3回洗浄した。但し、最後の洗浄において、1xPBS+0.05% tween-20を完全に除去した。
【0099】
ビオチン化した抗-マウスIFNγ抗体(1mg/ml、stored at 4℃、yellow cap)を、1xPBS+0.05% tween-20を用いて、5ug/mlに希釈した(5ul/ml)。製造した溶液を、各ウェルに50ulずつ分周した。96-ウェルプレートあたり、5mlの量が必要である。プレートの蓋体を閉じて、ラップで覆った後、4℃の条件で16~24時間の間、培養した(必ず、ラップを覆わなければならない)(Day 4 end)。
【0100】
(Day 5)には、培養後のプレートのバッジを、マルチチャンネル・ピペットで除去した。1xPBSの200ulずつ分周し、4回洗浄した。最後の洗浄に際して、プレートにおいて膜(membrane)を損傷することなく、PBSを完全に除去した。1xPBSにおいて、ストレプトアビジン-HRPを1:250希釈(4ul/ml)した。製造した溶液を各ウェルに50ulずつ分周した。96-ウェルプレートあたり、5mlの量が必要である。プレートの蓋体を閉じ、ラップで覆った後、常温で60分間、培養した(HRP反応の間、ABC kitを常温に取出しておく)。
【0101】
培養後、プレートのバッジを、マルチチャンネル・ピペットで除去した。1x PBS の200ulずつ分周し、4回洗浄した。最後の洗浄に際して、プレートにおいて膜を損傷することなく、PBSを完全に除去した。プレートの下部を分離し、PBSの水気をティッシュで除去した。
【0102】
ABC kit 発色溶液(ボトル1mlに小液滴混合)の50ulずつ各ウェルに分周した。96-ウェルプレートあたり、5mlの量が必要である。positive control wellsの色を確認した。Development時間は、45分を超えない。通常は、5~10分の間にスポットが見えるが、スポットが見えないと、20~30分まで延ばす。stop reactionは、流れる冷たい水道水で洗浄した。暗い所で常温で自然に乾燥させた(この時、Stopがlight-sensitiveして、光に露出しないようにする)。
【0103】
その結果、FVBマウスモデルのHSP90ペプチド反応において、Hsp90多重ペプチドワクチン群が、対照群と比較して、インターフェロンガンマ(IFN-γ)の分泌による特異反応性が高く現れることを確認した(
図2)。
【0104】
実施例3: マウスモデルでHSP90多重ペプチドワクチンの抗腫瘍効果の確認
抗腫瘍効果を確認するために、マウス乳房癌細胞株(mouse mamary cancer cell-FVB/N-Tg(MMTVneu)-202Mulマウス由来HER-2過発現乳房癌細胞株)を用いた。MMTVneu形質転換マウス雌6週齢を、各群あたり10匹ずつ、生理食塩水/免疫補助剤群と、HSP90ペプチド/免疫補助剤群とに分け、10日毎に3回ずつ皮下注射を投与し、最後の投与から10日後に、マウス乳房癌細胞株をマウスの脇に皮下注射して接種し、腫瘍の成長を3~4日間隔で観察し、腫瘍のサイズを測定して、HSP90多重ペプチドワクチンの抗腫瘍効果を確認した。実験方法は、実施例2と同様である。
【0105】
実験結果、マウスモデルにおける対照群と比較して、Hsp90多重ペプチドワクチン群の腫瘍サイズが顕著に小さくなることを確認した(
図3a)。また、HSP90ペプチド反応において、HSP90多重ペプチドワクチン群が、対照群と比較して、インターフェロンガンマ(IFN-γ)の分泌による特異反応性が高く現れることを確認した(
図3b)。
【0106】
そこで、本発明のHsp90多重ペプチドワクチン組成物は、免疫原性を示し、抗腫瘍効果に優れていることが分かる。
【0107】
実施例4: マウスモデルにおいて、HSP90多重ペプチドワクチン/STINGアゴニスト/免疫調節阻害剤(CTLA-4阻害剤)の併用投与の抗腫瘍効果の確認
4.1 腫瘍形成及び抗腫瘍測定
6週齢の雌MMTVneu形質転換マウスの脇へマウス由来の乳房癌細胞5×105個を皮下注射した。10日後、1つの対照群(PBS+免疫補助剤; Complete Freund’s Adjuvant、Incomplete Freund’s Adjuvant)、4つの実験群として、1群のHSP90多重ペプチドワクチン群(HSP90ワクチン+ 免疫補助剤)、2群(HSP90ワクチン+CTLA-4阻害剤; HSP90ワクチン+CTLA-4阻害剤+免疫補助剤)、3群(STINGアゴニスト+CTLA-4阻害剤; STINGアゴニスト+CTLA-4阻害剤+免疫補助剤)、4群(HSP90ワクチン+STINGアゴニスト+CTLA-4阻害剤)を、10日間隔で注射した。HSP90ワクチン及びSTINGアゴニスト(DMXAA、5,6-dimethylxanthenone-4-acetic acid、Invivogen製)は、3回、皮下注射及び腹腔注射し、anti-mouse CTLA-4(CD152, Bioxcell製)は、週2回ずつ、実験が終わるまで、腹腔注射を行った。実験期間中、腫瘍の成長を3~4日間隔で測定した。最後の投与の10日後、マウスの脾臓を摘出して、脾細胞を分離し、インターフェロンガンマ(IFNγ)-固着化酵素抗体法(EezymeLinked Immuno-SPOT assay、ELISPOT)を用いて、HSP90多重ペプチドの特異のT細胞反応を確認した。マウス脾細胞の準備及び凍結、ELISPOT実験方法は、実施例2と同様に行った。
【0108】
4.2.HSP90多重ペプチドワクチン効果の生物学的標識者の測定
HSP90多重ペプチドワクチン効果の生物学的標識者として、血中HER2 ECD(Human Epidermal growth factor Receptor type2 ExtraCellular Domain)における変化を、酵素免疫測定法(EezymeLinked Immunosorbent assay、ELISA)により分析した。具体的な分析方法は、以下の通りである。
【0109】
イ.実験材料
a. 炭酸塩緩衝液 : 1リットルのビーカーに、0.8gのNa2CO3と1.47gのNAHCO3を入れ、1次蒸溜水の400mlを入れて溶解させた後、pH9.6に調整し、1次蒸溜水を500mlまで満たす。フィルタリング後、4℃で保管した。
【0110】
b. 希釈緩衝液(1X PBS/1% BSA): 10gのBSAを10x PBSに100ml入れ、溶けると、1リットルのボリュームまで1次蒸溜水を追加した。フィルタリングの後に、4℃で保管した。
【0111】
c.ブロッキング緩衝液(1X PBS/5% BSA):50gのBSAを10xPBSに100ml入れ、溶けると、1リットルのボリュームまで1次蒸溜水を追加した。フィルタリング後に、4℃で保管した。
【0112】
d. 洗浄緩衝液(1xPBS / 0.1% Tween-20): 100ml 10xPBS、1ml Tween-20、及び1次蒸溜水899mlを混合して製造した。
【0113】
e.2次抗体 : Goat anti-mouse IgG(H+L)HRP2次抗体は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(cat# 62-6520、容量1ml)から購入した。4℃で保管し、使用時に洗浄緩衝液を用いて、1:10000に希釈した。
【0114】
f.マウスIgG標準抗体: マウスIgG標準抗体は、Sigma社(cat# I-4506)から購入した。購入後、抗体は、150mM NaClを希釈緩衝液として用いて、最終濃度2mg/mlに作って、-20℃で保管した。
【0115】
g. TMB溶液:TMB溶液は、Sigma社(cat# T0440)から購入した後、4℃で保管した。
【0116】
h. 1N HCl反応停止液: 1次蒸溜水の481.8mlに、38%HClの18.2mlを少しずつ添加して、ストック溶液を製造し、常温で保管した。
【0117】
ロ.実験方法及び結果
下記のステップを経て、ELISA実験を行った。ステップ1及びステップ2は、氷条件で行った。
【0118】
【化1】
炭酸塩緩衝液を、Aチューブには2.5ml、残りのチューブには1mlずつ分周する。そして、Aチューブに、マウスIgGストック溶液(2mg/ml)の10ulを添加する。また、ボルテックシングを行い、Aチューブから1mlをBチューブに移し(1:1 dilution)、B→C、C→Dの順に、Lまで1:1で希釈を行った(ステップ1)。
【0119】
新鮮な炭酸塩緩衝液を用いて、1ug/ml濃度で、HSP90組み換えタンパク質を製造した。前記HSP90組み換えタンパク質は、Coat column #1~#10にwellあたり、50ulずつ分周した。Column#11には、炭酸塩緩衝液だけを分周し、マイクロシールでプレートを覆った後、4℃で一晩、抗原-抗体反応を行った(ステップ2)。
【0120】
200ulの洗浄バッファーを用いて、3回洗浄を行い、3回洗浄時には、プレートをペーパータオルで揺らして、洗浄バッファーを完全に除去した(ステップ3)。ついで、ブロッキング溶液をウェルあたり100ulずつ分周し、常温で1~2時間の間、反応させた(ステップ4)。前記ステップ3と同様な洗浄を行った(ステップ5)。新たな1.5mlチューブで、希釈バッファーと血清を1:1の割合で混合し、ボルテックシング後、それぞれのウェルに50ulずつ分周した(ステップ6)。プレートコラム#11及び#12に希釈バッファーの50ulを分周した(ステップ7)。マイクロシールを用いてプレートを覆った後、4℃で一晩反応させた(ステップ8)。前記ステップ3と同様な洗浄を行った(ステップ9)。HRP結合抗体を、希釈バッファーを用いて1:10000で希釈し、ウェルあたり、50ulずつ分周した後、常温で45分間撹拌しながら反応させた(ステップ10)。前記ステップ3と同様な洗浄を行った(ステップ11)。TMB溶液を常温に取出し、準備してから、TMB溶液を各ウェルあたり、100ulずつ分周し、光のない常温で20分間反応させた(ステップ12)。反応停止液をそれぞれ、ウェルあたり、50ulずつ分周した(ステップ13)。マイクロプレートリーダー機器を用いて、450nmで蛍光強さを測定した(ステップ14)。
【0121】
HSP90多重ペプチドワクチンの投与後、HER2 ECDの血中濃度における変化を、酵素免疫測定法(EezymeLinked Immunosorbent assay、ELISA)で測定した結果、本発明によるHSP90ワクチンを用いた結果は、HER2 ECDで低く測定された。
【0122】
4.3 HSP90多重ペプチドワクチンの併用投与による効果
実験の結果、マウスモデルにおいて、対照群、1群(HSP90多重ペプチドワクチン群)、2群(HPS90多重ペプチドワクチン+CTLA-4阻害剤)、及び3群(STINGアゴニスト+CTLA-4阻害剤)と比較して、4群(HSP90多重ペプチドワクチン+STINGアゴニスト+CTLA-4阻害剤)は、併合治療する場合、腫瘍のサイズが顕著に減少することを確認した(
図4a)。また、対照群に比べて、全ての実験群において、HER2-ECD反応性が減少することを確認した(
図4b)。HSP90ペプチド反応は、4群(HSP90多重ペプチドワクチン+STINGアゴニスト+CTLA-4阻害剤)において、インターフェロンガンマ(IFN-γ)の分泌により、更なる特異反応性を現わしている(
図4c)。これにより、本発明のHSP90ペプチドワクチンを、STINGアゴニスト/CTLA-4阻害剤と併合治療することで、HSP90ペプチドワクチンの効果が増加又は減少するので、HSP90ペプチドをワクチンとして使用可能であることが分かる。
【0123】
以上で本発明内容の特定部分を詳しく述べているところ、当該分野における通常の知識を有する者であれば、このような具体的な記述は、単に好適な実施様態であるだけで、これにより本発明の範囲が制限されるものではないことは、明らかである。そこで、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されると言える。
【配列表】