(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】杭を形成するための道具及び方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/44 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
E02D5/44 B
(21)【出願番号】P 2020550686
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 AU2019050359
(87)【国際公開番号】W WO2019204866
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】520357866
【氏名又は名称】ピーピーエックス テクノロジー ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PPX TECHNOLOGY PTY LTD
【住所又は居所原語表記】34 Osanna Street Daisy Hill, Queensland 4127, Australia
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】ザクシェフスキ, プシェミスワフ アダム
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00517329(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02685006(EP,A2)
【文献】欧州特許出願公開第00853162(EP,A2)
【文献】独国特許出願公開第19935813(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/44
E02D 7/22
E02D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡底部を有する地下現場打ち杭を形成するための道具であって、
その下端側に第1の底部形成部材を有する第1の杭形成部材と、
その下端側に第2の底部形成部材を有する第2の杭形成部材
と、ここで、前記
第1及び第2の杭形成部材は、共線的に延在し、且つ、
前記
第1及び第2の底部形成部材が互いに対して近接しており、その結果
、前記第1及び第2の底部形成部材が前記道具の先端螺旋体であり、そのようにして、前記
第1及び第2の杭形成部材が
第一径を有する地下の延長する孔を形成するために地下に駆動され得る、掘削状態と、
前記延長する孔の深さで、前記第1の底部形成部材と前記第2の底部形成部材との間に地下空隙を形成するように
長手方向に沿って前記
第1及び第2の底部形成部材が互いから離間しており、
前記第一径より大きな第二径を有する前記
地下空隙は、前記地下現場打ち杭の前記拡底部を形成するように流動式充填材で充填可能である、底部形成状態と、の間を互いに対して
前記長手方向に移動可能であ
り、
ジャッキねじ手段
と、を備え、ここで前記ジャッキ手段ねじの回転が前記
第1及び第2の杭形成部材間で長手方向の移動を生じさせ
る、道具。
【請求項2】
前記ジャッキねじ手段は、前記第1の杭形成部材と螺合して、その結果、前記ジャッキねじ手段が一方向に回転すると、前記
第1及び第2の杭形成部材は前記掘削状態に移動し、前記ジャッキねじ手段が反対方向に回転すると、前記
第1及び第2の杭形成部材は前記底部形成状態に移動する、請求項1に記載の道具。
【請求項3】
前記ジャッキねじ手段及び前記第2の杭形成部材は、互いに対して回転可能であるが、長手方向に移動可能でない、請求項2に記載の道具。
【請求項4】
前記第2の杭形成部材はカラーを備え、前記カラーを介して前記ジャッキねじ手段が固定されて、
前記第2の杭形成部材及び前記ジャッキねじ手段の間の長手方向の移動を制限し、また前記ジャッキねじ
手段と前記第2の杭形成部材との間にスラスト軸受が配設されて、これらの間の相対的な回転を可能にする、請求項3に記載の道具。
【請求項5】
前記
第1及び第2の底部形成部材が互いに離間され得る
前記長手方向の最大距離を限定するための限定手段を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の道具。
【請求項6】
前記限定手段は前記ジャッキねじ手段から延在するカラーを備え、前記
第1及び第2の杭形成部材が前記底部形成状態に移動すると、前記第1の杭形成部材は前記カラーと係合し、それによって前記
第1及び第2の杭形成部材間の長手方向の移動を限定し、それにより、前記
第1及び第2の底部形成部材間の間隙が更に増加される、請求項5に記載の道具。
【請求項7】
前記
第1及び第2の杭形成部材は、
前記第1及び第2の杭形成部材の一
方が、
前記第1及び第2の杭形成部材のもう一
方から独立して回転することができないように、入れ子式に伸縮自在に配置及び構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の道具。
【請求項8】
前記第1の杭形成部材は第1のねじ杭であり、
前記第2の杭形成部材は第2のねじ杭であり、
前記第1の底部形成部材は第1の螺旋体であり、
前記第2の底部形成部材は第2の螺旋体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の道具。
【請求項9】
前記第1の杭形成部材は第1の羽根杭であり、
前記第2の杭形成部材は第2の羽根杭であり、
前記第1の底部形成部材は第1の羽根であり、
前記第2の底部形成部材は第2の羽根である、請求項1~7のいずれか一項に記載の道具。
【請求項10】
シャフト及び拡底部を有する地下現場打ち杭を形成する方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の道具を使用し、また、
(a)前記
第1及び第2の杭形成部材が前記掘削状態にあるとき、前記
第1及び第2の杭形成部材を
前記延長する孔を形成するために地下の所定の深さまで駆動する工程と、
(b)前記
第1及び第2の杭形成部材を前記底部形成状態に向けて移動させて、
前記延長する孔の深さで、流動式充填材が供給され得る地下空隙を形成する工程と、
(c)前記
第1及び第2の杭形成部材を前記底部形成状態に向けて移動させる間に、前記流動式充填材を前記
地下空隙に供給して、前記地下現場打ち杭の前記拡底部を形成する工程と、
(d)前記流動式充填材を地下に供給して前記
地下現場打ち杭の前記シャフトを形成する間に、前記
第1及び第2の杭形成部材を地上へと駆動する工程と、を含む、方法。
【請求項11】
工程(b)は、
(i)前記
第1及び第2の杭形成部材を前記底部形成状態に向けて移動させる間に、前記
第1及び第2の杭形成部材を前記底部形成状態に向けて移動させるのに必要な力の規模を決定する工程と、
(ii)前記決定された力の前記規模が閾値量を下回る場合、前記決定された力の前記規模が前記閾値量以上となるまで、より深い地下深さで工程(a)及び(b)を繰り返す工程と、
(iii)前記決定された力の前記規模が前記閾値量以上である場合、前記流動式充填材を前記
地下空隙に供給して前記拡底部を形成する間に、前記
第1及び第2の杭形成部材を前記底部形成状態に向けて移動させることを継続する、工程と、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記力は、前記
第1及び第2の杭形成部材を前記底部形成状態に向けて移動させるため
に構成された前記道具のジャッキねじ手段に印加されるトルク力に関連する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記力は、一方又は両方の前記
第1及び第2の杭形成部材によって支えられる軸方向力に関連する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場打ち基礎杭を形成するための道具に関する。 本発明はまた、上記の道具を用いた現場打ち基礎杭を形成するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭を構築するコストは、とりわけ、杭を構築するのに必要な材料の量に応じて変わる。必要な材料の量を低減するための2つの慣例は、(1)拡底部を備える杭を構築すること、及び(2)杭底部にプレロードを付与することである。
【0003】
拡底部を備える基礎杭は、拡底部を備えていない基礎杭と比較して、同様又は更にはより少ない材料(コンクリート又はグラウトなどの材料)を用いながら、同様又はより高い荷重及び/又は引き抜き能力を達成することができる。
【0004】
拡底部を備える基礎杭を構築するための既存の道具及び方法は、典型的には、その底部に球根部を形成するために杭シャフトのアンダーリーミングを必要とする。こうした道具及び方法は、しばしば、鋼製ケーシングなどの形態の一時的孔支持体及びいくつかの異なる道具の使用を必要とする。
【0005】
杭の底部にプレロードを付与する(又はプレストレスを付与する)ことで、基礎杭を実際に使用する前に沈下を生じさせることにより、杭の性能を改善することができる。 これにより、材料の使用量、掘削深さ、及び/又は杭直径をより良好に情報提供することができる。
【0006】
しかしながら、杭底部にプレロードを付与するための既存の方法は、典型的には、高圧下でのグラウト、及び様々なタイプの膨張式スリーブ又はバッグの使用を必要とする。 圧力グラウチングを用いて杭底部にプレロードを付与するには、中空部分又はグラウト管及び膨張本体が地下空隙内に予め設置されていなくてはならない。 更に、圧力グラウチングが実施され得る前に、杭シャフトが形成されて、十分な強度を有していなくてはならず、また、用地への二次的な動員が必要となる場合が多い。
【0007】
拡底部を備える杭を形成するため、及び杭にプレロードを付与するための既存の道具及び方法は、比較的多大な時間、労力、及び材料を必要とし、従って高コストになり得る。
【0008】
更に、既存の杭打ち道具及び方法を用いて基礎杭の実際の耐荷重能力を決定することは困難である場合がある。そのため、基礎杭は、3つ以上の設計安全性係数を備えて過剰性能となる場合が多い。このため、杭打ち請負業者が、実際に必要であるよりも深く掘削し、またより広い且つ/又は深い基礎杭を設置して、それにより材料及び労務コストが増加する結果がもたらされる。
【0009】
既存の杭打ち道具及び/又は方法に伴う1つ以上の問題を克服又は軽減すること、或いは少なくとも有用な代替手段を提供することが所望される。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、拡底部を有する地下現場打ち杭を形成するための道具であって、その下端側に第1の底部形成部材を有する第1の杭形成部材と、その下端側に第2の底部形成部材を有する第2の杭形成部材と、ここで、第1及び第2の杭形成部材は、共線的に延在し、且つ、第1及び第2の底部形成部材が互いに対して近接しており、その結果、第1及び第2の底部形成部材が道具の先端螺旋体であり、そのようにして、第1及び第2の杭形成部材が第一径を有する地下の延長する孔を形成するために地下に駆動され得る、掘削状態と、延長する孔の深さで、第1の底部形成部材と第2の底部形成部材との間に地下空隙を形成するように長手方向に沿って第1及び第2の底部形成部材が互いから離間しており、第一径より大きな第二径を有する地下空隙は、地下現場打ち杭の拡底部を形成するように流動式充填材で充填可能である、底部形成状態と、の間を互いに対して長手方向に移動可能であり、ジャッキねじ手段と、を備え、ここでジャッキ手段ねじの回転が第1及び第2の杭形成部材間で長手方向の移動を生じさせる、道具が提供される。掘削状態においては、底部形成部材は互いに物理的に係合することができ、杭形成部材は地中へと下向きに駆動され得る。所定の深さまで掘削されると、ジャッキねじ手段は、底部形成部材が互いから長手方向に分離されるように回転され得る。底部形成部材のこの分離によって、地下に底部形成部材の直径に近似する直径を有する名目上の空隙が形成される。この名目上の空隙は、空隙が生み出され、その結果地下現場打ち杭の拡底部が形成されると、モルタル、コンクリート、又はグラウトなどの流動式充填材で徐々に充填され得る。
【0011】
本発明の実施形態では、ジャッキねじ手段は、第1の杭形成部材と螺合して、その結果、ジャッキねじ手段が一方向に回転すると、第1及び第2の杭形成部材は掘削状態に移動し、ジャッキねじ手段が反対方向に回転すると、第1及び第2の杭形成部材は底部形成状態に移動する。 杭形成部材を互いに対して移動させるためのパワースクリュー機構は、操作が単純であり、また、ジャッキねじ手段を駆動するの用いられ得る回転ヘッドに既に装備されている場合の多い既存の掘削機及び杭打ちリグに取り付けられ、且つこれらによって用いられることが可能である。
【0012】
本発明の実施形態では、ジャッキねじ手段及び第2の杭形成部材は、互いに対して回転可能であるが、長手方向に移動可能でない。この目的のために、第2の杭形成部材はカラーを備え、カラーを介してジャッキねじ手段が固定されて、第2の杭形成部材及びジャッキねじ手段の間の長手方向の移動を制限し、またジャッキねじ手段と第2の杭形成部材との間にスラスト軸受が配設されて、これらの間の相対的な回転を可能にすることができる。 このようにして、底部形成部材を底部形成状態に向けて駆動する方向にジャッキねじが回転すると、一方の杭形成部材が地中により深く駆動されるか、又はもう一方の杭形成部材が持ち上げられるかのいずれかの結果がもたらされるが、これは前者又は後者の移動のどちらがより小さいトルクを必要とするかに応じて変わる。これは、杭形成部材が入った土地の組成に影響を受けることになる。
【0013】
本発明の実施形態では、道具は更に、第1及び第2の底部形成部材が互いに離間され得る長手方向の最大距離を限定するための限定手段を更に備える。限定手段は、ジャッキねじ手段から延在するカラーの形態を取ってもよい。このようにして、杭形成部材が底部形成状態に移動すると、第1の杭形成部材がカラーと接触させられてこれと係合し、それによって杭形成部材間の更なる長手方向の移動を制限し、それにより、底部形成部材間の間隙が更に増加される。
【0014】
本発明の実施形態では、第1及び第2の杭形成部材は、第1及び第2の杭形成部材の一方が、第1及び第2の杭形成部材のもう一方から独立して回転することができないように、入れ子式に伸縮自在に配置及び構成される。
【0015】
本発明の実施形態では、第1の杭形成部材は第1のねじ杭であり、第2の杭形成部材は第2のねじ杭であり、第1の底部形成部材は第1の螺旋体であり、第2の底部形成部材は第2の螺旋体である。かくして、本発明の道具は、既知のねじ/螺旋杭配置によって実現され得る。
【0016】
本発明の実施形態では、第1の杭形成部材は第1の羽根杭であり、第2の杭形成部材は第2の羽根杭であり、第1の底部形成部材は第1の羽根であり、第2の底部形成部材は第2の羽根である。かくして、本発明の道具は、既知の羽根杭配置によって実現され得る。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、シャフト及び拡底部を有する地下現場打ち杭を形成する方法であって、本発明の第1の態様の道具を使用し、また、(a)第1及び第2の杭形成部材が掘削状態にあるとき、第1及び第2の杭形成部材を延長する孔を形成するために地下の所定の深さまで駆動する工程と、(b)第1及び第2の杭形成部材を底部形成状態に向けて移動させて、延長する孔の深さで、流動式充填材が供給され得る地下空隙を形成する工程と、(c)第1及び第2の杭形成部材を底部形成状態に向けて移動させる間に、流動式充填材を地下空隙に供給して、地下現場打ち杭の拡底部を形成する工程と、(d)流動式充填材を地下に供給して地下現場打ち杭のシャフトを形成する間に、第1及び第2の杭形成部材を地上へと駆動する工程と、を含む方法が提供される。
【0018】
本方法の実施形態では、工程(b)は更に、(i)第1及び第2の杭形成部材を底部形成状態に向けて移動させる間に、第1及び第2の杭形成部材を底部形成状態に向けて移動させるのに必要な力の規模を決定する工程と、(ii)決定された力の規模が閾値量を下回る場合、決定された力の規模が閾値量以上となるまで、より深い地下深さで工程(a)及び(b)を繰り返す工程と、 (iii)決定された力の規模が閾値量以上である場合、流動式充填材を地下空隙に供給して拡底部を形成する間に、第1及び第2の杭形成部材を底部形成状態に向けて移動させることを継続する、工程と、を含む。基礎杭の荷重負担能力を、底部形成部材を分離させるのに必要な力と関連付けすることが可能である。かくして、本方法は、特定の深さで構築された場合の基礎杭の荷重負担能力を、基礎杭が設置される前により正確に推定することを可能にする
【0019】
本方法の実施形態では、力は、第1及び第2の杭形成部材を底部形成状態に向けて移動させるために構成された道具のジャッキねじ手段に印加されるトルク力に関連する。したがって、杭形成部材を底部形成状態に向けて移動させるためにジャッキねじ手段に印加されることが必要なトルクは、地下の特定の深さで構築された基礎杭の荷重負担能力を示すことができる。
【0020】
本方法の実施形態では、力は、一方又は両方の第1及び第2の杭形成部材によって支えられる軸方向荷重に関連する。この軸方向荷重は、杭形成部材又は各杭形成部材に取り付けられた、1つ以上の歪みゲージによって測定され得る。軸方向荷重、及びひいては歪みゲージ(複数可)からの測定値もまた、地下の特定の深さで構築された基礎杭の荷重負担能力を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】杭打ちリグに取り付けられた、本発明の実施形態による道具の側面図である。
【
図2】掘削状態にある、
図1の道具の断面側面図である。
【
図3】
図1の道具の杭形成部材間の境界面における断面端面図である。
【
図4】道具が地下へと駆動された、
図1の道具及び杭打ちリグの側面図である。
【
図5】その杭形成が掘削状態と底部形成状態との間にある、
図1の道具の断面側面図である。
【
図6】底部形成状態にある、
図1の道具の断面側面図である。
【
図7】掘削機に取り付けられた、本発明の実施形態による道具の側面図である。
【
図8】本発明の代替的な実施形態による、道具の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、道具4に取り付けられて本発明を具現化する杭打ちリグ2を示す。道具4は、長手方向に延在する杭形成部材及びジャッキねじ手段10を備える。杭打ちリグ2の回転ヘッド12は、ジャッキねじ手段10及び杭形成部材を選択的に駆動するように用いることが可能である。
【0023】
図2は、道具4をより詳細に示す。道具4は、拡底部を有する地下現場打ち杭を形成するために用いることができる。道具4は、図内で外ねじ杭6として描かれる第1の杭形成部材を備える。外ねじ杭6は、図内で上部螺旋体14として描かれる第1の底部形成部材を有する。道具4は更に、図内で内ねじ杭8として描かれる第2の杭形成部材を備える。内ねじ杭8は、図内で下部螺旋体16として描かれる第2の底部形成部材を有する。
【0024】
2つの杭6及び8は、一方がもう一方に対して長手方向に移動することができるように、互いに共線的に延在し、且つ入れ子式に伸縮自在に配置される。道具4は更に、ジャッキねじ手段10を備え、これは、以下、ジャッキねじ10と称される。ジャッキねじ10の回転は、2つのねじ杭6及び8の間で相対的な長手方向の並進を生じさせるように構成される。
【0025】
内ねじ杭8は、管状であり、また、長手方向に延在する内部チャネル18を備え、これを通して、モルタル、セメント、又はグラウトなどの流動式充填材が上方から供給され得る。現場打ち杭のシャフト部分を形成するために、道具が地上へと駆動されると、流動式充填材は、内ねじ杭8の下端部における出口20を通して外に出ることができる。内ねじ杭8の下端部は、下部螺旋体16を支える。道具4の特定の実施形態では、道具が地下を貫通している間、出口20は、連続飛行オーガー杭に関して用いられるものとは非類似でない犠牲キャップによって閉鎖される。当然ながら、出口20は、杭6及び8が地下へと駆動されるときに内杭8のチャネル18に土が入るのを防ぐためのその他の手段によって閉鎖されてもよい。
【0026】
外ねじ杭6は、長手方向に延在して、内杭8が貫通するチャネル22を画定する。外杭6は、上部螺旋体14を支える下部シャフト区画24と、上部ねじ山付き区画26と、を備える。上部ねじ山付き区画26は、下部シャフト区画24の外径よりも大きい外径を有する。ねじ山付き区画26は、外杭6がジャッキねじ10とパワースクリュー係合を形成することを可能にする内ねじ山30を有する管状空洞部を備える。
【0027】
ジャッキねじ10は、管状本体32を備え、これを通して内ねじ杭8が長手方向に延在する。管状本体32の上端部は、内杭8に着脱自在に固定されている。この目的のために、ジャッキねじ10は上部リム34を備え、内杭は、その直径がジャッキねじ10の管状本体32の内径よりも大きい対応するカラー36を備える。かくして、内杭8が上方からジャッキねじ10に挿入された場合、内杭8のカラー36はジャッキねじ10のリム34に当接し、それにより内杭8がジャッキねじ10を通って更に移動することを防ぐ。道具4の描かれた実施形態では、スラスト軸受38がジャッキねじ10のリム34とカラー36との間に配設される。スラスト軸受38は、リム34から上方に突出するジャッキねじ10の環状側壁部40内に収容される。第2のスラスト軸受39は、内杭8の周囲に取り付けられ、且つカラー36上に乗っている。内杭8が貫通する上部プレート42は、第2のスラスト軸受39の周りに取り付けられ、ボルト44を介してジャッキねじ10のリム34に固定される。内杭8とジャッキねじ10との間のスラスト軸受38と39との係合は、これらの間の回転を可能にし、長手方向の並進を制限する。
【0028】
ジャッキねじ10の管状本体32の下端部は、外杭6のねじ山付き上部区画26と螺合可能な外ねじ山46を支える。このようにして、ジャッキねじ10の第1の方向への回転により、ねじ杭6及び8の互いに対する長手方向の並進が生じる。換言すると、ジャッキねじ10に加えられる回転力(すなわち、トルク)は、ねじ杭6及び8の互いに対する直線運動へと変換される。
【0029】
図2は、掘削状態にある道具4を示す。掘削状態では、外杭6の上部螺旋体14は、上方から下部螺旋体16と物理的に係合する。螺旋体14と16との間のこの物理的係合により、ジャッキねじ10及び外杭6の両方が、ジャッキねじ10及び外杭6の互いからのねじ緩めをもたらすような方法で回転することを防がれる。換言すると、下部螺旋体16が、上部螺旋体14、及びひいては外杭6の運動を遮断することによって、外杭6がジャッキねじ10からねじ緩めされることが防がれる。
【0030】
ねじ杭6及び8の両方が、互いに回転的にロックされる。
図3を参照すると、杭6及び8は、ねじ杭6及び8のどちらも他方から独立して回転することができないように、スロット-キー配置48で互いに係合する。換言すると、一方の杭の回転により、他方の回転が生じる。当然ながら、スロット及びキーの数は変化してもよく、杭6と8との間の雄及び雌ロック関係は、
図3に描かれるものとは反転してもよい。
【0031】
図2を再度参照すると、道具4が掘削状態にあるとき、ねじ杭6及び8は、地中の所定の深さまで駆動され得る。この目的のために、ジャッキねじ10を第1の方向に回転させるように、(例えば、杭打ちリグ2の回転ヘッド12から)ジャッキねじ10にトルクが加えられ、これは、ジャッキねじ10及び外杭6を互いから名目上でねじ緩めする。螺旋体14と16との間の物理的係合がこうしたねじ緩め(上述の通り)を防ぐため、ジャッキねじ10の第1の方向の回転は、単にねじ杭6及び8の両方を回転させ、その結果、これらは地中の所定の深さまで駆動され得る。各杭6及び8の螺旋体14及び16は互いに係合している状態で、ねじ杭6及び8は、
図4に示すように地中にねじ込みされ得る。
【0032】
ねじ杭6及び8が所定の深さまで駆動されたら、杭打ちリグの操作者は、拡底部が構築される名目上の空隙の形成を開始することができる。
図5を参照すると、ジャッキねじ10を第2の方向に回転させるように、ジャッキねじ10に加えられるトルクの方向は反転している。これにより、ジャッキねじ10及び外杭6は互いに向かってねじ込みする。その結果、螺旋体14及び16は互いから遠ざかるように駆動され、その結果、参照番号L1によって示されるように、これらは互いから長手方向に離間する。螺旋体14及び16の互いからの分離によって、螺旋体14及び16の直径に近似する直径、及び上部螺旋体14と下部螺旋体16との間の長手方向距離L1に近似する高さを備える、名目上の地下空隙が作り出される。この名目上の空隙が形成されると、道具4を通して流動式充填材が供給されて、空隙を充填し、拡底部を形成するように、その側部出口21(
図6に示す)から外に出る。
【0033】
図6を参照すると、ジャッキねじ10の第2の方向への連続した回転により、ねじ杭6及び8が底部形成状態へと移動し、螺旋体14及び16は、参照番号L2によって示されるように互いから最大限に離間される。道具4は、螺旋体14と16との間の更なる分離を制限する限定手段を備える。
図6に示す実施形態では、ジャッキねじ10は、外部に突出するカラー50の形態の限定手段を備える。カラー50は、ジャッキねじ10が第2の方向に回転され続けた場合に外杭6の上部リム52が当接する表面を画定する。カラー50に物理的に当接する外杭6のために、ジャッキねじ10の第2の方向の更なる回転は、螺旋体14と16とを互いから更に分離するようには作用しない。かくして、限定手段は、螺旋体14と16とが長手方向に互いに離間され得る最大距離L2を画定するように作用する。
【0034】
ここで、道具4を用いる方法を説明する。
図1を参照すると、道具4は、地面の上方に位置付けされ、ねじ杭6及び8は(例えば、ジャッキねじ10を介して)移動され、その結果、これらは、螺旋体14及び16が互いに近接し、且つ好ましくは係合する掘削状態を取る。換言すると、
図2に示すように、螺旋体14及び16は、実質的に互いから長手方向に離間されていない。続いて、ねじ杭6及び8は、
図4に示すように、地下の所定の深さまで掘削され得る。
【0035】
図5を参照すると、ねじ杭6及び8が所定の深さまで掘削されると、杭打ちリグの操作者は、螺旋体14と16とを互いから分離し始めることができるように、回転ヘッド12を介してジャッキねじ10(又は外杭6)に、ジャッキねじ10及び外杭6を互いに向かってねじ込みさせる方向のトルクを加えることができる。
【0036】
螺旋体14と16とを分離させるのに必要なトルクは、土地の組成、及びひいては土地の品質及び安定性を示すことができる。拡底部が所定の深さで形成されたら、このトルクの大きさを用いて、拡底部の耐荷重能力を推定することができる。かくして、杭打ちの操作者が2つの螺旋体14と16とを互いから分離するとき、操作者は、加えたトルクの大きさを記録してもよい。十分に頑丈な拡底部を示す閾値量をトルクが下回る場合、操作者は螺旋体14及び16の分離を中断し、その代わりに、ねじ杭6及び8を移動して掘削状態へと戻し、掘削を第2の所定の深さまでより深くへと継続してよく、ここで操作者は螺旋体の分離を再開し、また、加えられたトルクが閾値量以上であるかどうかを判定してよい。このように、基礎杭が設置されるべき深さは、単に螺旋体14と16とを分離するのに必要なトルクを考慮することによって、迅速かつ容易に推定することができる。これにより、 荷重負担の不確実性による基礎杭の過剰性能化の代替形態(例えば、必要よりも遥かに深く掘削すること、及び基礎杭を必要よりもはるかに大きな直径で構築すること)が防がれる。
【0037】
ジャッキねじに加えられるトルク以外の力を、基礎杭の耐荷重能力を予測するために用いることができることに留意されたい。例えば、1つ以上の歪みゲージを、杭6及び8の一方又は両方に取り付けて、杭6及び8が互いから遠ざかるように移動されるときに、それらの軸方向荷重を測定することができる。このような方法で、杭6及び8又は各杭6及び8における軸方向力も、基礎杭の荷重負担能力を予測するために用いることができる。
【0038】
杭打ちリグの操作者が、螺旋体14と16とを分離するのに必要なトルク又は軸方向力の大きさが、十分に頑丈な拡底部を示す閾値量以上であると判定したら、操作者は、流動式充填材を、道具4のチャネル18を通して供給して、内杭8の側部出口21から出す間に、螺旋体14と16との分離を継続してもよい。こうして、流動式充填材は、螺旋体14と16との分離によって作り出された名目上の空隙を徐々に充填し、それによって基礎杭の拡底部を形成する。
【0039】
続いて、ねじ杭6及び8は、地面から徐々に引き抜かれてもよい(例えば、ねじ戻しによって)。杭6及び8が引き抜かれると、道具4の長さによって作り出された名目上の空隙を充填して、それによって現場打ち杭のシャフトを形成することができるように、流動式充填材が道具4のチャネル18を通して供給されて、出口20から出る。シャフトの直径は、螺旋体14及び16のより大きな直径ではなく、ねじ杭6及び8の管状本体のより小さな直径に近似する。このようにして、現場打ち基礎杭は拡底部を備えて形成され得、また基礎杭の耐荷重能力をより高い精度で知ることができる。
【0040】
本発明を具現化する道具4は、掘削機54などのその他の機械に取り付けることもでき、且つそれらと共に用いることができる。一例を
図7に示す。
【0041】
図8は、本発明の実施形態による道具4を示す。描かれる道具は、上記の道具4と実質的に同様であり、且つ、外杭6がジャッキねじ10からねじ緩めされることに同じく抵抗する追加の限定手段55を備える。描かれる実施形態では、限定手段は、ジャッキねじ10の周りに取り付けられた管状カラー55の形態である。限定カラー55は、ジャッキねじ10の突出するカラー50に接して置かれた内向きに延在する上部フランジ56を備える。限定カラー55は更に、内向きに延在する下部フランジ57を備える長手方向且つ環状の通路58は、カラー55の内側、且つその上部フランジ56と下部フランジ57との間に画定される。ジャッキねじ10の突出するカラー50が杭6と8との間の長手方向の並進を制限して、これが螺旋体14と16とを更に分離するのと同様に、限定カラー55の下部フランジ57は、杭6と8との間の長手方向の並進を制限し、これが外杭6とジャッキねじ10とを互いから更にねじ緩めする。
図8に見られるように、ジャッキねじ10と外杭6との互いからの更なるねじ緩めは、外杭6の上部リム52と限定カラー55の下部フランジ57との間の物理的係合によって制限される。
【0042】
本発明の様々な実施形態を説明したが、これらは例示のみを目的として示されており、限定を目的とするものではないことを理解されたい。関連する技術分野の当業者には、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、これらの実施形態中で形態及び詳細における様々な変更がなされ得ることは明らかであろう。例えば、内杭8の機能、能力、及び特徴は、代わりに外杭6に伴われてもよく、その逆もまた可能である。したがって、本発明は、説明される例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。
【0043】
本明細書、及び後続の特許請求の範囲の全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「備える」及び「備える」又は「備える」などの変化型は、記載されている整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を含めることを暗示するが、任意の他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を除外するものではないことが理解されるであろう。
【0044】
本明細書における、任意の先行公報(又はそれに由来する情報)、又は既知の任意の事項に対する参照は、先行文献((又はそれに由来する情報)、又は既知の事項が、本明細書が関連する努力分野における共通の一般知識の一部を形成することの同意若しくは承認又は何らかの形の示唆ではなく、またそうみなされるべきでない。