(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】HIFU照射装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
A61B17/00 700
(21)【出願番号】P 2022078610
(22)【出願日】2022-05-12
【審査請求日】2023-01-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】720007925
【氏名又は名称】ソニア・セラピューティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 美喜雄
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-129599(JP,A)
【文献】特開2008-079700(JP,A)
【文献】特開平11-299775(JP,A)
【文献】特開2018-029765(JP,A)
【文献】特開2013-243462(JP,A)
【文献】特開2015-146952(JP,A)
【文献】特開平06-217986(JP,A)
【文献】特開平08-024268(JP,A)
【文献】特開平04-141160(JP,A)
【文献】特開2019-150361(JP,A)
【文献】特開2014-204876(JP,A)
【文献】特開平3-73139(JP,A)
【文献】特開平6-217986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹面上に配置された複数の超音波振動子と、
前記凹面を貫通し、前記凹面の中心軸に沿って延びる超音波イメージングプローブであって、複数の前記超音波振動子についての焦点に向けられたプローブ先端部を有する超音波イメージングプローブと、
前記超音波イメージングプローブを、前記中心軸に沿って移動させるプローブ駆動部と、を備え、
前記プローブ先端部は、
複数の前記超音波振動子についての焦点から、前記中心軸に対して対称に前記凹面に向かう
所定の一対の法線に沿った
方向に平坦に広がる一対の
長軸方向側面を有
し、
前記一対の長軸方向側面は、前記プローブ先端部の下端から上方に向かうに従って対向間隔が広がり、
駆動可能な範囲における最下の位置に、前記超音波イメージングプローブがあるときに、前記一対の長軸方向側面は、前記一対の法線に接することを特徴とするHIFU照射装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のHIFU照射装置において、
前記プローブ先端部の少なくとも一部は、超音波を吸収する材料で形成されていることを特徴とするHIFU照射装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載のHIFU照射装置において、
前記プローブ先端部の少なくとも一部は、超音波を吸収する層と熱伝導層の少なくとも2層を有することを特徴とするHIFU照射装置。
【請求項4】
請求項1
または請求項2に記載のHIFU照射装置において、
前記プローブ先端部の短軸方向側面は、
長軸方向に突出した突出領域を有することを特徴とするHIFU照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波イメージングプローブを備えるHIFU照射装置に関し、特に、超音波イメージングプローブの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
強力集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound)を用いた治療装置が広く用いられている。この治療装置は、HIFU照射装置あるいはHIFU照射システムと称され、治療部位に集束超音波を照射して生体組織を壊死させる。
【0003】
一般に、HIFU照射装置は、凹面上に配置された複数の超音波振動子を備えている。複数の超音波振動子は、それぞれから発せられた超音波が一点に照射され焦点を形成するように配置されている。治療の際には、超音波診断装置のガイド下で焦点の位置が治療部位に合わせられ超音波が照射される。照射位置の確認方法の一つとして、超音波画像上に焦点を表す超音波診断装置を用いる方法がある。
【0004】
以下の特許文献1には、Bモード画像(断層画像)を表示する超音波診断装置を用いて焦点の位置を観測する超音波治療装置が記載されている。この装置では、組織に影響のない弱いレベルの超音波が治療用の超音波振動子から発せられると共に、超音波イメージングプローブによる超音波の送受信によって断層画像が表示される。被検体の組織の音響特性は組織の温度変化に応じて変化するため、断層画像には焦点の位置が輝度の強弱によって示される。また、特許文献2および3には、本願発明に関連する技術として、超音波イメージングプローブの構造に関する記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-71069号公報
【文献】特開2012-135427号公報
【文献】特開2008-581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、超音波診断装置によるガイド下での強力集束超音波による治療法では、超音波イメージングプローブによる超音波の送受信によってBモード画像が取得され、患者の生体組織の観察や治療対象への位置決めが行われる。治療やその準備の際には、治療用の超音波振動子から超音波が発せられると共に、超音波イメージングプローブによる超音波の送受信が行われる。しかし、治療用超音波振動子と超音波イメージングプローブの位置関係や、超音波イメージングプローブの形状や構造によっては、超音波イメージングプローブが、治療用超音波の伝搬を妨げたり、反射、散乱により意図しない部位に治療用超音波を照射したりする問題が起こる場合がある。
【0007】
本発明は、HIFU照射装置について、治療用超音波の伝搬状態に与える超音波イメージングプローブの影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上側に凹んだ凹面上に配置された複数の超音波振動子と、前記凹面を貫通し、前記凹面の中心軸に沿って延びる超音波イメージングプローブであって、複数の前記超音波振動子についての焦点に向けられたプローブ先端部を有する超音波イメージングプローブと、前記超音波イメージングプローブを、前記中心軸に沿って移動させるプローブ駆動部と、を備え、前記プローブ先端部は、複数の前記超音波振動子についての焦点から、前記中心軸に対して対称に前記凹面に向かう所定の一対の法線に沿った方向に平坦に広がる一対の長軸方向側面を有し、前記一対の長軸方向側面は、前記プローブ先端部の下端から上方に向かうに従って対向間隔が広がり、駆動可能な範囲における最下の位置に、前記超音波イメージングプローブがあるときに、前記一対の長軸方向側面は、前記一対の法線に接することを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記プローブ先端部の少なくとも一部は、超音波を吸収する材料で形成されている。
【0012】
望ましくは、前記プローブ先端部の少なくとも一部は、超音波を吸収する層と熱伝導層の少なくとも2層を有する。
【0013】
望ましくは、前記プローブ先端部の短軸方向側面は、長軸方向に突出した突出領域を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、HIFU照射装置について、治療用超音波の伝搬状態に与える超音波イメージングプローブの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】HIFU照射システムの構成を示す図である。
【
図2】HIFU振動子ユニットのxy平面に平行な断面と、超音波プローブをz軸負方向に眺めた図である。
【
図3】HIFU振動子ユニットのxy平面に平行な断面と、超音波プローブをz軸正負方向に眺めた図である。
【
図4】HIFU振動子ユニットのyz平面に平行な断面と、超音波プローブをx軸正方向に眺めた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。また、本明細書における上下左右等の用語は、図面における方向を示す。これらの方向を示す用語は説明の便宜上のものであり、各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。
【0017】
図1には、本発明の実施形態に係るHIFU照射システム1の構成が示されている。HIFU照射システム1は、プローブ駆動部8、超音波イメージングプローブ10(以下、超音波プローブ10という)、HIFU振動子ユニット12、カップリング袋14、ロボットアーム18、コントローラ22および表示装置24を備えている。
図1では、患者30においてBモード画像等の超音波画像が観測されるべき面(観測対象面)がyz座標平面に平行な面とされ、yz座標平面に垂直な座標軸がx軸とされている。
【0018】
HIFU振動子ユニット12は、振動子筐体16と、振動子筐体16に固定された複数の超音波振動子2を備えている。振動子筐体16は、上側に凹んだ凹面上に複数の超音波振動子2を配置する。ここで、凹面は、複数の超音波振動子2が配置される仮想的な面であってよい。すなわち、振動子筐体16は、凹面状の表面を必ずしも有していなくてもよく、複数の超音波振動子2を凹面上に配置する構造を有していればよい。
【0019】
凹面は錐体の側面形状であってよい。また、凹面は、錐体の周囲を囲む切り取り線によって錐体の頂点側が切り取られた形状であってもよい。この場合凹面は、切り取り線を内側の周縁とする枠状またはリング状の形状であってもよい。そして、切り取り線の外側の凹面に配置された超音波振動子だけを選択的に駆動させて、超音波を発生および集束させてもよい。ここで、錐体とは、空間内の1点から底面に延びる直線の集合によって形成される立体形状をいう。各超音波振動子2は、各超音波振動子2が超音波を発したときに、振動子筐体16の下方の治療基準点Pで、超音波の強度が強められるように振動子筐体16に固定されている。すなわち、各超音波振動子2は、治療基準点Pに焦点を形成するように振動子筐体16に固定されている。
【0020】
超音波プローブ10は、振動子筐体16の下方、かつ、治療基準点Pの上方の位置で超音波が送受信されるように、振動子筐体16に取り付けられている。本実施形態では、振動子筐体16の中心部を超音波プローブ10が上下方向に貫通し、超音波を送受信するプローブ先端部32が下方に向けられている。超音波プローブ10には方向性があり、超音波プローブ10の構造に応じた方向に面する観測面で、超音波が送受信される。本実施形態では、プローブ先端部32は、z軸方向に長軸方向が向けられ、x軸方向に短軸方向が向けられており、観測面は長軸方向に広がる。後述するように、超音波プローブ10の支持部34はプローブ駆動部8によって駆動され、上下方向に移動する。また、超音波プローブ10は、長手方向の軸を中心に回転自在であってもよい。
【0021】
HIFU振動子ユニット12の下方には、各超音波振動子2および超音波プローブ10と、患者30との間に、超音波に対する良好な伝搬媒体である脱気水等の液体を保持するカップリング袋14が設けられている。カップリング袋14は、脱気水等の液体が充填された袋であってもよい。カップリング袋14は、光を透過する材料で形成されてよく、透明または半透明であってよい。すなわち、カップリング袋14の外側からは、超音波プローブ10が見通されてもよい。
【0022】
超音波プローブ10、HIFU振動子ユニット12、およびカップリング袋14は、搬送機構としてのロボットアーム18の先端部に取り付けられている。ロボットアーム18は、関節18bによって接続された複数のアーム18aから構成されており、関節18bを介してコントローラ22の筐体に取り付けられている。各アーム18aが関節18bを回転軸として揺動することで、ロボットアーム18は、プローブ駆動部8、超音波プローブ10、HIFU振動子ユニット12およびカップリング袋14を含む可動体20を、x軸、y軸およびz軸の3方向に搬送する。
【0023】
コントローラ22は、HIFU制御部26およびロボット制御部28を備えている。HIFU制御部26は、コンピュータ、プローブ駆動部8を制御する電気回路、超音波プローブ10を制御する電気回路、およびHIFU振動子ユニット12を制御する電気回路を備えている。HIFU制御部26が備えるコンピュータは、業務用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ等であってよい。コンピュータはプログラムを実行することで、各画像を生成する処理や、各画像を表示する処理を実行する。HIFU制御部26には、ユーザがHIFU照射システム1を操作するための操作機器(図示せず)が接続されている。操作機器は、マウス、表示装置24と一体化されたタッチパネル、スイッチ、キーボード等を含んでよい。
【0024】
HIFU制御部26は、プローブ駆動部8、超音波プローブ10およびHIFU振動子ユニット12を動作させるための処理を実行する。例えば、HIFU制御部26はプローブ駆動部8を制御する。プローブ駆動部8は、HIFU制御部26の制御に従って超音波プローブ10を上下方向に駆動させる。また、HIFU制御部26は、超音波プローブ10に超音波を送受信させ、超音波プローブ10で受信された超音波に基づく受信信号に基づいて、Bモード画像データを生成し、表示装置24にBモード画像を表示させる。HIFU制御部26は、さらに、HIFU振動子ユニット12が備える各超音波振動子2に治療用の超音波を送信させる。
【0025】
ロボット制御部28は、HIFU制御部26の制御に応じてロボットアーム18を制御し、ロボットアーム18に可動体20を搬送させてよい。また、ロボット制御部28は操作機器を備えてもよい。この場合、ロボット制御部28は、ユーザによる操作機器の操作に応じてロボットアーム18を制御してもよい。
【0026】
治療用の超音波がHIFU振動子ユニット12から患者30に照射される前には、以下のような位置決め処理が実行されてよい。HIFU制御部26は、各超音波振動子2に、治療時よりも強度が小さい超音波を送信させる。超音波プローブ10の位置および姿勢は、超音波プローブ10の観測面が、患者30の観測対象面に一致する位置および姿勢に設定される。HIFU制御部26は、患者30の観測対象面で超音波プローブ10に超音波ビームを走査させBモード画像データを取得する。HIFU制御部26は、Bモード画像を表示装置24に表示させる。施術者としてのユーザは、表示装置24に表示されたBモード画像を参照して、HIFU振動子ユニット12から送信される超音波の焦点と患部の位置との相違を確認する。
【0027】
ユーザは、焦点の位置と患部の位置との相違が許容範囲内でないときは、ロボットアーム18およびプローブ駆動部8を動作させて超音波プローブ10およびHIFU振動子ユニット12の位置または姿勢を変更する。ユーザは、焦点の位置と患部の位置とが一致していることを確認した後に、HIFU制御部26に対して治療のための操作を行う。HIFU制御部26は、ユーザによる操作に応じて、治療に必要な強度を有する治療用超音波を各超音波振動子2に送信させる。これによって、焦点において生体組織が焼灼され、治療が施される。
【0028】
図2には、HIFU振動子ユニット12のxy平面に平行な断面と、超音波プローブ10をz軸負方向に眺めた図が示されている。この図には、超音波プローブ10が、最下の位置にある状態が示されている。また、プローブ先端部32の短軸方向側面が現れている。
【0029】
超音波プローブ10は、y軸方向を長手方向とする支持部34と、支持部34の下端に設けられたプローブ先端部32を備えている。支持部34はプローブ駆動部8に取り付けられている。プローブ先端部32は、プローブ先端部32の下端から上方に向かうに従って対向間隔が広がる一対の長軸方向側面44を有している。一対の長軸方向側面44は、治療基準点P(焦点)から凹面40に向けて延びる一対の法線42に沿って、表面が広がった一対の側面である。超音波プローブ10が、最下の位置にある状態において、各長軸方向側面44は、各法線42に沿って接してよい。ここで、一対の法線42は、xy平面に平行な平面内で、凹面40の中心軸48に対して対称に、治療基準点Pから凹面40に向かって延びている。
【0030】
プローブ先端部32の先端面36(下端面)のx軸方向の幅は、例えば、14mmである。また、先端面36から治療基準点Pまでのy軸方向に沿った距離は、例えば30mmである。
【0031】
なお、一対の長軸方向側面44は、超音波プローブ10が最下の位置にある状態で、一対の法線42よりも内側で、一対の法線42に沿って表面が広がっていてもよい。
【0032】
このような超音波プローブ10の構造によれば、法線42と凹面40との交点を通り、中心軸48に垂直な基準円46よりも外側にある超音波振動子2から発せられた外側超音波が、治療基準点Pでの治療に寄与する。外側超音波は、超音波プローブ10によって伝搬状態が乱され難い。プローブ先端部32の構造を、一対の法線42に沿って一対の長軸方向側面44が広がった構造とすることで基準円46が小さくなり、超音波プローブ10が治療用超音波の伝搬状態に与える影響が抑制される。
【0033】
また、超音波プローブ10の支持部34のx軸方向への厚みが、プローブ先端部32のx軸方向への厚みよりも大きくなり、超音波プローブ10の機械的強度が高まる。さらに、超音波プローブ10内に様々な部品を配置することが容易となる。
【0034】
図3には、HIFU振動子ユニット12のxy平面に平行な断面と、超音波プローブ10をz軸正負方向に眺めた図が示されている。この図には、超音波プローブ10が、最下の位置よりも上方にある状態が示されている。
図3に示される状態では、一対の長軸方向側面44は、一対の法線42よりも内側にある。そのため、治療基準点Pでの治療に寄与する超音波振動子2の個数は、
図2に示される状態よりも大きい。したがって、超音波プローブ10が、最下の位置よりも上方にある状態では、最下の位置にある状態に比べて、超音波プローブ10が治療用超音波の伝搬状態に与える影響が小さい。
【0035】
図4には、HIFU振動子ユニット12のyz平面に平行な断面と、超音波プローブ10をx軸正方向に眺めた図が示されている。この図には、プローブ先端部32の長軸方向側面が現れている。
図4に示されているように、プローブ先端部32の右側の短軸方向側面50には、z軸正方向に突出した突出領域52が形成され、左側の短軸方向側面50には、z軸負方向に突出した突出領域52が形成されている。ここで、突出領域52の凸面の曲率半径Rpは、Rp≦Rf-Lgを満足してよい。ただし、Rfは凹面の曲率半径、Lgは、超音波プローブ10が上記の最下位置にある場合における、突出領域52と前記凹面との間の距離である。また、プローブ先端部32は、突出領域52の凸面に対する曲率半径の条件を満足した複数の突出部が配列された形状を有してもよい。このようにすれば、複数の超音波振動子2から発せられた治療用超音波のうちの一部は、突出領域52であらゆる方向に散乱する。これによって、プローブ先端部32で反射した超音波が、患者30の体内で局所的に集束して照射されることが回避される。そのため、超音波プローブ10が治療の状態に与える影響が抑制される。
【0036】
なお、プローブ先端部32の表面の少なくとも一部は、吸音材で構成されてもよい。吸音材には、例えば、固有音響インピーダンスが約1.5×106kg/m2/secである脱気水が、超音波伝搬媒体として用いられる場合は、その音響特性に近い材料が用いられてよい。このような材料としては、シリコンゴム、天然ゴム、ポリウレタン等のエラストマー、または低密度のプラスチック材またはそれらの多孔質材や発泡材がある。また、吸音材には、一般のゴム材またはプラスチック材等の基材に金属粒子、金属酸化物粒子または気体を内包したマイクロバルーン等を混合した複合材が用いられてもよい。このような複合材によって、音響インピーダンスおよび吸収係数の調整が容易となる。これによって、超音波振動子2から発せられ、プローブ先端部32のうち吸音材で形成された部分に入射した超音波は、吸音材に吸収される。そのため、超音波プローブ10が治療用超音波の伝搬状態に与える影響が抑制される。
【0037】
さらに、プローブ先端部32の少なくとも一部は、超音波を吸収する層と熱伝導層の少なくとも2層を有してよい。例えば、プローブ先端部32の表面の少なくとも一部は、前記吸音材の層と、その内側に設けられた熱伝導層による2層で構成されてもよい。この熱伝導層は、熱伝導の良好な材質で形成し、前記吸音材の局部で超音波吸収によって生じた熱を拡散、放熱する。熱伝導層は、例えば、銅、アルミニウム等の金属板、または箔、金属酸化物の燒結体、または金属粒子や金属酸化物粒子を含む複合材やグリースで形成されてよい。これによって、超音波の吸収に伴った温度上昇による吸音層の音響特性の変化や劣化を防ぎ、超音波プローブ10が治療用超音波の伝搬状態に与える影響が抑制されるという効果が安定的に得られる。
【符号の説明】
【0038】
1 HIFU照射システム、2 超音波振動子、8 プローブ駆動部、10 超音波イメージングプローブ、12 HIFU振動子ユニット、14 カップリング袋、16 振動子筐体、18 ロボットアーム、18a アーム、18b 関節、20 可動体、22 コントローラ、24 表示装置、26 HIFU制御部、28 ロボット制御部、30 患者、32 プローブ先端部、34 支持部、36 先端面(下端面)、40 凹面、42 法線、44 長軸方向側面、46 基準円、48 中心軸、50 短軸方向側面、52 突出領域。
【要約】
【課題】本発明は、HIFU照射装置について、治療用超音波の伝搬状態に与える超音波イメージングプローブの影響を抑制することを目的とする。
【解決手段】上側に凹んだ凹面に配置された複数の超音波振動子2と、超音波イメージングプローブ10と、プローブ駆動部8とを備えている。超音波イメージングプローブ10は凹面を貫通し、凹面の中心軸に沿って延びており、下端にプローブ先端部32を有している。プローブ駆動部8は、超音波イメージングプローブ10を中心軸に沿って移動させる。プローブ先端部32は、複数の超音波振動子2についての焦点から、中心軸に対して対称に凹面に向かう一対の法線に沿った一対の側面を有する。
【選択図】
図1