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特許7301429コンクリートスラリー処理装置における水切ゲート
<図1>
  • 特許-コンクリートスラリー処理装置における水切ゲート 図1
  • 特許-コンクリートスラリー処理装置における水切ゲート 図2
  • 特許-コンクリートスラリー処理装置における水切ゲート 図3
  • 特許-コンクリートスラリー処理装置における水切ゲート 図4
  • 特許-コンクリートスラリー処理装置における水切ゲート 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】コンクリートスラリー処理装置における水切ゲート
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/16 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
B28C7/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022094381
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】396000514
【氏名又は名称】モリ技巧株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】森 照雄
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-208278(JP,A)
【文献】特開2010-221537(JP,A)
【文献】特開2010-42579(JP,A)
【文献】特開2004-66140(JP,A)
【文献】特開2008-264616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00 - 9/04
B01D 29/00 - 29/48
C02F 11/00 - 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートスラリーが貯留される水槽の一側に複数本のパイプを横架状に段積みし、該コンクリートスラリーの水分を各パイプ間の隙間から流出させるコンクリートスラリー処理装置における水切ゲートであって、該各パイプは角筒状のパイプと円筒状のパイプとを交互に段積みすることにより、円筒状のパイプの外周面を角筒状のパイプの平坦面に当接させてなることを特徴とするコンクリートスラリー処理装置における水切ゲート。
【請求項2】
コンクリートスラリーが貯留される水槽の一側に、円筒状のパイプと、平坦面を有する長手板状部材とを交互に段積みすることで、該パイプの外周面を該長手板状部材の平坦面に当接させ、該パイプと該長手板状部材の隙間から前記コンクリートスラリーの水分を流出させるようにしたことを特徴とするコンクリートスラリー処理装置における水切ゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートミキサー車のドラムから排出された、砂利、砂、セメントを含む廃水(コンクリートスラリーまたはセメントスラッジともいう)を処理するためのコンクリートスラリー処理装置における水切ゲートの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に生コン工場では、生コンを配送して帰ってきたコンクリートミキサー車をそのドラム内に水を注入して洗浄する必要があり、その際にドラム内に残っていた生コン(戻りコンという)がドラムから多量に排出される。
下記特許文献1、2には、こうして排出されたコンクリートスラリーを処理するための装置が示され、そのコンクリートスラリー処理装置は、コンクリートスラリーを投入する水槽の底面部を略水平に形成し、該水槽に該底面部から斜め上方に連なる傾斜面部を形成し、無端状に形成したコンベヤチェーンに複数のレーキを適宜間隔で取着し、該レーキが前記水槽の底面部から傾斜面部に亘って移動するように該コンベヤチェーンを低速度で巡回動させることで、該水槽の底面部に沈降した砂利,砂,セメントからなる固形物を該傾斜面部に掻き揚げて該傾斜面部の上端縁より外部に落下排出させるとともに、該水槽の側壁に設けられた水切ゲートから該水槽の上澄水を排出させるようにしたものである。
【0003】
なお、下記特許文献3には、複数本の円筒状のパイプを横架状に段積みし、該各パイプ間の僅かな隙間から前記水槽の上澄水を排出させるとともに、必要に応じて該パイプを自転させて該各パイプ間の隙間を拡大させることにより、該隙間が目詰まりするのが解消されるようにした水切ゲートが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4277057号公報
【文献】特許第6456870号公報
【文献】特許第5638487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記水切ゲートでは、水圧等によりパイプが外方に弓形に変形するとパイプ間の隙間が部分的に拡がるため水槽内の固形物まで流出させてしまうおそれがある。
そこで、本発明はパイプが水圧等により多少変形したとしても隙間が大きくなるおそれをなくし、常なる濾過性能を向上させることにより、上記のような問題点を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明は、コンクリートスラリーが貯留される水槽の一側に複数本のパイプを横架状に段積みし、該コンクリートスラリーの水分を各パイプ間の隙間から流出させるコンクリートスラリー処理装置における水切ゲートであって、該各パイプは角筒状のパイプと円筒状のパイプとを交互に段積みすることにより、円筒状のパイプの外周面を角筒状のパイプの平坦面に当接させてなることを特徴とする。
また本発明に係るコンクリートスラリー処理装置における水切ゲートは、コンクリートスラリーが貯留される水槽の一側に、円筒状のパイプと、平坦面を有する長手板状部材とを交互に段積みすることで、該パイプの外周面を該長手板状部材の平坦面に当接させ、該パイプと該長手板状部材の隙間から前記コンクリートスラリーの水分を流出させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
角筒状のパイプまたは長手板状部材の平坦面と円筒状のパイプの外周面とが当接する部位の僅かな隙間からコンクリートスラリーの水分を流出させるようにしたことで、円筒状のパイプが水圧等により多少変形したとしても、隙間が無用に拡がり水槽内の固形物を流出させるようなことがない。このため常に必要とする濾過性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るコンクリートスラリー処理装置の縦断面図。
図2図1に示したコンクリートスラリー処理装置における水切ゲートの側面図。
図3図2のA-A線断面図。
図4図3の要部の作動状態を示した断面図。
図5】本発明に係る水切ゲートの要部の横断面図。
【実施例1】
【0009】
次に本発明に係るコンクリートスラリー処理装置の実施例1を図1図4とともに説明する。図1に示す水槽1は、水平な底板1aとフレーム1bと側板1cから平面視で長方形の箱状に形成され、その上面はコンクリートミキサー車等からセメントスラッジを投入し得るように開放されている。3は該水槽1の長手方向の一側面に設けられた水切ゲートで、該水切ゲート3は、図2図3にも示したように、H型鋼からなる支柱4a,4bを適宜間隔で固設し、該支柱4a,4b間に両端部を遊嵌することにより複数本の直線状のパイプ5a~5iを横架状に段積してなる。なお、最下段のパイプ5aは角筒状、その上のパイプ5bは円筒状、またその上のパイプ5cは角筒状、さらにその上のパイプ5dは円筒状、その上のパイプ5eは角筒状、パイプ5fは円筒状、その上のパイプ5gは角筒状、さらにその上のパイプ5hは円筒状、最上段のパイプ5iは角筒状のものであり、このように角筒状のパイプと円筒状のパイプとを交互に段積みすることにより、円筒状のパイプ5b,5d,5f,5hの外周面を角筒状のパイプ5a,5c,5e,5g,5iの平坦面に当接させてなる。このように複数本のパイプ5a~5iを横架状に段積して水切ゲート3を形成することにより、該各パイプ5a~5iどうしが接触する僅かな隙間からセメントスラッジ中の水分が流出する一方、セメントスラッジ中の多くの固形分は該隙間を通過することなく堰きとめられる。
【0010】
6は最上段のパイプ5iの上に設けた加圧力調整手段で、フレーム1bの一部に形成した透孔に上部を遊嵌することにより棒材7を鉛直に支持し、該棒材7を下方に付勢するコイルバネ8を設けるとともに、該棒材7の下端部にパイプ5i上に横架する横架材9を設け、該横架材9を介してパイプ5iを適宜圧力で下方に押圧している。これにより各パイプ5a~5iどうしが圧着され、水圧に対し該各パイプ5a~5i間の隙間が適当な大きさに維持・形成されるようにしている。
【0011】
また、10b,10d,10f,10hは、フレーム1bに設けられた空圧シリンダで、前記各パイプ5b,5d,5f,5hの外面にそれぞれ半径方向に延びるレバー11を固着し、各空圧シリンダ10b,10d,10f,10hのスピンドルを該各レバーの先端にピン12を介して枢着している。このため、空圧シリンダ10b,10d,10f,10hを作動させることにより、ピン12、レバー11を介して各パイプ5b,5d,5f,5hを個々に自転させることができる。また、図2に示されるように各パイプ5b,5d,5f,5hの両端部付近の外周面にクサビ形状の部分的突部13,14をそれぞれ溶接等の固着手段によって固着する。このため、パイプ5b,5d,5f,5hを自転させると、図4に示したように、該部分的突部13,14がそれぞれ上段または下段のパイプ5a,5c,5e,5g,5iの平坦面を押圧し、該パイプ5b,5d,5f,5hと該パイプ5a,5c,5e,5g,5i間の隙間を上記コイルバネ8の弾性に抗して拡大させる。なお、15は該水切ゲート3の下部にて底板1aを外方に突出させ、該各水切ゲート3から排出された排水を外方に案内するために形成された庇状部、16は水槽1の水位を検出するために設けられた超音波センサーを示す。
【0012】
一方、20は水槽1の底部に沈降・堆積したセメントスラッジ中の固形分を掬い上げるために設けられたスラッジ掬上装置で、該スラッジ掬上装置は、水槽1の長手方向一端部に底面1aから斜め上方に連なる傾斜面21を形成し、該傾斜面21の上部に排出口23を設けている。そして、該排出口23の上部にコンベヤ駆動用スプロケット24を設け、水槽1内底部の両端部寄りにガイドホイール25,26をそれぞれ回転自在に軸支するとともに、適宜間隔でレーキ27が取着された無端状のチェーンコンベヤ28を該スプロケット24,ガイドホイール25,26に巻掛し、該駆動用スプロケット24をモータにより駆動することにより、該チェーンコンベヤ28が矢印で示した方向にゆっくりと巡回動するように構成されている。このため底板1a上に堆積したセメントスラッジ中の固形分が、レーキ27により傾斜面21に掬い上げられ、さらに排出口23に運ばれて落下し、外部に排出される。なお、29は水槽1中に戻るチェーンコンベヤ28を支持するために水槽1の上部両サイドに設けたレール部材である。
【0013】
このように構成したコンクリートスラリー処理装置では、ミキサー車のドラム内に残った残存生コンクリート、或いはミキサー車を洗浄したときに洗浄水とともに排出されるセメントスラッジが水槽1に投入され、該セメントスラッジ中の固形分を底板1a上に沈降させるとともに、各パイプ5a~5iの隙間から該セメントスラッジ中の水分を流出させることで濾過がなされる。また、センサー16による検出された水位に従い空圧シリンダ10b,10d,10f,10hのいずれかを作動させ、該水槽1内で上澄水が位置する高さにあるパイプ5b,5d,5f,5hを自転させることによっては、図4に示したように前記部分的突部13,14が隙間に入り込み、該隙間を拡大させるので上澄水を流出させることができる。このように拡大された隙間から上澄水を流出させることにより、セメントスラッジ中の固形分との分離が促進され、脱水に要する時間が短縮させられる。
また、パイプ5b,5d,5f,5hを自転させることによっては、該各パイプ間の隙間に挟入した固形物をその回転に伴い該隙間から容易に離脱させることもできるので、目詰まりを解消する目的で該パイプ5b,5d,5f,5hを自転させることも可能である。
【0014】
なお、各パイプ5a~5iは前記加圧力調整手段6により互いに押圧されているので、円筒状のパイプ5b,5d,5f,5hを自転前の状態に戻すことで上記隙間は自然と縮小する。この実施例に示したように加圧力調整手段6はコイルバネの弾性を利用して押圧力が調整されるように構成することのほか、適宜大きさの重錘を設け、重力で押圧力が調整されるように構成してもよい。或いは、このような加圧力調整手段6を設けなくても、パイプの自重だけで各パイプを圧着させることも可能である。
【0015】
そしてこのように構成した水切ゲート3では、円筒状のパイプ5b,5d,5f,5hが水槽1内の水圧等により外方に弓形に多少は変形したとしても、該パイプ5b,5d,5f,5hは常に角筒状のパイプ5a,5c,5e,5g,5iの平坦面に当接するものであるので、隙間が大きくなることなく、所期の濾過性能が維持される。要するに、パイプ5b,5d,5f,5hは平面視で弓形に多少は変形したとしても該パイプ5b,5d,5f,5hの外周面が角筒状のパイプ5a,5c,5e,5g,5iの平坦面に接触した状態が維持されるので、隙間を増大させることなく、無用に固形物を流出させるおそれがない。
【実施例2】
【0016】
上記実施例1では、角筒状のパイプと円筒状のパイプとを交互に段積みしたが、角筒状のパイプに代えて、平坦面を有する長手板状部材を用いてもよい。即ち、この実施例2は、図5に例示したように、上面および下面が平坦に形成された長手板状部材50と円筒状のパイプ5b,5d,5f,5hとを交互に段積みすることで、該パイプ5b,5d,5f,5hの外周面を該長手板状部材50の平坦面に当接させ、該パイプ5b,5d,5f,5hと該長手板状部材50の隙間から前記コンクリートスラリーの水分を流出させるようにしたものである。このように構成することによっても、円筒状のパイプ5b,5d,5f,5hが水圧等により外方に弓形に多少は変形しても、該パイプ5b,5d,5f,5hは常に長手板状部材50の平坦面に当接するものであるので、隙間が大きくなることなく、所期の濾過性能を維持させることができる。
【0017】
なお、上記実施例1、2では上記パイプ5a~5hについて、中空状のものを示したが、中空状でなく中実のもの(丸棒材または角棒状)を使用してもよい。ただし、剛性を保持するためには中空状のパイプが適切である。また、上記パイプ5a~5hおよび長手板状部材50を構成する材料については、鉄等の金属製、或いは合成樹脂製いずれでもよいが、上記パイプ5a~5hについては、例えばガス配管用または給水管用として製造されている周知の直線状の鋼管を適宜長に切断することで使用が可能となる。
【符号の説明】
【0018】
1 水槽
3 水切ゲート
5a,5c,5e,5g,5i 角筒状のパイプ
5b,5d,5f,5h 円筒状のパイプ
20 スラッジ掬上装置
50 長手板状部材
【要約】
【課題】セメントスラッジ(コンクリートスラリー)の廃棄を容易にするためのコンクリートスラリー処理装置における水切ゲートについて、常に必要とする濾過性能を維持することができるようにする。
【解決手段】コンクリートスラリーが貯留される水槽1の一側に複数本のパイプ5a~5iを横架状に段積みし、該コンクリートスラリーの水分を各パイプ間の隙間から流出させるコンクリートスラリー処理装置における水切ゲートであって、該各パイプは角筒状のパイプ5a,5c,5e,5g,5iと円筒状のパイプ5b,5d,5f,5hとを交互に段積みすることにより、円筒状のパイプの外周面を角筒状のパイプの平坦面に当接させてなる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5