(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/04 20060101AFI20230626BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20230626BHJP
B60W 50/12 20120101ALI20230626BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20230626BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20230626BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20230626BHJP
B60K 28/10 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B60W10/00 120
B60W10/04
B60W10/18
B60W50/12
F02D29/02 311A
B60L15/20 J
B60T7/12 A
B60K28/10 Z
(21)【出願番号】P 2019051673
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】坂上 航介
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-055474(JP,A)
【文献】特開2009-071979(JP,A)
【文献】特開2008-174048(JP,A)
【文献】特開2011-098732(JP,A)
【文献】特開2007-283874(JP,A)
【文献】特開2014-047626(JP,A)
【文献】特開2002-211377(JP,A)
【文献】特開2009-214583(JP,A)
【文献】特開2009-112162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 ~ 10/30
B60W 30/00 ~ 50/16
F02D 29/00 ~ 29/02
B60T 7/12
B60L 15/20
B60K 28/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停車要求に応じた車両の停車後に停車状態を保持し、発進要求に応じて停車状態の保持を解除する停車保持制御を行う停車保持制御手段と、
前記停車保持制御手段による前記停車保持制御のオンおよびオフを切り替えるために操作される停車保持操作手段と、
前記停車保持制御がオフの場合には、前記発進要求が発生した時点から前記車両の駆動輪に伝達される駆動力を前記発進要求の度合いに応じた駆動力とし、前記停車保持制御がオン
であって、前記発進要求の度合いが所定以上である場合には、前記発進要求に応じて停車状態の保持が解除された時点から所定時間が経過するまで、前記駆動輪に伝達される駆動力を抑制
し、前記発進要求の度合いが所定未満で小さい場合には、前記駆動輪に伝達される駆動力を抑制しない駆動力制御を行う駆動力制御手段とを含む、車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オートブレーキホールド機能を搭載した車両が提供されている。オートブレーキホールド機能は、停車時にブレーキペダルから足を離しても自動的に停車状態を保持する機能であり、信号待ちや坂道での停車時にブレーキペダルを踏み続けていなくてよいので便利である。
【0003】
このオートブレーキホールド機能を搭載した車両には、運転席の周辺に、オートブレーキホールド機能のオン/オフを切り替えるオートブレーキホールドスイッチが設けられている。停車前に車両のユーザがオートブレーキホールドスイッチを押操作して、オートブレーキホールド機能をオンにしておけば、停車時にオートブレーキホールド機能が作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ユーザがオートブレーキホールド機能をオンにしたことを忘れている場合がある。この場合、停車状態からの車両の発進の際、ユーザがクリープ現象に頼った運転操作を行おうとしてブレーキ操作を緩めても車両が発進しないことに違和感を感じて慌て、誤って必要以上に大きなアクセル操作を行う可能性がある。
【0006】
たとえば、駐車場で駐車するときには、ユーザは、アクセル操作を行わずにクリープ現象を利用して車両を前進および後進させるのが一般的である。しかし、ユーザがオートブレーキホールド機能をオンにしたことを忘れていると、停車中からブレーキ操作を緩めても車両が発進しないことに慌て、誤って必要以上に大きなアクセル操作を行う場合がある。この場合、車両が急に発進し(飛び出し)、車両の周辺に停まっている他の車両などの障害物に衝突するおそれがある。また、路面摩擦係数が低い状況では、タイヤがスリップするおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、アクセル操作などによる発進要求の度合いが大きくても、車両が急発進することを抑制できる、車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両制御装置は、停車要求に応じた車両の停車後に停車状態を保持し、発進要求に応じて停車状態の保持を解除する停車保持制御を行う停車保持制御手段と、停車保持制御手段による停車保持制御のオンおよびオフを切り替えるために操作される停車保持操作手段と、停車保持制御がオフの場合には、発進要求が発生した時点から車両の駆動輪に伝達される駆動力を発進要求の度合いに応じた駆動力とし、停車保持制御がオンの場合には、発進要求に応じて停車状態の保持が解除された時点から所定時間が経過するまで、駆動輪に伝達される駆動力を抑制する駆動力制御を行う駆動力制御手段とを含む。
【0009】
この構成によれば、停車保持操作手段の操作により、停車保持制御のオン(実行)およびオフ(非実行)を切り替えることができる。停車保持制御がオフに設定されている場合、発進要求が発生した時点からその発進要求の度合いに応じた駆動力が駆動輪に伝達される。一方、停車保持制御がオンに設定されている場合、停車要求に応じた停車後に停車状態が保持され、発進要求に応じて停車状態の保持が解除される。停車状態の保持が解除された時点から所定時間が経過するまで、駆動輪に伝達される駆動力が抑制される。これにより、発進要求の度合いが大きくても、車両が急に発進することを抑制できる。
【0010】
駆動力制御手段は、車両の走行のための駆動力を出力する駆動源のみを制御して、駆動輪に伝達される駆動力を制御する構成であってもよいし、駆動源からの駆動力を駆動輪に伝達する変速機などの駆動力伝達機構を併せて制御して、駆動輪に伝達される駆動力を制御する構成であってもよい。
【0011】
また、駆動力制御手段は、停車保持制御がオンであって、発進要求の度合いが所定以上である場合に、駆動輪に伝達される駆動力を抑制する構成であってもよい。
【0012】
この構成では、発進要求の度合いが所定未満で小さいときには、駆動輪に伝達される駆動力が抑制されないので、ユーザの意図的なアクセル操作による発進要求に対しては、その発進要求に応じた駆動力を駆動輪に伝達することができ、良好な発進性能を発揮することができる。
【0013】
車両制御装置は、車両の周辺に存在する物標を認識する物標認識手段をさらに備え、駆動力制御手段は、停車保持制御がオンであって、物標認識手段により認識される物標に車両が衝突する可能性がある場合に、駆動輪に伝達される駆動力を抑制ないしは抑制度合いを強める構成であってもよい。
【0014】
この構成では、車両がその周辺に存在する物標に衝突する可能性がある場合には、駆動輪に伝達される駆動力が抑制されて、車両が物標に衝突することを抑制でき、車両が物標に衝突する可能性がない場合には、駆動輪に伝達される駆動力の不要な抑制を阻止することができる。
【0015】
駆動力が抑制される所定時間は、車両が物標に衝突する可能性がなくなるまでの時間であってもよい。
【0016】
この場合、車両が物標に衝突する可能性がなくなった後は、駆動輪に伝達される駆動力の抑制が解除されるので、駆動力が不要に抑制されず、発進要求に対して良好な発進性能を発揮することができる。
【0017】
車両制御装置は、車両が所在する路面の路面摩擦係数(路面μ)を検出する路面摩擦係数検出手段をさらに備え、駆動力制御手段は、停車保持制御がオンであって、路面摩擦係数検出手段により検出される路面摩擦係数が所定以下の場合に、駆動輪に伝達される駆動力を抑制する構成であってもよい。
【0018】
この構成により、タイヤスリップの発生を抑制することができる。
【0019】
車両制御装置は、車両が所在する路面の勾配を検出する路面勾配検出手段をさらに備え、駆動力制御手段は、路面勾配検出手段により検出される勾配が車両の発進方向に所定以上の上り勾配である場合、駆動輪に伝達される駆動力の抑制を解除する構成であってもよい。
【0020】
この構成によれば、車両の発進時のずり下がりを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、アクセル操作などによる発進要求の度合いが大きくても、車両が急発進することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置が搭載された車両の要部の構成を示す図である。
【
図2】オートブレーキホールド処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】車両の走行状態、オートブレーキホールドスイッチのオン/オフ状態、オートブレーキホールドの実施状態および走行駆動力の抑制状態の時間変化の一例を示す図である。
【
図4】オートブレーキホールド処理の第1変形例を説明するためのフローチャートであり、オートブレーキホールド処理の流れの一部を示す。
【
図5】オートブレーキホールド処理の第2変形例を説明するためのフローチャートであり、オートブレーキホールド処理の流れの一部を示す。
【
図6】オートブレーキホールド処理の第3変形例を説明するためのフローチャートであり、オートブレーキホールド処理の流れの一部を示す。
【
図7】オートブレーキホールド処理の第4変形例を説明するためのフローチャートであり、オートブレーキホールド処理の流れの一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
<車両の要部構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る車両制御装置が搭載された車両1の要部の構成を示す図である。
【0025】
車両1は、たとえば、四輪自動車であり、駆動源2、変速機3、デファレンシャルギヤ4および左右一対の駆動輪5を備えている。駆動源2が出力する走行用の駆動力(以下、この駆動力を「走行駆動力」という。)は、変速機3で変速されて、デファレンシャルギヤ4に伝達され、デファレンシャルギヤ4から左右の駆動輪5に伝達される。
【0026】
車両1の駆動方式には、FF(Front-engine Front-wheel-drive:フロントエンジン・フロントドライブ)式、FR(Front-engine Rear-wheel-drive layout:フロントエンジン・リヤドライブ)式および4WD(four-wheel-drive:四輪駆動)式など、任意の方式を採用することができる。また、駆動源2は、エンジン(内燃機関)であってもよいし、モータであってもよい。変速機3としては、たとえば、AT(Automatic Transmission:自動変速機)、CVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)、DCT(Dual Clutch Transmission:デュアルクラッチ式変速機)など、車両1の走行状態に応じた変速比に自動で変更(変速)されるものが例示される。変速機3には、トルクコンバータ(図示せず)が付随している。
【0027】
また、車両1では、たとえば、車室内に設けられているブレーキペダル(図示せず)が踏まれると、そのブレーキペダルに入力された踏力がブレーキブースタに伝達される。ブレーキブースタに伝達された踏力は、ブレーキブースタの負圧によって増幅(倍力)され、ブレーキブースタからマスタシリンダに入力される。マスタシリンダでは、ブレーキブースタから入力される力に応じた油圧が発生する。マスタシリンダの発生油圧は、ブレーキアクチュエータ6に伝達される。そして、ブレーキアクチュエータ6の機能により、各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダに油圧が分配され、その油圧により各ブレーキから駆動輪5を含む車輪に制動力が付与される。
【0028】
車両1には、マイコン(マイクロコントローラユニット)を含む構成のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)11が備えられている。マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0029】
ECU11には、制御に必要な各種センサが接続されている。各種センサには、たとえば、アクセルセンサ12、ブレーキセンサ13、車輪速センサ14、Gセンサ15が含まれる。
【0030】
アクセルセンサ12は、車室内に設けられているアクセルペダル(図示せず)の操作(アクセル操作)の量に応じた検出信号を出力する。ECU11は、アクセルセンサ12の検出信号に基づいて、アクセルペダルの最大操作量に対する操作量の割合、つまりアクセルペダルが踏まれていないときを0%とし、アクセルペダルが最大に踏み込まれたときを100%とする百分率であるアクセル開度を求めることができる。
【0031】
ブレーキセンサ13は、ブレーキペダルの操作量に応じた信号を検出信号として出力する。ECU11は、ブレーキセンサ13の検出信号のレベルが所定以上であれば、ブレーキ操作がなされている(オン)であると判定することができ、ブレーキセンサ13の検出信号のレベルが所定未満であれば、ブレーキ操作がなされていない(オフ)であると判定することができる。なお、ブレーキセンサ13は、ブレーキペダルの操作量(たとえば、ブレーキ液圧)が所定量以上でオン信号を検出信号として出力し、ブレーキペダルの操作量が所定量未満でオフ信号を検出信号として出力するものであってもよい。
【0032】
車輪速センサ14は、左右の前輪および左右の後輪の各車輪の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。そのパルス信号の周波数は、車輪の回転速度(車輪速)に対応するので、ECU11は、車輪速センサ14から入力されるパルス信号の周波数の換算することにより、車輪速を求めることができる。また、ECU11は、各車輪の車輪速から車両1の車速を求めることができる。さらに、ECU11は、公知の手法により、各車輪の車輪速から車両1が所在する路面の路面摩擦係数(路面μ)を求めることができる。
【0033】
Gセンサ15は、錘の変位に応じた信号を車両1の加速度に応じた検出信号として出力する。ECU11は、Gセンサ15の検出信号から車両1の加速度を求めることができる。Gセンサ15の検出信号から求まる加速度には、車速の変化による加速度成分と、車両1が走行している路面の勾配による加速度成分とが含まれる。一方、車輪速から求まる車速を微分して得られる加速度は、車速の変化による加速度成分のみである。したがって、Gセンサ15の検出信号から求まる加速度と車速の微分値との差を求めることにより、路面勾配による加速度成分が得られるので、その加速度成分に基づいて、ECU11は、路面勾配を推定することができる。
【0034】
また、ECU11には、車両1の周辺(外界)に存在する物標を認識する物標認識装置16が接続されている。物標認識装置16には、たとえば、レーザレーダ、ミリ波レーダ、超音波センサ、単眼カメラおよびステレオカメラのうちの1つまたは複数が備えられている。たとえば、物標認識装置16は、レーザレーダおよびステレオカメラを備え、レーザレーダから外界にレーダ波を照射し、その反射波を受信するとともに、ステレオカメラで外界を撮像することにより、外界に存在する物標を認識する。ECU11には、物標認識装置16の認識結果が入力される。
【0035】
また、車両1の車室内には、オートブレーキホールドスイッチ17が設けられており、ECU11には、オートブレーキホールドスイッチ17が接続されている。車両1は、オートブレーキホールド機能を搭載しており、オートブレーキホールドスイッチ17の押操作により、オートブレーキホールド機能のオン/オフを切り替えることができる。すなわち、オートブレーキホールドスイッチ17のオンにより、オートブレーキホールド機能がオンになり、オートブレーキホールドスイッチ17のオフにより、オートブレーキホールド機能がオフになる。
【0036】
ECU11は、オートブレーキホールド機能のための機能処理部として、停車保持制御部21と、駆動力制御部22とを実質的に備えている。停車保持制御部21および駆動力制御部22の各機能については、後述する。
【0037】
なお、
図1には、1つのECU11のみが示されているが、車両1には、各部を制御するため、ECU11と同様の構成を有する複数のECUが搭載されている。ECU11を含む複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。また、ECU11の機能は、複数のECUの協働により実現されてもよい。
【0038】
<オートブレーキホールド処理>
図2は、オートブレーキホールド処理の流れを示すフローチャートである。また、
図3は、車両1の走行状態、オートブレーキホールドスイッチ17のオン/オフ状態、オートブレーキホールドの実施状態および走行駆動力の抑制状態の時間変化の一例を示す図である。
【0039】
車両1の走行中、ECU11により、
図2に示されるオートブレーキホールド処理が実行される。このオートブレーキホールド処理では、まず、車両1が停車したか否か、つまり車両1の車速が零になったか否かが判断される(ステップS1)。車両1が走行中である場合(ステップS1のNO)、処理はそれ以降に進まない。
【0040】
ブレーキ操作されて(停車要求の一例)、車両1が停車すると(ステップS1のYES)、オートブレーキホールドスイッチ17がオンであるか否かが判断される(ステップS2)。車両1の停車前にオートブレーキホールドスイッチ17がオンにされている場合(ステップS2のYES、時刻T1)、ECU11の停車保持制御部21の機能により、オートブレーキホールド(停車保持制御)が実施される(ステップS3、時刻T2)。オートブレーキホールドの実施により、ブレーキアクチュエータ6などが制御されて、ブレーキペダルの操作と無関係に、ブレーキマスタシリンダからブレーキアクチュエータ6に所定の油圧が入力され、その油圧が各ブレーキに分配されることにより、各ブレーキから車輪に制動力が自動的に付与される。そのため、車両1の停車後、ブレーキ操作が解除されても(ブレーキペダルから足が離されても)、車両1の停車状態が保持される。
【0041】
発進要求の一例であるアクセル操作が行われると(ステップS4のYES)、ECU11の停車保持制御部21の機能により、オートブレーキホールドが解除される(ステップS5、時刻T3)。また、ECU11の駆動力制御部22の機能により、駆動輪5に伝達される走行駆動力が抑制される(ステップS6、時刻T3)。駆動輪5に伝達される走行駆動力の抑制は、たとえば、駆動源2が出力する走行駆動力が所定以下(アクセル操作に応じた走行駆動力未満)に制限されることにより達成される。
【0042】
その後、オートブレーキホールドの解除から所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS7)。オートブレーキホールドの解除から所定時間が経過するまでは(ステップS7のNO)、駆動輪5に伝達される走行駆動力の抑制が継続される(ステップS6)。
【0043】
オートブレーキホールドの解除から所定時間が経過すると(ステップS7のYES)、ECU11の駆動力制御部22の機能により、駆動輪5に伝達される走行駆動力の抑制が解除される(ステップS8、時刻T4)。走行駆動力の抑制の解除後は、駆動源2が出力する走行駆動力の制限が外されて、アクセル操作(アクセル開度)に応じた走行駆動力が駆動源2から出力され、その走行駆動力が駆動輪5に伝達される(ステップS9)。
【0044】
車両1の停車時にオートブレーキホールドスイッチ17がオフにされている場合(ステップS2のNO)、オートブレーキホールドは実施されず、アクセル操作が行われると、そのアクセル操作に応じた走行駆動力が駆動源2から出力され、その走行駆動力が駆動輪5に伝達される(ステップS9)。
【0045】
<作用効果>
以上のように、オートブレーキホールドスイッチ17の操作により、オートブレーキホールド機能のオンおよびオフを切り替えることができる。オートブレーキホールド機能がオフに設定されている場合、アクセル操作が行われた時点からそのアクセル操作の度合い、つまりアクセル開度に応じた走行駆動力が駆動輪5に伝達される。一方、オートブレーキホールド機能がオンに設定されている場合、ブレーキ操作による停車後、各車輪に制動力が自動的に付与されて、停車状態が保持される。停車状態の保持は、アクセル操作が行われると解除される。停車状態の保持が解除された時点から所定時間が経過するまで、駆動輪5に伝達される駆動力が抑制される。これにより、たとえば、ユーザ(運転者)がオートブレーキホールドスイッチ17をオンにしたことを忘れていて、ブレーキ操作を緩めても車両1が発進しないことに慌て、誤って必要以上に大きなアクセル操作を行っても、車両1が急に発進する(飛び出す)ことを抑制でき、車両1がその周辺に停まっている他の車両などの障害物に衝突することを回避できる。また、路面摩擦係数が低い状況であっても、タイヤがスリップすることを抑制できる。
【0046】
なお、駆動輪5に伝達される走行駆動力の抑制は、たとえば、駆動源2が出力する走行駆動力が所定以下に制限されることにより達成されるとしたが、駆動源2の出力の制限に加えて、変速機3の変速比が下げられてもよい。
【0047】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0048】
たとえば、
図4に示されるように、アクセル操作が行われて(ステップS4のYES)、オートブレーキホールドが解除されるとともに(ステップS5)、ECU11の駆動力制御部22の機能により、アクセル開度が予め定められた閾値以上であるか否かが判断されて(ステップS11)、アクセル開度が閾値以上である場合に(ステップS11のYES)、駆動輪5に伝達される走行駆動力が抑制されてもよい(ステップS6)。
【0049】
この構成では、アクセル開度が閾値未満で小さいときには、駆動輪5に伝達される走行駆動力が抑制されないので、ユーザの意図的なアクセル操作による発進要求に対しては、その発進要求に応じた駆動力を駆動輪5に伝達することができ、良好な発進性能を発揮することができる。
【0050】
また、
図5に示されるように、アクセル操作が行われて(ステップS4のYES)、オートブレーキホールドが解除されるとともに(ステップS5)、ECU11の駆動力制御部22の機能により、物標認識装置16の認識結果から車両1が発進により物標に衝突する可能性の有無が判断されて(ステップS21)、衝突可能性がある場合に(ステップS21のYES)、駆動輪5に伝達される走行駆動力が抑制されてもよい(ステップS6)。
【0051】
この構成では、車両1がその周辺に存在する物標に衝突する可能性がある場合には、駆動輪5に伝達される駆動力が抑制されて、車両1が物標に衝突することを抑制でき、車両1が物標に衝突する可能性がない場合には、駆動輪5に伝達される駆動力の不要な抑制を阻止することができる。
【0052】
この場合、駆動力が抑制される所定時間は、車両1が物標に衝突する可能性がなくなるまでの時間であってもよい。これにより、車両1が物標に衝突する可能性がなくなった後は、駆動輪5に伝達される駆動力の抑制が解除されるので、駆動力が不要に抑制されず、アクセル操作に対して良好な発進性能を発揮することができる。
【0053】
さらにまた、
図6に示されるように、アクセル操作が行われて(ステップS4のYES)、オートブレーキホールドが解除されるとともに(ステップS5)、ECU11の駆動力制御部22の機能により、車両1が所在する路面の路面摩擦係数(路面μ)が予め定められた閾値以下であるか否かが判断されて(ステップS31)、路面摩擦係数が閾値以下である場合に(ステップS31のYES)、駆動輪5に伝達される走行駆動力が抑制されてもよい(ステップS6)。
【0054】
この構成では、タイヤスリップの発生を抑制することができる。
【0055】
また、
図7に示されるように、アクセル操作が行われて(ステップS4のYES)、オートブレーキホールドが解除されるとともに(ステップS5)、ECU11の駆動力制御部22の機能により、車両1が所在する路面の勾配が車両1の発進方向に所定以上の上り勾配であるか否かが判断されて(ステップS41)、この判断が否定の場合に(ステップS41のNO)、駆動輪5に伝達される走行駆動力が抑制され(ステップS6)、肯定の場合には(ステップS41のYES)、アクセル操作に応じた走行駆動力が駆動源2から出力され、その走行駆動力が駆動輪5に伝達されてもよい(ステップS9)。
【0056】
この構成では、車両1の発進時のずり下がりを抑制することができる。
【0057】
また、前述の実施形態では、停車要求の一例として、ブレーキ操作を取り上げ、発進要求の一例として、アクセル操作を取り上げた。しかしながら、停車要求および発進要求は、ユーザの操作によるものに限らない。たとえば、停車要求は、車両1を前方の先行車両との車間距離を一定に保持しつつ先行車両に追従して走行させる機能(アダプティブクルーズコントロール機能)における自動ブレーキ指令であってもよいし、発進要求は、その機能における自動発進指令であってもよい。
【0058】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:車両
2:駆動源
11:ECU(車両制御装置)
17:オートブレーキホールドスイッチ(停車保持操作手段)
21:停車保持制御部(停車保持制御手段)
22:駆動力制御部(駆動力制御手段)