(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】電子装置およびこれを搭載した移動体
(51)【国際特許分類】
B60W 30/04 20060101AFI20230626BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20230626BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20230626BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230626BHJP
A61G 5/04 20130101ALI20230626BHJP
A61G 5/10 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B60W30/04
B60W50/14
B60W40/06
G08G1/09 H
G08G1/09 R
A61G5/04 703
A61G5/04 707
A61G5/10 715
(21)【出願番号】P 2019091795
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】植田 兼司
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-139610(JP,A)
【文献】特開2014-191485(JP,A)
【文献】特開2014-076718(JP,A)
【文献】特開2018-180870(JP,A)
【文献】特開2019-056674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 50/16
G08G 1/00 ~ 1/16
A61G 5/04
A61G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される電子装置であって、
道路上に存在する傾斜領域の幅を検出する検出手段
であって、傾斜領域の幅は、歩道と車道との間に設けられたスロープの車道が延在する方向と直交する方向または概ね直交する方向の距離である、前記検出手段と、
前記傾斜領域の幅と移動体のホイールベースとから前記傾斜領域を通過中に一方の側の前輪および後輪が同時に前記傾斜領域上に存在しない最小進入角を算出する算出手段と、
前記傾斜領域に移動体が進入する進入角を決定する決定手段と、
前記進入角が前記最小進入角よりも小さいとき、警告を出力する出力手段と、
を有する電子装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記傾斜領域への進入角が大きくなるようなハンドル操作の警告を行う、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記出力手段は、前記傾斜領域までの距離が一定以下である場合には、後退を警告した後、前記傾斜領域への進入角が大きくなるようなハンドル操作の警告を行う、請求項1に記載の電子装置。
【請求項4】
前記出力手段は、前記傾斜領域に進入する速度の減速を警告する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項5】
移動体に搭載される電子装置であって、
道路上に存在する傾斜領域の幅を検出する検出手段
であって、傾斜領域の幅は、歩道と車道との間に設けられたスロープの車道が延在する方向と直交する方向または概ね直交する方向の距離である、前記検出手段と、
前記傾斜領域の幅と移動体のホイールベースとから前記傾斜領域を通過中に一方の側の前輪および後輪が同時に前記傾斜領域上に存在しない最小進入角を算出する算出手段と、
前記傾斜領域に移動体が進入する進入角を決定する決定手段と、
前記進入角と前記最小進入角に基づき移動体の移動を制御する制御手段と、
を有する電子装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記進入角が前記最小進入角よりも大きくなるように移動体の移動方向を制御する、請求項5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記進入角が前記最小進入角よりも小さい場合、移動体を後退させ、その後、前記進入角が前記最小進入角よりも大きくなるように移動体の移動方向を制御する、請求項5に記載の電子装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記進入角が前記最小進入角よりも小さい場合、前記傾斜領域を通過するときの移動体の速度を一定以下に制御する、請求項5に記載の電子装置。
【請求項9】
請求項1ないし
8いずれか1つに記載の電子装置を搭載し、かつ歩道を走行可能な前輪および後輪を含む移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者空間を走行可能な移動体に関し、特に、前輪および後輪を備えた電動カートに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会に伴い、歩道を走行可能な電動カートの利用が増加している。歩道に障害物があったり、歩道が狭くなる空間では、電動カートを歩道から車道、車道から歩道へ走行させなければならない。歩道と車道との間には段差があり、この段差によって電動カートの転倒を防止するため、特許文献1では、傾斜に対して前輪の一方を上昇させ、水平制御することが可能な電動車椅子を開示している。また、特許文献2では、段差や坂の障害物を検知し、段差の高さに応じて障害度を決定し、あるいは坂の傾斜角度に応じて障害度を決定し、障害度に基づき優先して報知する障害物を決定する電動車両を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-263104号公報
【文献】特開2014-226194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に示すように、電動カート10で歩道20を走行中に、進路が自転車等の障害物で塞がれている、あるいは歩道の幅が狭くなるような場合、電動カート10は、歩道20から一時的に車道30に降りることを余儀なくされる。この際、電動カート10は、歩道20と車道30との間の段差を緩和するスロープ(傾斜部分)40を走行して車道30に降りるが、スロープ40に浅い角度で進入すると、電動カート10の左右どちらかの前後輪がスロープ40に同時に乗ってしまい、そうすると、電動カート10の横方向の揺れが強くなりかつユーザーと車体が大きく揺すられるため、電動カート10が横転する可能性があり、あるいは横転しなくてもユーザーに恐怖感を与えてしまう。
【0005】
それ故、電動カート10でスロープ40などの傾斜に進入する場合には、できるだけ正面からスロープ40に進入することがメーカより推奨されている。電動カート10は、構造上、前後に転倒するよりも左右に転倒しやすいため、推奨される姿勢でスロープ40に進入することが望ましい。しかし、歩道のスペースや路面の障害などの外的要因により、必ずしも正面から進入できるとは限らない。角度をつけて進入せざるを得ない状況で、どの程度の角度であれば横転の可能性を軽減できるかをユーザーが把握できない、という課題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決し、傾斜領域を通過するときに横転する危険性を知らせる機能を備えた電子装置およびこれを搭載した移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子装置は、移動体に搭載されるものであって、道路上に存在する傾斜領域の幅を検出する検出手段と、前記傾斜領域の幅と移動体のホイールベースとから前記傾斜領域を通過中に一方の側の前輪および後輪が同時に前記傾斜領域上に存在しない最小進入角を算出する算出手段と、前記傾斜領域に移動体が進入する進入角を決定する決定手段と、前記進入角が前記最小進入角よりも小さいとき、警告を出力する出力手段とを有する。
【0008】
ある実施態様では、前記出力手段は、前記傾斜領域への進入角が大きくなるようなハンドル操作の警告を行う。ある実施態様では、前記出力手段は、前記傾斜領域までの距離が一定以下である場合には、後退を警告した後、前記傾斜領域への進入角が大きくなるようなハンドル操作の警告を行う。ある実施態様では、前記出力手段は、前記傾斜領域に進入する速度の減速を警告する。
【0009】
さらに本発明に係る電子装置は、移動体に搭載されるものであって、道路上に存在する傾斜領域の幅を検出する検出手段と、前記傾斜領域の幅と移動体のホイールベースとから前記傾斜領域を通過中に一方の側の前輪および後輪が同時に前記傾斜領域上に存在しない最小進入角を算出する算出手段と、前記傾斜領域に移動体が進入する進入角を決定する決定手段と、前記進入角と前記最小進入角に基づき移動体の移動を制御する制御手段とを有する。
【0010】
ある実施態様では、前記制御手段は、前記進入角が前記最小進入角よりも大きくなるように移動体の移動方向を制御する。ある実施態様では、前記制御手段は、前記進入角が前記最小進入角よりも小さい場合、移動体を後退させ、その後、前記進入角が前記最小進入角よりも大きくなるように移動体の移動方向を制御する。ある実施態様では、前記制御手段は、前記進入角が前記最小進入角よりも小さい場合、前記傾斜領域を通過するときの移動体の速度を一定以下に制御する。ある実施態様では、前記傾斜領域は、歩道と車両との間に設けられたスロープである。また、本発明の移動体は上記記載の電子装置を搭載し、かつ歩道を走行可能な前輪および後輪を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、傾斜領域の幅とホイールベースとから最小進入角を算出し、進入角が最小進入角よりも小さい場合には警告するようにしたので、ユーザーは、傾斜領域を通過するときの横転の可能性を知ることができる。さらに、最小進入角よりも大きな進入角となるようなハンドル操作を警告することで、ユーザーは、傾斜領域を通過するときの横転を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来の電動カートの課題を説明する図であり、スロープを走行するときの電動カートの模式的な平面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る電動カートの一例を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施例に係る電動カートに搭載される車載装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施例に係る警告制御プログラムの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施例によるスロープへの最小進入角の定義を説明する図である。
【
図6】本発明の実施例による進入角の決定方法を説明する図である。
【
図7】本発明の実施例による進入角の決定方法を説明する図である。
【
図8】本発明の他の実施例に係る車載装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る電子装置は、移動体に固定的に搭載される車載装置であってもよいし、移動体から取り外し可能な車載装置であってもよい。また、本発明に係る電子装置は、ユーザーが移動体に持ち運び可能な携帯型の情報端末(例えば、スマートフォン等の多機能型携帯電話機やノート型のコンピュータ)であってもよい。本発明の電子装置が搭載される移動体は、歩行者と同様に歩道を走行することが許された車両であり、例えば、前輪と後輪とを備えた電動カートである。
【実施例】
【0014】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図2は、本実施例の電動カートの一例を示す側面図である。電動カート100は、バッテリーを動力源として走行する車両であり、前輪および後輪を備えている。前輪および後輪の数は限定されないが、例えば、4輪または3輪である。電動カート100は、軸104に対して左右のハンドル102を回転させることで前輪106の舵を切ることができる。後輪108は、図示しないモータに接続され、モータはバッテリーにより駆動される。また、ハンドル102には、前輪106および後輪108を制動するためのブレーキレバーが取り付けられている。こうした電動カート100は、低速走行が可能であり、歩行者と同様に歩道を走行することが許される。
【0015】
本実施例の電動カート100には、前方の障害物を検出するための障害物検出部110が搭載され、障害物検出部110で障害物が検出されたとき、走行上の安全を確保するための警告がユーザー(運転者)に通知される。本実施例では特に、障害物検出部110は、車道と歩道との間に設けられたスロープ(傾斜部分)を検出し、スロープを通過するときに横転の可能性をユーザーに警告する。
【0016】
図3は、電動カート100に搭載される車載装置200の構成を示すブロック図である。車載装置200は、障害物検出部110、制御部210、記憶部220および出力部230を含んで構成される。
【0017】
障害物検出部110は、ある実施態様では、電動カート100の前方に存在する障害物を検出する3次元測距センサである。3D測距センサは、電動カート100の前方に一定の計測角度範囲内で角度を変化させながら送信波(レーザーやレーダー)を照射し、送信波が障害物で反射されたときの受信波を受信することで、その時間差から障害物までの相対距離と相対角度とを検出する。このような検出結果に基づき立体形状の障害物の輪郭を検出することができ、例えば、歩道と車道との間で高さを変化させるスロープの検出が可能である。また、他の実施態様では、障害物検出部110は、撮像カメラを含むことができる。撮像カメラで撮像された画像データを解析することで障害物を検出する。解析された障害物の大きさや位置から障害物までの距離や角度を検出することができる。撮像カメラは、例えばステレオカメラで構成し、障害物までの距離や角度の検出精度を高めるようにしてもよい。さらに障害物検出部110は、撮像カメラと3D測距センサとを併用することで障害物の検出精度をさらに高めるようにしてもよい。
【0018】
障害物検出部110は、
図1に示すように、車道と歩道との間の段差を緩和するために設けられたスロープ40を障害物として検出し、その検出結果を制御部210に提供する。
【0019】
制御部210は、障害物検出部110によりスロープが検出されると、電動カートがスロープを通過するときの進入角が安全か否か、すなわち電動カートが横転するおそれがあるか否かを判定し、進入角が安全でないと判定したとき(横転の可能性があると判定したとき)、出力部230を介してユーザーに警告を与える。出力部230は、例えば、表示部や音声出力部を備え、横転の可能性がある場合には表示部に警告を表示したり、音声出力部から音声による警告を与える。ある実施態様では、制御部210は、ROM/RAMを備えたマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ等を含み、ROM/RAM等に格納されたプログラムを実行することで、スロープ通過時の警告制御を行う。
【0020】
図4は、制御部210が実行する警告制御プログラムの機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、警告制御プログラム240は、スロープ幅検出部250、車両情報取得部260、最小進入角算出部270、進入角決定部280および警告生成部290を有する。
【0021】
スロープ幅検出部250は、障害物検出部110で検出されたスロープに関する検出情報に基づきスロープの幅を検出する。スロープの幅は、歩道側開始点と車道側終点との間の横方向(車道が延在する方向と直交する方向またはそれと概ね直交する方向)距離である。
【0022】
車両情報取得部260は、記憶部220に格納された電動カート100に関する既知の車両情報を取得する。ここでは、車両情報として、電動カート100のホイールベースを取得する。ホイールベースは、前輪の軸中心から後輪の軸中心までの距離である。
【0023】
最小進入角算出部270は、スロープ幅検出部250で検出されたスロープ幅と車両情報取得部260で取得された電動カート100のホールベースとを用いて、当該スロープの最小進入角を算出する。
【0024】
従来の電動カートでは、スロープを通過するときの安全な進入角が不明であり、かつ現在の進入角が安全か否か不明である。そこで、スロープへの安全な進入角を算出し、これを最小進入角とし、電動カートが実際にスロープに進入するときの進入角と最小進入角とを比較し、その比較結果から安全な進入か否かを判定する。
【0025】
スロープ上に、電動カートの左右どちらかの前後輪が同時に存在する進入角の場合、スロープ走行中とスロープ通過後に生じる横方向の力が正面から進入した場合に比べ大きくなり、電動カートが横転する可能性が高くなる。従って、これは危険な進入角である。それ故、スロープ通過中に電動カートの左右いずれか側の前後輪が同時にスロープ上に存在しない角度を、電動カートが安全にスロープを通過できる安全な進入角とみなし、これを最小進入角θとする。スロープ上に前後輪が同時に存在しない角度とは、
図5(A)に示すように、スロープ幅bの中でホイールベースaがθより大きくなる場合であり(Fは、前輪、Rは、後輪である)、最小進入角θは、次式によって算出される。
θ=sin
-1(b/a)
a:ホイールベース、b:スロープ幅
【0026】
図5(B)は、進入角θinが最小進入角θよりも小さい場合を示しており、この場合、電動カートの左側の前後輪が同時にスロープ上に存在する。このため、スロープ走行中あるいは通過後に横転する可能性が高くなる危険な進入角である。一方、
図5(C)は、進入角θinが最小進入角θよりも大きい場合を示しており、この場合、電動カートの左側の前後輪は同時にスロープ上に存在しないため、横転する可能性は低い安全な進入角である。
【0027】
進入角決定部280は、電動カート100が実際にスロープに進入するときの角度を決定する。
図6(A)に示すように、電動カート100が歩道20を走行中、障害物検出部110は、計測角度範囲Sで障害物を検出する。この場合、障害物検出部110によってスロープ40の長手方向の境界(輪郭)Pが検出される。境界Pは、スロープ幅と直交する方向または概ね直交する方向であるが、障害物検出部110によって必ずしも直線状の境界Pは検出されるとは限らない。そのような場合には、検出結果に基づき直線状の境界Pを近似する。
【0028】
電動カート100が歩道20の前方の外的要因により車道30へ降りることを余儀なくされた場合、電動カート100は、
図6(B)に示すようにスロープ40を通過するためのハンドルを操作して進路を変更する。電動カート100が旋回することに伴い、電動カート100とスロープ40の境界Pとの方位差が変化するが、この変化量は障害物検出部110の検出結果から知ることができる。障害物検出部110の設置位置は既知であり、仮に電動カート100の真正面に取り付けられていると仮定すると、
図7に示すように、電動カート100の向きKとスロープ40の境界Pの成す角θinが進入角となる。
【0029】
警告部290は、最小進入角算出部270で算出された最小進入角θと、進入角決定部280で決定された実際の進入角θinとを比較し、スロープへの進入角が安全か否かを判定する。警告部290は、実際の進入角θinが最小進入角θ以下であった場合、そのままスロープに進入すると危険なため、ユーザーにハンドルの切り増しを行うよう警告を行う。例えば、「このまま進入すると横転の可能性があり危険です。進入角が大きくなるようにハンドルを切ってください」などの音声出力や表示を警告する。また、警告部290は、スロープ通過後の速度が速いと、その衝撃で電動カートに大きな揺れが生じるおそれがあるので、スロープを通過する際に速度を落とすように警告するようにしてもよい。これらの警告は、出力部230を介して行われる。
【0030】
他の実施態様として、警告部290は、ハンドルの切り増しが必要だが電動カート100の姿勢を調整するのに必要な距離が確保できない場合には、ユーザーに対して後退するよう警告し、後退後に再度切り増しの指示を行うこともできる。警告部290は、障害物検出部110の検出結果に基づき電動カート100からスロープ40までの距離が一定以下であるとき、後退を促し、スロープ40までの一定上の距離が確保されたことが障害物検出部110によって検出されたとき、ハンドルの切り増しを警告する。
【0031】
次に、本発明の別の実施例について説明する。
図8は、当該別の実施例に係る車載装置200Aの構成を示す図である。本実施例では、車載装置200Aは、
図3に示す構成に加えて、電動カート100のハンドルの舵角を検出するハンドル舵角検出部300と、電動カート100の走行を制御する走行制御部310とを備える。
【0032】
進入角決定部280は、障害物検出部110によって電動カート100がスロープに進入する直前の位置に到達したときのハンドル舵角検出部300で検出されたハンドル舵角に基づき動カート100の実際のスロープへの進入角を決定する。障害物検出部110により検出されたスロープの変位量に基づき進入角を決定する場合には、例えばスロープ前で停止した状態でハンドルを切ってしまうと、その後の進行方向を推定することができなくなるが、本実施例のようにハンドル舵角を使用することで、電動カートの実際の進入角を高精度に決定することができる。
【0033】
また、走行制御部310は、警告部290によって実際の進入角θinが最小進入角θよりも小さいと判定された場合に、進入角θinが最小進入角θ以上となるように電動カートのハンドルの角度を自動で調整する。その際、警告部290は、上記のような警告を行うとともに、ハンドル角度を自動で調整する旨の案内を行う。
【0034】
さらに走行制御部310は、ハンドルの切り増しのために必要な距離が確保できない場合には、ハンドルの切り増しのために必要な距離を確保できる距離まで電動カートを自動で後退させ、後退後にハンドルの角度を自動で調整することができる。その際、警告部290は、上記のような警告を行うとともに、自動で後退およびハンドル角度を調整する旨の案内を行う。
【0035】
さらに走行制御部310は、電動カート100がスロープを通過するときの速度が一定以下となるように走行速度を自動制御することが可能である。この場合にも、警告部290による警告を併せて行うことが望ましい。
【0036】
上記実施例では、電動カートを例示したが、これは例示であり、本発明は、電動カート以外にも、手動で操作するカート、車イス等にも適用することができる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
20:歩道 30:車道
40:スロープ 100:電動カート
110:障害物検出部 200、200A:車載装置
210:制御部 220:記憶部
230:出力部