IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルパイン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像処理装置 図1
  • 特許-画像処理装置 図2
  • 特許-画像処理装置 図3
  • 特許-画像処理装置 図4
  • 特許-画像処理装置 図5
  • 特許-画像処理装置 図6
  • 特許-画像処理装置 図7
  • 特許-画像処理装置 図8
  • 特許-画像処理装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/06 20060101AFI20230626BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20230626BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20230626BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230626BHJP
   B60R 1/31 20220101ALI20230626BHJP
【FI】
B60R1/06 D
G06T1/00 330Z
G06T3/00 710
H04N7/18 J
H04N7/18 V
B60R1/31
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019144106
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021024443
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】須田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭助
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 千絵
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220051(JP,A)
【文献】特開2015-074436(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123474(WO,A1)
【文献】特開2014-235640(JP,A)
【文献】特開2019-102888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00
G06T 1/00
G06T 3/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部に取り付けられ、車体領域を含む側部後方を撮像した第1の画像を提供する第1の撮像手段と、
車両の後部に取り付けられ、第1の画角で撮像された車両後方を含む第2の画像を提供する第2の撮像手段と、
車両の後部に取り付けられ、第1の画角よりも狭い第2の画角で撮像された車両後方を含む第3の画像を提供する第3の撮像手段と、
第2の画像と第3の画像とを用いて車両後方の3次元環境を認識可能な第4の画像を生成する生成手段と、
第1の画像の車体の死角となる領域に、車体が透けて見えるように第4の画像の対応する画像を合成する合成手段とを有し、
前記生成手段は、第2の画像を第3の画像に対応するように変換する変換手段と、変換された第2の画像と第3の画像とのステレオ視により視差を算出する算出手段とを有し、前記生成手段は、算出された視差に基づき車両後方の3次元環境を認識可能な第4の画像を生成する、画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段はさらに、変換された第2の画像と第3の画像間の画素が同一行になるように変換された第2の画像と第3の画像の平行化を行う手段を含み、前記算出手段は、平行化された第2の画像と第3の画像の視差を算出する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2の画像は、車両が後進するときのリアビュー用の画像として利用可能であり、前記第3の画像は、ルームミラー用の画像として利用可能である、請求項に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2の撮像手段および前記第3の撮像手段は、同じ高さに取り付けられる、請求項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
画像処理装置はさらに、前記合成手段によって合成された画像をシースルービューとして表示する第1の表示手段を含む、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像処理装置はさらに、前記第2の画像を表示する第2の表示手段、前記第3の画像を表示する第3の表示手段を含む、請求項1ないし5いずれか1つに記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラで撮像された画像を処理する画像処理装置に関し、特に、サイドカメラで撮像された画像にリアカメラで撮像された画像を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の運転支援や視認性の向上を図るため、車載カメラで撮像された画像をディスプレイに表示するCMS(Camera Monitor System)が車両に搭載されている。例えば、サイドミラーの代替手段としてサイドカメラが車両の側部に取り付けられ、サイドカメラで撮像された車両の側部後方の画像がディスプレイに表示される。サイドカメラで撮像された画像には、光学式のサイドミラーの画像と同様に自車の車体の一部が含まれるが、この車体により死角となる領域を、リアカメラの画像と合成して、車体が透けているように見せる手法がある(以後、これをシースルービューと呼ぶ)。図3(A)は、後方車両10が存在するときのシースルービューの一例である。Rは、車体の境界であり、その境界Rの左側には、リアカメラで撮像された後方車両の画像12が合成される。
【0003】
特許文献1は、図1に示すように、サイドカメラの画像とリアカメラの画像とを合成するに際して、右カメラ3Rにより撮像された右カメラ画像と右カメラ3Rの基準車体マスク画像とを第1視野変換処理して視野変換画像Rと視野変換した車体マスク画像を生成し、後方カメラ3Bで撮像された後方カメラ画像を第2視野変換処理して視野変換画像Bを生成し、視野変換した車体マスク画像の画素値に基づいて、視野変換画像Rと視野変換画像Bとを合成する。こうして、視野変換画像Rの車体領域に後方カメラ3Bで撮像された後方カメラ画像が合成され、車体による死角を補完するシースルービューが生成される。
なお、特許文献1では、超音波やレーザー等の距離センサを用いて自車後方の投影面の位置を算出し、その投影面で画像の合成を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-74436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシースルービューの生成方法の概略工程を図2に示す。図2(A)は、サイドカメラで車両の側部後方の画像が撮像されることを示し、図2(B)は、魚眼レンズのリアカメラで車両の後方の画像が撮像されることを示し、図2(C)は、リアカメラで撮像された画像の認識処理により後方車両を検出し、後方車両までの距離を算出することを示し、図2(D)は、算出された距離に従いバーチャルプレーンをセットし、かつバーチャルプレーン上にリアカメラで撮像された画像を投影することを示し、図2(E)は、サイドカメラの画像と投影された画像との合成を示している。
【0006】
図3(A)、(B)は、後方車両を含むシースルービューの表示例であり、図3(A)は、車体の死角領域に、リアカメラで撮像された後方車両の画像12が綺麗に合成された例を示しているが、図3(B)は、リアカメラで撮像された後方車両の画像14が綺麗に合成されていない例を示している。Rは、自車の車体の境界である。
【0007】
リアカメラは、通常、車両後部に取り付けられ、リアカメラで撮像された後方画像は、自車が後進するときの駐車支援や障害物検知等に利用される。このため、リアカメラは、自車の後端付近の路面を撮像することができるように、画角の大きな魚眼レンズを用いている(例えば、画角は180度かそれ以上)。一方、サイドカメラは、ドアミラー近傍の車両側部に取り付けられ、車両の側部後方の遠方まで撮像することができるように、その画角はリアカメラの画角よりも小さい(例えば、90度以下)。
【0008】
シースルービューを生成するに際し、サイドカメラとリアカメラとの取り付け位置が異なり、かつリアカメラの解像度が低いため、単純にリアカメラで撮像された画像を拡張または縮小しても、サイドカメラで撮像した画像のようにはならない。その結果、図3(B)のようにリアカメラで撮像された画像14の大きさがサイドカメラで撮像された画像の大きさに一致しなかったり、あるいは画像の合成位置がずれたりして、綺麗なシースルービューが生成されない。
【0009】
一方、図3(A)のように、綺麗なシースルービューを生成するためには、車両後方の3次元環境をより正確に認識し、この画像をサイドカメラで撮像された画像の車体領域にマッピングする必要がある。例えば、図4に示すように、自車Mの後方に後方車両10が存在する場合には、自車Mから後方車両10までの距離Lを正確に計測し、距離Lの面に後方車両10の形状S(太線で表される形状)を表すリアカメラの画像を正確に投影する必要がある。
【0010】
こうした空間認識をするには様々な手法があるが、例えば、図2(C)に示すように単眼のリアカメラで撮像された画像の認識処理により後方車両10の距離を推定してもその距離は不正確であり、そうすると、図3(B)に示すように綺麗なシースルービューを生成することができなくなる。また、特許文献1のようにレーダーやLiDARのような距離センサを用いると、シースルービューの生成システムのコストが高くなってしまう。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決し、複数の撮像手段で撮像された画像の合成を高品質で行うことができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像処理装置は、車両の側部に取り付けられ、車体領域を含む側部後方を撮像した第1の画像を提供する第1の撮像手段と、車両の後部に取り付けられ、第1の画角で撮像された車両後方を含む第2の画像を提供する第2の撮像手段と、車両の後部に取り付けられ、第1の画角よりも狭い第2の画角で撮像された車両後方を含む第3の画像を提供する第3の撮像手段と、第2の画像と第3の画像とを用いて車両後方の3次元環境を認識可能な第4の画像を生成する生成手段と、第1の画像の車体領域に第4の画像の対応する画像を合成する合成手段とを有する。
【0013】
ある実施態様では、前記生成手段は、第2の画像を第3の画像に対応するように変換する変換手段と、変換された第2の画像と第3の画像とのステレオ視により視差を算出する算出手段とを有し、前記生成手段は、算出された視差に基づき車両後方の3次元環境を認識可能な第4の画像を生成する。ある実施態様では、前記第2の画像は、車両が後進するときのリアビュー用の画像として利用可能であり、前記第3の画像は、ルームミラー用の画像として利用可能である。ある実施態様では、前記第2の撮像手段および前記第3の撮像手段は、同じ高さに取り付けられる。ある実施態様では、画像処理装置はさらに、前記合成手段によって合成された画像を表示する第1の表示手段を含む。ある実施態様では、画像処理装置はさらに、前記第2の画像を表示する第2の表示手段、前記第3の画像を表示する第3の表示手段を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第2の撮像手段および第3の撮像手段により撮像された第2の画像および第3の画像を用いて第1の画像の車体領域に対応する画像を生成するようにしたので、従来と比較して、低コストでありながら綺麗な合成画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来のサイドカメラで撮像された画像にリアカメラで撮像された画像を合成する例を示す図である。
図2】従来のシースルービューの生成方法を説明する図である。
図3】従来のシースルービューの表示例である。
図4】後方車両の3次元空間の認識を説明する図である。
図5】本発明の実施例に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施例に係る撮像カメラの取り付け例を示す平面図である。
図7】本発明の実施例に係るシースルービューの生成動作を説明するフローである。
図8】魚眼カメラの座標変換および平行化の具体例を示す図である
図9】3次元形状の復元およびシースルービューの生成の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る画像処理装置は、移動体等に取り付けられた撮像カメラで撮像された画像を合成する機能を有する。合成された画像は、CMS(Camera Monitor System)に用いられ、ディスプレイに表示される。1つの好ましい態様では、画像処理装置は、サイドカメラで撮像された画像に含まれる車体の死角となる領域に、リアカメラで撮像された画像を合成し、シースルービューを生成する。
【実施例
【0017】
図5は、本発明の実施例に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。本実施例の画像処理装置100は、車両に取り付けられた複数の撮像カメラ110L、110R、120、130と、これら撮像カメラで撮像された画像を受け取り、画像処理等を含む種々の制御を行う制御部140と、画像処理された画像を表示する表示部150とを備えている。本実施例の画像処理装置は、車両に搭載された車載装置(例えば、オーディオ・ビジュアル・ナビゲーション機能等を備えた電子装置)と連携した動作をすることも可能である。
【0018】
図6は、撮像カメラの取り付け例を示す車両の平面図である。撮像カメラ110~130は、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子と撮像レンズとを含む。撮像カメラ110L、110Rは、サイドミラーを代替するサイドカメラであり、車両Mの左右のサイドミラー内またはその近傍にそれぞれ取り付けられ、あるいはサイドミラーに置換される(以後、サイドカメラ110L、110Rという)。サイドカメラ110L、110Rの撮像レンズの画角θ1、すなわち撮像範囲は、例えば光軸から90度かそれ以下である。光学式のサイドミラーに映される画像には、車両Mの周辺物体との位置関係を把握し易くするため車体の側部が映される。このため、サイドカメラ110L、110Rの光軸は、少なくとも光学式のサイドミラーと同様に、車体の側部の一部が撮像されるように調整される。
【0019】
車両Mの後部には、2つの撮像カメラ120、130が取り付けられる。撮像カメラ120は、車両Mの後部の左右のほぼ中央であって、例えば、ナンバープレートやバンパーの高さ近傍に取り付けられる。撮像カメラ120は、広い視野角の魚眼レンズを含み、その画角θ2は、約180度かそれよりも大きい(以後、魚眼カメラという)。魚眼カメラ120は、車両Mの後方を広範囲で撮像し、撮像された画像は、車両Mの後端の路面を含む。魚眼レンズ120で撮像された画像は、車両Mが後進するとき(つまり、ギアポジションがバックのとき)、表示部150にリアビューとして表示される。運転者は、リアビューを視認しながら後方の障害物を確認したり、駐車を行う。また、魚眼カメラ120で撮像された画像は、後述するように、サイドカメラ110L、110Rで撮像された画像の合成にも利用される。
【0020】
もう1つの撮像カメラ130は、車両Mの後部の魚眼カメラ120とほぼ同じ高さに、魚眼カメラ120から一定距離だけ離れた位置に取り付けられる。撮像カメラ130は、魚眼レンズよりも画角が小さい撮像レンズを含み、その画角θ3は、約90度かそれ以下である(以下、挟角カメラという)。挟角カメラ130は、ルームミラーの代替として利用され、ルームミラーで映される画像と同様の撮像範囲で車両Mの後方を撮像する。挟角カメラ130で撮像された画像は、車両が前進するときなどに表示部150にリアビューとして表示される。また、挟角カメラ130は、魚眼カメラ120とともに、サイドカメラ110L、110Rで撮像された画像の合成にも利用される。
【0021】
制御部140は、サイドカメラ110L、110R、魚眼カメラ120、挟角カメラ130で撮像された画像を受け取り、受け取った画像を処理し、表示部150にシースルービューを表示させたり、リアビューを表示させる。制御部140は、後述するように魚眼カメラ120の画像と挟角カメラ130の画像を用いて後方の対象物までの距離を算出し、算出した距離に基づきバーチャルプレーン(図2(D)を参照)を設定し、バーチャルプレーン上に、それぞれ取り付け位置や画角が異なる各カメラ110~130で撮像された画像を投影するように、これらの画像の座標変換を行う。制御部140は、バーチャルプレーンにおいて、サイドカメラ110L、110R、魚眼カメラ120、挟角カメラ130の変換された各画像の画素間の対応関係を算出する。シースルービューを生成する場合、制御部140は、バーチャルプレーン上のサイドカメラ110L、110Rの画像において、車体領域の画像に対応する魚眼カメラ120および挟角カメラ130の画像を識別または抽出し、識別または抽出した画像を車体領域に合成する。さらに、制御部140は、サイドカメラの取り付け位置、光軸の方向、撮像範囲、車体形状等から、バーチャルプレーン上のサイドカメラ110L、110Rの画像において、どの領域が車体領域に対応するかを算出する。制御部140は、例えば、画像処理を行うためのプロセッサ、マイクロコンピュータ、ROM、RAM等を含み、これらハードウエアおよび/またはソフトウエアを用いて画像処理に必要な動作を行う。
【0022】
表示部150は、制御部140で処理された画像データを受け取り、これを表示する。表示部150は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、投射装置(HUD)等の表示媒体を1つまたは複数含む。表示部150の取り付け位置は特に限定されないが、例えば、インスツルメンツパネル内の液晶表示モジュールであったり、車載装置用のディスプレイであったり、フロントガラス等への投射画像である。1つの好ましい例では、表示部150は、サイドミラー110L、110Rで撮像された車両の側部後方の画像を表示(シースルービュー表示)したり、魚眼カメラ120で撮像された車両の後方画像を表示(リアビュー表示)したり、挟角カメラ130で撮像された車両の後方画像を表示(ルームミラービュー表示)する。
【0023】
次に、本実施例のシースルービューの生成について説明する。図7は、本実施例によるシースルービューの生成動作を説明するフローである。シースルービューの生成は、サイドカメラ110L、110Rに共通に行われるので、ここでは、サイドカメラ110Lについて説明する。
【0024】
制御部140は、サイドカメラ110Lで撮像された画像、魚眼カメラ120で撮像された画像、および挟角カメラ130で撮像された画像を受け取る(S100)。これらの画像は、同期したタイミングで撮像された画像である。魚眼カメラおよび挟角カメラで撮像された画像の例を図8Aに示す。魚眼カメラ120は、画角θ2が非常に大きいため車両の後部を広範囲に撮像する。これに対し、挟角カメラ130は、画角θ3が画角θ2よりも小さいため、車両の後部の撮像範囲は狭いが遠方の後方車両をより正確に映すことができる。
【0025】
次に、制御部140は、魚眼カメラ120の画角θ2で撮像された画像が、挟角カメラ130の画角θ3で撮像された画像に対応するように、魚眼カメラ120で撮像された画像の変換を行う(S110)。例えば、魚眼カメラの座標系を世界座標系に変換し、これを透視投影画像の座標系に変換し、挟角カメラの画像に対応させる。魚眼カメラ120の画像の変換例を図8Bに示す。
【0026】
次に、制御部140は、魚眼カメラ120の変換された画像と挟角カメラ130の画像の平行化を行う(S120)。平行化とは、2つの画像間のある点が同一行になるような画像変換である。平行化は、2つの画像をステレオ視するときの視差の計算を容易にする。平行化の例を図8Cに示す。
【0027】
次に、制御部140は、平行化された2つの画像の視差を計算する(S130)。視差の計算は、例えば一方の画像のある点に注目し、その周囲の数ピクセルの矩形をブロックとし、他方の画像からそのブロックと最も相関のあるブロックの位置を探し出す。この際、2つの画像は平行化されているため、ブロックの相関を検索する対象は、同じYの位置においてブロックをX方向にのみずらしていけばよい。例えば、後方車両が撮像されている場合には、後方車両の画像を含むブロックの相関が検索される。後方車両が撮像されていない場合には、白線等の特徴のある部分の画像を含むブロックの相関が検索される。
【0028】
次に、制御部140は、計算された視差から三角測量の原理により対象物までの距離を算出する。ここでは、対象物として後方車両までの距離が算出される。視差が大きければ対象物までの距離は小さく、視差が小さければ対象物までの距離は大きくなる。制御部140は、各ピクセル毎に算出された距離に基づき、後方車両の位置と3次元形状を認識し、これに基づき魚眼カメラの画像と挟角カメラの画像をそれぞれバーチャルプレーン上の投影画像となるように座標を変換する(S140)。
【0029】
次に、制御部140は、サイドカメラの画像と認識された3次元形状の画像とを合成し、シースルービューを生成する(S150)。画像の合成は、サイドカメラの画像に含まれる車体により隠された死角領域が、認識された3次元形状の画像に置き換えられる。この合成例を図9Eに示す。こうして合成されたシースルービューは、表示部150によって表示される。図7に示すステップは、車両の走行中(前進や後進)あるいは停車中に繰り返し実行され、つまり、制御部140は、一定の周期または間隔で画像の視差を計算し、後方の対象物の距離を推定し、魚眼カメラの画像と挟角カメラの画像を変換し、シースルービューを連続的に生成する。
【0030】
このように本実施例によれば、ルームミラーの代替である挟角カメラの画像とリアビューに利用される魚眼カメラの画像とのステレオ視により自車後方の対象物までの距離を算出するようにしたので、従来のように単眼カメラの画像から対象物までの距離を推定する場合と比較して、対象物までの距離を正確に得ることができる。これにより、自車後方の空間認識または3次元環境を正確に認識することが可能となり、サイドカメラの画像とリアカメラの画像との合成を高品位に行うことができ、図3(A)に示すような、綺麗なシースルービューを生成することができる。また、ルームミラーの代替である既存の挟角カメラを利用するため、コストを抑えることができる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
100:画像処理装置
110L、110R:撮像カメラ(サイドカメラ)
120:撮像カメラ(魚眼カメラ)
130:撮像カメラ(挟角カメラ)
140:制御部
150:表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9