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  • 特許-ロータリエンコーダ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ロータリエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
G01D5/245 110W
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022516822
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017862
(87)【国際公開番号】W WO2021215013
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】柴原 義徳
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138720(JP,A)
【文献】特開2015-230192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の実装基板を備えたエンコーダ回路基板と、
円環形状をしたプリント配線基板と、
前記プリント配線基板と前記実装基板のそれぞれとの間を接続する基板間配線用ケーブルと、
を有しており、
前記実装基板は、前記プリント配線基板に対して半径方向の外側あるいは内側に隣接した位置を、前記プリント配線基板に沿って、その円周方向に配列されており、
前記基板間配線用ケーブルは、前記プリント配線基板と前記実装基板のそれぞれとの間において、前記半径方向に架け渡されており、
前記プリント配線基板は、前記実装基板のそれぞれに対する給電用の配線パターンと、少なくとも2つの前記実装基板の間における信号伝送用の配線パターンとを備えているロータリエンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリエンコーダにおいて、
前記実装基板は、前記プリント配線基板に対して、前記半径方向の外側に配置されているロータリエンコーダ。
【請求項3】
請求項1に記載のロータリエンコーダにおいて、
中空回転軸と、
前記中空回転軸を取り囲むエンコーダケースと、
前記中空回転軸と前記エンコーダケースとの間に形成された円環状スペースと、
を備えており、
前記円環状スペース内に、前記プリント配線基板、前記実装基板および前記基板間配線用ケーブルが配置されているロータリエンコーダ。
【請求項4】
請求項2に記載のロータリエンコーダにおいて、
中空回転軸と、
前記中空回転軸を取り囲むエンコーダケースと、
前記中空回転軸と前記エンコーダケースとの間に形成された円環状スペースと、
を備えており、
前記円環状スペース内に、前記プリント配線基板、前記実装基板および前記基板間配線用ケーブルが配置されているロータリエンコーダ。
【請求項6】
請求項5に記載のモータにおいて、
前記実装基板は、前記プリント配線基板に対して、前記半径方向の外側に配置されているモータ。
【請求項7】
請求項5に記載のモータにおいて、
中空回転軸と、
前記中空回転軸を取り囲むエンコーダケースと、
前記中空回転軸と前記エンコーダケースとの間に形成された円環状スペースと、
を備えており、
前記円環状スペース内に、前記プリント配線基板、前記実装基板および前記基板間配線用ケーブルが配置されているモータ。
【請求項8】
請求項6に記載のモータにおいて、
中空回転軸と、
前記中空回転軸を取り囲むエンコーダケースと、
前記中空回転軸と前記エンコーダケースとの間に形成された円環状スペースと、
を備えており、
前記円環状スペース内に、前記プリント配線基板、前記実装基板および前記基板間配線用ケーブルが配置されているモータ。
【請求項9】
モータと、
前記モータの出力回転を減速する減速機と、
前記減速機の出力軸の回転情報を検出するための請求項1に記載のロータリエンコーダと
を備えているアクチュエータ。
【請求項10】
請求項9に記載のアクチュエータにおいて、
前記実装基板は、前記プリント配線基板に対して、前記半径方向の外側に配置されているアクチュエータ。
【請求項11】
請求項9に記載のアクチュエータにおいて、
中空回転軸と、
前記中空回転軸を取り囲むエンコーダケースと、
前記中空回転軸と前記エンコーダケースとの間に形成された円環状スペースと、
を備えており、
前記円環状スペース内に、前記プリント配線基板、前記実装基板および前記基板間配線用ケーブルが配置されているアクチュエータ。
【請求項12】
請求項10に記載のアクチュエータにおいて、
中空回転軸と、
前記中空回転軸を取り囲むエンコーダケースと、
前記中空回転軸と前記エンコーダケースとの間に形成された円環状スペースと、
を備えており、
前記円環状スペース内に、前記プリント配線基板、前記実装基板および前記基板間配線用ケーブルが配置されているアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転速度等を検出するロータリエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の回転状態(回転速度、回転角度、回転位置等)を検出するために、磁気式エンコーダ、光学式エンコーダ等のロータリエンコーダが用いられている。中空モータの中空軸等の回転状態を検出する場合には、ロータリエンコーダの基板、配線ケーブル等の構成部品の設置スペースとして、中空軸と、これを取り囲むケースとの間に形成される円環状スペースが利用される。
【0003】
図3は、この場合におけるロータリエンコーダのエンコーダ基板等の配置状態を示す説明図である。この図に示すように、中空回転軸101と円筒状のケース102との間に形成される円環状スペース103に、中空回転軸101の外周を取り囲む状態に、複数枚に分割したエンコーダ基板111~114が配置される。エンコーダ基板111~114には、磁気検出素子などの検出素子が実装された検出素子実装基板、検出素子からの検出信号から位相の異なるエンコード信号を生成する信号処理用モジュールが実装された信号処理基板、外部との間で信号の送受を行うインターフェース回路が実装されたインターフェース基板等が含まれている。これらのエンコーダ基板111~114には、外部からの給電用配線ケーブル、信号送受用の配線ケーブル等が接続される。例えば、隣接するエンコーダ基板111、112の間が、配線ケーブル121によって接続される。円周方向に離れたエンコーダ基板111、114の間が、配線ケーブル122によって接続される。ケース102の外側からは給電用配線ケーブル123が引き込まれ、エンコーダ出力信号の出力用配線ケーブル124がケース外部に引き出される。
【0004】
特許文献1には、モータに取り付けて用いる磁気式アブソリュートエンコーダが提案されている。ここに記載の磁気式アブソリュートエンコーダでは、2極マグネットおよび多極マグネットを取り囲むように、複数の磁気検出素子が実装された一枚のフレキシブルプリント配線基板(エンコーダ基板)をループ状に配置している。これにより、磁気検出素子が実装された複数枚のエンコーダ基板の組付け作業を省略でき、各磁気検出素子の位置決め作業、各エンコーダ基板から引き出される配線の結線作業を簡単に行い得るようにしている。特許文献2には、中空アクチュエータ等における狭い円環状の隙間に組み込むのに適した回転検出装置が提案されている。この回転検出装置では、複数枚のリジッド基板を円周方向に連結する構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/061794号公報
【文献】国際公開第2017/212654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に示すような従来のエンコーダ基板、配線を備えたロータリエンコーダには、次のような課題がある。第1に、設置スペースとしての円環状スペースが狭い場合には、基板間配線用のケーブルはエンコーダ基板の傍らを迂回させて引き回される。狭い円環状スペースにケーブル引き回し用のスペースを確保する必要がある。また、基板間配線用のケーブルの接続作業に手間がかかる。また、基板を迂回させて引き回される配線用ケーブルを介して伝送される信号の品質劣化も懸念される。
【0007】
第2に、半径方向の幅が狭い円環状スペース内で、エンコーダ基板の間を配線接続する場合には、配線用ケーブルを半径方向の外側あるいは内側に引き出すためのスペースを確保することが困難であり、配線用ケーブルが円周方向に引き出される。この場合、基板には、円周方向を向く状態でケーブルコネクタが実装される。隣接する基板の間に、ケーブルコネクタおよび配線ケーブルを配置するためのスペースを確保するために、隣接する基板を離して配置する必要がある。また、隣り合う基板の間の隙間が狭いと、配線作業に特殊な冶具を使用する必要がある。このため、狭い円環状スペースの利用効率が悪い。
【0008】
第3に、サイズの異なるモータに共通のエンコーダ基板を組付ける場合には、基板間配線用のケーブルは、モータサイズ毎に長さを変える必要がある。ケーブルの共通化・統一化ができず、基板共通化のコストメリットが下がる。
【0009】
一方、特許文献1に記載の磁気式アブソリュートエンコーダにおいては、組付け対象のモータのサイズ毎に専用設計された1枚もののフレキシブルプリント配線基板(エンコーダ基板)を使用している。配線用ケーブルの引き回しが不要となり、基板間配線用のケーブルの引き回し、結線作業も簡単になる。しかし、サイズの異なるモータに用いる場合には、エンコーダ基板の共通化ができないという課題がある。
【0010】
特許文献2に記載の回転検出装置は、複数枚のリジッド基板を円環状に連結して構成されるエンコーダ基板を用いており、狭い環状スペースに組み込むのに適している。しかし、各リジッド基板から引き出される配線の引き回し、離れた位置にあるリジッド基板の間の配線、結線等については配慮されていない。
【0011】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、狭い円環状スペースに組み込むのに適しており、基板間配線用のケーブルの引き回し、結線作業が簡単であり、異なるサイズのモータにも共通して用いることのできるロータリエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明のロータリエンコーダは、複数枚の実装基板を備えたエンコーダ回路基板と、円環形状をしたプリント配線基板と、プリント配線基板と実装基板のそれぞれとの間を接続する基板間配線用ケーブルとを有している。実装基板は、プリント配線基板に対して半径方向の外側あるいは内側に隣接した位置または中心軸線の方向に隣接した位置を、プリント配線基板に沿って、その円周方向に配列されている。基板間配線用ケーブルは、プリント配線基板と実装基板のそれぞれとの間において、半径方向あるいは中心軸線の方向に架け渡されている。プリント配線基板は、実装基板のそれぞれに対する給電用の配線パターンと、少なくとも2枚の実装基板の間における信号伝送用の配線パターンとを備えている。
【0013】
本発明のロータリエンコーダでは、円環形状をしたプリント配線基板を介して、各実装基板の間が接続される。プリント配線基板には、各実装基板に対する給電用の配線パターンがプリントされている。外部から供給される電力は、プリント配線基板の給電用の配線パターンを経由して、各実装基板に分配される。複数の実装基板に対応する本数の給電用の配線ケーブルを、円周方向に配列されている実装基板の傍らを迂回させて引き回す必要がない。また、プリント配線基板には、実装基板の間を接続する信号伝送用の配線パターンがプリントされている。円周方向において離れた位置にある実装基板の間を接続するための配線ケーブルを引き回す必要がない。よって、給電用の配線ケーブル、信号伝送用の配線ケーブルの設置スペースおよび設置作業が不要になる。
【0014】
また、各実装基板とプリント配線基板との間は、これらの間に半径方向または中心軸線の方向に架け渡した基板間配線用ケーブルによって接続される。隣接する実装基板の間の隙間を円周方向に広げて、配線用のスペースを確保する必要がない。また、長い配線用ケーブルを円周方向に引き回す必要がないので、伝送される信号の品質劣化も抑えることができる。
【0015】
さらに、異なるサイズのモータに用いるロータリエンコーダの間で、実装基板、プリント配線基板、および基板間配線用ケーブルを共通化することが容易である。
【0016】
ここで、実装基板を、円環形状のプリント配線基板の半径方向の外側に配置することが望ましい。プリント配線基板を実装基板の内側に配置することで、その外径寸法を小さくでき、その周長を短くできる。これにより、実装基板の間を繋ぐために、プリント配線基板上において円周方向に延びる配線パターンの長さを短くできる。
【0017】
本発明のロータリエンコーダは、円環状スペースに組み込むのに適している。円環状スペースは、中空回転軸と、この中空回転軸を取り囲むエンコーダケースとの間に形成される。
【0018】
モータ、あるいは、モータおよび減速機を備えたアクチュエータに、本発明のロータリエンコーダを組み込む場合には、当該ロータリエンコーダを、モータ軸とモータケースの間の円環状スペース、あるいは、減速機出力軸と減速機ケースの間の円環状スペースに、直接、組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は本発明を適用したロータリエンコーダを備えた中空モータを示す模式図であり、(b)はロータリエンコーダの実装基板等の配列状態を示す説明図である。
図2図1のロータリエンコーダの作用効果を示す説明図である。
図3】従来のロータリエンコーダの基板配列状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るロータリエンコーダを備えた中空モータを説明する。
【0021】
図1(a)は、中空モータを示す模式図であり、図1(b)はロータリエンコーダのエンコーダ基板等の配列状態を示す説明図である。中空モータ1は円筒状のモータケース2を備えており、モータケース2の内部には、その中心を貫通して延びている中空モータ軸3が配置されている。中空モータ軸3は中心軸線1aの方向の前後の部分において、軸受を介してモータケース2によって回転自在の状態で支持されている。中空モータ軸3には、モータローター(図示せず)が取り付けられており、このモータローターを同心状に取り囲む状態にモータステーター(図示せず)がモータケース2の側に取り付けられている。
【0022】
モータケース2の後端にはロータリエンコーダ10が取り付けられている。ロータリエンコーダ10は、中空モータ軸3の軸端部に一体形成した中空回転軸11と、中空回転軸11を取り囲むカップ形状のエンコーダケース12とを備えている。中空モータ軸3および中空回転軸11によって、モータ中心部分を中心軸線1aの方向に貫通して延びる円形中空部14が形成されている。また、ロータリエンコーダ10において、中空回転軸11とエンコーダケース12の円筒部分12aとの間には、円環状スペース15が形成されている。円環状スペース15内に、ロータリエンコーダ10の構成部品が組み込まれている。
【0023】
なお、本発明によるロータリエンコーダを備えたアクチュエータは、例えば、図1(a)において想像線で示すように、中空モータ1の前段に、減速機90が組み付けられた構成になる。減速機90には、例えば波動歯車減速機が用いられる。中空アクチュエータの場合には、減速機90として、中心を貫通して延びる中空部91を備えた中空減速機が用いられる。中空部91と中空モータ1の円形中空部14とによって、アクチュエータ中心を貫通して延びるアクチュエータ中空部が形成される。
【0024】
中空モータ1において、ロータリエンコーダ10は、例えば、磁気式エンコーダ部20と光学式エンコーダ部30とを備えたアブソリュートエンコーダである。磁気式エンコーダ部20は、中空回転軸11に同軸に固定した2極着磁マグネットリング21と、エンコーダケース12の側に取り付けた実装基板22(MT基板)とを備えている。実装基板22には、ホール素子等の磁気センサその他の電子部品が実装されている。光学式エンコーダ部30は、中空回転軸11に同軸に取り付けたスリット円板31と、エンコーダケース12の側に取り付けた実装基板32(ST基板)とを備えている。実装基板32には、発光素子、受光素子、これらの制御回路部品等が実装されている。
【0025】
また、ロータリエンコーダ10は、磁気式エンコーダ部20、光学式エンコーダ部30から得られる検出信号を処理する信号処理回路等を構成する電子部品等が実装された実装基板41、および、外部との間で信号の送受を行うインターフェース回路等を構成する電子部品等が実装された実装基板42を備えている。
【0026】
さらに、ロータリエンコーダ10は、実装基板22、32、41、42の間を接続するための配線パターンがプリントされた円環形状をしたプリント配線基板50と、プリント配線基板50と実装基板22、32、41、42のそれぞれとの間を接続する4本の基板間配線用ケーブル60、外部から引き込まれる電源供給用の給電用配線ケーブル71およびエンコーダ信号出力用の配線ケーブル72が接続される端子部70とを備えている。円環形状をしたプリント配線基板50には、外部から供給される電力を、各実装基板22、32、41、42に分配するための給電用の配線パターン、および、各実装基板22、32、41、42の間において信号の送受を行う信号伝送用の配線パターンが実装されている。
【0027】
円環形状をしたプリント配線基板50は、中空回転軸11を同軸に取り囲む状態に配置されている。実装基板22、32、41、42は、円環状スペース15に配列するのに適した円弧形状をした基板であり、プリント配線基板50の外周側において、円周方向に所定の間隔で配列されている。4枚の実装基板22、32、41、42および1枚のプリント配線基板50は、エンコーダケース12に取り付けた基板サポート80に取り付けられている。
【0028】
プリント配線基板50において、各実装基板22、32、41、42に対峙する部位には、それぞれ、半径方向の外方を向く状態に、ケーブルコネクタ61が実装されている。各実装基板22、32、41、42には、半径方向の内方を向く状態で、ケーブルコネクタ62が実装されている。基板間配線用ケーブル60は、プリント配線基板50のケーブルコネクタ61と、各実装基板22、32、41、42のケーブルコネクタ62との間において、半径方向に架け渡されている。
【0029】
なお、本例のロータリエンコーダ10では、磁気式エンコーダ部20および光学式エンコーダ部30の検出信号に基づき、A相信号およびB相信号がそれぞれ生成される。これらのエンコード信号に基づき、中空モータ軸3の1回転内における絶対回転位置、および、当該中空モータ軸3の原点位置からの回転数等が算出される。
【0030】
本例のロータリエンコーダ10は、円環状スペース15内において、円周方向に配列された複数枚(4枚)の実装基板22、32、41、42と、これらの半径方向の内側に配置した円環形状のプリント配線基板50と、各実装基板22、32、41、42とプリント配線基板50との間を繋ぐ4本の基板間配線用ケーブル60を備えている。図3に示す従来の場合とは異なり、実装基板22、32、41、42を接続するための配線用ケーブルを円周方向に引き回す必要がなく、各実装基板の間は、円環形状のプリント配線基板50を経由して電気的に接続される。
【0031】
例えば、外部から供給される電力は、プリント配線基板50を経由して、各実装基板22、32、41、42に分配される。実装基板に電力等を供給するための配線用ケーブルおよび、その設置スペースが不要となる。狭い円環状スペース15に配置される複数枚の分割基板の間の結線作業が容易になり、長い配線ケーブルを介して伝送される信号の品質劣化を抑えることができる。
【0032】
また、隣接する実装基板22、32、41、42の間に、ケーブルコネクタ、配線ケーブル等を配置するためのスペースを確保する必要がない。隣接する分割基板の間の隙間を広くする必要がないので、狭い円環状スペース15を有効活用できる。
【0033】
さらに、円環形状のプリント配線基板50に対して、各実装基板22、32、41、42が半径方向の外側から配線接続される。ケーブルコネクタを、プリント配線基板、分割基板に対して、半径方向から着脱すればよいので、その着脱も容易である。
【0034】
次に、図3に示す従来構成のロータリエンコーダの場合においては、モータのサイズ毎に配線ケーブル長を専用設計する必要がある。また、小形サイズのモータに適用する場合は、ケーブルコネクタの実装エリアに留意して設計する必要があるため、設計自由度が下がる。一方で、大形サイズのモータにはケーブル長を長くすることに起因して、信号の品質劣化のリスクが高くなる。これに対して、本例のロータリエンコーダ10は、モータのサイズに関係なく、部品(分割基板、プリント配線基板、基板間配線用ケーブル)を共通化でき、生産管理が容易になるというメリットがある。
【0035】
図2は、ロータリエンコーダ10を、図1の場合よりも大径の円環状スペース15Aを備えたサイズの大きな中空モータに組み込んだ場合の一例を示す説明図である。実装基板22、32、41、42、プリント配線基板50、基板間配線用ケーブル60をそのまま用いることができる。大形サイズのモータに適用する場合においても、配線ケーブルの長さを最小限に抑えることができ、信号品質を良好に保つことができる。例えば、配線用ケーブルを用いて実装基板42、32の間を接続する場合には、図2において一点鎖線で示すように、配線長が長くなってしまう。本例では、破線で示すように円環形状のプリント配線基板50を介して基板間が接続されるので、配線長を大幅に短くできる。
【0036】
(その他の実施の形態)
以上、本発明を適用したロータリエンコーダを備えた中空モータについて説明したが、本発明のロータリエンコーダは、中空モータと中空波動歯車装置等の中空型の歯車式減速機とを備えた中空アクチュエータに対しても同様に適用できることは勿論である。
【0037】
また、上記のロータリエンコーダ10は、エンコーダ基板として4枚の実装基板を備えている。実装基板の枚数は4枚に限定されるものではない。また、各実装基板の形状は円弧形状に限定されるものではない。
【0038】
さらに、上記の例では、円環形状のプリント配線基板を、実装基板に対して半径方向の内側に配置してある。プリント配線基板を、実装基板に対して、半径方向の外側に配置することも可能である。また、プリント配線基板を、実装基板の側方の位置、すなわち、実装基板に対して、エンコーダ中心軸線の方向に隣接した位置に配置することも可能である。
図1
図2
図3