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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】基板研削装置及び基板研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20230626BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20230626BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B41/06 L
H01L21/304 631
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018171475
(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公開番号】P2020040189
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】井出 悟
(72)【発明者】
【氏名】三井 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】坂東 翼
(72)【発明者】
【氏名】高岡 和宏
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-097551(JP,A)
【文献】特開2007-203432(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138355(WO,A1)
【文献】米国特許第05622875(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
B24B 41/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着して保持した状態で回転するワークテーブルと、
前記ワークテーブルに保持されて回転する前記基板の上面に接近して回転しながら前記基板の前記上面を研削するカップホイール型の第1の研削といしと
記第1の研削といしと同時に前記基板の前記上面に接近して回転しながら前記基板の前記上面を研削するカップホイール型の第2の研削といしと、を具備し、
前記第1の研削といしの粒度は、前記第2の研削といしの粒度よりも大きく、
前記第1の研削といしは、研削範囲の直径が前記基板の回転中心から前記基板の最外周までの距離よりも大きく、といし刃先が前記基板の回転中心を通過する位置に設けられており、
前記第1の研削といし及び前記第2の研削といしは、前記第1の研削といしよりも前記第2の研削といしの方が前記基板に近い状態で同時に前記基板に接近して前記基板を研削した後、前記第2の研削といしが前記基板から離れた状態で前記第1の研削といしが前記基板に接近して前記第1の研削といしのみで前記基板を研削することを特徴とする基板研削装置。
【請求項2】
前記第1の研削といしは、研削範囲の直径が前記ワークテーブルの半径よりも大きく
記第2の研削といしは、研削範囲の直径が前記ワークテーブルの半径よりも大きく、前記基板の回転中心に近く前記第1の研削といしに接触しない位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板研削装置。
【請求項3】
回転自在なワークテーブルに基板を吸着させるチャッキング工程と、
前記ワークテーブルを回転させて保持されている前記基板を回転させると共にカップホイール型の第1の研削といし及び第2の研削といしを回転させ前記基板の上面に接近させて前記基板の前記上面を研削する研削工程と、を具備し、
前記第1の研削といしの粒度は、前記第2の研削といしの粒度よりも大きく、
前記第1の研削といしは、研削範囲の直径が前記基板の回転中心から前記基板の最外周までの距離よりも大きく、前記研削工程において、といし刃先が前記基板の回転中心を通過する位置に送られ、
前記研削工程において、前記第1の研削といしよりも前記第2の研削といしの方が前記基板に近い状態で前記第1の研削といし及び前記第2の研削といしが同時に前記基板に接近して前記基板を研削する粗研削工程が実行された後、前記第2の研削といしが前記基板から離れた状態で前記第1の研削といしが前記基板に接近して前記第1の研削といしのみで前記基板を研削する仕上げ研削工程が実行されることを特徴とする基板研削方法。
【請求項4】
前記第1の研削といしは、研削範囲の直径が前記ワークテーブルの半径よりも大きく
記第2の研削といしは、研削範囲の直径が前記ワークテーブルの半径よりも大きく、前記研削工程において、前記基板の回転中心に近く前記第1の研削といしに接触しない位置に送られることを特徴とする請求項3に記載の基板研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板研削装置及び基板研削方法に関し、特に、大型実装基板の研削に適した基板研削装置及び基板研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板研削方法として、ワークテーブルに保持されて回転している加工対象物である基板の上面に回転するカップホイール型の研削といしをダウンフィードして基板を研削することが知られている。例えば、特許文献1には、吸着チャックに固定されたシリコン基板をカップホイール型研削といしによりダウンフィード研削加工することが開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、粗研削用と仕上げ研削用の2台の研削ユニットを備えた半導体ウェーハの研削装置が開示されている。同文献に開示された研削装置によれば、チャックテーブルに保持されたウェーハは、ターンテーブルがR方向へ所定角度回転することにより、粗研削用研削ユニット下方の一次加工位置に送り込まれ、この位置で該研削ユニットにより粗研削される。次いでウェーハは、再度ターンテーブルがR方向へ所定角度回転することにより、仕上げ研削用の研削ユニットの下方の二次加工位置に送り込まれ、この位置で該研削ユニットにより仕上げ研削される。
【0004】
また、例えば、特許文献3には、保持テーブル上に保持されたサファイア、SiC、GaN等の基板の研削装置において、基板を粗研削する粗研削ポジションと、基板を中研削する中研削ポジションと、基板を仕上げ研削する仕上げ研削ポジションとを設定し、粗研削ポジションと、中研削ポジションと、仕上げ研削ポジションとにそれぞれ研削装置を設けると共に、これらの研削装置を直線状に配置して構成し、基板を粗研削、中研削、仕上げ研削の順に直列的に処理することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-103441号公報
【文献】特開2009-4406号公報
【文献】特開2014-65082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術による基板研削装置及び基板研削方法では、効率的な研削加工を実現するために改善すべき点があった。具体的には、近年大型化が進められている、例えば、WLP(Wafer Level Package)や、WLPを更に大型化した大型実装基板であるPLP(Panel Level Package)等を、効率的且つ高精度に研削する技術が求められている。
【0007】
例えば、特許文献1に開示された従来技術のように、回転する基板を回転するカップホイール型の研削といしで研削するダウンフィード型の基板研削装置では、1種類の研削といしで反りのある大型実装基板を研削すると加工時間が長くなってしまう。
【0008】
詳しくは、PLP等の大型実装基板は、基板サイズが大きいことに加え、基板の反りも大きい。この種の基板は、ワークテーブルのチャック機構に真空吸着された状態においても、中央部分に比べて外周部が持ち上がった形状となる。一般的には、基板の中央部分が研削されるよりも外周部分のほうが100~200μm程先に研削といしに接触する。この100~200μmの厚さに対しても仕上げ研削の送り速度で研削することが必要であるため加工時間が長くなる。
【0009】
また、大型実装基板の研削では、樹脂の研削面を高精度に仕上げると共に銅電極も高精度に研削して仕上げることが必要であるため、摩耗量の多い研削といしが使用される。上述の如く、大型実装基板の研削では、基板の反りが大きく、研削加工時間が長いため、多くの研削といしが必要になるという問題点がある。
【0010】
また、特許文献2や特許文献3に開示された従来技術のように、粗研削用、仕上げ研削用等、複数種類の研削といしを備え、ターンテーブル等によって基板を移動して順次研削を実行する方法では、大型実装基板に対応するために基板研削装置が大きくなる。即ち、PLP等の大型実装基板は、シリコンウェーハ等に比べて面積が大きいので、粗研削と仕上げ研削の2つの工程に対応するワークテーブルの移動位置を備えた大型の基板研削装置が必要となる。しかしながら、基板研削装置を大型化することは困難であった。
【0011】
また、PLP等の大型実装基板には特有の反りがあり、チャッキングした基板を研削して反りをなくした後に取り外して再度チャッキングすると別の反りが発生してしまうという特性がある。そのため、粗研削用設備と仕上げ研削用設備を設け、粗研削用設備で粗研削を行った後にチャッキングを外して仕上げ研削用の設備に搬送してチャッキングしなおして仕上げ研削する方法では、高精度な仕上げ研削を実行することが難しい。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大型の基板を効率良く高精度に研削することができる基板研削装置及び基板研削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の基板研削装置は、基板を吸着して保持した状態で回転するワークテーブルと、前記ワークテーブルに保持されて回転する前記基板の上面に接近して回転しながら前記基板の前記上面を研削するカップホイール型の第1の研削といしと、前記第1の研削といしと同時に前記基板の前記上面に接近して回転しながら前記基板の前記上面を研削するカップホイール型の第2の研削といしと、を具備し、前記第1の研削といしの粒度は、前記第2の研削といしの粒度よりも大きく、前記第1の研削といしは、研削範囲の直径が前記基板の回転中心から前記基板の最外周までの距離よりも大きく、といし刃先が前記基板の回転中心を通過する位置に設けられており、前記第1の研削といし及び前記第2の研削といしは、前記第1の研削といしよりも前記第2の研削といしの方が前記基板に近い状態で同時に前記基板に接近して前記基板を研削した後、前記第2の研削といしが前記基板から離れた状態で前記第1の研削といしが前記基板に接近して前記第1の研削といしのみで前記基板を研削することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の基板研削方法は、回転自在なワークテーブルに基板を吸着させるチャッキング工程と、前記ワークテーブルを回転させて保持されている前記基板を回転させると共にカップホイール型の第1の研削といし及び第2の研削といしを回転させ前記基板の上面に接近させて前記基板の前記上面を研削する研削工程と、を具備し、前記第1の研削といしの粒度は、前記第2の研削といしの粒度よりも大きく、前記第1の研削といしは、研削範囲の直径が前記基板の回転中心から前記基板の最外周までの距離よりも大きく、前記研削工程において、といし刃先が前記基板の回転中心を通過する位置に送られ、前記研削工程において、前記第1の研削といしよりも前記第2の研削といしの方が前記基板に近い状態で前記第1の研削といし及び前記第2の研削といしが同時に前記基板に接近して前記基板を研削する粗研削工程が実行された後、前記第2の研削といしが前記基板から離れた状態で前記第1の研削といしが前記基板に接近して前記第1の研削といしのみで前記基板を研削する仕上げ研削工程が実行されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の基板研削装置によれば、ワークテーブルに保持されて回転する基板を回転しながら研削するカップホイール型の第1の研削といしと、第1の研削といしと同時に基板に接近して回転しながら基板を研削するカップホイール型の第2の研削といしと、を具備する。これにより、基板の位置を変更することなく第1の研削といしと第2の研削といしで同時に基板を研削することができるので、基板研削装置を大型化することなく、大型の基板を効率良く研削することができる。
【0016】
例えば、反りの大きいPLP等の大型実装基板をターンテーブル等で搬送することなく第1の研削といしと第2の研削といしで同時に研削することができ、短時間で高精度な研削工程が実現する。
【0017】
また、本発明の基板研削装置によれば、第1の研削といしは、研削範囲の直径がワークテーブルの半径よりも大きく、その研削範囲が基板の回転中心を通過する位置に設けられており、第2の研削といしは、研削範囲の直径がワークテーブルの半径よりも大きく、基板の回転中心に近く第1の研削といしに接触しない位置に設けられても良い。これにより、第2の研削といしで基板の外周部から回転中心近傍までの研削を行いながら、第1の研削といしで回転中心を含む基板の被加工面全てを高精度に研削することができる。
【0018】
また、本発明の基板研削装置によれば、第1の研削といしの粒度は、第2の研削といしの粒度よりも大きく、即ち、第1の研削といしの砥粒径は、第2の研削といしの砥粒径よりも小さく、第1の研削といし及び第2の研削といしは、第1の研削といしよりも第2の研削といしの方が基板に近い状態で基板に接近して基板を研削した後、第2の研削といしが基板から離れた状態で第1の研削といしが基板に接近して基板を研削しても良い。これにより、第2の研削といしで基板の粗研削を行い、その後、第1の研削といしで基板の仕上げ研削を行うことができ、粗研削から仕上げ研削までの工程を効率的に実行することができる。また、仕上げ研削用の第1の研削といしの加工代を極めて少なくすることができ、第1の研削といしの摩耗量を低減することができる。
【0019】
具体的には、本発明の基板研削装置によれば、1種類の研削といしで粗研削から仕上げ研削までの全ての研削工程を実行する従来技術の研削方法に比べて、研削時間を約1/2に、研削といしのランニングコストを約1/3に抑えることができる。
【0020】
また、本発明の基板研削方法によれば、回転自在なワークテーブルに基板を吸着させるチャッキング工程と、ワークテーブルを回転させて保持されている基板を回転させると共にカップホイール型の第1の研削といし及び第2の研削といしを回転させ基板に同時に接近させて基板を研削する研削工程と、を具備しても良い。これにより、ワークテーブルの搬送回数を減らし基板研削装置の大型化を抑えつつ効率的な基板研削が行われる。
【0021】
また、本発明の基板研削方法によれば、第1の研削といしは、研削範囲の直径がワークテーブルの半径よりも大きく、研削工程において、研削範囲が基板の回転中心を通過する位置に送られ、第2の研削といしは、研削範囲の直径がワークテーブルの半径よりも大きく、研削工程において、基板の回転中心に近く第1の研削といしに接触しない位置に送られても良い。これにより、第2の研削といしで基板の外周部から回転中心近傍までを、第1の研削といしで回転中心を含む基板の被加工面の全体を効率的且つ高精度に研削することができる。
【0022】
また、本発明の基板研削方法によれば、第1の研削といしの粒度は、第2の研削といしの粒度よりも大きく、研削工程において、第1の研削といしよりも第2の研削といしの方が基板に近い状態で第1の研削といし及び第2の研削といしが基板に接近して基板を研削する粗研削工程が実行された後、第2の研削といしが基板から離れた状態で第1の研削といしが基板に接近して基板を研削する仕上げ研削工程が実行されても良い。これにより、第2の研削といしで基板の粗研削を行い、その後、第1の研削といしで基板の仕上げ研削を行うことができる。そのため、第1の研削といしの研磨量を抑えつつ大型実装基板等を効率良く高精度に研削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る基板研削装置の概略を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る基板研削装置の研削ステージ付近を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る基板研削装置の研削ステージ付近を模式的に示す縦断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る基板研削装置の粗研削工程における基板の回転中心付近を模式的に示す縦断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る基板研削装置の仕上げ研削工程における基板の回転中心付近を模式的に示す縦断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る基板研削装置の仕上げ研削工程における基板の回転中心付近を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る基板研削装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る基板研削装置10の概略を示す平面図である。図1を参照して、基板研削装置10は、基板30を研削または研磨する装置である。
【0025】
基板研削装置10の加工対象物である基板30は、例えば、PLP等の大面積の実装基板や、パッケージ基板、その他の積層基板、半導体基板、コンデンサ等の素子用の基板等であっても良い。基板研削装置10は、基板30の主面から基板30を構成する樹脂層、銅電極、半導体素子等を高精度に研削または研磨し、反りのある大面積の基板30であっても効率良く加工することができる。
【0026】
基板研削装置10は、加工対象物である基板30を設置するためのスタンバイステージ23と、基板30の研削を実行するための研削ステージ24と、基板30を保持するワークテーブル20と、第1の研削といしとしての仕上げ研削といし11と、第2の研削といしとしての粗研削といし15と、を有する。
【0027】
スタンバイステージ23は、加工前に加工対象の基板30をワークテーブル20に固定し、研削加工後にワークテーブル20から基板30のチャッキングを取り外すためのステージである。
【0028】
スタンバイステージ23の上方には、ワークテーブル20の真空チャックに基板30を吸着させるための貼付ハウジング22が設けられている。スタンバイステージ23において、ワークテーブル20の上面に載置された基板30は、上方から下降する貼付ハウジング22と下方のワークテーブル20との間に挟まれ、真空吸着によってワークテーブル20に固定される。基板30がワークテーブル20に固定された後、貼付ハウジング22は基板30から離れて上昇する。
【0029】
ワークテーブル20は、研削工程において基板30を保持した状態で回転するテーブルであり、スタンバイステージ23と研削ステージ24との間を略水平に移動して基板30を搬送することができるよう設けられている。
【0030】
具体的には、ワークテーブル20は、スタンバイステージ23で上面に基板30が吸着された後、研削ステージ24の所定の位置に移動し、基板30を支持した状態で回転する。基板30の研削が終了した後、ワークテーブル20は、スタンバイステージ23の所定の位置に移動する。
【0031】
研削ステージ24は、基板30の研削工程を実行するためのポジションである。研削ステージ24には、ワークテーブル20の上面に吸着された基板30がワークテーブル20と共に搬送され、仕上げ研削といし11及び粗研削といし15によって基板30の研削工程が行われる。
【0032】
仕上げ研削といし11は、回転しながら基板30を研削するカップホイール型の研削といしであり、仕上げ研削コラム14によって上下方向に移動可能に支持されている。仕上げ研削といし11は、研削ステージ24に搬送されたワークテーブル20及び基板30の上方に設けられている。
【0033】
粗研削といし15は、回転しながら基板30を研削するカップホイール型の研削といしであり、粗研削コラム18によって上下方向に移動可能に支持されている。粗研削といし15は、研削ステージ24に搬送されたワークテーブル20及び基板30の上方に設けられている。
【0034】
仕上げ研削といし11及び粗研削といし15は、同時に回転しながら、ワークテーブル20に保持されて回転する基板30に対して同時に接近して、基板30を研削することができる。
【0035】
また、研削ステージ24には、定寸装置26が設けられている。定寸装置26は、基板30を高精度に研削するため、基板30の上面位置を正確に検出して基板30の加工寸法を計測する装置である。
【0036】
基板研削装置10には、制御盤25が設けられている。制御盤25は、各種情報を入力するための入力部や各種情報を表示するモニター、各種演算等を行う演算部等を有する。制御盤25は、入力された情報に基づき、各種演算を実行し、基板研削装置10全体における加工の監視及び制御等を行う。
【0037】
また、基板研削装置10には、仕上げ研削といし11及び粗研削といし15を洗浄するための図示しない洗浄液噴射装置が設けられても良い。洗浄液噴射装置は、仕上げ研削といし11に洗浄液を吹き付けるための噴射ノズルと、粗研削といし15に洗浄液を吹き付けるための噴射ノズルと、を有する。
【0038】
噴射ノズルからは、例えば、3MPaから17MPaの圧力で、仕上げ研削といし11及び粗研削といし15の基板30から離れたといし刃先12、16(図3参照)近傍に洗浄液が噴射される。これにより、研削工程において、仕上げ研削といし11及び粗研削といし15に付着した削り屑を洗い流すことができ、基板30を高精度に研削することができる。
【0039】
図2は、基板研削装置10の研削ステージ24付近を示す平面図である。図3は、研削ステージ24付近を模式的に示す縦断面図である。図2及び図3を参照して、研削ステージ24には、基板30の上方に、基板30を研削する仕上げ研削といし11及び粗研削といし15が併設されている。
【0040】
仕上げ研削といし11は、主として基板30の仕上げ研削を行うといしである。粗研削といし15は、基板30の粗研削を行うといしである。よって、仕上げ研削といし11の粒度は、粗研削といし15の粒度よりも大きい。また、仕上げ研削といし11の直径は、粗研削といし15の直径に等しいまたは粗研削といし15の直径よりも大きい。
【0041】
仕上げ研削といし11は、研削範囲の直径がワークテーブル20の半径よりも大きく、その研削範囲が基板30の回転中心21を通過する位置に設けられている。これにより、仕上げ研削といし11は、基板30の被加工面である上面31の全体を高精度に仕上げ研削することができる。
【0042】
粗研削といし15は、研削範囲の直径がワークテーブル20の半径よりも大きく、基板30の回転中心21に近く、仕上げ研削といし11に接触しない位置に設けられている。これにより、粗研削といし15は、基板30の外周部から回転中心21近傍までの上面31を粗研削することができる。
【0043】
即ち、基板研削装置10は、研削ステージ24において、粗研削といし15で基板30の外周部から回転中心21近傍までの研削を行いながら、仕上げ研削といし11で回転中心21を含む基板30の被加工面全てを高精度に研削することができる。
【0044】
このように基板30の位置を変更することなく仕上げ研削といし11と粗研削といし15で同時に基板30を研削することができるので、粗研削用のテーブル設置設備と仕上げ研削用のテーブル設置設備を分けて設ける必要がない。よって、基板研削装置10の大型化を抑えて、大型の基板30を効率良く研削することができる。
【0045】
例えば、加工対象の基板30が反りの大きいPLP等の大型実装基板等であっても、ターンテーブル等を設けてワークテーブル20を搬送することなく、仕上げ研削といし11と粗研削といし15で同時に効率良く研削することができる。このように、基板研削装置10によって短時間で高精度な研削工程が実現する。
【0046】
次に、基板研削装置10による基板製造方法について詳細に説明する。
図1を参照して、先ず、回転自在なワークテーブル20に基板30を吸着させるチャッキング工程が実行される。
【0047】
チャッキング工程では、ロボット等によってスタンバイステージ23にあるワークテーブル20の上面に加工対象物である基板30が載置される。そして、基板30の上方から貼付ハウジング22が下降し、基板30はワークテーブル20に真空吸着される。そして、基板30を保持したワークテーブル20は、スタンバイステージ23から研削ステージ24へと移動する。
【0048】
研削ステージ24において、基板30を研削する研削工程が実行される。研削工程では、先ず、定寸装置26によって基板30の厚さが測定され、基板30の上面31(図3参照)よりエアーカット分高いところに粗研削といし15が位置決めされる。
【0049】
研削工程において、ワークテーブル20に保持されている基板30は、ワークテーブル20と共に回転し、回転しながら下降して接触する仕上げ研削といし11及び粗研削といし15によって研削される。なお、研削工程の詳細については後述する。
【0050】
研削工程によって研削が行われた基板30は、ワークテーブル20と共に研削ステージ24からスタンバイステージ23に移動する。そして、研削加工後の基板30は、真空吸着が切られ、ワークテーブル20から取り外される。
【0051】
次に、図4ないし図6を参照して、基板研削装置10による基板30の研削工程について詳細に説明する。
図4は、粗研削工程における基板30の回転中心21付近を模式的に示す縦断面図である。研削工程では、先ず、粗研削工程が実行される。図4を参照して、粗研削工程では、仕上げ研削といし11及び粗研削といし15は、仕上げ研削といし11よりも粗研削といし15の方が基板30の上面31に近い状態で基板30に接近して基板30を研削する。
【0052】
仕上げ研削といし11のといし刃先12から下方の粗研削といし15のといし刃先16までの距離は、例えば、1から50μm、好ましくは、1から30μmである。このように粗研削工程において、粗研削といし15の方が基板30に近い状態で研削が行われることにより、粒度の小さく摩耗の少ない研削といし15によって、基板30の回転中心21近傍を除く広い範囲の研削が効率良く行われる。
【0053】
前述のとおり、基板30の回転中心21を含む全体を研削可能な仕上げ研削といし11は、粗研削といし15と同時に回転しながら下降する。これにより、粗研削といし15が接触せずに研削されなかった基板30の回転中心21近傍の凸部32を、仕上げ研削といし11で粗研削することができる。粗研削工程における仕上げ研削といし11の研削範囲は、回転中心21近傍の狭い範囲であるため、仕上げ研削といし11の摩耗を抑えることができる。
【0054】
研削工程において、仕上げ研削といし11及び粗研削といし15は、互いの位置関係を維持したまま同じ切り込み速度で送られる。粗研削工程における仕上げ研削といし11及び粗研削といし15の切り込み速度は、例えば、10から300μm/分が好ましく、更に好ましくは、30から300μm/分である。これにより仕上げ研削といし11及び粗研削といし15の摩耗が少なく、効率的で高精度な研削が可能となる。
【0055】
図5は、仕上げ研削工程の開始直後における基板30の回転中心21付近を模式的に示す縦断面図である。粗研削工程が実行された後、図5に示すように、粗研削といし15は、仕上げ研削といし11よりも上方に移動する。即ち、粗研削といし15のといし刃先16は、仕上げ研削といし11のといし刃先12よりも上方になり、基板30の上面31から離れた状態となる。
【0056】
仕上げ研削工程では、粗研削といし15が基板30の上面に接触しない状態で仕上げ研削といし11が回転しながら基板30に接触して基板30の研削が行われる。これにより、粗研削工程において粗研削といし15の刃先が接触せずに研削されなかった基板30の回転中心21近傍の凸部32が仕上げ研削といし11によって研削される。
【0057】
仕上げ研削工程における仕上げ研削といし11の切り込み速度は、例えば、10から300μm/分が好ましく、更に好ましくは、10から100μm/分である。これにより仕上げ研削といし11の摩耗が少なく、効率的で高精度な仕上げ研削が可能となる。
【0058】
図6は、仕上げ研削工程における基板30の回転中心21付近を模式的に示す縦断面図である。仕上げ研削工程が開始されて基板30の図5に示す凸部32が仕上げ研削といし11によって研削された後、図6に示すように、仕上げ研削といし11による基板30の研削が引き続き実行される。これにより、仕上げ研削といし11のといし刃先12によって、基板30の上面31全体が高精度に仕上げ研削されて平坦化する。
【0059】
そして、仕上げ研削といし11による仕上げ研削により、定寸装置26で測定する基板30の厚さが指定した厚さになったら、仕上げ研削といし11の下降を停止する。その後、仕上げ研削といし11の下降を停止した状態で基板30及び仕上げ研削といし11の回転を所定時間継続するスパークアウト研削を実行した後、仕上げ研削といし11を上昇させて回転を停止する。これにより仕上げ研削工程は終了する。
【0060】
前述のとおり、粗研削工程において粗研削といし15で基板30の上面31の広い範囲が粗研削されているので、仕上げ研削工程における仕上げ研削といし11の加工代は極めて少なく、仕上げ研削といし11の摩耗量は少ない。
【0061】
具体的には、基板研削装置10によれば、1種類の研削といしで粗研削から仕上げ研削までの全ての研削工程を実行する従来技術の研削方法に比べて、研削時間を約1/2以下に、研削といしのランニングコストを約1/3以下に抑えることができる。
【0062】
以上説明の如く、本実施形態では、ワークテーブル20の搬送回数を減らし装置の大型化を抑えつつ効率的な研削加工が行われる。また、仕上げ研削といし11の研磨量を抑えつつ大型実装基板等を効率良く高精度に研削することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 基板研削装置
11 仕上げ研削といし
12 といし刃先
14 仕上げ研削コラム
15 粗研削といし
16 といし刃先
18 粗研削コラム
20 ワークテーブル
21 回転中心
22 貼付ハウジング
23 スタンバイステージ
24 研削ステージ
25 制御盤
26 定寸装置
30 基板
31 上面
32 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6