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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/28 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
G01R27/28 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018238631
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020101407
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悟朗
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0324375(US,A1)
【文献】米国特許第7058377(US,B1)
【文献】特開2004-132985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00-27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の一方の電極に接続される第1ポートから励振信号を出力する励振ユニット、当該励振ユニットと別体にして構成されて、前記測定対象の他方の電極に接続される第2ポートから当該測定対象を通過した前記励振信号を通過信号として受信する受信ユニット、および処理部を備え、
前記励振ユニットは、
第1周波数の第1正弦波信号、および当該第1周波数のm倍(mは2以上の任意の自然数)の第2周波数であって前記第1正弦波信号と同一振幅の第2正弦波信号を含む第1信号を出力する第1信号出力部と、
前記第1正弦波信号に対して位相が90°ずれると共に当該第1正弦波信号と同一振幅で、かつ前記第1周波数の信号である第1余弦波信号、および前記第2正弦波信号に対して位相が90°ずれると共に前記第1正弦波信号と同一振幅で、かつ前記第2周波数の信号である第2余弦波信号を含む第2信号を出力する第2信号出力部と、
前記第1正弦波信号と同一振幅の第1正弦波励振信号、および当該第1正弦波励振信号の位相を90°ずらした信号である第1余弦波励振信号を設定された局発周波数で出力する第1局発部と、
前記第1信号、前記第1余弦波励振信号、前記第2信号および前記第1正弦波励振信号に基づいて、前記局発周波数に前記第1周波数が加算された第1加算周波数の第1正弦波加算信号、および前記局発周波数に前記第2周波数が加算された第2加算周波数の第2正弦波加算信号を含む信号を前記励振信号として前記第1ポートに出力する第1信号生成部とを備え、
前記受信ユニットは、
前記第1正弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第3正弦波信号、および前記第2正弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第4正弦波信号を含む第3信号を出力する第3信号出力部と、
前記第1余弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第3余弦波信号、および前記第2余弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第4余弦波信号を含む第4信号を出力する第4信号出力部と、
前記第1正弦波励振信号と同一振幅であって同一周波数の第2正弦波励振信号および前記第1余弦波励振信号と同一振幅であって同一周波数の第2余弦波励振信号を設定された前記局発周波数で出力する第2局発部と、
前記第3信号、前記第2余弦波励振信号、前記第4信号および前記第2正弦波励振信号に基づいて、前記励振信号と同一振幅であって同一周波数の内部励振信号を出力する第2信号生成部と、
前記第1正弦波信号と同一振幅の正弦波基準信号を設定された前記局発周波数で出力する基準局発部と、
前記第1正弦波加算信号に対して前記測定対象を通過する際に生じる第1位相ずれ分だけ位相がずれた第1正弦波通過信号、および前記第2正弦波加算信号に対して前記測定対象を通過する際に生じる第2位相ずれ分だけ位相がずれた第2正弦波通過信号を含む前記第2ポートで受信される前記通過信号と、前記正弦波基準信号とをミキシングして第1出力ミキシング信号として出力すると共に、前記正弦波基準信号および前記内部励振信号をミキシングして第2出力ミキシング信号として出力する受信側ミキサ部とを備え、
前記処理部は、
前記第1局発部、前記第2局発部および前記基準局発部に対して前記局発周波数を設定する周波数設定処理、
前記第1周波数であって前記第1位相ずれ分を含む第1余弦波受信信号と前記第2周波数であって前記第2位相ずれ分を含む第2余弦波受信信号とが加算された信号を前記第1出力ミキシング信号から抽出すると共に、前記第1周波数の第1余弦波参照信号と前記第2周波数の第2余弦波参照信号とが加算された信号を前記第2出力ミキシング信号から抽出するフィルタ処理、
並びに前記第1余弦波受信信号および前記第1余弦波参照信号の位相差と前記第2余弦波受信信号および前記第2余弦波参照信号の位相差との差分値を、前記第1位相ずれ分および前記第2位相ずれ分の差分位相として算出すると共に、前記第1加算周波数および前記第2加算周波数に対応させて前記差分位相を記憶する位相算出処理を実行可能に構成されて、
記周波数設定処理において設定する前記局発周波数を予め規定された測定周波数帯域に亘って変更しつつ当該周波数設定処理から前記位相算出処理までの各処理を実行することにより、前記測定対象に関する前記差分位相についての前記第1周波数および前記第2周波数の差分周波数間隔毎の変化状態を示す差分位相変化データを測定する差分位相測定処理を実行する測定装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記測定対象に代えてスルー校正用の標準器が前記第1ポートおよび前記第2ポート間に接続された状態において、前記周波数設定処理において設定する前記局発周波数を前記測定周波数帯域に亘って変更しつつ当該周波数設定処理から前記位相算出処理までの各処理を実行することにより、当該測定周波数帯域内における前記標準器に関する前記差分位相についての前記差分周波数間隔毎の変化状態を示す補正用差分位相変化データを測定する補正用差分位相測定処理と、
前記差分位相変化データを前記補正用差分位相変化データで補正する補正処理とを実行する請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
測定対象の一方の電極に接続される第1ポートから励振信号を出力する励振ユニット、当該励振ユニットと別体にして構成されて、前記測定対象の他方の電極に接続される第2ポートから当該測定対象を通過した前記励振信号を通過信号として受信する受信ユニット、および処理部を備え、
前記励振ユニットは、
第1周波数の第1正弦波信号、および当該第1周波数のm倍(mは2以上の任意の自然数)の第2周波数であって前記第1正弦波信号と同一振幅の第2正弦波信号を含む第1信号を出力する第1信号出力部と、
前記第1正弦波信号に対して位相が90°ずれると共に当該第1正弦波信号と同一振幅で、かつ前記第1周波数の信号である第1余弦波信号、および前記第2正弦波信号に対して位相が90°ずれると共に前記第1正弦波信号と同一振幅で、かつ前記第2周波数の信号である第2余弦波信号を含む第2信号を出力する第2信号出力部と、
前記第1正弦波信号と同一振幅の第1正弦波励振信号、および当該第1正弦波励振信号の位相を90°ずらした信号である第1余弦波励振信号を設定された局発周波数で出力する第1局発部と、
前記第1信号および前記第1余弦波励振信号をミキシングして第1ミキシング信号として出力する第1ミキサ部と、
前記第2信号および前記第1正弦波励振信号をミキシングして第2ミキシング信号として出力する第2ミキサ部と、
前記第1ミキシング信号および前記第2ミキシング信号を加算することにより、前記局発周波数に前記第1周波数が加算された第1加算周波数の第1正弦波加算信号、および前記局発周波数に前記第2周波数が加算された第2加算周波数の第2正弦波加算信号を含む信号を前記励振信号として前記第1ポートに出力する第1加算部とを備え、
前記受信ユニットは、
前記第1正弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第3正弦波信号、および前記第2正弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第4正弦波信号を含む第3信号を出力する第3信号出力部と、
前記第1余弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第3余弦波信号、および前記第2余弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第4余弦波信号を含む第4信号を出力する第4信号出力部と、
前記第1正弦波励振信号と同一振幅であって同一周波数の第2正弦波励振信号および前記第1余弦波励振信号と同一振幅であって同一周波数の第2余弦波励振信号を設定された前記局発周波数で出力する第2局発部と、
前記第3信号および前記第2余弦波励振信号をミキシングして第3ミキシング信号として出力する第3ミキサ部と、
前記第4信号および前記第2正弦波励振信号をミキシングして第4ミキシング信号として出力する第4ミキサ部と、
前記第3ミキシング信号および前記第4ミキシング信号を加算すると共に内部励振信号として出力する第2加算部と、
前記第1正弦波信号と同一振幅の正弦波基準信号を設定された前記局発周波数で出力する基準局発部と、
前記第2ポートで受信される前記通過信号であって、前記第1正弦波加算信号に対して前記測定対象を通過する際に生じる第1位相ずれ分だけ位相がずれた第1正弦波通過信号、および前記第2正弦波加算信号に対して前記測定対象を通過する際に生じる第2位相ずれ分だけ位相がずれた第2正弦波通過信号を含む信号と、前記正弦波基準信号とをミキシングして第5ミキシング信号として出力する第5ミキサ部と、
前記正弦波基準信号および前記内部励振信号をミキシングして第6ミキシング信号として出力する第6ミキサ部とを備え、
前記処理部は、
前記励振ユニット内の前記第1局発部と、前記受信ユニット内の前記第2局発部および前記基準局発部とに対して前記局発周波数を設定する周波数設定処理、
前記第1周波数であって前記第1位相ずれ分を含む第1余弦波受信信号と前記第2周波数であって前記第2位相ずれ分を含む第2余弦波受信信号とが加算された信号を第5信号として前記第5ミキシング信号から抽出する第1フィルタ処理、
前記第1周波数の第1余弦波参照信号と前記第2周波数の第2余弦波参照信号とが加算された信号を第6信号として前記第6ミキシング信号から抽出する第2フィルタ処理、
前記第1余弦波受信信号および前記第1余弦波参照信号の位相差と前記第2余弦波受信信号および前記第2余弦波参照信号の位相差との差分値を、前記第1位相ずれ分および前記第2位相ずれ分の差分位相として算出する位相算出処理、
並びに前記第1加算周波数および前記第2加算周波数の組に対応させて前記差分位相を記憶する記憶処理を実行可能に構成されて、
前記周波数設定処理において設定する前記局発周波数を、増加させるときには新たに設定する当該局発周波数に基づく前記第1加算周波数が直前に設定した当該局発周波数に基づく前記第2加算周波数と一致するように、減少させるときには新たに設定する当該局発周波数に基づく前記第2加算周波数が直前に設定した当該局発周波数に基づく前記第1加算周波数と一致するように、予め規定された測定周波数帯域に亘って段階的に変更しつつ当該周波数設定処理から前記記憶処理までの各処理を実行することにより、当該測定周波数帯域内における前記測定対象に関する前記差分位相についての前記第1周波数および前記第2周波数の差分周波数間隔毎の変化状態を示す差分位相変化データを測定する差分位相測定処理を実行する測定装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記測定対象に代えてスルー校正用の標準器が前記第1ポートおよび前記第2ポート間に接続された状態において、前記周波数設定処理において設定する前記局発周波数を、増加させるときには新たに設定する当該局発周波数に基づく前記第1加算周波数が直前に設定した当該局発周波数に基づく前記第2加算周波数と一致するように、減少させるときには新たに設定する当該局発周波数に基づく前記第2加算周波数が直前に設定した当該局発周波数に基づく前記第1加算周波数と一致するように、前記測定周波数帯域に亘って段階的に変更しつつ当該周波数設定処理から前記記憶処理までの各処理を実行することにより、当該測定周波数帯域内における前記標準器に関する前記差分位相についての前記差分周波数間隔毎の変化状態を示す補正用差分位相変化データを測定する補正用差分位相測定処理と、
前記差分位相変化データを前記補正用差分位相変化データで補正する補正処理とを実行する請求項3記載の測定装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記測定周波数帯域内における前記差分周波数間隔で規定される複数の周波数のうちの任意の1つの特定周波数の正弦波信号を含む前記励振信号を前記励振ユニットから出力したときに前記受信ユニットで受信される前記通過信号に含まれる当該特定周波数の正弦波信号に生じる位相ずれと、前記差分位相変化データとに基づいて、前記測定周波数帯域内における前記複数の周波数での位相ずれを示す位相変化データを算出する位相データ算出処理を実行する請求項1または3記載の測定装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記測定周波数帯域内における前記差分周波数間隔で規定される複数の周波数のうちの任意の1つの特定周波数の正弦波信号を含む前記励振信号を前記励振ユニットから出力したときに前記受信ユニットで受信される前記通過信号に含まれる当該特定周波数の正弦波信号に生じる位相ずれと、前記補正処理において補正された前記差分位相変化データとに基づいて、前記測定周波数帯域内における前記複数の周波数での位相ずれを示す位相変化データを算出する位相データ算出処理を実行する請求項2または4記載の測定装置。
【請求項7】
前記第1信号出力部は、前記第1正弦波信号および前記第2正弦波信号が加算された前記第1信号を出力し、
前記第2信号出力部は、前記第1余弦波信号および前記第2余弦波信号が加算された前記第2信号を出力し、
前記第3信号出力部は、前記第3正弦波信号および前記第4正弦波信号が加算された前記第3信号を出力し、
前記第4信号出力部は、前記第3余弦波信号および前記第4余弦波信号が加算された前記第4信号を出力する請求項1から6のいずれかに記載の測定装置。
【請求項8】
前記第1信号出力部は、前記第1正弦波信号および前記第2正弦波信号が時分割で連続するように組み合わされた前記第1信号を出力し、
前記第2信号出力部は、前記第1余弦波信号および前記第2余弦波信号が時分割で連続するように組み合わされた前記第2信号を出力し、
前記第3信号出力部は、前記第3正弦波信号および前記第4正弦波信号が時分割で連続するように組み合わされた前記第3信号を出力し、
前記第4信号出力部は、前記第3余弦波信号および前記第4余弦波信号が時分割で連続するように組み合わされた前記第4信号を出力する請求項1から6のいずれかに記載の測定装置。
【請求項9】
前記励振ユニットおよび前記受信ユニットは、移動機構を介して相対的に移動可能に構成されている請求項1から8のいずれかに記載の測定装置。
【請求項10】
前記移動機構を備えている請求項9記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の挿入位相を測定する測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置の一例として、下記の特許文献1に開示された測定装置(ベクトル・ネットワーク・アナライザ)が知られている。この測定装置は、1つのポートを有する励振/受信ユニットを2つ備えている。各励振/受信ユニットは同一に構成されて、各励振/受信ユニットは、信号ジェネレータと、信号ジェネレータと独立した専用オシレータ(内部オシレータ)とをそれぞれ備えている。
【0003】
この測定装置では、各励振/受信ユニットのポートを測定ラインを介して2ポートオブジェクトである被テストデバイスに接触させた状態において、一方の励振/受信ユニットは、このユニット内に設けられた信号ジェネレータが出力する励振信号を被テストデバイスに供給する。また、一方の励振/受信ユニットは、この励振信号をミキサで、このユニット内に設けられた内部オシレータが生成するオシレータ信号を用いて中間周波数の信号に変換してコントロールユニットに出力する。他方の励振/受信ユニットは、被テストデバイスを経由した励振信号を受信すると共に、この受信した励振信号を、このユニット内に設けられた内部オシレータが生成するオシレータ信号を用いて中間周波数の信号に変換してコントロールユニットに出力する。コントロールユニットは、各励振/受信ユニットとバスを介して接続されて、一方の励振/受信ユニット内の信号ジェネレータから出力される励振信号の周波数および位相と、一方の励振/受信ユニット内の内部オシレータから出力されるオシレータ信号の周波数および位相と、他方の励振/受信ユニット内の信号ジェネレータから出力される励振信号の周波数および位相と、他方の励振/受信ユニット内の内部オシレータから出力されるオシレータ信号の周波数および位相とを個別に調整することが可能となっている。
【0004】
この構成により、この測定装置では、コントロールユニットが、一方の励振/受信ユニットから出力される中間周波数の信号と、他方の励振/受信ユニットから出力される中間周波数の信号とに基づいて、励振信号が被テストデバイスを通過したときの位相のずれ(挿入位相)を測定することが可能となっている。また、この測定装置では、各励振/受信ユニットをメイン・ハウジングから分離して、被テストデバイスの測定場所近傍に単独動作ユニットとして配置することも可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-132985号公報(第4-7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した測定装置では、励振/受信ユニット内に配設する信号ジェネレータおよび内部オシレータとして、周波数だけでなく位相についても調整可能な高機能で高価なジェネレータやオシレータを使用する構成のため、この測定装置には、装置コストが上昇するという解決すべき課題が存在している。
【0007】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、周波数だけが調整可能な安価なジェネレータやオシレータ(安価な発振装置)で構成し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、測定対象の一方の電極に接続される第1ポートから励振信号を出力する励振ユニット、当該励振ユニットと別体にして構成されて、前記測定対象の他方の電極に接続される第2ポートから当該測定対象を通過した前記励振信号を通過信号として受信する受信ユニット、および処理部を備え、前記励振ユニットは、第1周波数の第1正弦波信号、および当該第1周波数のm倍(mは2以上の任意の自然数)の第2周波数であって前記第1正弦波信号と同一振幅の第2正弦波信号を含む第1信号を出力する第1信号出力部と、前記第1正弦波信号に対して位相が90°ずれると共に当該第1正弦波信号と同一振幅で、かつ前記第1周波数の信号である第1余弦波信号、および前記第2正弦波信号に対して位相が90°ずれると共に前記第1正弦波信号と同一振幅で、かつ前記第2周波数の信号である第2余弦波信号を含む第2信号を出力する第2信号出力部と、前記第1正弦波信号と同一振幅の第1正弦波励振信号、および当該第1正弦波励振信号の位相を90°ずらした信号である第1余弦波励振信号を設定された局発周波数で出力する第1局発部と、前記第1信号、前記第1余弦波励振信号、前記第2信号および前記第1正弦波励振信号に基づいて、前記局発周波数に前記第1周波数が加算された第1加算周波数の第1正弦波加算信号、および前記局発周波数に前記第2周波数が加算された第2加算周波数の第2正弦波加算信号を含む信号を前記励振信号として前記第1ポートに出力する第1信号生成部とを備え、前記受信ユニットは、前記第1正弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第3正弦波信号、および前記第2正弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第4正弦波信号を含む第3信号を出力する第3信号出力部と、前記第1余弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第3余弦波信号、および前記第2余弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第4余弦波信号を含む第4信号を出力する第4信号出力部と、前記第1正弦波励振信号と同一振幅であって同一周波数の第2正弦波励振信号および前記第1余弦波励振信号と同一振幅であって同一周波数の第2余弦波励振信号を設定された前記局発周波数で出力する第2局発部と、前記第3信号、前記第2余弦波励振信号、前記第4信号および前記第2正弦波励振信号に基づいて、前記励振信号と同一振幅であって同一周波数の内部励振信号を出力する第2信号生成部と、前記第1正弦波信号と同一振幅の正弦波基準信号を設定された前記局発周波数で出力する基準局発部と、前記第1正弦波加算信号に対して前記測定対象を通過する際に生じる第1位相ずれ分だけ位相がずれた第1正弦波通過信号、および前記第2正弦波加算信号に対して前記測定対象を通過する際に生じる第2位相ずれ分だけ位相がずれた第2正弦波通過信号を含む前記第2ポートで受信される前記通過信号と、前記正弦波基準信号とをミキシングして第1出力ミキシング信号として出力すると共に、前記正弦波基準信号および前記内部励振信号をミキシングして第2出力ミキシング信号として出力する受信側ミキサ部とを備え、前記処理部は、前記第1局発部、前記第2局発部および前記基準局発部に対して前記局発周波数を設定する周波数設定処理、前記第1周波数であって前記第1位相ずれ分を含む第1余弦波受信信号と前記第2周波数であって前記第2位相ずれ分を含む第2余弦波受信信号とが加算された信号を前記第1出力ミキシング信号から抽出すると共に、前記第1周波数の第1余弦波参照信号と前記第2周波数の第2余弦波参照信号とが加算された信号を前記第2出力ミキシング信号から抽出するフィルタ処理、並びに前記第1余弦波受信信号および前記第1余弦波参照信号の位相差と前記第2余弦波受信信号および前記第2余弦波参照信号の位相差との差分値を、前記第1位相ずれ分および前記第2位相ずれ分の差分位相として算出すると共に、前記第1加算周波数および前記第2加算周波数に対応させて前記差分位相を記憶する位相算出処理を実行可能に構成されて、記周波数設定処理において設定する前記局発周波数を予め規定された測定周波数帯域に亘って変更しつつ当該周波数設定処理から前記位相算出処理までの各処理を実行することにより、前記測定対象に関する前記差分位相についての前記第1周波数および前記第2周波数の差分周波数間隔毎の変化状態を示す差分位相変化データを測定する差分位相測定処理を実行する。
【0009】
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記処理部は、前記測定対象に代えてスルー校正用の標準器が前記第1ポートおよび前記第2ポート間に接続された状態において、前記周波数設定処理において設定する前記局発周波数を前記測定周波数帯域に亘って変更しつつ当該周波数設定処理から前記位相算出処理までの各処理を実行することにより、当該測定周波数帯域内における前記標準器に関する前記差分位相についての前記差分周波数間隔毎の変化状態を示す補正用差分位相変化データを測定する補正用差分位相測定処理と、前記差分位相変化データを前記補正用差分位相変化データで補正する補正処理とを実行する。
【0010】
また、請求項3記載の測定装置は、測定対象の一方の電極に接続される第1ポートから励振信号を出力する励振ユニット、当該励振ユニットと別体にして構成されて、前記測定対象の他方の電極に接続される第2ポートから当該測定対象を通過した前記励振信号を通過信号として受信する受信ユニット、および処理部を備え、前記励振ユニットは、第1周波数の第1正弦波信号、および当該第1周波数のm倍(mは2以上の任意の自然数)の第2周波数であって前記第1正弦波信号と同一振幅の第2正弦波信号を含む第1信号を出力する第1信号出力部と、前記第1正弦波信号に対して位相が90°ずれると共に当該第1正弦波信号と同一振幅で、かつ前記第1周波数の信号である第1余弦波信号、および前記第2正弦波信号に対して位相が90°ずれると共に前記第1正弦波信号と同一振幅で、かつ前記第2周波数の信号である第2余弦波信号を含む第2信号を出力する第2信号出力部と、前記第1正弦波信号と同一振幅の第1正弦波励振信号、および当該第1正弦波励振信号の位相を90°ずらした信号である第1余弦波励振信号を設定された局発周波数で出力する第1局発部と、前記第1信号および前記第1余弦波励振信号をミキシングして第1ミキシング信号として出力する第1ミキサ部と、前記第2信号および前記第1正弦波励振信号をミキシングして第2ミキシング信号として出力する第2ミキサ部と、前記第1ミキシング信号および前記第2ミキシング信号を加算することにより、前記局発周波数に前記第1周波数が加算された第1加算周波数の第1正弦波加算信号、および前記局発周波数に前記第2周波数が加算された第2加算周波数の第2正弦波加算信号を含む信号を前記励振信号として前記第1ポートに出力する第1加算部とを備え、前記受信ユニットは、前記第1正弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第3正弦波信号、および前記第2正弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第4正弦波信号を含む第3信号を出力する第3信号出力部と、前記第1余弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第3余弦波信号、および前記第2余弦波信号と同一振幅であって同一周波数の第4余弦波信号を含む第4信号を出力する第4信号出力部と、前記第1正弦波励振信号と同一振幅であって同一周波数の第2正弦波励振信号および前記第1余弦波励振信号と同一振幅であって同一周波数の第2余弦波励振信号を設定された前記局発周波数で出力する第2局発部と、前記第3信号および前記第2余弦波励振信号をミキシングして第3ミキシング信号として出力する第3ミキサ部と、前記第4信号および前記第2正弦波励振信号をミキシングして第4ミキシング信号として出力する第4ミキサ部と、前記第3ミキシング信号および前記第4ミキシング信号を加算すると共に内部励振信号として出力する第2加算部と、前記第1正弦波信号と同一振幅の正弦波基準信号を設定された前記局発周波数で出力する基準局発部と、前記第2ポートで受信される前記通過信号であって、前記第1正弦波加算信号に対して前記測定対象を通過する際に生じる第1位相ずれ分だけ位相がずれた第1正弦波通過信号、および前記第2正弦波加算信号に対して前記測定対象を通過する際に生じる第2位相ずれ分だけ位相がずれた第2正弦波通過信号を含む信号と、前記正弦波基準信号とをミキシングして第5ミキシング信号として出力する第5ミキサ部と、前記正弦波基準信号および前記内部励振信号をミキシングして第6ミキシング信号として出力する第6ミキサ部とを備え、前記処理部は、前記励振ユニット内の前記第1局発部と、前記受信ユニット内の前記第2局発部および前記基準局発部とに対して前記局発周波数を設定する周波数設定処理、前記第1周波数であって前記第1位相ずれ分を含む第1余弦波受信信号と前記第2周波数であって前記第2位相ずれ分を含む第2余弦波受信信号とが加算された信号を第5信号として前記第5ミキシング信号から抽出する第1フィルタ処理、前記第1周波数の第1余弦波参照信号と前記第2周波数の第2余弦波参照信号とが加算された信号を第6信号として前記第6ミキシング信号から抽出する第2フィルタ処理、前記第1余弦波受信信号および前記第1余弦波参照信号の位相差と前記第2余弦波受信信号および前記第2余弦波参照信号の位相差との差分値を、前記第1位相ずれ分および前記第2位相ずれ分の差分位相として算出する位相算出処理、並びに前記第1加算周波数および前記第2加算周波数の組に対応させて前記差分位相を記憶する記憶処理を実行可能に構成されて、前記周波数設定処理において設定する前記局発周波数を、増加させるときには新たに設定する当該局発周波数に基づく前記第1加算周波数が直前に設定した当該局発周波数に基づく前記第2加算周波数と一致するように、減少させるときには新たに設定する当該局発周波数に基づく前記第2加算周波数が直前に設定した当該局発周波数に基づく前記第1加算周波数と一致するように、予め規定された測定周波数帯域に亘って段階的に変更しつつ当該周波数設定処理から前記記憶処理までの各処理を実行することにより、当該測定周波数帯域内における前記測定対象に関する前記差分位相についての前記第1周波数および前記第2周波数の差分周波数間隔毎の変化状態を示す差分位相変化データを測定する差分位相測定処理を実行する。
【0011】
また、請求項4記載の測定装置は、請求項3記載の測定装置において、前記処理部は、前記測定対象に代えてスルー校正用の標準器が前記第1ポートおよび前記第2ポート間に接続された状態において、前記周波数設定処理において設定する前記局発周波数を、増加させるときには新たに設定する当該局発周波数に基づく前記第1加算周波数が直前に設定した当該局発周波数に基づく前記第2加算周波数と一致するように、減少させるときには新たに設定する当該局発周波数に基づく前記第2加算周波数が直前に設定した当該局発周波数に基づく前記第1加算周波数と一致するように、前記測定周波数帯域に亘って段階的に変更しつつ当該周波数設定処理から前記記憶処理までの各処理を実行することにより、当該測定周波数帯域内における前記標準器に関する前記差分位相についての前記差分周波数間隔毎の変化状態を示す補正用差分位相変化データを測定する補正用差分位相測定処理と、前記差分位相変化データを前記補正用差分位相変化データで補正する補正処理とを実行する。
【0012】
また、請求項5記載の測定装置は、請求項1または3記載の測定装置において、前記処理部は、前記測定周波数帯域内における前記差分周波数間隔で規定される複数の周波数のうちの任意の1つの特定周波数の正弦波信号を含む前記励振信号を前記励振ユニットから出力したときに前記受信ユニットで受信される前記通過信号に含まれる当該特定周波数の正弦波信号に生じる位相ずれと、前記差分位相変化データとに基づいて、前記測定周波数帯域内における前記複数の周波数での位相ずれを示す位相変化データを算出する位相データ算出処理を実行する。
【0013】
また、請求項6記載の測定装置は、請求項2または4記載の測定装置において、前記処理部は、前記測定周波数帯域内における前記差分周波数間隔で規定される複数の周波数のうちの任意の1つの特定周波数の正弦波信号を含む前記励振信号を前記励振ユニットから出力したときに前記受信ユニットで受信される前記通過信号に含まれる当該特定周波数の正弦波信号に生じる位相ずれと、前記補正処理において補正された前記差分位相変化データとに基づいて、前記測定周波数帯域内における前記複数の周波数での位相ずれを示す位相変化データを算出する位相データ算出処理を実行する。
【0014】
また、請求項7記載の測定装置は、請求項1から6のいずれかに記載の測定装置において、前記第1信号出力部は、前記第1正弦波信号および前記第2正弦波信号が加算された前記第1信号を出力し、前記第2信号出力部は、前記第1余弦波信号および前記第2余弦波信号が加算された前記第2信号を出力し、前記第3信号出力部は、前記第3正弦波信号および前記第4正弦波信号が加算された前記第3信号を出力し、前記第4信号出力部は、前記第3余弦波信号および前記第4余弦波信号が加算された前記第4信号を出力する。
【0015】
また、請求項8記載の測定装置は、請求項1から6のいずれかに記載の測定装置において、前記第1信号出力部は、前記第1正弦波信号および前記第2正弦波信号が時分割で連続するように組み合わされた前記第1信号を出力し、前記第2信号出力部は、前記第1余弦波信号および前記第2余弦波信号が時分割で連続するように組み合わされた前記第2信号を出力し、前記第3信号出力部は、前記第3正弦波信号および前記第4正弦波信号が時分割で連続するように組み合わされた前記第3信号を出力し、前記第4信号出力部は、前記第3余弦波信号および前記第4余弦波信号が時分割で連続するように組み合わされた前記第4信号を出力する。
【0016】
また、請求項9記載の測定装置は、請求項1から8のいずれかに記載の測定装置において、前記励振ユニットおよび前記受信ユニットは、移動機構を介して相対的に移動可能に構成されている。
【0017】
また、請求項10記載の測定装置は、請求項9記載の測定装置において、前記移動機構を備えている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1,3記載の測定装置によれば、励振ユニットの第1局発部、並びに受信ユニットの第2局発部および基準局発部を、周波数および位相について調整可能な高機能で高価な発振装置ではなく、周波数だけが調整可能な安価な発振装置で構成することができるため、装置全体のコストを大幅に低減しつつ、測定周波数帯域内における測定対象に関する差分位相ついての差分周波数間隔毎の変化状態を示す差分位相変化データを自動的に測定することができる。
【0019】
また、請求項2,4記載の測定装置によれば、励振ユニットの第1局発部、並びに受信ユニットの第2局発部および基準局発部を、周波数だけが調整可能な安価な発振装置で構成して、装置全体のコストを大幅に低減しつつ、測定周波数帯域内における標準器に関する差分位相ついての差分周波数間隔毎の変化状態を示す補正用差分位相変化データを自動的に測定することができる。
【0020】
また、請求項5記載の測定装置によれば、特定周波数での位相ずれと、差分位相変化データとに基づいて、測定対象についての測定周波数帯域内における複数の周波数(差分周波数間隔で規定される複数の周波数)での位相ずれを示す位相変化データを自動的に算出することができる。
【0021】
また、請求項6記載の測定装置によれば、特定周波数での位相ずれと、補正処理において補正用差分位相変化データを用いて補正された差分位相変化データとに基づいて、測定対象についての測定周波数帯域内における複数の周波数(差分周波数間隔で規定される複数の周波数)での位相ずれを示す位相変化データを、正確に、かつ自動的に算出することができる。
【0022】
また、請求項7記載の測定装置によれば、線形な測定対象についての差分位相変化データ、ひいては位相変化データを自動的に測定することができる。
【0023】
また、請求項8記載の測定装置によれば、非線形な測定対象についての差分位相変化データ、ひいては位相変化データを自動的に測定することができる。
【0024】
また、請求項9,10記載の測定装置によれば、励振ユニットおよび受信ユニットが移動機構を介して相対的に移動可能に構成されているため、異なる位置に配設された複数の測定対象の各電極に第1ポートおよび第2ポートを自動的に接続することができる結果、複数の測定対象についての差分位相変化データ、ひいては位相変化データを連続して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】測定装置1の構成を示す構成図である。
図2】第1信号出力部22および第2信号出力部23、並びに第3信号出力部32および第4信号出力部33の構成を示す構成図である。
図3】第1信号出力部22から出力される第1信号S1および第3信号出力部32から出力される第3信号S3の波形図である。
図4】第2信号出力部23から出力される第2信号S2および第4信号出力部33から出力される第4信号S4の波形図である。
図5】局発周波数fTXLO(第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)毎の差分位相θDICで構成される補正用差分位相変化データDDICを説明するための説明図である。
図6】局発周波数fTXLO(第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)毎の補正前の差分位相θDIMで構成される差分位相変化データDDIMを説明するための説明図である。
図7】局発周波数fTXLO(第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)毎の最終的な差分位相(補正後の差分位相)θDIFで構成される差分位相変化データDDIFを説明するための説明図である。
図8】測定周波数帯域内における複数の周波数での位相ずれ(挿入位相θIP)で構成される位相変化データDIPを説明するための説明図である。
図9】第1信号出力部22から出力される他の第1信号S1および第3信号出力部32から出力される他の第3信号S3の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0027】
まず、この測定装置としての測定装置1の構成について、図1を参照して説明する。
【0028】
測定装置1は、図1に示すように、励振ユニット2、受信ユニット3、移動機構4、処理部5、記憶部6および出力部7を備え、測定対象(DUT)100の伝送特性(S21パラメータ)を測定可能に構成されている。本例では一例として、測定装置1は、励振ユニット2に設けられて測定対象100に励振信号Stx1を出力するための第1ポート28と、受信ユニット3に設けられて測定対象100を通過した励振信号Stx1を通過信号Spaとして受信するための第2ポート43とを備えて、伝送特性の一例である挿入位相θIPについての周波数特性を予め規定された測定周波数帯域に亘って測定するベクトルネットワークアナライザとして機能する。
【0029】
励振ユニット2は、図1に示すように、第1筐体21、第1信号出力部22、第2信号出力部23、第1局発部24、第1ミキサ部25、第2ミキサ部26、第1加算部27、第1ポート28および第1プローブ29を備えている。また、励振ユニット2は、デジタル伝送路L1を介して処理部5に接続されている。
【0030】
第1筐体21は、移動機構4により、測定対象100やスルー校正用の標準器101の設置位置の近傍領域において、任意の方向に移動可能に支持されている。第1筐体21には、第1信号出力部22、第2信号出力部23、第1局発部24、第1ミキサ部25、第2ミキサ部26、第1加算部27、第1ポート28および第1プローブ29が一体的に配設されている。
【0031】
第1信号出力部22は、第1周波数fの第1正弦波信号S1a(=sin(2πft))、および第1周波数fより高い第2周波数fであって第1正弦波信号S1aと同一振幅の第2正弦波信号S1b(=sin(2πft))を含む第1信号S1を出力する。第2信号出力部23は、第1正弦波信号S1aに対して位相が90°ずれると共に第1正弦波信号S1aと同一振幅で、かつ第1周波数fの信号である第1余弦波信号S2a(=cos(2πft))、および第2正弦波信号S1bに対して位相が90°ずれると共に第1正弦波信号S1aと同一振幅で、かつ第2周波数fの信号である第2余弦波信号S2b(=cos(2πft))を含む第2信号S2を出力する。
【0032】
具体的には、第1信号出力部22は、図2に示すように、クロック発生部22a、アドレス発生部22b、第1波形メモリ22cおよび第1D/A変換部22dを備えている。この場合、クロック発生部22aは、周波数f,fよりも十分に高い予め規定された周波数fsのクロック信号Sckを発生させてアドレス発生部22bに出力する。なお、この周波数fsについては、後述する局発周波数fTXLOと同様にして処理部5によって設定可能として、周波数f,fを変更し得る構成とすることもできる。
【0033】
アドレス発生部22bは、例えば、カウンタなどで構成されて、第1波形メモリ22cに対するアドレス信号Sad(後述するスタートアドレスADstからエンドアドレスADen(スタートアドレスADstよりも上位のアドレス)までのアドレスを示す信号)を、示されるアドレスをクロック信号Sckに同期してインクリメントしつつ発生させて出力する。また、アドレス発生部22bは、アドレス信号Sadで示されるアドレスがエンドアドレスADenに達したときには、アドレス信号Sadで示されるアドレスをスタートアドレスADstに戻して、インクリメント動作を継続する。
【0034】
第1波形メモリ22cは、例えば、ROMなどの半導体メモリで構成されて、スタートアドレスADstからエンドアドレスADenまでのアドレス空間に対応する記憶領域に、第1信号S1についての波形データDw1が予め記憶されている。本例では、第1正弦波信号S1aと第2正弦波信号S1bとを含む信号の一例として、図3に示す波形で表される第1信号S1(第1正弦波信号S1aと第2正弦波信号S1bとが加算された信号(=sin(2πft)+sin(2πft))のための波形データDw1が、n周期分(nは任意の自然数)だけ、スタートアドレスADstとエンドアドレスADenのそれぞれにおいて立ち上がりのゼロクロス点となるように記憶されている。なお、図3では一例として、第2周波数fが第1周波数fの2倍の周波数となる例についての波形を示しているが、2倍に限定されるものではなく、第2周波数fは第1周波数fのm倍(mは2以上の任意の自然数)であればよい。
【0035】
第1D/A変換部22dは、第1波形メモリ22cから出力される波形データDw1を入力すると共に波形データDw1で示される電圧値の電圧を出力することにより、図3に示される第1信号S1を生成して出力する。
【0036】
第2信号出力部23は、図2に示すように、クロック発生部22a(第1信号出力部22と共有)、アドレス発生部22b(第1信号出力部22と共有)、第2波形メモリ23cおよび第2D/A変換部23dを備えている。この場合、第2信号S2は、その位相が第1信号S1の位相に対して一定に維持(90°ずれた状態が維持)される必要がある。よって、クロック発生部22aは、第1信号出力部22と第2信号出力部23とで共有される構成となっている。一方、アドレス発生部22bについては、本例の測定装置1では、装置構成をより簡易なものとするために、第2信号S2用の波形データDw2を記憶させる第2波形メモリ23cでのアドレス空間を、第1信号S1用の波形データDw1を記憶させる第1波形メモリ22cでのアドレス空間と一致させて、第1信号出力部22と共有させているが、この構成に限定されるものではない。第2信号S2用の波形データDw2の第2波形メモリ23cでのアドレス空間が、第1信号S1用の波形データDw1の第1波形メモリ22cでのアドレス空間と異なる構成のときには、第2信号出力部23は、第1信号出力部22とは個別のアドレス発生部を有する構成を採用することになる。
【0037】
第2波形メモリ23cは、例えば、ROMなどの半導体メモリで構成されて、スタートアドレスADstからエンドアドレスADenまでのアドレス空間に対応する記憶領域に、第2信号S2についての波形データDw2が予め記憶されている。本例では、第1余弦波信号S2aと第2余弦波信号S2bとを含む信号の一例として、図4に示す波形で表される第2信号S2(第1余弦波信号S2aと第2余弦波信号S2bとが加算された信号(=cos(2πft)+cos(2πft))のための波形データDw2が、n周期分だけ、スタートアドレスADstとエンドアドレスADenのそれぞれにおいて最大ピーク点となるように記憶されている。
【0038】
第2D/A変換部23dは、第2波形メモリ23cから出力される波形データDw2を入力すると共に波形データDw2で示される電圧値の電圧を出力することにより、図4に示される第2信号S2を生成して出力する。
【0039】
第1局発部24は、一例として図1に示すように、局発24aと移相器24bとを備えて、第1正弦波励振信号SLO1a、および第1正弦波励振信号SLO1aの位相を90°ずらした信号である第1余弦波励振信号SLO1bを出力する。
【0040】
具体的には、局発24aは、処理部5によって設定された局発周波数fTXLOで正弦波信号としての第1正弦波励振信号SLO1a(=sin(2πfTXLOt+θtx1))を生成して出力可能に構成されている。この場合、処理部5は、この局発周波数fTXLO示す周波数データDfLO1をデジタル伝送路L1を介して第1局発部24の局発24aに出力し、局発24aは、この周波数データDfLO1を取得して、周波数データDfLO1で示される局発周波数fTXLOの第1正弦波励振信号SLO1aを出力する。移相器24bは、第1正弦波励振信号SLO1aを入力すると共に、位相を90°ずらして第1余弦波励振信号SLO1b(=cos(2πfTXLOt+θtx1))を出力する。なお、この位相差θtx1は、局発24aと非同期で同じ局発周波数fTXLOの信号である正弦波基準信号Sr(=sin(2πfTXLOt))を生成して出力する後述の基準局発部38のこの正弦波基準信号Srの位相を基準としたときの位相差を示すものとする。
【0041】
第1ミキサ部25は、第2ミキサ部26および第1加算部27と共に第1信号生成部を構成し、第1信号S1および第1余弦波励振信号SLO1bをミキシングして第1ミキシング信号Smx1として出力する。第1ミキシング信号Smx1は、下記の式(1)で表される。第2ミキサ部26は、第2信号S2および第1正弦波励振信号LO1aをミキシングして第2ミキシング信号Smx2として出力する。第2ミキシング信号Smx2は、下記の式(2)で表される。
【0042】
【数1】
【数2】
【0043】
第1加算部27は、第1ミキシング信号Smx1および第2ミキシング信号Smx2を加算して、励振信号Stx1として第1ポート28に出力する。励振信号Stx1は、下記の式(3)で表されるように、局発周波数fTXLOに第1周波数fが加算された第1加算周波数(fTXLO+f)の第1正弦波加算信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1))、および局発周波数fTXLOに第2周波数fが加算された第2加算周波数(fTXLO+f)の第2正弦波加算信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1))を含む信号である。第1ポート28には、第1プローブ29が装着されていることから、第1加算部27から出力された励振信号Stx1は、第1プローブ29に出力される。
【0044】
【数3】
【0045】
また、励振信号Stx1は、第1プローブ29を介して測定対象100に出力(供給)されると共に、測定対象100を通過して、通過信号Spaとして受信ユニット3で受信される。通過信号Spaは、下記の式(4)で表されるように、励振信号Stx1を構成する上記の第1正弦波加算信号に対して測定対象100を通過する際に生じる第1位相ずれθDUTf1分だけ位相がずれた第1正弦波通過信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1+θDUTf1))、および励振信号Stx1を構成する上記の第2正弦波加算信号に対して測定対象100を通過する際に生じる第2位相ずれθDUTf2分だけ位相がずれた第2正弦波通過信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1+θDUTf2))を含む信号である。つまり、第1位相ずれθDUTf1は、第1加算周波数(fTXLO+f)の信号成分が測定対象100を通過することによって生じる位相ずれであり、第2位相ずれθDUTf2は、第2加算周波数(fTXLO+f)の信号成分が測定対象100を通過することによって生じる位相ずれである。
【0046】
【数4】
【0047】
受信ユニット3は、図1に示すように、第2筐体31、第3信号出力部32、第4信号出力部33、第2局発部34、第3ミキサ部35、第4ミキサ部36、第2加算部37、基準局発部38、第5ミキサ部39、第6ミキサ部40、第1A/D変換部41、第2A/D変換部42、第2ポート43および第2プローブ44を備えて、励振ユニット2と別体に構成されている。また、受信ユニット3は、デジタル伝送路L2を介して処理部5に接続されている。
【0048】
第2筐体31は、第1筐体21に対して独立して構成されると共に、移動機構4により、測定対象100の設置位置の近傍領域において、任意の方向に第1筐体21と独立して移動可能に支持されている。第2筐体31には、第3信号出力部32、第4信号出力部33、第2局発部34、第3ミキサ部35、第4ミキサ部36、第2加算部37、基準局発部38、第5ミキサ部39、第6ミキサ部40、第1A/D変換部41、第2A/D変換部42、第2ポート43および第2プローブ44が一体的に配設されている。
【0049】
第3信号出力部32は、図2に示すように、第1信号出力部22と同一に構成された構成要素(クロック発生部22a、アドレス発生部22b、第1波形メモリ22cおよび第1D/A変換部22d)を備えて、一例として第1信号出力部22と同一に構成されている。この構成により、第3信号出力部32は、図3に示すように、第1正弦波信号S1aに対応する第3正弦波信号S3a(=sin(2πft+θDLY))と第2正弦波信号S1bに対応する第4正弦波信号S3b(=sin(2πft+(f/f)θDLY))とが加算された第3信号S3(=sin(2πft+θDLY)+sin(2πft+(f/f)θDLY))を出力する。
【0050】
第4信号出力部33は、第2信号出力部23と同一に構成された構成要素(クロック発生部22a、アドレス発生部22b、第2波形メモリ23cおよび第2D/A変換部23d)を備えて、一例として第2信号出力部23と同一に構成されている。この構成により、第4信号出力部33は、図4に示すように、第1余弦波信号S2aに対応する第3余弦波信号S4a(=cos(2πft+θDLY))と第2余弦波信号S2bに対応する第4余弦波信号S4b(=cos(2πft+(f/f)θDLY))とが加算された第4信号S4(=cos(2πft+θDLY)+cos(2πft+(f/f)θDLY))を出力する。
【0051】
この場合、受信ユニット3側のクロック発生部22aは、励振ユニット2側のクロック発生部22aに対して、同じ周波数fsのクロック信号Sckを非同期で発生させてアドレス発生部22bに出力する。これにより、第3正弦波信号S3aは、上記したように、対応する第1正弦波信号S1a(同じ周波数fの信号)に対して一定の位相差(遅延)θDLYを持った状態で出力され、第3余弦波信号S4aも上記したように、対応する第1余弦波信号S2a(同じ周波数fの信号)に対して同じ位相差(遅延)θDLYを持った状態で出力される。また、周波数fの第4正弦波信号S3bおよび第4余弦波信号S4bでは、周波数fの信号での位相差θDLY分の時間は、位相差(遅延)(=(f/f)θDLY)分の時間に相当する。したがって、第4正弦波信号S3bは、上記したように、対応する第2正弦波信号S1b(同じ周波数fの信号)に対して一定の位相差(f/f)θDLYを持った状態で出力され、第4余弦波信号S4bも上記したように、対応する第2余弦波信号S2b(同じ周波数fの信号)に対して同じ位相差(f/f)θDLYを持った状態で出力される。
【0052】
第2局発部34は、第1局発部24の局発24aと同一に構成された局発34a、および第1局発部24の移相器24bと同一に構成された移相器34bを備えて、一例として第1局発部24と同一に構成されて、第1正弦波励振信号SLO1aに対応する第2正弦波励振信号SLO2a、および第2正弦波励振信号SLO2aの位相を90°ずらした信号であって第1余弦波励振信号SLO1bに対応する第2余弦波励振信号SLO2bを出力する。
【0053】
具体的には、局発34aは、処理部5によって設定された局発周波数fTXLO(局発24aと同一の周波数)で正弦波信号としての第2正弦波励振信号SLO2a(=sin(2πfTXLOt+θtx2))を生成して出力可能に構成されている。この場合、処理部5は、この局発周波数fTXLO示す周波数データDfLO2(本例では、周波数データDfLO1で示される局発周波数fTXLOと同じ)をデジタル伝送路L2を介して第2局発部34の局発34aおよび基準局発部38に出力する。局発34aは、この周波数データDfLO2を取得して、周波数データDfLO2で示される局発周波数fTXLOの第2正弦波励振信号SLO2aを出力する。移相器34bは、第2正弦波励振信号SLO2aを入力すると共に、位相を90°ずらして第2余弦波励振信号SLO2b(=cos(2πfTXLOt+θtx2))を出力する。なお、第2正弦波励振信号SLO2aおよび第2余弦波励振信号SLO2bは、基準局発部38から出力される後述の正弦波基準信号Sr(=sin(2πfTXLOt))と同じ局発周波数fTXLOではあるが、非同期であることから、上記の位相差θtx2は、この正弦波基準信号Srの位相を基準としたときの位相差を示すものとする。
【0054】
第3ミキサ部35は、第4ミキサ部36および第2加算部37と共に第2信号生成部を構成する。また、第3ミキサ部35は、一例として第1ミキサ部25と同一に構成されて、第3信号S3および第2余弦波励振信号SLO2bをミキシングして第3ミキシング信号Smx3として出力する。第3ミキシング信号Smx3は、下記の式(5)で表される。第4ミキサ部36は、一例として第2ミキサ部26と同一に構成されて、第4信号S4および第2正弦波励振信号SLO2aをミキシングして第4ミキシング信号Smx4として出力する。第4ミキシング信号Smx4は、下記の式(6)で表される。
【0055】
【数5】
【数6】
【0056】
第2加算部37は、一例として第1加算部27と同一に構成されて、第3ミキシング信号Smx3および第4ミキシング信号Smx4を加算して、内部励振信号Stx2として出力する。内部励振信号Stx2は、下記の式(7)で表される。
【0057】
【数7】
【0058】
基準局発部38は、処理部5によって設定された局発周波数fTXLO(局発24aと同一の周波数)であって第1正弦波信号S1aと同一振幅の正弦波基準信号Sr(=sin(2πfTXLOt))を生成して出力可能に構成されている。この場合、基準局発部38は、処理部5から上記の周波数データDfLO2を取得して、周波数データDfLO2で示される局発周波数fTXLOの正弦波基準信号Srを出力する。
【0059】
第5ミキサ部39は、第6ミキサ部40と共に受信側ミキサ部を構成し、第2ポート43に装着された第2プローブ44を介して第2ポート43で受信された通過信号Spaおよび正弦波基準信号Srをミキシングして第5ミキシング信号(第1出力ミキシング信号)Smx5として出力する。第6ミキサ部40は、内部励振信号Stx2および正弦波基準信号Srをミキシングして第6ミキシング信号(第2出力ミキシング信号)Smx6として出力する。この場合、第5ミキシング信号Smx5および第6ミキシング信号Smx6は、それぞれ、第1周波数fの余弦波信号と、周波数(2fTXLO+f)の余弦波信号と、第2周波数fの余弦波信号と、周波数(2fTXLO+f)の余弦波信号とを含む信号である。
【0060】
第1A/D変換部41は、第5ミキシング信号Smx5に含まれる上記の各信号の周波数に対して十分に高い周波数で第5ミキシング信号Smx5をサンプリングすることにより、第5ミキシング信号Smx5の瞬時値を示す波形データDw3に変換すると共に、デジタル伝送路L2を介して処理部5に出力する。第2A/D変換部42は、第6ミキシング信号Smx6に含まれる上記の各信号の周波数に対して十分に高い周波数で第6ミキシング信号Smx6をサンプリングすることにより、第6ミキシング信号Smx6の瞬時値を示す波形データDw4に変換すると共に、デジタル伝送路L2を介して処理部5に出力する。
【0061】
移動機構4は、互いに別体に構成された励振ユニット2および受信ユニット3を支持すると共に、励振ユニット2および受信ユニット3を独立して任意の方向に(例えば、X方向、Y方向およびZ方向(3軸方向)に相対的に)移動可能に構成されている。この構成により、測定装置1は、任意の位置に配設された測定対象100に対して、励振ユニット2および受信ユニット3を独立して移動させて、励振ユニット2の第1プローブ29を測定対象100の各電極100a,100bのうちの一方の電極100aに接触させると共に、受信ユニット3の第2プローブ44を他方の電極100bに接触させることが可能な所謂フライング型の測定装置(ベクトルネットワークアナライザ)1として構成されている。
【0062】
処理部5は、一例として、コンピュータを有して構成されて、周波数設定処理、第1フィルタ処理、第2フィルタ処理、位相算出処理、差分位相測定処理、補正用差分位相測定処理、補正処理、特定周波数での位相ずれを測定する位相ずれ測定処理(キャリブレーション処理)、測定対象100についての測定周波数帯域内の複数の周波数での位相ずれ(挿入位相θIPの周波数特性)を示す位相変化データDIPを算出する位相データ算出処理、および移動機構4に対する制御処理を実行する。また、処理部5は、測定した挿入位相θIPの周波数特性を示す位相変化データDIPを出力部7に出力して、出力部7に出力させる出力処理を実行する。
【0063】
記憶部6は、一例として、ROMやRAMなどの半導体メモリを有して構成されて、測定対象100の各電極100a,100bの座標データ(1または2以上の測定対象100についての座標データ)、および標準器101の各電極101a,101bの座標データが予め記憶されている。また、記憶部6には、位相変化データDIPが記憶される。
【0064】
出力部7は、一例として、表示装置で構成されて、処理部5から出力される位相変化データDIPで示される挿入位相θIPの周波数特性を、画面上に、図表として、またはグラフとして表示する(出力する)。なお、出力部7は、表示装置に代えて種々のインターフェース回路で構成することもでき、外部インターフェース回路で構成されたときには、外部インターフェース回路を介して伝送路で接続された外部装置にこの位相変化データDIPを出力し、また媒体用インターフェース回路で構成されたときには、この媒体用インターフェース回路に接続された記憶媒体にこの位相変化データDIPを記憶させる。
【0065】
次に、測定装置1の動作について、図面を参照して説明する。なお、理解の容易のため、測定周波数帯域は、一例としてその下限周波数は1GHzであり、その上限周波数は2GHzであるものとする。また、図8に示すように、測定周波数帯域の下限周波数1GHzから始まり、100MHz単位で増加する各周波数(上限周波数2GHzまでの11個の周波数)を測定周波数帯域内の複数の周波数の一例として、これらの周波数での位相ずれ(挿入位相θIP)を測定するものとする。また、第1信号出力部22、第2信号出力部23、第3信号出力部32および第4信号出力部33から出力される各信号S1,S2,S3,S4を構成する2つの周波数成分の第1周波数fおよび第2周波数fについては、それぞれ100MHzおよび200MHzに規定されて、各信号出力部22,23,32,33は、100MHz,200MHzの各周波数f,fの信号成分で構成される信号S1,S2,S3,S4を出力しており、かつこの出力状態は維持されるものとする。また、処理部5は、励振ユニット2および受信ユニット3に出力する周波数データDfLO1,DfLO2で示される上記の局発周波数fTXLO図5図7に示すように、0.9GHzから1.8GHzまで、100MHz単位で変更するものとする。
【0066】
まず、測定装置1では、処理部5は、補正用差分位相測定処理を実行して、キャリブレーション用の測定対象である標準器101についての補正用差分位相変化データDDICを測定する。この補正用差分位相変化データDDICは、図5に示すように、局発周波数fTXLO(または挿入位相θIPを測定する際の第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)毎の差分位相θDI(θDICとも表記する)を示すデータである。
【0067】
この補正用差分位相測定処理では、処理部5は、周波数設定処理、第1フィルタ処理、第2フィルタ処理、位相算出処理および記憶処理を、周波数設定処理において設定する局発周波数fTXLOを、増加させるときには新たに設定する局発周波数fTXLOに基づく第1加算周波数(fTXLO+f)が直前に設定した局発周波数fTXLOに基づく第2加算周波数(fTXLO+f)と一致するように、減少させるときには新たに設定する局発周波数fTXLOに基づく第2加算周波数(fTXLO+f)が直前に設定した局発周波数fTXLOに基づく第1加算周波数(fTXLO+f)と一致するように、測定周波数帯域に亘って段階的に変更しつつ実行することにより、測定周波数帯域内における標準器101に関する差分位相θDICについての差分周波数間隔(f-f)毎の変化状態を示すデータでもある上記の補正用差分位相変化データDDICを測定する。この例では一例として、処理部5は、上記したように、局発周波数fTXLOを、0.9GHzから1.8GHzまで100MHz単位で増加させる。これにより、例えば、局発周波数fTXLOを0.9GHzから1.0GHzに増加させるときには、図5に示すように、新たに設定する局発周波数fTXLO(=1.0GHz)に基づく第1加算周波数(fTXLO+f=1.1GHz)は直前に設定した局発周波数fTXLO(=0.9GHz)に基づく第2加算周波数(fTXLO+f=1.1GHz)と一致するようになる。
【0068】
最初に、処理部5は、記憶部6に記憶されている標準器101の各電極101a,101bの座標データに基づいて移動機構4に対する制御処理を実行することにより、励振ユニット2を電極101aの近傍に移動させて、第1プローブ29を電極101aに接触させると共に、受信ユニット3を電極101bの近傍に移動させて、第2プローブ44を電極101bに接触させる。
【0069】
次いで、処理部5は、周波数設定処理を実行する。この周波数設定処理では、処理部5は、励振ユニット2および受信ユニット3に対して周波数データDfLO1,DfLO2を出力することにより、第1局発部24、第2局発部34および基準局発部38での局発周波数fTXLOを設定する。本例の補正用差分位相測定処理では、処理部5は、0.9GHzから1.8GHzまで100MHz単位で局発周波数fTXLOを増加させる。したがって、処理部5は、1回目は、0.9GHzを示す周波数データDfLO1,DfLO2を励振ユニット2および受信ユニット3に対して出力する。これにより、第1局発部24、第2局発部34および基準局発部38は、それぞれ、局発周波数fTXLOを0.9GHzに設定して、第1局発部24は、この局発周波数fTXLOの第1正弦波励振信号SLO1a(=sin(2πfTXLOt+θtx1))および第1余弦波励振信号SLO1b(=cos(2πfTXLOt+θtx1))を出力する。また、第2局発部34は、この局発周波数fTXLOの第2正弦波励振信号SLO2a(=sin(2πfTXLOt+θtx2))および第2余弦波励振信号SLO2b(=cos(2πfTXLOt+θtx2))を出力する。また、基準局発部38は、この局発周波数fTXLOの正弦波基準信号Sr(=sin(2πfTXLOt))を出力する。
【0070】
これにより、励振ユニット2では、第1ミキサ部25が、第1信号S1および第1余弦波励振信号SLO1bをミキシングして第1ミキシング信号Smx1を出力し、第2ミキサ部26が、第2信号S2および第1正弦波励振信号LO1aをミキシングして第2ミキシング信号Smx2を出力し、さらに、第1加算部27が、第1ミキシング信号Smx1および第2ミキシング信号Smx2を加算して、励振信号Stx1として第1ポート28に出力する。したがって、励振信号Stx1は、第1ポート28および第1プローブ29を介して、標準器101の電極101aに供給(出力)される。
【0071】
受信ユニット3は、標準器101を通過したこの励振信号Stx1を、第2プローブ44および第2ポート43を経由して通過信号Spaとして受信する。
【0072】
受信ユニット3では、各信号出力部32,33、第2局発部34、各ミキサ部35,36および第2加算部37が、上記した励振ユニット2の各信号出力部22,23、第1局発部24、各ミキサ部25,26および第1加算部27と同様に動作して、励振信号Stx1に対応する内部励振信号Stx2を生成して第6ミキサ部40に出力している。
【0073】
また、受信ユニット3では、第5ミキサ部39が、受信された通過信号Spaおよび正弦波基準信号Srをミキシングして第5ミキシング信号Smx5として出力し、第6ミキサ部40が、内部励振信号Stx2および正弦波基準信号Srをミキシングして第6ミキシング信号Smx6として出力する。この場合、上記したように、第5ミキシング信号Smx5および第6ミキシング信号Smx6は、それぞれ、第1周波数fの余弦波信号と、周波数(2fTXLO+f)の余弦波信号と、第2周波数fの余弦波信号と、周波数(2fTXLO+f)の余弦波信号とを含んでいる。
【0074】
第1A/D変換部41は、第5ミキシング信号Smx5をサンプリングすることにより、第5ミキシング信号Smx5の瞬時値を示す波形データDw3に変換して出力し、第2A/D変換部42は、第6ミキシング信号Smx6をサンプリングすることにより、第6ミキシング信号Smx6の瞬時値を示す波形データDw4に変換して出力する。受信ユニット3は、各波形データDw3,Dw4をデジタル伝送路L2を介して処理部5に出力する。
【0075】
続いて、処理部5は、波形データDw3,Dw4を取得すると共に、波形データDw3に対して第1フィルタ処理を実行し、かつ波形データDw4に対して第2フィルタ処理を実行する。第1フィルタ処理では、処理部5は、波形データDw3に対してデジタル的にローパスフィルタ処理を実行することにより、周波数(2fTXLO)以上の周波数の信号成分を除去して、下記の式(8)で表される第5信号としての信号成分Ssa1(第1周波数fおよび第2周波数fの各信号成分)を抽出する。また、第2フィルタ処理では、処理部5は、波形データDw4に対してデジタル的にローパスフィルタ処理を実行することにより、周波数(2fTXLO)以上の周波数の信号成分を除去して、下記の式(9)で表される第6信号としての信号成分Ssa2(第1周波数fおよび第2周波数fの各信号成分)を抽出する。なお、処理部5は、この第1フィルタ処理および第2フィルタ処理を併せて、1つのフィルタ処理として実行してもよい。
【0076】
【数8】
【数9】
【0077】
この場合、信号成分Ssa1の第1項が、第1周波数fであって第1位相ずれθDUTf1分を含む第1余弦波受信信号であり、その第2項が、第2周波数fであって第2位相ずれθDUTf2分を含む第2余弦波受信信号である。また、信号成分Ssa2の第1項が、第1周波数fの第1余弦波参照信号であり、その第2項が、第2周波数fの第2余弦波参照信号である。
【0078】
次いで、処理部5は、位相算出処理を実行する。この位相算出処理では、処理部5は、抽出した信号成分Ssa1および信号成分Ssa2に対して、デジタル的にフィルタ処理やFFT処理を実行することにより、信号成分Ssa1を構成する第1周波数fの信号成分についての位相θ1(=θtx1+θDUTf1)および第2周波数fの信号成分についての位相θ2(=θtx1+θDUTf2)を算出すると共に、信号成分Ssa2を構成する第1周波数fの信号成分についての位相θ3(=θtx2+θDLY)および第2周波数fの信号成分についての位相θ4(=θtx2+(f/f)θDLY)を算出する。また、処理部5は、同じ第1周波数fの信号成分についての位相θ1,θ3の差分(θ1-θ3)を算出すると共に、同じ第2周波数fの信号成分についての位相θ2,θ4の差分(θ2-θ4)を算出し、さらに、各差分同士の差分((θ1-θ3)-(θ2-θ4))を算出する。
【0079】
続いて、処理部5は、記憶処理を実行して、算出した上記の差分((θ1-θ3)-(θ2-θ4))を差分位相θDICとして、図5に示すように、局発周波数fTXLO(または挿入位相θIPを測定する際の第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)に対応させて記憶部6に記憶させる。この差分位相θDICは、測定周波数帯域の下限周波数1GHzに対応する最も低い周波数でのデータであることから、差分位相θDIC0と表記するものとする。なお、処理部5は、この記憶処理を上記の位相算出処理に含めて、位相算出処理として実行してもよい。
【0080】
ところで、この差分位相θDICを算出する上記の式((θ1-θ3)-(θ2-θ4))に、各位相θ1,θ2,θ3,θ4についての上記の各式を代入すると、下記のように整理される。
(θtx1+θDUTf1)-(θtx2+θDLY
-((θtx1+θDUTf2)-(θtx2+(f/f)θDLY))
=(θDUTf1-θDUTf2)-(θDLY-(f/f)θDLY
【0081】
この場合、本例のように、各信号出力部22,23,32,33からの信号S1,S2,S3,S4の出力状態が維持されているとき(つまり、位相差θDLYが一定に維持されているとき)には、(θDLY-(f/f)θDLY)は定数となっていることから、上記の式は、さらに下記のように表される。
(θDUTf1-θDUTf2)+C(C:定数)
【0082】
つまり、この式に基づくと、算出された差分位相θDICは、第1プローブ29と第2プローブ44との間に接続された対象体(測定対象100や標準器101)を、第1加算周波数(fTXLO+f)の第1正弦波加算信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1))が通過する際に生じる第1位相ずれθDUTf1と、第2加算周波数(fTXLO+f)の第2正弦波加算信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1))が通過する際に生じる第2位相ずれθDUTf2との差分値(差分位相)を示している。したがって、局発周波数fTXLOが0.9GHzのときの差分位相θDIC0は、図5に示すように、第1加算周波数(fTXLO+f)が1GHzで、かつ第2加算周波数(fTXLO+f)が1.1GHzのときの差分位相を示すものとなっている。
【0083】
これにより、測定装置1では、局発周波数fTXLOを0.9GHzに設定する周波数設定処理から始まり、第1フィルタ処理、第2フィルタ処理、位相算出処理および記憶処理で終わる一連の処理が完了して、局発周波数fTXLOが0.9GHzのときの差分位相θDIC0の測定が完了する。
【0084】
処理部5は、引き続き、局発周波数fTXLOを100MHz(0.1GHz)単位で1.8GHzまで増加させつつ、増加させた新たな局発周波数fTXLOにおいて、上記の周波数設定処理、第1フィルタ処理、第2フィルタ処理、位相算出処理および記憶処理を実行する。これにより、図5に示すように、局発周波数fTXLOを、0.9GHz、1.0GHz、1.1GHz、・・・、1.7GHz、1.8GHzに設定したときの差分位相θDIC0,θDIC1,θDIC2,・・・,θDIC8,θDIC9が測定されて、補正用差分位相変化データDDICの測定が完了する。これにより、補正用差分位相測定処理が完了する。
【0085】
次いで、処理部5は、局発周波数fTXLOが1.8GHzに設定されている状態において、特定周波数での位相ずれを測定する位相ずれ測定処理を実行する。この場合、特定周波数は、第1加算周波数(fTXLO+f=1.9GHz)となる。この位相ずれ測定処理では、励振ユニット2において第1加算部27から励振信号Stx1が出力され、かつ受信ユニット3においても第2加算部37から内部励振信号Stx2が出力されると共に基準局発部38から正弦波基準信号Srが出力されている状態において、処理部5は、記憶部6に記憶されている測定対象100の各電極100a,100bの座標データに基づいて移動機構4に対する制御処理を実行することにより、励振ユニット2を電極100aの近傍に移動させて、第1プローブ29を電極100aに接触させると共に、受信ユニット3を電極100bの近傍に移動させて、第2プローブ44を電極100bに接触させる。
【0086】
これにより、励振ユニット2から測定対象100に対して、第1加算周波数(fTXLO+f=1.9GHz)の第1正弦波加算信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1))、および第2加算周波数(fTXLO+f=2.0GHz)の第2正弦波加算信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1))を含む励振信号Stx1が供給(出力)される。
【0087】
受信ユニット3は、測定対象100を通過したこの励振信号Stx1を、第2プローブ44および第2ポート43を経由して通過信号Spaとして受信する。また、受信ユニット3では、各構成要素が上記した標準器101を接続したときと同様に動作して、各波形データDw3,Dw4をデジタル伝送路L2を介して処理部5に出力する。
【0088】
処理部5は、波形データDw3,Dw4を取得すると共に、波形データDw3に対して第1フィルタ処理を実行して、上記の式(8)で表される信号成分Ssa1(第1周波数fおよび第2周波数fの各信号成分)を抽出する。また、処理部5は、抽出した信号成分Ssa1に対してデジタル的にフィルタ処理やFFT処理を実行することにより、信号成分Ssa1を構成する2つの周波数の信号成分のうちの特定周波数としての第1加算周波数(fTXLO+f=1.9GHz)に対応する第1周波数fの信号成分についての位相θ1(=θtx1+θDUTf1)を算出する。
【0089】
また、処理部5は、測定対象100を接続した状態で算出したこの位相θ1(説明のため、位相θ1とも表記する)から、標準器101を接続した状態において局発周波数fTXLOを1.8GHzに設定したときに算出した上記の位相θ1(説明のため、位相θ1とも表記する)を減算することにより、特定周波数(この例では、第1加算周波数(fTXLO+f=1.9GHz))での位相ずれθ1REF(=θ1-θ1:キャリブレーション用の基準値)を算出して、記憶部6に記憶させる。
【0090】
続いて、処理部5は、差分位相測定処理を実行して、測定対象100についての局発周波数fTXLO(または挿入位相θIPを測定する際の第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)毎の差分位相θDI(θDIMとも表記する)を示す差分位相変化データDDI(DDIMとも表記する。図6参照)を測定する。
【0091】
この差分位相測定処理では、処理部5は、上記した補正用差分位相測定処理のときと同様にして、周波数設定処理、第1フィルタ処理、第2フィルタ処理、位相算出処理および記憶処理を、周波数設定処理において設定する局発周波数fTXLOを、増加させるときには新たに設定する局発周波数fTXLOに基づく第1加算周波数(fTXLO+f)が直前に設定した局発周波数fTXLOに基づく第2加算周波数(fTXLO+f)と一致するように、減少させるときには新たに設定する局発周波数fTXLOに基づく第2加算周波数(fTXLO+f)が直前に設定した局発周波数fTXLOに基づく第1加算周波数(fTXLO+f)と一致するように、測定周波数帯域に亘って段階的に変更しつつ実行することにより、測定周波数帯域内における測定対象100に関する差分位相θDIMについての差分周波数間隔(f-f)毎の変化状態を示すデータでもある上記の差分位相変化データDDIMを測定する。この例では一例として、処理部5は、補正用差分位相測定処理のときと同様にして、局発周波数fTXLOを、0.9GHzから1.8GHzまで100MHz単位で増加させる。これにより、例えば、局発周波数fTXLOを0.9GHzから1.0GHzに増加させるときには、図6に示すように、新たに設定する局発周波数fTXLO(=1.0GHz)に基づく第1加算周波数(fTXLO+f=1.1GHz)は直前に設定した局発周波数fTXLO(=0.9GHz)に基づく第2加算周波数(fTXLO+f=1.1GHz)と一致するようになる。
【0092】
この例では、上記したように、処理部5は、記憶部6に記憶されている測定対象100の各電極100a,100bの座標データに基づいて移動機構4に対する制御処理を実行して、第1プローブ29を電極101aに接触させ、かつ第2プローブ44を電極101bに接触させた状態に移行させている。
【0093】
次いで、処理部5は、周波数設定処理を実行する。この周波数設定処理では、処理部5は、励振ユニット2および受信ユニット3に対して周波数データDfLO1,DfLO2を出力することにより、第1局発部24、第2局発部34および基準局発部38での局発周波数fTXLOを設定する。本例の差分位相測定処理では、処理部5は、0.9GHzから1.8GHzまで100MHz単位で局発周波数fTXLOを増加させる。したがって、処理部5は、1回目は、0.9GHzを示す周波数データDfLO1,DfLO2を励振ユニット2および受信ユニット3に対して出力する。これにより、第1局発部24、第2局発部34および基準局発部38は、それぞれ、局発周波数fTXLOを0.9GHzに新たに設定して、第1局発部24は、この局発周波数fTXLOの第1正弦波励振信号SLO1a(=sin(2πfTXLOt+θtx1))および第1余弦波励振信号SLO1b(=cos(2πfTXLOt+θtx1))を出力する。また、第2局発部34は、この局発周波数fTXLOの第2正弦波励振信号SLO2a(=sin(2πfTXLOt+θtx2))および第2余弦波励振信号SLO2b(=cos(2πfTXLOt+θtx2))を出力する。また、基準局発部38は、この局発周波数fTXLOの正弦波基準信号Sr(=sin(2πfTXLOt))を出力する。
【0094】
これにより、励振ユニット2では、第1ミキサ部25が、第1信号S1および第1余弦波励振信号SLO1bをミキシングして第1ミキシング信号Smx1を出力し、第2ミキサ部26が、第2信号S2および第1正弦波励振信号LO1aをミキシングして第2ミキシング信号Smx2を出力し、さらに、第1加算部27が、第1ミキシング信号Smx1および第2ミキシング信号Smx2を加算して、励振信号Stx1として第1ポート28に出力する。したがって、励振信号Stx1は、第1ポート28および第1プローブ29を介して、測定対象100の電極100aに供給(出力)される。
【0095】
受信ユニット3は、測定対象100を通過したこの励振信号Stx1を、第2プローブ44および第2ポート43を経由して通過信号Spaとして受信する。
【0096】
受信ユニット3では、各信号出力部32,33、第2局発部34、各ミキサ部35,36および第2加算部37が、上記した励振ユニット2の各信号出力部22,23、第1局発部24、各ミキサ部25,26および第1加算部27と同様に動作して、励振信号Stx1に対応する内部励振信号Stx2を生成して第6ミキサ部40に出力している。
【0097】
また、受信ユニット3では、第5ミキサ部39が、受信された通過信号Spaおよび正弦波基準信号Srをミキシングして第5ミキシング信号Smx5として出力し、第6ミキサ部40が、内部励振信号Stx2および正弦波基準信号Srをミキシングして第6ミキシング信号Smx6として出力する。この場合、上記したように、第5ミキシング信号Smx5および第6ミキシング信号Smx6は、それぞれ、第1周波数fの余弦波信号と、周波数(2fTXLO+f)の余弦波信号と、第2周波数fの余弦波信号と、周波数(2fTXLO+f)の余弦波信号とを含んでいる。
【0098】
第1A/D変換部41は、第5ミキシング信号Smx5をサンプリングすることにより、第5ミキシング信号Smx5の瞬時値を示す波形データDw3に変換して出力し、第2A/D変換部42は、第6ミキシング信号Smx6をサンプリングすることにより、第6ミキシング信号Smx6の瞬時値を示す波形データDw4に変換して出力する。受信ユニット3は、各波形データDw3,Dw4をデジタル伝送路L2を介して処理部5に出力する。
【0099】
続いて、処理部5は、波形データDw3,Dw4を取得すると共に、波形データDw3に対して第1フィルタ処理を実行し、かつ波形データDw4に対して第2フィルタ処理を実行する。第1フィルタ処理では、処理部5は、波形データDw3に対してデジタル的にローパスフィルタ処理を実行することにより、周波数(2fTXLO)以上の周波数の信号成分を除去して、上記の式(8)で表される信号成分Ssa1(第1周波数fおよび第2周波数fの各信号成分)を抽出する。また、第2フィルタ処理では、処理部5は、波形データDw4に対してデジタル的にローパスフィルタ処理を実行することにより、周波数(2fTXLO)以上の周波数の信号成分を除去して、上記の式(9)で表される信号成分Ssa2(第1周波数fおよび第2周波数fの各信号成分)を抽出する。
【0100】
次いで、処理部5は、位相算出処理を実行する。この位相算出処理では、処理部5は、抽出した信号成分Ssa1および信号成分Ssa2に対して、デジタル的にフィルタ処理やFFT処理を実行することにより、信号成分Ssa1を構成する第1周波数fの信号成分についての位相θ1(=θtx1+θDUTf1)および第2周波数fの信号成分についての位相θ2(=θtx1+θDUTf2)を算出すると共に、信号成分Ssa2を構成する第1周波数fの信号成分についての位相θ3(=θtx2+θDLY)および第2周波数fの信号成分についての位相θ4(=θtx2+(f/f)θDLY)を算出する。また、処理部5は、同じ第1周波数fの信号成分についての位相θ1,θ3の差分(θ1-θ3)を算出すると共に、同じ第2周波数fの信号成分についての位相θ2,θ4の差分(θ2-θ4)を算出し、さらに、各差分同士の差分((θ1-θ3)-(θ2-θ4))を算出する。
【0101】
続いて、処理部5は、記憶処理を実行して、算出した上記の差分((θ1-θ3)-(θ2-θ4))を差分位相θDIMとして、図6に示すように、局発周波数fTXLO(または挿入位相θIPを測定する際の第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)に対応させて記憶部6に記憶させる。この差分位相θDIMは、測定周波数帯域の下限周波数1GHzに対応する最も低い周波数でのデータであることから、差分位相θDIM0と表記するものとする。
【0102】
ところで、この差分位相θDIMを算出する上記の式((θ1-θ3)-(θ2-θ4))は、補正用差分位相変化データDDICを構成する差分位相θDICを算出する式((θ1-θ3)-(θ2-θ4))と同じであることから、この差分位相θDICと同様にして、さらに下記のように表される。
(θDUTf1-θDUTf2)+C(C:定数)
【0103】
つまり、この式に基づくと、算出された測定対象100での差分位相θDIMについても、上記した標準器101での差分位相θDICと同じように、第1プローブ29と第2プローブ44との間に接続された対象体(測定対象100や標準器101)を、第1加算周波数(fTXLO+f)の第1正弦波加算信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1))が通過する際に生じる第1位相ずれθDUTf1と、第2加算周波数(fTXLO+f)の第2正弦波加算信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1))が通過する際に生じる第2位相ずれθDUTf2との差分値(差分位相)を示している。したがって、局発周波数fTXLOが0.9GHzのときの差分位相θDIM0は、図6に示すように、第1加算周波数(fTXLO+f)が1GHzで、かつ第2加算周波数(fTXLO+f)が1.1GHzのときの差分位相を示すものとなっている。
【0104】
これにより、測定装置1では、局発周波数fTXLOを0.9GHzに設定する周波数設定処理から始まり、第1フィルタ処理、第2フィルタ処理、位相算出処理および記憶処理で終わる一連の処理が完了して、局発周波数fTXLOが0.9GHzのときの差分位相θDIM0の測定が完了する。
【0105】
処理部5は、引き続き、局発周波数fTXLOを100MHz(0.1GHz)単位で1.8GHzまで増加させつつ、増加させた新たな局発周波数fTXLOにおいて、上記の周波数設定処理、第1フィルタ処理、第2フィルタ処理、位相算出処理および記憶処理を実行する。これにより、図6に示すように、局発周波数fTXLOを、0.9GHz、1.0GHz、1.1GHz、・・・、1.7GHz、1.8GHzに設定したときの差分位相θDIM0,θDIM1,θDIM2,・・・,θDIM8,θDIM9が測定されて、差分位相変化データDDIMの測定が完了する。これにより、差分位相測定処理が完了する。
【0106】
次いで、処理部5は、補正処理を実行する。この補正処理では、処理部5は、図6に示される差分位相変化データDDIM図5に示される補正用差分位相変化データDDICで補正することにより、図7に示される最終的な差分位相変化データDDIFを算出する。具体的には、図7に示すように、差分位相変化データDDIMを構成する各局発周波数fTXLO(第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)での差分位相θDIMから、補正用差分位相変化データDDICを構成する同じ局発周波数fTXLO(第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)での差分位相θDICを減算することで、各局発周波数fTXLO(第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)での最終的な差分位相θDIF(=θDIM-θDIC)を算出すると共に、局発周波数fTXLO(第1加算周波数(fTXLO+f)および第2加算周波数(fTXLO+f)の組)に対応させて記憶部6に記憶させる。これにより、最終的な差分位相変化データDDIFが算出されて、補正処理が完了する。
【0107】
続いて、処理部5は、測定周波数帯域内における複数の周波数での位相ずれ(挿入位相θIP)を算出する位相データ算出処理を実行する。この位相データ算出処理では、処理部5は、測定周波数帯域(本例では、1GHzから2GHzまでの周波数帯域)内における差分周波数間隔(f-f:本例では0.1GHz)で規定される複数の周波数(本例では、1GHz,1.1GHz,・・・,1.9GHz,2GHzの11個の周波数)のうちの任意の1つの特定周波数の正弦波信号を含む励振信号(本例では、上記したように、特定周波数としての第1加算周波数(fTXLO+f=1.9GHz)の正弦波信号である第1正弦波加算信号(=sin(2π(fTXLO+f)t+θtx1))を励振ユニット2から出力したときに受信ユニット3で受信される通過信号Spaに含まれるこの特定周波数の正弦波信号に生じる位相ずれ(つまり、上記の位相ずれ測定処理で算出した位相ずれθ1REF(=θ1-θ1))と、補正処理において補正された差分位相変化データDDIFとに基づいて、複数の周波数(本例では、1GHz,1.1GHz,・・・,1.9GHz,2GHzの11個の周波数)での位相ずれ(挿入位相θIP)を示す位相変化データDIP図8参照)を算出する。
【0108】
具体的には、図8に示すように、この例での特定周波数である1.9GHzにおける挿入位相θIPは、上記の位相ずれθ1REFであるため、処理部5は、この位相ずれθ1REFを1.9GHzでの挿入位相θIP9として規定する。また、処理部5は、この挿入位相θIP9を基準として、1.9GHzに対して一段階高い周波数2GHzでの挿入位相θIP10を(θIP9+θDIF9)として算出する。また、処理部5は、この挿入位相θIP9を基準として、1.9GHzに対して一段階低い周波数1.8GHzでの挿入位相θIP8を(θIP9-θDIF8)として算出する。処理部5は、1.8GHzよりも低い周波数での挿入位相θIPについては、一段階高い周波数での挿入位相θIPを基準として、この基準の挿入位相θIPから対応する差分位相θDIFを減算することで、順次算出する。これにより、1GHz,1.1GHz,・・・,1.9GHz,2GHzでの挿入位相θIP0,挿入位相θIP1,・・・,挿入位相θIP9,挿入位相θIP10が算出される。処理部5は、算出した各挿入位相θIPを対応する周波数fに関連付けて、図8に示すように位相変化データDIPとして記憶部6に記憶させる。これにより、位相データ算出処理が完了する。
【0109】
なお、図示はしないが、処理部5は、上記した算出方法(一段階低い周波数での挿入位相θIPや、一段階低い周波数での挿入位相θIPを基準として、隣接する周波数での挿入位相θIPを算出する方法)に代えて、特定周波数での挿入位相θIP(位相ずれθ1REF)を常に基準として、特定周波数よりも高い周波数での挿入位相θIPを算出する際には、この基準の挿入位相θIPから対応する周波数までの差分位相θDIFの合算値を加算し、特定周波数よりも低い周波数での挿入位相θIPを算出する際には、この基準の挿入位相θIPから対応する周波数までの差分位相θDIFの合算値を減算する方法を採用することもできる。
【0110】
このように、この測定装置1によれば、処理部5とデジタル伝送路L1を介して接続される励振ユニット2の第1局発部24、並びに処理部5とデジタル伝送路L2を介して接続される受信ユニット3の第2局発部34および基準局発部38を、周波数および位相について調整可能な高機能で高価な発振装置ではなく、周波数だけが調整可能な安価な発振装置で構成することができるため、装置全体のコストを大幅に低減しつつ、測定周波数帯域内における測定対象100に関する差分位相θDIMについての差分周波数間隔毎の変化状態を示す差分位相変化データDDIMを自動的に測定することができる。
【0111】
また、この測定装置1によれば、補正用差分位相測定処理を実行するため、測定周波数帯域内における標準器101に関する差分位相θDICについての差分周波数間隔毎の変化状態を示す補正用差分位相変化データDDICを自動的に測定することができる。
【0112】
また、この測定装置1では、この補正用差分位相変化データDDICを算出する上記の補正用差分位相測定処理と、この補正用差分位相変化データDDICを用いた補正処理とを実行して、補正された差分位相変化データDDIFを算出する。したがって、この測定装置1によれば、例えば、励振ユニット2における第1加算部27から第1プローブ29までの経路や、受信ユニット3における第2プローブ44から第5ミキサ部39までの経路が、通過する信号の周波数に応じて位相のずれに差が生じる構成であっても、この周波数毎の位相のずれの差に起因した誤差が除去された差分位相変化データDDIFを算出することができる。このため、この測定装置1によれば、特定周波数での位相ずれθ1REFと、この補正された最終的な差分位相変化データDDIMとに基づいて、測定対象100についての測定周波数帯域内における複数の周波数(差分周波数間隔(f-f)毎の周波数)での位相ずれ(挿入位相θIP)を示す位相変化データDIP(つまり、挿入位相θIPの周波数特性)を、正確に、かつ自動的に算出することができる。
【0113】
また、この測定装置1によれば、励振ユニット2および受信ユニット3が、処理部5とデジタル伝送路L1,L2を介して接続されると共に、移動機構4を介して相対的に移動可能に構成されているため、異なる位置に配設された複数の測定対象100の各電極100a,100bに第1プローブ29および第2プローブ44を自動的に接触させること(つまり、第1ポート28および第2ポート43を自動的に接続すること)ができる結果、複数の測定対象100についての差分位相変化データDDIM、ひいては位相変化データDIPを連続して測定することができる。なお、移動機構4を備えない構成であってもよく、この構成においても、差分位相変化データDDIM、補正用差分位相変化データDDIC、位相変化データDIPなどを自動的に算出できるという効果が奏されるのは勿論である。
【0114】
なお、例えば、上記の第1加算部27から第1プローブ29までの経路や、第2プローブ44から第5ミキサ部39までの経路が、上記のような周波数毎の位相のずれに差が生じない構成のときには、測定装置1は、上記の補正用差分位相測定処理および補正処理の実行を省く構成を採用することができる。この構成では、処理部5は、図7に示す差分位相変化データDDIFに代えて、図6に示す差分位相変化データDDIMを使用して、位相変化データDIPを算出する。この構成の測定装置1によれば、挿入位相θIPを示す位相変化データDIPを、簡易に、より短時間で測定することができる。
【0115】
また、上記の測定装置1では、処理部5が複数の周波数(差分周波数間隔(f-f)毎の周波数)での位相ずれ(挿入位相θIP)を自動的に算出して、挿入位相θIPで構成される位相変化データDIP(つまり、挿入位相θIPの周波数特性)を自動的に測定する好ましい構成を採用しているが、図5に示す補正用差分位相変化データDDICおよび図6に示す差分位相変化データDDIMを測定する処理までを(補正処理等を省く上記したより簡易な構成では、図6に示す差分位相変化データDDIMを測定する処理までを)処理部5が自動的に実行するだけの構成とすることもできる。この場合、挿入位相θIPの算出については、補正用差分位相変化データDDICおよび差分位相変化データDDIM(補正処理等を省くより簡易な構成では、差分位相変化データDDIM)と、上記した特定周波数での位相ずれθ1REFとに基づいて、人手で、または他の外部装置で演算する。
【0116】
また、上記の測定装置1では、第1信号出力部22は、第1周波数fの第1正弦波信号S1a、および第2周波数fの第2正弦波信号S1bを含む第1信号S1の一例として、第1正弦波信号S1aおよび第2正弦波信号S1bが加算された第1信号S1を出力し、第2信号出力部23は、第1周波数fの第1余弦波信号S2a、および第2周波数fの第2余弦波信号S2bとを含む第2信号S1の一例として、第1余弦波信号S2aおよび第2余弦波信号S2bが加算された第2信号S2を出力し、第3信号出力部32は、第1周波数fの第3正弦波信号S3a、および第2周波数fの第4正弦波信号S3bを含む第3信号S3の一例として、第3正弦波信号S3aおよび第4正弦波信号S3bが加算された第3信号S3を出力し、第4信号出力部33は、第1周波数fの第3余弦波信号S4a、および第2周波数fの第4余弦波信号S4bとを含む第4信号S4の一例として、第3余弦波信号S4aおよび第4余弦波信号S4bが加算された第4信号S4を出力する構成を採用しているが、この構成に限定されるものではない。測定対象100が線形なものであるときには、この構成の測定装置1で挿入位相θIPを測定できるが、測定対象100が非線形なものであるときには、第1信号出力部22から出力される第1信号S1、第2信号出力部23から出力される第2信号S2、第3信号出力部32から出力される第3信号S3、および第4信号出力部33から出力される第4信号S4は、以下で説明する信号とするのが好ましい。この信号について図9を参照して説明する。
【0117】
具体的には、第1信号出力部22は、図9に示すように、第1周波数fの第1正弦波信号S1a、および第2周波数fの第2正弦波信号S1bが時分割で連続するように組み合わされた第1信号S1を出力し、第3信号出力部32は、第1周波数fの第3正弦波信号S3a(第1正弦波信号S1aに対応する信号)、および第2周波数fの第4正弦波信号S3b(第2正弦波信号S1bに対応する信号)が時分割で連続するように組み合わされた第3信号S3を出力する。
【0118】
また、第2信号出力部23は、図示はしないが、第1周波数fの第1余弦波信号S2a(第1正弦波信号S1aの位相を90°ずらした信号)、および第2周波数fの第2余弦波信号S2b(第2正弦波信号S1bの位相を90°ずらした信号)が時分割で連続するように組み合わされた第2信号S2を出力する。また、第4信号出力部33は、図示はしないが、第1周波数fの第3余弦波信号S4a(第3正弦波信号S3aの位相を90°ずらした信号)、および第2周波数fの第4余弦波信号S4b(第4正弦波信号S3bの位相を90°ずらした信号)が時分割で連続するように組み合わされた第4信号S4を出力する。
【0119】
この構成の第1信号出力部22、第2信号出力部23、第3信号出力部32および第4信号出力部33を備えた測定装置1によれば、測定対象100が非線形なものであっても、単一の周波数で測定した場合と同様の結果が得られるため、その挿入位相θIPを示す位相変化データDIPを正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 測定装置
2 励振ユニット
3 受信ユニット
4 移動機構
5 処理部
22 第1信号出力部
23 第2信号出力部
24 第1局発部
25 第1ミキサ部
26 第2ミキサ部
27 第1加算部
28 第1ポート
32 第3信号出力部
33 第4信号出力部
34 第2局発部
35 第3ミキサ部
36 第4ミキサ部
37 第2加算部
38 基準局発部
39 第5ミキサ部
40 第6ミキサ部
43 第2ポート
100 測定対象
100a,100b 電極
IP 位相変化データ
DIC 補正用差分位相変化データ
DIM,DDIF 差分位相変化データ
S1 第1信号
S2 第2信号
S3 第3信号
S4 第4信号
LO1a 第1正弦波励振信号
LO1b 第1余弦波励振信号
LO2a 第2正弦波励振信号
LO2b 第2余弦波励振信号
mx1 第1ミキシング信号
mx2 第2ミキシング信号
mx3 第3ミキシング信号
mx4 第4ミキシング信号
mx5 第5ミキシング信号
mx6 第6ミキシング信号
Spa 通過信号
Sr 正弦波基準信号
tx1 励振信号
tx2 内部励振信号
θ1REF 特定周波数での位相ずれ
θIP 挿入位相(位相ずれ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9