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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
F28D15/02 102A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019033304
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020139640
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】高木 伴明
(72)【発明者】
【氏名】安東 賢二
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-019905(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055923(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/00-3/14
F28D 15/00-15/06
H05K 7/20
H01L 23/34-23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調整の対象物が設置される設置面を有する本体部と、
前記本体部内の前記設置面を挟んで前記対象物と隣接する第1層に設けられ、前記本体部の外部にそれぞれ開口する第1入口から第1出口に向けて流体を流通させて前記対象物と熱交換を行う第1流路と、
前記第1流路とは異なる流路として区画され、前記第1層の厚み方向から、前記第1流路に接続する第2流路とを備え、
前記第2流路は、前記第1流路内で流路幅が急激に変化する急変化部に対して下流側の接続位置に開口し、前記接続位置から前記第1流路内に流体を供給するように構成されている、熱交換器。
【請求項2】
前記第1流路内の前記急変化部は、前記設置面上に設置された前記対象物を固定する固定部材が結合される取付部を含む、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記本体部は、前記第1流路が形成された前記第1層と、仕切板を介して前記第1層に積層され、前記第2流路が形成された第2層とを含み、
前記第2流路は、前記第2層から、前記接続位置に形成された前記仕切板の開口を介して前記第1流路に接続する、請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第2流路は、前記第2層において前記本体部の外部に開口する第2入口と、前記接続位置に開口する第2出口と、前記第2層内で前記第2入口と前記第2出口とを接続する接続路と、を含む、請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第1流路は、前記接続位置を含む範囲に設けられたコルゲートフィンを有し、
前記第2流路は、前記仕切板の開口を介して、前記コルゲートフィンと前記仕切板との間に流体を供給するように設けられている、請求項3または4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記コルゲートフィンは、第1方向に延びるフィン部と、前記第1方向と交差する第2方向に流体を流通可能な通路部とを有する、請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記第1流路に対する前記第2流路の前記接続位置に対して下流側の位置に開口し、前記第2流路を介して前記第1流路内に供給された流体を排出する第3流路をさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記接続位置は、前記急変化部に対して下流側に隣接する位置に配置されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器に関し、特に、内部の流路を流れる流体によって、表面上に配置された温度調整の対象物との熱交換を行う熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部の流路を流れる流体によって、表面上に配置された温度調整の対象物との熱交換を行う熱交換器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1では、流体冷却剤を搬送するチャネルを画定するチャネル部分を有し、かつ各々が発熱部品を受ける複数のボスを有するコールドプレートが開示されている。ボスの各々は、冷却すべき電子部品、光学部品またはその他の熱を発生する部品などの構成要素を受ける。コールドプレートは、流体入口を有している。コールドプレートは、流体出口を含んでいる。上記特許文献1では、流体入口と流体出口との間には、流体チャネルが延びている。ボスの周囲に、複数のフィン構造が配置されている。各フィン構造はチャネルから流体を受け取り、流体をボスの周辺へ送って、ボスに載置されている電子部品を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2000-502516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、表面上に配置された温度調整の対象物との熱交換を行う熱交換器では、対象物の設置位置や形状に応じて内部の流路の形状が決まる。そのため、流路には、流路幅が急激に変化する部分が形成されることがある。流路幅が急激に変化する部分は、たとえば、上記特許文献1のように対象物を固定するためのボスなどの構造部分を避けることにより流路幅が変化する部分や、対象物の平面形状に応じて流路幅が変化する部分などである。このような流路幅が急激に変化する部分があると、流路幅が急激に変化する部分の下流側に流体が行き渡らない領域(よどみ領域)が形成されて熱交換が阻害される。その結果、流体が行き渡らない領域で局所的に熱交換能力が不足する場合がある。
【0006】
そのため、熱交換器に設置された対象物の温度をより均一に調整するために、流路幅が急激に変化する部分がある場合でも、熱交換能力の局所的なばらつきを抑制することが求められる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、流路幅が急激に変化する部分がある場合でも、熱交換能力の局所的なばらつきを抑制することが可能な熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明による熱交換器は、温度調整の対象物が設置される設置面を有する本体部と、本体部内の設置面を挟んで対象物と隣接する第1層に設けられ、本体部の外部にそれぞれ開口する第1入口から第1出口に向けて流体を流通させて対象物と熱交換を行う第1流路と、第1流路とは異なる流路として区画され、第1層の厚み方向から、第1流路に接続する第2流路とを備え、第2流路は、第1流路内で流路幅が急激に変化する急変化部に対して下流側の接続位置に開口し、接続位置から第1流路内に流体を供給するように構成されている。
【0009】
この発明による熱交換器では、上記のように構成することによって、第1流路内で流路幅が急激に変化する急変化部に対して下流側の接続位置から第1流路内に、第1流路とは異なる流路として区画された第2流路を通る流体が供給される。つまり、第1流路内に、流路幅が急激に変化する急変化部がある場合に、第1流路において第1入口から第1出口に向けて流体を流通させるだけでは流体が行き渡らない領域(よどみ領域)が、急変化部の下流側に形成される。この急変化部の下流側の流体が行き渡らない領域に対して、第1流路の厚み方向から、第2流路によって流体を送り込むことができる。これにより、流体が行き渡らない領域が形成されることを回避できるので、流路幅が急激に変化する部分がある場合でも、熱交換能力の局所的なばらつきを抑制することができる。また、この結果、熱交換器に設置された対象物の温度を、より均一に調整することが可能となる。

【0010】
上記発明において、好ましくは、第1流路内の急変化部は、設置面上に設置された対象物を固定する固定部材が結合される取付部を含む。ここで、固定部材は、取付部に対して固定されることにより対象物を設置面上に固定するための部材であり、たとえば、ねじ、ボルト、リベット、ピンなどを含む。取付部は、本体部において固定部材を固定状態で保持するように形成された構造部分である。このような取付部は、対象物の位置および形状に応じて、第1流路内に突出するように形成されたり、第1流路を迂回させるように形成されたりするので、流路幅が急激に変化する急変化部となりうる。上記構成によれば、第2流路によって、取付部(急変化部)に対して下流側の接続位置から流体を供給できるので、第1流路内に取付部が設けられる場合でも、取付部に起因する熱交換能力の局所的なばらつきを抑制することができる。言い換えると、熱交換能力のばらつき抑制のために取付部の配置位置または第1流路の流路形状が制約されることを抑制できるので、熱交換器の設計の自由度を向上させることができる。
【0011】
上記発明において、好ましくは、本体部は、第1流路が形成された第1層と、仕切板を介して第1層に積層され、第2流路が形成された第2層とを含み、第2流路は、第2層から、接続位置に形成された仕切板の開口を介して第1流路に接続する。このように構成すれば、第1流路と第2流路とを、多層構造の本体部の別々の層に形成できる。そのため、第2層において、第2流路を、第1層の構造による制約を受けることなく容易に形成することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、第2流路は、第2層において本体部の外部に開口する第2入口と、接続位置に開口する第2出口と、第2層内で第2入口と第2出口とを接続する接続路と、を含む。このように構成すれば、第1流路とは別の経路で外部から第2流路への流体供給を行うことができる。そのため、たとえば第1流路の途中で第2流路が分岐した後、接続位置において合流するような場合と異なり、第1流路の構造によって制約されることなく、第2流路の形状(経路)および第2流路における流体の流量等を適切に設定することができる。
【0013】
上記本体部が第1層と第2層とを含む構成において、好ましくは、第1流路は、接続位置を含む範囲に設けられたコルゲートフィンを有し、第2流路は、仕切板の開口を介して、コルゲートフィンと仕切板との間に流体を供給するように設けられている。なお、コルゲートフィンとは、波形に形成された板状の伝熱フィンである。このように構成すれば、第1流路のコルゲートフィンによって熱交換器の性能を向上させることができる。また、コルゲートフィンは波形の断面形状を有するので、仕切板と仕切板上のコルゲートフィンとの間に流体が通過可能な微小流路(チャネル)が形成される。そのため、接続位置においてコルゲートフィンが第2流路の開口を覆うように設けられていても、第2流路からの流体をコルゲートフィンと仕切板との間のチャネルに送り込み、熱交換を行わせることができる。
【0014】
この場合、好ましくは、コルゲートフィンは、第1方向に延びるフィン部と、第1方向と交差する第2方向に流体を流通可能な通路部とを有する。ここで、板状フィンを単純に波形に形成したプレーンフィンでは、フィン部によって流体が第2方向へ流通することはできない。そこで、上記のように通路部を有するコルゲートフィンを採用すれば、コルゲートフィンと仕切板との間のチャネルに供給された流体が、通路部を介して第2方向に移動して、別のチャネルに流入することができる。その結果、第1流路にコルゲートフィンを設ける場合でも、第2流路からの流体を、より広範囲に行き渡らせることができる。これにより、熱交換能力の局所的なばらつきを効果的に抑制することができる。
【0015】
上記発明において、好ましくは、第1流路に対する第2流路の接続位置に対して下流側の位置に開口し、第2流路を介して第1流路内に供給された流体を排出する第3流路をさらに備える。このように構成すれば、第2流路から接続位置に供給された流体を、第3流路を介して容易に排出できる。そのため、たとえば第1流路の形状に起因して、接続位置から第1流路の第1出口に至る経路の圧力損失が大きくなる場合でも、第2流路における流体の供給圧力が不必要に上昇することを抑制できる。
【0016】
上記発明において、好ましくは、接続位置は、急変化部に対して下流側に隣接する位置に配置されている。このように構成すれば、第1流路において、急変化部の下流側の直後の位置に、第2流路からの流体を供給することができる。そのため、急変化部の下流側において流体が行き渡りにくい領域を極小化することができるので、より効果的に、熱交換能力の局所的なばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
流路幅が急激に変化する部分がある場合でも、熱交換能力の局所的なばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態による熱交換器の模式的な正面図である。
図2図1の500-500線に沿った模式的な水平断面図である。
図3図2の501-501線に沿った断面の模式的な端面図である。
図4図2の502-502線に沿った断面の模式的な端面図である。
図5図2の503-503線に沿った断面の模式的な端面図である。
図6】第1流路を示した上部プレートの下面図である。
図7】本体部の第2層を構成する下部プレートの上面および側面の図である。
図8】仕切板の上面および開口部を通る断面の図である。
図9】パーフォレートフィンの一例を示した斜視図である。
図10】オフセットフィンの一例を示した斜視図である。
図11】第2流路を示した第2層の拡大断面図(A)および第2出口の拡大断面図(B)である。
図12】温度調整の対象物をY方向に沿って複数配置可能な本体部の変形例を示す図である。
図13】温度調整の対象物をX方向に沿って複数配置可能な本体部の変形例を示す図である。
図14】流路幅の急変化部の変形例を示す図である。
図15】第2流路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1図11を参照して、一実施形態による熱交換器100の構成について説明する。図1に示すように、本実施形態による熱交換器100は、設置面11上に設置された温度調整の対象物Mと、内部を流通する冷媒5(図2参照)との熱交換により、対象物Mの温度調整を行う温度調整器である。対象物Mは、特に限定されない。
【0021】
一例として、本実施形態による熱交換器100は、設置面11上に設置された発熱体からの熱を冷媒5に吸収させて冷却する液冷式のコールドプレート(冷却装置)である。発熱体である対象物Mは、たとえば各種の電子機器、電子回路(または電子回路を構成する素子)などの発熱体である。対象物Mは、たとえば電力変換装置に搭載されるパワーモジュールや、コンピュータに搭載されるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサである。以下では、対象物Mが、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの電力制御用スイッチング素子を備えたパワーモジュールである例について説明する。
【0022】
(本体部)
熱交換器100は、本体部1を備えている。本体部1は、温度調整の対象物Mが設置される設置面11を有する。本体部1は、設置面11上に設置された対象物Mを冷却するための冷媒5を流通させる冷媒流路2を内部に有している。冷媒5は、特許請求の範囲の「流体」の一例である。
【0023】
本体部1は、概略で矩形(長方形または正方形、図2参照)の平板形状を有する。本体部1は、第1面(上面)と、第2面(下面)とを有する。以下、便宜的に、平面視(上面視)における直交する2方向のうち、本体部1の一対の辺に沿った方向をX方向とし、本体部1の他の一対の辺に沿った方向をY方向とする。本体部1の厚み方向(上下方向)をZ方向とする。
【0024】
図1の例では、本体部1の第1面(上面)が設置面11である。設置面11は、たとえば平坦面であるが、対象物Mの形状に応じて凹凸が形成されていてもよい。設置面11には、対象物Mを配置するための配置領域12が形成されている。配置領域12は、設置面11内で、対象物Mが載置されて対象物Mの表面と設置面11とが接触する領域である。
【0025】
図1の例では、パワーモジュールである対象物Mは、平面視で矩形の板状形状を有する。配置領域12は、平面視における対象物Mの外形形状に概ね一致するように形成されている。対象物Mの平面形状は任意である。本実施形態では、シンプルな構成例として、本体部1の平面形状(設置面11の形状)が、対象物Mの平面形状と略一致する例を示している。本体部1の設置面11の略全面に渡って1つの配置領域12が設けられている。熱交換器100には、1つの対象物Mを配置することが可能である。設置面11には、配置領域12以外の領域が存在していてもよい。
【0026】
本体部1の設置面11には、配置領域12に対応するねじ穴13(図2図3参照)が設けられ、取付ねじ(またはボルト)14によって対象物Mを配置領域12に位置決めして固定することが可能である。取付ねじ14は、特許請求の範囲の「固定部材」の一例である。対象物Mは、熱伝導性コンパウンドや放熱グリスなどにより隙間をなくした状態で、設置面11上に密着するように設置される。図2の例では、ねじ穴13は、設置面11における配置領域12の四隅にそれぞれ設けられている。
【0027】
図1の例では、本体部1は、厚み方向(Z方向)に積層された複数の層を有する。具体的には、本体部1は、第1流路20が形成された第1層S1と、仕切板7を介して第1層S1に積層され、第2流路30が形成された第2層S2とを含む。第1層S1は、本体部1の上側(第1面側)の層である。第1層S1の上面が設置面11である。第2層S2は、本体部1の下側(第2面側)の層である。第2層S2の下面が第2面である。
【0028】
本体部1は、内部の冷媒流路2を区画する複数の部材の組立体として構成されている。本体部1は、上部プレート6と、仕切板7と、下部プレート8とを含む。上部プレート6と仕切板7とにより、第1層S1が構成されている。上部プレート6と仕切板7とにより、第1層S1内の冷媒流路2が区画されている。仕切板7と下部プレート8とにより、第2層S2が構成されている。仕切板7と下部プレート8とにより、第2層S2内の冷媒流路2が区画されている。上部プレート6と、仕切板7と、下部プレート8と、第1流路20内の後述するコルゲートフィン9との組立体がろう付けによって一括で接合されることにより、本体部1が構成されている。
【0029】
(冷媒流路)
図2に示すように、冷媒流路2は、本体部1の内部に形成された冷媒の流通空間である。冷媒流路2は、冷媒5を流通させる通路である。冷媒流路2は、少なくとも、配置領域12の直下の位置(すなわち、平面視で配置領域12と重なる位置)を通過するように形成されている。冷媒流路2に供給される冷媒5は、特に限定されない。冷媒5は、たとえば水、不凍液(ブライン)などが利用できる。冷媒流路2は、一部または全部が液相の冷媒5が飽和状態で流入し、一部が対象物Mの熱により気化して、気液混相の冷媒5が流出するように構成されてもよい。つまり、熱交換器100は、冷媒5の相変化(気化)に伴う気化熱を利用して対象物Mの冷却を行うように構成されてもよい。このような冷媒5としては、たとえばHFC(ハイドロフルオロカーボン)またはHFO(ハイドロフルオロオレフィン)などのフッ素系有機化合物の冷媒を用いることが可能である。
【0030】
冷媒流路2は、第1流路20と、第2流路30と、第3流路40とを含む。
【0031】
〈第1流路〉
第1流路20は、本体部1内の設置面11(図1参照)を挟んで対象物M(図1参照)と隣接する第1層S1に設けられている。第1流路20は、上部プレート6と仕切板7とによって区画された本体部1内の空間である。第1流路20は、本体部1の外部にそれぞれ開口する第1入口21および第1出口22を含む。第1流路20は、第1入口21から第1出口22に向けて冷媒5を流通させて対象物Mと熱交換を行うように構成されている。図2において、第1入口21は本体部1のY1方向側の側端面に開口し、導入口3aと連通する。第1出口22は本体部1のY2方向側の側端面に開口し、導出口3bと連通する。冷媒5は、第1入口21から第1出口22に向けてY2方向に流れる。導入口3aおよび導出口3bは、冷媒流路2に対して外部配管などを接続するための接続部材により構成されている。
【0032】
図6に示すように、第1流路20には、第1流路20内で流路幅が急激に変化する急変化部25が形成されている。すなわち、第1流路20は、流路幅が一定の単純な流路ではなく、冷媒5の流通方向の位置に応じて流路幅が変化するように構成されている。第1流路20は、第1入口21から流路幅W1で連続する入口部23と、流路幅W2(>W1)の幅広部24との境界部で、流路幅がW1からW2に急激に変化している。入口部23と幅広部24との境界部で、第1流路20を区画する内壁が、流通方向と直交する流路幅方向(X方向)に略直角に曲がっている。幅広部24では、入口部23からX方向の両側に流路幅が拡大している。そのため、第1流路20の流路幅方向(X方向)の両側に、それぞれ急変化部25が形成されている。
【0033】
なお、第1流路20には、第1流路20内で流路幅が急激に減少する急変化部27が形成されている。第1流路20は、流路幅W2の幅広部24と、第1出口22に連続する出口部26との境界部で、流路幅がW2からW1(<W2)に急激に減少している。幅広部24と出口部26との境界部で、第1流路20を区画する内壁が、流通方向と直交する流路幅方向(X方向)に略直角に曲がっている。これにより、第1流路20の流路幅方向の両側に、それぞれ流路幅が急激に減少する急変化部27が形成されている。
【0034】
第1流路20内の急変化部25および急変化部27は、第1流路20を区画する上部プレート6に形成された取付部28によって形成されている。取付部28は、上部プレート6によって構成された第1流路20の周壁部において、上述したねじ穴13(図2参照)が形成された構造部分である。すなわち、図3に示すように、ねじ穴13は、上部プレート6の第1面(設置面11)に開口し、第1流路20が形成された第1層S1内まで厚み方向(Z方向)に延びている。そのため、図2に示すように、第1層S1における本体部1の四隅の位置に、ねじ穴13が形成された取付部28が設けられている。第1流路20の入口部23および出口部26では、取付部28が形成されていることによって、幅広部24よりも流路幅が小さくなっている。つまり、第1流路20は、取付部28が形成されているために、流路幅が急変化している。このように、第1流路20内の急変化部25および急変化部27は、設置面11上に設置された対象物Mを固定する取付ねじ14が結合される取付部28を含む。
【0035】
第1流路20には、コルゲートフィン9が設けられている。コルゲートフィン9は、板状の伝熱板を波形に成形した伝熱フィンである。コルゲートフィン9は、平面内の第1方向に沿って延びる複数のフィン部51が、平面内で第1方向と直交する第2方向に間隔を隔てて並ぶ構造を有している。第1流路20のコルゲートフィン9は、フィン部51が延びる第1方向が、第1流路20における冷媒5の流通方向(Y方向)に沿うように設けられている。コルゲートフィン9は、複数のフィン部51によって第1流路20を局所的に複数のチャネル52に分割し、これにより冷媒5の伝熱面積を増大する。コルゲートフィン9は、第1入口21から幅広部24を介して第1出口22に至る経路に設けられている。つまり、コルゲートフィン9は、第1流路20内の略全面に亘って設けられている。図3図5に示すように、コルゲートフィン9は、仕切板7上に固定されている。
【0036】
なお、図1図5および図11では、便宜的に、コルゲートフィン9の断面形状を簡略化して示している。コルゲートフィン9の種類(フィン形状)としては、たとえば、図9に示すパーフォレートフィン9a、図10に示すオフセットフィン9bなどを採用することができる。オフセットフィン9bは、セレートフィンとも呼ばれる。図9に示すパーフォレートフィン9aは、第1方向(A方向)に直線状に延びるフィン部51が、第2方向(B方向)に一定のピッチPcで配列された構造のプレーンフィンに、複数の貫通孔53が設けられた構造を有する。隣り合うフィン部51は、それぞれ高さ方向(上下方向)のいずれかの端部同士が板状の接続部54によって接続されている。図10に示すオフセットフィン9bは、第1方向(A方向)に延びるフィン部51が第2方向(B方向)に配列されて構成された複数の列55が、互いに第2方向(B方向)へずれる(オフセットする)ように設けられているフィンである。本実施形態では、コルゲートフィン9は、オフセットフィン9bにより構成されている。
【0037】
〈第2流路〉
図4に示すように、第2流路30は、第1層S1の厚み方向から、第1流路20に接続している。つまり、第2流路30は、第1層S1の外側から、Z方向に延びて、第1流路20内の所定位置に接続している。
【0038】
図2に示すように、第2流路30(破線部参照)は、第1流路20内で流路幅が急激に変化する急変化部25に対して下流側の接続位置P1に開口し、接続位置P1から第1流路20内に冷媒5を供給するように構成されている。接続位置P1は、第2流路30が第1流路20に接続する位置である。仮に第2流路30が形成されていないケースを仮定すると、第1流路20内では、急変化部25の下流側に、冷媒5が流れにくいよどみ領域(冷媒5の流速がゼロに近くなる領域)が形成される。接続位置P1は、急変化部25の下流側のよどみ領域内に配置されている。本実施形態では、接続位置P1は、急変化部25に対して下流側に隣接する位置に配置されている。つまり、第2流路30は、取付部28に対して下流側に隣接するように開口している。第2流路30は、接続位置P1から第1流路20内に冷媒5を供給する。
【0039】
図4に示すように、第2流路30は、第2層S2から、接続位置P1に形成された仕切板7の開口(図8参照)を介して第1流路20に接続している。具体的には、図4および図7に示すように、第2流路30は、第2層S2において本体部1の外部に開口する第2入口31(図7参照)と、接続位置P1に開口する第2出口32(図4参照)と、第2層S2内で第2入口31と第2出口32とを接続する接続路33(図7参照)と、を含む。第2流路30は、第2層S2に形成された流路である。つまり、第2流路30は、第2層S2を構成する下部プレート8に形成されている。
【0040】
図7に示すように、下部プレート8には、第2流路30の第2入口31および接続路33が溝加工によって形成されている。そして、図8に示すように、仕切板7に、仕切板7をZ方向に貫通する第2出口32が形成されている。第2流路30は、下部プレート8の溝と仕切板7とによって区画された流路である。なお、図7では、説明のため便宜的に、下部プレート8の上面にハッチングを付している。
【0041】
第2入口31は、本体部1のY1方向側の側端面に開口している。図1に示すように、第2入口31は、第1流路20の第1入口21と、仕切板7を挟んで厚み方向に並ぶように形成されている。第1入口21と第2入口31とには、共通の導入口3aから冷媒5が供給される。
【0042】
図2に示すように、接続路33は、第2入口31から、取付部28に沿って回り込んで接続位置P1まで延びるように形成されている。すなわち、接続路33は、第2入口31からY2方向に延びた後、X方向に屈曲して、第2出口32が開口した接続位置P1の直下の位置まで延びている。接続路33は、平面視で取付部28の周面に沿って回り込むように、第2層S2(図7参照)においてL字状に形成されている。図4に示したように、接続路33は、接続位置P1で、第2出口32に対してZ方向に接続している。
【0043】
ここで、第1流路20は、接続位置P1を含む範囲に設けられたコルゲートフィン9を有している。つまり、コルゲートフィン9は、仕切板7の上面上で、接続位置P1に形成された開口(第2出口32)を覆うように設けられている。そして、第2流路30は、開口(第2出口32)を介して、コルゲートフィン9と仕切板7との間に冷媒5を供給するように設けられている。
【0044】
コルゲートフィン9は、波形の断面形状を有しているため、コルゲートフィン9と上部プレート6との間、およびコルゲートフィン9と仕切板7との間に、それぞれチャネル52を形成する。第2流路30は、第2出口32を介して、コルゲートフィン9と仕切板7との間のチャネル52に冷媒5を供給する。
【0045】
また、図10に示したように、コルゲートフィン9は、第1方向(A方向)に延びるフィン部51と、第1方向と交差する第2方向(B方向)に冷媒5を流通可能な通路部56とを有する。オフセットフィン9bでは、フィン部51の奇数番目の列55と、偶数番目の列55とで、フィン部51の位置が第2方向(B方向)にずれている。そのため、偶数番目の列55を構成するフィン部51と、奇数番目の列55を構成するフィン部51との間には、B方向のオフセット量Osに応じた大きさの隙間57が形成される。これにより、冷媒5は、隙間57を介してオフセットフィン9bに対して第2方向(B方向)に移動可能である。オフセットフィン9bの隙間57が、通路部56として機能する。
【0046】
なお、図9に示したパーフォレートフィン9aについても、通路部56が設けられている。パーフォレートフィン9aでは、フィン部51に形成された貫通孔53が、第2方向(B方向)に流通する冷媒5の通り道となる。そのため、冷媒5はパーフォレートフィン9aに対して第2方向(B方向)に通過可能である。パーフォレートフィン9aの貫通孔53が、通路部56として機能する。
【0047】
したがって、図11に示すように、第2流路30に供給される冷媒5は、第2入口31、L字状の接続路33を通過して(図11(A)参照)、第2出口32から第1流路20に流入(図11(B)参照)する。冷媒5は、コルゲートフィン9と仕切板7との間のチャネル52に流入し、通路部56(図10参照)を通って、隣り合うチャネル52にも流入する。そのため、冷媒5は、急変化部25(取付部28)の下流側において、コルゲートフィン9と仕切板7との間のチャネル52だけでなく、コルゲートフィン9と上部プレート6との間のチャネル52にも流通し、対象物Mとの熱交換を行う。
【0048】
なお、通路部56を有するコルゲートフィン9(図9および図10参照)において、冷媒5の流通抵抗は、第1方向(A)に流れる場合の方が、第2方向(B)に流れる場合よりも小さい。そのため、第1流路20に通路部56を有するコルゲートフィン9が設けられたとしても、第1入口21からY2方向に流れる冷媒5を、第1流路20のみで急変化部25の下流側位置(接続位置P1)へ十分に流通させることは困難である。第2流路30から接続位置P1へ冷媒5を供給することにより、急変化部25の下流側へ十分な冷媒流通量を確保できる。
【0049】
〈第3流路〉
図2に戻り、第3流路40は、第1流路20に対する第2流路30の接続位置P1に対して下流側の位置に開口している。第3流路40は、第2流路30を介して第1流路20内に供給された冷媒5を排出する。また、本実施形態では、第3流路40は、第1流路20の第1出口22側の急変化部27(取付部28)に対して上流側の位置に接続している。また、第3流路40が急変化部27に対して上流側の接続位置P2に開口することにより、流路幅が急激に減少する急変化部27に対して上流側の領域にも、冷媒5を行き渡らせることが可能である。
【0050】
第3流路40の接続位置P2と、第2流路30の接続位置P1とは、第1流路20における冷媒5の流通方向(Y方向)に並ぶように配置されている。接続位置P2は、急変化部27に対して上流側に隣接する位置に配置されている。したがって、第2流路30の接続位置P1が幅広部24の上流側の2箇所の隅部にそれぞれ配置され、第3流路40の接続位置P2が幅広部24の下流側の2箇所の隅部にそれぞれ配置されている。
【0051】
第3流路40は、図7に示すように、接続位置P2(図2参照)から第2層S2内を延びて、本体部1の外部に開口している。これにより、第3流路40は、接続位置P2から第1流路20内の冷媒5を排出する。第3流路40は、第2層S2に形成された流路である。
【0052】
図7および図8に示すように、第3流路40は、接続位置P2(図8参照)に形成された仕切板7の開口を介して、第2層S2内に連通している。具体的には、第3流路40は、接続位置P2に開口する第3入口41(図8参照)と、第2層S2において本体部1の外部に開口する第3出口42(図7参照)と、第2層S2内で第3入口41と第3出口42とを接続する接続路43(図7参照)と、を含む。
【0053】
下部プレート8(図7参照)には、溝加工によって第3流路40の第3出口42および接続路43が形成されている。第3流路40は、下部プレート8の溝と仕切板7とによって区画された流路である。
【0054】
第3出口42は、本体部1のY2方向側の側端面に開口している。図示は省略するが、第3出口42は、図1に示したY1方向側の側端面と同様に、第1流路20の第1出口22と、仕切板7を挟んで厚み方向に並ぶように形成されている。第1出口22と第3出口42とから、冷媒5が共通の導出口3bへ排出される。図2に示したように、接続路43は、第3入口41から、取付部28に沿って回り込んで第3出口42まで延びるように形成されている。すなわち、接続路43は、第3入口41が開口した接続位置P2の直下の位置から、X方向に延びた後、Y2方向に屈曲して、第3出口42まで延びている。接続路43は、平面視で取付部28の周面に沿って回り込むように、第2層S2(図7参照)においてL字状に形成されている。接続路43は、接続位置P2の直下の位置で、仕切板7(図8参照)に形成された第3入口41に対してZ方向に接続している。
【0055】
このため、図2に示すように、接続位置P1において、第2流路30の第2出口32から第1流路20内に流入した冷媒5は、主としてY2方向に流れて、接続位置P2に到達する。冷媒5は、接続位置P2に開口した第3入口41に流入する。第3入口41に流入した冷媒5は、第2層S2の第3流路40(接続路43)を通って第3出口42から排出される。この結果、第1流路20の下流側の急変化部27に対して上流側によどみ領域が形成されることが抑制される。
【0056】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0057】
本実施形態による熱交換器100では、上記のように、第1流路20内で流路幅が急激に変化する急変化部25に対して下流側の接続位置P1から第1流路20内に、第2流路30を通る冷媒5が供給される。つまり、第1流路20内に、流路幅が急激に変化する急変化部25がある場合に、第1流路20において第1入口21から第1出口22に向けて冷媒5を流通させるだけでは冷媒5が行き渡らない領域(よどみ領域)が、急変化部25の下流側に形成される。この急変化部25の下流側の冷媒5が行き渡らない領域に対して、第1流路20の厚み方向(Z方向)から、第2流路30によって冷媒5を送り込むことができる。これにより、冷媒5が行き渡らない領域が形成されることを回避できるので、流路幅が急激に変化する部分がある場合でも、熱交換能力の局所的なばらつきを抑制することができる。また、この結果、熱交換器100に設置された対象物Mの温度をより均一に調整することが可能となる。
【0058】
また、第1流路20内の急変化部25が、設置面11上に設置された対象物Mを固定する取付ねじ14が結合される取付部28を含むので、対象物Mを固定するために第1流路20(第1層S1)中で急変化部25となる取付部28が設けられる場合でも、第2流路30によって、取付部28(急変化部25)に対して下流側の接続位置P1から冷媒5を供給できる。その結果、第1流路20内に取付部28が設けられる場合でも、取付部28に起因して熱交換能力の局所的なばらつきを抑制することができる。言い換えると、熱交換能力のばらつき抑制のために取付部28の配置位置または第1流路20の流路形状が制約を受けることを抑制できるので、熱交換器100の設計の自由度を向上させることができる。
【0059】
また、本体部1が、第1流路20が形成された第1層S1と、第2流路30が形成された第2層S2とを含み、第2流路30が、第2層S2から、接続位置P1に形成された仕切板7の開口を介して第1流路20に接続するので、第1流路20と第2流路30とを、多層構造の本体部1の別々の層に形成できる。そのため、第2層S2において、第2流路30を、第1層S1の構造による制約を受けることなく容易に形成することができる。
【0060】
また、第2流路30が、第2層S2において本体部1の外部に開口する第2入口31と、接続位置P1に開口する第2出口32と、第2層S2内で第2入口31と第2出口32とを接続する接続路33と、を含むので、第1流路20とは別の経路で外部から第2流路30への冷媒供給を行うことができる。そのため、たとえば第1流路20の途中で第2流路30が分岐した後、接続位置P1において合流するような場合と異なり、第1流路20の構造によって制約されることなく、第2流路30の形状(経路)および第2流路30における冷媒5の流量等を適切に設定することができる。
【0061】
また、第1流路20が、接続位置P1を含む範囲に設けられたコルゲートフィン9を有するので、第1流路20のコルゲートフィン9によって熱交換器100の性能を向上させることができる。また、コルゲートフィン9は波形の断面形状を有するので、仕切板7と仕切板7上のコルゲートフィン9との間にチャネル52が形成される。そして、第2流路30が、仕切板7の開口(第2出口32)を介して、コルゲートフィン9と仕切板7との間に冷媒5を供給するように設けられているので、接続位置P1においてコルゲートフィン9が第2流路30の開口を覆うように設けられていても、第2流路30からの冷媒5をコルゲートフィン9と仕切板7との間のチャネル52に送り込み、熱交換を行わせることができる。
【0062】
また、コルゲートフィン9が、第1方向に延びるフィン部51と、第1方向(A方向)と交差する第2方向(B方向)に冷媒5を流通可能な通路部56とを有するので、コルゲートフィン9と仕切板7との間のチャネル52に供給された冷媒5が、通路部56を介して第2方向に移動して、別のチャネル52に流入できる。その結果、第1流路20にコルゲートフィン9を設ける場合でも、第2流路30からの冷媒5をより広範囲に行き渡らせることができるので、熱交換能力の局所的なばらつきを効果的に抑制することができる。
【0063】
また、第1流路20に対する第2流路30の接続位置P1に対して下流側の位置に開口し、第2流路30を介して第1流路20内に供給された冷媒5を排出する第3流路40が設けられているので、第2流路30から接続位置P1に供給された冷媒5を、第3流路40を介して容易に排出できる。そのため、たとえば図2に示したように、接続位置P1の下流側に流路幅が急激に縮小する急変化部27が設けられる場合に、第1流路20の形状に起因して、接続位置P1から第1流路20の第1出口22に至る経路の圧力損失が大きくなる場合でも、第2流路30における流体の供給圧力が不必要に上昇することを抑制できる。
【0064】
また、接続位置P1が、急変化部25に対して下流側に隣接する位置に配置されているので、第1流路20において、急変化部25の下流側の直後の位置に、第2流路30からの冷媒5を供給することができる。そのため、急変化部25の下流側において冷媒5が行き渡りにくい領域を極小化することができるので、より効果的に、熱交換能力の局所的なばらつきを抑制することができる。
【0065】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0066】
たとえば、上記実施形態では、対象物Mが電力制御用スイッチング素子を備えたパワーモジュールである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、対象物Mは特に限定されず、どのような物であってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、設置面11に1つの配置領域12を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。配置領域12の数(つまり、設置面11に設置可能な対象物Mの数)は、2つ以上(複数)でもよい。
【0068】
たとえば、図12に示す変形例では、第1入口21から第1出口22に向かう冷媒5の流通方向(Y2方向)に沿って、2つの対象物Mが配置可能な例を示している。つまり、配置領域(図示せず)が、Y2方向に2つ並んで設けられている。取付部28が、2つの配置領域に4箇所ずつ、合計8箇所に設けられている。熱交換器100は、このように複数の配置領域12を設けてもよい。
【0069】
図12の例では、第1流路20の流路幅が急拡大する急変化部25が、Y方向に2箇所設けられている。また、それぞれの急変化部25の下流側に、第1流路20の流路幅が急減少する急変化部27が、それぞれ設けられている。そして、上流側の1つ目の急変化部25の下流側に第2流路30aが接続し、2つ目の急変化部25の下流側に第2流路30bが接続している。第2流路30aは、上記実施形態と同様の構成を有し、本体部1のY1方向側の側端面に開口して、1つ目の急変化部25に対して下流側の接続位置P1に接続している。下流側の第2流路30bは、接続位置P1に対してY2方向側(下流側)の接続位置P11に開口した第2入口131を含む。第2流路30bは、第2層S2に形成された接続路133を介して、2つ目の急変化部25に対して下流側の接続位置P12に開口した第2出口132に接続している。このため、第2流路30bは、第2入口131から冷媒5を受け入れ、第2層S2を通って、2つ目の急変化部25の下流側の接続位置P12から第1流路20内に、冷媒5を供給する。このように、第2流路は、外部に開口する入口(第2入口31)を備えずに、第1流路20内に開口した入口(第2入口131)と、接続位置に冷媒5を供給する出口(第2出口132)とを備えた構成であってもよい。
【0070】
なお、図12の変形例では、第2流路30bから第1流路20内に供給された冷媒5が、2つ目の急変化部27に対して上流側に接続した第3流路40を介して、外部に排出される。
【0071】
また、図13に示す変形例では、図12とは異なり、流路幅方向(X方向)に沿って、2つの対象物Mが配置可能な例を示している。つまり、配置領域が、X方向に2つ並んで設けられている。
【0072】
図13の例では、第1流路20の上流側(Y1方向側)の2つの隅部に、流路幅が急拡大する急変化部25がそれぞれ形成され、第1流路20の下流側(Y2方向側)の2つの隅部に、流路幅が急減少する急変化部27がそれぞれ形成されている点は、上記実施形態と同様である。図13の変形例では、さらに、流路幅方向(X方向)の中央部において、第1流路20内に柱状に設けられた取付部128からなる急変化部125が設けられている。取付部128の形成位置において、第1流路20の流路幅がW11となり、急変化部125において、第1流路20の流路幅がW11からW12に拡大している。そして、第2流路30は、急変化部125の下流側の接続位置P21に開口している。このように、第1流路20内で流路幅が急激に変化する急変化部は、第1流路20内に柱状または島状に形成された構造部分(取付部128)によって形成されうる。なお、図13では、下流側の取付部128により、流路幅が急減少する急変化部127が形成されている。第3流路40が、急変化部127に対して上流側の接続位置P22に開口するように設けられている。
【0073】
図示は省略するが、図12の構成および図13の構成を組み合わせて、X方向およびY方向にそれぞれ複数ずつ、対象物Mを配置可能なように本体部1を構成してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、第1流路20内の急変化部25および27が、対象物Mを固定するための取付部28によって形成された例を示したが、急変化部は、取付部28によって形成される必要はない。たとえば図14に示す変形例では、単純に第1流路20の第1入口21(入口部23)および第1出口22(出口部26)の流路幅が狭く、幅広部24との境界部において流路幅が変化していることによって、急変化部25、27がそれぞれ形成されている。このように、急変化部は、第1流路20内において取付部28の有無とは無関係に形成されうる。
【0075】
また、上記実施形態では、本体部1の第1面(上面)を設置面11とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本体部1の第2面(下面)が設置面11であってもよいし、第1面および第2面の両方が設置面11であってもよい。第1面および第2面の両方が設置面11である場合には、第1面と隣接する第1流路20(第1層S1)と、第2面と隣接する第1流路20(第1層S1)とを設け、それらの第1流路20(第1層S1)の間に第2流路30(第2層S2)を設ける事ができる。
【0076】
また、上記実施形態では、本体部1のY1方向の側端面に第1入口21を設け、Y2方向の側端面に第1出口22を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、本体部1の同一の側端面に第1入口21および第1出口22を設けてもよい。この場合、第1入口21から延びた第1流路20が第1入口21とは反対側の端部で逆向きに折り返して(Uターンして)、第1出口22に接続するようにしてもよい。第1入口21および第1出口22は、いずれも、本体部1のどの表面に開口していてもよく、たとえば上部プレート6または下部プレート8を厚み方向に貫通して第1面または第2面に開口してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、第1流路20の第1入口21と第2流路30の第2入口31とが本体部1の同じY1方向側の側端面に開口する例を示したが、本発明はこれに限られない。第1流路20の第1入口21と第2流路30の第2入口31とが、それぞれ本体部1の異なる面に開口してもよい。たとえば図15に示すように、第1入口21が本体部1の側端面に開口し、第2入口31が本体部1の第2面に開口してもよい。図15では、第2流路30が、接続位置P1の直下の位置で、第2層S2(下部プレート8)を厚み方向(Z方向)に貫通して第1流路20に接続している。このように第1入口21と第2入口31とが異なる面に設けられる場合、導入口および導出口をそれぞれ別々に設ければよい。
【0078】
なお、図15の変形例では、本体部1に仕切板7が設けられておらず、本体部1に第1層S1のみが設けられている。このように、第2流路30が第1流路20と平行に延びる接続路を有しない場合、第2層S2を設ける必要はなく、本体部1が第1層S1のみを有していてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、第1流路20に設けられるコルゲートフィン9が、オフセットフィン9bである例を示したが、本発明はこれに限られない。第1流路20に設けられるコルゲートフィン9が、図9に示したパーフォレートフィン9aであってもよい。第1流路20に設けられるコルゲートフィン9は、プレーンフィンなどの通路部56を有しないコルゲートフィンであってもよい。第1流路20に設けられるコルゲートフィン9として、これら以外のルーバーフィンやヘリンボーンフィンが採用されてもよい。さらに、本発明では、第1流路20にコルゲートフィン9を設けなくてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、第1流路20が1つの第1入口21と1つの第1出口22とを備えた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1流路20が複数に分岐して複数の第1出口22にそれぞれつながってもよいし、複数の第1入口21から合流してもよい。
【0081】
同様に、上記実施形態では、2つの第2流路30が、X方向の両側の接続位置P1に対して1つずつ接続する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つの第2流路30が、1つの第2入口31から分岐して、2箇所(複数)の接続位置P1にそれぞれ接続するように複数の第2出口32を備えていてもよい。第3流路40についても同様であり、2箇所(複数)の接続位置P2の2つ(複数)の第3入口41から合流して、1つの第3出口42に接続してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、第3流路40を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第3流路40を設けなくてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、コルゲートフィン9が接続位置P1(第2出口32)を含む範囲に設けられた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接続位置P1(第2出口32)にはコルゲートフィン9が形成されなくてもよい。また、コルゲートフィン9は、接続位置P1(第2出口32)の全体を含むのではなく、接続位置P1(第2出口32)の一部を含むように設けられていてもよい。つまり、コルゲートフィン9が第2出口32の一部だけを覆うように設けられていてもよい。コルゲートフィン9が接続位置P1(第2出口32)を含む範囲に設けられる場合、第1流路20内で、コルゲートフィン9が存在する部位と存在しない部位(接続位置P1)との間での伝熱面積の差異が生じないので、冷却能力の局所的な変化を生じにくくすることができる。
【0084】
また、上記実施形態では、接続位置P1が、急変化部25に対して下流側に隣接する位置に配置された例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接続位置P1が、急変化部25に対して下流側に離れていてもよい。接続位置P1は、第2流路30が形成されずに第1流路20のみから冷媒5を流通させたときに急変化部25の下流側に形成されるよどみ領域に冷媒5を供給可能であれば、急変化部25に隣接していなくてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、熱交換器100が、発熱体である対象物Mからの熱を冷媒5に吸収させて冷却する液冷式のコールドプレートである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱交換器100は、高温側の流体の熱を、熱交換により低温側の対象物Mに供給して、対象物Mを加温する温度調整器であってもよい。また、熱交換器100は、低温の冷媒5と、高温の流体とを切り替えて供給され、対象物Mの温度に応じて冷却または加温を切り替えられるように構成されていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、取付部28のねじ穴13(図3参照)が上部プレート6に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。ねじ穴13は、上部プレート6を貫通していてもよい。たとえば、ねじ穴13が上部プレート6および仕切板7を貫通して、下部プレート8まで達するように形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 本体部
5 冷媒(流体)
7 仕切板
9 コルゲートフィン
11 設置面
14 取付ねじ(固定部材)
20 第1流路
21 第1入口
22 第1出口
25、125 急変化部
27、127 急変化部
28、128 取付部
30、30a、30b 第2流路
31、131 第2入口
32、132 第2出口
33、133 接続路
40 第3流路
51 フィン部
56 通路部
100 熱交換器
M 対象物
P1、P11、P12 接続位置
P2、P21、P22 接続位置
S1 第1層
S2 第2層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15