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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】脇用汗取りパッド
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/13 20060101AFI20230626BHJP
   A41B 9/12 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A41D27/13
A41B9/12 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019057619
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020158896
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】栗原 涼子
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0263102(US,A1)
【文献】実開昭61-054816(JP,U)
【文献】特開2010-018904(JP,A)
【文献】実開昭57-192925(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/13
A41B 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の表面シートと不透液性の裏面シートとの間に吸収体が介在され、折り線で2つに折り曲げた状態で、衣服の脇の下部分の内側に取り付けて使用する脇用汗取りパッドであって、
前記折り線の位置に、少なくとも前記表面シートを前記折り線と直交する方向に弛ませた弛み部が前記折り線に沿って形成されているとともに、前記弛み部に、前記折り線に沿うとともに前記折り線と直交する方向に間隔を空けて複数の圧搾部が形成されていることを特徴とする脇用汗取りパッド。
【請求項2】
前記弛み部の対向する内面同士は接合されていない請求項1記載の脇用汗取りパッド。
【請求項3】
前記弛み部は、前記表面シートのみからなる請求項1、2いずれかに記載の脇用汗取りパッド。
【請求項4】
前記弛み部は、前記表面シート及び吸収体からなる請求項1、2いずれかに記載の脇用汗取りパッド。
【請求項5】
前記吸収体が複数の吸収体を積層した積層吸収体で構成され、
前記弛み部は、前記表面シート及び少なくとも前記表面シート側に配置された層の吸収体からなる請求項1、2いずれかに記載の脇用汗取りパッド。
【請求項6】
前記弛み部は、前記表面シート、吸収体及び裏面シートからなり、前記折り線位置にて前記折り線に沿って対向する前記裏面シート同士が接合されている請求項1、2いずれかに記載の脇用汗取りパッド。
【請求項7】
前記脇用汗取りパッドを前記折り線にて2つ折りした状態における平面視で、前記弛み部の基端部と頂部との間の前記折り線に直交する方向の長さは、20~60mmである請求項1~6いずれかに記載の脇用汗取りパッド。
【請求項8】
前記脇用汗取りパッドを前記折り線にて2つ折りした状態における平面視で、前記弛み部は、基端部から頂部に向けて徐々に幅広に形成されている請求項1~いずれかに記載の脇用汗取りパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の脇の下部分の内側に取り付けて使用する脇用汗取りパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、脇用汗取りパッド50として、図12に示されるように、所定の折り線で2つに折り曲げた状態で、前記折り線を衣服の胴部と袖部との境界部に設けられたアームホール周縁の縫合線にほぼ沿うようにして配置するとともに、前記折り線の一方側を衣服の胴部側、他方側を衣服の袖部側にそれぞれ貼着することにより、衣服の脇の下部分の内側に取付けできるようにしたものが市場に多く提供されている。
【0003】
しかしながら、このような従来の脇用汗取りパッド50では、図12に示されるように、衣服の脇の下部分の内側に取り付けた状態で、ほぼ衣服に沿って配置されるため、パッドの表面が着用者の脇の下の肌面に接触しにくく、着用者の肌面とパッド表面との間に隙間が空いて、脇からの汗が肌を伝って着用者の胴体や腕に流れる問題があった。
【0004】
この対策として、図13に示されるように、脇の下部分においてパッド表面を着用者の肌面に接触しやすくするため、折り線部分を肌側に突出させて衣服に貼着することも可能であるが、衣服に対する接着面積が小さくなるため、着用時のずれや剥がれが生じやすかった。
【0005】
脇用汗取りパッドの表面を着用者の肌面に接触しやすくしたものとしては、脇用汗取りパッドを粘着剤層によって着用者の肌面に直接貼着するものや、パッドに備えられたストラップを肩などに掛けることによって着用者の脇の下に直接固定できるようにしたものなどが存在する。
【0006】
また、下記特許文献1においては、前身頃と後身頃とに形成されている脇刳り部の周縁下部に汗取り布の下端側がU字状に接合され、この汗取り布の上部が途中で身頃側下方へ折り返され、その折り返し端側が少なくとも1箇所で前後身頃の側部上下方向の接合部上に止着されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-121235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の粘着剤層によって着用者の肌面に直接貼着するものでは、肌荒れが生じやすいとともに、汗で粘着剤層の接着強度が低下して剥がれやすいなどの欠点があった。また、ストラップによって脇の下に直接固定するものでは、取付けに手間がかかり装着が面倒であるとともに、腕を動かしたときにずれやすいなどの欠点があった。
【0009】
また、上記特許文献1に記載されたものは、汗取り布を衣服の脇の下部分に縫合したものであり、パッドを後付けで簡単に取り付けできるようにはなっていない。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、簡単に取付けができ、着用時のずれを防止して、肌面に接触しやすくした脇用汗取りパッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性の表面シートと不透液性の裏面シートとの間に吸収体が介在され、折り線で2つに折り曲げた状態で、衣服の脇の下部分の内側に取り付けて使用する脇用汗取りパッドであって、
前記折り線の位置に、少なくとも前記表面シートを前記折り線と直交する方向に弛ませた弛み部が前記折り線に沿って形成されているとともに、前記弛み部に、前記折り線に沿うとともに前記折り線と直交する方向に間隔を空けて複数の圧搾部が形成されていることを特徴とする脇用汗取りパッドが提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、着用時に脇用汗取りパッドを2つに折り曲げる折り線の位置に、少なくとも前記表面シートを前記折り線と直交する方向に弛ませた弛み部が前記折り線に沿って形成されているため、前記折り線で2つに折り曲げて衣服の脇の下部分の内側に取り付けた状態で、前記弛み部が着用者の肌面に向けて突出し、この突出する先端部が着用者の脇の下部分の肌面に接触しやすくなる。これによって、脇からの汗が脇用汗取りパッドに吸収されやすくなり、汗が肌面を伝って流れるのが防止できる。
【0013】
また、本発明に係る脇用汗取りパッドの取付けは、従来の脇用汗取りパッドと同様に、折り線を衣服の胴部と袖部との境界部に設けられたアームホール周縁の縫合線にほぼ沿うようにして配置し、前記折り線の一方側を衣服の胴部側、他方側を衣服の袖部側に貼着することにより行うことができるので、衣服の脇の下部分の内側に簡単に取り付けできるようになる。更に、衣服との接着も、従来の脇用汗取りパッドと同様に、衣服の胴部側及び袖部側にそれぞれ充分な接合面積で形成された粘着剤層によって行うことができるので、着用時のずれが生じることはない。
【0014】
記発明では、前記弛み部に、前記折り線に沿うとともに前記折り線と直交する方向に間隔を空けて複数の圧搾部を形成しているため、これらの圧搾部を基点として、弛み部が脇の下の曲面に沿って変形しやすくなり、肌面に対する追従性が良くなるとともに、着用時に弛み部が中空のループ状に変形した状態に保持されやすくなる。
【0015】
請求項2に係る本発明として、前記弛み部の対向する内面同士は接合されていない請求項1記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0016】
上記請求項2記載の発明では、前記弛み部において対向する面同士を接合していないため、着用者の肌面に向けて突出する弛み部が中空のループ状に形成されるとともに、突出端部が曲面状に変形して着用者の脇の下部分の肌面に接触しやすくなる。
【0017】
請求項3に係る本発明として、前記弛み部は、前記表面シートのみからなる請求項1、2いずれかに記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0018】
上記請求項3記載の発明は、前記弛み部の構造に関する一実施形態例であり、表面シートのみを弛ませることにより前記弛み部が形成されている。これにより、弛み部が柔軟に肌面にフィットするようになる。
【0019】
請求項4に係る本発明として、前記弛み部は、前記表面シート及び吸収体からなる請求項1、2いずれかに記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0020】
上記請求項4記載の発明は、前記弛み部の構造に関する変形例であり、表面シート及び吸収体を弛ませることにより前記弛み部が形成されている。前記弛み部に吸収体が含まれるため、弛み部において汗を吸収・保持できるようになるとともに、弛み部の強度が増し、着用時に弛み部が中空のループ状に変形した状態が保持されやすくなる。
【0021】
請求項5に係る本発明として、前記吸収体が複数の吸収体を積層した積層吸収体で構成され、
【0022】
前記弛み部は、前記表面シート及び少なくとも前記表面シート側に配置された層の吸収体からなる請求項1、2いずれかに記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0023】
上記請求項5記載の発明は、前記弛み部の構造に関する他の変形例であり、前記弛み部が、複数に積層された積層吸収体のうち、少なくとも最も表面シート側に配置された吸収体を含むように形成されている。
【0024】
請求項6に係る本発明として、前記弛み部は、前記表面シート、吸収体及び裏面シートからなり、前記折り線位置にて前記折り線に沿って対向する前記裏面シート同士が接合されている請求項1、2いずれかに記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0025】
上記請求項6記載の発明は、前記弛み部の構造に関する他の変形例であり、表面シート、吸収体及び裏面シートを弛ませることにより前記弛み部が形成されている。この場合、前記折り線位置にて前記折り線に沿って対向する裏面シート同士を接合する必要がある。前記弛み部が裏面シートを含むため、弛み部のコシが強化され、中空の弛み部が潰れにくくなる。
【0026】
請求項7に係る本発明として、前記脇用汗取りパッドを前記折り線にて2つ折りした状態における平面視で、前記弛み部の基端部と頂部との間の前記折り線に直交する方向の長さは、20~60mmである請求項1~6いずれかに記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0027】
上記請求項7記載の発明では、着用時に前記弛み部の先端が着用者の脇の下部分に適度に接触できるようにするため、前記弛み部を所定の長さで形成している。
【0028】
請求項に係る本発明として、前記脇用汗取りパッドを前記折り線にて2つ折りした状態における平面視で、前記弛み部は、基端部から頂部に向けて徐々に幅広に形成されている請求項1~いずれかに記載の脇用汗取りパッドが提供される。
【0029】
上記請求項記載の発明では、前記弛み部が頂部に向けて徐々に幅広に形成されているため、着用者の肌面と接触する弛み部の頂部の面積が大きくなり、着用者の肌面に接触しやすくなる。
【発明の効果】
【0030】
以上詳説のとおり本発明によれば、簡単に取付けができ、着用時のずれを防止して、肌面に接触しやすくした脇用汗取りパッドが提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る脇用汗取りパッド1の一部破断展開図である。
図2】その斜視図である。
図3図1のIII-III線矢視図である。
図4】折り線5で2つ折りした状態における脇用汗取りパッド1の平面図である。
図5】脇用汗取りパッド1の装着状態を示す、着用者の脇部周辺の断面図である。
図6】変形例に係る脇用汗取りパッド1の装着状態を示す、着用者の脇部周辺の断面図である。
図7】変形例に係る脇用汗取りパッド1の装着状態を示す、着用者の脇部周辺の断面図である。
図8】変形例に係る脇用汗取りパッド1の装着状態を示す、着用者の脇部周辺の断面図である。
図9】折り線5で2つ折りした状態における変形例に係る脇用汗取りパッド1の平面図である。
図10】その装着状態を示す、着用者の脇部周辺の断面図である。
図11】折り線5で2つ折りした状態における変形例に係る脇用汗取りパッド1の平面図である。
図12】従来の脇用汗取りパッド50の装着状態を示す、着用者の脇部周辺の断面図である。
図13】従来の脇用汗取りパッド50の変形例に係る装着状態を示す、着用者の脇部周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0033】
〔脇用汗取りパッド1の基本構成〕
本発明に係る脇用汗取りパッド1は、図1図3に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、汗を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された汗を吸収する吸収体4とから構成されている。前記裏面シート2、表面シート3及び吸収体4はそれぞれ所定の大きさで形成され、各層間が所定の領域において接着剤などの接合手段によって接合された構造としてもよいし、前記吸収体4の周囲において前記吸収体4より外側に延出させた裏面シート2と表面シート3との外縁部を接合手段によって接合した構造としてもよい。
【0034】
前記脇用汗取りパッド1は、衣服の脇の下部分の内側に取り付けて使用され、前記表面シート3を肌側、前記裏面シート2を衣服側に向けて装着される。
【0035】
前記脇用汗取りパッド1は、所定の折り線5で2つに折り曲げた状態で衣服に取り付けられる。衣服への取り付けに際して、前記折り線5は、衣服の胴部と袖部との境界部に設けられたアームホール周縁の縫合線にほぼ沿うようにして配置され、前記折り線5の両側はそれぞれ、衣服の胴部側に配置される胴側領域6及び衣服の袖部側に配置される袖側領域7を形成する。前記胴側領域6は、前記袖側領域7より大きな面積で形成され、より多くの汗が吸収できるようになっている。図1に示される脇用汗取りパッド1では、折り線5の上側に袖側領域7が形成され、折り線5の下側に胴側領域6が形成されている。前記折り線5の両端の外形線には、内側に凹むくびれ部8を形成するのが好ましい。
【0036】
前記脇用汗取りパッド1の平面形状は、図1に示されるように、左右の外形線の中間部に左右一対のくびれ部8が形成されている。前記くびれ部8は、前記胴側領域6及び袖側領域7の境界部分において内側に凹む滑らかな凹状の曲線によって形成されている。これにより、前記脇用汗取りパッド1は、略ひょうたん形の平面形状を成している。左右のくびれ部8、8における凹状の曲線の頂部同士を結ぶ位置に、前記折り線5が設けられている。前記胴側領域6及び袖側領域7の外形線は、図示例のように、円弧又は楕円弧などの滑らかな曲線で形成してもよいし、複数の凹凸を含む形状で形成してもよい。
【0037】
以下、さらに前記脇用汗取りパッド1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。非透湿性のものでもよいが、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが好ましい。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。特に好ましいものはポリエチレンフィルムであり、目立ちにくくするためベージュ色又はこれと同系の色とするのがよい。
【0038】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。目付けとしては、10~50g/m、好ましくは15~35g/mとするのがよい。
【0039】
前記裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、汗を吸収保持する性質を有するものであれば公知のものを使用できる。たとえば、パルプ、高吸水性樹脂などを含むことができる。また、パルプ中に化学繊維を混入させてもよい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記吸収体4としては、積繊体でもよいが、嵩を小さくできるエアレイド吸収体を用いるのが好ましい。前記エアレイド吸収体としては、パルプのみからなる不織布又はパルプとポリマーとからなる不織布でも良いし、その他バインダが含まれていても良い。また、2層の不織布層間に高吸水性樹脂を配置してなるポリマーシートを用いてもよい。吸収体4の目付けとしては、50~150g/mとするのがよい。前記吸収体4は、形状保持、および汗を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した汗の逆戻りを防止するためにクレープ紙又は不織布などからなる被包シートによって囲繞してもよい。
【0040】
図示しないが、前記裏面シート2の外面側(非肌面側)には、衣服に対する固定のために適宜の塗布パターンによってズレ止め粘着剤層が設けられ、その外面が使用時に容易に剥離可能な剥離シートによって覆われている。
【0041】
〔弛み部〕
本発明に係る脇用汗取りパッド1では、図1図3に示されるように、前記折り線5の位置に、少なくとも表面シート3を前記折り線5と直交する方向に弛ませた弛み部10が、前記折り線5に沿って形成されている。図1図3に示される実施形態例では、前記弛み部10は、表面シート3及び吸収体4を一体的に弛ませることにより形成されている。表面シート3及び吸収体4を一体的に弛ませることにより、図2及び図3に示されるように、平坦に形成された裏面シート2の肌側に断面略Ω形の中空のループ状に形成された前記弛み部10が突出して形成されるようになっている。
【0042】
前記弛み部10は、折り線5の位置に、折り線5に沿って、脇用汗取りパッド1の全幅に亘って形成されている。つまり、前記弛み部10は、左右の外形線のくびれ部8、8を形成する凹状の曲線の頂部同士間に亘って直線的に延びており、中空部が両端において外部に開口している。
【0043】
図3に示されるように、前記表面シート3及び吸収体4はそれぞれ、弛み部10及びその両側の胴側領域6、袖側領域7の全体に亘って連続するシート部材によって形成されている。図1図3に示される実施形態例では、前記裏面シート2は、弛むことなく胴側領域6と袖側領域7でほぼ平坦に形成されており、この裏面シート2に対し、前記表面シート3及び吸収体4は、前記胴側領域6及び袖側領域7に対応する部分が、前記吸収体4の裏面シート2側の面と接合される一方で、その中間部が前記折り線位置において一体的に折り線5と直交する方向に弛んで前記裏面シート2と反対側(着用時の肌側)に突出する中空の前記弛み部10を形成している。前記表面シート3及び吸収体4は、前記弛み部10を引き延ばした状態における平面視で、ほぼ同等の大きさで形成されるとともに、前記弛み部10の分だけ前記裏面シート2より大きな面積で形成されている。
【0044】
換言すると、前記弛み部10は、図4に示される脇用汗取りパッド1を折り線5にて2つ折りした状態における平面視で、前記折り線5による折り位置と、少なくとも表面シート3の折り位置とが異なっている。すなわち、表面シート3の折り位置が、折り線5による折り位置より外側に位置している。前記表面シート3の折り線と、前記折り線5とは、ほぼ平行している。
【0045】
前記弛み部10において、対向する内面同士、つまり図1図3に示される実施形態例における弛み部10の中空部で対向する吸収体4、4同士は接合されておらず、図3及び図5に示される断面視で、断面略Ω形の中空のループ部を形成し得るようになっている。なお、表面シート3と吸収体4とは、前記弛み部10を含む脇用汗取りパッド1の全体に亘ってほぼ一様に接合され、前記裏面シート2と吸収体4とは、前記胴側領域6及び袖側領域7においてほぼ一様に接合されている。
【0046】
本脇用汗取りパッド1では、前記弛み部10を形成することによって、図5に示されるように、前記折り線5で折り曲げて衣服の脇の下部分の内側に取り付けた状態で、前記弛み部10が着用者の肌面に向けて突出し、この突出する先端部が着用者の脇の下部分の肌面に接触しやすくなる。これによって、脇からの汗が脇用汗取りパッド1に吸収されやすくなり、汗が肌面を伝って着用者の胴体や腕に流れるのが防止できる。前記弛み部10が中空のループ状に形成されているため、図5に示されるように、弛み部10の頂部が着用者の脇の下に当接し、中空部が拡幅することによって(大きく口開きすることによって)、弛み部10の頂部が着用者の脇の下の曲面形状に沿って変形し、弛み部10が脇の下にフィットしやすくなる。
【0047】
また、本脇用汗取りパッド1の取付けは、従来の脇用汗取りパッドと同様に、折り線5を衣服の胴部と袖部との境界部に設けられたアームホール周縁の縫合線にほぼ沿うようにして配置し、前記胴側領域6を衣服の胴部側、前記袖側領域7を衣服の袖部側に貼着することにより行うことができる。このため、衣服の脇の下部分の内側に簡単に取り付けできるようになる。更に、衣服との接着も、従来の脇用汗取りパッドと同様に、衣服の胴部側及び袖部側にそれぞれ充分な接合面積で形成された粘着剤層の全面を衣服に貼着することによって行うことができるので、着用時のずれが生じることはない。
【0048】
また、本実施形態例のように、表面シート3及び吸収体4を一体的に弛ませることによって前記弛み部10が形成されているため、弛み部10において汗をより確実に吸収・保持できるようになるとともに、弛み部10に吸収体4が介在するため表面シート3のみとした場合より、弛み部10の強度が増し、着用時に弛み部10が中空のループ状に変形した状態が保持されやすくなる。
【0049】
図4に示されるように、前記脇用汗取りパッド1を前記折り線5にて2つ折りした状態における平面視で、弛み部10の基端部と頂部との間の折り線5に直交する方向の長さAは、20~60mm、好ましくは30~50mmとするのがよい。この長さAは、弛み部10の突出高さとほぼ一致する寸法であり、脇用汗取りパッド1の着用時に弛み部10の先端が着用者の脇の下部分に適度に接触して汗を吸収できるようにするため、所定の長さで形成するのが好ましい。すなわち、20mmより小さいと弛み部10が肌と接触しにくく、60mmより大きいと着用時に弛み部10が邪魔になって装着感が悪化する。
【0050】
次に、前記弛み部10の変形例について以下説明する。前記弛み部10は、図6に示されるように、表面シート3のみで構成してもよい。この場合、吸収体4は、裏面シート2とともに、弛むことなく平坦に形成されている。つまり、前記表面シート3は、前記弛み部10を引き延ばした状態における平面視で、前記弛み部10の分だけ前記吸収体4及び裏面シート2より大きな面積で形成されている。一方、前記吸収体4と裏面シート2とはほぼ同等の大きさで形成されている。弛み部10を表面シート3のみで構成することにより、弛み部10が柔らかくなり、柔軟に肌面にフィットするようになる。前記弛み部10を表面シート3のみで構成した場合、弛み部10において汗を吸収しやすくするため、表面シート3を構成する素材繊維として、綿等のセルロース系繊維を用いるのが好ましい。
【0051】
また、他の変形例として、図7に示されるように、吸収体4が複数の吸収体を積層した積層構造体からなるように構成してもよい。図示例では2層の吸収体4a、4bを積層して構成しているが、3層以上の吸収体を積層して構成してもよい。そして、前記弛み部10を、表面シート3及び表面シート3側に配置された吸収体4aで構成してもよい。裏面シート2側に配置された吸収体4bは、裏面シート2とともに、弛むことなく平坦に形成されている。つまり、前記表面シート3及び吸収体4aは、前記弛み部10を引き延ばした状態における平面視で、ほぼ同等の大きさで形成されるとともに、前記吸収体4b及び裏面シート2より大きな面積で形成されている。一方、前記吸収体4bと裏面シート2とはほぼ同等の大きさで形成されている。これによって、弛み部10と下層側の部材との両方に吸収体が介在することになり、弛み部10で吸収した汗が下層側の部材に拡散しやすくなり、吸収体4の全体を使って汗が吸収できるようになる。前記弛み部10を構成する吸収体4aと、下層側の部材を構成する吸収体4bとは、同じ素材のものを用いても良いし、異なる素材のものを用いても良い。異なる素材のものを用いる場合、弛み部10を構成する吸収体4aとしてクレープ紙等の吸収紙を用い、下層側の部材を構成する吸収体4bとしてエアレイド吸収体を用いても良い。弛み部10を構成する吸収体4aとして吸収紙を用いることにより、弛み部10がしなやかに変形でき、弛み部10の肌当たりが良好になり、装着時の違和感が軽減できる。上述の通り、前記吸収体4は、3層以上で構成することもでき、弛み部10を構成する吸収体及び/又は下層側の部材を構成する吸収体を複数層の吸収体で構成してもよい。
【0052】
前記弛み部10の他の変形例として、図8に示されるように、前記弛み部10が表面シート3、吸収体4及び裏面シート2からなり、前記折り線5位置にて前記折り線5に沿って対向する裏面シート2、2同士が接合部12で接合されるようにしてもよい。つまり、前記表面シート3、吸収体4及び裏面シート2は、前記弛み部10を引き延ばした状態における平面視で、ほぼ同等の大きさで形成されている。前記弛み部10が表面シート3、吸収体4及び裏面シート2からなることにより、弛み部10のコシが強化され、中空部が潰れにくくなる。前記裏面シート2、2同士の接合部12は、折り線5に沿って所定の幅で形成され、この接合部12より外側の弛み部10の先端にかけての領域は、裏面シート2、2同士が接合されないようになっている。
【0053】
図9及び図10に示されるように、前記弛み部10には、前記折り線5に沿うとともに前記折り線5と直交する方向に間隔を空けて複数の圧搾部11、11…を形成してもよい。前記圧搾部11は折り線5と平行する直線で形成するのが好ましい。複数の圧搾部11…を形成することによって、これらの圧搾部11…を基点として、弛み部10が着用者の脇の下の曲面に沿って変形しやすくなり、肌面に対する追従性が良好となるとともに、弛み部10が中空のループ状に変形した状態で保持されやすくなる。前記圧搾部11は、変形基点としての観点から、表面シート3の外面側からの圧搾により弛み部10の外面に弛み部10の内側に向けて窪ませた凹部によって形成するのが好ましいが、弛み部10を構成する部材の弛み部10内面からの圧搾により弛み部10の外側に向けて窪ませた凹部によって形成してもよいし、またその両面からの圧搾により両面を窪ませた凹部によって形成してもよい。前記圧搾部11は、変形の基点としての効果をより一層高めるため、図示例のように弛み部10の全長に亘る連続線によって形成するのが好ましいが、肌当たりをソフトにするとともに、身体の前後方向に湾曲する肌面にもフィットしやすくするため、圧搾部11が延びる方向に沿って圧搾部と非圧搾部とを交互に複数配置した間欠線によって形成してもよい。
【0054】
前記弛み部10は、図4に示される実施形態例では、基端部から折り曲げ頂部にかけてほぼ同等の幅で形成されているが、図11に示されるように、脇用汗取りパッド1を折り線5にて2つ折りした状態における平面視で、基端部から頂部に向けて徐々に幅広に形成してもよい。弛み部10を頂部に向けて徐々に幅広に形成することにより、着用時に肌面に接触する部分の面積が大きくなり、着用者の肌面と接触やすくなって、より確実に汗が吸収できるようになる。
【符号の説明】
【0055】
1…脇用汗取りパッド、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…折り線、6…胴側領域、7…袖側領域、8…くびれ部、10…弛み部、11…圧搾部、12…接合部
図1
図2
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図6
図7
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図9
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図13