(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】形状測定装置、放射線治療システム及び形状測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230626BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20230626BHJP
G01C 3/00 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
G01B11/24 A
A61N5/10 M
G01C3/00 120
(21)【出願番号】P 2019069887
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】市橋 正英
(72)【発明者】
【氏名】小山 和里
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185204(JP,A)
【文献】特開2017-192549(JP,A)
【文献】特開2014-190800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 3/00- 3/32
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補正用平面の法線方向に対して斜め方向から前記補正用平面を光学的にスキャンすることにより得られた前記補正用平面の外形に関する第1のスキャンデータと、前記補正用平面の位置情報を取得する第1の取得部と、
前記第1のスキャンデータと、前記補正用平面の位置情報とに基づいて、複数の測定距離に関する複数の測定誤差を示す測定誤差分布を生成する生成部と
、
前記補正用平面に付された基準の図形を撮像して画像データとして出力する撮像部と、
前記画像データをライブビュー表示し、前記ライブビュー表示した画像データに、前記補正用平面の法線方向に対して所定の斜め方向となり且つ前記補正用平面から基準距離となるスキャナ位置から見た前記基準の図形の形状に対応するガイド用の図形を含む画像データを重畳表示する表示部と
を具備
し、
前記撮像部は、ユーザの操作に応じて、前記ライブビュー表示された画像データの基準の図形と、前記重畳表示された画像データのガイド用の図形とが一致するように、前記補正用平面の法線方向に対する斜め方向と前記補正用平面からの距離とが調整される、形状測定装置。
【請求項2】
前記生成部は、基準点により分割されたスキャン範囲を基準点領域として設定し、
前記測定誤差分布は、前記第1のスキャンデータの測定点ごとの測定誤差から算出された前記基準点領域ごとの測定誤差である、
請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記第1のスキャンデータに測定点が存在しない前記基準点領域に関しては、前記第1のスキャンデータに測定点が存在する前記基準点領域のうち、等しい測定距離に位置する前記基準点領域の測定誤差を用いて補間することにより、前記測定誤差分布を生成する、請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記補正用平面の位置情報として、前記法線方向における測定座標系の原点から前記補正用平面までの距離を取得する基準距離取得部をさらに備える、請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の形状測定装置。
【請求項5】
対象を光学的にスキャンすることにより得られた前記対象の外形に関する第2のスキャンデータを取得する第2の取得部と、
前記第2のスキャンデータの各測定点に関して、前記各測定点の測定距離に応じて前記測定誤差分布を参照することにより、前記第2のスキャンデータを補正する補正部と
をさらに備える、請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記補正された第2のスキャンデータから、前記対象に関する3次元的な対象モデルを生成するモデル生成部と、
前記対象モデルを使用して、放射線治療又は医用画像診断における前記対象及び装置間の干渉を判定する干渉判定部と
をさらに備える、請求項
5に記載の形状測定装置。
【請求項7】
請求項1乃至
6のうちいずれか1項に記載の形状測定装置と、
前記形状測定装置のスキャン範囲内で移動可能に支持された天板を有する寝台と
を具備し、
前記補正用平面は、前記天板であり、
前記第1のスキャンデータは、複数の天板位置に関する複数のスキャンデータを含む、
放射線治療システム。
【請求項8】
補正用平面の法線方向に対して斜め方向から前記補正用平面を光学的にスキャンすることにより得られた前記補正用平面の外形に関する第1のスキャンデータと、前記補正用平面の位置情報を取得することと、
前記第1のスキャンデータと、前記補正用平面の位置情報とに基づいて、複数の測定距離に関する複数の測定誤差を示す測定誤差分布を生成することと
、
撮像部により、前記補正用平面に付された基準の図形を撮像して画像データとして出力することと、
前記画像データをライブビュー表示し、前記ライブビュー表示した画像データに、前記補正用平面の法線方向に対して所定の斜め方向となり且つ前記補正用平面から基準距離となるスキャナ位置から見た前記基準の図形の形状に対応するガイド用の図形を含む画像データを重畳表示することと、
前記ライブビュー表示された画像データの基準の図形と、前記重畳表示された画像データのガイド用の図形とが一致するように、前記撮像部について、前記補正用平面の法線方向に対する斜め方向と前記補正用平面からの距離とを調整することと、
を含む形状測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、形状測定装置、放射線治療システム及び形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物までの距離や対象物の3次元形状を光学計測によりデータ化する技術がある。この技術が適用され、例えば、対象物の3次元形状を光学計測(スキャン)して3次元データ化する3次元形状測定装置(3Dスキャナ)が実現される。3次元データに基づいて、対象物の形状がコンピュータ上で表示されたり、対象物の模型が作成されたりする。また、放射線治療計画の一環として、3次元データに基づいて、機器同士又は機器と患者との干渉の有無が判定されたりする。
【0003】
3Dスキャナとしては、例えば赤外光を対象物上にパターン投影することにより対象物の3次元形状をスキャンするパターン投影型の3Dスキャナがある。パターン投影型の3Dスキャナは、安価であり、また、高速にスキャン可能である。しかしながら、パターン投影型の3Dスキャナには、対象物上にレーザ光を照射することにより対象物の3次元形状をスキャンする3Dスキャナなどと比較して、測定誤差が大きいという問題があった。
【0004】
このような中、測定誤差を低減するために、距離及び形状が既知の対象物に関して3Dスキャンを実施して測定誤差を補正する技術がある。しかしながら、測定誤差を取得するために、3Dスキャナを規定の位置に正確に配置することは困難である。また、例えば測定距離に応じて測定誤差が変化する。測定誤差の取得を複数回実施する場合、手間も時間もかかるため容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-27594号公報
【文献】特開平7-88791号公報
【文献】特開平10-115513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、非接触の形状測定における測定誤差を簡易に補正することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る形状測定装置は、第1の取得部と、生成部とを含む。第1の取得部は、補正用平面の法線方向に対して斜め方向から前記補正用平面を光学的にスキャンすることにより得られた前記補正用平面の外形に関する第1のスキャンデータと、前記補正用平面の位置情報を取得する。生成部は、前記第1のスキャンデータと、前記補正用平面の位置情報とに基づいて、複数の測定距離に関する複数の測定誤差を示す測定誤差分布を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る形状測定システムの構成の一例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1の形状測定装置の外観及び測定座標系の一例について説明するための図である。
【
図2B】
図2Bは、
図1の形状測定装置の外観及び測定座標系の一例について説明するための別の図である。
【
図3】
図3は、
図2のスキャナから得られるスキャンデータの一例について説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る誤差テーブル生成に係る一連の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5A】
図5Aは、第1の実施形態に係る基準点領域の一例について説明するための図である。
【
図5B】
図5Bは、第1の実施形態に係る基準点領域の一例について説明するための別の図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るスキャナのスキャナ方向と測定誤差の取得範囲との関係の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る各測定点に関する測定誤差の取得の一例について説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る測定点ごとの誤差テーブルから基準点領域ごとの誤差テーブルへの変換の一例について説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る基準点領域ごとの測定誤差の補間の一例について説明するための図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る測定対象のスキャン処理に係る一連の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11A】
図11Aは、第1の実施形態に係るスキャナ方向の調整の別の一例について説明するための図である。
【
図11B】
図11Bは、第1の実施形態に係るスキャナ方向の調整の別の一例について説明するための別の図である。
【
図12A】
図12Aは、第1の実施形態に係る測定誤差の取得の別の一例について説明するための図である。
【
図12B】
図12Bは、第1の実施形態に係る基準距離及びスキャナ方向の調整の別の一例について説明するための図である。
【
図13A】
図13Aは、第1の実施形態に係る基準距離及びスキャナ方向の調整の別の一例について説明するための図である。
【
図13B】
図13Bは、第1の実施形態に係る基準距離及びスキャナ方向の調整の別の一例について説明するための別の図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態に係る放射線治療システムの構成の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態に係る誤差テーブル生成に係る一連の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図17A】
図17Aは、第2の実施形態に係る治療用天板の移動の一例について説明するための図である。
【
図17B】
図17Bは、第2の実施形態に係る治療用天板の移動の一例について説明するための別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る形状測定装置、放射線治療システム及び形状測定方法を説明する。なお、以下の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。
【0010】
本実施形態に係る形状測定装置は、測定対象の3次元形状を測定し、測定対象の3次元形状を示すグラフィックモデル(3Dモデル)を生成する装置である。形状測定装置は、例えば放射線治療システムに包含される。このとき、生成された測定対象の3Dモデルは、例えば、放射線治療又は医用画像診断のために行われる干渉判定に用いられる。また、形状測定装置は、放射線治療システムとは無関係に用いることもできる。例えば、生成された測定対象の3Dモデルは、造形や製品検査などに用いられる。
【0011】
なお、以下の説明では、測定対象の3次元形状を測定する場合を例として本実施形態に係る技術について説明するが、これに限らない。本実施形態に係る技術は、測定対象の3次元形状に限らず、測定対象の2次元形状や測定対象までの距離、測定対象の位置の測定に適用可能である。
【0012】
図1は、本実施形態に係る形状測定装置10の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、形状測定装置10は、処理回路11、3Dスキャナ131、レーザ距離計133、メモリ15、入力インタフェース17及びディスプレイ19を有する。処理回路11、3Dスキャナ131、レーザ距離計133、メモリ15、入力インタフェース17及びディスプレイ19は、バス等を介して互いに通信可能に接続されている。
【0013】
処理回路11は、形状測定装置10の全体の動作を制御する。処理回路11は、形状測定に関するプログラム(以下、形状測定プログラムと呼ぶ)を実行して、校正処理や測定処理を行う。校正処理では、測定誤差を補正するための誤差テーブルが生成される。測定処理では、測定対象のスキャンにより得られたスキャンデータが誤差テーブルを用いて補正される。処理回路11は、ハードウェア資源として、Central Processing Unit(CPU)、Micro Processing Unit(MPU)、Graphics Processing Unit(GPU)等のプロセッサと、Read Only Memory(ROM)やRandom Access Memory(RAM)等のメモリとを有する。
【0014】
処理回路11は、形状測定プログラムにより、測距データ取得機能111、スキャンデータ取得機能112、誤差テーブル生成機能113、誤差補正機能114、モデル生成機能115及び表示制御機能116を実行する。
【0015】
測距データ取得機能111において処理回路11は、レーザ距離計133から測距データを取得する。測距データは、レーザ距離計133から測定対象までの距離に関する測定結果である。取得された測距データは、校正処理において誤差テーブル生成機能113に使用される。ここで、測距データ取得機能111を実現する処理回路11は、基準距離取得部の一例である。
【0016】
スキャンデータ取得機能112において処理回路11は、3Dスキャナ131からスキャンデータを取得する。スキャンデータは、測定対象の3次元形状に関する測定結果である。取得されたスキャンデータは、校正処理において誤差テーブル生成機能113に使用され、測定処理において誤差補正機能114に使用される。ここで、スキャンデータ取得機能112を実現する処理回路11は、第1の取得部及び第2の取得部の一例である。
【0017】
誤差テーブル生成機能113において処理回路11は、メモリ15や入力インタフェース17から3Dスキャナ131の有効視野角など、誤差テーブルの生成に要する各種情報を取得する。処理回路11は、測距データ取得機能111及びスキャンデータ取得機能112によりそれぞれ取得された測距データ及びスキャンデータに基づいて、誤差テーブルを生成する。誤差テーブルは、3Dスキャナ131のスキャン範囲における測定誤差の空間分布(測定誤差分布)を示すデータである。生成された誤差テーブルは、例えばメモリ15に記憶される。ここで、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11は、生成部の一例である。
【0018】
誤差補正機能114において処理回路11は、スキャンデータ取得機能112からスキャンデータを入力する。処理回路11は、メモリ15の誤差テーブルを参照し、スキャンデータ取得機能112により取得されたスキャンデータを補正する。補正されたスキャンデータは、モデル生成機能115に使用される。ここで、誤差補正機能114を実現する処理回路11は、補正部の一例である。
【0019】
モデル生成機能115において処理回路11は、誤差補正機能114により補正されたスキャンデータに基づいて、3Dモデルを生成する。より詳細には、処理回路11は、補正されたスキャンデータ(点群データ)を、ポリゴンデータに変換する。処理回路11は、変換されたポリゴンデータから測定対象に関する3次元のグラフィックモデル(3Dモデル)を生成する。生成された3Dモデルは、例えばメモリ15に記憶される。ここで、モデル生成機能115を実現する処理回路11は、モデル生成部の一例である。
【0020】
なお、形状測定装置10は、測定対象の3次元形状に関して、補正されたスキャンデータ(点群データ)を出力する装置であってもよい。つまり、3Dモデルの生成は、形状測定装置10の外部で行われてもよい。
【0021】
表示制御機能116において処理回路11は、生成された3Dモデルを表示するための画像データや操作用画面データ等、種々の表示情報をディスプレイ19に表示する。
【0022】
なお、処理回路11は、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)により実現されてもよい。また、処理回路11は、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)又は単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。
【0023】
なお、各機能111~116は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能111~116を実現するものとしても構わない。
【0024】
3Dスキャナ131は、測定対象の3次元形状を非接触に測定する。非接触での3次元形状の測定方法としては、例えば、以下の3種類がある。第1の種類は、レーザ光を測定対象に照射し、測定対象により反射又は散乱されたレーザ光を受光することにより、レーザ光に関する投光から受光までの時間又は投光したレーザ光と受光したレーザ光との位相差に基づいて距離を演算する。第2の種類は、赤外線などの光を測定対象等にパターン投影し、そのパターン模様の変化を光学カメラにより撮影し、撮影画像に画像処理を施して測定対象等の凹凸を演算する。第3の種類は、2つの光学カメラから同時に測定対象等を撮影し、その2つの光学カメラの視差に応じた測定対象の像面位置を利用して撮影画像から測定対象等の凹凸を演算する。本実施形態に係る3Dスキャナ131は、第2の種類の測定方法により、非接触に測定対象の凹凸を数値化するものとする。数値化された測定対象の3次元形状は、例えば、測定対象上の複数の物点に関する点群データ(以下、スキャンデータと呼ぶ)である。生成されたスキャンデータは、処理回路11に供給される。なお、3Dスキャナ131は、第1の取得部及び第2の取得部の一例であると表現されてもよい。
【0025】
なお、測定対象により反射又は散乱される光は、3Dスキャナ131により測定対象に照射された光であってもよいし、3Dスキャナ131の外部の光源から測定対象に照射された光であってもよいし、自然光(環境光)であってもよい。また、当該光は、赤外領域に限らず、紫外領域や可視領域の波長を有していてもよい。また、当該光は、単波長の光であってもよいし、複数の波長を含む光であってもよい。
【0026】
レーザ距離計133は、測定対象までの距離を測定する。レーザ距離計133は、レーザ光を測定対象へ照射し、測定対象により反射されたレーザ光を受光することにより、非接触に測定対象までの距離を測定する。測距方式は、三角測距を用いたものであってもよいし、Time of Flight(TOF)を用いたものであってもよい。また、レーザ光に限らず、音波を用いて測距が行われてもよい。また、メジャーを用いて測定対象までの距離が測定されてもよい。この場合、測定結果は、入力インタフェース17へ入力されればよい。測定結果(以下、測距データと呼ぶ)は、処理回路11に供給される。なお、レーザ距離計133は、基準距離取得部の一例であると表現されてもよい。
【0027】
メモリ15は、種々の情報を記憶するRAMやROM、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。例えば、メモリ15は、測距データや誤差テーブル、形状測定プログラム等を記憶する。メモリ15は、ハードウェアとして、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記録媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
【0028】
入力インタフェース17は、入力機器を介して受け付けたユーザからの各種指令を入力する。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェース17は、入力機器からの出力信号を、バスを介して処理回路11に供給する。
【0029】
ディスプレイ19は、種々の情報を表示する。ディスプレイ19は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。また、ディスプレイ19に代えて、プロジェクタが用いられてもよい。
【0030】
なお、本実施形態に係る形状測定装置10において、処理回路11、3Dスキャナ131、レーザ距離計133、メモリ15、入力インタフェース17及びディスプレイ19は、一体に構成されているが、これに限らない。形状測定装置10は、複数の装置又はその一部の組合せにより実現されていてもよい。例えば、3Dスキャナ131及びレーザ距離計133は、それぞれ個別の装置として構成されていてもよい。このとき、3Dスキャナ131及びレーザ距離計133は、一体に構成されていてもよい。また、3Dスキャナ131及びレーザ距離計133の出力は、それぞれ、USBメモリなどの外部メモリを介して処理装置に供給されてもよい。
【0031】
ここで、本実施形態に係る形状測定装置10の測定座標系について、図面を参照して説明する。
図2A及び
図2Bは、
図1の形状測定装置10の外観及び測定座標系の一例について説明するための図である。
図2A及び
図2Bには、それぞれ、形状測定装置10の背面及び上面から見た形状測定装置10の外観の一例が測定座標系の座標軸とともに示されている。
【0032】
以下の説明では、簡単のために、形状測定装置10において、3Dスキャナ131によるスキャンの方向と、レーザ距離計133による測距の方向とは一致しているとする。
図2Bに示す例では、形状測定装置10によりスキャン及び測距が行われる向きが、スキャナ方向SDとして示されている。
【0033】
図2Aに示すように、形状測定装置10の筐体101の背面には、ディスプレイ19が設けられている。また、
図2A及び
図2Bに示すように、筐体101の上面には、スキャンの開始を指示するための操作ボタンが設けられている。この操作ボタンは、入力インタフェース17に含まれる。また、
図2Bに示すように、筐体101の前面には、3Dスキャナ131の受光光学系が設けられている。受光光学系に入射した光は、後段の受光素子の受光面へ入射し、電気信号へ変換される。受光素子は、例えば、Charge-Coupled Device(CCD)である。受光素子は、例えば単板式のカラーCCDであるが、3板式のカラーCCDであってもよい。受光素子は、CCDに限らず、Complementary Metal-Oxide Semiconductor(CMOS)等のイメージセンサであってもよいし、他の受光素子であってもよい。
【0034】
図2A及び
図2Bに示す例において、測定座標系の原点は、形状測定装置10の位置(以下、スキャナ位置と呼ぶ)である。換言すれば、測定座標系の原点は、3Dスキャナ131及びレーザ距離計133の位置である。ここで、スキャナ方向SD、つまり3Dスキャナ131の背面から全面へ向かう方向を-Z方向とする。スキャナ位置は、例えば、3Dスキャナ131の受光光学系における入射瞳の中心である。また、Z軸は、例えば3Dスキャナ131の受光光学系の光軸であるとする。X軸及びY軸は、互いに直交し、Z軸に直交する面内に設定される。3Dスキャナ131の背面に向かって左側面から右側面へ向かう方向を+X方向とする。3Dスキャナ131の下面から上面へ向かう方向を+Y方向とする。
【0035】
なお、スキャナ位置としては、3Dスキャナ131の受光素子(撮像面)の中心が用いられてもよいし、形状測定装置10の筐体101の中心などであってもよい。また、スキャナ位置は、形状測定装置10の筐体101の背面など、形状測定装置10の筐体101上に設定されてもよい。スキャナ位置を示す表示が形状測定装置10の筐体101等に設けられていてもよい。
【0036】
次に、本実施形態に係る3Dスキャナ131から得られるスキャンデータについて、図面を参照して説明する。
図3は、
図2の3Dスキャナ131から得られるスキャンデータの一例について説明するための図である。
【0037】
図3に示す例では、3Dスキャナ131が出力するスキャンデータは、ヘッダ情報及び点群データを含む。点群データは、例えば、測定対象上の各物点に関する色及び3次元座標を含む。色は、例えばR(赤)、G(緑)及びB(青)の各色の受光強度を含む。なお、スキャンデータは、例えばASCIIテキストファイル形式であるが、これに限らない。スキャンデータは、点群データを取り扱うことができる他のファイル形式であってもよい。
【0038】
図3に示す例では、ヘッダ情報は、データ形式、点データの数、点データのデータ型を含む。また、色情報は、Rチャンネル、G1チャンネル、G2チャンネル及びBチャンネルの受光強度を示す。また、位置情報は、
図2A及び
図2Bの測定座標系における各点の位置座標である。
【0039】
なお、色情報は、3Dスキャナ131の受光素子の画素の配列などに応じて適宜変更される。また、色情報は、受光素子に応じて、点群データに含まれていなくてもよいし、A(透明度)がさらに含まれていてもよい。
【0040】
以下、誤差テーブル生成に係る一連の流れの一例について、図面を参照して詳細に説明する。
図4は、本実施形態に係る誤差テーブル生成に係る一連の流れの一例を示すフローチャートである。
【0041】
以下、本実施形態に係る形状測定装置10において、3Dスキャナ131は、スキャン範囲内の測定対象に関して、3次元形状の測定が可能であるとする。また、本実施形態に係る形状測定装置10において、測定誤差の補正は、誤差テーブルを用いて行われるとする。ここで、誤差テーブルは、3Dスキャナ131のスキャン範囲内に設定された各基準点領域の測定誤差を示す測定誤差分布であるとする。また、スキャン範囲は、3Dスキャナ131の有効距離及び有効視野角(画角)により規定されるとする。有効距離は、スキャナ方向SD(-Z方向)におけるスキャナ位置からの距離であるとする。有効視野角は、Z-X平面及びY-Z平面において、それぞれスキャナ位置を起点として3Dスキャナ131のスキャナ方向SDへ向かって開く角の大きさであるとする。
【0042】
なお、スキャン範囲は、撮影モードや撮影条件等に応じて適宜変更され得る。このため、以下の流れは、撮影モードや撮影条件ごとに実施されてもよい。
【0043】
ステップS101において、3Dスキャナ131のスキャン範囲内に複数の基準点領域が設定される。
図5A及び
図5Bは、本実施形態に係る基準点領域DRの一例について説明するための図である。
図5Aには、形状測定装置10のスキャン範囲SR内のスキャナ位置Oを含むZ-X平面が示されている。
図5Bには、
図5Aの5B-5B断面が示されている。
【0044】
まず、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11は、3Dスキャナ131のスキャン範囲SRを取得する。換言すれば、処理回路11は、有効距離及び有効視野角を取得する。スキャン範囲SRは、ユーザにより入力インタフェース17へ入力されてもよいし、予め設定されてメモリ15に記憶されていてもよい。
図5A及び
図5Bに示す例では、有効距離は、0.5~2.0mである。また、有効視野角は、Z-X平面(X軸方向)及びY-Z平面(Y軸方向)において、それぞれ54°である。例えば、3Dスキャナ131のX軸方向及びY軸方向の有効視野角がそれぞれ54°であるとき、スキャン距離(測定距離)、有効視野の幅及び有効視野の高さは概ね同じ長さである。
【0045】
次に、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11は、分割数を取得する。分割数は、ユーザにより入力インタフェース17へ入力されてもよいし、予め設定されてメモリ15に記憶されていてもよい。
図5A及び
図5Bに示す例では、X、Y及びZ方向の分割数は、それぞれ10である。
【0046】
その後、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11は、X、Y及びZ方向の各方向に関して、3Dスキャナ131のスキャン範囲SRを分割数に応じて等間隔に分割する。以下、各方向にスキャン範囲を分割する点を基準点DPと呼ぶ。処理回路11は、8個の基準点DPにより規定される6面体を基準点領域DRとして設定する。このようにして、3Dスキャナ131のスキャナ方向SDに複数の基準点領域DRが設定される。
図5A及び
図5Bに示す例では、X、Y及びZ方向の各方向に関してスキャン範囲SRが10分割されているため、1331個の基準点DPと、1000個の基準点領域DRとが設定されている。
【0047】
なお、基準点DPの間隔は、等間隔に限らない。基準点DPの間隔は、例えば、X軸方向又はY軸方向にZ軸から離れるにつれて細かく設定されたり、Z軸方向にスキャナ位置Oから離れるにつれて細かく設定されたりしてもよい。また、基準点DPの間隔は、方向ごとに異なっていてもよい。
【0048】
なお、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11により基準点領域DRが設定される場合を例として説明したが、これに限らない。基準点領域DRは、予め設定されてメモリ15に記憶されていてもよい。
【0049】
ステップS102において、形状測定装置10が設置される。
図6は、本実施形態に係る3Dスキャナ131のスキャナ方向SDと測定誤差の取得範囲との関係の一例を説明するための図である。
図6に示すように、形状測定装置10は、補正用平面CPから所定の距離(以下、基準距離dと呼ぶ)の位置(以下、基準位置と呼ぶ)に設置される。つまり、基準距離dは、
図6に示すように、形状測定装置10と補正用平面CPとの間の距離である。換言すれば、基準距離dは、補正用平面CPの法線方向におけるスキャナ位置Oから補正用平面CPまでの距離である。形状測定装置10は、例えばレーザ距離計133により基準距離dを測定することにより基準位置へ設置される。基準距離dは、例えば0.5mである。基準位置は、例えば3Dスキャナ131のスキャン範囲SRに応じて決定される。基準位置の決定については、後述する。形状測定装置10は、操作者等により人為的に設置されてもよいし、移動自在の機械式のアーム等により設置されてもよい。ここで、基準距離dは、補正用平面CPの位置情報の一例である。
【0050】
また、形状測定装置10は、補正用平面CPに正対する角度に調整される。このとき、形状測定装置10のスキャナ方向SDは、第1のスキャナ方向SD1である。つまり、第1のスキャナ方向SD1は、補正用平面CPに対して直交する。このため、基準位置に設置された形状測定装置10は、例えば3脚などにより、水平方向に関して、回転可能に固定されているとする。換言すれば、形状測定装置10のスキャナ方向SDは、水平方向に関して回転可能である。形状測定装置10の位置は、操作者等により人為的に調整されてもよいし、移動自在の機械式のアーム等により調整されてもよい。
【0051】
補正用平面CPは、補正用のスキャンデータを取得するための測定対象である。補正用平面CPは、例えば均一な平面を有する構造物である。補正用平面CPは、例えば2m×2m以上など、形状測定装置10のスキャン範囲より大きいことが望ましい。また、補正用平面CPは、高い平面度を有していることが望ましい。以下の説明では、建物内の壁面が補正用平面CPとして用いられる場合を例として説明する。
【0052】
ステップS103において、形状測定装置10のスキャナ方向SDが基準角度θに回転される。このとき、
図6に示すように、形状測定装置10のスキャナ方向SDは、第2のスキャナ方向SD2である。つまり、基準角度θは、第1のスキャナ方向SD1と第2のスキャナ方向SD2との成す角の角度であるとも表現できる。形状測定装置10は、例えば角度計を用いることにより、基準角度θまで回転される。基準角度θは、例えば50°である。基準角度θは、3Dスキャナ131のスキャン範囲SRや分割数に応じて適宜設定される。形状測定装置10は、操作者等により人為的に回転されてもよいし、移動自在の機械式のアーム等により回転されてもよい。
【0053】
ここで、基準距離d及び基準角度θの設定について、より詳細に説明する。なお、以下の説明では、簡単のために、Z-X平面上のスキャン範囲SRを例とする。
図6に示す例では、距離V1は、Z-X平面上のスキャン範囲内にある補正用平面CP上の点のうち、スキャナ位置Oからスキャナ位置Oに最も近い点までの距離である。同様に、距離V2は、Z-X平面上のスキャン範囲内にある補正用平面CP上の点のうち、スキャナ位置Oからスキャナ位置Oに最も遠い点までの距離である。このとき、距離V1及び距離V2は、それぞれ以下のように表される。ここで、3Dスキャナ131の有効視野角は54°であるとした。
【0054】
【0055】
例えば、距離V1を0.5mとし、基準角度θを50°とすると、式(1)及び式(2)から、基準距離d及び距離V2は、それぞれ0.46m及び2.04mとなる。つまり、基準距離d及び基準角度θをそれぞれ0.46m及び50°とした場合、Z-X平面上のスキャン範囲において、スキャナ位置Oから0.5~2.0mの距離に関して測定誤差を取得できることになる。換言すれば、本実施形態に係る補正用のスキャンでは、複数の測定距離に関する複数の測定誤差が取得できる。このようにして、基準距離d及び基準角度θは、例えば3Dスキャナ131のスキャン範囲SRに応じて設定される。
【0056】
ステップS104において、スキャンデータ取得機能112を実現する処理回路11は、補正用のスキャンデータを取得する。補正用のスキャンデータは、補正用平面CPを測定対象として第2のスキャナ方向SD2に関してスキャンして得られたスキャンデータである。換言すれば、補正用のスキャンデータは、補正用平面CPの外形に関するスキャンデータである。ここで、補正用のスキャンデータは、第1のスキャンデータの一例である。取得された補正用のスキャンデータは、メモリ15に記憶される。
【0057】
ステップS105において、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11は、各測定点に関して、測定誤差を算出する。
図7は、本実施形態に係る各測定点に関する測定誤差の取得の一例について説明するための図である。なお、以下の説明では、簡単のために、Z-X平面上の測定点P1を例とする。
【0058】
補正用平面CPと、スキャナ位置Oから補正用平面CPへの垂線との交点、つまり点P0は、点P0´をZ-X平面上で-θ回転させた位置として表現できる。ここで、形状測定装置10の測定座標系において、スキャナ位置O及び点P0´の空間座標は、それぞれ、(0、0、0)及び(0、0、d)である。Y座標は変化しないため、Z-X座標系において、点P0´を-θ回転させることを考える。Z-X座標系における点P0´の座標は、(0、d)である。Z-X座標系における点P0の座標を(Vx、Vz)とすると、Vx及びVzは、以下のように表される。
【0059】
【0060】
つまり、測定座標系における点P0の空間座標は、(dsinθ、0、dcosθ)と表される。また、補正用平面CPの法線ベクトルは、点P0からスキャナ位置Oへ向かうベクトルである。したがって、補正用平面CPは、以下の平面の方程式により表される。
【0061】
【0062】
また、測定座標系における補正用のスキャンデータの測定点P1の空間座標を(Sx、Sy、Sz)とすると、測定点P1とスキャナ位置Oとを通る直線の方程式は、媒介変数tを用いて、以下のように表される。
【0063】
【0064】
本来の測定点P1の位置を点P2とすると、点P2は、式(5)の平面と、式(6)の直線との交点である。したがって、式(5)及び式(6)より、測定座標系における点P2の空間座標(x、y、z)は、以下のように表される。
【0065】
【0066】
処理回路11は、このようにして算出された点P2と、測定点P1との間の距離ERを測定点P1の測定誤差として算出する。また、処理回路11は、各測定点に関して同様に測定誤差を算出する。複数の測定点に関する複数の測定誤差は、測定点ごとの誤差テーブルとしてメモリ15に記憶される。例えば、3Dスキャナ131の解像度が640×480である場合、この時点で307200個の測定誤差が格納された測定点ごとの誤差テーブルが生成される。
【0067】
例えば3Dスキャナ131の個体差や撮影条件により、スキャンデータ間で測定点の位置が異なる場合がある。
図8は、本実施形態に係る測定点ごとの誤差テーブルから基準点領域DRごとの誤差テーブルへの変換の一例について説明するための図である。つまり、
図8に示すように、測定点P1の位置と基準点DPの位置とが異なる場合がある。このため、ステップS106乃至ステップS109において、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11は、上述のようにして算出された各測定点に関する測定誤差を、基準点領域DRごとの誤差テーブルに変換する。換言すれば、処理回路11は、測定点ごとの誤差テーブルを、基準点領域DRごとの誤差テーブルに変換する。
【0068】
ステップS106において、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11は、測定点P1を含む基準点領域DRを特定する。
【0069】
ステップS107において、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11は、測定点P1を含む基準点領域DRに関して測定誤差を算出する。具体的には、処理回路11は、測定点P1に関する測定誤差を、その基準点領域DRでの測定誤差としてテーブル化する。
【0070】
なお、1つの基準点領域DRに複数の測定点P1が存在する場合には、処理回路11は、複数の測定点P1に関する複数の測定誤差の平均値を、その基準点領域DRでの測定誤差としてテーブル化する。
【0071】
なお、複数の測定点P1に関する複数の測定誤差にバラつきが大きい場合もあり得る。このような場合、処理回路11は、複数の測定点P1に関する複数の測定誤差の分散を算出する。算出された分散の値が所定の閾値以上であるとき、処理回路11は、その基準点領域DRについては測定誤差の補正不可と判断し、本ステップではその基準点領域DRに関して測定誤差を算出しなくてもよい。また、処理回路11は、算出された分散の値が所定の閾値以上であるとき、その基準点領域DRについては測定対象のスキャンデータに関して対象外としてもよい。
【0072】
ステップS108において、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11は、測定点P1を含まない基準点領域DRに関して測定誤差を補間する。
図9は、本実施形態に係る基準点領域DRごとの測定誤差の補間の一例について説明するための図である。
図9に示すように、複数の基準点領域DRは、測定点P1が存在しない基準点領域DR2や、上述したように測定誤差が算出されていない基準点領域DR4を含む。このため、処理回路11は、測定点P1を含む基準点領域DRに関して算出された測定誤差を用いて、測定誤差が算出されていない基準点領域DRに関して測定誤差を補間する。測定誤差は、例えば測定対象との距離に応じて変化する。このため、処理回路11は、測定誤差が算出されていない基準点領域DRの測定誤差として、スキャナ位置Oからの距離が等しい他の基準点領域DRの測定誤差を用いる。
図9に示す例では、基準点領域DR1に関する測定誤差により、基準点領域DR4の測定誤差が補間される。同様に、基準点領域DR3に関する測定誤差により、基準点領域DR2の測定誤差が補間される。
【0073】
なお、スキャナ位置Oからの距離が等しい他の基準点領域DRのうち、複数の基準点領域DRに関して測定誤差が算出されている場合には、例えば、複数の基準点領域DRに関する測定誤差の平均値が用いられればよい。
【0074】
ステップS109において、誤差テーブル生成機能113を実現する処理回路11は、誤差テーブルを出力する。出力された誤差テーブルは、メモリ15に記憶される。
【0075】
以下、誤差テーブル生成に係る一連の流れの一例について、図面を参照して詳細に説明する。
図10は、本実施形態に係る測定対象のスキャン処理に係る一連の流れの一例を示すフローチャートである。
【0076】
ステップS201において、スキャンデータ取得機能112を実現する処理回路11は、測定対象に関するスキャンにより得られたスキャンデータを取得する。測定対象に関するスキャンにより得られたスキャンデータは、測定対象の外形に関するスキャンデータである。ここで、測定対象に関するスキャンにより得られたスキャンデータは、第2のスキャンデータの一例である。なお、本ステップで取得されるスキャンデータは、複数の角度で測定対象をスキャンして得られた複数のスキャンデータを含む。
【0077】
ステップS202において、誤差補正機能114を実現する処理回路11は、測定対象のスキャンデータの各測定点に関して、いずれの基準点領域DRに含まれるかを特定する。
【0078】
ステップS203において、誤差補正機能114を実現する処理回路11は、誤差テーブルを参照して、特定された基準点領域DRに関する測定誤差を取得する。処理回路11は、取得された測定誤差を用いて、各測定点の測定値を補正する。例えば、特定された基準点領域DRに関する測定誤差が-2.3cmの場合、実測定点とスキャナ位置Oとを結ぶ直線上で、実測定点から2.3cmだけスキャナ位置Oから離れる方向にある位置を、補正された測定点の位置とする。このようにして、処理回路11は、補正されたスキャンデータを生成する。補正されたスキャンデータは、例えばメモリ15に記憶される。
【0079】
なお、実測定点が補正不可の基準点領域DRに含まれる場合には、その実測定点に関しては、無いものとして取り扱う。
【0080】
ステップS204において、モデル生成機能115を実現する処理回路11は、補正されたスキャンデータを合成して、測定対象の3次元モデル(対象モデル)を生成する。生成された測定対象の3次元モデルは、例えばメモリ15に記憶される。
【0081】
ステップS205において、表示制御機能116を実現する処理回路11は、測定対象の3次元モデルから表示用の画像データを生成する。生成された表示用の画像データは、ディスプレイ19に表示される。
【0082】
なお、補正用のスキャンは、複数回実施されてもよい。複数回の補正用平面CPのスキャンは、例えば複数のスキャナ方向SDや複数の基準距離dに関して実施される。例えば、上述したように基準角度θを50°としてスキャンした後、基準角度θを-50°としたスキャンが実施される。このとき、補正用平面CPの同範囲に関して複数回のスキャンが行われてもよいし、異なる範囲に関して行われてもよい。補正用のスキャンが複数回実施された場合、誤差テーブルは、同一基準点領域DR内の測定誤差をスキャン回数で平均化した値がテーブル化されればよい。
【0083】
なお、補正用のスキャンにおいて、スキャナ方向SD(基準角度θ)は、例えばレーザ距離計133の測距結果に基づいて調整されてもよい。
図11A及び
図11Bは、本実施形態に係るスキャナ方向SDの調整の別の一例について説明するための図である。
図11A及び
図11Bに示すように、例えば基準距離dが0.5mの場合には、基準角度θが30°及び45°であるとき、それぞれ、レーザ距離計133の測距結果が√2/2m及び1/√3mを示すように、形状測定装置10が水平方向に関して回転されればよい。
【0084】
なお、測定点に関する測定誤差の取得は、計算による方法に限らない。
図12Aは、本実施形態に係る測定誤差の取得の別の一例について説明するための図である。
図12Aに示すように、所定のスキャナ方向SDにおいて、スキャナ位置Oから所定の距離となる位置の補正用平面CP上に、予め基準線RLが描画される。この場合、基準線RL上の点に関しては、スキャナ位置Oからの距離が既知である。このため、測定点に関する測定誤差は、基準線RL上の点に関する測定値は、既知の距離と比較することにより算出することができる。
【0085】
なお、基準距離d及びスキャナ方向SDは、例えば補正用平面CPへ基準線を描画することにより調整されてもよい。
図12Bは、本実施形態に係る基準距離d及びスキャナ方向SDの調整の別の一例について説明するための図である。
図12Aに示すように、補正用平面CP上に基準線RLが描画されているとする。換言すれば、基準線RLは、補正用平面CP上に付されている。このとき、形状測定装置10は、被写体からの光を撮像して画像データとして出力する撮像部を備える。撮像部は、撮像光学系及び撮像素子を有する。撮像光学系に入射した光は、後段の撮像素子の撮像面へ入射し、電気信号へ変換される。撮像素子は、例えば、CCDやCMOS等のイメージセンサである。なお、撮像光学系及び撮像素子として、3Dスキャナ131の受光光学系及び受光素子が用いられてもよい。このとき、3Dスキャナ131は、撮像部の一例であると表現できる。表示制御機能116を実現する処理回路11は、
図12Bに示すように、ディスプレイ19でのライブビュー表示にガイド用の画像I10を重畳表示する。ガイド用の画像I10は、ガイド用の基準線ILを含む。ガイド用の基準線ILは、補正用平面CPの法線方向に対して斜め方向から見た基準線RLの形状に対応する。この場合、ユーザは、ディスプレイ19上で、ライブビュー表示による基準線RLと、重畳表示されたガイド用の基準線ILとが一致するように、基準距離d及びスキャナ方向SDを調整すればよい。基準線RLは、補正用平面CPに設けられた凹構造又は凸構造により表現されてもよい。ここで、表示制御機能116を実現する処理回路11は、表示部の一例である。なお、ディスプレイ19は、表示部の一例であると表現されてもよい。基準線RLは、基準の図形の一例である。ガイド用の基準線ILは、ガイド用の図形の一例である。
【0086】
なお、基準距離d及びスキャナ方向SDは、上述の基準線に限らず、例えば補正用平面CPへ基準図形を描画することにより調整されてもよい。
図13A及び
図13Bは、本実施形態に係る基準距離d及びスキャナ方向SDの調整の別の一例について説明するための図である。
図13Aに示すように、所定のスキャナ方向SDにおいて、スキャナ位置Oから所定の距離となる位置の補正用平面CP上に、予め基準図形RGが描画されているとする。換言すれば、基準図形RGは、補正用平面CP上に付されている。このとき、表示制御機能116を実現する処理回路11は、
図13Bに示すように、ディスプレイ19でのライブビュー表示にガイド用の画像I20を重畳表示する。ガイド用の画像I20は、ガイド用の基準図形IGを含む。ガイド用の基準図形IGは、補正用平面CPの法線方向に対して斜め方向から見た基準図形RGの形状に対応する。この場合、ユーザは、ディスプレイ19上で、ライブビュー表示による基準図形RGと、重畳表示されたガイド用の基準図形IGとが一致するように、基準距離d及びスキャナ方向SDを調整すればよい。基準図形RGは、補正用平面CPに設けられた凹構造又は凸構造により表現されてもよい。ここで、基準図形RGは、基準の図形の一例である。また、ガイド用の基準図形IGは、ガイド用の図形の一例である。
【0087】
なお、基準線RLや基準図形RGは、補正用平面CP上に描画される場合に限らず、液晶プロジェクタ等により補正用平面CP上に投影されてもよい。この場合、形状測定装置10は、当該液晶プロジェクタを含んでいてもよい。
【0088】
なお、上述の実施形態において、補正用平面CPとして構造物の壁面が用いられる場合を例として説明したが、これに限らない。例えば、補正用平面CPとして、床面が用いられてもよい。また、補正用平面CPは、例えば、液晶プロジェクタから画面等を投影する可搬型のスクリーン等であってもよい。この場合、基準距離dやスキャナ方向SDは、3Dスキャナ131に限らず、スクリーンを移動又は回転させることにより調整されてもよい。
【0089】
なお、上述の実施形態において、可搬型の形状測定装置10を例として説明したが、これに限らない。形状測定装置10は、例えば放射線治療システムにおける放射線治療装置等にスキャナ位置Oが一意に定まるように固定されていてもよい。また、補正用平面CPとの間の距離が一意に定まるように設計された冶具等に固定されていてもよい。また、基準距離dは、形状測定装置10の外部で測定されて、測距結果が形状測定装置10に入力される仕様もあり得る。このように、基準距離dを既知の値として取り扱うことができる場合には、形状測定装置10は、レーザ距離計133を有していなくてもよい。
【0090】
なお、上述の実施形態において、スキャナ方向SDを、補正用平面CPの法線方向からY軸回り(水平方向)に回転させることにより、複数の距離に関する複数の測定誤差を一度に取得する形状測定装置10を例として説明したが、スキャナ方向SDは、X軸又はZ軸回りに回転されてもよい。また、スキャナ方向SDは、X軸、Y軸及びZ軸のうち、2軸以上の軸回りに回転されてもよい。
【0091】
以上説明したように、本実施形態に係る補正用のスキャンは、補正用平面CPの法線方向に対して斜め方向から補正用平面CPをスキャンすることにより実施される。このようにして取得された補正用のスキャンデータは、複数のスキャン距離(測定距離)の測定点に関する点群データである。つまり、本実施形態に係る技術によれば、少なくとも1回の補正用のスキャンにより、複数の測定距離に関する複数の測定誤差を取得することができる。換言すれば、本実施形態に係る技術によれば、測定距離ごとに基準距離dを測定しながら形状測定装置10を配置しなくてもよいため、補正用のスキャンデータを簡易に取得できるという効果がある。簡易に補正用のスキャンデータを取得できれば、形状測定装置10の補正作業に要する作業時間を短縮できる。
【0092】
なお、補正用平面CPの法線方向に対して斜め方向から補正用平面CPをスキャンする補正用のスキャンは、補正用平面CPの法線方向に対してスキャナ方向SDが傾きを有する場合に限らない。補正用のスキャンにより得られるスキャンデータに含まれる少なくとも2つの測定点に関して、当該2つの測定点及びスキャナ位置Oを通る直線の方向が、それぞれ補正用平面CPの法線方向に対して傾きを有していればよい。つまり、本実施形態に係る技術によれば、スキャナ方向SD及び補正用平面CPの法線方向が一致している場合であっても、上述の実施形態と同様にして、1回の補正用のスキャンにより複数の測定距離に関する複数の測定誤差を取得できる。
【0093】
また、本実施形態に係る測定誤差分布は、複数の測定距離に関する複数の測定誤差である。より詳細には、測定誤差分布は、各基準点領域に関して算出された測定誤差を示す誤差テーブルとして生成される。また、測定対象に関するスキャンデータは、各測定点の測定距離に応じて誤差テーブルが参照されることにより補正される。より詳細には、測定対象に関するスキャンデータは、各測定点の測定距離に応じた測定誤差により補正される。この構成であれば、撮影条件や3Dスキャナ131によって測定点が異なっている場合であっても、測定対象に関するスキャンデータを適切に補正できる。
【0094】
なお、異なる斜め方向から実施される複数の補正用のスキャンは、スキャン角度(スキャナ方向SD)を変えてスキャンして得られる複数のスキャンデータを合成してモデリングする場合を想定している。このように、複数のスキャナ方向SDからスキャンして得られた複数の補正用のスキャンデータから誤差テーブルが生成されることで、測定対象のスキャンデータが合成されるときの精度向上も期待できる。
【0095】
[第2の実施形態]
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る形状測定装置、放射線治療システム及び形状測定方法を説明する。ここでは、主に第1の実施形態との相違点について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0096】
図14は、本実施形態に係る放射線治療システム1の構成の一例を示す図である。
図14に示すように、放射線治療システム1は、3Dスキャナ131、レーザ距離計133、干渉判定装置30、治療計画画像撮影装置50、治療計画装置70及び放射線治療装置90を有する。3Dスキャナ131、レーザ距離計133、干渉判定装置30、治療計画画像撮影装置50、治療計画装置70及び放射線治療装置90は、ネットワーク等を介して互いに通信可能に接続されている。
【0097】
本実施形態に係る形状測定装置10は、例えば、3Dスキャナ131、レーザ距離計133及び干渉判定装置30を含む。なお、3Dスキャナ131、レーザ距離計133及び干渉判定装置30は、一体に構成されていてもよいし、それぞれ異なる装置として構成されていてもよい。
【0098】
本実施形態に係る3Dスキャナ131は、測定対象の3次元形状を光学的に測定する可搬型の測定機器である。3Dスキャナ131により得られたスキャンデータは、干渉判定装置30に供給される。測定対象は、干渉判定装置30による干渉判定に使用するグラフィックモデルの生成対象に設定される。典型的には、放射線治療又は医用画像診断毎に異なる形態を有し、予め用意されている標準的なグラフィックモデルとの間で形態の相違が生じるものである。具体的には、測定対象は、放射線治療又は医用画像診断の患者でもよいし、放射線治療又は医用画像診断の患者と当該患者を寝台に固定するための固定具との組合せでもよい。
【0099】
干渉判定装置30は、CPUやGPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、表示機器、入力インタフェース、通信インタフェースを含むコンピュータである。干渉判定装置30の処理回路は、第1の実施形態に係る形状測定装置10の処理回路11と同様に、形状測定プログラムにより、測距データ取得機能111、スキャンデータ取得機能112、誤差テーブル生成機能113、誤差補正機能114、モデル生成機能115及び表示制御機能116を実行する。また、干渉判定装置30は、治療計画画像撮影装置50又は放射線治療装置90の機器同士又は機器と患者との干渉を判定する。干渉判定装置30の処理回路は、3Dスキャナ131によりスキャンされた測定対象に関する3次元のグラフィックモデルを利用して、シミュレーションにより干渉を判定する干渉判定機能をさらに実行する。ここで、干渉判定機能を実現する干渉判定装置30の処理回路は、干渉判定部の一例である。
【0100】
治療計画画像撮影装置50は、放射線治療計画に利用する医用画像(以下、治療計画画像と呼ぶ)を生成する医用画像診断装置である。治療計画画像撮影装置50は、患者の体表を描出可能であれば、如何なる医用画像診断装置でも良い。このような治療計画画像撮影装置50としては、例えば、X線コンピュータ断層撮影装置やコーンビームCT装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置等が用いられる。
【0101】
治療計画装置70は、CPUやGPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、表示機器、入力インタフェース、通信インタフェースを含むコンピュータである。治療計画装置70は、治療計画画像撮影装置50から直接的に又は医用画像管理システム(Picture Archiving and Communication Systems:PACS)等を介して治療計画画像を受信する。治療計画装置70は、治療計画画像を利用して、患者に関する治療計画を作成する。治療計画は、治療計画画像と放射線治療条件とを含む。放射線治療条件は、腫瘍位置や放射線照射方向数、放射線照射角度、放射線強度、コリメータ開度、ウェッジフィルタ等の各種条件を含む。治療計画は、放射線治療装置90に送信される。
【0102】
図15は、
図14の放射線治療装置90の構成の一例を示す図である。放射線治療装置90は、
図15に示すように、治療用架台91(ガントリ)と治療用寝台94とコンソールとを有する。治療用架台91は、保持装置92と、回転軸回りに回転可能に保持装置92に設けられた照射ヘッド93とを有する。照射ヘッド93には、電子銃等により発生された電子等を加速する加速管と、加速管により加速された電子が衝突する金属ターゲットとが搭載される。金属ターゲットに電子が衝突することにより、放射線であるX線が発生する。照射ヘッド93は、治療計画装置70により同定された治療計画に含まれる放射線治療条件に従い放射線を照射する。照射ヘッド93からの放射線のビーム軸と回転軸とが交わる点は、空間的に不動であり、アイソ・センタと呼ばれている。治療用寝台94は、床面に設けられた基台95と、患者が載置される治療用天板96とを有する。治療用天板96は、基台95により、移動自在に支持される。治療用天板96は、撮像用天板と同様に平面形状を有している。患者の治療部位がアイソ・センタに一致するように治療用架台91、治療用寝台94及び患者が位置合わせされる。また、
図15に示すように、本実施形態に係る治療用天板96は、補正用平面CPとして用いられる。
【0103】
以下、誤差テーブル生成に係る一連の流れの一例について、図面を参照して詳細に説明する。
図16は、本実施形態に係る誤差テーブル生成に係る一連の流れの一例を示すフローチャートである。
図17A及び
図17Bは、本実施形態に係る治療用天板96の移動の一例について説明するための図である。
図17Aには、
図15の治療用架台91側から見た治療用寝台94及び3Dスキャナ131の配置の一例が示されている。なお、以下の説明は、
図4の第1の実施形態に係る誤差テーブル生成に係る一連の流れの一例と比較しながら行う。
【0104】
ステップS301乃至ステップS304は、それぞれ、
図4のステップS101乃至ステップS104と同様である。なお、本実施形態に係る補正用平面CPは、放射線治療装置90の治療用天板96である。また、基準距離dの調整は、治療用天板96の移動により実現されてもよい。
【0105】
ステップS305において、所定の範囲に関するスキャンが終了したか否かが判断される。
図17Aに示すように、3Dスキャナ131のスキャン範囲SRによっては、治療用天板96の大きさが、補正用平面CPとして十分ではない可能性がある。このため、本実施形態では、補正用平面CPとして要求される大きさの範囲(所定の範囲)に関して補正用のスキャンが終了するまで、治療用天板96を移動させながら、補正用のスキャンデータを収集する。所定の範囲に関するスキャンが終了したと判断された場合はステップS307へ進み、判断されなかった場合はステップS306へ進む。
【0106】
ステップS306において、治療用天板96が移動される。例えば、
図17Aに示す例では、治療用天板96は、スキャン範囲SRにおいて、方向BD1及び方向BD2へ移動される。治療用天板96が移動された後、ステップS304へ戻る。その後、ステップS304において、移動された治療用天板96に関して補正用のスキャンが実施されることになる。
【0107】
なお、治療用天板96の移動はX軸方向に限らず、所定の範囲やスキャンごとの測定範囲などに応じて、Z軸方向にさらに移動してもよい。なお、所定の範囲やスキャンごとの測定範囲などは、例えば予め設定されてメモリ15に記憶されていればよい。なお、スキャンごとの測定範囲は、スキャン範囲SR及び基準距離dに基づいて算出されてもよい。
【0108】
また、治療用天板96は、
図17Bに示すように、放射線治療装置90の座標系におけるZ軸及びX軸方向に限らず、Y軸方向(
図17Bに示す例では、方向BD3)に移動されてもよい。この場合であっても、複数回のスキャンにより、要求される範囲で測定点までの距離ごとの測定誤差を取得できる。
【0109】
なお、治療用天板96の移動は、ユーザにより放射線治療装置90で制御されてもよいし、干渉判定装置30の処理回路によりスキャン範囲SR等に応じて制御されてもよい。
【0110】
ステップS307において、全ての基準角度θに関してスキャンが終了したか否かが判断される。全ての基準角度θに関してスキャンが終了したと判断された場合はステップS308へ進み、判断されなかった場合はステップS303へ戻る。
【0111】
ステップS308乃至ステップS312は、それぞれ、
図4のステップS105乃至ステップS109と同様である。
【0112】
以上説明したように、本実施形態に係る補正用のスキャンでは、治療用天板96が補正用平面CPとして用いられる。また、1回のスキャン範囲(有効視野角)の全体に治療用天板96が含まれないとき、本実施形態に係る補正用のスキャンでは、有効視野角の全体に関して補正用のスキャンデータが取得されるように、治療用天板96が移動される。つまり、本実施形態に係る技術によれば、補正用のスキャンデータとして、複数の治療用天板96の位置に関する複数のスキャンデータが取得できる。換言すれば、本実施形態に係る補正用のスキャンでは、治療用天板96の補正用平面CPとして使用できる範囲の大きさが、補正用平面CPとして要求される大きさより小さい場合には、治療用天板96を移動させる。これにより、1回のスキャン範囲の全体が含まれる補正用平面CPを使用する場合と同様に、複数の測定距離に関する複数の測定誤差を取得できる。
【0113】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、非接触の形状測定における測定誤差を簡易に補正することができる。
【0114】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)等の回路を意味する。PLDは、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)を含む。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プログラムが保存された記憶回路は、コンピュータ読取可能な非一時的記録媒体である。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現してもよい。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1及び
図14における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0116】
1…放射線治療システム、
10…形状測定装置、
11…処理回路、
15…メモリ、
17…入力インタフェース、
19…ディスプレイ(表示部)、
30…干渉判定装置(干渉判定部)、
50…治療計画画像撮影装置、
70…治療計画装置、
90…放射線治療装置、
91…治療用架台、
92…保持装置、
93…照射ヘッド、
94…治療用寝台、
95…基台、
96…治療用天板、
101…筐体、
111…測距データ取得機能(基準距離取得部)、
112…スキャンデータ取得機能(第1の取得部、第2の取得部)、
113…誤差テーブル生成機能(生成部)、
114…誤差補正機能(補正部)、
115…モデル生成機能(モデル生成部)、
116…表示制御機能(表示部)、
131…3Dスキャナ(第1の取得部、第2の取得部、撮像部)、
133…レーザ距離計(基準距離取得部)。