(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】電気的接触子及び電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/073 20060101AFI20230626BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20230626BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
G01R1/073 B
G01R31/26 J
G01R1/067 C
(21)【出願番号】P 2019072224
(22)【出願日】2019-04-04
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】大里 衛知
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-141986(JP,A)
【文献】特開平11-344508(JP,A)
【文献】特開2010-008388(JP,A)
【文献】特開2002-365308(JP,A)
【文献】特開2011-153998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側部材と下側部材とで構成されたハウジングに収容されて使用される電気的接触子であって、
前記ハウジングの前記下側部材上に載置され、導電部材で形成された板状の本体部と、
前記本体部から一体的に連続して上方に延出した上部基部と、前記上部基部から前記本体部に沿って横方向に延出した上部支持部と、前記上部支持部から垂直上方に延出して第1の接触対象と電気的に接触する第1の先端部とを有する片持ち梁構造の上部アーム部と、
前記本体部から一体的に連続して下方に延出した下部基部と、前記下部基部から前記本体部に沿って横方向に延出した下部支持部と、前記下部支持部から垂直下方に延出して第2の接触対象と電気的に接触する第2の先端部とを有する片持ち梁構造の下部アーム部と、
前記本体部の一方の端部から上方に延出した第1の位置決め部と、
前記本体部の他方の端部付近から上方に延出した第2の位置決め部と
を備え、
前記上部アーム部は、前記ハウジングの前記上側部材に設けられた上下方向に貫通する開口部を通って配置し、
前記下部アーム部は、前記ハウジングの前記下側部材に設けられた上下方向に貫通する開口部を通って配置し、
前記第1の位置決め部が、前記ハウジングの前記上側部材の下面に設けられた第1の穴部に収納され、
前記第2の位置決め部が、前記ハウジングの前記上側部材の下面に設けられた第2の穴部に収容される
ことを特徴とする電気的接触子。
【請求項2】
前記上部アーム部は、前記上部基部が前記本体部の長手方向の中央部よりも前記一方の端部側に設けられ、前記上部基部が前記本体部から上方に延び、
前記上部支持部が前記
上部基部から前記他方の端部に向けて延びてその後円弧状に湾曲して、前記本体部に沿って前記一方の端部に向けて延びており、
前記下部アーム部は、前記下部基部が前記本体部の長手方向の中央部よりも前記他方の端部側に設けられ、前記下部基部が前記本体部から下方に延びその後湾曲して、前記下部支持部が前記下部基部から前記一方の端部に向けて延びており、
前記上部アーム部の前記第1の先端部が、前記下部アーム部の前記第2の先端部の位置よりも前記一方の端部側に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的接触子。
【請求項3】
前記上部アーム部は、前記上部基部が前記本体部の長手方向の中央部付近に設けられ、前記上部基部が前記本体部から上方に延び、
前記上部支持部が前記
上部基部から前記他方の端部に向けて延びてその後円弧状に湾曲して、前記本体部に沿って前記一方の端部に向けて延びており、
前記下部アーム部は、前記下部基部が前記本体部の長手方向の中央部よりも前記他方の端部側に設けられ、前記下部基部が前記本体部から下方に延びその後湾曲して、前記下部支持部が前記下部基部から前記一方の端部に向けて延びており、
前記上部アーム部の前記第1の先端部が、前記下部アーム部の前記第2の先端部の位置の上方に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的接触子。
【請求項4】
前記上部アーム部は、前記上部基部が前記本体部の長手方向の中央部よりも前記一方の端部側に設けられ、前記上部基部が前記本体部から上方に延び、
前記上部支持部が前記
上部基部から前記他方の端部に向けて延びてその後円弧状に湾曲して、前記本体部に沿って前記一方の端部に向けて延びており、
前記下部アーム部は、前記下部基部が前記本体部の長手方向の中央部よりも前記他方の端部側に設けられ、前記下部基部が前記本体部から下方に延びその後湾曲して、前記下部支持部が前記下部基部から前記一方の端部に向けて延びており、
前記上部アーム部の前記第1の先端部が、前記本体部の前記一方の端部に設けた前記第1の位置決め部の位置よりも外側に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的接触子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の複数の電気的接触子と
前記複数の電気的接触子の間に挟まれた絶縁部材と
を備えることを特徴とする電気的接触子。
【請求項6】
配線が形成された基板と、前記基板上に請求項1~5のいずれかに記載の複数の電気的接触子を収容するハウジング部と、前記ハウジング部に収容される前記複数の電気的接触子と接触可能な位置に被検査体を収容する被検査体収容部とを備え、前記各電気的接触子を介して、前記被検査体の電極部と前記基板の前記配線との間を電気的に接続させる電気的接続装置において、
前記ハウジング部が、前記複数の電気的接触子を収容する収容内部の上面に、前記各電気的接触子の一方の端部にある第1の位置決め部を収容する第1の穴部と、前記各電気的接触子の他方の端部側にある第2の位置決め部を収容する第2の穴部とを備えることを特徴とする電気的接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接続装置に関し、例えば、被検査体の通電試験に用いる電気的接触子及び電気的接続装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集積回路の製造過程では、パッケージされた集積回路について、例えばパッケージテスト、ファイナルテスト等と呼ばれる電気的特性の検査が行なわれる。そのような検査では、被検査体である集積回路を着脱可能に保持した状態で、その保持した集積回路の電極端子に電気的接触子を電気的接触させる電気的接続装置(いわゆるテストソケット等)が用いられる。電気的接続装置に装着された集積回路は、この電気的接続装置を介して検査装置(テスタ)に電気的に接続され、電気的特性の検査が行われる。
【0003】
特許文献1には、ICデバイスの検査に使用される電気相互接続アッセンブリーが開示されている。電気相互接続アッセンブリーは複数の検査接点(電気的接触子)を有しており、各電気的接触子は、被検査体の電極端子を電気的に接続する第1電気接続部と、配線基板上の検査端子を電気的に接続するための第2電気接続部とを有する。複数の電気的接触子は、その配列方向に沿って、例えばエラストマ等で形成された、略円筒形状の付勢部材で支持されており、付勢部材は、第1電気接続部と第2電気接続部に弾性力を作用させることで、第1電気接続部と被検査体の電極端子との電気的接続性、第2電気接続部と配線基板の検査端子との電気的接続性を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高温対応の集積回路の電気的特性を検査するためには、高温環境下で集積回路を検査することが要求されるが、特許文献1の記載技術のように、エラストマ等の付勢部材を有しているものは、高温環境下で当該部材が劣化し、電気的接触子と被検査体の電極端子との接触荷重が低下してしまうおそれがある。したがって、高温環境下で、電気的接触子と、被検査体の電極端子及び検査端子とが高荷重で電気的に接触させることが望まれる。
【0006】
また、被検査体の電極端子と基板の端子とのそれぞれに電気的に接触させる複数の電気的接触子を電気的接続装置に装着する際、各電気的接触子の位置合わせの精度を向上させることが望まれる。
【0007】
そのため、本発明は、高温環境下での電気的試験に対応可能であり、簡単かつ確実に位置決めすることができる電気的接触子及び電気的接続装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の電気的接触子は、上側部材と下側部材とで構成されたハウジングに収容されて使用される電気的接触子であって、(1)ハウジングの下側部材上に載置され、導電部材で形成された板状の本体部と、(2)本体部から一体的に連続して上方に延出した上部基部と、上部基部から本体部に沿って横方向に延出した上部支持部と、上部支持部から垂直上方に延出して第1の接触対象と電気的に接触する第1の先端部とを有する片持ち梁構造の上部アーム部と、(3)本体部から一体的に連続して下方に延出した下部基部と、下部基部から本体部に沿って横方向に延出した下部支持部と、下部支持部から垂直下方に延出して第2の接触対象と電気的に接触する第2の先端部とを有する片持ち梁構造の下部アーム部と、(4)本体部の一方の端部から上方に延出した第1の位置決め部と、(5)本体部の他方の端部付近から上方に延出した第2の位置決め部とを備え、上部アーム部は、ハウジングの上側部材に設けられた上下方向に貫通する開口部を通って配置し、下部アーム部は、ハウジングの下側部材に設けられた上下方向に貫通する開口部を通って配置し、第1の位置決め部が、ハウジングの上側部材の下面に設けられた第1の穴部に収納され、第2の位置決め部が、ハウジングの上側部材の下面に設けられた第2の穴部に収容されることを特徴とする。
【0009】
第2の本発明の電気的接触子は、第1の本発明の2個の電気的接触子と、複数の電気的接触子の間に挟まれた絶縁部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
第3の本発明の電気的接続装置は、配線が形成された基板と、基板上に第1の本発明の複数の電気的接触子を収容するハウジング部と、ハウジング部に収容される前記複数の電気的接触子と接触可能な位置に被検査体を収容する被検査体収容部とを備え、各電気的接触子を介して、被検査体の電極部と前記基板の配線との間を電気的に接続させる電気的接続装置において、ハウジング部が、複数の電気的接触子を収容する収容内部の上面に、各電気的接触子の一方の端部にある第1の位置決め部を収容する第1の穴部と、各電気的接触子の他方の端部側にある第2の位置決め部を収容する第2の穴部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温環境下での電気的試験に対応可能であり、簡単かつ確実に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る電気的接続装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図3】実施形態の上部ハウジング部の上面構成を示す構成図である。
【
図4】実施形態の上部ハウジング部の上面にフローティングガイド部を設けた状態の構成を示す構成図である。
【
図5】実施形態の下部ハウジング部の下面の構成を示す構成図である。
【
図6】実施形態の上部ハウジング部と下部ハウジング部に収容される電気的接触子の構成を示す構成図である。
【
図7】電気的接触子の構成の変形例(その1)を示す構成図である。
【
図8】電気的接触子の構成の変形例(その2)を示す構成図である。
【
図9】変形実施形態の電気的接触子の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る電気的接続子及び電気的接続装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
(A-1)実施形態の構成
[電気的接続装置]
以下では、
図1~
図5を参照して、電気的接続装置の構成を説明する。
【0015】
図1は、この実施形態に係る電気的接続装置の全体構成を示す斜視図である。
図2は、
図1のA-A矢視断面図である。
図2の被検査体2のうち左側半分は被検査体2の電極端子21が電気的接触子13に接触していない状態を示しており、被検査体2の右側半分は被検査体2が押し込まれて、被検査体2の電極端子21が電気的接触子13に接触している状態を示している。
図3は、上部ハウジング部111の上面構成を示す構成図であり、
図4は、上部ハウジング部111の上面にフローティングガイド部113を設けた状態の構成を示す構成図であり、
図5は、下部ハウジング部112の下面の構成を示す構成図である。
【0016】
図1に示すように、電気的接続装置1は、テスト基板に固定される基台11と、基台11に収容された被検査体2を固定すると共に、基台11に対して開閉自在に設けられたカバー12とを有する。
【0017】
電気的接続装置1は、例えばICパッケージ等の被検査体2の電気的特性の試験に用いられる。より具体的に、電気的接続装置1は、被検査体2としての集積回路の電気的試験(例えばパッケージテストやファイナルテスト等)に用いる試験用ICソケットとして用いられる。
【0018】
電気的接続装置1の基台11には、被検査体2の電極端子21(第1の接触対象)と接触する複数の電気的接触子13(
図2参照)が搭載されており、基台11の中央部に被検査体2が装着され、カバー12が閉状態となることで、被検査体2が押し込まれ、被検査体2の電極端子21が各電気的接触子13の先端部54に電気的接触した状態となる。そして、電気的接続装置1の基台11側が基板3上に設けられ、電気的接触子13の下端部が配線パターン31(第2の接触対象)と電気的に接触して、被検査体2の電気的特性が試験される。
【0019】
図2に示すように、電気的接続装置1が取り付けられる基板3は、例えば電気絶縁部材で形成された配線基板である。基板3の上面には、例えば印刷配線技術により導電性を有する金属材料からなる配線パターン31が形成されている。配線パターン31は、検査装置(図示省略)の配線パターンと接続しており、配線パターン31が形成された基板3の表面上に、電気的接続装置1の基台11が固定される。
【0020】
配線パターン31は、電気的接続装置1の基台11に搭載される各電気的接触子13の位置と対応する位置に形成される。すなわち、配線パターン31は、基板3上であって、各電気的接触子13の下部アーム部135の先端部63と電気的に接続するように形成されている。
【0021】
図2に示すように、基台11は、下部ハウジング部112と、下部ハウジング部112の上面に設けられる上部ハウジング部111と、上部ハウジング部111の中央部に設けられるフローティングガイド部113と、フレーム部114とを有する。
【0022】
フレーム部114は、電気絶縁部材で形成されており、上部ハウジング部111の上面に設けられるフローティングガイド部113の上面周縁を係止した状態で、上部ハウジング部111の上面に固定されている。
【0023】
図4に示すように、フローティングガイド部113の中央部には、被検査体2を脱着可能に装着する凹形状の被検査体収容部113bがある。この被検査体収容部113bは、収容された被検査体2の位置決めを確実にするため、基板3に対して垂直な収容壁面を有する。また、フローティングガイド部113には、凹形状の被検査体収容部113bの両サイドには、被検査体収容部113bの凹形状と連なって形成された凹部113cがある。被検査体収容部113bの両サイドに設けられた各凹部113cの底部には、複数のスリット113aが設けられている。
【0024】
複数のスリット113aの下側には、電気的接触子13が配置されており、電気的接触子13の先端部54が各スリット113aから突出し、電気的接触子13の先端部54が被検査体2の電極端子21と電気的に接触する。複数のスリット113aは、被検査体2の複数の電極端子21の位置と対応する位置に配列されており、隣り合うスリット113a同士は、隔壁によって区画されている。
【0025】
上部ハウジング部111と下部ハウジング部112とは、電気的絶縁部材で形成されており、複数の電気的接触子13を収容する部材である。より具体的には、上部ハウジング部111と下部ハウジング部112との間に複数の電気的接触子13を配列させて、複数の電気的接触子13を収容した状態で、上部ハウジング部111と下部ハウジング部112とを固定部材(例えばネジ等)で固定する。このようにして、上部ハウジング部111と下部ハウジング部112との間に複数の電気的接触子13を収容する。
【0026】
図2に示すように、上部ハウジング部111の下面には、複数の電気的接触子13を収容するために第1の窪み部40が設けられている。さらに、上部ハウジング部111の第1の窪み部40の上面には、下方から上方に向けて設けられた穴部41及び穴部42が設けられている。
【0027】
穴部41と穴部42は、収容される各電気的接触子13の2つの位置決め部である第1の位置決め部132と第2の位置決め部133の位置と対応する位置にあり、各電気的接触子13が収容される際に、各電気的接触子13の2つの第1の位置決め部132と第2の位置決め部133が穴部41と穴部42とに差し込まれる。これにより、収容する各電気的接触子13の位置決めを確実にすることができ、各電気的接触子13の位置精度を高めることができる。また、各電気的接触子13の第1の位置決め部132と第2の位置決め部133を、それぞれ対応する穴部41と穴部42に差し込むだけでよいため、簡単に各電気的接触子13をセットすることができると共に、各電気的接触子13の姿勢を安定化でき、被検査体2の電極端子21と各電気的接触子13の先端部54との電気的接触を確実にすることができる。
【0028】
なお、上部ハウジング部111の第1の窪み部40に設ける穴部41と穴部42は、上部ハウジング部111の厚さ方向に貫通していない穴部である場合を例示するが、穴部41と穴部42は、上部ハウジング部111の厚さ方向に貫通している貫通孔としてもよい。換言すると、各電気的接触子13の位置決めを確実にするために、各電気的接触子13の第1の位置決め部132と第2の位置決め部133を差し込むことができる構造であれば、穴部41と穴部42は、貫通孔であっても良いし、非貫通孔であってもよい。
【0029】
図3に示すように、上部ハウジング部111の上面には、略四角形の開口である1対の開口部111aが設けられている。各開口部111aは、被検査体2の電極端子21の位置と対応する位置に設けられ、各開口部111aの下側には、位置決めされた複数の電気的接触子13が配置されている。つまり、位置決めされた各電気的接触子13の上部アーム部134が開口部111aから突出し、その上部アーム部134の先端部54が被検査体2の電極端子21と電気的に接触する。被検査体2が押し下げられ、被検査体2の電極端子21が各電気的接触子13の先端部54に接触する際、各電気的接触子13の上部アーム部134が上下方向に弾性的に被検査体2を支持するため、上部アーム部134が変形する。このように変形した上部アーム部134と周辺部材との接触を回避するために、各開口部111aが設けられている。
【0030】
図2に示すように、下部ハウジング部112には、厚さ方向に窪んだ第2の窪み部45が設けられている。下部ハウジング部112の上面のうち、第2の窪み部45の周囲部分は、セットされた各電気的接触子13の本体部131を下方から支持する支持部46として作用し、第2の窪み部45には、各電気的接触子13の下部アーム部135が収容される。
【0031】
つまり、下部ハウジング部112の第2の窪み部45の周囲部分である支持部46に電気的接触子13の左右端部が引っ掛かるように、電気的接触子13が置かれた状態となり、電気的接触子13が収容される。したがって、第2の窪み部45の左右方向の長さは、各電気的接触子13の本体部131の左右方向の長さよりも短くなっており、位置決めされた各電気的接触子13の両端部を、下部ハウジング部112の支持部46が支持できるようになっている。
【0032】
下部ハウジング部112の第2の窪み部45の底部には、複数の孔部112aが設けられている。
図5に示すように、複数の孔部112aから、各電気的接触子13の下部アーム部135の先端部63が突出するようになっている。各孔部112aは、基板3上の配線パターン31の位置と対応する位置に設けられており、各孔部112aから突出する各電気的接触子13の先端部63と配線パターン31とが確実に電気的に接触する。
【0033】
[電気的接触子]
次に、
図6を参照して、電気的接触子13の構成を説明する。
図6は、上部ハウジング部111と下部ハウジング部112に収容される電気的接触子13の構成を示す構成図である。
【0034】
電気的接触子13は、板状の本体部131と、被検査体2の電極端子21と電気的に接触する上部アーム部134と、基板3の配線パターン31と電気的に接触する下部アーム部135と、本体部131の一方の端部(
図6では、左端部)に設けられた第1の位置決め部132と、本体部131の他方の端部(
図6では、右端部)側に設けられた第2の位置決め部133とを有する。
【0035】
電気的接触子13は、例えば全体が薄い板状の導電性部材で形成されている。電気的接触子13は、全体が金属部材で形成されても良いし、基材の表面に金属材でメッキ加工されていてもよい。
【0036】
電気的接触子13が、被検査体2側と電気的に接触する上部アーム部134と、基板3側と電気的に接触する下部アーム部135とを備え、電気的接触子13全体が、金属部材等の導電性部材で形成されることにより、被検査体2の高温環境(例えば、150℃以上の環境)での電気的試験にも対応できる。つまり、従来、エラストマ等の付勢部材を用いて、複数の電気的接触子を支持するような構造もあったが、高温環境下でこのような付勢部材を用いた場合には、付勢部材が劣化してしまい対応できないことがあったが、この実施形態の電気的接触子13とすることで、高温環境下での電気的試験にも対応できる。
【0037】
本体部131は、板状の部材であり、上部ハウジング部111の下面に設けられた第1の窪み部40に収容される。本体部131の上下方向(高さ方向)の長さは、第1の窪み部40の上下方向(上部ハウジング部111の厚さ方向)の長さと同程度若しくはわずかに小さく形成されている。
【0038】
第1の位置決め部132は、本体部131の一方の端部(左端部)に位置しており、本体部131の端部から垂直上方に延びた凸形状の部分である。第2の位置決め部133は、本体部131の他方の端部(右端部)から、わずかに本体部131の中央部に寄った位置にあり、垂直上方に延びた凸形状の部分である。
【0039】
第1の位置決め部132と第2の位置決め部133の径は、穴部41と穴部42の径よりもわずかに小さく形成されており、電気的接触子13が収容される際には、第1の位置決め部132が上部ハウジング部111の穴部41に差し込まれ、第2の位置決め部133が上部ハウジング部111の穴部42に差し込まれることで、電気的接触子13の位置決めを確実にすることができる。
【0040】
つまり、電気的接触子13の両端部側に、2つの位置決め部として第1の位置決め部132と第2の位置決め部133とを備え、第1の位置決め部132と第2の位置決め部133とを穴部41及び穴部42に差し込むだけで、電気的接触子13の位置決めを簡単かつ確実にすることができる。
【0041】
第1の位置決め部132の下方である本体部131の下面は、下部ハウジング部112の上面である支持部46と接触して、当該支持部46により支持される第1の下部接触部138がある。また、本体部131の他方の端部の下方には、下部ハウジング部112の上面である支持部46と接触して、当該支持部46に支持される第2の下部接触部139がある。
【0042】
第1の下部接触部138と第2の下部接触部139が、下部ハウジング部112の上面である支持部46に支持されることにより、収容された電気的接触子13の姿勢(収容状態)を安定して保持すると共に、精度良く位置決めされた電気的接触子13の状態を維持することができる。また、被検査体2が押し込まれ、被検査体2の電極端子21が上部アーム部134の先端部54に接触したときに、電気的接触子13には下向き荷重がかかるが、第1の下部接触部138及び第2の下部接触部139が支持部46に支持されることで、下向き荷重に対応することができる。
【0043】
第1の位置決め部132と上部アーム部134の上部基部51との間の本体部131の上部には、上部ハウジング部111の第1の窪み部40の下面と接触可能な第1の上部接触部136がある。また、本体部131の他方の端部(右端部)の上部には、第1の窪み部40の下面と接触可能な第2の上部接触部137がある。
【0044】
被検査体2の押し込み荷重が電気的接触子13に生じたときに、第1の上部接触部136と第2の上部接触部137が上部ハウジング部111の上面に当たることで、電気的接触子13の浮き上がりを抑えることができる。つまり、後述するように、上部アーム部134の先端部54は、電気的接触子13の第1の位置決め部132の位置の上方に位置しているので、被検査体2の押し込み荷重が作用したときには、電気的接触子13の右側端部の浮き上がりが生じ得るが、第1の上部接触部136及び第2の上部接触部137が上部ハウジング部111の上面と当たることで、電気的接触子13の右側端部の浮き上がりを抑える。
【0045】
上部アーム部134は、本体部131から垂直上方に延びる上部基部51と、上部基部51から横方向(
図6の右方向)に延びて円弧状に湾曲する湾曲部52と、湾曲部52から横方向(
図6の左方向)に延びる支持部53と、支持部53の端部が垂直上方に向けて延びる先端部54とを有する。
【0046】
上部アーム部134は、片持ち梁構造で形成されている。したがって、被検査体2が押しこまれ、被検査体2の電極端子21が先端部54と接触すると、先端部54が下がり、支持部53が上下方向に撓むので、上部アーム部134は上下方向に弾性を有する。これにより、被検査体2の電極端子21と先端部54とが確実に電気的接触することになる。
【0047】
下部アーム部135は、本体部131から垂直下方に延びかつ円弧状に湾曲する下部基部61と、湾曲している下部基部61から横方向(
図6の左方向)に延びる支持部62と、支持部62の端部が垂直下方に向けて延びる先端部63とを有する。
【0048】
下部アーム部135は、片持ち梁構造で形成されている。したがって、被検査体2が押し下げられ、被検査体2が上部アーム部134と接触すると、荷重が下部アーム部135にもかかるが、支持部62が上下方向に撓むので、下部アーム部135が弾性を有する。そのため、先端部63が基板3の配線パターン31に確実に電気的に接触することになる。
【0049】
[電気的接触子の変形例(その1)]
図7は、電気的接触子の構成の変形例(その1)を示す構成図である。
【0050】
図7に示す電気的接触子を「電気的接触子13A」と呼んで説明する。また、以下では、
図7の電気的接触子13Aと、
図6の電気的接触子13とを比較しながら異なる点を中心に説明する。
【0051】
図7の電気的接触子13Aの基本的な構成は、
図6の電気的接触子13の構成と同じであるが、
図7の電気的接触子13Aの先端部54の位置が、
図6の電気的接触子13の先端部54の位置と異なる。
【0052】
図6の電気的接触子13は、上部アーム部134の先端部54が、下部アーム部135の先端部63の位置よりも、左側(すなわち、被検査体2の電極端子21側)に位置している。
【0053】
これに対して、
図7の電気的接触子13Aは、上部アーム部134の先端部54が、下部アーム部135の先端部63の位置とほぼ同じ位置に位置している。
【0054】
図6の電気的接触子13は、比較的サイズが小さい被検査体2に対応することができる。これに対して、
図7の電気的接触子13は、
図6の電気的接触子13が対応可能な被検査体2よりもサイズの大きい被検査体2に対応することができる。
【0055】
被検査体2のサイズが小さい場合、被検査体収容部113bに収容される被検査体2の電極端子21の位置が、被検査体収容部113bの中央部に寄った位置にあるので、上部アーム部134の先端部54の位置を、被検査体収容部113bの中央部側(被検査体2側)に引き出すことが必要となる。したがって、
図6の電気的接触子13は、上部アーム部134の位置を基台11の中央部側、すなわち本体部131の中央部よりも左側側としている。これにより、上部アーム部134の先端部54の位置が、下部アーム部135の先端部63の位置よりも左側となるようにしている。
【0056】
これに対して、被検査体2のサイズが大きくなれば、被検査体収容部113bに主要される被検査体2の電極端子21の位置が、被検査体収容部113bの中央部よりも外側に位置することになる。したがって、
図7の電気的接触子13Aは、上部アーム部134の位置を本体部131の中央部付近としているので、上部アーム部134の先端部54の位置が、下部アーム部135の先端部63の位置とほぼ同じ位置としている。
【0057】
いずれにしても、実施形態のように、上部アーム部134と下部アーム部135とを備える電気的接触子13及び13Aによれば、被検査体2の大きさに応じて、上部アーム部134の位置を調整することにより、被検査体2の電極端子21と接触する先端部54の位置を調整することができる。
【0058】
なお、
図6及び
図7では、被検査体2の電極端子21と電気的に接触させる上部アーム部134の先端部54の位置を調整する場合を例示したが、下部アーム部135の位置についても調整するようにしてもよい。
【0059】
[電気的接触子の変形例(その2)]
図8は、電気的接触子の構成の変形例(その2)を示す構成図である。
【0060】
図8に示す電気的接触子を「電気的接触子13B」と呼んで説明する。また、以下では、
図8の電気的接触子13Bと、
図6及び
図7の電気的接触子13及び13Aとを比較しながら異なる点を中心に説明する。
【0061】
図8の電気的接触子13Bの上部アーム部134Bが、本体部131の垂直上方に延びる上部基部55と、上部基部55から円弧状に湾曲して横方向(
図8の左方向)に延びる支持部53と、支持部53の端部が垂直上方に向けて延びる先端部54とを有する。
【0062】
図8の電気的接触子13Bは、上部アーム部134の先端部54の位置を、
図6の電気的接触子13の先端部54の位置よりも、更に被検査体収容部113bの中央部側に位置させることができる。換言すると、
図8の電気的接触子13Bは、
図6の電気的接触子13が対応可能なサイズの被検査体2よりも、さらに小さなサイズの被検査体2にも対応することができる。
【0063】
また、
図8の電気的接触子13Bは、上部アーム部134Bが、本体部131に対して垂直上方に延びる上部基部55と、支持部53と、支持部53に対して垂直上方に延びる先端部54とからなるので、スリット113aから突出させる先端部54の位置精度がより向上する。つまり、スリット113aから突出する先端部54の位置精度が高くあり、かつ、被検査体2の電極端子21が先端部54に接触すると、先端部54が垂直下方にまっすぐ下がるので、被検査体2の電極端子21に接触させる電気的接触子13Bの先端部54の位置精度が確実になる。
【0064】
(A-2)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、電気的接触子が、被検査体側と電気的に接触させる片持ち梁構造の上部アーム部と、基板端子側と電気的に接触させる片持ち梁構造の下部アーム部とを有する構造としたことで、高温環境下での被検査体の電気的試験に対応することができる。
【0065】
また、この実施形態によれば、導電性部材を加工して、片持ち梁構造の上部アーム部と片持ち梁構造の下部アーム部とを有する電気的接触子とすることで、上部アーム部と被検査体の電極端子の接触抵抗、下部アーム部と基板端子との接触抵抗を安定化させることができる。
【0066】
さらに、この実施形態によれば、電気的接触子が2つの位置決め部を備えることとしたので、被検査体の電極端子に対する先端部の位置決め精度を高めることができる。その結果、被検査体の電極端子と電気的接触子の先端部との電気的接触を確実にすることができる。
【0067】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0068】
図9は、変形実施形態に係る電気的接触子の構成を示す構成図である。
【0069】
図9において、変形実施形態の電気的接触子13Cは、2個の電気的接触子13と、2個の電気的接触子13の間に設けた絶縁部材7とを有する。
【0070】
絶縁部材7は、例えば絶縁性のフィルム、板状の絶縁部材等を用いることができる。絶縁部材7の形状は、電気的接触子13の形状に応じて適宜設計することができるが、例えば
図9の場合、2個の電気的接触子13の本体部131、上部アーム部134、下部アーム部135との間で導通しないような形状とする。
【0071】
2個の電気的接触子13はそれぞれ、
図6の電気的接触子13と同じ構造である。2個の電気的接触子13のうち、一方の電気的接触子13と、他方の電気的接触子13との間に、絶縁部材7を挟み込んだ構造としている。つまり、2個の電気的接触子13の間に絶縁部材7を挟み込むことで、2個の電気的接触子13はそれぞれ互いに導通しないようにしている。
【0072】
これにより、例えば、被検査体2について4端子測定(例えばケルビン接続測定)を行なう場合に、被検査体2が4端子測定用の各電極端子21に、電気的接触子13Cを構成する各電気的接触子13の上部アーム部134の先端部54を接触させて測定することができる。
【0073】
なお、
図9では、
図6の電気的接触子13を用いた場合を例示しているが、これら電気的接触子13に代えて、
図7の電気的接触子13A、
図8の電気的接触子13Bを用いるようにしてもよい。
【0074】
図9のような電気的接触子13Cの構造とすることで、被検査体2のケルビン測定の際に電気的接触子13Cを用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
1…電気的接続装置、11…基台、12…カバー、111…上部ハウジング部、111a…開口部、112…下部ハウジング部、112a…孔部、113…フローティングガイド部、113a…スリット、113b…被検査体収容部、113c…凹部、114…フレーム部、
13、13A、13B及び13C…電気的接触子、131…本体部、132…第1の位置決め部、133…第2の位置決め部、134、134A及び134B…上部アーム部、135…下部アーム部、136…第1の上部接触部、137…第2の上部接触部、138…第1の下部接触部、139…第2の下部接触部、
51及び55…上部基部、52…湾曲部、53…支持部、54…先端部、61…下部基部、62…支持部、63…先端部、
2…被検査体、21…電極端子、3…基板、31…配線パターン、
40…第1の窪み部、41…穴部、42…穴部、45…第2の窪み部、46…支持部、7…絶縁部材。