IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケーブイケーの特許一覧

特許7301583ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓
<>
  • 特許-ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓 図1
  • 特許-ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓 図2
  • 特許-ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓 図3
  • 特許-ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓 図4
  • 特許-ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓 図5
  • 特許-ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓 図6
  • 特許-ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓 図7
  • 特許-ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓 図8
  • 特許-ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
E03C1/042 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019074814
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2020172781
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】蒲 将也
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-003299(JP,A)
【文献】特開2010-077731(JP,A)
【文献】実開昭63-095771(JP,U)
【文献】特開昭60-109674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆U字状の湾曲部を備える液体配管内に滞留したガスを抜くためのガス抜き構造であって、
入口が前記湾曲部に位置するとともに出口が前記液体配管の下流端に位置するガス抜き流路を前記液体配管の内部に区画するガス抜きガイドと、
前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体の流量を、前記ガス抜き流路を流通する液体の流量よりも小さくする流量調整部とを有しており、
前記流量調整部は、前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体を排出する排出部としての貫通孔を備え、前記貫通孔の大きさが、前記入口の大きさよりも小さい、もしくは、前記流量調整部は、前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体を排出する排出部を省略していることを特徴とするガス抜き構造。
【請求項2】
逆U字状の湾曲部を備える液体配管内に滞留したガスを抜くためのガス抜き部材であって、
入口が前記湾曲部に位置するとともに出口が前記液体配管の下流端に位置するガス抜き流路を前記液体配管の内部に区画するガス抜きガイドと、
前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体の流量を、前記ガス抜き流路を流通する液体の流量よりも小さくする流量調整部とを有しており、
前記流量調整部は、前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体を排出する排出部としての貫通孔を備え、前記貫通孔の大きさが、前記入口の大きさよりも小さい、もしくは、前記流量調整部は、前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体を排出する排出部を省略していることを特徴とするガス抜き部材。
【請求項3】
請求項2に記載のガス抜き部材と、
前記液体配管としての吐水管とを備える水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、キッチンや洗面所に設置して用いられる水栓について記載している。
図9に示すように、水栓80は、水栓本体81と、水栓本体81の上部に接続された吐水管82とを有する。吐水管82は、他端側の端部である上流端82aが水栓本体81から立設するとともに、一端側の端部である下流端82bに向かって逆U字状に湾曲した湾曲部82cを備えている。吐水管82の下流端82bは斜め下方を向くように構成されている。吐水管82は、水栓本体81のレバー(図示省略)を操作して切換弁(図示省略)を操作することにより、下流端82bからの水W又は湯の吐止水を切り換えることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-282250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9に示すように、特許文献1の水栓80では、吐水管82(液体配管)の湾曲部82cにエア等のガスGが滞留する可能性がある。湾曲部82cにガスGが滞留すると、吐水時に異音が生じたり、止水時にガスGの膨張によって吐水管82から水垂れが生じたりする虞があった。また、吐水中にガスGが絡んで吐水の乱れが発生する虞もあった。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体配管の湾曲部におけるガスの滞留を好適に抑制することができるガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのガス抜き構造は、逆U字状の湾曲部を備える液体配管内に滞留したガスを抜くためのガス抜き構造であって、入口が前記湾曲部に位置するとともに出口が前記液体配管の下流端に位置するガス抜き流路を前記液体配管の内部に区画するガス抜きガイドと、前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体の流量を、前記ガス抜き流路を流通する液体の流量よりも小さくする流量調整部とを有しており、前記流量調整部は、前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体を排出する排出部としての貫通孔を備え、前記貫通孔の大きさが、前記入口の大きさよりも小さい、もしくは、前記流量調整部は、前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体を排出する排出部を省略していることを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、流量調整部を有することにより、液体配管内を流通する液体は、ガス抜き流路内を優先的に流通するようになる。また、ガス抜き流路の入口が湾曲部に位置するとともに、ガス抜き流路の出口が液体配管の下流端に位置することにより、湾曲部に滞留したガスを、液体配管内の液体の圧力を利用してガス抜き流路内に流通させて、液体配管の下流端から排出することができる。そのため、液体配管内の湾曲部におけるガスの滞留を好適に抑制することができる。
【0007】
また、流量調整部が排出部を備えることにより、ガス抜き流路以外の部分に液体が滞留することを抑制することができる。
【0008】
上記課題を解決するためのガス抜き部材は、逆U字状の湾曲部を備える液体配管内に滞留したガスを抜くためのガス抜き部材であって、入口が前記湾曲部に位置するとともに出口が前記液体配管の下流端に位置するガス抜き流路を前記液体配管の内部に区画するガス抜きガイドと、前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体の流量を、前記ガス抜き流路を流通する液体の流量よりも小さくする流量調整部とを有しており、前記流量調整部は、前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体を排出する排出部としての貫通孔を備え、前記貫通孔の大きさが、前記入口の大きさよりも小さい、もしくは、前記流量調整部は、前記ガス抜き流路以外の部分を流通する液体を排出する排出部を省略していることを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、流量調整部を有することにより、液体配管内を流通する液体は、ガス抜き流路内を優先的に流通するようになる。また、ガス抜き流路の入口が湾曲部に位置するとともに、ガス抜き流路の出口が液体配管の下流端に位置することにより、湾曲部に滞留したガスを、液体配管内の液体の圧力を利用してガス抜き流路内に流通させて、液体配管の下流端から排出することができる。そのため、液体配管内の湾曲部におけるガスの滞留を好適に抑制することができる。
【0010】
また、流量調整部が排出部を備えることにより、ガス抜き流路以外の部分に液体が滞留することを抑制することができる。
【0011】
前記ガス抜き部材と、前記液体配管としての吐水管とを備える水栓であることが好ましい。この構成によれば、上記ガス抜き部材の機能を奏する水栓とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓によれば、液体配管の湾曲部におけるガスの滞留を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】水栓の斜視図。
図2】液体配管の分解斜視図。
図3】液体配管の断面図。
図4】流量調整部の断面図。
図5】(a)~(c)は、ガス抜き構造の機構を示す断面図。
図6】変更例の液体配管の断面図。
図7】別の変更例の流量調整部の断面図。
図8】さらに別の変更例の液体配管の断面図。
図9】従来技術の水栓の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ガス抜き構造、ガス抜き部材及びガス抜き部材を備える水栓の実施形態を説明する。
図1に示すように、水栓10は、キッチンキャビネットのカウンタである壁部11に設置されている。水栓10は、壁部11に固定された水栓本体12と、水栓本体12の上部に立設した液体配管としての吐水管20とを備える。水栓本体12は、筒状部12aと、筒状部12a内に配置された切換弁(図示省略)と、筒状部12aの側面に取り付けられたレバー12bとを備えている。吐水管20の他端側の端部である上流端20aが、水栓本体12の筒状部12aの上部に接続されている。吐水管20は、一端側の端部である下流端20bに向かって逆U字状に湾曲した湾曲部20cを備えるとともに、下流端20bが斜め下方を向くように構成されている。言い換えれば、吐水管20は、上方が凸となるように湾曲した湾曲部20cを有しており、所謂、グースネック型に構成されている。吐水管20は、水栓本体12のレバー12bを操作して切換弁を操作することにより、下流端20bからの水又は湯の吐止水を切り換えることができるように構成されている。
【0015】
図2、3に示すように、吐水管20の上流端20aには、管継手21が挿入されている。この管継手21を介して、吐水管20の上流端20aは水栓本体12に接続されている。吐水管20の下流端20bには、吐水口部材30と、押さえ部材40と、ガス抜きガイド50と、整流部材60とが取り付けられている。
【0016】
吐水管20の下流端20bに取り付けられた各部材について説明する。
吐水口部材30について説明する。
図4に示すように、吐水口部材30は、吐水管20の下流端20bに挿入された状態で吐水管20に取り付けられている。吐水口部材30は、円筒状に構成されており、円形の孔部30aが軸方向に貫通している。吐水口部材30の軸方向一端側の端部には、第1筒部31を備える。第1筒部31の内周には第1ネジ溝31aが形成されており、この第1ネジ溝31aに後述する整流部材60が螺合した状態で取り付けられる。
【0017】
第1筒部31よりも軸方向の他端側には、第1筒部31よりも内径の小さな第2筒部32を備える。第2筒部32の内周には、第2ネジ溝32aが形成されており、この第2ネジ溝32aに後述する押さえ部材40が螺合した状態で取り付けられる。第2筒部32よりも軸方向の他端側である吐水口部材30の他端側の端部には、径方向内側に延びる天壁33が設けられている。天壁33の中央には、円形の開口孔33aが設けられている。開口孔33aの内径は、後述するガス抜きガイド50の管状部51の外径よりも若干大きく構成されている。吐水口部材30の材質は特に限定されないが、金属製であることが好ましい。
【0018】
吐水口部材30を吐水管20に取り付ける方法としては特に限定されないが、例えば、吐水口部材30を吐水管20にろう接したり、接着剤を用いて接合したりする方法を採用することができる。吐水口部材30を取り付けることによって、吐水管20と吐水口部材30との間が水密状態となる。
【0019】
押さえ部材40について説明する。
図2、4に示すように、押さえ部材40は、円筒状に構成されており、円形の孔部40aが軸方向に貫通している。孔部40aの内径は、ガス抜きガイド50の管状部51の内径と略等しく構成されている。押さえ部材40の軸方向他端側の端面40bは平面で構成されている。押さえ部材40の外周にはネジ溝40cが形成されており、このネジ溝40cが吐水口部材30の第2ネジ溝32aに螺合することによって、押さえ部材40は吐水口部材30に取り付けられる。押さえ部材40の材質は特に限定されないが、金属製であることが好ましい。
【0020】
ガス抜きガイド50について説明する。
図2、4に示すように、ガス抜きガイド50は、管状部51と、管状部51の一端側の端部である下流端50bにおいて径方向外側に突出したフランジ部52とを備える。フランジ部52の外径は、吐水口部材30の第2筒部32の内径よりも若干小さく構成されている。管状部51は、他端側の端部である上流端50aに向かって湾曲するように構成されている。管状部51の軸方向において、フランジ部52から所定の間隔をおいた位置に、管状部51を貫通する貫通孔51aが2個設けられている。貫通孔51aは、互いに対向する位置に設けられている。フランジ部52と貫通孔51aとの間隔は、吐水口部材30の天壁33の厚さよりも若干大きくなるように構成されている。ガス抜きガイド50の材質は特に限定されないが、金属製であることが好ましい。
【0021】
整流部材60について説明する。
図2に示すように、整流部材60は、円筒状に構成されている。整流部材60の軸方向の一端側の端部には第1網状部61が設けられているとともに、軸方向の他端側の端部には第2網状部62が設けられており、整流部材60の内部は中空状に構成されている。第2網状部62の網目は、第1網状部61の網目よりも細かく構成されており、第2網状部62の表面において、異物を補足しやすいように構成されている。整流部材60の外周にはネジ溝60aが形成されており、このネジ溝60aが吐水口部材30の第1ネジ溝31aに螺合することによって、整流部材60は吐水口部材30に取り付けられる。吐水管20内の液体としての水が整流部材60を通過することによって、水の流通状態を整流化することができるように構成されている。整流部材60の材質は特に限定されないが、樹脂製であることが好ましい。
【0022】
各部材を組み付ける手順について説明する。
図4に示すように、吐水管20の下流端20bに吐水口部材30をろう接して取り付ける。次に、ガス抜きガイド50の管状部51を、吐水口部材30の孔部30aに挿入する。具体的には、ガス抜きガイド50の管状部51が、吐水口部材30の天壁33の開口孔33aを挿通して、ガス抜きガイド50のフランジ部52が、吐水口部材30の天壁33に当接した状態とする。この状態で、押さえ部材40のネジ溝40cを吐水口部材30の第2ネジ溝32aに螺合させて、押さえ部材40を吐水口部材30に取り付ける。押さえ部材40を取り付けることにより、押さえ部材40の軸方向他端側の端面40bと、吐水口部材30の天壁33との間に、ガス抜きガイド50のフランジ部52が挟持される。これにより、吐水管20からのガス抜きガイド50の離脱が抑制される。また、吐水口部材30とガス抜きガイド50のフランジ部52と押さえ部材40との間が水密状態となる。さらに、吐水口部材30の第1ネジ溝31aに、整流部材60のネジ溝60aを螺合させて、整流部材60を吐水口部材30に取り付ける。
【0023】
以上の手順により、各部材は組み付けられる。各部材を組み付ける手順は上記手順に限定されず、適宜変更して組み付けてもよい。
図3に示すように、各部材が組み付けられることにより、ガス抜きガイド50の下流端50bが吐水管20の下流端20bに位置するとともに、ガス抜きガイド50の上流端50aが吐水管20の湾曲部20cに位置した状態となる。具体的には、ガス抜きガイド50の上流端50aは、吐水管20の湾曲部における頂点P付近の領域である頂上領域Rに位置し、吐水管20の内面には接触せずに吐水管20の内面との間に所定の間隔をおいた状態となる。
【0024】
ここで、吐水管20の一端側の端部である下流端20bは、吐水管20の下流側の先端のみを意味するのではなく、吐水管20の下流側における先端周辺の部分を含むものとする。そのため、ガス抜きガイド50の下流端50bが吐水管20の下流端20bに位置するとは、ガス抜きガイド50の下流端50bが吐水管20の下流端20bと同じ位置に組み付けられた態様に限定されず、ガス抜きガイド50の下流端50bが吐水管20の下流側の先端周辺に位置する態様を含むものとする。具体的には、図3に示すように、ガス抜きガイド50の下流端50bが、吐水管20の下流端20bから吐水口部材30の長さ程度、吐水管20の上流端20a側に位置する態様を含むものとする。
【0025】
図3に示すように、吐水管20の湾曲部20cは、吐水管20において上方に凸となるように逆U字状に湾曲した箇所を意味するものとする。具体的には、図3に示すように、湾曲部20cは、吐水管20における直線状の箇所と湾曲した箇所との境界線T1、T2より上方の湾曲した箇所を意味するものとする。さらに、吐水管20の湾曲部20cにおける頂上領域Rは、水栓本体12の上部に吐水管20を立設させた状態で、吐水管20の鉛直方向の頂点Pを通る横断面(図3の上下方向の断面)における最も鉛直方向下方に位置する内周面の地点を地点Sとした際に、地点Sを含む仮想水平面Mよりも上方に位置する領域を意味するものとする。
【0026】
本実施形態の作用について説明する。
図5(a)に示すように、吐水管20の上流端20aから吐水管20の内部に水Wを流入させると、吐水管20内の水位は、経時的に上昇する。
【0027】
図5(b)に示すように、さらに水Wを流入させると、吐水管20内の水Wは湾曲部20cを乗り越えて吐水管20の下流端20b側に流入する。吐水管20と吐水口部材30との間が水密になっているとともに、吐水口部材30、ガス抜きガイド50のフランジ部52及び押さえ部材40の間が水密になっていることにより、吐水管20の下流端20b側におけるガス抜きガイド50の管状部51の外周側に水Wが溜まり始める。吐水管20の下流端20b側の水Wの一部は、ガス抜きガイド50の管状部51に設けられた貫通孔から排出される。ガス抜きガイド50の貫通孔から排出される水Wの流量よりも、吐水管20の上流端20aから流入する水Wの流量を多くすることにより、吐水管20内の水Wの量は経時的に多くなる。吐水管20内の水Wの量が多くなるにつれて、吐水管20内のガスGは、吐水管20内の水圧で押し出される形となり、ガス抜きガイド50の上流端50aからガス抜きガイド50内に流入して、吐水管20の下流端20bから排出される。
【0028】
吐水管20内の水Wの量がさらに多くなると、吐水管20内の水位がガス抜きガイド50の上流端50aに到達する。
図5(c)に示すように、さらに水Wの量が多くなると、吐水管20内のガスGは、ガス抜きガイド50内を優先的に流れる水Wの流れに引き込まれて、ガス抜きガイド50内に流入し、吐水管20の下流端20bから全て排出される。これにより、吐水管20内は水Wで充填された状態となる。
【0029】
以上のようにして、吐水管20内のガスGは吐水管20の下流端20bから排出される。そのため、吐水口部材30、押さえ部材40、及び、ガス抜きガイド50によって、ガス抜き構造、及び、ガス抜き部材が構成される。また、ガス抜きガイド50の管状部51の内部は、ガス抜き流路として機能し、吐水管20の内面とガス抜きガイド50の管状部51の外面との間が、ガス抜き流路以外の部分となる。言い換えれば、ガス抜きガイド50の管状部51によって、ガス抜き流路が区画される。ガス抜きガイド50の上流端50aがガス抜き流路の入口となり、ガス抜きガイド50の下流端50bがガス抜き流路の出口となる。
【0030】
また、吐水口部材30、押さえ部材40、及び、ガス抜きガイド50が、ガス抜き流路以外の部分を流通する水の流量を、ガス抜き流路を流通する水の流量よりも小さくする流量調整部として機能する。ガス抜きガイド50の管状部51に設けられた貫通孔51aが、ガス抜き流路以外の部分を流通する水を排出する排出部として機能する。
【0031】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ガス抜き流路以外の部分を流通する水の流量を、ガス抜き流路を流通する水の流量よりも小さくする流量調整部を有することにより、吐水管20内を流通する水は、ガス抜き流路内を優先的に流通するようになる。また、ガス抜き流路の入口が湾曲部20cの頂上領域Rに位置するとともに、ガス抜き流路の出口が吐水管20の下流端20bに位置することにより、湾曲部20cに滞留したガスを、吐水管20内の水圧を利用してガス抜き流路内に流通させて、吐水管20の下流端20bから排出することができる。特に、吐水管20の頂上領域Rは、ガスが最も滞留しやすい箇所であるため、ガス抜きガイド50の上流端50aが吐水管20の頂上領域Rに位置することにより、より効率良く吐水管20内のガスを排出することができる。したがって、吐水管20内の湾曲部20cにおけるガスの滞留を抑制することができる。
【0032】
(2)ガス抜きガイド50の管状部51は、ガス抜き流路以外の部分を流通する水を排出する貫通孔51aを備える。貫通孔51aを備えることにより、ガス抜き流路以外の部分に水が滞留することを抑制することができる。また、吐水管20に流入した水の一部を貫通孔51aを通過させて吐水管の下流端から排出することができるため、水栓本体12のレバー12bを操作した際に、吐水管20の下流端20bから予備的な吐水を迅速に行うことができる。貫通孔51aを有していない態様に比べて、吐水が開始されるまでのタイムラグを短くすることができるため、吐水管20の下流端20bからの吐水を、よりタイムリーに行うことができる。
【0033】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ガス抜きガイド50の管状部51の上流端50aは、吐水管20の湾曲部20cにおける内面に接触していてもよい。湾曲部20cの内面としては、吐水管20の上面であることが好ましい。
【0034】
・本実施形態では、図3に示すように、ガス抜きガイド50の管状部51の上流端50aは、頂上領域Rにおける吐水管20の頂点Pよりも吐水管20の上流端20a側に位置していたが、この態様に限定されない。
【0035】
図6に示すように、ガス抜きガイド50の管状部51の上流端50aは、頂上領域Rにおける吐水管20の頂点Pよりも吐水管20の下流端20b側に位置していてもよい。また、吐水管20の頂点Pの鉛直方向の真下に位置していてもよい。
【0036】
・ガス抜きガイド50の管状部51の上流端50aは、吐水管20の湾曲部20cにおける頂上領域R以外に位置していてもよい。頂上領域R以外に位置する場合、ガス抜きガイド50の上流端50aは、湾曲部20cの頂点Pよりも吐水管20の下流端20b側に位置することが好ましい。管状部51の上流端50aが頂上領域R以外に位置していても、ガス抜きガイド50内を優先的に流れる水の流れによって、ガス抜きガイド50内にガスが引き込まれるように構成されていれば、湾曲部20cにおけるガスの滞留を抑制することができる。
【0037】
・ガス抜きガイド50は、金属製で構成された態様に限定されない。ガス抜きガイド50は、例えば、柔軟性を有する樹脂製で構成されていてもよい。柔軟性を有する樹脂製で構成されていることにより、吐水管20の形状に合せて、ガス抜きガイド50の管状部51を変形させながら挿入することが可能になる。
【0038】
・本実施形態では、ガス抜き流路以外の部分を流通する水を排出する排出部としての貫通孔51aが、ガス抜きガイド50の管状部51に設けられていたが、貫通孔を設ける位置は、ガス抜きガイド50の管状部51に限定されない。また、貫通孔の数も2個に限定されず、適宜設定することができる。
【0039】
図7に示すように、例えば、吐水口部材30の外周側に軸方向に貫通した貫通孔30bを2個設け、この貫通孔30bを通じて、吐水管20の一端側の内面と、ガス抜きガイド50の管状部51の外面との間隙に滞留した水を排出することができるように構成されていてもよい。すなわち、排出部が吐水口部材30に設けられていてもよい。
【0040】
・ガス抜きガイド50の管状部51は、軸方向に沿ってスリットが形成されていてもよい。言い換えれば、ガス抜きガイド50の管状部51における横断面は、下向きの断面C字状に構成されていてもよい。この態様では、断面C字状の管状部51の内側がガス抜き流路となり、スリットが排出部となる。
【0041】
・ガス抜きガイド50の管状部51に設けられた貫通孔51aは省略されていてもよい。すなわち、排出部は省略されていてもよく、吐水管20の一端側の内面と、ガス抜きガイド50の管状部51の外面との間に滞留した水が、排出されないように構成されていてもよい。
【0042】
・押さえ部材40は省略されていてもよい。すなわち、ガス抜きガイド50を吐水口部材30に直接接合させることによって、ガス抜きガイド50を吐水口部材30に取り付けてもよい。ガス抜きガイド50を吐水口部材30に直接接合させる方法としては、例えば、ガス抜きガイド50と吐水口部材30の天壁33とを溶接してもよいし、接着剤を用いて接合してもよい。ガス抜きガイド50のフランジ部52を、吐水口部材30の第2ネジ溝32aに螺合させて吐水口部材30に接合してもよい。また、吐水口部材30とガス抜きガイド50とが、一体に構成されていてもよい。この態様では、吐水口部材30とガス抜きガイド50とが、流量調整部として機能する。
【0043】
・吐水口部材30は省略されていてもよい。すなわち、ガス抜きガイド50を吐水管20の内側に直接接合して取り付けてもよい。ガス抜きガイド50を吐水管20の内側に直接接合する方法としては、例えば、吐水管20の内側とガス抜きガイド50の外側とを溶接してもよいし、接着剤を用いて接合してもよい。この態様では、吐水管20とガス抜きガイド50とを接合した箇所と、ガス抜きガイド50とが、流量調整部として機能する。
【0044】
・本実施形態の逆U字状の湾曲部20cは、厳密にU字を逆にした形状に限定されず、上方に凸となった流通経路を有する形状が含まれるものとする。例えば、逆V字状や、コ字状の開放部分が下方を向いた形状等が含まれるものとする。
【0045】
・本実施形態の水栓10は、キッチンキャビネットのカウンタに配置される水栓10に限定されない。例えば、洗面所や浴室等で用いられる水栓であってもよい。
・本実施形態は、ガス抜き部材を備える水栓10として構成されていたが、水栓10以外にガス抜き構造、及び、ガス抜き部材を適用してもよい。
【0046】
図8に示すように、例えば、鉛直方向の上方に凸となった流通経路を有する配管である鳥居配管70にガス抜き構造及びガス抜き部材を適用してもよい。この態様では、複数の配管を接続して鳥居配管70を形成し、鳥居配管70を構成する一つの配管の下流端70bに、吐水口部材71、押さえ部材72、ガス抜きガイド73を取り付け、ガス抜きガイド73の上流端73aを鳥居配管70の湾曲部70aに位置させることにより、鳥居配管70内のガスの滞留を抑制することができる。また、鳥居配管70を構成する複数の配管を接続する継手の内部に、吐水口部材、押さえ部材、ガス抜きガイドを取り付けてもよい。例えば、継手が管状の本体部を有し、本体部の両端に鳥居配管70を構成する配管を接続するネジ溝等の接続部を設け、本体部の内部に吐水口部材、押さえ部材、ガス抜きガイドを取り付けてもよい。
【0047】
・本実施形態の吐水管20を流通する液体は水に限定されず、液状の有機物や、水以外の液状の無機物であってもよい。また、吐水管20内に滞留するガスの種類はエアに限定されず、気体状の有機物や、エア以外の気体状の無機物であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
G…ガス、20c…湾曲部、20b…下流端、50…ガス抜きガイド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9