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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】胴縁および胴縁を有するパネルユニット
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/90 20060101AFI20230626BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
E04B2/90
E04G21/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019120781
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006681
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】鴨下 栄紀
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
(72)【発明者】
【氏名】正田 裕来
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雅司
(72)【発明者】
【氏名】松本 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】橘 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129721(JP,A)
【文献】特開平09-235818(JP,A)
【文献】特開2016-050391(JP,A)
【文献】特開昭58-080064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/88-2/96
E04G 21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機構を有するフレームを備え、
前記フレームは長手方向に延伸する第1の平面を有し、
前記回転機構は、前記フレームに固定されたフッキングプレートであり、回転軸を中心に前記フレームを回転可能なように構成され、
前記回転軸は前記フレームの長手方向に垂直であり、前記第1の平面に平行であり、前記フレームを貫通
前記フッキングプレートの主面の法線は、前記第1の平面と平行であり、前記長手方向に垂直であり、
前記フッキングプレートは切り欠き、または貫通孔を備える、胴縁。
【請求項2】
前記切り欠き、または前記貫通孔は、前記長手方向に平行な直線部を有する、請求項に記載の胴縁。
【請求項3】
前記フレームは、フランジ、および前記フランジと一体化されたウェブを備え、
前記第1の平面は前記フランジに含まれ、
前記フッキングプレートは、前記フランジを介して前記ウェブと重なる、請求項に記載の胴縁。
【請求項4】
前記フレームの前記長手方向に垂直な断面は、I字形状、L字形状、またはH字形状を有する、請求項に記載の胴縁。
【請求項5】
前記フレームはさらに、前記フランジと一体化され、前記ウェブと重なるリップを備え、
前記フッキングプレートは、前記リップに固定される、請求項に記載の胴縁。
【請求項6】
前記フレームの端部に取り付けられる吊治具をさらに備える、請求項1に記載の胴縁。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の一対の前記胴縁、および
前記一対の胴縁の前記第1の平面に固定される少なくとも一つのパネルを備えるパネルユニット。
【請求項8】
前記一対の胴縁は互いに非対称に配置される、請求項に記載のパネルユニット。
【請求項9】
前記一対の前記胴縁と平行に延伸し、前記回転機構を備えない胴縁をさらに有する、請求項に記載のパネルユニット。
【請求項10】
前記少なくとも一つのパネルは複数のパネルを含み、
前記複数のパネルは、前記長手方向に垂直な方向に延伸する、請求項に記載のパネルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、胴縁、胴縁を有するパネルユニット、パネルユニットを作製するための架台、パネルユニットの作製方法、および建築物の施工方法に関する。あるいは本発明の実施形態の一つは、パネルユニットを有する建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫などの物流施設や工場、商業ビルなどの大規模建築物は、建築物の骨格となる躯体を構築し、躯体に外壁やルーバー、建具、窓が取り付けられて施工されることが多い。この工法では、外壁は複数のパネルユニットで構成され、各パネルユニットは、例えば躯体付近に地組架台を設置し、地組架台において複数の胴縁と複数のパネルを互いに固定することで作製することができる。その後パネルユニットをクレーンなどの揚重機器を利用して吊り上げ、所定の位置に移動して躯体に取り付ける(特許文献1参照)。この工法では、躯体を取り囲む外部足場を組み立てる必要がなく、作業コストや作業時間の短縮が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-94786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、天候などの外部環境に大きな影響を受けることなく簡便にパネルユニットが作製でき、躯体に取り付けることが可能な、建築物の施工方法を提供することを課題の一つとする。あるいは本発明の実施形態の一つは、上記方法が適用可能な胴縁とそれを含むパネルユニット、パネルユニットの作製方法、または上記施工方法を利用して施工される建築物を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは胴縁である。この胴縁は、回転機構を有するフレームを備える。フレームは長手方向に延伸する第1の平面を有し、回転機構は回転軸を中心にフレームを回転可能なように構成される。回転軸はフレームの長手方向に垂直であり、第1の平面に平行であり、フレームを貫通する。
【0006】
本発明の実施形態の一つはパネルユニットである。このパネルユニットは、一対の胴縁、および少なくとも一つのパネルを備える。一対の胴縁のそれぞれは、回転機構を有するフレームを備える。フレームは長手方向に延伸する第1の平面を有し、回転機構は回転軸を中心にフレームを回転可能なように構成される。回転軸はフレームの長手方向に垂直であり、第1の平面に平行であり、フレームを貫通する。少なくとも一つのパネルは、一対の胴縁の第1の平面に固定される。
【0007】
本発明の実施形態の一つは架台である。この架台は、第1の方向に延伸する一対のガイドフレーム、および一対の回転補助機構を備える。一対の回転補助機構のそれぞれは、第1の方向と平行に延伸するフックを有する。フックの中心軸は互いに同一直線上に位置する。
【0008】
上記架台では、一対の回転補助機構は対称に配置してもよく、非対称に配置してもよい。一対のガイドフレームはそれぞれ第1のガイドプレートと第2のガイドプレートを備えることができる。このとき、一対のガイドフレームの第1のガイドプレートの主面は、互いに同一平面上に位置し、一対のガイドフレームの第2のガイドプレートの主面は、互いに同一平面上に位置することができる。架台は一対のガイドフレームに接続される補助架台をさらに備えてもよい。架台はさらに、ガイドフレームの上面と実質的に同一平面上に位置する主面を有する天板を有する第2の補助架台をさらに備えてもよい。
【0009】
本発明の実施形態の一つはパネルユニットを作製する方法である。この方法は、互いに平行に、かつ長手方向が水平になるように複数の胴縁を配置すること、および複数の胴縁上に少なくとも一つのパネルを固定することを含む。複数の胴縁から選択される一対の胴縁は、それぞれ回転機構を有するフレームを備える。フレームは長手方向に延伸する第1の平面を有し、回転機構は回転軸を中心にフレームを回転可能なように構成される。回転軸はフレームの長手方向に垂直であり、第1の平面に平行であり、フレームを貫通する。少なくとも一つのパネルは第1の平面上に配置される。
【0010】
本発明の実施形態の一つは建築物を施工する方法である。この方法は、長手方向に延伸する第1の平面を有するフレームをそれぞれ備える複数の胴縁を、互いに平行に、かつ長手方向が水平になるように配置すること、複数の胴縁の第1の平面上に少なくとも一つのパネルを固定すること、および長手方向に垂直であり、第1の平面に平行であり、フレームを貫通する回転軸を中心として複数の胴縁と少なくとも一つのパネルを回転することを含む。
【0011】
上記建築物の施工方法では、複数の胴縁の配置、および少なくとも一つのパネルの固定は、建築物内で行うことができ、この場合、上記回転の前に、複数の胴縁と少なくとも一つのパネルを、複数の胴縁と少なくとも一つのパネルの一部が建築物の外部へ位置するように移動してもよい。また、複数の胴縁から選択される一対の胴縁のフレームはそれぞれ回転機構を有することができ、この回転機構は回転軸を中心にフレームを回転可能なように構成してもよい。一対の胴縁は互いに対称に配置してもよく、互いに非対称に配置してもよい。一対の胴縁、あるいは複数の胴縁から選択される他の一対の胴縁はそれぞれ、フレームの端部に取り付けられた吊治具をさらに備えることができ、この場合、上記回転は、吊治具を用い、吊治具が取り付けられた一対の胴縁を吊り上げながら行うことができる。上記回転は長手方向が鉛直になるように行ってもよい。複数の胴縁の配置は架台上で行うことができ、この場合、架台は、第1の方向に延伸する一対のガイドフレーム、および一対の回転補助機構を備えてもよい。また、一対の回転補助機構のそれぞれは第1の方向と平行に延伸するフックを有することができる。フックの中心軸は回転軸上に位置することができ、一対の胴縁の配置は、フックが回転機構に収容されるように行うことができる。
【0012】
本発明の実施形態の一つは建築物である。この建築物は、躯体、および躯体に取り付けられるパネルユニットを備える。パネルユニットは、一対の胴縁、および一対の胴縁に固定される少なくとも一つのパネルを備える。一対の胴縁のそれぞれは、回転機構を有するフレームを備える。フレームは長手方向に延伸する第1の平面を有し、回転機構は回転軸を中心にフレームを回転可能なように構成される。回転軸はフレームの長手方向に垂直であり、第1の平面に平行であり、フレームを貫通する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態の一つにより、外部環境に影響を受けにくく、より簡便にパネルユニットを作製、取り付けるための方法が提供される。あるいは本発明の実施形態の一つにより、上記方法が適用可能な胴縁、上記方法によって作製されるパネルユニット、上記方法を利用する建築物の施工方法、またはこの施工方法を利用して建造される建築物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の一つである建築物の模式的斜視図、および建築物の施工方法を示す模式的正面図。
図2】本発明の実施形態の一つであるパネルユニットの模式的背面図と正面図。
図3】本発明の実施形態の一つである胴縁の模式的側面図と断面図。
図4】本発明の実施形態の一つである胴縁のフッキングプレートの模式的正面図。
図5】本発明の実施形態の一つである胴縁のフッキングプレートの模式的正面図。
図6】本発明の実施形態の一つである胴縁のフッキングプレートの模式的正面図。
図7】本発明の実施形態の一つである胴縁のフッキングプレートの模式的正面図。
図8】本発明の実施形態の一つである胴縁の模式的側面図。
図9】本発明の実施形態の一つであるパネルユニットの作製方法を示す模式的上面図。
図10】本発明の実施形態の一つであるパネルユニットの作製方法を示す模式的側面図。
図11】本発明の実施形態の一つであるパネルユニットの作製方法を示す模式的上面図と側面図。
図12】本発明の実施形態の一つである建築物の作成方法を示す模式的側面図。
図13】本発明の実施形態の一つである建築物の作成方法を示す模式的断面図と側面図。
図14】本発明の実施形態の一つである建築物の作成方法を示す模式的側面図。
図15】本発明の実施形態の一つである建築物の作成方法を示す模式的側面図。
図16】本発明の実施形態の一つである建築物の作成方法を示す模式的側面図。
図17】本発明の実施形態の一つである建築物の作成方法を示す模式的側面図。
図18】本発明の実施形態の一つである胴縁の模式的断面図。
図19】本発明の実施形態の一つである胴縁の模式的断面図。
図20】本発明の実施形態の一つである胴縁の模式的側面図と断面図。
図21】本発明の実施形態の一つである胴縁の模式的斜視図。
図22】本発明の実施形態の一つである胴縁の模式的斜視図。
図23】本発明の実施形態の一つである胴縁の模式的斜視図。
図24】本発明の実施形態の一つである胴縁の模式的斜視図。
図25】本発明の実施形態の一つである建築物の作成方法を示す模式的斜視図。
図26】本発明の実施形態の一つである架台の模式的上面図。
図27】本発明の実施形態の一つである架台の模式的上面図と側面図。
図28】本発明の実施形態の一つである架台の模式的斜視図。
図29】本発明の実施形態の一つである架台の模式的上面図と側面図。
図30】本発明の実施形態の一つである架台の模式的上面図と側面図。
図31】本発明の実施形態の一つであるパネルユニットの作製方法を示す模式的上面図。
図32】本発明の実施形態の一つであるパネルユニットの作製方法を示す模式的上面図。
図33】本発明の実施形態の一つであるパネルユニットの作製方法を示す模式的上面図。
図34】本発明の実施形態の一つである建築物の施工方法を示す模式的側面図。
図35】本発明の実施形態の一つである建築物の施工方法を示す模式的側面図。
図36】本発明の実施形態の一つであるパネルユニットの模式的背面図と側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0016】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。符号が付された要素の一部を表記する際には、符号に小文字のアルファベットが添えられる。
【0017】
本明細書および請求項において、複数の要素が一体化されるとは、複数の要素は互いに厚さや形状、方向などが異なり異なる機能を有するが、これらは一つの部材から形成されることを意味する。したがって一体化された複数の要素は、互いに同一の材料を含み、同一の組成を有する。
【0018】
<第1実施形態>
本実施形態では、本発明の実施形態に係るパネルユニット120、パネルユニット120を作製するための胴縁124、パネルユニット120の作製方法、および複数のパネルユニット120を外壁として備える建築物100とその施工方法について説明する。
【0019】
1.建築物
本発明の実施形態の一つに係る建築物100の模式的斜視図を図1(A)に示す。建築物100の大きさやそのデザイン(すなわち立体的形状)、用途に制約はなく、建築物の100が施工される土地の面積や立地条件、建築物100の目的などに応じて適宜設計される。建築物100の外壁は、少なくとも一部が複数のパネルユニット120によって覆われる。パネルユニット120の構造については後述する。図1(B)の模式的正面図に示すように、建築物100は図示しない杭、あるいは基礎コンクリートに連結される基礎梁102、基礎梁102と連結される躯体104、106を有しており、躯体104、106によって建築物100の外部形状が主に決定される。各パネルユニット120は建築物100内、あるいは建築物100の屋上に設置される揚重機(以下、単にクレーンと呼ぶ)110によって吊り上げられ、所定の位置に搬送され、躯体104、106に取り付けられる。
【0020】
2.パネルユニット
2-1.構造
パネルユニット120の模式的背面図と正面図をそれぞれ図2(A)、図2(B)に示す。図2(A)に示される面は建築物100の内側に配置され、一方、図2(B)において示される面が建築物100の外側に配置される面である。これらの図に示すように、各パネルユニット120は複数の胴縁124と少なくとも一つのパネル122を備える。少なくとも一つのパネル122は複数のパネル122を含んでもよい。胴縁124はパネル122を支持する支持体として機能する。複数の胴縁124は、一方向に延伸し、その長手方向が互いに平行になるように配置される。パネル122の長手方向は胴縁124の長手方向に対して垂直であり、パネル122は胴縁124にボルトやビスによって固定される。
【0021】
パネルユニット120の大きさは任意であり、例えばその幅(胴縁124の長手方向における、胴縁124に取り付けられたパネル122が形成する面の長さ)は一つのフロアの高さと実質的に同一でもよく、それ以下であってもよい。例えばパネルユニット120の幅は、一つのフロアの高さの1/4以上、1/3以上、あるいは1/2以上でもよい。同様にパネルユニット120の長さ(胴縁124の長手方向に垂直な方向の長さ)も任意であり、例えば1m以上10m以下、2m以上6m以下、3m以上7m以下、5m以上6m以下、あるいは3m以上5m以下でもよい。
【0022】
本実施形態では、複数の胴縁124とパネル122が固定されてパネルユニット120を形成した後、建築物100内、あるいは建築物100の屋上に設置されるクレーン110などによって所定の場所にパネルユニット120が搬送される。胴縁124はボルトやビスなどを用いて躯体104、106に固定される。後述するように、パネルユニット120は建築物100の内部、あるいはパネルユニット120を固定する場所の近くで作製することができる。また、パネルユニット120間のシーリングは高所作業車やゴンドラを用いて行うこともできるが、パネルユニット120を作製する際に行ってもよい。したがって、パネルユニット120の固定のために躯体104、106の周囲に足場を設置する必要がなく、足場の設置や撤去に要求される作業が不要となり、工期の短縮、作業コストの低減、安全性の向上が可能である。
【0023】
(1)パネル
パネル122は、木材、セメント、金属、ロックウールなどの鉱物繊維、ケイ酸カルシウム、石膏、樹脂などを含み、単層構造、あるいは積層構造を有するように構成される。例えばグラスウールやロックウールなどの鉱物繊維、セルロースファイバーなどの天然高分子由来の繊維、ポリウレタンやポリスチレンを含む発砲プラスチックなどの断熱材、ケイ酸カルシウム、石膏などを板状に加工し、これを一対の金属板や樹脂板、木板などで挟持した構造を採用することができる。金属板を用いる場合、金属板はアルミニウムや鉄などの金属、あるいはステンレスなどの合金などを含むことができ、その表面はアルミニウムや亜鉛を含む合金皮膜で覆われていてもよい。各パネル122の長さ(長手方向の長さ)がパネルユニット120の長さに相当する。パネル122の幅(長手方向に垂直な長さ)は任意に決定することができ、例えば20cm以上200cm以下、60cm以上100cm以下、30cm以上150cm以下、あるいは30cm以上100cm以下の範囲から選択することができる。図示しないが、各パネル122は、長辺の一つが隣接するパネル122の一部と重なるように構成してもよい。
【0024】
(2)胴縁
胴縁124の模式的側面図を図3(A)に示す。以下、胴縁124の長手方向をx方向とし、x方向に垂直であり、パネル122と交差する方向をy方向とする。したがって、各パネルユニット120において、パネル122が有する平面のうち最大面積の面(以下、主面)はx方向とy方向に垂直なz方向と平行となり、xz平面上に位置する。図3(B)、図3(C)は図3(A)の鎖線A-A´に沿った断面、すなわちx方向に垂直なyz平面における胴縁124の断面の模式図である。本実施形態に係る胴縁124は、一方向に延伸するフレーム126と、フレーム126を回転可能なように構成される回転機構を備える。本実施形態では、この回転機構がフレーム126に取り付けられた板状のプレート(以下、フッキングプレート)128である構成を説明する。
【0025】
(2-1)フレーム
フレーム126はパネル122を支持、固定し、パネルユニット120に構造的強度を与えてその形状を維持する機能を有する。フレーム126はアルミニウムや鉄などの金属、あるいはステンレスなどの合金、木材、あるいは樹脂を含むことができる。フレーム126の形状に制約はなく、一方向に延伸する板、中空管、あるいは空洞を持たないロッドでもよい。以下の説明では、フレーム126が所謂リップ付き溝形鋼である例を用いて説明する。その他の形状を有するフレーム126については後述する。
【0026】
フレーム126の長さや幅、厚さは任意であり、例えば日本工業規格(JIS)G 3350を満たすように構成してもよい。図3(B)に示すように、フレーム126は長手方向に平行な二つの軸126aを中心に折り曲げられており、長手方向に延伸する溝の形状を有する。二つの軸126aに挟まれる領域が溝の底面となり、この底面を挟持する部分が溝の側壁となる。フレーム126はさらに、一対のリップ126eを有するよう、長手方向に平行な二つの軸126bを中心に折り曲げられ、断面がC字形状を有する。以下、溝の側壁をフランジ126dと呼び、一対のフランジ126dの間に位置する溝の底面をウェブ126cと呼ぶ(図3(B))。フランジ126dとウェブ126c、リップ126eは一体化されており、リップ126eはウェブ126cと重なる。リップ126eの幅L1、L2やリップ126e間のギャップGは適宜設定することができる。例えば幅L1、L2はそれぞれ5mm以上50mm以下、10mm以上30mm以下、15mm以上25mm以下、あるいは15mm以上20mm以下の範囲から選択すればよい。ギャップGは30mm以上250mm以下、50mm以上70mm以下、50mm以上100mm以下、80mm以上250mm以下、あるいは100mm以上150mm以下の範囲から選択すればよい。フランジ126dやリップ126eを形成することでより高い曲げ強度をフレーム126に付与することができる。フランジ126dはウェブ126cに対してほぼ垂直に延伸し、長手方向に延伸する。一方のフランジ126dは、溝の内壁に対して反対側に、xz平面内に位置する第1の平面127を与える。この第1の平面127上にパネル122が配置される(図3(A))。
【0027】
(2-2)フッキングプレート
一つのパネルユニット120に設けられる複数の胴縁124のうち少なくとも二つは、それぞれ回転機構としてフッキングプレート128をさらに備える。これらの一対の胴縁124に備えられるフッキングプレート128は、アルミニウムや鉄、銅、亜鉛、ステンレスなどを含む板状の部材であり、図3(A)、図3(B)に示すように、ウェブ126cと平行に設けられる。換言すると、フッキングプレート128はz方向においてウェブ126cの一部と重なるように、すなわち、主面の法線が第1の面と平行であり、フレーム126の長手方向に垂直となるようにフレーム126に取り付けられる。フッキングプレート128は溶接、接着剤、もしくはボルトやビス、リベット、またはこれらを組み合わせることによってフレーム126に固定される。
【0028】
フッキングプレート128は、リップ126eがフッキングプレート128とウェブ126cの間に位置するようにフレーム126に取り付けてもよく(図3(B))、図3(C)に示すようにフッキングプレート128が一対のリップ126eとウェブ126cに挟まれるように取り付けられていてもよい。パネル122は胴縁124の上(すなわち、第1の平面127上)に設けられるため、フッキングプレート128の幅(y方向における長さ)はフレーム126の幅(y方向における長さ)と同一、あるいはそれ以下であることが好ましい。フッキングプレート128の幅は、リップ126e間のギャップGとリップ126eの幅L1とL2の総和以下であることが好ましい。
【0029】
フッキングプレート128の上面模式図(xy平面の模式図)を図4(A)から図4(C)、図6(A)から図6(C)に示す。ここでは、理解を促進するため、リップ126eが鎖線で示されている。これらの図に示すように、フッキングプレート128は少なくとも切り欠き128aと貫通孔128bのいずれか一方を有するように構成される。
【0030】
(a)切り欠き
図5(A)から図5(C)はそれぞれ図4(A)から図4(C)に対応し、図5(A)から図5(C)ではフッキングプレート128は点線で表され、xy平面においてフッキングプレート128の全体を囲み、z方向においてフレーム126のウェブ126cと重なる最小面積の仮想四角形130が鎖線で表されている。切り欠き128aとは、この仮想四角形130の開いた形状を有する欠落部分である。
【0031】
図4(A)から図4(C)に示すように、切り欠き128aは、胴縁124の長手方向(x方向)に延伸する直線部(図中、点線楕円で囲まれた部分)を有する。さらに切り欠き128aは、仮想四角形130の四つの辺(130a、130b、130c、130d)のうち少なくとも一辺に達する。例えば図4(A)、図5(A)に示すように、切り欠き128aは、x方向と交差する辺130aに達する直線部を有することができる。切り欠き128aは実質的に一つの直線部で構成されていてもよく、あるいは図4(B)、図5(B)に示すように複数の直線部で構成されていてもよい。二つの直線部を有する場合には、一方の直線部はx方向と平行に延伸し、他方の直線部はy方向に延伸する、パネル122と反対側の辺130cに達する形状を有することができる。あるいは図4(C)、図5(C)に示すように、切り欠き128aはx方向に延伸する直線部を有するとともに二つの辺130a、130cに達する形状を有していてもよい。
【0032】
切り欠き128aの閉じた端部(仮想四角形の辺に達しない端部)は円弧状となるようにフッキングプレート128を構成することが好ましい。また、切り欠き128aのx方向に延伸する直線部は、少なくとも一部がリップ126eと重ならないように形成、配置される。さらに切り欠き128aは、x方向に延伸する、パネル122が設けられる側に近い辺130d、および辺130dと交差する辺のうち切り欠き128aの内側の端部に近い辺(図5(A)から図5(C)では辺130b)には達しない。この構造により、後述する回転補助機構160のフック164を切り欠き128a内に配置し、フック164を基点として胴縁124をx方向に移動させ、かつ、フック164の中心軸を中心に胴縁124を回転させることが可能となる。胴縁124の移動と回転については後述する。
【0033】
図5(A)から図5(C)に示すように、x方向に延伸する直線部の幅(切り欠き128aの直線部のy方向の長さ)W1は、切り欠き128aの開いた端部の幅(すなわち仮想四角形130の辺上における切り欠き128aの幅)W2、W3より小さいことが好ましい。これにより、フッキングプレート128を容易に回転補助機構160に取り付けることが可能となる。また、図5(C)のように切り欠き128aが二つの辺130a、130cに達する形状を有している場合、x方向に延伸し、パネル122が配置される辺130dに対向する辺130cから切り欠き128aの直線部までの距離L3は、辺130a上における切り欠き128aの幅W2よりも小さいことが好ましい。このように切り欠き128aを構成することで、回転後のパネルユニット120を回転補助機構160から容易に取り外すことができる。
【0034】
(b)貫通孔
図7(A)から図7(C)はそれぞれ図6(A)から図6(C)に対応し、図7(A)から図7(C)でもフッキングプレート128は点線で、仮想四角形130は鎖線で表されている。貫通孔128bとは、この仮想四角形130の閉じた形状を有する欠落部分を指す。
【0035】
図6(A)、図6(B)、図7(A)、図7(B)に示すように、貫通孔128bは、x方向に延伸する直線部を有してもよく、あるいは実質的に円形状を有していてもよい。前者の場合、フッキングプレート128が切り欠き128aを有する場合と同様、x方向に延伸する直線部がリップ126eと重ならないように貫通孔128bが構成される。直線部の両端部のうち少なくとも1つは円弧形状を有することが好ましい。この構造により、フック164を基点として胴縁124をx方向に移動させ、かつ、フック164の中心軸を中心に胴縁124を回転させることが可能となる。貫通孔128bが実質的に円形状を有する場合も、貫通孔128bはリップ126eと重ならないように構成され、これによってフック164の中心軸を中心に胴縁124を回転させることが可能となる。
【0036】
あるいは図6(C)、図7(C)に示すように、貫通孔128bが直線部と円形部分が融合した構造を有するようにフッキングプレート128を構成してもよい。この構造を採用することで、胴縁124が回転補助機構160から意図せずに脱落することが防止され、かつ、胴縁124を回転した後に速やかに回転補助機構160から取り外すことができる。
【0037】
(2-3)吊治具
フッキングプレート128が備えられる一対の胴縁124のそれぞれ、あるいは一つのパネルユニット120の複数の胴縁124から選択される他の一対の胴縁124のそれぞれには、吊治具140が設けることができる。以下、フッキングプレート128が備えられる一対の胴縁124のそれぞれに吊治具140が設けられた構成を図8(A)、図8(B)を用いて説明する。
【0038】
図8(A)、図8(B)に示すように、吊治具140はハンガー144を有し、ハンガー144は胴縁124の一方の端部に着脱可能なように取り付けられる。ハンガー144はフレーム126に直接取り付けられていてもよく、連結プレート142を介してフレーム126に取り付けられていてもよい。
【0039】
ハンガー144には、クレーン110でパネルユニット120を吊り上げる際に利用される貫通孔148が設けられる。任意の構成として、貫通孔148を中心として回転可能な回転ロッド146をハンガー144に設けてもよい。この場合、回転ロッド146に貫通孔150が設けられ、この貫通孔150を利用してクレーン110との連結が行われる。さらにハンガー144には貫通孔152を追加的に設けてもよい。この貫通孔152に後述する介錯ロープ172を通し、介錯ロープ172を介してパネルユニット120の移動や回転などを制御することが可能となる。
【0040】
フッキングプレート128が切り欠き128aを有する場合(図3(A)、図3(B))、吊治具140は、y方向に延伸する、切り欠き128aの閉じた端部に近い辺130b側に設けられる(図5(A)から図5(C)参照)。フッキングプレート128の貫通孔128bが直線部と円形部分が融合した構造を有する場合(図6(C)、図7(C))、円形部が吊治具140からより遠い位置に配置されるようにフッキングプレート128がフレーム126に取り付けられる。
【0041】
2-2.パネルユニットの作製方法
以下、パネルユニット120の作製方法を図9(A)から図11(B)を用いて説明する。
【0042】
(1)胴縁の配置
まず、図9(A)に示すように、複数の胴縁124を互いに長手方向が平行になるように、かつ、長手方向が水平方向になるように配置する。したがってこれらの図ではxz平面が水平面となる。複数の胴縁124の数に制約はないが、少なくとも一対の胴縁124には回転機構としてフッキングプレート128が設けられる。このため、ネルユニット120は、フッキングプレート128が設けられる一対の胴縁124、および回転機構を持たない複数の胴縁124を含むことができる。フッキングプレート128が設けられる一対の胴縁124、あるいは回転機構を持たない複数の胴縁124から選択される他の一対の胴縁124(第2のフレーム)に吊治具140が取り付けられる。
【0043】
複数の胴縁124のうち少なくともフッキングプレート128が設けられる一対の胴縁124は、水平面において互いに非対称となるように配置してもよく、対象となるように配置してもよい。前者の場合、一つのフッキングプレート128が二つのフレーム126によって挟まれ、かつ、一つのフレーム126が二つのフッキングプレート128によって挟まれるように一対の胴縁124が配置される(図9(A))。対称となるように配置される場合には、二つのフレーム126が二つのフッキングプレート128によって挟まれるように一対の胴縁124を配置してもよく(図9(B))、二つのフッキングプレート128が二つのフレーム126によって挟まれるように一対の胴縁124を配置してもよい(図9(C))。
【0044】
フッキングプレート128が設けられる一対の胴縁124の回転機構は、回転補助機構160に取り付けられる(図10(A))。図10(A)、図10(B)の模式的側面図に示すように、回転補助機構160は、支持プレート162とフック164を基本的な構成として備える。支持プレート162はフック164を支持するとともに、一対の胴縁124の位置を確定するためのガイドとして機能する。フック164は円形の断面を有する柱状形状を有し、フレーム126の回転機構に収容される。フック164とフッキングプレート128は、フック164の少なくとも一部の断面直径がフッキングプレート128の切り欠き128aの直線部の幅W1、貫通孔128bの直線部の幅W4、および円形の貫通孔128bの直径dよりも小さくなるように構成される(図5(A)から図5(C)、図7(A)、図7(B)参照)。
【0045】
図10(B)に示すように、フック164はストッパー164aを任意の構成として有してもよい。ストッパー164aはフック164と一体化されていてもよく、ナットなどのフック164と独立した部品であってもよい。ストッパー164aはフック164の外周を囲むように配置され、支持プレート162から離隔する。支持プレート162の主面(フック164が設けられる面)からストッパー164aまでの距離L4は、フッキングプレート128の厚さ以上、あるいはフッキングプレート128の厚さとフレーム126を構成する材料の厚さの総和以上であることが好ましい。このようにストッパー164aを設けることで胴縁124の水平方向(xz平面)における動きが規制され、意図せず胴縁124がz方向に移動したり、回転補助機構160から脱落することを防ぐことができる。
【0046】
図10(C)、図10(D)に示されるように、胴縁124は、回転機構が回転補助機構160に取り付けられる。すなわち、切り欠き128a、あるいは貫通孔128b内にフック164が収容されるように胴縁124のフレーム126が配置される。この時、フック164の中心軸は胴縁124の長手方向と交差し、フレーム126を貫通する。胴縁124のz方向における位置は、支持プレート162の主面とフッキングプレート128を接触させることで一定にすることが可能である。
【0047】
(2)パネルの配置
次に、複数の胴縁124の長手方向を水平方向に維持したまま、パネル122を複数の胴縁124上に配置し、胴縁124に固定する(図11(A)、図11(B))。パネル122は、その長手方向が胴縁124の長手方向と交差するように配置される。上述したように、フッキングプレート128の幅はフレーム126の幅と同一、あるいはそれ以下とすることができ、これにより、フッキングプレート128とパネル122との干渉を防止することができる。必要に応じ、隣接するパネル122間のシーリング、金物などの取付作業、開口部の加工処理、サッシや枠などの取付作業などを行ってもよい。
【0048】
以上のプロセスにより、パネルユニット120を作製することができる。
【0049】
2-3.建築物の施工方法
上述した方法によって作製されたパネルユニット120は、引き続き回転補助機構160を利用して鉛直方向に配置されるよう回転される。具体的には、図12(A)に示すように、吊治具140のハンガー144に設けられる貫通孔148、あるいは回転ロッド146に設けられる貫通孔150にケーブル170を通し、クレーン110によってケーブル170を引き上げる。クレーン110は移動式(例えばクローラークレーン、ラフテレーンクレーン)でもよく、固定式でもよい。あるいはクレーン110に替わり、固定式または移動式ウインチやホイストを使用してもよい。この時、フッキングプレート128の切り欠き128a、あるいは貫通孔128bにはフック164が収容されている(図10(C))。このため、パネルユニット120はフック164の中心軸を中心に回転する。したがって、回転機構の回転軸は、フック164の中心軸と一致する。その結果、図12(B)に示すように、胴縁124の長手方向が鉛直に、あるいは鉛直に近い方向に延伸するようにパネルユニット120を引き起こすことができる。この時、切り欠き128aや貫通孔128bの直線部の端部に円弧形状を与えることで、パネルユニット120の回転を円滑に行うことができる(図4(A)から図4(C)、図6(A)から図6(C)参照)。上述したように、フッキングプレート128はウェブ126cと重なるように設けられる。したがって、パネルユニット120を回転させるときの回転軸は、胴縁124の長手方向に垂直であり、第1の平面127に平行であり、かつ、フレーム126を貫通する。
【0050】
パネルユニット120が引き起こされた際のフッキングプレート128の模式的断面を図13(A)に、側面図を図13(B)に示す。これらの図では、フッキングプレート128が備えられた胴縁124が互いに非対象になるように配置されている場合が示されている。図13(A)に示すように、この状態ではフック164はフッキングプレート128の切り欠き128a、あるいは貫通孔128b内に位置している。ストッパー164aが設けられる場合には、ストッパー164aと支持プレート162の間にリップ126e、および/またはフッキングプレート128の一部が挟持されるため、パネルユニット120の脱落が防止される。
【0051】
この状態からパネルユニット120をさらに引き上げると、図13(C)の模式的側面図に示すように、フック164は切り欠き128aや貫通孔128bに対して相対的にx方向に移動する。上述したように、切り欠き128aや貫通孔128bの直線部は、少なくとも一部がリップ126eと重ならないように形成され、これにより、移動時におけるリップ126eとフック164の接触を防ぐことができる。
【0052】
その後フック164が支持プレート162から延伸する方向、すなわち、溝の開口方向とは反対の方向(図13(A)における-z方向)へパネルユニット120を移動すると、フック164やストッパー164aがフッキングプレート128の切り欠き128aや貫通孔128bから外れる。その結果、二つの胴縁124とそれを含むパネルユニット120が回転補助機構160から取り外される。この時、切り欠き128aが図4(C)に示すような形状を有することで、より簡便にフック164やストッパー164aをフッキングプレート128から外すことができる。
【0053】
フッキングプレート128が備えられた一対の胴縁124を対称に配置する場合には、回転補助機構160が水平方向に移動可能なように構成してもよい。例えばパネルユニット120が鉛直に引き起こされた状態のパネルユニット120の背面の模式図(図14)に示すように、互いに離れるように移動、または回転するように回転補助機構160を構成してもよい。これにより、フッキングプレート128をフック164から容易に外すことができる。図示しないが、互いに近接するように回転補助機構160を構成してもよい。
【0054】
回転補助機構160から取り外されたパネルユニット120はクレーン110を用いて自由に移動させることができるため、取り付けが予定されている場所へ搬送し、その後躯体104、106に固定される。以上の方法により、複数のパネルユニット120が外壁として取り付けられた建築物100を施工することができる。
【0055】
上述したように、本実施形態のパネルユニット120は、胴縁124をその長手方向が水平となる状態で作製される。このため、複数の胴縁124を安定に配置した状態でパネル122を胴縁124に固定することができるため、高い作業技術を要求されることが無く、簡便にパネルユニット120を作製することができる。また、作業員に無理な態勢を強いることなくパネルユニット120を作製することができるため、作業効率が向上する。
【0056】
さらに本実施形態のパネルユニット120の取付方法を適用することで、パネルユニット120を建築物100の内部で作成することができるだけでなく、建築物100の内部から任意の場所へ安全に搬送することができる。例えば図15に示すように、建築物100の床106aに配置された架台200上でパネルユニット120を作製し、その後パネルユニット120の設置場所の近くに架台200を移動する。この時、パネルユニット120の一部が建築物100の外側に位置するように、パネルユニット120を配置する。引き続き、回転補助機構160(図15では示されない)のフック164の中心軸を中心としてパネルユニット120を回転させて胴縁124を鉛直に引き起し、その後回転補助機構160からパネルユニット120を取り外し、パネルユニット120を躯体104、106へ取り付ければよい(図16)。このような施工方法では、パネルユニットを引き起こした際に、各パネル122の外壁面がそのまま建築物100の外側を向くため、クレーン110で吊った状態でパネルユニット120をそのまま任意の場所に設置することができる。したがって、パネルユニット120を胴縁124の長手方向を軸として回転させる必要がないため、建築物100外に十分な敷地が確保できない場合でも容易にパネルユニット120を設置することができる。なお、パネルユニット120を躯体104、106へ取り付けたのちに、吊治具140は取り外してもよい。
【0057】
したがって、パネルユニットを作製するための地組架台を屋外に設ける場合と比較すると、本実施形態のパネルユニット120の作製方法、建築物100の施工方向では、天候などの外部環境の影響をほぼ無視することができ、天候に起因する工程遅延が生じにくい。また、クレーン110をパネルユニット120の設置場所の近傍に配置することでパネルユニット120の回転と移動ができるため、風の影響をほとんど受けることないため、安全性の向上、施工性の向上、工期の短縮に貢献するとができる。
【0058】
なお、パネルユニット120の作製を建築物100の一階で行う場合でも、床106aは通常地面108よりも高い位置に設置されるため、床106aと地面108の高さの差を利用してパネルユニット120を回転することができる。特にパネルユニット120の幅を一つのフロアの高さよりも小さくして回転に必要な空間を小さくすることで、床106aが地面108から十分に高くない場合でもパネルユニット120を回転させることができる。また、パネルユニット120を作製するフロアにパネルユニット120が既に取り付けられている場合でも、既設のパネルユニット120との干渉を引き起こすことなく、新たなパネルユニット120を回転させ、建築物100の内部から外部へ搬送することが可能となる。
【0059】
パネルユニット120を回転し、回転補助機構160から取り外す際、必要に応じて介錯ロープ172を貫通孔152に取り付け(図15参照)、介錯ロープ172を用いてパネルユニット120の移動や回転を制御してもよい。また、パネルユニット120を回転させるフロアに既設のパネルユニット120が設けられる場合、ケーブル170との接触による破損を防止するためのプロテクター174を既設のパネルユニット120の下部を覆うように設けてもよい(図15図16参照)。
【0060】
パネルユニット120の回転軸の位置も、フッキングプレート128のフレーム126への取り付け位置を調整することによって任意に設定することができる。フレーム126の重心付近にフッキングプレート128を設けることで、パネルユニット120の回転に大きな力が不要となり、少ない作業人数でも容易にパネルユニット120を回転することができ、作業コストを低減することができる。一方、例えば図17に示すように、吊治具140からより遠い位置にフッキングプレート128を取り付けることで、建築物100の外部に必要な、パネルユニット120の回転空間を減らすことができる。この場合、床106aと地面108との高さの差が小さい場合、あるいは地面108上で回転を行う場合でも、パネルユニット120を円滑に回転することができる。
【0061】
<第2実施形態>
第1実施形態では、フレーム126が所謂リップ付き溝形鋼である例を用いて本発明を説明したが、本発明の実施形態では、種々の形状を有するフレーム126を用いることができる。例えば図18(A)に示すように、リップ126eを備えず、ウェブ126cと一対のフランジ126dを有するフレーム126を用いてもよい。この場合、フッキングプレート128はフランジ126dに固定される。フランジ126dは、端部からウェブ126cに近づくにつれてその厚さが増大するよう、テーパー形状を有してもよい(図18(B))。あるいは図18(C)に示すように、フレーム126はL字の断面形状を備える所謂山形鋼でもよい。この場合には、フレーム126は一体化された一つのフランジ126dと一つのウェブ126cによって構成されると認識することができる。フランジ126dとウェブ126cの幅(長手方向に垂直な長さ)は互いに同一でも異なっていてもよい。山形鋼を用いる場合でも、フランジ126dは端部からウェブ126cに近づくにつれてその厚さが増大するよう、テーパー形状を有してもよい(図18(D))。同様に、ウェブ126cも端部からフランジ126dに近づくにつれてその厚さが増大するよう、テーパー形状を有してもよい。
【0062】
あるいはフレーム126は、断面がH字形状を有するH形鋼、あるいはI字形状を有するI形鋼でもよい(図19(A)から図19(C))。これらの場合もフレーム126は一対のフランジ126d、およびこれらに挟まれる一つのウェブ126cから構成されると認識され、フッキングプレート128は一対のフランジ126dに固定される。山形鋼と同様、フランジ126dテーパー形状を有することができる(図19(C))。
【0063】
<第3実施形態>
本実施形態では、フレーム126に備えられる回転機構が第1、第2実施形態のそれと構造が異なる胴縁180について説明する。第1、2実施形態で述べた構成と同様、類似する構成については説明を割愛することがある。
【0064】
胴縁180の模式的側面図を図20(A)に、図20(A)の鎖線B-B´、C-C´、D-D´に沿った模式的断面図を図20(B)から図20(D)にそれぞれ示す。これらの図では、角型鋼とも呼ばれる、中空構造を有し、かつ断面が閉じた形状を備えるフレーム126を用いる例を説明する。第1実施形態で述べた胴縁124では、切り欠き128a、あるいは貫通孔128bが形成されたフッキングプレート128がフレーム126に取り付けられ、これが回転機構として機能する。一方、胴縁180ではフッキングプレート128は設けられず、図20(A)から図20(D)に示すように、貫通孔128bに相当する貫通孔126fがフレーム126に形成され、この貫通孔126fが回転機構として機能する。貫通孔126fの形状や配置はフッキングプレート128の貫通孔128bのそれらと同様である。例えば貫通孔126fも長手方向に平行な直線部を有し、その閉じた端部は円弧状となるように貫通孔126fを構成することが好ましい。
【0065】
胴縁180においても、種々の形状を有するフレーム126を採用することができる。例えば第1実施形態で述べたリップ126eを有する溝形鋼や、リップ126eを持たない溝形鋼をフレーム126として用いることができる(図21(A)、図21(B))。溝形鋼を用いる場合には、ウェブ126cに貫通孔126fが設けられる。あるいは図22(A)、図22(B)に示すように、I形鋼やH形鋼をフレーム126の基本構造として用い、そのウェブ126cに貫通孔126fを設けてもよい。図示しないが、各フランジ126d、および/またはウェブ126cにはテーパー形状を有してもよい。あるいは図23(A)に示すように、断面がL字形状の山形鋼をフレーム126の基本構造として用いることができる。この場合には、ウェブ126cに貫通孔126fと同様の形状を有する切り欠き126gが形成され、この切り欠き126gが回転機構として機能する。同様に、断面がT字形状を有するT形鋼をフレーム126として用いてもよい。この場合も同様に、フランジ126dと一体化されるウェブ126cに切り欠き126gが設けられ、これが回転機構として機能する。
【0066】
あるいは、フレーム126として中空構造を持たず、表面から内部まで均一な構造を有する材料を用いてもよい。この場合には、図24に示すように、xy平面の断面が貫通孔126fや切り欠き126gと同様の形状を有する溝126hがフレーム126に形成される。溝126hは、パネル122が設けられる第1の平面127に対向する第2の平面126iに達するように形成される。貫通孔126fや切り欠き126gと同様、溝126hも、少なくとも一部がフレーム126の長手方向(x方向)に平行に延伸する。
【0067】
胴縁180では、切り欠き126g、貫通孔126f、または溝126h内に回転補助機構160のフック164が挿入され、フック164の中心軸を回転軸としてフレーム126を回転することで、パネルユニット120を回転することが可能となる。なお、切り欠き126g、または溝126hが形成されたフレーム126を用いると、パネルユニット120を胴縁180の長手方向が鉛直になるように回転した際、パネルユニット120をフック164の中心軸を中心にしてさらに回転させることで、z方向にパネルユニット120を移動しなくてもフック164から回転機構を容易に取り外すことができる(図25)。したがって、回転補助機構160を移動または回転させるための機構を用いることなく、この胴縁180を用いることで第1実施例で述べた効果を発現することができる。その結果、簡便かつ安全に、短縮された工期でパネルユニット120を作製し、建築物100を施工することが可能となる。
【0068】
<第4実施形態>
本実施形態では、パネルユニット120を作製するための架台200の一例、および架台200を利用するパネルユニット120の作製方法について説明する。第1から第3実施形態で述べた構成と同様、類似する構成については説明を割愛することがある。
【0069】
1.全体構成
図26に架台200の平面レイアウトを示す。図26に示すように、架台200は回転補助機構160を備えるメイン架台210を基本的な構成として備える。任意の構成として、架台200は補助架台250や支持架台280を含んでもよい。補助架台250や支持架台280の数に制約はなく、架台200は補助架台250や支持架台280を一つ、あるいは複数備えてもよい。図26には、一つのメイン架台210、メイン架台210を挟むように配置される二つの補助架台250、および二つの支持架台280を有する架台200が示されている。メイン架台210、補助架台250、および支持架台280は、パネルユニット120が占有する領域と重なるように配置される。メイン架台210と補助架台250は互いに独立した構成でも良く、あるいは一体化された一つの架台を構成してもよい。
【0070】
2.メイン架台
メイン架台210の模式的上面図と側面図をそれぞれ図27(A)、図27(B)に示す。メイン架台210は、フッキングプレート128が取り付けられた胴縁124を長辺が水平となる状態で支持し、かつ、回転補助機構160を支持する機能を有する。また、パネルユニット120を移動させるための機能を有してもよい。このためメイン架台210は、胴縁124を支持するための一対のガイドフレーム226と一対の回転補助機構160を基本的な構成として備える。一対の回転補助機構160は、いずれも一対のガイドフレーム226の両者に対して同じ側に位置するよう、対称的に配置してもよく、あるいは互いに異なる側に位置するよう、非対称的に配置してもよい。
【0071】
メイン架台210の構造的強度は、一対のメインフレーム216とこれらを接続する少なくとも二つのサイドフレーム218によって与えられる。メインフレーム216とサイドフレーム218は溶接、あるいはボルトによって互いに固定される。メインフレーム216上にはアングル224が搭載される。アングル224はガイドフレーム226と回転補助機構160を支持する機能を有する。したがってアングル224とは、メインフレーム216に接続され、ガイドフレーム226と回転補助機構160を支持する機能を有する構造を指し、これらの機能を発現可能であればアングル224の構造は任意に決定することができる。アングル224もメインフレーム216に溶接、あるいはボルトによって固定される。図示しないが、アングル224の高さを変えるための機構(ジャッキ、アジャスター)などをメイン架台210に備えてもよい。これにより、ガイドフレーム226の高さを調整することができ、その結果、パネルユニット120の回転に必要な空間を調整することができる。また、回転補助機構160がアングル224上でメインフレーム216が延伸する方向に沿って移動できるように回転補助機構160とアングル224を構成してもよい。
【0072】
胴縁124は、その長手方向がメインフレーム216が延伸する方向と平行になるように配置される。このため、ガイドフレーム226はメインフレーム216が延伸する方向に対して垂直な方向(第1の方向)に延伸するようにアングル224上に配置される。ガイドフレーム226はアングル224に対して固定しなくてもよく、着脱可能なように、ボルトやビスなどを用いてアングル224に固定してもよい。ガイドフレーム226には、胴縁124の位置を確定するためのガイドプレート228を設けてもよい。この場合、メイン架台210上には少なくとも一対の胴縁124が配置されるため、一対のガイドプレート228を各ガイドフレーム226に設けることが好ましい。
【0073】
ガイドプレート228の模式的斜視図を図28(A)に示す。図28(A)に示すように、ガイドプレート228は、ガイドフレーム226が延伸する方向に垂直な主面を有する金属板であり、ガイドフレーム226に溶接、あるいはボルトやビスによって固定される。主面の幅(x方向における長さ)はガイドフレーム226の幅(x方向における長さ)と同一でも良く、異なってもよい。胴縁124はガイドフレーム226と垂直に交差するように設けられるため、一つのガイドフレーム226に設けられるガイドプレート228の主面は、他のガイドフレーム226に設けられるガイドプレート228の主面と同一平面上に位置するようにガイドフレーム226やガイドプレート228が配置される。フレーム126とガイドプレート228が接するように胴縁124を配置することで、複数の胴縁124を互いに平行に配置することができ、かつ、複数のパネルユニット120間において胴縁124の配置ばらつきを小さくすることができる。
【0074】
図27(B)、図28(B)に示すように、回転補助機構160もアングル224上に設けられる。支持プレート162は、例えば断面がL字形状を有することができる。この場合、一方の平坦部(第1の平坦部)がアングル224への固定に用いられ、他方の平坦部(第2の平坦部)にフック164を形成することができる。フッキングプレート128が設けられる一対の胴縁124を非対称に配置する場合には、支持プレート162の第2の平坦部からフック164が延伸する方向は、一対の回転補助機構160間で同一となり、ガイドフレーム226が延伸する方向に平行となる。
【0075】
支持プレート162は溶接、あるいはボルトやビスを用いてアングル224に固定される。第2の平坦部の主面は、ガイドフレーム226が延伸する方向に垂直となるように配置される。回転補助機構160上では、支持プレート162とフレーム126の間にフッキングプレート128が位置する。したがってガイドプレート228は、その主面が支持プレート162の第2の平坦部の主面と同一平面上に位置するように配置される。フレーム126はアングル224や支持プレートと接しないように配置され、その後パネル122がフレーム126上に固定される。
【0076】
メイン架台210は、さらに任意の構成として、メインフレーム216に直接、あるいは間接的に連結されるハンドル230やキャスター212、アジャスター214を備えてもよい。ハンドル230は回転補助機構160とは反対側に設けられる。キャスター212を設けることで、ハンドル230操作を介してメイン架台210を移動することが容易となる。アジャスター214は伸縮可能な固定器具であり、パネルユニット120の作製や回転を行う際に用いることでメイン架台210の位置を固定することができる。パネルユニット120の回転時には、パネルユニット120の重量は回転補助機構160のフック164に集中する。回転補助機構160はメイン架台210の端部(ハンドル230と反対側の端部)、あるいは端部付近に設けられるため、パネルユニット120の回転時には重心がメイン架台210の端部に移動する。このため、図示しないが、メイン架台210の重心をその中心付近に維持するためのウエイトをハンドル230側に配置してもよい。
【0077】
架台200が補助架台250を含む場合、メイン架台210と補助架台250を接続し、これらの位置関係を維持するための連結ガイド220をメインフレーム216に設けてもよい。連結ガイド220は連結材222を収容するように構成される。
【0078】
3.補助架台
補助架台250の模式的上面図と側面図をそれぞれ図29(A)、図29(B)に示す。補助架台250は、メイン架台210上に配置されない胴縁124を長辺が水平となる状態で支持する機能を有する。また、パネルユニット120を移動させるための機能を有してもよい。このため補助架台250は、メイン架台210に連結される、メイン架台210から延伸する一対のガイドフレーム226を支持するためのアングル264を基本的な構成として備える。したがってガイドフレーム226は、メイン架台210と補助架台250によって共有される。メイン架台210と同様、ガイドフレーム226はアングル264に固定しなくてもよく、あるいは着脱可能なようにボルトやビスを用いてアングル264に固定してもよい。補助架台250上においても各ガイドフレーム226にはガイドプレート228を一つ、あるいは複数設けることができる。これにより、補助架台250上においても胴縁124の位置を確定することができる。任意の構成として、補助架台250に胴縁124を支持するための一つ、あるいは複数のガイドフレーム266を別途設けてもよい。ガイドフレーム226と同様、ガイドフレーム266もアングル264に固定しなくてもよく、あるいは着脱可能なように固定してもよい。ガイドフレーム266にもガイドプレート268を設けることができる。
【0079】
補助架台250の構造的強度は、一対のメインフレーム256とこれらを接続する少なくとも二つのサイドフレーム258によって与えられる。メインフレーム256とサイドフレーム258は溶接、あるいはボルトによって互いに固定される。アングル264はメインフレーム256上に搭載される。アングル264の構造は、一対のガイドフレーム226やガイドフレーム266を固定する機能が発揮される限り、任意に決定することができる。アングル264もメインフレーム256に溶接、あるいはボルトやビスによって固定される。メイン架台210と同様、アングル264の高さを変えるための機構(ジャッキ、アジャスター)などを補助架台250に備えてもよい。
【0080】
メインフレーム256には連結ガイド260が設けられる。この連結ガイド260、およびメイン架台210の連結ガイド220に連結材222を収容することで、メイン架台210と補助架台250の位置関係を維持することができる。補助架台250は、さらに任意の構成として、メインフレーム256に直接、あるいは間接的に連結されるハンドル(図示しない)、キャスター252、アジャスター(図示しない)を備えてもよい。キャスター252を設けることで、容易に補助架台250を移動させることができる。
【0081】
4.支持架台
支持架台280の模式的上面図と側面図をそれぞれ図30(A)、図30(B)に示す。支持架台280は、胴縁124やパネルユニット120を一時的に支持する機能を有し、基本的な構成として天板282とそれを支持するメインフレーム286とアングル284を備える。天板282の上面は、胴縁124を補助架台250に配置した際にフレーム126と接するように、その高さが調整される。したがって支持架台280は、天板282の上面がガイドフレーム226の上面(ガイドプレート228の一部がガイドフレーム226と胴縁124の間に位置するように構成される場合には、その一部が形成する主面)と同一平面上に位置するように構成される。
【0082】
支持架台280には、移動を容易にするためのハンドル290を設けてもよい。また、図示しないが、支持架台280にさらにキャスターやアジャスターを設けてもよく、天板282の高さを変えるための機構(ジャッキ、アジャスター)などを設けてもよい。
【0083】
5.パネルユニットの作製方法
まず、架台200を配置する。図31に一例として、メイン架台210、二つの補助架台250、および二つの支持架台280を有する架台200が配置された状態を示す。この例では、二つの補助架台250とメイン架台210は、連結材222によって互いに連結され、一対のガイドフレーム226が二つの補助架台250とメイン架台210と重なるように配置される。胴縁124が大きく撓むことを防止するため、二つの支持架台280間にわたってガイドフレーム270を設けてもよい。ガイドフレーム270は天板282に着脱可能なように固定されていてもよく、固定されていなくてもよい。架台200は建築物100の内部に配置することができる。例えば架台200は建築物100の一階の床106aに設置してもよく(図34参照)、あるいは二階以上の床106b上に設置してもよい。
【0084】
なお、パネルユニット120を回転するための空間が十分に確保できない場合には、フッキングプレート128は吊治具140からより遠い位置に配置される。この場合には、例えば図32に示すように、支持架台280を回転補助機構160とは反対側(ハンドル230側)へ配置し、フッキングプレート128を回転補助機構160に嵌合させればよい。ガイドフレーム270はメイン架台210と重なるように配置してもよい。
【0085】
次に、架台200上にガイドフレーム226と交差するように複数の胴縁124を配置する(図26)。複数の胴縁124のうち、フッキングプレート128が取り付けられた一対の胴縁124はメイン架台210上に設けられる。この一対の胴縁124は、上述したようにフッキングプレート128の切り欠き128a、または貫通孔128b内に回転補助機構160のフック164が収容されるように配置される。図26では各支持架台280上に一つの胴縁124が重なるように配置された例が示されているが、二つ以上の胴縁124が各支持架台280と重なるように支持架台280を配置してもよい。この後、パネル122を胴縁124上に配置し、胴縁124と固定する(図33)。必要に応じ、隣接パネル122間をシーリングしても良い。
【0086】
パネル122を固定した後、支持架台280を外し、パネルユニット120の一部が建築物100の外側に位置するよう、メイン架台210と補助架台250を移動する(図34)。架台200が設けられるフロアよりも上のフロア、あるいは建築物100の屋上にはクレーン110が配置される。この後、上述したように、吊治具140のハンガー144に設けられる貫通孔148、あるいは回転ロッド146に設けられる貫通孔150にケーブル170を通し、クレーン110によってケーブル170を引き上げる。これによってパネルユニット120はフック164の中心軸を中心に回転し、胴縁124の長手方向が鉛直に、あるいは鉛直に近い方向に延伸するようにパネルユニット120が引き起こされる。必要に応じ、介錯ロープ172を用いて回転が調整される。なお、クレーン110を架台200と同一のフロア、またはそれよりも下のフロアに配置し、滑車やブームを利用してパネルユニット120を引き起こしてもよい。
【0087】
その後、クレーン110を操作し、パネルユニット120を水平方向、すなわちフック164の中心軸に沿って、支持プレート162からフック164が延伸する方向へパネルユニット120を移動させる。この移動によって胴縁124は回転機構から外れる(図35)。この時も必要に応じて介錯ロープ172を操作し、パネルユニット120の移動を調整すればよい。この後、パネルユニット120が設置される場所へパネルユニット120を移動し、胴縁124が躯体104、106に固定される。なお、本実施形態ではメイン架台210と補助架台250を設置したのちにクレーン110を操作しパネルユニット120を揚重しているが、必要に応じてメイン架台210を移動させながらパネルユニット120を揚重してもよい。また、回転補助機構160をフレーム126の長手方向に移動可能に設け、回回転補助機構160をフレーム126の長手方向に移動させながらパネルユニット120を揚重してもよい。
【0088】
第1から第3実施形態でも述べたように、本実施形態に係る架台200上でパネルユニット120を作製することで、作業員に対して大きな負荷や高度な作業技術を要求することなく、簡便にパネルユニットを作製することができる。さらに、天候などの外部環境の影響をほとんど受けることなくパネルユニット120を作製し、高い安全性を確保しつつ建築物100に取り付けることができる。
【0089】
<第5実施形態>
本実施形態では、第1から第3実施形態で述べたパネルユニット120とは異なる構造を有するパネルユニット182について説明する。第1から第3実施形態で述べた構成と同一、類似する構成については説明を割愛することがある。図36(A)にパネルユニット182の模式的背面図を、図36(B)、図36(C)に模式的側面図を示す。
【0090】
パネルユニット182は、パネルユニット120と同様、複数の胴縁124と少なくとも一つのパネル122によって構成される。また、複数の胴縁124から選択される少なくとも二つには吊治具140が設けられる。しかしながらパネルユニット182では、胴縁124にはフッキングプレート128は設けられず、少なくとも一つのパネル122に一対のフッキングプレート184が設けられる。図36(B)、図36(C)に示すように、フッキングプレート184はL字の断面形状を有する金属板であり、一方の平坦部が溶接、あるいはボルトやビスなどによってパネル122に取り付けられる。ボルトやビスを用いて固定する場合、フッキングプレート184はパネル122から取り外すことが可能である。
【0091】
他方の平坦部には、フッキングプレート128と同様、切り欠き184aが設けられる。切り欠き184aの形状や配置はフッキングプレート128の切り欠き128aのそれらと同様である。したがって、パネルユニット182も回転補助機構160に取り付けることができ、フック164の中心軸を中心として回転することができる。このため、第1、第3実施形態で述べた効果を同様に得ることができる。
【0092】
なお、図示しないが、フッキングプレート184には、切り欠き184aに替わって貫通孔を設けてもよい。貫通孔の形状や配置もフッキングプレート128の貫通孔128bのそれらと同様にすることができる。また、本実施形態のパネルユニット182では、パネル122の数は一つでも良く、この場合、胴縁124を設けなくてもよい。
【0093】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0094】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0095】
100:建築物、102:基礎梁、104:躯体、106:躯体、106a:床、106b:床、108:地面、110:クレーン、120:パネルユニット、122:パネル、124:胴縁、126:フレーム、126a:軸、126b:軸、126c:ウェブ、126d:フランジ、126e:リップ、126f:貫通孔、126g:切り欠き、126h:溝、126i:第2の平面、127:第1の平面、128:フッキングプレート、128a:切り欠き、128b:貫通孔、130:仮想四角形、130a:辺、130b:辺、130c:辺、130d:辺、140:吊治具、142:連結プレート、144:ハンガー、146:回転ロッド、148:貫通孔、150:貫通孔、152:貫通孔、160:回転補助機構、162:支持プレート、164:フック、164a:ストッパー、170:ケーブル、172:介錯ロープ、174:プロテクター、180:胴縁、182:パネルユニット、184:フッキングプレート、184a:切り欠き、200:架台、210:メイン架台、212:キャスター、214:アジャスター、216:メインフレーム、218:サイドフレーム、220:連結ガイド、222:連結材、224:アングル、226:ガイドフレーム、228:ガイドプレート、230:ハンドル、250:補助架台、252:キャスター、256:メインフレーム、258:サイドフレーム、260:連結ガイド、264:アングル、266:ガイドフレーム、268:ガイドプレート、270:ガイドフレーム、280:支持架台、282:天板、284:アングル、286:メインフレーム、290:ハンドル
図1
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