(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】転載化粧用具
(51)【国際特許分類】
A45D 44/00 20060101AFI20230626BHJP
A45D 40/00 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A45D44/00 Z
A45D40/00 Z
(21)【出願番号】P 2019137481
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100125313
【氏名又は名称】木村 浩幸
(74)【代理人】
【識別番号】100067644
【氏名又は名称】竹内 裕
(72)【発明者】
【氏名】小橋 佳彦
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-007345(JP,A)
【文献】特開2018-197356(JP,A)
【文献】実開昭63-176432(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0200726(US,A1)
【文献】国際公開第2018/061486(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 8/00~ 8/40
A45D 24/00~97/00
A61K 8/00~ 8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に粘着剤を配した転載部を備え、該転載部で剥離基材に支持されるフィルムを接着し、前記フィルムを前記剥離基材から肌に転載す
る転載化粧用具
と、該転載化粧用具を挿通するための挿通孔を設けた、前記フィルムを上方から押さえる押さえ部材と、を備えることを特徴とする化粧セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離基材に支持されたフィルムを剥離基材から肌に転載するための転載化粧用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌のシミやそばかすを隠蔽する化粧料としては、ファンデーションやコンシーラーなどが知られているが、近年では、手軽にシミ等を隠すことができる化粧用シールが着目されている(例えば、特許文献1,2等)。化粧用シールとは、着色あるいは顔料を塗布した薄いフィルムを剥離紙あるいは不織布等の剥離基材の上に重ねた形態の化粧品であり、フィルムを肌のシミ等に部分に乗せることにより、シミ等を覆い隠すことができ、短時間で確実な化粧効果を得ることが期待されている。
【0003】
しかしながら、化粧用シールは、肌と一体となり自然な仕上がりが求められることから、フィルムは極めて薄いものにする必要がある。このため、フィルムを剥離基材から剥離し、さらにフィルムを指で摘まみ肌に密着させる操作の過程において、意図しない箇所に誤って貼り付けてしまうなどの失敗が生じ易く、使用者は、これらの操作を慎重に行う必要があり、煩わしさを感じることが多かった。
【0004】
このため、化粧用シールのフィルムのみを容易に肌に密着させることができ、簡便かつ確実に肌のシミ等を覆い隠すことを可能とする化粧用シールに適した化粧用具の開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-252400号公報
【文献】特開2013-001661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、化粧用シールのフィルムを容易に肌に密着させることができ、簡便かつ確実に肌のシミ等を覆い隠すことを可能とする化粧用シールに適した化粧用具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明者が検討を行った結果、先端に粘着剤を配した転載部を備えた化粧用具を用いることにより、化粧用シールのフィルムを剥離基材から剥離し、容易に肌に密着できることを見出し、本発明を開発するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、先端に粘着剤を配した転載部を備え、該転載部で剥離基材に支持されるフィルムを接着し、前記フィルムを前記剥離基材から肌に転載する転載化粧用具と、該転載化粧用具を挿通するための挿通孔を設けた、前記フィルムを上方から押さえる押さえ部材と、を備えることを特徴とする化粧セットである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の転載化粧用具によれば、化粧用シールのフィルムを剥離基材から剥離し、容易に肌に密着させることができ、肌のシミ等を簡便かつ確実に覆い隠すことを可能となる。
【0011】
また転載化粧用具を用いれば、化粧用シールを指で摘まむ必要がないため、鏡に映しながらシミ等の位置が認識し易くなり、転載部に保持したフィルムをシミ等の部位に確実に押し当てることが可能となる。
【0012】
さらに本発明の化粧セットによれば、剥離基材の浮き上がりを抑えながら、転載化粧用具で化粧用シールのフィルムを確実に取り出すことができるため、フィルムの肌への接着がさらに容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来の化粧用シールの構造及び外観図((a)第1の構造例、(b)第2の構造例、(c)外観図)
【
図3】転載化粧用具(第1の態様例)と化粧用シールの模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態を具体例を挙げながら説明するが、本発明は具体例に限定されるものではない。
【0015】
転載化粧用具は、先端に粘着剤を配した転載部を備え、当該転載部で剥離基材に支持されるフィルムを接着し、前記フィルムを前記剥離基材から肌に転載することを特徴とする。
【0016】
通常、化粧用シールは、
図1に示すように、着色したフィルムあるいは着色剤を塗布したフィルム(2)と、このフィルムの下面に肌に接着するための粘着剤を塗布した接着層(3)と、接着層を保護するとともに適度な剛性を付与し化粧用シートの取り扱いを容易にするための剥離紙等の剥離基材(4)を配した積層構造を採用する。
図1(a)には、一部を着色したプラスチックフィルム(2a)を採用した例を示し、
図1(b)には、顔料を配合した着色剤を上面に塗布したポリ乳酸フィルム(2b)を採用した例を示す。
図1(b)のポリ乳酸フィルムは、フィルム自体に肌へ接着する作用があるため、粘着層を設ける必要はないが、ポリ乳酸フィルムを保護するために下面には剥離基材として不織布(4b)を配し、最上層には、着色剤を保護するための保護シート(6)として剥離用不織布(6a)を配している。
【0017】
フィルム(2)は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、あるいはこれらの共重合体等を原料とし、厚さ30~200nmの薄膜とすることができる。このような薄膜は、特許第6037371号公報に記載される発明により入手することができ、しわの改善効果にすぐれる。
【0018】
このような化粧用シール(1)は、通常、
図1(c)に示すように、複数が前後左右に連続的に形成されており、ある程度の面積を備えた一枚のシートに形成されることが多い。そして、使用者は、点在する化粧用シールを鋏等で切り取り、最下層の剥離基材(剥離紙あるいは不織布等)を剥離した後、フィルムを指で摘まみ、肌に密着させる操作を行う。
【0019】
化粧用シールは、肌と一体となり自然な仕上がりとなることが求められるため、フィルムの厚さは極めて薄いものが採用されることから取り扱いが難しく、使用者が前記の操作を行う際、フィルムが丸まったり、誤って意図しない箇所に貼り付けてしまうなどの失敗が生じやすい。
【0020】
複数の化粧用シールを前後左右に連続的に形成し、一枚のシートとして形成する場合には、
図2に示すように、化粧用シールの着色された部分の周縁にミシン目(7)を設け、着色した部分のフィルムを最下層の剥離基材から剥離しながら取り出し易く加工しておくことが好ましい。
【0021】
化粧用シールの着色された部分の周縁に設けるミシン目は、最下層の剥離基材(剥離紙あるいは不織布等)より上層にあるすべての素材(フィルム、不織布等)に設けられており、上方に引き上げると剥離基材を残して化粧用シールの着色された部分を取り出すことができる。
【0022】
転載化粧用具は、剥離基材の上に配置した着色又は着色剤を塗布したフィルムを剥離基材から引き離し、肌に密着させるための持ち運び可能な化粧用具である。
【0023】
図3に示すように、転載化粧用具(8)は、棒形状の把持部の先端に粘着剤(10)を配した転載部(9)を備えており、転載部を上方から化粧用シール(1)に押し当てた後、上方に引き上げると、着色又は着色剤を塗布したフィルム(2)は剥離基材(4)から剥離し、肌と密着するための接着面が露出する。
【0024】
この状態で転載化粧用具を肌に押し付け、その後、肌から引き離すと、転載化粧用具とともに保護シート(6)が剥離し、着色又は着色剤を塗布したフィルム(2)が肌に残り、化粧操作が完了する。
【0025】
転載部(9)の粘着剤(10)は、化粧操作を円滑に行うため、化粧用シールの構造により強度を調整することが好ましい。例えば、化粧用シールが、
図1(a)のような構造である場合には、剥離紙(4a)と接着層(3)との接着強度より転載部(9)とプラスチックフィルム(2a)との接着強度の方が大きく、転載部とプラスチックフィルムとの接着強度より粘着層と肌との接着強度の方が大きくなるように転載部の粘着剤を調整する必要がある。また、化粧用シールが、
図1(b)のような構造である場合には、不織布(4b)とポリ乳酸フィルム(2b)との接着強度より転載部(9)と保護用不織布(6a)の接着強度の方が大きく、保護用不織布(6a)とポリ乳酸フィルム(2b)との接着強度よりポリ乳酸フィルム(2b)と肌の接着強度の方が大きくなるように調整すれば、剥離基材の不織布(4b)から着色剤を塗布したポリ乳酸フィルム(2b)を円滑に肌に転載することができる。
【0026】
図4は、化粧用シール(1)を上方から押さえるための押さえ部材(12)を備えたコンパクト容器(11)を示す。押さえ部材(12)には、転載化粧用具(8)を挿通するための挿通孔(13)が設けられている。挿通孔は、化粧用シールに設けた円形のミシン目に沿うよう円形状に打ち抜かれている。押さえ部材としては、例えば、フィルム、シート、その他の薄板状の成型品を用いることができ、材質は、プラスチック、金属など広く用いることができる。
【0027】
押さえ部材(12)は、コンパクト容器の上蓋が連結する底部材の側壁面の上端部に回動自在に取り付けられており、押さえ部材を持ち上げることにより、使い切った化粧用シールを新しい化粧用シールに交換して収容することができる(
図4(a))。
【0028】
押さえ部材(12)を設けることにより、転載化粧用具(8)を挿通孔(13)に通して化粧用シールに押し付け引き上げても、化粧用シールが浮き上がることがないため、化粧用シールを手で押さえる必要がなく、化粧用シールのミシン目の内側部分だけを、容易に剥離基材から剥離して肌に転載することが可能となる。また、このようなコンパクト容器を使用することによって、化粧用シートの携帯が可能となり、外出先でも化粧行為を行うことが容易となる。
【0029】
押さえ部材は必ずしもコンパクト容器に収容する必要はなく、他の形態の容器に収容してもよい。転載化粧用具は、押さえ部材と組み合わせることにより化粧セットとして利用することができる。
【0030】
図5は、転載化粧用具(14)にスライド機構を備えた例を示すものである。把持部に備えたスライドボタン(15)を先端方向にスライドするとガイド筒(16)が移動し、転載部(17)がガイド筒の内部に収容される。
【0031】
このようなスライド機構を備えた転載化粧用具を用いれば、ガイド筒の先端面で化粧用シールのミシン目の外周部分を押さえながら、転載部でミシン目の内側部分だけを取り出すことが可能となる。
【0032】
図5に示すように、転載部が表面に露出した状態((a)の状態)で化粧用シールに押し当て、スライドボタンをスライドし、転載部がガイド筒の内部に移動することで、ミシン目の内部だけを取り出す((b)の状態)。そして、再び転載部を露出した状態((a)の状態)にして化粧用シールを肌に密着すれば、フィルムの転載を容易に行うことができる。フィルムはワンアクションで粘着剤から取り外すことができる。
【0033】
図6は、転載化粧用具(18)の転載部(20)に粘着テープ(19)を配した機構を示すものである。転載化粧用具の内部には、粘着テープは送り出すためのローラーを備えており、粘着テープの新しい粘着面を転載部に供給するとともに、粘着力が低下した粘着面を転載化粧用具の内部に引き入れ、転載部には常に新しい粘着面が露出する状態を保つことを可能としている。
【符号の説明】
【0034】
1 化粧用シール
2 フィルム
2a プラスチックフィルム
2a’ プラスチックフィルムの着色部
2b ポリ乳酸フィルム
3 接着層
4 剥離基材
4a 剥離紙
4b 不織布
5 着色剤
6 保護シート
6a 剥離用不織布
7 ミシン目
8 転載化粧用具
9 転載部
10 粘着剤
11 コンパクト容器
12 押さえ部材
13 挿通孔
14 転載化粧用具
15 スライドボタン
16 ガイド筒
17 転載部
18 転載化粧用具
19 粘着テープ
20 転載部