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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】位置調整機構
(51)【国際特許分類】
   F16C 1/22 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
F16C1/22 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019153134
(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公開番号】P2021032333
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智禎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳史
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05682797(US,A)
【文献】米国特許第05605074(US,A)
【文献】米国特許第5207116(US,A)
【文献】特開2003-97537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びるケースと、
前記ケースに対して前記第1方向に移動可能な移動部材と、
前記ケースに対して、前記第1方向に垂直な第2方向に移動可能に取り付けられたロック部材と、
前記ケースおよび/または移動部材に接続された長尺部材と
を備え、
前記移動部材は、前記ロック部材と前記第1方向で係合する第1係合部と、前記ロック部材が前記第2方向で移動することにより、前記ロック部材と前記第1方向で係合する第2係合部とを有し、
前記ロック部材は、前記第1係合部と前記第1方向で係合する第1被係合部と、前記ロック部材が前記第2方向で移動することにより、前記第2係合部と前記第1方向で係合する第2被係合部とを有し、
前記移動部材と前記ケースとは、前記ケースに対して前記第1方向のうちの離脱方向へ移動することで、前記移動部材が前記ケースから離れるように組み合わされ、
前記ロック部材は、
前記第2方向で、前記第2被係合部が前記第2係合部に係合して、前記移動部材の前記ケースに対する前記第1方向での移動を規制するロック位置と、前記第2方向で、前記第2被係合部が前記第2係合部から離間して、前記移動部材の前記ケースに対する相対移動を許容する離間位置との間を移動可能にケースに設けられ、
前記ロック部材が前記離間位置にあるときに、前記第1係合部と前記第1被係合部との前記第1方向での係合により、前記移動部材が前記ケースから離脱するのを規制し、
前記移動部材は、前記第1係合部と前記ロック部材の前記第1被係合部とが離間して、前記ケースと相対移動することにより、前記ケースとの相対位置を調整することができ、
前記ロック部材は、前記第1係合部と前記第1被係合部とが前記第1方向で係合した状態で、前記ロック部材が前記離間位置から前記ロック位置に移動することを規制するように、前記第2方向で前記移動部材と対向する当接部を有し
前記移動部材は、前記ロック部材が前記離間位置に位置するときに、前記当接部と前記第2方向で係合できるように前記移動部材から突出した突部を有し、
前記突部が前記ロック部材の前記当接部と前記第2方向で係合することで、前記ロック部材の前記離間位置から前記ロック位置への移動が規制される
長尺部材の位置調整機構。
【請求項2】
前記位置調整機構は、前記移動部材に接続する第1端部と前記ケースに接続する第2端部とを有する弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記移動部材を前記第1方向に付勢するように設けられ、
前記弾性部材は、前記第1方向のうち、前記移動部材の前記第1係合部が前記第1被係合部に向かって係合する方向に前記移動部材を付勢している、請求項1に記載の長尺部材の位置調整機構。
【請求項3】
前記第2係合部は、前記第2被係合部に対して、前記第1方向において両方向に係合するように構成されている、請求項1または2に記載の長尺部材の位置調整機構。
【請求項4】
前記突部は、前記第1方向および第2方向に垂直な第3方向に突出、前記ケースは、前記突部が前記第1方向に移動可能に嵌合する嵌合部が設けられ、
前記突部に前記第1係合部が設けられ、
前記突部の前記第1係合部が、前記ロック部材の前記第1被係合部と前記第1方向で係合することで、前記移動部材の前記ケースからの離脱が規制され
請求項1~3のいずれか1項に記載の長尺部材の位置調整機構。
【請求項5】
前記位置調整機構の前記突部の前記離脱方向側に第2突部が設けられ、前記第2突部が前記第1方向に移動可能に嵌合する第2嵌合部が設けられ、
前記突部と前記嵌合部との摺動、および前記第2突部と前記第2嵌合部との摺動により、前記移動部材と前記ケースとが相対移動する、請求項4に記載の長尺部材の位置調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
コントロールケーブルを車体等の取付対象に配索する際に、コントロールケーブルの軸方向長さを調整するための装置が設けられる場合がある(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1の導管短縮装置は、雄型部材と、雄型部材が軸方向に入れ子式に挿入される雌型部材と、雌型部材に軸方向に移動しないように、かつ、軸方向に垂直に移動できるように取り付けられた係止部材とを有している。特許文献1の導管短縮装置では、雄型部材の側面に軸方向に延びる歯列を有し、係止部材は、この歯列に噛み合う歯を有している。この導管短縮装置において、導管の長さを調整する場合、雄型部材を雌型部材に対して軸方向に移動させた後、係止部材を軸方向に対して垂直な方向に押し込んで、雄型部材の歯列に係止部材の歯を係合させる。これにより、雌型部材に対する、雄型部材の軸方向の移動が規制され、導管の長さが調整される。
【0003】
特許文献1の導管短縮装置では、係止部材はU字状に形成され、係止部材の一対のアームの先端に爪状のフックを有している。係止部材が雄型部材に向かって押し込まれる前は、係止部材のフックは、雌型部材に設けられた移動止め凹部に係合して係止部材が抜け止めされる。一方、係止部材が押し込まれた後は、係止部材のフックは、雌型部材の留め具に係合することにより、雌型部材との間の係止状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-177754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構造の場合、たとえば、係止部材が雄型部材および雌型部材とともに搬送される場合など、係止部材を押し込む方向に力が加わると、係止部材は軸に対して垂直な方向に押し込まれてしまう。そのため、装置の搬送時に、係止部材が押し込まれて雌型部材の留め具と係合してしまう。したがって、車体等の取付対象に組み付ける際に導管の長さ調整するための、雄型部材と雌型部材との相対位置の調整を行う場合には、一度係止部材を雌型部材の留め具から外して押し込まれた係止部材を元の状態に戻す必要が生じる。つまり、このような構造では、位置調整を行うための操作が複雑になってしまう。
【0006】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑みて、コントロールケーブル等の長尺部材に用いられる、簡単な操作によって位置調整が可能な位置調整機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の位置調整機構は、第1方向に延びるケースと、前記ケースに対して前記第1方向に移動可能な移動部材と、前記ケースに対して、前記第1方向に垂直な第2方向に移動可能に取り付けられたロック部材と、前記ケースおよび/または移動部材に接続された長尺部材とを備え、前記移動部材は、前記ロック部材と前記第1方向で係合する第1係合部と、前記ロック部材が前記第2方向で移動することにより、前記ロック部材と前記第1方向で係合する第2係合部とを有し、前記ロック部材は、前記第1係合部と前記第1方向で係合する第1被係合部と、前記ロック部材が前記第2方向で移動することにより、前記第2係合部と前記第1方向で係合する第2被係合部とを有し、前記移動部材と前記ケースとは、前記ケースに対して前記第1方向のうちの離脱方向へ移動することで、前記移動部材が前記ケースから離れるように組み合わされ、前記ロック部材は、前記第2方向で、前記第2被係合部が前記第2係合部に係合して、前記移動部材の前記ケースに対する前記第1方向での移動を規制するロック位置と、前記第2方向で、前記第2被係合部が前記第2係合部から離間して、前記移動部材の前記ケースに対する相対移動を許容する離間位置との間を移動可能にケースに設けられ、前記ロック部材が前記離間位置にあるときに、前記第1係合部と前記第1被係合部との前記第1方向での係合により、前記移動部材が前記ケースから離脱するのを規制し、前記移動部材は、前記第1係合部と前記ロック部材の前記第1被係合部とが離間して、前記ケースと相対移動することにより、前記ケースとの相対位置を調整することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の位置調整機構によれば、簡単な操作によって長尺部材の位置調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の位置調整機構の側面図である。
図2図1の位置調整機構の分解斜視図である。
図3図1の位置調整機構のケースを第1方向および第2方向に沿って切断した部分断面図である。
図4図1のIV-IV線断面図である。
図5図4の状態から、ロック部材をロック位置に移動させた状態を示す断面図である。
図6図3に示す状態から、移動部材を第1方向で押込方向に移動させた状態を示す図である。
図7図6に示す状態から、ロック部材を第2方向の押圧方向に移動させて、移動部材をロックした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の長尺部材の位置調整機構を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の位置調整機構は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1および図2に示されるように、本実施形態の長尺部材の位置調整機構1は、第1方向D1に延びるケース2と、ケース2に対して第1方向D1に移動可能な移動部材3と、ケース2に対して、第1方向D1に垂直な第2方向D2に移動可能に取り付けられたロック部材4と、ケース2および/または移動部材3に接続された長尺部材5とを備えている。なお、本明細書において、第1方向D1および第2方向D2の両方に垂直な方向を第3方向D3(図2参照)と呼ぶ。また、本明細書において、第1方向D1のうち、一方の方向を押込方向と呼び、他方の方向を離脱方向と呼ぶ。押込方向は、第1方向D1のうち、移動部材3およびケース2を組み合わせた状態の全長が第1方向D1で短くなる方向である。また、離脱方向は、第1方向D1のうち、移動部材3およびケース2の組み合わせた状態の全長が長くなる方向、または、移動部材3がケース2から外れる方向である。
【0012】
後述するように、位置調整機構1は、移動部材3をケース2に対して第1方向D1に相対移動させることによって、第1方向D1での移動部材3のケース2に対する相対位置を調整し、それによって長尺部材5の位置を調整する。位置調整機構1は、第1方向D1での移動部材3のケース2に対する相対位置を調整することができれば、位置調整機構1の適用対象は特に限定されない。本実施形態では、位置調整機構1は、長尺部材5を操作する長尺部材操作装置(本実施形態では、コントロールケーブル操作装置)Aに設けられている。本実施形態では、位置調整機構1を含む長尺部材操作装置Aは、たとえば、車両のボンネットやトランク、フューエルリッド等の開閉体のロック機構、シートの傾倒状態をロックするシートロック機構等に適用される、コントロールケーブル操作装置とすることができる。
【0013】
長尺部材5は、ケース2および/または移動部材3に接続される長尺の部材である。長尺部材5の種類は特に限定されない。本実施形態では、長尺部材5は、コントロールケーブルのアウターケーシングであるが、長尺部材は、たとえば、コントロールケーブルのインナーケーブルであってもよいし、その他のワイヤであってもよいし、ロッド等の棒状部材であってもよい。
【0014】
長尺部材5の一端は、ケース2および/または移動部材3に接続され、長尺部材5の他端は、たとえば所定の取付部に接続されて、長尺部材5が所定の経路に沿って設けられる。なお、ケース2および/または移動部材3に接続される長尺部材5の数は1つであってもよいし、2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。本実施形態では、長尺部材5は、図1に示されるように、ケース2および移動部材3の両方に接続されているが、ケース2および移動部材3のいずれか一方に接続されていればよい。また、ケース2および/または移動部材3の一方の端部に2つ以上の長尺部材5が並列的に接続されていてもよい。
【0015】
本実施形態では、長尺部材5は、図1に示されるように、ケース2に接続された第1アウターケーシング51と、移動部材3に接続された第2アウターケーシング52とを有している。第1アウターケーシング51の一端51aは、ケース2に接続され、第1アウターケーシング51の他端51bは、車体等の第1取付部M1に取り付けられている。第2アウターケーシング52の一端52aは、移動部材3に接続され、第2アウターケーシング52の他端52bは、車体等の第2取付部M2に取り付けられている。第1アウターケーシング51および第2アウターケーシング52は、車体等の取付対象において、第1取付部M1および第2取付部M2など、所定の距離で離間した位置に端部(他端51b、他端52b)が取り付けられて、所定の配索経路に配策される。
【0016】
本実施形態では、第1アウターケーシング51および第2アウターケーシング52には、1本のインナーケーブル6が挿通されている。図1に示されるように、インナーケーブル6の一端6aは操作部P1に直接または間接的に接続され、インナーケーブル6の他端6bは被操作部P2に直接または間接的に接続されている。本実施形態では、操作部P1に加えられた操作力は、インナーケーブル6の一端6a側から他端6b側に伝達されて、被操作部P2が操作される。なお、操作部P1と被操作部P2は逆であってもよい。また、本実施形態では、第1アウターケーシング51および第2アウターケーシング52に1本のインナーケーブル6が挿通されているが、第1アウターケーシング51および第2アウターケーシング52のそれぞれに別々のインナーケーブルが挿通されていてもよい。また、長尺部材5は、インナーケーブル6の一端6a側または他端6b側が剛性を有するロッドを含んでもよい。一方側と他方側との間で所定の長さとなる長尺部材が用いられていれば、長尺部材5は、ケース2および/または移動部材3の一方の端部からロッドが延出して、操作部P1または被操作部P2と接続する接続構造を構成してもよい。
【0017】
ケース2は、移動部材3が第1方向D1に移動可能となるように構成される。また、ケース2は、ロック部材4が第2方向D2に移動可能に取り付けられる。ケース2の形状および構造は、移動部材3を第1方向D1に移動可能に取り付けることができ、ロック部材4を第2方向に移動可能に取り付けることができれば、特に限定されない。本実施形態では、ケース2は、図2に示されるように、第1方向D1に移動部材3を収容可能な空間SPを有している。ケース2は、本実施形態では、図2に示されるように、第1方向D1および第3方向D3に延びる第1側面S1と、第1側面S1に対して略垂直に延び、第1方向D1および第2方向D2に延びる第2側面S2、第2側面S2に略平行に延びる第3側面S3、および、第1側面S1に略平行に延びる第4側面S4を有している。ケース2の材料は特に限定されず、ケース2は、合成樹脂材料などのロック部材4との係合を可能とする剛性を有する材料で形成される。
【0018】
本実施形態では、ケース2は、図1および図2に示されるように、移動部材3をケース2に対して第1方向D1に沿って移動できるように取り付け可能な移動部材取付部21と、ロック部材4をケース2に対して第2方向D2に沿って移動できるように取り付け可能なロック部材取付部22とを有している。また、本実施形態では、ケース2は、長尺部材5の一端が取り付けられる長尺部材取付部23を有している。ケース2は、第1方向D1でロック部材取付部22と長尺部材取付部23との間には、第1方向D1に延びる本体部24を有している。また、ケース2は、移動部材3が第1方向D1に沿って移動できるように、第1方向D1に沿って延びる空間SPを有している。ケース2と移動部材3とは相対移動が可能に構成され、本実施形態では、図1および図3に示されるように、位置調整機構1は、ケース2の空間SPに、後述する弾性部材7を有している(図2においては弾性部材7の図示は省略している)。
【0019】
移動部材取付部21は、移動部材3が第1方向D1に沿って移動可能に取り付けられるケース2の部位である。本実施形態では、移動部材取付部21は、図1および図2に示されるように、第1方向D1におけるケース2の一端(第1方向D1のうち離脱方向側の端部)に設けられている。本実施形態では、ケース2の一端に設けられた移動部材取付部21は、空間SPに連通する、第1方向D1に開口した第1開口部21a(図2参照)を有している。第1開口部21aからケース2に取り付けられた移動部材3は、空間SPにおいて、第1方向D1に沿って移動する。移動部材取付部21の形状は特に限定されないが、本実施形態では、図2に示されるように、第1方向D1に垂直な断面が略C字状に形成され、第3方向D3に離間して配置された2つの第2嵌合部26bが設けられている。2つの第2嵌合部26bの間には、移動部材3が第1方向に移動できるように形成された開口状の隙間が第1方向D1に沿って延びている。ケース2は、第2方向D2方向に面する内側面と第2嵌合部26bとの間に、突部33aが移動する移動隙間が設けられている。この移動間隙は、第1開口部21aとケース2の内側の空間SPとの第1方向D1での間に設けられ、第2嵌合部26bが第1方向D1で突部33aを案内する。
【0020】
ロック部材取付部22は、ロック部材4が第2方向D2に沿って移動可能に取り付けられる部位である。本実施形態では、ロック部材取付部22は、図2に示されるように、ケース2の第1側面S1に設けられている。ロック部材取付部22は、第2方向D2に開口した第2開口部22a(図2参照)を有している。ロック部材4は、第2開口部22aを介してケース2のロック部材取付部22に対して第2方向D2に沿って移動可能に取り付けられる。本実施形態では、ロック部材4は、長尺部材5の軸方向に交わる方向に移動可能に、ケース2に取り付けられる。後述するロック部材4を第2方向D2に移動可能に取り付けることができるように、2つの略矩形状の第2開口部22aを有している。しかし、第2開口部22aは、ロック部材4を第2方向D2に移動可能にケース2に取り付けることができれば、第2開口部22aの数や形状は特に限定されない。たとえば、第2開口部22aを2つに分けずに、ロック部材4を取り付け可能な1つの大きな開口部としてもよい。
【0021】
また、本実施形態では、ケース2(ロック部材取付部22)は、図2図4および図5に示されるように、後述するロック部材4の係止段部STと係止して、ロック部材4のケース2からの抜けを抑制する係止爪25を有している。係止爪25は、第2開口部22aが形成されたケース2の第1側面S1に対して略垂直に(第2側面S2、S3において)第2方向D2に沿って延びている。係止爪25の先端25aは第2開口部22aの開口縁近傍に位置するように構成されている。係止爪25は、ロック部材4と係合する係合部とその係合部を弾性的に支持する支持部を有し、板バネとしての機能を有する。係止爪25の先端25aは、第2方向D2でロック部材4がケース2に挿入される方向に移動したときに係止爪25が撓んで第3方向D3で外側に広がるように傾斜している。なお、本実施形態では、係止爪25は、第3方向D3に対向して2つ設けられているが、係止爪25の数や配置方向は特に限定されない。
【0022】
長尺部材取付部23は、長尺部材5の一端が取り付けられる部位である。本実施形態では、第1アウターケーシング51の一端51aが長尺部材取付部23に取り付けられている。長尺部材取付部23は、本実施形態では、第1方向D1において移動部材取付部21が設けられた一端とは反対側となるケース2の他端に設けられている。
【0023】
本体部24は、図1および図2に示されるように、ロック部材取付部22に対して第1方向D1で離脱方向とは反対側の押込方向に設けられている。つまり、本体部24は、ロック部材取付部22に対して、第一開口部21aとは反対の側に設けられている。本体部24は、本実施形態では、第1方向D1でロック部材取付部22と長尺部材取付部23との間に設けられ、第1方向D1に垂直な断面が略矩形状に形成されている。本体部24は内側に空間SPを有しており、空間SP内には弾性部材7が配置されている。本体部24の内側の空間SPは、移動部材3が第1方向D1に移動できる大きさに形成されている。
【0024】
また、本実施形態では、ケース2は、図1および図2に示されるように、後述する移動部材3の突部33aが第1方向D1に移動可能に嵌合する嵌合部26aを有している。嵌合部26aは、移動部材3の突部33aが第1方向D1に安定して移動できるように嵌合して、移動部材3を案内する案内部として機能する。嵌合部26aは、本実施形態では、移動部材3の第1方向D1での移動ストローク以上の長さで第1方向D1に沿って延びている。嵌合部26aは、本実施形態では、第2方向D2での移動部材3の突部33aの移動を所定範囲内に規制するように、第2方向D2の両側で突部33aと当接する壁部を有している。本実施形態では、嵌合部26aは、ケース2の本体部24に設けられている。なお、本実施形態では、図2に示されるように、嵌合部26aに沿って、ケース2の空間SPとケース2の外部とが連通するようにケース2の第2および第3側面S2、S3が開口している。しかし、ケース2は、嵌合部26aに沿って開口を有していなくてもよい。
【0025】
また、本実施形態では、ケース2は、後述する移動部材3の第2突部33bが第1方向D1に移動可能に嵌合する第2嵌合部26bを有している。第2嵌合部26bは、移動部材3の第2突部33bが第1方向D1に安定して移動できるように嵌合して、移動部材3を案内する案内部として機能する。本実施形態では、突部33aと嵌合部26aとの摺動、および第2突部33bと第2嵌合部26bとの摺動により、移動部材3とケース2とが相対移動するように構成されている。この場合、移動部材3が移動する際に、移動部材3は、嵌合部26aおよび第2嵌合部26bによって、ケース2に対して第1方向D1に離間した2か所で支持される(図1参照)。これにより、移動部材3の第1方向D1での移動がさらに安定し、位置調整機構1における移動部材3の位置調整がより円滑となる。なお、第2嵌合部26bは、突部33aと第2突部33bとに摺動し、それぞれを案内するが、移動部材3が突部33aと第2嵌合部26bとの摺動により案内される構成とすることができる。
【0026】
第2嵌合部26bは、本実施形態では、移動部材3の第1方向D1での位置調整可能な移動ストローク以上の長さで第1方向D1に沿って延びている。第2嵌合部26bは、第2方向D2での移動部材3の第2突部33bの移動を所定範囲内に規制するように、第2方向D2の両側で第2突部33bと当接する壁部を有している。本実施形態では、図1に示されるように、第2嵌合部26bは、ケース2の移動部材取付部21に設けられている。具体的には、第2嵌合部26bは、移動部材取付部21を構成する壁部の内側に設けられている。本実施形態では、第2嵌合部26bは、移動部材取付部21において、図2に示されるように、第2方向D2に対向する一対の壁部(ケース2の第1側面S1および第4側面S4により構成された壁部)と、一対の壁部を連結する壁部(ケース2の第2側面S2および第3側面S3により構成された壁部)とによって構成されている。
【0027】
本実施形態では、図1に示されるように、ケース2において、第1方向D1で嵌合部26aと第2嵌合部26bとの間にロック部材取付部22が位置するように構成されている。すなわち、移動部材3の突部33aは、ロック部材4と移動部材3とが係合する位置に対して、第1方向D1で押込方向側において嵌合部26aと嵌合している。移動部材3の突部33aは、嵌合部26aと嵌合して、第1方向D1へは移動可能とされ、第2方向D2への移動が規制される。さらに、移動部材3の第2突部33bは、ロック部材4と移動部材3とが係合する位置に対して、第1方向D1で離脱方向側において第2嵌合部26bと嵌合している。この場合、移動部材3の突部33aおよび第2突部33bが移動部材3とロック部材4との係合位置に対して第1方向D1の両側の2か所で嵌合部26aおよび第2嵌合部26bにそれぞれ嵌合する。この場合、ロック部材4から移動部材3に対して第2方向D2に力が加わった場合に、移動部材3が第3方向D3に延びる軸周りに回転することが抑制される。したがって、ロック部材4を移動部材3に向かって第2方向D2に移動させて係合させる際に、移動部材3が安定した状態で、ロック部材4を移動部材3に係合させることができる。したがって、ロック部材4の移動部材3への係合を円滑にすることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、突部33aが移動部材3に設けられ、ケース2に嵌合部26aが設けられているが、突部がケース2に設けられ、嵌合部が移動部材3に設けられていてもよい。また、本実施形態では、第2突部33bが移動部材3に設けられ、ケース2に第2嵌合部26bが設けられているが、第2突部がケース2に設けられ、第2嵌合部が移動部材3に設けられていてもよい。
【0029】
移動部材3は、ケース2に対して第1方向D1に相対移動する。なお、本明細書において、移動部材3がケース2に対して第1方向D1に「相対移動」することには、移動部材3がケース2に対して第1方向D1に移動すること、ケース2が移動部材3に対して第1方向D1に移動すること、移動部材3およびケース2の両方が第1方向D1に移動することを含む。移動部材3は、ケース2との間の第1方向D1での位置関係を変更する際にケース2に対して相対移動される。移動部材3がケース2に対して相対移動した後は、後述するように、ロック部材4によって移動部材3の第1方向D1での移動が規制される。
【0030】
移動部材3とケース2とは、ケース2に対して第1方向D1のうちの離脱方向へ移動することで、移動部材3がケース2から離れるように組み合わされている(図2参照)。また、移動部材3をケース2に組み合わせる際には、図2に示される状態からケース2に対して第1方向D1で押込方向に移動部材3を移動することにより組み付けることができる。移動部材3は、本実施形態では、第1方向D1に沿って延びており、第1方向D1に沿って延びるケース2の空間SP内を移動する。本実施形態では、移動部材3は、ケース2に対して入れ子式に収容されるように構成されているが、移動部材3は、ケース2に対して第1方向D1に相対移動することができれば、ケース2との間の組み付け状態は特に限定されない。
【0031】
移動部材3は、本実施形態では、図2に示されるように、移動部材本体31と、長尺部材取付部32とを有している。移動部材本体31は、第1方向D1に沿って延びている。本実施形態では、移動部材本体31は、長尺部材であるインナーケーブル6が挿通できるように、第1方向D1に貫通した挿通部31aを有している。移動部材本体31の形状および構造は特に限定されないが、本実施形態では、移動部材本体31は、ケース2の第1側面S1の内面に対向する第1側面S21と、ケース2の第2側面S2の内面に対向する第2側面S22と、ケース2の第3側面S3の内面に対向する第3側面S23と、ケース2の第4側面S4の内面に対向する第4側面S24とを有している。本実施形態では、移動部材本体31の第1側面S21は平坦面を有し、第2および第3側面S22、S23は、後述する第2係合部35が設けられ、第4側面S24は、第1方向D1に垂直な断面において湾曲した湾曲面として形成されている。
【0032】
移動部材3の長尺部材取付部32は、移動部材3の、第1方向D1で離脱方向側の端部に設けられている。本実施形態では、長尺部材取付部32に第2アウターケーシング52の一端52aが取り付けられている。
【0033】
本実施形態では、移動部材3は、上述したように突部33aを有している。突部33aは、図1に示されるように、ケース2の嵌合部26aに嵌合して、第1方向D1に沿ってガイドされる。これにより、移動部材3の第1方向D1での移動が安定する。突部33aの突出方向は特に限定されないが、本実施形態では、突部33aは、移動部材3から第3方向D3に突出している(図2参照)。より具体的には、突部33aは、移動部材本体31の第1方向D1で押込方向側の端部において、第2および第3側面S22、S23から第3方向D3に突出している。なお、本実施形態では、突部33aは略矩形状に形成されているが、嵌合部26aと嵌合することができれば、突部33aの形状は特に限定されない。また、本実施形態では、突部33aは、第2側面S22と第3側面S23においてそれぞれ1つずつ設けられているが、突部33aの数は特に限定されない。
【0034】
本実施形態では、移動部材3は、上述したように突部33aの第1方向D1で離脱方向側に第2突部33bを有している。第2突部33bは、図1に示されるように、ケース2の第2嵌合部26bに嵌合して、第1方向D1に沿ってガイドされる。これにより、移動部材3の第1方向D1での移動がさらに安定する。第2突部33bの突出方向は特に限定されないが、本実施形態では、第2突部33bは、移動部材3から第3方向D3に突出している(図2参照)。より具体的には、第2突部33bは、移動部材本体31の第1方向D1で離脱方向側の端部において、第2および第3側面S22、S23から第3方向D3に突出している。なお、本実施形態では、第2突部33bは略矩形状に形成されているが、第2嵌合部26bと嵌合することができれば、第2突部33bの形状は特に限定されない。また、本実施形態では、第2突部33bは、第2側面S22と第3側面S23においてそれぞれ1つずつ設けられているが、第2突部33bの数は特に限定されない。
【0035】
移動部材3は、図1図3および図7に示されるように、ロック部材4と第1方向D1で係合する第1係合部34と、ロック部材4が第2方向D2で移動することにより、ロック部材4と第1方向D1で係合する第2係合部35とを有している。
【0036】
第1係合部34は、後述するロック部材4の第1被係合部44と第1方向D1で係合する(図1および図3参照)。第1係合部34は、ロック部材4の第1被係合部44と第1方向D1で係合することによって、後述するように移動部材3のケース2からの離脱を抑制する。なお、本実施形態では、第1係合部34は、突部33aに形成されている。しかし、第1係合部34は、突部33aとは別に設けられていてもよい。第1係合部34の詳細については後述する。
【0037】
第2係合部35は、ロック部材4が後述するロック位置に位置する際に、ロック部材4の第2被係合部45と係合する(図7参照)。第2係合部35は、ロック部材4がロック位置に位置する際に、ロック部材4の第2被係合部45と第1方向D1で係合して、移動部材3のケース2に対する第1方向D1での移動を規制する。第2係合部35の形状および構造は、ロック部材4の第2被係合部45と係合して、移動部材3のケース2に対する第1方向D1での移動を規制することができれば、特に限定されない。本実施形態では、第2係合部35は、たとえば、図2に示されるように、第1方向D1に沿って山部および谷部が交互に形成された歯列とすることができる。本実施形態では、第2係合部35は、第1方向D1で突部33aと第2突部33bとの間に配置されている。これにより、上述したように、ロック部材4を移動部材3に向かって第2方向D2に移動させて係合させる際に、移動部材3が安定した状態で、ロック部材4を移動部材3に係合させることができる。したがって、ロック部材4の移動部材3への係合を円滑にすることができる。
【0038】
ロック部材4は、ケース2に対して第2方向D2に移動することができるように、ケース2に対して取り付けられる部材である。ロック部材4は、図6および図7に示されるように、第2方向D2で後述するロック位置に移動することによって移動部材3と係合して、移動部材3のケース2に対する第1方向D1での移動を規制する。また、ロック部材4は、図3および図6に示されるように、第2方向D2で後述する離間位置に位置することによって、移動部材3のケース2に対する第1方向D1での移動を許容する。また、ロック部材4は、ロック部材取付部22と嵌合する。ロック部材4は、第1係合部34がロック部材4と係合した移動部材3に対してケース2から離間する方向の力が付与されても、ケース2には、ロック部材4に対して第1方向D1で当接して支持をする支持部が設けられているので、移動部材3の移動に伴う移動が抑制される。
【0039】
ロック部材4は、図2に示されるように、第1係合部34と第1方向D1で係合する第1被係合部44と、ロック部材4が第2方向D2で移動することにより、第2係合部35と第1方向D1で係合する第2被係合部45とを有している。ロック部材4は、第2方向D2において、ロック位置(図5および図7参照)と離間位置(図1図3図4および図6参照)との間を移動可能にケース2に設けられている。
【0040】
ロック部材4のロック位置は、図7に示されるように、第2方向D2のうち、ロック部材4の第2被係合部45が移動部材3の第2係合部35と係合して、移動部材3のケース2に対する第1方向D1での移動を規制することが可能なロック部材4の位置である。ロック部材4は、位置調整のときに、第2被係合部45が第2係合部35と第3方向D3において一致した位置となるように移動部材3に対して相対移動する。
【0041】
ロック部材4の離間位置は、図3および図6に示されるように、第2方向D2のうち、ロック部材4の第2被係合部45が移動部材3の第2係合部35から第2方向D2で離間して、移動部材3のケース2に対する第1方向D1での相対移動を許容する位置である。この離間位置において、第2被係合部45が第2係合部35から第2方向D2で離間することによって、第2係合部35と第2被係合部45とが非係合状態となり、移動部材3はケース2に対して第1方向D1で相対移動が可能となる。ロック部材4の離間位置は、第2被係合部45が第2係合部35との係合を生じない位置であり、且つ、第1被係合部44が第1係合部34と係合可能な位置である。
【0042】
ロック部材4の形状や構造は、第1被係合部44および第2被係合部45を有し、ロック位置と離間位置との間を移動することができれば特に限定されない。本実施形態では、ロック部材4は、図2図4および図5に示されるように、第1方向D1に対して垂直な断面が略U字状となるように構成されている。ロック部材4は、ケース2の一対の第2開口部22aから差し込まれる一対のアーム部41、42と、一対のアーム部41、42を繋ぐ連結部43とを有している。第3方向D3で対向する一対のアーム部41、42は、移動部材3を跨ぐようにケース2に取り付けられ(図4参照)、ロック部材4が離間位置にあるときに、移動部材3は一対のアーム部41、42の間に介在した状態で第1方向D1に移動できるように構成されている。
【0043】
アーム部41、42は、図2図4および図5に示されるように、第3方向D3で外側の面に、ケース2の係止爪25の先端25aが係止する係止段部STを有している。本実施形態では、ロック部材4の離間位置において、図4に示されるように、係止爪25の先端25aが係止段部STに係止され、ロック部材4が離間位置で仮保持される。また、ロック部材4は、この仮保持によって、ロック部材4の離間位置から第2方向D2でロック部材4が抜去されることが抑制される。アーム部41、42は、係止段部STに対して第2方向D2において、ロック部材4が抜去される方向(以下、抜去方向という)側に、第2係止段部ST2を有している。第2係止段部ST2には、図5に示されるように、ロック部材4がロック位置に移動したときに、係止爪25の先端25aが係止する。これにより、ロック部材4がロック位置で保持される。
【0044】
第1被係合部44は、上述したように、移動部材3の第1係合部34と第1方向D1で係合する。第1被係合部44は、図1および図3に示されるように、ロック部材4が離間位置に位置するときに、第1係合部34と第1方向D1で係合するように構成されている。本実施形態では、第1被係合部44は、ロック部材4のうち、第1方向D1で押込方向側の端部に設けられている。第1被係合部44の形状および構造は、移動部材3の第1係合部34と第1方向D1で係合することができれば、特に限定されない。本実施形態では、ロック部材4の第1方向D1の押込方向側の端面において、図2および図3に示されるように、第1方向D1で離脱方向側に向かって深さを有する凹部Cが形成され、第1被係合部44は、当該凹部Cの底部(第1方向D1に対して垂直な面)によって構成されている。
【0045】
移動部材3の第1係合部34は、ロック部材4の第1被係合部44と第1方向D1で係合する。これにより、移動部材3が第1方向D1で離脱方向に移動することが抑制される。第1係合部34の形状および構造は、ロック部材4が離間位置に位置するときに第1被係合部44に係合することができれば、特に限定されない。本実施形態では、移動部材3の第1係合部34は、図3に示されるように、凹部Cの底部によって構成された第1被係合部44に係合する突部33aに設けられている。具体的には、第1係合部34は、突部33aの第1方向D1の離脱方向側の端部である。
【0046】
本実施形態では、凹部Cは、図2および図3に示されるように、第2方向D2の両側で突部33aと当接可能な第1当接部46aと第2当接部46bとを有している。この場合、後述するように、第1係合部34が第1被係合部44と係合した状態において、ロック部材4が第2方向D2の両方向に移動することが抑制される。
【0047】
第2被係合部45は、上述したように、移動部材3の第2係合部35と係合する。第2被係合部45は、ロック部材4がロック位置に位置するときに、第2係合部35と第1方向D1で係合するように構成されている。これにより、移動部材3がケース2に対して第1方向D1に移動することを規制している。第2被係合部45の形状および構造は、第2係合部35と係合して、移動部材3のケース2に対する第1方向D1での移動を規制することができれば、特に限定されない。このように、ケース2は、第1方向D1で当接してロック部材4を第1方向D1で支持する支持部と、第2方向D2で当接してロック部材4を第2方向D1の押込方向に対して仮保持として支持する支持部とを有しているので、移動部材3がケース2から離間することが抑制され、ロック部材4も位置調整前の状態で保持されることができる。
【0048】
本実施形態では、第2係合部35は、図7に示されるように、第2被係合部45に対して、第1方向D1において両方向に係合するように構成されている。この場合、ロック部材4によって、移動部材3の取付対象における適切な所定の位置でのロックが可能となる。第2被係合部45は、たとえば、図2に示されるように、第2係合部35に噛み合う、第1方向D1に沿って山部および谷部が交互に形成された歯列とすることができる。具体的には、第2被係合部45は、ロック部材4のアーム部41、42の第3方向D3で内側面に形成された歯列とすることができる。
【0049】
本実施形態では、図1および図3に示されるように、ロック部材4が離間位置にあるときに、第1係合部34と第1被係合部44との第1方向D1での係合により、移動部材3がケース2から離脱するのを規制する。また、ロック部材4が離間位置にあるときに、図3および図6に示されるように、移動部材3は、第1係合部34とロック部材4の第1被係合部44とが離間するようにケース2と相対移動することにより、ケース2との相対位置を調整することができる。このように、本実施形態では、簡単な構成で、移動部材3のケース2に対する位置調整を可能にし、かつ、移動部材3がケース2から離脱しないようにすることができる。具体的には、図1および図3に示されるように、移動部材3の第1係合部34がロック部材4の第1被係合部44と第1方向D1で係合し、ロック部材4によって移動部材3が離脱しないように構成されている。さらに、移動部材3が離脱しない状態において、図3および図6に示されるように、ロック部材4を離間位置から第2方向D2に移動させることなく、移動部材3を第1方向D1で押込方向側に移動させることができる。したがって、位置調整機構1の搬送時などにおいては、移動部材3がケース2から離脱してしまうことが規制されるとともに、位置調整機構1を車両などの取付対象に取り付ける際に、複雑な操作をすることなく、容易に移動部材3の位置調整が可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、ロック部材4は、図2および図3に示されるように、突部33aのうち、第2方向D2で抜去方向側と対向する第1当接部46aを有している。この第1当接部46aによって、第1係合部34と第1被係合部44とが係合した状態で、ロック部材4が離間位置からロック位置に移動することが規制される。したがって、位置調整機構1の搬送時などに、ロック部材4がロック位置に向かって押圧される外力が加わったとしても、ロック部材4がロック位置に移動することが抑制される。これにより、位置調整機構1を取付対象に組み付ける際に、移動部材3を第1方向D1に移動させるために、ロック部材4をロック位置から離間位置に移動させる作業が不要となり、作業性が向上する。
【0051】
また、本実施形態では、ロック部材4は、図2および図3に示されるように、突部33aのうち、第2方向D2で押圧方向(抜去方向の反対方向)側と対向する第2当接部46bを有している。この第2当接部46bによって、第1係合部34と第1被係合部44とが係合した状態で、ロック部材4が離間位置から第2方向D2で抜去方向に移動することが規制される。したがって、位置調整機構1の搬送時など、ロック部材4がケース2から抜去されて離脱することが抑制される。なお、本実施形態では、第1当接部46aおよび第2当接部46bは、ロック部材4の凹部Cに形成されているが、上述した効果を奏することができれば、ロック部材4の凹部C以外の部位に設けられていてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、位置調整機構1は、図3に示されるように、移動部材3に接続する第1端部7aとケース2に接続する第2端部7bとを有する弾性部材7を有している。弾性部材7は、移動部材3を第1方向D1に付勢するように設けられ、弾性部材7は、第1方向D1のうち、移動部材3の第1係合部34が第1被係合部44に向かって係合する方向に移動部材3を付勢している。これにより、移動部材3に対して、弾性部材7の付勢方向とは反対方向に外力を加えることで当該反対方向(第1方向D1の押込方向)への移動が可能となり、移動部材3への外力を解除した状態においては、第1係合部34と第1被係合部44とが係合した状態となって移動部材3の離脱が抑制されているので、位置調整が容易となる。また、突部33aがロック部材4の第1当接部46aおよび/または第2当接部46bと第2方向で対向して係合可能である場合、移動部材3へ第1方向D1での外力が加わっていない状態では、弾性部材7によって、ロック部材4の第2方向D2への移動が自動で規制される。したがって、簡単な構成で、ロック部材4の第2方向D2への移動を規制することができる。また、弾性部材7が、移動部材3を第1方向D1で離脱方向に付勢することによって、移動部材3のケース2に対する位置が安定し、搬送時などにおいて、移動部材3がガタつくことによる異音などが抑制される。
【0053】
弾性部材7の種類は、移動部材3を第1方向D1に付勢することができれば、特に限定されない。弾性部材7は、たとえば、第1方向D1に伸縮可能なコイルばね等を用いることができる。具体的には、本実施形態では、弾性部材7は、第1端部7aが、移動部材3の第1方向D1で押込方向側の端面に当接し、第2端部7bがケース2の第1方向D1で押込方向側の内壁に当接している。また。弾性部材7は、第1端部7aが移動部材3の端面に設けられたバネ収容部に収容されるようにすることもできる。
【0054】
つぎに、コントロールケーブル操作装置を例に挙げて、本実施形態の位置調整装置1をより詳細に説明する。なお、以下の説明はあくまで一例であり、以下の説明によって本発明が限定されるものではない。
【0055】
まず、位置調整装置1を組み立てる場合、第1アウターケーシング51が接続されたケース2に対して、第2アウターケーシング52が接続された移動部材3を、図2に示される状態から、ケース2の第1開口部21aを経由して第1方向D1の押込方向に移動させる。ケース2には、空間SP内にコイルバネである弾性部材7が収容されており、移動部材3を第1方向D1に移動させることにより弾性部材7が圧縮される。移動部材3の第1方向D1での移動の際には、移動部材3の突部33aが第2嵌合部26bおよび嵌合部26aに案内されて、第2突部33bが第2嵌合部26bに案内される。なお、この際、ロック部材4は未だケース2に取り付けられていない。
【0056】
移動部材3が第1方向D1で所定の位置までケース2に押し込まれた後、ケース2の第2開口部22aにロック部材4が差し込まれる。ロック部材4が第2開口部22aに差し込まれると、ロック部材4のアーム部41、42がケース2の係止爪25を第3方向D3で押し広げながら第2方向D2に移動する。ロック部材4が第2方向D2で所定の位置まで移動すると、ケース2の係止爪25の先端25aがアーム部41、42の係止段部STに係止され、ロック部材4が第2方向D2の離間位置で停止する(図4参照)。この状態で移動部材3の第1方向D1の押込方向への外力を解除すると、移動部材3は弾性部材7の付勢力によって、第1方向D1で離脱方向へと移動部材3を押圧する。これにより、図1および図3に示されるように、移動部材3の第1係合部34がロック部材4の第1被係合部44へと係合して、位置調整機構1の組み立てが完了する。このように、位置調整機構1の組み立ての際に、移動部材3はケース2に対して第1方向D1に直線的に移動させるだけでよく、ロック部材4をケース2に差し込んだ後は、位置調整機構1の各部材に操作を加えることなく、半自動的に組み立てが完了する。また、ロック部材4を第2方向D2において離間位置に配置することによって、図3に示されるように、移動部材3の突部33aが、ロック部材4の凹部Cに対して、第1方向D1の離脱方向、第2方向D2の抜去方向、第2方向D2の押圧方向の三方向で係合する。これにより、たとえば、位置調整機構1の搬送時や取付対象への組み付け前などにおいて、移動部材3のケース2からの離脱が抑制されるとともに、ロック部材4の意図しないロック位置への移動、ロック部材4のケース2からの抜去が抑制される。
【0057】
つぎに、位置調整機構1の取付対象への取り付けについて説明する。まず、図1に示されるように、第1および第2アウターケーシング51、52に挿通されたインナーケーブル6の一端6aおよび他端6bを、操作部P1および被操作部P2にそれぞれ接続する。また、第1アウターケーシング51の他端51bおよび第2アウターケーシング52の他端52bを取付対象の第1取付部M1および第2取付部M2にそれぞれ取り付ける。この際、図3に示されるように、ケース2と移動部材3とを組み合わせた状態での第1方向D1での端部間の長さは最長になっており、移動部材3を第1方向D1に押し込んだ状態(図6および図7参照)よりも、第1方向D1での長さが長い。したがって、第1アウターケーシング51の他端51bから第2アウターケーシング52の他端52bまでの長さは、図6および図7に示される状態に対して全長が長くなっている。したがって、第1および第2アウターケーシング51、52の他端51b、52bを取付対象の第1取付部M1および第2取付部M2にそれぞれ取り付ける際に、第1および第2アウターケーシング51、52の長さに余裕がある。そのため、第1取付部M1および第2取付部M2に第1および第2アウターケーシング51、52の他端51b、52bを容易に取り付けることができる。
【0058】
第1および第2アウターケーシング51、52の他端51b、52bの取付対象への取り付けが完了すると、移動部材3をケース2に対して位置調整し、端部間の位置を調整することができる。この際、図3に示されるように、ロック部材4は離間位置にあり、移動部材3の第2係合部35と、ロック部材4の第2被係合部45とは第1方向D1で係合していないので、そのまま移動部材3を第1方向D1で押込方向に移動させればよい。移動部材3を、弾性部材7の付勢力に抗して、ケース2に対して第1方向D1で押込方向に移動させると、図6に示されるように、ケース2と移動部材3とを組み合わせた状態での第1方向D1での端部間の長さが、図3に示される長さよりも短くなる。そして、図7に示されるように、ロック部材4を第2方向D2で押圧方向へと押し込んでロック位置に移動させると、ロック部材4の第2被係合部45が移動部材3の第2係合部35に第1方向D1で係合して、移動部材3の第1方向D1での移動が規制される。また、図5に示されるように、ケース2の係止爪25の先端25aがロック部材4の第2係止段部ST2に係止することによって、ロック部材4がロック位置から離間位置へと移動することが抑制される。
【0059】
これにより、ケース2と移動部材3との間の第1方向D1での相対移動時に、第1アウターケーシング51の一端51aおよび第2アウターケーシング52の一端52aの位置が調整されて、第1アウターケーシング51および第2アウターケーシング52の端部間の位置を調整することができ、アウターケーシングの端部から延出するインナーケーブルの長さも調整することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 位置調整機構
2 ケース
21 移動部材取付部
21a 第1開口部
22 ロック部材取付部
22a 第2開口部
23 長尺部材取付部
24 本体部
25 係止爪
25a 係止爪の先端
26a 嵌合部
26b 第2嵌合部
3 移動部材
31 移動部材本体
31a 挿通部
32 長尺部材取付部
33a 突部
33b 第2突部
34 第1係合部
35 第2係合部
4 ロック部材
41、42 アーム部
43 連結部
44 第1被係合部
45 第2被係合部
46a 第1当接部
46b 第2当接部
5 長尺部材
51 第1アウターケーシング
51a 第1アウターケーシングの一端
51b 第1アウターケーシングの他端
52 第2アウターケーシング
52a 第2アウターケーシングの一端
52b 第2アウターケーシングの他端
6 インナーケーブル
6a インナーケーブルの一端
6b インナーケーブルの他端
7 弾性部材
7a 第1端部
7b 第2端部
A 長尺部材操作装置
C 凹部
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 第3方向
M1 第1取付部
M2 第2取付部
P1 操作部
P2 被操作部
S1 ケースの第1側面
S2 ケースの第2側面
S3 ケースの第3側面
S4 ケースの第4側面
S21 移動部材の第1側面
S22 移動部材の第2側面
S23 移動部材の第3側面
S24 移動部材の第4側面
SP 空間
ST 係止段部
ST2 第2係止段部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7