(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
B60L 58/10 20190101AFI20230626BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230626BHJP
B60L 50/53 20190101ALI20230626BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20230626BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20230626BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20230626BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20230626BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20230626BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B60L58/10
B60L3/00 S
B60L50/53
G01R31/00
G01R31/396
G01R31/50
H02H3/16 A
H02H7/18
H02J7/00 S
(21)【出願番号】P 2019166476
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏和
(72)【発明者】
【氏名】丸野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】福島 隆文
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】森 学人
(72)【発明者】
【氏名】森田 政次
(72)【発明者】
【氏名】新井 達也
(72)【発明者】
【氏名】尾谷 浩昭
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-225280(JP,A)
【文献】特表2016-508358(JP,A)
【文献】国際公開第2007/116530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/10
B60L 50/53
B60L 3/00
G01R 31/50
G01R 31/396
G01R 31/00
H02J 7/00
H02H 3/16
H02H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線からの電力を降圧する変圧器と、
前記変圧器の二次巻線を介して供給された交流電力を変換して出力する走行用交流-直流電力変換部と、前記走行用交流-直流電力変換部から出力された直流電力を走行用モータの駆動電力に変換する走行用直流-交流電力変換部と、を備えた走行用電力変換装置と、
前記変圧器の三次巻線を介して供給された交流電力を直流電力に変換する負荷用交流-直流電力変換部と、前記負荷用交流-直流電力変換部により変換された直流電力を交流負荷および直流負荷を駆動させるために用いられる交流電力に変換して出力する負荷用直流-交流電力変換部と、所定の周期で地絡検知を行う負荷電力制御部と、を有する補助電源用電力変換装置と、
前記負荷用交流-直流電力変換部と前記負荷用直流-交流電力変換部とを接続する電力線、および、前記走行用交流-直流電力変換部と前記走行用直流-交流電力変換部とを接続する電力線に接続されたバッテリ装置と、
前記補助電源用電力変換装置と前記バッテリ装置とを接続する電力線に接続され、前記バッテリ装置から供給された電力によって動作可能な補機と、を備え、
前記バッテリ装置は、接地された筐体に収容され、組電池と、前記組電池から前記走行用電力変換装置、前記補助電源用電力変換装置、および、前記補機に電力を供給する共通の正側主回路および負側主回路に流れる電流を検出する電流検出器と、前記電流検出器における検出値に基づいて前記所定の周期よりも短い周期で前記組電池の漏電検知を行うバッテリ制御回路と、を備える電力変換システム。
【請求項2】
前記バッテリ制御回路は、前記組電池が漏電していると判断したときに、前記組電池を前記正側主回路および前記負側主回路から切り離す、請求項1記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記バッテリ装置は、前記組電池から前記走行用直流-交流電力変換部へ電力を供給する電力線の電気的接続状態を切替える第2接触器と、前記組電池から前記負荷用直流-交流電力変換部へ電力を供給する電力線の電気的接続状態を切替える第3接触器と、前記組電池と電力線との電気的接続状態を切替える第4接触器と、を備える、請求項1又は請求項2記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
架線に電力が供給されてない無電区間を電気車が通過する場合に、電気車には、架線からの電力が供給されない。また、停電が発生したときには、架線からの電力供給が停止する。
【0003】
これらの場合、電気車に搭載された主電動機や、コンプレッサやブロアなどの補機に電力が供給されず、例えば停電から復帰するまで電気車を安全な場所まで動かすことができない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば停電時に電気車を安全な場所まで移動させるための非常用の電源として、バッテリ装置を電気車に搭載することが検討されている。
【0006】
例えば、バッテリ装置が、複数の機器の電源として接続され得るとき、バッテリの主回路が接地されないことがある。その場合、バッテリ装置にてバッテリの主回路が地絡したか否かを検知することができず、バッテリからの漏電電流によりバッテリ装置以外の機器の異常として検知される可能性があった。その場合には、電力変換システム全体を停止させる必要があるため、正常に動作可能である機器まで異常停止し、電力変換システムの信頼性が低下する原因となる。
【0007】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、バッテリ装置の異常が発生したときに、他の正常な機器の動作を担保可能な電力変換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による電力変換システムは、架線からの電力を降圧する変圧器と、前記変圧器の二次巻線を介して供給された交流電力を変換して出力する走行用交流-直流電力変換部と、前記走行用交流-直流電力変換部から出力された直流電力を走行用モータの駆動電力に変換する走行用直流-交流電力変換部と、を備えた走行用電力変換装置と、前記変圧器の三次巻線を介して供給された交流電力を直流電力に変換する負荷用交流-直流電力変換部と、前記負荷用交流-直流電力変換部により変換された直流電力を交流負荷および直流負荷を駆動させるために用いられる交流電力に変換して出力する負荷用直流-交流電力変換部と、所定の周期で地絡検知を行う負荷電力制御部と、を有する補助電源用電力変換装置と、前記負荷用交流-直流電力変換部と前記負荷用直流-交流電力変換部とを接続する電力線、および、前記走行用交流-直流電力変換部と前記走行用直流-交流電力変換部とを接続する電力線に接続されたバッテリ装置と、前記補助電源用電力変換装置と前記バッテリ装置とを接続する電力線に接続され、前記バッテリ装置から供給された電力によって動作可能な補機と、を備え、前記バッテリ装置は、接地された筐体に収容され、組電池と、前記組電池から前記走行用電力変換装置、前記補助電源用電力変換装置、および、前記補機に電力を供給する共通の正側主回路および負側主回路に流れる電流を検出する電流検出器と、前記電流検出器における検出値に基づいて前記所定の周期よりも短い周期で前記組電池の漏電検知を行うバッテリ制御回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の電力変換システムが搭載される鉄道車両の概略側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電力変換システムの一構成例を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の電力変換システムの他の構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の電力変換システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の電力変換システムが搭載される鉄道車両の概略側面図である。
本実施形態の鉄道車両1は、車体2と、2つの台車3と、電力変換システム10と、を備えている。
【0011】
車体2は、鉄道車両1の想定走行方向に長い直方体形状に形成されている。車体2の内部には、乗客を収容可能な空間が形成されている。車体2の天井には、上方に向けて集電装置400が突設されている。集電装置400は架線に接触可能となるように構成されている。
【0012】
台車3は、例えば空気ばね等の台車ばねを介して、車体2の床下にそれぞれ取付けられている。台車3には、幅方向(走行想定方向および上下方向と略直交する方向)に延びる一対の車軸11が回転可能に支持されている。これら車軸11には、車輪12がそれぞれ取付けられている(一方の車輪12は不図示)。
【0013】
台車3の各々には、各車軸11をそれぞれ回転させる主電動機Mが搭載されている。すなわち、鉄道車両1には4つの走行用モータM(
図2に示す走行用モータM1~M4)が搭載される。
電力変換システム10は、例えば、車体2の床下において一対の台車3の間に位置する部分に搭載されている。
【0014】
図2は、実施形態の電力変換システムの一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電力変換システム10は、架線から供給される高圧交流電力を利用して、走行用モータM1~M4、補機装置620~640、直流負荷装置LDC、および、交流負荷装置LACへ所定の電力を供給することができる。
【0015】
実施形態において、走行用モータM1~M4は、例えば、誘導電動機である。
実施形態において、交流負荷LACは、走行用モータM1~M4を除く鉄道車両1の負荷であって、例えば、100ボルトの交流電圧で動作する電子機器などである。
また、実施形態において、直流負荷LDCは、走行用モータM1~M4を除く鉄道車両の負荷であって、例えば、直流電圧で動作する電子機器やバッテリなどである。
【0016】
本実施形態の電力変換システム10は、例えば、補助電源用電力変換装置100と、バッテリ装置200と、走行用電力変換装置300と、を備えている。
【0017】
走行用電力変換装置300には、集電装置400およびメイントランスの走行用巻線(一次巻線500および二次巻線302)を介して、架線から高圧交流電力が供給される。
【0018】
走行用電力変換装置300は、変圧器により降圧された高圧交流電力を走行用交流電力に変換して、走行用モータM1~M4に供給する。これにより走行用電力変換装置300は、走行用モータM1~M4に走行トルクを発生させ、鉄道車両を走行させる。
【0019】
走行用電力変換装置300は、例えば、接触器312と、抵抗器314と、走行用交流-直流電力変換部320と、走行用直流-交流電力変換部330と、コンデンサ(第1コンデンサ)C1、C2と、走行電力制御部310と、第1端子T31と、第2端子T32と、を含む。
【0020】
接触器312は正極線に接続され、抵抗器314に対して並列に接続されている。また、走行用電力変換装置300は、接触器312を電磁的に動作させるためのコイル(図示せず)などを備える。
【0021】
走行用充電回路は、走行電力制御部310の制御に従って、接触器312の遮断状態と導通状態とを切り替える。高圧交流電力の供給が開始されるとき、接触器312は遮断状態であり、その後、導通状態へと切り替えられる。
【0022】
走行用交流-直流電力変換部320は、高圧交流電力が供給される高電位側の電力線および低電位側の電力線間に接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路(図示せず)を備える。走行用交流-直流電力変換部320は、コンバータとも称される。なお、走行用交流-直流電力変換部320は、昇圧コンバータまたは降圧コンバータ、昇降圧コンバータのいずれかであればよい。スイッチング回路に含まれるスイッチング素子は例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)であるが、これに限定されず、他の種類のスイッチング素子を使用してもよい。
【0023】
走行用交流-直流電力変換部320は、走行電力制御部310による制御に従って、スイッチング素子を導通状態と遮断状態との間で切り替えることで、供給された高圧交流電力を直流電力に変換することができる。
【0024】
走行用交流-直流電力変換部320と走行用直流-交流電力変換部330とは、高電位側の電力線と、低電位側の電力線とにより電気的に接続している。高電位側の電力線は、第1端子T31を介してバッテリ装置200の第1端子T21と電気的に接続されている。低電位側の電力線は、第2端子T32を介してバッテリ装置200の第2端子T22と電気的に接続されている。
【0025】
また、走行用交流-直流電力変換部320と走行用直流-交流電力変換部330とは、共通の接地線を備えている。接地線は、第3端子T33を介して接地されている。
【0026】
コンデンサC1は、高電位側の電力線と接地線との間に接続されている。
コンデンサC2は、接地線と低電位側の電力線との間に接続されている。
すなわち、コンデンサC1、C2は、走行用直流-交流電力変換部330の直流入力端に接続されている。
【0027】
走行用直流-交流電力変換部330は、高電位側の電力線と低電位側の電力線との間にブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路(図示せず)を備えている。なお、走行用直流-交流電力変換部330は、インバータとも称される。走行用直流-交流電力変換部330は、走行用モータM1~M4の3相のそれぞれに対応した上ブリッジ側のスイッチング素子と下ブリッジ側のスイッチング素子との組を3つ備える。各スイッチング素子は、例えばIGBTであるが、これに限定されず、他の種類のスイッチング素子を使用してもよい。
【0028】
走行用直流-交流電力変換部330は、走行電力制御部310の制御に従って、走行用モータMにおける各相のスイッチング素子を導通状態と遮断状態との間で切り替えることで、直流電力を走行用交流電力に変換する。
【0029】
走行電力制御部310は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよい。走行電力制御部310は、例えば、補助電源用電力変換装置100において変換された100Vの動作電力により動作可能である。
走行電力制御部310は、接触器312、走行用交流-直流電力変換部320、および走行用直流-交流電力変換部330を制御する。
【0030】
補助電源用電力変換装置100には、集電装置400およびメイントランスの負荷用巻線(一次巻線500および三次巻線102)を介して、架線から高圧交流電力が供給される。メイントランスの負荷用巻線(一次巻線500および三次巻線102)から供給される交流電力は、メイントランスの走行用巻線(一次巻線500および二次巻線302)から供給される交流電力よりも低い電圧となっている。
【0031】
補助電源用電力変換装置100は、高圧交流電力を変圧器により降圧した低圧交流電力を負荷用交流電力に変換して、交流負荷LACに供給する。すなわち、補助電源用電力変換装置100は、負荷用交流電力により交流負荷LACを駆動させる。
【0032】
また、補助電源用電力変換装置100は、高圧交流電力を変圧器により降圧した低圧交流電力を負荷用直流電力に変換して、直流負荷LDCに供給する。すなわち、補助電源用電力変換装置100は、負荷用直流電力により直流負荷LDCを駆動させる。
【0033】
また、負荷電力制御部170は、例えば三次巻線102の接地線に流れる電流に基づいて周期的(例えば0.5秒周期)に地絡検知を行い、補助電源用電力変換装置200が正常に接地されているか否か(地絡しているか否か)判断する。地絡していると判断したときには、負荷電力制御部170は、例えば補助電源用電力変換装置200の動作を停止する。
【0034】
補助電源用電力変換装置100は、例えば、負荷用交流-直流電力変換部110と、負荷用直流-交流電力変換部120と、交流負荷用直流-交流電力変換部130と、チョッパ回路150と、第1端子T11と、第2端子T12と、コンデンサ(第2コンデンサ)C3と、負荷用トランス(一次巻線122、二次巻線124、および、三次巻線140)を含む。
【0035】
負荷用交流-直流電力変換部110は、集電装置400からメイントランスの負荷用巻線(一次巻線500および三次巻線102)を介して供給された低圧交流電力を直流電力に変換する。
【0036】
負荷用交流-直流電力変換部110は、例えば、高電位側の電力線と低電位側の電力線との間に接続された複数のスイッチング素子を備えたスイッチング回路(図示せず)を備える。複数のスイッチング素子は、例えば逆並列に接続されたダイオードを内蔵したIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)であるが、他の種類のスイッチング素子であってもよい。
【0037】
なお、負荷用交流-直流電力変換部110は、例えば、昇圧コンバータまたは降圧コンバータ、昇降圧コンバータのいずれかの回路を備えていてもよい。
【0038】
チョッパ回路150は、第1端子T11および第2端子T12を介してバッテリ装置200の第5端子T25および第6端子T26と電気的に接続し、負荷用交流-直流電力変換部110から出力された直流電力を所定の電圧に変換してバッテリ装置200へ供給する。チョッパ回路150は、バッテリ装置200から供給された直流電力を所定の電圧に変換して、負荷用交流-直流電力変換部110の直流側へ供給する。
【0039】
負荷用直流-交流電力変換部120は、高電位側の電力線および低電位側の電力線間にブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路(図示せず)を備えている。
【0040】
なお、負荷用直流-交流電力変換部120は、インバータとも称される。各スイッチング素子は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。なお、スイッチング素子として、他の種類のスイッチング素子を使用してもよい。負荷用直流-交流電力変換部120は、負荷電力制御部170の制御に従って、スイッチング素子を任意に導通状態と遮断状態との間で切り替えることで、直流電力を負荷用交流電力に変換する。
【0041】
負荷用直流-交流電力変換部120の負荷用交流-直流電力変換部110側には、負荷用交流-直流電力変換部110および負荷用直流-交流電力変換部120に並列して、コンデンサC3が接続されている。すなわち、コンデンサC3は、負荷用直流-交流電力変換部120の直流入力端に接続されている。
【0042】
コンデンサC3は、負荷用直流-交流電力変換部120において安定した電力を交流負荷LACおよび直流負荷LDC側に供給することができる容量に設定されている。すなわち、コンデンサC3の容量は、集電装置400から供給される交流電力が停止する無電区間(セクションとも称される)を鉄道車両が走行している場合や停電時に、交流負荷LACおよび直流負荷LDCへ負荷用交流電力の供給を補償するような高い容量でなくてよい。
【0043】
負荷用直流-交流電力変換部120により変換された負荷用交流電力は、負荷用トランスの一次巻線122、三次巻線140および整流器を介して直流負荷LDCに供給される。
【0044】
また、負荷用直流-交流電力変換部120により変換された負荷用交流電力は、負荷用トランスの一次巻線122、二次巻線124、整流器、および交流負荷用直流-交流電力変換部130を介して交流負荷LACに供給される。
【0045】
交流負荷用直流-交流電力変換部130は、上述した負荷用直流-交流電力変換部120と同様に、高電位側の電力線および低電位側の電力線間にブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路(図示せず)を備えている。交流負荷用直流-交流電力変換部130は、スイッチング素子を導通状態と遮断状態との間で切り替えることで、直流電力を交流電力に変換する。
【0046】
なお、負荷電力制御部170は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよい。負荷電力制御部170は、例えば、補助電源用電力変換装置100において変換された100Vの動作電力が供給されることで動作可能に構成されている。
【0047】
負荷電力制御部170は、負荷用交流-直流電力変換部110と、負荷用直流-交流電力変換部120と、交流負荷用直流-交流電力変換部130と、チョッパ回路150と、を制御する。
【0048】
バッテリ装置200は、第1端子T21乃至第6端子T26を備えている。
第1端子T21と第2端子T22とは、走行用電力変換装置300と電気的に接続される。第3端子T23と第4端子T24とは、補機群600と電気的に接続される。第5端子T25と第6端子T26とは、補助電源用電力変換装置100と電気的に接続される。
【0049】
バッテリ装置200は、例えば、絶縁区分が低圧のバッテリである。バッテリ装置200は、例えば、リチウムイオン電池などの蓄電池セルが直列または並列に接続された組電池BTと、複数の接触器BLB1、BLB2、BatDK1、BatDK2、BatCK1、BatCK2、CHKと、抵抗器CHReと、電流検出器220と、複数の接触器BLB1、BLB2、BatDK1、BatDK2、BatCK1、BatCK2、CHKの動作を制御するバッテリ制御部210と、を備えている。
【0050】
接触器BLB1は、組電池BTの正極端子と正側主回路との電気的接続を切替える。接触器BLB2は、組電池BTの負極端子と負側主回路との電気的接続を切替える。すなわち、接触器BLB1と接触器BLB2とは、組電池BTと第1電力線(主回路)との電気的接続状態を切替える接触器(第4接触器)である。
【0051】
接触器BatDK1は、正側主回路と第1端子T21との電気的接続を切替える。接触器BatDK2は、負側主回路と第2端子T22との電気的接続を切替える。すなわち、接触器BatDK1と接触器BatDK2とは、組電池BTから走行用直流-交流電力変換部330へ電力を供給する電力線の電気的接続状態を切替える接触器(第2接触器)である。
【0052】
接触器BatCK1は、正側主回路と第5端子T25との電気的接続を切替える。接触器BatCK2は、負側主回路と第6端子T26との電気的接続を切替える。すなわち、接触器BatCK1と接触器BatCK2とは、組電池BTから負荷用直流-交流電力変換部120へ電力を供給する電力線の電気的接続状態を切替える接触器(第3接触器)である。
【0053】
接触器CHKと抵抗器CHReとは並列に接続している。接触器(第1接触器)CHKは、組電池BTの正極端子と、第1端子T21、第3端子T23、および、第5端子T25との間に延びた正側主回路(正側の第1電力線)において、第1電力線と並列に接続した抵抗器CHReを介して接続する経路(第2電力線)と、抵抗器CHReを介さずに接続する経路(第1電力線)とを切替える。
【0054】
なお、バッテリ制御部210は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよい。バッテリ制御部210は、例えば、組電池BTからの放電電力が所定の値に変換された動作電力が供給されることで動作可能に構成されている。
【0055】
バッテリ制御部210は、組電池BTに流れる電流、蓄電池セルの電圧、および、蓄電池セルの温度を周期的に取得して監視するとともに、例えば組電池BTのSOC(state of charge)を演算してバッテリ装置200の充電および放電の制御を行う。
【0056】
電流検出器220は、正側主回路と負側主回路とのそれぞれに流れる電流を検出し、検出した値(電流値若しくは電流相当値)をバッテリ制御部210へ供給する。本実施形態では、電流検出器220は、例えば、接触器BLB1と接触器CHKとの間の正側主回路と、接触器BLB2と接触器BatCK2および接触器BatDK2との間の負側主回路との電流を検出する。
【0057】
補機群600は、バッテリ装置200の第3端子T23および第4端子T24と電気的に接続される。
補機群600には、バッテリ装置200から直流電力が供給される。補機群600には、バッテリ装置200の組電池BTから放電された直流電力が供給されてよいが、これに限定されず、負荷用交流-直流電力変換部110により変換された直流電力が供給されてよい。さらに、補機群600には、バッテリ装置200の組電池BTから放電された直流電力と負荷用交流-直流電力変換部110により変換された直流電力とが合成された電力が供給されてよい。
【0058】
補機群600は、例えば、鉄道車両に搭載されるコンプレッサ640やブロアモータ620、630を備える。
ブロアモータ620、630は、鉄道車両の台車3に搭載された走行用モータM1~M4を冷却する送風機のモータであり、インバータと、インバータの直流入力端に接続されたコンデンサ(第3コンデンサ)C4、C5と、を備えている。インバータは、例えば、バッテリ装置200から供給された電力を三相交流電力に変換して負荷に供給する補機用電力変換装置である。
【0059】
コンプレッサ640は、ブレーキコンプレッサであり、インバータと、インバータの直流入力端に接続されたコンデンサ(第3コンデンサ)C6と、を備えている。インバータは、例えば、バッテリ装置200から供給された電力を三相交流電力に変換して負荷に供給する補機用電力変換装置である。
【0060】
上記電力変換システムにおいて、バッテリ装置200は、補機群600の電源として機能することができる。
例えば、接触器BLB1、BLB2、CHKが閉じた状態(導通状態)であり、接触器BatDK1、BatDK2、BatCK1、BatCK2が開いた状態(遮断状態)であるとき、組電池BTの正極端子は第3端子T23と電気的に接続され、負極端子は第4端子T24と電気的に接続される。これにより、バッテリ装置200は、第3端子T23および第4端子T24に接続された補機群600へ直流電力を供給することができる。
【0061】
また、バッテリ装置200は、直流負荷LDCおよび交流負荷LACの電源として機能することができる。
例えば、接触器BLB1、BLB2、BatCK1、BatCK2、CHKが閉じた状態(導通状態)であり、接触器BatDK1、BatDK2が開いた状態(遮断状態)であるとき、組電池BTの正極端子は第5端子T25と電気的に接続され、負極端子は第6端子T26と電気的に接続される。すなわち、バッテリ装置200は、第5端子T25および第6端子T26を介して補助電源用電力変換装置100のチョッパ回路150へ直流電力を供給することができる。チョッパ回路150は、バッテリ装置200から供給された直流電力の電圧を所定の値に変換し、負荷用直流-交流電力変換部120へ直流電力を供給する。これにより、バッテリ装置200から出力された直流電力が変換され、直流負荷LDCおよび交流負荷LACへ電源を供給することができる。
【0062】
また、バッテリ装置200は、走行用モータM1~M4の電源として機能することができる。
例えば、接触器BLB1、BLB2、BatDK1、BatDK2、CHKが閉じた状態(導通状態)であり、接触器BatCK1、BatCK2が開いた状態(遮断状態)であるとき、組電池BTの正極端子は第1端子T21を介して走行用電力変換装置300の第1端子T31と電気的に接続され、負極端子は第2端子T22を介して走行用電力変換装置300の第2端子T32と電気的に接続される。すなわち、バッテリ装置200は、第1端子T21および第2端子T22を介して、走行用電力変換装置300の走行用直流-交流電力変換部330へ直流電力を供給することができる。これにより、バッテリ装置200から出力された直流電力が変換され、走行用モータM1~M4へ電源を供給することができる。
【0063】
上記のように、バッテリ装置200は、例えば鉄道車両が無電区間を走行している場合や停電時などに非常走行を行うときなどに、走行用直流-交流電力変換部330、負荷用直流-交流電力変換部120および補機群600に組電池BTの放電電力を供給することが可能である。
【0064】
次に、本実施形態におけるバッテリ装置の異常検知と補助電源用電力変換装置の異常検知との関係について、説明する。本実施形態では、バッテリ装置200は、走行用電力変換装置300と、補助電源用電力変換装置100と、補機群600との電源として用いられることから、組電池BT自体は接地をしていない。このため、組電池BTの地絡検知は行えず、電流検出器220により漏電検知を行う。
【0065】
バッテリ装置200は搭載された複数の構成を収容した筐体を備え、筐体が接地されている。例えば、バッテリ装置200の組電池BTから漏電した場合、バッテリ装置200の筐体を介して組電池BTから接地端子へ電流が流れると、補助電源用電力変換装置200の接地された三次巻線102を介して負荷用交流-直流電力変換部110およびチョッパ回路150、接触器BatCK2、BLB2を介して組電池BTまで電流が流れることがある。
【0066】
このとき、バッテリ制御部210にて、電流検出器220にて検出された正側主回路と負側主回路とに流れる電流値(若しくは電流相当値)を比較することにより、組電池BTから漏電していることを検出することが可能である。例えば、正側主回路の電流検出値は組電池BTから所定の充電電流や放電電流の値となり、負側主回路の電流検出値は組電池BTからの漏電電流の値を含んだ値となる。バッテリ制御部210は、組電池BTの現在の充電および放電の制御状況と、正側主回路と負側主回路との電流検出値とに基づいて、漏電が生じているか否かを判断することができる。
【0067】
バッテリ制御部210は、組電池BTから漏電していると判断したときには、接触器BLB1、BLB2を開いた状態(遮断状態)とし、組電池BTを主回路から電気的に切り離す。
【0068】
なお、負荷電力制御部170は周期的に地絡検知を行い、補助電源用電力変換装置200が正常に接地されているか否か(地絡しているか否か)判断している。地絡していると判断したときには、負荷電力制御部170は、例えば補助電源用電力変換装置200の動作を停止する。
【0069】
このため、例えばバッテリ装置200にて上記経路にて漏電が発生すると、負荷電力制御部170における地絡検知でも異常が検出されることとなる。つまり、バッテリ制御部210にて漏電が検出されるよりも前に負荷電力制御部170にて地絡が検出されると、補助電源用電力変換装置200には異常がないにもかかわらず補助電源用電力変換装置200の動作が停止し、直流負荷LDCおよび交流負荷LACへの電力供給が停止することとなる。
【0070】
そこで、本実施形態の電力変換システムでは、バッテリ制御部210における漏電検知の周期を、負荷電力制御部170における地絡検知の周期よりも短くし、負荷電力制御部170にて地絡が検知されるよりも前にバッテリ制御部210にて組電池BTの漏電を検出し、組電池BTを主回路から電気的に切り離すこととしている。なお、例えば負荷電力制御部170における地絡検知の周期が0.5秒であるとき、バッテリ制御部210における漏電検知の周期は0.5秒よりも短く設定される。
【0071】
このことにより、バッテリ装置200における異常により、電力変換システムの他の機器まで停止させることがなく、正常に動作可能である機器が異常停止すること回避して電力変換システムの信頼性を担保することができる。
【0072】
すなわち、本実施形態によれば、バッテリ装置の異常が発生したときに、他の正常な機器の動作を担保する電力変換システム10を提供することができる。
【0073】
図3は、実施形態の電力変換システムの他の構成例を概略的に示す図である。
図3に示す電力変換システム10は、バッテリ装置200の構成が
図2に示す構成と異なっている。
図3に示すバッテリ装置200では、接触器BLB1と並列に接続した経路において、接触器CHKと抵抗器CHReとが直列に接続されている。すなわち、組電池BTの正極端子と第1端子T21との間、組電池BTの正極端子と第3端子T23との間、および、組電池BTの正極端子と第5端子T25との間には、それぞれ、接触器BLB1を介して接続される経路(第1電力線)と、接触器CHKおよび抵抗器CHReを介して接続される経路(第2電力線)とが設けられている。接触器CHKおよび接触器BLB1により、電力供給経路を第1電力線と前記第2電力線とで切り替えることが可能である。
【0074】
また
図3に示すバッテリ装置200では、電流検出器220は、例えば、接触器CHKと接触器BatCK1および接触器BatDK1との間の正側主回路と、接触器BLB2と接触器BatCK2および接触器BatDK2との間の負側主回路との電流を検出する。
上記バッテリ装置200の構成以外は、
図3に示す電力変換システム10は
図2に示す電力変換システム10と同様の構成である。
【0075】
図3に示す電力変換システム10において、バッテリ装置200は、補機群600の電源として機能することができる。
例えば、接触器BLB1、BLB2が閉じた状態(導通状態)であり、接触器BatDK1、BatDK2、BatCK1、BatCK2、CHKが開いた状態(遮断状態)であるとき、組電池BTの正極端子は第3端子T23と電気的に接続され、負極端子は第4端子T24と電気的に接続される。これにより、バッテリ装置200は、第3端子T23および第4端子T24に接続された補機群600へ直流電力を供給することができる。
【0076】
また、バッテリ装置200は、直流負荷LDCおよび交流負荷LACの電源として機能することができる。
例えば、接触器BLB1、BLB2、BatCK1、BatCK2が閉じた状態(導通状態)であり、接触器BatDK1、BatDK2、CHKが開いた状態(遮断状態)であるとき、組電池BTの正極端子は第5端子T25と電気的に接続され、負極端子は第6端子T26と電気的に接続される。すなわち、バッテリ装置200は、第5端子T25および第6端子T26を介して補助電源用電力変換装置100のチョッパ回路150へ直流電力を供給することができる。チョッパ回路150は、バッテリ装置200から供給された直流電力の電圧を所定の値に変換し、負荷用直流-交流電力変換部120へ直流電力を供給する。これにより、バッテリ装置200から出力された直流電力が変換され、直流負荷LDCおよび交流負荷LACへ電源を供給することができる。
【0077】
また、バッテリ装置200は、走行用モータM1~M4の電源として機能することができる。
例えば、接触器BLB1、BLB2、BatDK1、BatDK2が閉じた状態(導通状態)であり、接触器BatCK1、BatCK2、CHKが開いた状態(遮断状態)であるとき、組電池BTの正極端子は第1端子T21を介して走行用電力変換装置300の第1端子T31と電気的に接続され、負極端子は第2端子T22を介して走行用電力変換装置300の第2端子T32と電気的に接続される。すなわち、バッテリ装置200は、第1端子T21および第2端子T22を介して、走行用電力変換装置300の走行用直流-交流電力変換部330へ直流電力を供給することができる。これにより、バッテリ装置200から出力された直流電力が変換され、走行用モータM1~M4へ電源を供給することができる。
【0078】
上記のように、バッテリ装置200は、例えば鉄道車両が無電区間を走行している場合や停電時などに非常走行を行うときなどに、走行用直流-交流電力変換部330、負荷用直流-交流電力変換部120および補機群600に組電池BTの放電電力を供給することが可能である。
【0079】
バッテリ装置200は、例えば、走行用モータM1~M4と補機群600との両方の電源として機能することができる。
例えば、停電時などに鉄道車両が非常走行を行うとき、バッテリ装置200は、走行用モータM1~M4と補機群600とに電力を供給して、鉄道車両を安全な場所まで移動させることができる。
【0080】
次に、本実施形態におけるバッテリ装置の異常検知と補助電源用電力変換装置の異常検知との関係について、説明する。本実施形態では、バッテリ装置200は、走行用電力変換装置300と、補助電源用電力変換装置100と、補機群600との電源として用いられることから、組電池BT自体は接地をしていない。このため、組電池BTの地絡検知は行えず、電流検出器220により漏電検知を行う。
【0081】
バッテリ装置200は搭載された複数の構成を収容した筐体を備え、筐体が接地されている。例えば、バッテリ装置200の組電池BTから漏電した場合、バッテリ装置200の筐体を介して組電池BTから接地端子へ電流が流れると、補助電源用電力変換装置200の接地された三次巻線102を介して負荷用交流-直流電力変換部110およびチョッパ回路150、接触器BatCK2、BLB2を介して組電池BTまで電流が流れることがある。
【0082】
このとき、バッテリ制御部210にて、電流検出器220にて検出された正側主回路と負側主回路とに流れる電流値(若しくは電流相当値)を比較することにより、組電池BTから漏電していることを検出することが可能である。例えば、正側主回路の電流検出値は組電池BTから所定の充電電流や放電電流の値となり、負側主回路の電流検出値は組電池BTからの漏電電流の値を含んだ値となる。バッテリ制御部210は、組電池BTの現在の充電および放電の制御状況と、正側主回路と負側主回路との電流検出値とに基づいて、漏電が生じているか否かを判断することができる。
【0083】
バッテリ制御部210は、組電池BTから漏電していると判断したときには、接触器BLB1、BLB2を開いた状態(遮断状態)とし、組電池BTを主回路から電気的に切り離す。
【0084】
なお、負荷電力制御部170は周期的に地絡検知を行い、補助電源用電力変換装置200が正常に接地されているか否か(地絡しているか否か)判断している。地絡していると判断したときには、負荷電力制御部170は、例えば補助電源用電力変換装置200の動作を停止する。
【0085】
このため、例えばバッテリ装置200にて上記経路にて漏電が発生すると、負荷電力制御部170における地絡検知でも異常が検出されることとなる。つまり、バッテリ制御部210にて漏電が検出されるよりも前に負荷電力制御部170にて地絡が検出されると、補助電源用電力変換装置200には異常がないにもかかわらず補助電源用電力変換装置200の動作が停止し、直流負荷LDCおよび交流負荷LACへの電力供給が停止することとなる。
【0086】
そこで、本実施形態の電力変換システムでは、バッテリ制御部210における漏電検知の周期を、負荷電力制御部170における地絡検知の周期よりも短くし、負荷電力制御部170にて地絡が検知されるよりも前にバッテリ制御部210にて組電池BTの漏電を検出し、組電池BTを主回路から電気的に切り離すこととしている。なお、例えば負荷電力制御部170における地絡検知の周期が0.5秒であるとき、バッテリ制御部210における漏電検知の周期は0.5秒よりも短く設定される。
【0087】
このことにより、バッテリ装置200における異常により、電力変換システムの他の機器まで停止させることがなく、正常に動作可能である機器が異常停止すること回避して電力変換システムの信頼性を担保することができる。
【0088】
すなわち、本実施形態によれば、バッテリ装置の異常が発生したときに、他の正常な機器の動作を担保する電力変換システム10を提供することができる。
【0089】
また、負荷用交流-直流電力変換部110と交流負荷用直流-交流電力変換部120との間にバッテリ装置200を接続し、バッテリ装置200に補機群600を接続することで、バッテリ装置200を補機群600の電源として機能させることができる。したがって、電力変換システム10によれば、鉄道車両が無電区間を走行している場合や停電時において、集電装置400から電力が供給されなくても、バッテリ装置200から補機群600に電力を供給し続けることができる。この結果、電力変換システム10によれば、補機群600に供給される電力の低下を抑制することができる。
【0090】
さらに、電力変換システム10によれば、負荷用交流-直流電力変換部110と交流負荷用直流-交流電力変換部120との間にバッテリ装置200を接続することで、メイントランスの負荷用巻線から負荷用交流-直流電力変換部110に供給される電力が低下した場合に、電力の低下に対応した電力をバッテリ装置200から放電することでバッテリ装置200から負荷用直流-交流電力変換部120に放電電力を供給することができる。これにより、電力変換システム10によれば、鉄道車両の交流負荷LACおよび直流負荷LDCに供給される電力の低下を抑制することができる。
【0091】
また、電力変換システム10によれば、負荷用交流-直流電力変換部110は複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路を含むので、負荷用交流-直流電力変換部110から出力される直流電力を安定化させることができる。すなわち、負荷用交流-直流電力変換部110によれば、ダイオードを用いた整流器よりも時間変化が少ない直流電力に変換することができる。これにより、電力変換システム10によれば、負荷用交流-直流電力変換部110から負荷用直流-交流電力変換部120への直流電力が低下した場合に、バッテリ装置200から負荷用直流-交流電力変換部120に速やかに放電電力を供給することができる。
【0092】
さらに、電力変換システム10によれば、バッテリ装置200から放電電力を供給することができるので、コンデンサC3の容量を、鉄道車両が無電区間を通過する際に交流負荷LACおよび直流負荷LDCに供給する電力を補償するための容量を考慮して大容量化する必要がない。
【0093】
さらに、電力変換システム10によれば、負荷用交流-直流電力変換部110から出力される直流電力をチョッパ回路150により制御することで安定化させ、負荷用交流-直流電力変換部110から出力された電力をバッテリ装置200に供給することで、バッテリ装置200における充電抵抗に大きな負荷を与えることなく、バッテリ装置200を充電することができる。
【0094】
さらに、電力変換システム10によれば、非常時においてバッテリ装置200を放電させて、直流電力を走行用直流-交流電力変換部330に供給することができる。これにより、電力変換システム10によれば、非常時に、バッテリ装置200の放電電力を使用して走行用モータM1~M4を駆動させることで、鉄道車両を走行させることができる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
M1~M4…走行用モータ、C1-C6…コンデンサ、CHK…第1接触器、CHRe…抵抗器、100…補助電源用電力変換装置、102、302、500…メイントランス、110…負荷用交流-直流電力変換部、120…負荷用直流-交流電力変換部、130…交流負荷用直流-交流電力変換部、200…バッテリ装置、220…電流検出器、BT…組電池、300…走行用電力変換装置、320…走行用交流-直流電力変換部、330…走行用直流-交流電力変換部、400…集電装置、600…補機群。