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特許7301698モータ、モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】モータ、モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 29/06 20060101AFI20230626BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
H02K29/06
G01B7/30 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019171213
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021048742
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】村上 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠
(72)【発明者】
【氏名】関 徹也
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-032349(JP,A)
【文献】特開2013-050172(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147757(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 29/06
H02P 6/16
H02K 11/21
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転させるモータ本体と、前記回転軸の回転を検出するセンサユニットと、を備えるモータであって、
前記センサユニットは、
前記回転軸に回転可能に支持されている第1マグネットと、
前記第1マグネットの回転位置により変化する磁極及び磁力に反応する第2マグネットと、
前記第2マグネットの反応に応じて歪みが発生する起歪部と、
前記起歪部の歪みに応じた歪み信号を出力する歪みセンサと、
を有していて、
前記モータ本体は、
前記回転軸と前記回転軸に回転可能に支持されているロータマグネットとを含むロータと、
前記ロータに対して径方向に対向して配置されているステータと、
前記ロータ及び前記ステータを収容しているケース部と、
を有していて、
前記第2マグネットは、前記第1マグネットの径方向外周側に設けられていて、
前記起歪部は、
前記第2マグネットの径方向外周側から中心に向かって延びるように形成されていて、磁極変化に応じて歪みが生じる起歪部本体と、
前記起歪部本体の径方向外周側の外周端部を前記ケース部に支持する支持部と、
を有していて、
前記歪みセンサは、前記起歪部本体の前記外周端部に配置されている、モータ。
【請求項2】
前記歪みセンサは、前記起歪部における歪みの発生箇所に設けられている、
請求項に記載のモータ。
【請求項3】
前記起歪部は、前記第2マグネットとは別体に構成されている、
請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第2マグネットは、前記回転軸の径方向に着磁されている、
請求項1乃至のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記第1マグネットは、磁極が前記回転軸を中心として周方向に対して等分に配置されている、
請求項1乃至のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記第1マグネットは、磁極が径方向の外周部において前記回転軸の中心に向かって対向する位置に配置されている、
請求項1乃至のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
モータが備える前記回転軸の回転位置を示す位置信号を出力する回転位置信号処理回路と、
前記位置信号に応じて前記モータの回転数を制御する制御信号を出力する制御部と、
を備えるモータ駆動制御装置であって、
前記モータは、請求項1乃至のいずれか1項に記載のモータであり、
前記回転位置信号処理回路は、前記モータの前記センサユニットが有している前記歪みセンサが出力する歪み信号を処理して前記位置信号を出力する、
モータ駆動制御装置。
【請求項8】
前記回転位置信号処理回路は、前記回転軸を中心として周方向に対して等分に配置されている前記第1マグネットの磁極の周方向における位置に応じて変化する前記歪み信号を処理して前記位置信号を出力する、
請求項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項9】
モータが備える前記回転軸の回転位置を示す位置信号を出力する回転位置信号処理ステップと、
前記位置信号に応じて前記モータの回転数を制御する制御信号を出力する制御ステップと、
を実行するモータ駆動制御方法であって、
前記モータは、請求項1乃至のいずれか1項に記載のモータであり、
前記回転位置信号処理ステップでは、前記モータの前記センサユニットが有している前記歪みセンサが出力する歪み信号を処理して前記位置信号を出力する、
モータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータにホールIC等のホールセンサを備えて回転軸の位置や速度などモータの回転軸の動作情報を検出し、検出された回転軸の動作情報に基づいて駆動制御装置がモータを駆動制御する方法が知られている。しかし、モータの回転軸の位置や速度を検出するために用いられるホールセンサは、振動や衝撃などへの耐久性(耐環境性)に改善の余地があった。
【0003】
そこで、モータの回転軸の動作を検出するセンサとして、ホールセンサよりも耐環境性が優れると考えられている歪みゲージなどの歪みを検出するセンサ(以下、単に「歪みセンサ」という)を備えるモータが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/147757号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のモータ駆動システムは、固定子に歪みセンサが取り付けられている。ここで、モータは、マグネットが回転することで固定子が引き付けられ、歪みが発生する。特許文献1のモータ駆動システムにおいて、歪みセンサは、この歪みに応じて電気信号を出力する。
【0006】
しかしながら、特許文献1のモータ駆動システムにおいて、歪みセンサが出力する電気信号は、例えば、マグネットが2極の場合、1回転(1周期)につき2パルスである。このため、特許文献1のモータ駆動システムは、1回転につき1パルスが出力され、且つ、極性も特定できるホールセンサと同じようなモータの回転軸の動作情報を検出するために用いるのは難しかった。
【0007】
本発明は、上述の課題を一例とするものであり、回転軸の動作を検出可能な歪みセンサを備えるモータ、モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータは、回転軸を回転させるモータ本体と、前記回転軸の回転を検出するセンサユニットと、を備えるモータであって、前記センサユニットは、前記回転軸に回転可能に支持されている第1マグネットと、前記第1マグネットの回転位置に応じて変化する磁極及び磁力に反応する第2マグネットと、前記第2マグネットの反応に応じて歪みが発生する起歪部と、前記起歪部の歪みに応じた歪み信号を出力する歪みセンサと、を有している。
【0009】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記第2マグネットは、前記第1マグネットの径方向外周側に設けられている。
【0010】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記起歪部は、前記第2マグネットの径方向外周側に設けられていて、前記歪みセンサは、前記起歪部における歪みの発生箇所に設けられている。
【0011】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記起歪部は、前記第2マグネットとは別体に構成されている。
【0012】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記モータ本体は、前記回転軸と前記回転軸に回転可能に支持されているロータマグネットとを含むロータと、前記ロータに対して径方向に対向して配置されているステータと、前記ロータ及び前記ステータを収容しているケース部と、を有していて、前記起歪部は、径方向外周側から中心に向かって延びるように形成されていて、磁極変化に応じて歪みが生じる起歪部本体と、前記起歪部本体の径方向外周側の外周端部を前記ケース部に支持する支持部と、を有している。
【0013】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記歪みセンサは、前記起歪部本体の前記外周端部に配置されている。
【0014】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記第2マグネットは、前記回転軸の径方向に着磁されている。
【0015】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記第1マグネットは、磁極が前記回転軸を中心として周方向に対して等分に配置されている。
【0016】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記第1マグネットは、磁極が径方向の外周部において前記回転軸の中心に向かって対向する位置に配置されている。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータ駆動制御装置は、モータが備える回転軸の回転位置を示す位置信号を出力する回転位置信号処理回路と、前記位置信号に応じて前記モータの回転数を制御する制御信号を出力する制御部と、を備え、前記回転位置信号処理回路は、前記モータのセンサユニットが有している歪みセンサが出力する歪み信号を処理して前記位置信号を出力する。
【0018】
本発明の一態様に係るモータ駆動制御装置において、前記回転位置信号処理回路は、前記回転軸を中心として周方向に対して等分に配置されている前記第1マグネットの磁極の周方向における位置に応じて変化する前記歪み信号を処理して前記位置信号を出力する。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータ駆動制御方法は、モータが備える回転軸の回転位置を示す位置信号を出力する回転位置信号処理ステップと、前記位置信号に応じて前記モータの回転数を制御する制御信号を出力する制御ステップと、を実行し、前記回転位置信号処理ステップでは、前記モータのセンサユニットが有している歪みセンサが出力する歪み信号を処理して前記位置信号を出力する。
【0020】
本発明に係るモータによれば、回転軸の動作を検出可能な歪みセンサを備えるモータ、モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係るモータの構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示すモータの側面図である。
図3図1に示すモータの上面図である。
図4図1に示すモータの側面から見たA-A断面図である。
図5図1に示すモータのセンサユニットと回転軸の回転位置との関係を示す模式図である。
図6図1に示すモータのセンサユニットが有する歪みセンサが出力する歪み量の波形と回転軸の回転位置との関係を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係るモータ、モータ駆動制御装置、モータ駆動制御方法について図面を参照しながら説明する。
【0023】
[モータの構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ1の構成を概略的に示す斜視図である。図2は、モータ1の側面図である。また、図3は、モータ1の上面図である。図4は、モータ1の側面から見たA-A断面図である。
【0024】
以下の説明では、便宜上、軸線x方向において矢印a方向を上側aとし、矢印b方向を下側bとする。また、軸線xに垂直な径方向において、軸線xから遠ざかる方向(図4の矢印c方向)を外周側cとし、軸線xに向かう方向(図4の矢印d方向)を内周側dとする。以下の説明では、図2に示す方向をモータの側面とする。また、以下の説明では、図3に示すようにモータを上側から下側に向かって見る方向を上面、下側から上側に向かって見る方向を底面とする。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るモータ1は、回転軸11を回転させるモータ本体10と、回転軸11の回転を検出するセンサユニット20と、を備える。図1及び図3に示すように、センサユニット20は、回転軸11に回転可能に支持されている第1マグネット211と、第1マグネット211が発する磁力に反応する第2マグネット212と、第1マグネット211と第2マグネット212とが反応する磁力に応じて歪みが発生する起歪部22と、起歪部の歪みに応じた歪み信号を出力する歪みセンサ23と、を有している。以下、モータ1の構成及び動作を具体的に説明する。
【0026】
[モータ本体の構成]
図4に示すように、モータ本体10は、例えば、回転軸11と、回転軸11に取り付けられているロータマグネット12とがロータを構成するインナーロータ型のブラシレスDC(Direct Current)モータである。モータ1において、モータ本体10は、上述した回転軸11及びロータマグネット12の他に、ステータ13、軸受部14a,14b、及び、ケース部15を有している。
【0027】
ロータマグネット12は、回転軸11に対して回転可能に支持されている。ステータ13は、ロータマグネット12を含むロータに対して径方向外周側に配置されている。ステータ13は、その内周面がロータマグネット12の外周面と対向するように配置されている。
【0028】
ステータ13は、ケース部15の例えば、下側bに固定されている。ステータ13は、具体的には、いずれも不図示の複数の電磁鋼板を積層して形成されたステータコアにインシュレータを介して巻回されたコイルを備えている。
【0029】
図4に示すように、軸受部14a,14bは、回転軸11の軸線x方向に離間して配置されている一対の軸受により構成されている。軸受部14aは、回転軸11の上側aを支持する。軸受部14bは、回転軸11の軸受部14aよりも下側bを支持する。
【0030】
軸受部14a,14bは、いずれも内輪141a,141b、外輪142a,142b、及び、転動体143a,143bを有している。内輪141a,141bは、回転軸11の外周面に装着可能な内周面を有する環状の部材である。内輪141a,141bは、回転軸11の外周面に装着されることにより、回転軸11とともに回転可能である。外輪142a,142bは、内輪141a,141bの外周側cに設けられている。外輪142a,142bは、内輪141a,141bと同軸で内輪141a,141bよりも大径の環状の部材である。転動体143a,143bは、内輪141a,141bと外輪142a、142bとの間に複数配置されている球状の部材である。
【0031】
図4に示すように、ケース部15は、ロータマグネット12を含むロータ及びステータ13を収容している。ケース部15は、第1ケース部151と第2ケース部152とを有する。第1ケース部151は、軸受部14a,14bを介して回転軸11を収容するとともにモータ本体10のステータ13を支持する。第2ケース部152は、第1ケース部151とセンサユニット20の後述する起歪部22とを支持する。
【0032】
第1ケース部151は、例えば回転軸11及び軸受部14a,14bを収容する軸受ハウジング153と、ステータ13を支持するステータ支持部154とを有する。軸受ハウジング153は、第2ケース部152の軸線xと同軸または略同軸の中心軸に支持される中空の筒状部分である。軸受ハウジング153は、一対の軸受部14a,14bを介して回転軸11を回転可能に支持している。軸受ハウジング153は、軸線x方向の一端(上側a)に軸受部14aを支持する軸受支持部155aと、軸線x方向の他端(下側b)に軸受部14bを支持する軸受支持部155bとを備える。軸受支持部155a,155bは、それぞれ、軸受ハウジング153の内周面に形成されている。ステータ支持部154は、軸受支持部155bが設けられている軸受ハウジング153の軸線x方向の他端側(下側b)と連接して形成されている。ステータ支持部154は、軸受ハウジング153よりも径方向外周側に拡径されたような筒状または略円筒形状に形成されている。ステータ支持部154は、その下側bの内周面にステータ13が支持されている。
【0033】
第2ケース部152は、円筒形状または略円筒形状に形成されている第2ケース部本体156の軸線x方向における一方側(上側a)に、センサユニット20の起歪部22を支持するベース部157が形成されている。ベース部157は、軸線xに対応する位置に、回転軸11の一端部を挿通可能な軸孔部158が形成されている。また、第2ケース部152は、第2ケース部本体156の内周面に第1ケース部151の軸受ハウジング153を収容する軸受ハウジング収容部159を有する。
【0034】
なお、本実施の形態に係るモータ1は、インナーロータ型またはアウターロータ型、あるいはDCモータまたはACモータなどの種類、及び、相数、極数などの仕様に限定されない。
【0035】
[センサユニットの構成]
センサユニット20は、図1乃至図4に示すように、第1マグネット211が回転軸11に回転可能に支持されている。また、図3に示すように、センサユニット20は、歪みセンサ23が設けられている起歪部22が、上述したように第2ケース部152のベース部157に支持されている。
【0036】
図3に示すように、第1マグネット211は、径方向外周側に向かって磁束を出すように、着磁方向が中心の軸線xから外周側となるように構成されている。また、第1マグネット211は、N極とS極との2つの磁極(2極)が回転軸11を中心として周方向に対して、例えば、180°の範囲に区分して、等分に配置されている。つまり、第1マグネット211は、その外周部216において回転軸11の中心に向かって対向する位置にN極とS極との組み合わせが1組配置されている。なお、第1マグネット211の磁極の数は、上述の例に限定されず、2つの磁極の組み合わせが2組以上あってもよい。
【0037】
第1マグネット211は、例えば、回転軸11を中心とした円環状(ドーナツ状)の1つの磁石により形成されている。なお、第1マグネット211は、複数個、例えば、4つに分割されているものを組み合わせることにより径方向外周側にN極及びS極それぞれの磁束を発生していてもよい。
【0038】
第2マグネット212は、第1マグネット211の回転位置に応じて変化する磁極及び磁力に反応(吸引または反発)するような位置、例えば、第1マグネット211の径方向外周側に設けられている。第2マグネット212は、例えば、図3において第1マグネット211から離間している径方向外周側がS極、同じく図3において第1マグネット211に近接している径方向内周側がN極となるように、回転軸11の径方向に着磁されている。ここで、第2マグネット212の磁極は、径方向に着磁されているものであれば、内周側、つまり第2マグネット212の外周部216と近接している磁極がN極とS極とのいずれであってもよい。第2マグネット212は、上述のように第1マグネット211の回転位置に応じて変化する磁極および磁力に反応するものであるため、例えば、磁石により構成される。なお、第2マグネット212は、磁力を発することができればよいため、コイルによる電磁石により構成されていてもよい。
【0039】
起歪部22は、回転軸11の径方向外周側に、例えば、1個設けられている。具体的には、起歪部22は、回転軸11の中心に向かう位置に1個設けられている。歪みセンサ23は、起歪部22に設けられている。起歪部22は、起歪部本体221と、支持部222とを有する。図3において、破線は、起歪部22における、起歪部本体221として機能する部位を図示している。起歪部22は、起歪部本体221及び支持部222が、一体となって形成されている。起歪部22は、第2マグネット212の反応により歪みが生じうる材質であればよい。なお、起歪部22は、図1乃至図3に示したように磁石またはコイルによる電磁石により形成されている第2マグネット212とは別体で構成されているものには限定されず、例えば、起歪部22全体が磁石またはコイルによる電磁石により形成されているものであってもよい。また、起歪部本体221及び支持部222は、必ずしも一体に形成されている必要はなく、支持部222が起歪部本体221を支持する構造を有していれば、別体であってもよい。
【0040】
起歪部本体221は、支持部222の径方向外周側から回転軸11の中心に向かって延びるように形成されている。起歪部本体221は、上述のように、第1マグネット211が回転軸11とともに回転することにより、第1マグネット211の回転位置に応じた磁極および磁力の変化に応じて生じる第2マグネット212の反応によって歪みが生じるような材料により形成されている。起歪部本体221は、先端部224が第2マグネット212の一部、例えば、径方向外周側を収容することができるように、第2マグネット212の外形形状に対応した凹部が形成されている。なお、起歪部本体221の形状は、第2マグネット212の反応に応じて歪みを生じうる形状であれば、図1乃至図3などに示した形状には限定されない。さらに、起歪部22において、起歪部本体221の歪み方向は特に限定しない。
【0041】
支持部222は、起歪部本体221の径方向外周側の外周端部223をケース部15の第2ケース部152のベース部157に支持する。支持部222の形状は、起歪部本体221をモータ本体10側に固定可能であればよい。また、支持部222の形状は、上述のように円弧状または略円弧状に形成されているものに限定されない。なお、支持部222は、分割されて形成されている場合、ベース部157への取り付け位置を調整することにより、歪み出力の位相を調整することができる。
【0042】
歪みセンサ23は、起歪部22において第2マグネット212の反応に応じて歪みが生じる箇所、例えば、起歪部本体221の外周端部223に配置されている。歪みセンサ23は、具体的には、N極またはS極の磁力線の中心にあるときに、歪みが最大となるような位置に取り付けるのが望ましい。歪みセンサ23は、取り付けられている部材に生じる歪みを検出し、検出した歪みに応じて変化する電気信号を出力する歪みゲージ、圧電素子などのセンサである。
【0043】
なお、歪みセンサ23は、起歪部22において第2マグネット212の反応に応じて所望の歪みを生じる箇所に取り付ければよく、上述の箇所に限定されない。また、歪みセンサ23は、起歪部本体221に生じる歪みの方向により、取り付ける方向を合わせることが可能である。また、歪みセンサ23は、歪みに応じて変化する電気信号を出力することができれば歪みゲージに限定されない。また、センサユニット20において、取り付けられている起歪部及び歪みセンサの数は、1つに限定されず、例えば、周方向に所定の距離または角度離間した位置に複数個の起歪部及び歪みセンサが設けられているものであってもよい。
【0044】
[モータの動作]
次に、以上説明した構成を備えるモータ1の動作について説明する。
【0045】
モータ1は、駆動電流が流れることで、回転軸11が回転する。モータ1の回転軸11は、図1乃至図4に示すように、軸受ハウジング153に装着された一対の軸受部14a,14bによって回転可能に支持されている。センサユニット20の第1マグネット211は、回転軸11とともに回転可能に取り付けられている。このため、モータ1が駆動されることによって回転軸11が軸線xを中心に回転し、それに伴って第1マグネット211も軸線xを中心に回転する。
【0046】
図5は、モータ1のセンサユニット20と回転軸11の回転位置との関係を示す模式図である。図5は、モータ1が備えるモータ本体10の回転軸11、及び、センサユニット20のみを図示している。以下の説明において、センサユニット20の第2マグネット212のN極が第1マグネット211のN極に近接している状態を回転角θ=0°とする。
【0047】
図5に示すように、センサユニット20は、回転角θ=0°,360°のとき、第1マグネット211のN極の中点付近が、第2マグネット212のN極と径方向において対向している。このとき、第1マグネット211の径方向外周側から、N極の磁力が、起歪部22の起歪部本体221の先端部224に取り付けられている第2マグネット212に向かって発生している。第2マグネット212は、上述のように径方向内周側にN極が配置されているため、第1マグネット211のN極との間で反発し合う。起歪部本体221を含めて起歪部22は、第2マグネット212が第1マグネット211から受けた磁力により径方向外周側に向かって歪みが生じる。
【0048】
図6は、モータ1のセンサユニット20が有する歪みセンサ23が出力する歪み量εの波形と回転軸11の回転位置との関係を示す図である。図6において、横軸は、回転軸11及び第1マグネット211の回転角θを示している。また、図6において、縦軸は、歪みセンサ23が出力する歪み量εを示している。
【0049】
図6に示すように、歪みセンサ23は、上述した回転軸11に取り付けられている第1マグネット211の回転位置と第2マグネット212との位置の関係により、それぞれの位置に対応した歪み量を示す電気信号(歪み信号)を出力する。具体的には、回転角θ=0°,360°のとき、起歪部22に取り付けられている第2マグネット212が第1マグネット211に対して反発することにより、起歪部本体221に取り付けられている歪みセンサ23が出力する歪み量εは、延び方向(プラス方向)に最も大きな値となる。
【0050】
図5に示すように、回転角θ=180°のとき、第1マグネット211のS極の中点付近が、第2マグネット212のN極と径方向において対向している。このとき、第1マグネット211の外周部216から、S極の磁力が、先端部224に取り付けられている第2マグネット212に向かって発生している。第2マグネット212は、上述のように径方向内周側にN極が配置されているため、第1マグネット211のS極に吸引される。起歪部本体221を含めて起歪部22は、第2マグネット212が第1マグネット211から受けた磁力により径方向内周側に向かって歪みが生じる。
【0051】
図5に示すように、回転角θ=180°のとき、起歪部22に取り付けられている第2マグネット212が第1マグネット211に吸引されることにより、図6に示すように、起歪部本体221に取り付けられている歪みセンサ23が出力する歪み量εは、引っ張り方向(マイナス方向)に最も大きな値となる。
【0052】
センサユニット20は、回転角θ=90°,270°のとき、第1マグネット211のN極またはS極の中点付近が、周方向において起歪部本体221から離間した位置にある。このとき、第1マグネット211の径方向外周側から発生する強い磁極の磁力は、上記中間位置に向かって発生している。このため、起歪部22に取り付けられている第2マグネット212は、いずれも回転角θ=0°,180°,360°のときよりも弱い磁束により吸引または反発し、その磁束に応じた歪みが生じる。
【0053】
図6に示すように、モータ1は、歪みセンサ23が出力する歪み量εにより、回転軸11の1回転(360°)の1周期に応じてセンサユニット20が有する歪みセンサ23の歪み量εの変化を示す波形を取得することができる。この波形は、回転軸11が1回転するごとに1つのパルスを出力する信号、すなわち、歪み信号として認識することができる。また、この歪みセンサ23が出力する歪み量εの信号(歪み信号)は、第1マグネット211の等分に配置されている磁極の極数分に応じた信号である。
【0054】
図7は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置30の構成を概略的に示す機能ブロック図である。モータ駆動制御装置30は、以上説明したモータ1の駆動を制御する方法(モータ駆動制御方法)を実行する。モータ駆動制御装置30は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)のように、本発明に係るモータ駆動制御装置による下記の機能ブロックを実現するためのプログラムを含む各種コンピュータプログラムを実行可能な情報処理装置と、コンピュータプログラムやプログラム実行時のデータなどを記憶するROM(Read Only Memory)のような記憶装置とにより実現される。
【0055】
図7に示すように、モータ駆動制御装置30は、回転位置信号処理回路31と、制御部32と、PWM信号生成回路33と、モータ駆動部34とを備える。
【0056】
回転位置信号処理部として機能する回転位置信号処理回路31は、モータ1のセンサユニット20が有している歪みセンサ23が出力する、起歪部22に生じる歪み量εに応じた歪み信号を増幅する。また、回転位置信号処理回路31は、歪みセンサ23が出力したアナログ信号である歪み信号をA/D変換処理してデジタル信号にする。歪み信号は、上述のようにモータ1のモータ本体10が有する回転軸11が1回転するごとに、回転軸11を中心として周方向に対してN極とS極との磁極が等分に配置されている第1マグネット211の周方向における位置に応じて変化する。そして、歪み信号は、図6に示したように1回転ごとに1つの周期のパルス波形を出力する。そして、回転位置信号処理回路31は、この歪み信号に応じて回転軸11の回転位置を示す位置信号を出力する。
【0057】
制御部32は、位置信号に応じてモータ1の回転数を制御する制御信号(PWMデータ)、つまりモータ1を所望の回転数で駆動するのに必要なパルス幅を設定するための信号を出力する。
【0058】
PWM信号生成回路33は、制御部32から出力された制御信号に基づいてPWM信号をモータ駆動部34に出力する。
【0059】
モータ駆動部34は、PWM信号生成回路33から出力されたPWM信号に基づいてモータ1を駆動するための駆動信号を出力する。
【0060】
以上のように、モータ1は、モータ本体10の回転軸11の回転を検出するセンサユニット20が、回転軸11に回転可能に支持されている第1マグネット211と、第1マグネット211の回転位置に応じて変化する磁極及び磁力に反応する第2マグネット212と、第2マグネット212の反応に応じて歪みが発生する起歪部22と、起歪部22の歪みに応じた歪み信号を出力する歪みセンサ23とを有する。このように構成されているモータ1によれば、第1マグネット211及び第2マグネット212により、回転軸11の回転に応じて歪みセンサ23が取り付けられている起歪部22に、回転軸11の1回転に応じて1パルスの周期的な歪みが生じることで、回転軸11の位置、この位置に基づいて回転軸11の速度を検出することができる。また、モータ1によれば、回転軸11に取り付けられている第1マグネット211と、その径方向外周側に取り付けられ、第1マグネット211の回転位置に応じて変化する磁極及び磁力に応じて反応する第2マグネット212と、第2マグネット212の反応(反発または吸引)に応じて起歪部22に生じる歪みに応じて歪み信号を出力する歪みセンサ23という簡易な構成により、回転軸11の位置を検出することができる。
【0061】
モータ1は、第2マグネット212が取り付けられている起歪部22が、例えば、回転軸11の中心に向かって対向する位置に設けられていて、歪みセンサ23が、起歪部22に設けられている。このため、モータ1によれば、起歪部22に生じる歪み量εに応じた1つの歪み信号を検出することができる。
【0062】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータの構成を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0063】
例えば、第1マグネット211は、上述のように円環状に形成されているのが好ましいが、その形状は限定されない。
【0064】
また、例えば、起歪部22及び歪みセンサ23を複数有するように構成した場合は、複数の歪みセンサ23が出力した歪み量εの値を比較することで、歪み量εの値に含まれるノイズのキャンセル処理、あるいは歪み量εの値に対する温度補償処理などを行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1…モータ、10…モータ本体、11…回転軸、12…ロータマグネット、13…ステータ、14a,14b…軸受部、15…ケース部、20…センサユニット、22…起歪部、23…歪みセンサ、30…モータ駆動制御装置、31…回転位置信号処理回路、32…制御部、33…信号生成回路、34…モータ駆動部、141a,141b…内輪、142a,142b…外輪、143a,143b…転動体、151…第1ケース部、152…第2ケース部、153…軸受ハウジング、154…ステータ支持部、155a,155b…軸受支持部、156…第2ケース部本体、157…ベース部、158…軸孔部、159…軸受ハウジング収容部、211…第1マグネット、212…第2マグネット、216…外周部、221…起歪部本体、222…支持部、223…外周端部、224…先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7