(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】熱応力吸収機構
(51)【国際特許分類】
F16L 51/04 20060101AFI20230626BHJP
F16L 27/10 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
F16L51/04
F16L27/10 Z
(21)【出願番号】P 2019204887
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石山 洋
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-289391(JP,A)
【文献】特開昭59-121799(JP,A)
【文献】実開平02-120558(JP,U)
【文献】独国実用新案第202015106247(DE,U1)
【文献】実開昭58-054965(JP,U)
【文献】特開2011-115332(JP,A)
【文献】実開昭56-125578(JP,U)
【文献】実開昭56-058599(JP,U)
【文献】特開平04-285888(JP,A)
【文献】特開2000-120969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 51/04
F16L 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に配置され、設置時の配管温度と異なる温度の流体を流通させ、その流体流通時に熱的変形が発生する配管を有する熱応力吸収機構であって、
流体を流通させる水平直管に曲管を含むループ管を設け、このループ管と直交する方向から前記ループ管を接続支持する配管経路を有し、前記水平直管と前記配管経路はその一端が前記真空容器に直接または間接接続されている
熱応力吸収機構において、
前記ループ管は、
前記真空容器に接続される前記水平直管の一端とは反対側の他端部に、前記水平直管の軸をずらすように接続される第1エルボと、
前記水平直管に接続される前記第1エルボの一端とは反対側の他端に、第1直管を介して接続される第2エルボと、
前記第1直管に接続される前記第2エルボの一端とは反対側の他端に、第2直管を介して接続される第3エルボと、を含んで構成されることを特徴とする熱応力吸収機構。
【請求項2】
前記配管経路は前記ループ管と直交する方向に接続された直管から曲管を介して前記水平直管と同一方向に延設された直管を有することを特徴とする請求項1記載の熱応力吸収機構。
【請求項3】
前記ループ管
をエルボ径の異なるループで構成
することによって、配管の共振周波数を任意に設定できるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の熱応力吸収機構。
【請求項4】
前記配管は複数配置され互いの配管は前記真空容器に接続されている装置に点対称に接続配置されていることを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれか1項記載の熱応力吸収機構。
【請求項5】
複数配置された前記配管は互いの配管が前記真空容器内において点対称に配置されていることを特徴とする
請求項4記載の熱応力吸収機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、内外圧力差が大きく、かつ、高温または低温になる場合の相対熱膨張差が発生する配管に好適な熱応力吸収機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に真空容器内に配置された配管は
図6に示すように構成されている。ここで
図6に従来における真空容器内で高温高圧な流体が流れ、系外に高温高圧な流体が流出する配管の概略縦断面図を示す。
【0003】
図6に示すように真空容器1内に配置された配管2は真空境界蓋3と装置4を連結して構成されており、装置4から流出する高温高圧の流体は系外の装置に導かれ、その後装置4に還流するように構成されている。そして、内部に高温高圧の流体が流れると、周囲との温度差によって配管2には熱伸びが発生する。真空境界蓋3と装置4は支持板5でも連結しているため、配管2の熱伸びは拘束され、高い熱応力が発生することとなる。
【0004】
このように2つの装置の間で高温高圧流体を循環させる配管2において、搬送される流体の温度が経時的に変化する場合には、配管2には大きな熱応力及び熱膨張が発生する。従来においては、熱的な現象に起因する応力を少なくし、熱膨張を吸収するため、分岐管、ループ又は他の熱膨張吸収機構を備えた複雑な連結配管が開発されている。このような連結配管は、配管の長さと曲げ箇所が増大し、設備が大規模となっていた。さらに熱膨張吸収機構として、ベローズやサーマルスリーブが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-236895号公報
【文献】特開昭61-270586号公報
【文献】特開2015-102199号公報
【文献】実開昭63-193703号公報
【文献】特開2004-28435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来開発されているベローズは一般に薄肉であり、真空容器内で高温高圧または低温低圧な流体が流れる配管のように、内外圧力差が大きい場合にはベローズが破断する可能性があった。また、特に大口径で厚肉の剛性の高い配管の熱膨張等の熱応力を分岐管やループで吸収しようとすると、分岐や曲がり箇所が増大し配管が長くなり、設備が大規模となる課題があった。
【0007】
そこで、本発明では、設置時の配管温度と異なる温度の流体を流通させても省スペースで熱膨張、熱収縮等に伴う熱応力を吸収できる熱応力吸収機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記実施形態に係る熱応力吸収機構は、真空容器内に配置され、設置時の配管温度と異なる温度の流体を流通させ、その流体流通時に熱的変形が発生する配管を有する熱応力吸収機構であって、流体を流通させる水平直管に曲管を含むループ管を設け、このループ管のある平面と直交する方向から前記ループ管を接続支持する配管経路を有し、前記水平直管と前記配管経路はその一端が前記真空容器に直接または間接接続されている熱応力吸収機構において、前記ループ管は、前記真空容器に接続される前記水平直管の一端とは反対側の他端部に前記水平直管の軸をずらすように接続される第1エルボと、前記水平直管に接続される前記第1エルボの一端とは反対側の他端に第1直管を介して接続される第2エルボと、前記第1直管に接続される前記第2エルボの一端とは反対側の他端に第2直管を介して接続される第3エルボと、を含んで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態は、上述した課題を解決するためになされたものであり、設置時の配管温度と異なる温度の流体を流通させる配管において、下部直管にループを設け、このループのある平面と直交する方向からループを支持する直管を有する熱応力吸収機構によって、垂直方向に配設された直管が変形して配管全体の熱伸びによる変形が吸収され、熱伸びの変形による熱応力を配管全体に渡って抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】発明の実施形態に係る熱応力吸収機構を示す概略斜視図。
【
図2】
図1に示した熱応力吸収機構を適用した熱伸び変形計算例を示す説明図。
【
図3】
図2に示した熱伸び変形計算例から計算された熱応力を示す説明図。
【
図4】共振周波数調整例を示す熱応力吸収機構の概略斜視図。
【
図5】入口と出口の点対象配置例を示す熱応力吸収機構の概略斜視図。
【
図6】真空容器内で高温高圧な流体が流れる配管の従来例を示す概略縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に本発明の実施形態に係る熱応力吸収機構の概略斜視図を示す。なお、
図1において、
図4と同一部分には同一符号を付し、その構成の説明または図示を省略する。
【0013】
図1に示すように真空容器(図示せず)内には配管等で構成された熱応力吸収機構10が配置されている。
【0014】
図1において大口径厚肉の配管2の熱伸びを吸収するため、真空容器1内に配置され一端が装置4に接続され、真空容器1に直接または間接接続された水平直管11の他端部には45°エルボ12が水平直管11の軸をずらすために接続されている。この45°エルボ12の他端には直管13を介して90°エルボ14が45°エルボ12と逆に曲げられる形で接続されている。
【0015】
そして、その曲げRを調整するために直管15を介して180°エルボ16が接続され、水平直管11に対して水平な曲率を有する配管から構成されるループ管17を形成する。
【0016】
このループ管17は90°エルボ18によってループ管17の中心軸が存在する平面に対して垂直に立ち上げられ、垂直に配置された直管19に接続されている。この垂直に立ち上げられた直管19の端部には水平直管11と同一の方向に直管21を導く90°エルボ20が接続されている。この90°エルボ20に接続された直管21は真空境界蓋3に接続され、この真空境界蓋3を介して系外に延設されている。よって、ループ管17を直管19,21で支持する構成となっている。なお、必要に応じて直管11,19,21は耐震サポート22によって真空容器1の内壁に保持する構成としてもよい。
【0017】
なお、水平直管11の長さをl、外径をD、配管経路である直管19の長さをL、線膨張率をαとし、水平直管11がΔT℃上昇したときの水平直管11の熱伸びΔlは下記1式となる。
【0018】
Δl=l・α・ΔT (1)
【0019】
ここで、配管経路である直管19の片持ち梁がΔlだけ撓んだとすると、ヤング率をE、断面二次モーメントをI、荷重をWとして2式となる。
【0020】
Δl=(WL3)/(3EI) (2)
そして、配管経路である直管19に発生する曲げ応力σは断面係数をZ、モーメントM=WLとして3式となり、熱応力E・α・ΔTを2Sy以下とし、曲げ応力σを降伏応力Sy以下にすると(3D/L2)・l<=1となり
【0021】
√(3Dl)<=Lが導かれる。
σ=M/Z=(3EI・Δl/(L2))/((2/D)・I)
=((3DE)/(2L2))・Δl=(3D/(2L2))・E・l・α・ΔT (3)
【0022】
よって、水平直管11の長さをl、外径をD、前記配管経路19の長さをLとし、この配管経路の長さLを√(3Dl)以上に設定することによって配管の破断が発生せずに熱伸びによる変形をより有効に吸収することができる。
【0023】
図1に示した熱応力吸収機構10の作用を示す配管の熱伸びの変形計算結果の一例を、変形表示倍率を500倍として
図2に示し、
図3に
図2に示した熱伸び変形から計算された熱応力表示した説明図を示す。
【0024】
図2に示すようにループ管17が水平直管11の管軸方向に伸び、
図2に示した垂直方向に配設された直管19が変形して配管全体の熱伸びによる変形が吸収されている。そのため、
図3に示すように熱伸びの変形による熱応力は配管全体に渡って低くなっている。
【0025】
よって、内外圧力差が大きく高温になる配管において、水平直管11にループ管17を設け、このループ管17のある平面と直交する方向からループ管17を支持する直管19を有する熱応力吸収機構10によって、垂直方向に配設された直管19が変形して配管全体の熱伸びによる変形が吸収され、熱伸びの変形による熱応力を配管全体に渡って抑制することができる。
【0026】
また、
図1と同一の構成部分に同一の符号を付した
図4に示すように90°エルボ30と180°エルボ31の径を
図1に示す90°エルボ14および180°エルボ16の径と異なるループ管32にすることによって、配管の共振周波数を任意に設定し、熱応力吸収機構等の装置全体の共振を防ぐように設定することも可能である。
【0027】
次に、
図5に入口と出口の点対象配置例を示す熱応力吸収機構の変形例の斜視図を示す。なお、
図5において
図1と同一部分には同一符号を付してその部分の構成の説明を省略する。
【0028】
図5に示すように真空容器内に接続配置された装置4に接続される高温高圧な流体が図中矢印方向に流れる配管2の入口40と出口41を点対象に配置し、また複数配置された配管2の配置も真空容器内において点対象に配置されている。この配管構成によって、複数配管を配置した場合においても省スペースで熱膨張を吸収することができる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0030】
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
【0031】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
1…真空容器、2…配管、3…真空境界蓋、4…装置、5…支持板、10…熱応力吸収機構、11…水平直管、12…45°エルボ、13…直管、14…90°エルボ、15…直管、16…180°エルボ、17…ループ管、18…90°エルボ、19…直管、20…90°エルボ、21…直管、22…耐震サポート、30…90°エルボ、31…180°エルボ、32…ループ管、40…入口、41…出口。