(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/02 20060101AFI20230626BHJP
E06B 7/04 20060101ALI20230626BHJP
E06B 7/10 20060101ALI20230626BHJP
E06B 7/082 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
E06B7/02
E06B7/04
E06B7/10
E06B7/082
(21)【出願番号】P 2019224957
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大浦 豊
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 幸康
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-209876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ガラスと内側ガラスと整流体とを備え、室外空間から外側ガラスと内側ガラスとの間の中間層に通じる室外側通気部と、中間層から室内空間に通じる室内側通気部を有し、
室外側通気部は、建具の左右方向の全幅のうちの一部の領域のみに設けてあり、整流体は、中間層に設けてあり、室外側通気部からの空気を下方及び左右方向に
伝わらせて導くものであり、
室外側通気部のあるところでは整流体により空気が下方に導かれ、室外側通気部のないところでは整流体により空気が左右方向に導かれてから下方に導かれ、室外と連通して外側ガラスの内側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層の端部で折り返し、室内と連通して内側ガラスの外側面に沿って他方向に空気が流れることで、室内から室外に逃げる熱を回収するか、室外から室内に入ってくる熱を室外に捨てることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気を行いつつ熱の出入りを少なくできる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の室内環境は、空調設備で制御していたが、窓からの熱の出入りが多く電気代がかかるため、経済的に優れたものが求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑えることのできる建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による建具は、外側ガラスと内側ガラスと整流体とを備え、室外空間から外側ガラスと内側ガラスとの間の中間層に通じる室外側通気部と、中間層から室内空間に通じる室内側通気部を有し、室外側通気部は、建具の左右方向の全幅のうちの一部の領域のみに設けてあり、整流体は、中間層に設けてあり、室外側通気部からの空気を下方及び左右方向に伝わらせて導くものであり、室外側通気部のあるところでは整流体により空気が下方に導かれ、室外側通気部のないところでは整流体により空気が左右方向に導かれてから下方に導かれ、室外と連通して外側ガラスの内側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層の端部で折り返し、室内と連通して内側ガラスの外側面に沿って他方向に空気が流れることで、室内から室外に逃げる熱を回収するか、室外から室内に入ってくる熱を室外に捨てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明による建具は、外側ガラスと内側ガラスと整流体とを備え、室外空間から外側ガラスと内側ガラスとの間の中間層に通じる室外側通気部と、中間層から室内空間に通じる室内側通気部を有し、室外側通気部は、建具の左右方向の全幅のうちの一部の領域のみに設けてあり、整流体は、中間層に設けてあり、室外側通気部からの空気を下方及び左右方向に伝わらせて導くものであり、室外側通気部のあるところでは整流体により空気が下方に導かれ、室外側通気部のないところでは整流体により空気が左右方向に導かれてから下方に導かれ、室外と連通して外側ガラスの内側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層の端部で折り返し、室内と連通して内側ガラスの外側面に沿って他方向に空気が流れることで、室内から室外に逃げる熱を回収するか、室外から室内に入ってくる熱を室外に捨てることで、窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑えることができる。整流体が室外側通気部からの空気を下方及び左右方向に伝わらせて導くものであり、室外側通気部のあるところでは整流体により空気が下方に導かれ、室外側通気部のないところでは整流体により空気が左右方向に導かれてから下方に導かれることで、室外側通気部が建具の左右方向の一部のみに設けてある場合であっても、空気を左右方向の全体に流通させ、上記した窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑える効果を効率よく発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の建具の第1実施形態を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の建具の第2実施形態を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の建具の第3実施形態を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の建具の第4実施形態を示す縦断面図である。
【
図7】本発明の建具の第5実施形態を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の建具の第6実施形態を示す縦断面図である。
【
図11】同建具の縦枠と下枠とのコーナー部の室外側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~3は、本発明の建具の第1実施形態を示している。この建具は、
図1,2に示すように、建物の窓開口部の室外側に設置した外窓7と、窓開口部の室内側に設置した内窓8とを備える二重窓となっている。外窓7と内窓8の間の中間層には、整流体3が上方から吊り下げて設けてある。
【0008】
外窓7は、
図1~3に示すように、建物の窓開口部に固定される枠9と、枠9内に引違い状に開閉自在に収めた外障子10a及び内障子10bとを備えている。枠9は、アルミ形材よりなる上枠11と下枠12と左右の縦枠13,13とを枠組みして構成されている。
外障子10a及び内障子10bは、アルミ形材よりなる上框14と下框15と戸先框16と召合せ框17とを框組みし、その内側に外側ガラス1を嵌め込んで構成されている。内障子10bは、上部に換気小窓18が設けてある。
【0009】
換気小窓18は、
図1,3に示すように、外周側フレーム19と、内周側フレーム20と、外周側フレーム19と内周側フレーム20との間に設けた外側ガラス戸21と内側ガラス戸22とを有している。外側ガラス戸21は、外周側フレーム19及び内周側フレーム20に固定してあり、内側ガラス戸22は外周側フレーム19及び内周側フレーム20の長手方向に沿ってスライド可能に設けてある。外周側フレーム19は、
図1に示すように、外周側に上框14のガラス保持溝23に係合する係合部24を有し、内周側フレーム20には外側ガラス1の上縁部を保持するガラス保持溝25を有している。換気小窓18は、係合部24を上框14のガラス保持溝23に係合して上框14の内周側に取付けてある。換気小窓18は、外側ガラス戸21が戸尻側(召合せ框側)、内側ガラス戸22が戸先側に位置しており、
図3に示すように、内側ガラス戸22を戸尻側にスライドして開けることで、戸先側に室外空間から中間層6に連通する室外側通気部4が形成される。
換気小窓18は、内障子10bに最初から組み込んでもよいし、既存の窓の内障子10bに後から組み込むこともできる。
【0010】
内窓8は、
図1,2に示すように、四周の額縁26の内周側面に取付けた上枠27と下枠28及び左右の縦枠29,29と、上下枠27,28間に引違い状に開閉自在に収めた外障子30a及び内障子30bを備えている。枠27,28,29と障子30a,30bの框は、樹脂製である。障子30a,30bは、四周の框と、四周の框に保持した内側ガラス2を有し、内側ガラス2は複層ガラスとなっている。外窓7の枠9と内窓8の枠27,28,29の間には木製の額縁26があるため、外窓7と内窓8とは熱的に分離されている。
【0011】
上枠27の外周側には、換気ブレス31を備えている。換気ブレス31は、
図1に示すように、矩形断面の中空アルミ形材で形成してあり、室外側と室内側の見付面に縦長スリット状の通気口32a,32bが左右方向に間隔をおいて多数設けてあり、これにより中間層6から室内空間に連通する室内側通気部5が設けてある。室内側通気部5の室内側には、埃や花粉等の侵入を防ぐフィルター33が設けてある。
【0012】
図2,3に示すように、整流体3は左右方向に2分割してあって、分割された左右の各整流体3a,3bは、
図1に示すように、上側の額縁26の下面に取付けた取付具34にボルト・ナット35で着脱自在に取付けてある。
外窓7の内障子10bの室内側に位置する整流体3bは、
図1に示すように、室外側通気部4の室内側に対向する板状の垂下部36と、垂下部36の室外側面に室外側に突出して左右方向に沿って設けたフィン37を有している。フィン37は、垂下部36とは別体の部品で形成され、上下方向に間隔をおいて複数設けてある。このように、整流体3bの垂下部36に左右方向にフィン37を設けたことで、内障子10bの換気小窓18に形成される室外側通気部4から流入した空気を左右方向(外障子10a側)に導くことができる。外窓7の外障子10aの室内側に位置する整流体3aは、
図2,3に示すように、垂下部36のみを有し、フィン37を有しないものとなっている。
【0013】
本建具は、樹脂製の枠27,28,29及び框と複層ガラスを用いた内窓8を設けたことに加え、
図1に示すように、外窓7の室外側通気部4と中間層6と内窓8の室内側通気部5を通じて室内外を空気が流れ(
図1中の矢印は空気の流れを示す)、その際に中間層6を空気が外窓7の外側ガラス1の内側面と内窓8の内側ガラス2の外側面に沿うように迂回して流れることで、室内から室外に逃げる熱を回収するか、室外から室内に入ってくる熱を室外に捨て、これにより空気の流入する方向とは逆方向の熱移動が妨げられ、非常に優れた断熱効果を発揮する。
【0014】
冬期の場合について説明すると、換気扇等により室内を負圧に調整し、
図1に示すように、本建具を空気が室外から室内に向けて流れるようにする。外窓7の内障子10bの換気小窓18の戸先側に形成された室外側通気部4から流入した冷たい空気(外気)は、整流体3の垂下部36に当たり、フィン37にガイドされて左右方向(外障子10a側)に流れる(
図2参照)。その後、
図1に示すように、温度が低く下降流の勢いが強い外窓7の外障子10a及び内障子10bの外側ガラス1の内側面に沿う流れに引き寄せられながら下降する。その後、冷たい空気は中間層6の下まで流れてから折り返し、内窓8の内側ガラス2から室内の熱が伝わることで暖められ、内側ガラス2の室外側面に沿って上昇し、この間に内側ガラス2から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収する。また、窓に日射を受ける場合は、このように中間層6を空気が外窓7の外側ガラス1の内側面と内窓8の内側ガラス2の外側面に沿うように流れる間に、日射熱を取得することができる。その後、暖められた空気は内窓8上部の室内側通気部5を通って室内に流入する。空気が室内側通気部5を通過する際にも、室内の熱で暖められた換気ブレス31や上枠27の熱を空気の流れによって回収する。そうして暖められた空気を室内に取り入れることで、回収した熱を室内に戻すことができる。
【0015】
このように、中間層6内を外窓7と内窓8に沿うように迂回して空気が流れることで、日射熱を取得できると共に、室内から室外に伝わる熱を空気の流れによって回収し、室内に戻すことで、室内から室外への熱の損失がほとんどなくなり、これにより空気が流入する方向とは逆方向である室内側から室外側への熱輸送が妨げられ、非常に高い断熱性が得られると共に、外気を暖めて室内に採り込めるので、暖房負荷を抑えることができる。
【0016】
夏期には、換気扇等により室内を正圧に調整し、冬期とは逆に室内から室外に空気が流れるようにする。内窓8の室内側通気部5から中間層6に流れ出た空気(内気)は、整流体3に当たって下向きに流れを変え、室内の空気の温度は室外よりも低いので、内窓8の内側ガラス2の室外側面に沿って下向きに流れる。その後、空気は中間層6の下部で折り返し、外窓7の外側ガラス1等の熱が伝わることで外側ガラス1の室内側面に沿って上昇し、この間に外側ガラス1を通じて室外から室内に入ってくる熱と日射熱を空気の流れによって回収する。その後、外窓7の室外側通気部4を通って空気が室外に放出される。そして、空気が室外に放出されることで、外側ガラス1等から回収した熱と日射熱を室外に捨てる。このように日射熱及び室外から室内に伝わる熱を空気の流れによって回収し、室外に捨てることで、日射熱の取得を抑制でき、空気が流出する方向とは逆方向である室外側から室内側への熱輸送が妨げられるので、優れた断熱効果を発揮して、室内が涼しく保たれ、冷房負荷を抑えることができる。
【0017】
以上に述べたように本建具は、外側ガラス1と内側ガラス2と整流体3とを備え、室外空間から外側ガラス1と内側ガラス2との間の中間層6に通じる室外側通気部4と、中間層6から室内空間に通じる室内側通気部5を有し、整流体3は、中間層6に設けてあり、室外側通気部4からの空気を下方及び左右方向に導くものであり、室外と連通して外側ガラス1の内側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層6の端部で折り返し、室内と連通して内側ガラス2の外側面に沿って他方向に空気が流れることで、室内から室外に逃げる熱を回収するか、室外から室内に入ってくる熱を室外に捨てることで、窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑えることができる。整流体3が室外側通気部4からの空気を下方及び左右方向に導くことで、室外側通気部4が建具の左右方向の一部のみに設けてある場合であっても、空気を左右方向の全体にバランスよく流通させられ、上記した窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑える効果を効率よく発揮できる。
整流体3は、室外側通気部4の室内側に対向する垂下部36と、垂下部36の左右方向に沿って設けたフィン37を有するので、フィン37によって空気を左右方向に導くことができる。
室外側通気部4は、左右方向の一方側に偏った位置に設けてあるので、室外側通気部4を左右方向の全長に亘って設ける必要がないため、コストを削減できる。
本建具は、外窓7の内障子10bのみに換気小窓18を設けたので、外障子10aと内障子10bの開閉に支障がなく、両方の障子10a,10bに換気小窓18を設ける場合よりもコストを削減できる上、両方の障子10a,10bに換気小窓18を設けた場合と同等の断熱性能が得られる。
【0018】
図4は、本発明の建具の第2実施形態を示している。外窓7は、第1実施形態と同様に、内障子10bの上部に換気小窓18を有しており、換気小窓18の内側ガラス戸22を戸尻側にスライドすることで形成される室外側通気部4の室内側に、ルーバー38を設置してある。ルーバー38は、室外側の下向きに傾斜した羽板39が上下方向に間隔をおいて複数取付けてある。ルーバー38は、上側の額縁26から垂下して設けてあり、室外側通気部4の室内側に対向する範囲にだけ設置してある。
また中間層6には、ルーバー38の室内側に整流体3が上側の額縁26から垂下して取付けてある。整流体3は、単なる板状となっており、第1実施形態と同様に、左右方向に2分割して中間層6の左右方向の全幅に亘って設けてある。
【0019】
本実施形態の建具は、冬期において室外側通気部4より流入した冷たい空気は、ルーバー38により整流体3より室外側の中間層6の天井部40に導かれ、中間層6の天井部40を伝って左右方向に流れる。その後、空気は、第1実施形態と同様に、温度が低く下降流の勢いが強い外窓7の外障子10a及び内障子10bの外側ガラス1の内側面に沿う流れに引き寄せられながら下降する。
【0020】
以上に述べたように、第2実施形態の建具は、室外側通気部4に空気を中間層6の天井部40に導くルーバー38を有し、整流体3は中間層6の天井部40から垂下して設けてあるので、室外側通気部4から流入した空気がルーバー38により中間層6の天井部40に導かれ、中間層6の天井部40を伝って空気が左右方向に流れるので、室外側通気部4が建具の左右方向の一部のみに設けてある場合であっても、空気を中間層6の左右方向の全体にバランスよく流通させられ、空気が流れる方向と逆方向の熱輸送が妨げられることにより断熱効果を効率よく発揮できる。
室外側通気部4にルーバー38を設置することで、室外側通気部4から雨水が入るのを防ぐことができる。ルーバー38は、室外側通気部4の室外側(例えば、換気小窓18の内側ガラス戸22より室外側)に設置することもでき、そうすることでより一層雨水が入りにくくなる。
【0021】
図5は、本発明の建具の第3実施形態を示している。整流体3は、室外側通気部4の室内側に対向して垂下し、且つ下に向かって室外側に傾けて設けてある。なお整流体3は、中間層6の左右方向の全幅にわたって設けてある。
冬期において室外側通気部4より流入した冷たい空気は、傾いた整流体3に当たることで中間層6の天井部40に導かれ、中間層6の天井部40を伝って左右方向に流れる。その後、空気は、第1実施形態と同様に、温度が低く下降流の勢いが強い外窓7の外障子10a及び内障子10bの外側ガラス1の内側面に沿う流れに引き寄せられながら下降する。
【0022】
以上に述べたように、第3実施形態の建具は、整流体3が室外側通気部4の室内側に対向して垂下し、且つ下に向かって室外側に傾けて設けてあることで、室外側通気部4から流入した空気を中間層6の天井部40に容易に導くことができ、中間層6の天井部40を伝って空気が左右方向に流れるので、室外側通気部4が建具の左右方向の一部のみに設けてある場合であっても、空気を中間層6の左右方向の全体にバランスよく流通させられ、空気が流れる方向と逆方向の熱輸送が妨げられることにより断熱効果を効率よく発揮できる。
本実施形態は、整流体3の構造がシンプルなので、コストを抑えられる。
【0023】
図6は、本発明の建具の第4実施形態を示している。整流体3は、上部にラチェット機構を組み込んだ軸41が設けてあり、その軸41を支点にして室内外方向に角度を調節できるようにしてある。
本実施形態によれば、整流体3の傾き角度を調節することで空気の流れを調節し、中間層6内の空気の流れを最適な状態にし、断熱性能の向上に寄与できる。また、整流体3の角度を変えれることで、換気小窓18の開閉に支障がなく、掃除やメンテナンスもしやすくなる。
【0024】
図7,8は、本発明の建具の第5実施形態を示している。本建具は、単体サッシに適用したものであって、躯体開口部に取付けられる枠9と、枠9内の室外側位置に嵌め殺し状態で取付けた外側ガラス1と、枠9内の室内側位置に開閉自在に取付けた障子42とを備える。
枠9は、上枠11と下枠12と左右の縦枠13,13とを四周枠組みして構成されている。
障子42は、上框43と下框44と左右の縦框45,45とを四周框組みし、その内側に内側ガラス2を嵌め込んで形成してある。障子42は、上枠11と上框43間、下枠12と下框44間に設けたステー46により、室内側にたてすべり出し式に開くようになっている。
【0025】
上枠11は、
図7に示すように、上枠本体47と、上枠本体47の室外側に取付けた上枠カバー48と、上枠本体47の室内側に取付けた樹脂カバーと49を有している。
上枠本体47は、アルミ形材よりなり、室外側と室内側に中空部50a,50bを有している。室外側の中空部50aの室外側壁と内周側壁には通気孔51a,51bが設けてある。内周側壁の通気孔51bは、
図8に示すように、上枠11の長手方向の両端部に設けてある。室内側の中空部50bの内周側壁と室内側壁にも、
図7に示すように、通気孔51c,51dが設けてあり、これらの通気孔51c,51dは上枠11の長手方向の全長に分散して設けてある。
上枠カバー48は、アルミ形材で形成してあり、上枠本体47の室外側に取付けて上枠本体47の室外側壁の通気孔51aを覆っている。上枠カバー48は、上下方向の中間部に設けた横壁52に、室外に通じる通気孔51eが下向きに開口して設けてあり、当該通気孔51eには虫の侵入を防ぐために網53が取付けてある。上枠カバー48は、通気孔51eの室外側に垂下片54が設けてある。
樹脂カバー49は、樹脂形材で形成してあり、上枠本体47の室内側に取付けて上枠本体47の室内側の通気孔51dを覆っている。樹脂カバー49には、室内外方向に連通する通気孔51fが設けてあり、通気孔51fにはフィルタ55が取付けてある。
【0026】
本建具は、
図7に示すように、上枠カバー48の通気孔51eと、上枠本体47の室外側の中空部50aに形成した通気孔51a,51bとにより、室外空間から中間層6に連通する室外側通気部4が形成されている。
また、上枠本体47の室内側の中空部50bに形成した通気孔51c,51dと、樹脂カバー49に形成した通気孔51fとにより、中間層6から室内空間に連通する室内側通気部5が形成されている。
【0027】
中間層6には、上枠11の内周側面より垂下して整流体3が設けてある。整流体3は、下部が室外側に向けて湾曲しており、その湾曲した下部の室外側面にフィン37が左右方向に設けてある。フィン37は、上下方向に間隔をおいて複数設けてある。
【0028】
冬期には、換気扇等により室内を負圧に調整し、これにより
図7に示すように、上枠11に設けた室外側通気部4を通じて室外より中間層6に空気が流入する。室外側通気部4は、室外に通じる通気孔51eが下向きに開口して設けてあり、且つ通気孔51eの室外側に垂下片54を有していることで、室外側通気部4からの雨水の浸入を防止できる。また室外側通気部4は、中間層6に通じる通気孔51bが上枠11の長手方向端部に下向きに開口して設けてあるため、当該通気孔51bより空気が下向きに流出し、整流体3のフィン37にガイドされて左右方向に流れる(
図8参照)。その後、空気は、第1実施形態と同様に、温度が低く下降流の勢いが強い外側ガラス1の内側面に沿う流れに引き寄せられながら下降する。
【0029】
第5実施形態の建具は、第1実施形態と同様に、室外側通気部4と中間層6と室内側通気部5を通じて室内外を空気が流れ、その際に中間層6を空気が外側ガラス1の内側面と内側ガラス2の外側面に沿うように迂回して流れることで、室内から室外に逃げる熱を回収するか、室外から室内に入ってくる熱を室外に捨て、これにより空気の流入する方向とは逆方向の熱移動が妨げられ、非常に優れた断熱効果を発揮する。
整流体3に左右方向にフィン37が設けてあることで、室外側通気部4から流出した空気を左右方向に流すことができるため、室外側通気部4が建具の左右方向の一部のみに設けてある場合であっても、空気を中間層6の左右方向の全体にバランスよく流通させられ、空気が流れる方向と逆方向の熱輸送が妨げられることにより断熱効果を効率よく発揮できる。
室外側通気部4の中間層6に通じる通気孔51bが下向きに開口して設けてること、整流体3の下部が室外側に向けて湾曲していることで、室外側通気部4からの空気を外側ガラス1の内側面に沿わせられる。
室外側通気部4は、室外に通じる通気孔51eを下向きに開口して設け、且つ通気孔51eの室外側に垂下片54が設けてあることで、室外側通気部4からの雨水の浸入を防止できる。
単体サッシのため、外窓と内窓とからなる二重窓を設置する場合と比べ、施工が容易でコストが抑えられる。
【0030】
図9~11は、本発明の建具の第6実施形態を示している。本実施形態は、第5実施形態と同様に単体サッシに適用したものであり、室外側通気部4が第5実施形態と異なっている。
縦枠13は、
図10に示すように、室内外方向に仕切られた複数の中空部56a,56b,56cを有し、室外側の中空部56aの室外側壁の下部に、
図11に示すように、室外に通じる通気孔57aが設けてある。また、室外側の中空部56aの内周側壁の上部に、
図9,10に示すように、中間層6に通じる通気孔57bが設けてある。これらの通気孔57a,57bと縦枠13の中空部56aとで、室外空間から中間層6に通じる室外側通気部4が構成されている。
【0031】
中間層6には、整流体3が上枠11の内周側面から垂下して設けてある。整流体3は、室外側に向けて突出するフィン37が左右方向に設けてある。フィン37は、上下方向に間隔をおいて複数設けてある。
【0032】
第6実施形態の建具は、第1実施形態と同様に、室外側通気部4と中間層6と室内側通気部5を通じて室内外を空気が流れ、その際に中間層6を空気が外側ガラス1の内側面と内側ガラス2の外側面に沿うように迂回して流れることで、室内から室外に逃げる熱を回収するか、室外から室内に入ってくる熱を室外に捨て、これにより空気の流入する方向とは逆方向の熱移動が妨げられ、非常に優れた断熱効果を発揮する。
整流体3に左右方向にフィン37が設けてあることで、室外側通気部4から流出した空気を左右方向に流すことができるため、室外側通気部4が建具の左右方向の一部のみに設けてある場合であっても、空気を中間層6の左右方向の全体にバランスよく流通させられ、空気が流れる方向と逆方向の熱輸送が妨げられることにより断熱効果を効率よく発揮できる。
室外側通気部4は、縦枠13に設けてあり、室外に通じる通気孔57aが縦枠13の下部に設けてあることで、室外側通気部4からの雨水の浸入を防止できる。
単体サッシのため、外窓と内窓とからなる二重窓を設置する場合と比べ、施工が容易でコストが抑えられる。
【0033】
以上に述べたように本建具(第1~6実施形態)は、外側ガラス1と内側ガラス2と整流体3とを備え、室外空間から外側ガラス1と内側ガラス2との間の中間層6に通じる室外側通気部4と、中間層6から室内空間に通じる室内側通気部5を有し、整流体3は、中間層6に設けてあり、室外側通気部4からの空気を下方及び左右方向に導くものであり、室外と連通して外側ガラス1の内側面に沿って一方向に空気が流れ、中間層6の端部で折り返し、室内と連通して内側ガラス2の外側面に沿って他方向に空気が流れることで、室内から室外に逃げる熱を回収するか、室外から室内に入ってくる熱を室外に捨てることで、窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑えることができる。整流体3が室外側通気部4からの空気を下方及び左右方向に導くことで、室外側通気部4が建具の左右方向の一部のみに設けてある場合であっても、空気を左右方向の全体にバランスよく流通させられ、上記した窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑える効果を効率よく発揮できる。
第1~第4実施形態の建具は、室外側通気部4を左右方向の一方側に偏った位置に設けてあり、第5,6実施形態の建具は、室外側通気部4を左右方向の両端部に設けてあり、いずれも室外側通気部4を左右方向の全長に亘って設ける必要がないため、コストを削減できる。
第1実施形態の建具は、整流体3に室外側通気部4の室内側に対向する垂下部36と、垂下部36の左右方向に沿って設けたフィン37を有するので、フィン37によって空気を左右方向に導くことができる。
第2実施形態の建具は、室外側通気部4は空気を中間層6の天井部40に導くルーバー38を有し、整流体3は中間層6の天井部40から垂下して設けてあるので、ルーバー38によって空気を中間層6の天井部40を伝って左右方向に導き、整流体3により外側ガラス1の内側面に導くことができる。また、ルーバー38により室外側通気部4から雨が入るのを防ぐことができる。
第3実施形態の建具は、整流体3が室外側通気部4の室内側に対向して垂下し、且つ下に向かって室外側に傾けて設けてあることで、取り入れた空気を中間層6の天井部40へ容易に導くことができる。
第4実施形態の建具は、整流体3は、上部を支点に室内外方向に角度を調整自在であるため、整流体3の角度を変えることで空気の流れを調整できると共に、換気小窓18の開閉、掃除やメンテナンスが容易になる。
第5実施形態の建具は、上枠11に下向きに開口して設けた通気孔51eより空気を取り入れるようにしたので、室外側通気部4からの雨水の浸入を防止できる。
第6実施形態の建具は、縦枠13の下部に設けた通気孔57aより空気を取り入れるようにしたので、室外側通気部4からの雨水の浸入をより確実に防止できる。
【0034】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。外窓と内窓の形態は任意であり、引違い窓に限らず、嵌め殺し窓や開き窓等であってもよい。外窓及び内窓の納まりは、適宜変更することができる。また、二重窓に限らず、単体サッシであってもよい。
整流体は、室外側通気部からの空気を下方及び左右方向に導くものであればよく、形状や材質等は適宜変更することができる。
室外側通気部と室内側通気部は、どこに設けてあってもよく、例えば、外窓の外周側の外壁から中間層にわたって室外側通気部が設けてあったり、内窓の外周側の内壁から中間層にわたって室内側通気部が設けてあってもよい。
本発明の建具は、空気が流れる向きが室外から室内だけのもの、室内から室外だけのもの、室外から室内と室内から室外の両方向に空気が流れるものの何れであってもよい。本発明は、新築の建物に外窓と内窓を新たに設置する場合の他、既存の単体のサッシ(外窓)が取付けられた窓に、後から内窓を増設して二重窓とする場合にも適用でき、既存の外窓を利用することで、コストが抑えられる。
【符号の説明】
【0035】
1 外側ガラス
2 内側ガラス
3 整流体
4 室外側通気部
5 室内側通気部
6 中間層