(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ケラチン繊維染色用クチナシ抽出物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20230626BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q5/06
(21)【出願番号】P 2019549453
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2018056094
(87)【国際公開番号】W WO2018162760
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-05
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500166231
【氏名又は名称】ピエール、ファブレ、デルモ‐コスメティーク
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE DERMO-COSMETIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】クリステル、フィオリニ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ジュリア
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-175962(JP,A)
【文献】特開2013-133320(JP,A)
【文献】特表2012-518604(JP,A)
【文献】特開2002-322040(JP,A)
【文献】Radico, India,100% Natural Permanent Hair Colour,Mintel GNPD [online],2014年07月,<URL:https://WWW.portal.mintel.com>,ID#2549291
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維を染色することを目的とした化粧組成物の使用であって、該化粧組成物がクチナシ抽出物を有効成分として含んでなるものであり、該クチナシ抽出物が、該
クチナシ乾燥抽出物の
乾燥重量に対して1~10重量%のクロシンを含有し、前記組成物が4~8の範囲のpHを有し、前記組成物が還元剤を含まず、かつ添加されるアミノ酸を含まない、使用。
【請求項2】
前記組成物が、染色有効成分としてクチナシ抽出物に加えて、化粧品上許容可能な賦形剤を含んでなる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抽出物がクチナシの果物の抽出物である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記抽出物が水性またはアルコール性または水アルコール性の抽出物である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記抽出物が乾燥抽出物である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
毛髪をブロンド色に染色するための
、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記組成物がアルカリ性定着剤を含まない、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
ケラチン繊維を染色することを目的とした化粧組成物の使用であって、該化粧組成物がクチナシ粉末を有効成分として含んでなるものであり、該クチナシ粉末が、該粉末の重量に対して1~10重量%のクロシンを含有し、前記組成物が4~8の範囲のpHを有し、前記組成物が還元剤を含まず、かつ添加されるアミノ酸を含まない、使用。
【請求項9】
前記組成物が、染色有効成分としてのクチナシ粉末に加えて、化粧品上許容可能な賦形剤を含んでなる、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記粉末がクチナシ果物の粉末である、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
毛髪をブロンド色に染色するための
、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物がアルカリ性定着剤を含まない、請求項8に記載の使用。
【請求項13】
毛髪を染色するために使用するための、請求項1において定義されたクチナシ抽出物、
化粧品上許容可能な賦形剤、および取扱説明書一式を含んでなるキット。
【請求項14】
毛髪を染色するために使用するための、請求項8において定義されたクチナシ粉末、化粧品上許容可能な賦形剤、および取扱説明書一式を含んでなるキット。
【請求項15】
請求項1または8において定義された化粧組成物を投与することからなる、ケラチン繊維を染色することを目的とした、審美治療法。
【請求項16】
請求項14または15において定義された化粧組成物を投与することからなる、ケラチン繊維
を染色することを目的とした、審美治療法。
【請求項17】
ケラチン繊維
を染色するための方法であって、
a)請求項1または8において定義された化粧組成物を適用する工程、
b)15分~3時間の範囲の期間待機する工程、
c)水ですすぐ工
程。
【請求項18】
工程a)の前に、請求項13または14で定義されたキットの成分を混合することによるか、あるいは請求項1において定義されたクチナシ抽出物を水と混合することによるか、あるいは請求項8において定義されたクチナシ粉末を水と混合することにより、使用の直前に組成物を調製することからな
る工程を含んでなる、請求項17に記載の染色方法。
【請求項19】
請求項1または8に記載の組成物の使用であって、該抽出物が以下の:
-水、エタノール、アセトンおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒とともに、クチナシ果物か
ら抽出する工程、
-固体-液体分離を行う工程
、
を含んでなる調製法によって得られるものである、使用。
【請求項20】
前記溶媒が、水、エタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
19に記載の使用。
【請求項21】
前記の抽出する工程が、4~8の範囲の間のpHで行われる、請求項
19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維、とりわけ毛髪を染色するためのクチナシの抽出物または粉末の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
毛染め法の中でも、酸化染色または永久染色に言及し得る。この染色法は1種以上の酸化染色前駆体、通常場合により1種以上の連結剤(coupler)と組み合わせる1種以上の酸化塩基を使用する。
【0003】
これらの酸化塩基は、無色または若干無色の化合物であって、酸化生成物と合わさることで、酸化縮合プロセスによって、毛髪繊維の内部に閉じ込められたままである有色種へ近接することができる。
【0004】
酸化毛髪染色剤を使用する場合、第一剤および第二剤を適用直前に混合し、混合物を毛髪に適用する。酸化毛髪染色剤を適用する場合、毛髪に浸透した酸化染料は、毛髪中で酸化によって重合し、バルク状のインドイド(indoid)染料を発生させ、インド(indo)染料が生じる。indo染料がそのバルク性を理由に毛髪から容易に除去されないことによって染色毛の優れた色保持を確保し、種々様々の色が得られる。しかしながら、酸化染料は皮膚障害を引き起こす場合があることが知られている。更に、酸化染料は生態系に悪影響を及ぼす外因性内分泌かく乱化学物質であり、かつそれらは癌、アレルギーなどを引き起こす場合があることが指摘されてきた。
【0005】
有色分子および着色分子(colouring molecule)もまた植物または木に由来する天然の化合物であってもよい。しかしながら、すべての色合いを想定することは困難である。従って、天然物質から毛髪着色剤を開発する、現実的な必要性がある。
【0006】
本発明者らは、予期せずにクチナシ抽出物またはクチナシ粉末がケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維を染色するのに有用であり得ることを見出した。
【0007】
中国および日本が原産のクチナシ(Gardenia jasminoides J. Ellis)は、アカネ(Rubiaceae)科の常緑樹の低木であり、高さは通常約1~2mである。この植物は高温かつ湿度の高い熱帯諸国で栽培されている。濃緑色の葉は対生葉であり、楕円形~卵型-長方形であり、5~10cmの長さであり、かつ2~7.5cmの幅であり、基部はくさび形であって、頂部は鋭くもしくは尖鋭形であり、葉柄は短く、かつ托葉は対に接着している。白色~アイボリー色の花はベル形であり、3~4cmのサイズであり、単生であり、頂花であり、無柄かつ非常に芳香性である。果物は、5つの茎をもつ固いベリーであって、長さは1~1.5cmであり、卵形~楕円型であり、持続性の萼が載り、成熟期は黄色~赤色であり、かつ多数の種子を含んでいる。秋に収穫される熟果は乾燥して中国薬局方で登録される。
【0008】
漢方では、クチナシ果物を様々な製剤で処方する: 乾果(Zhi-zi)、揚げ果物(Chaozhi-zi)または炭化果物(Jiaozhi-zi)。それは、細菌性赤痢、肺および尿の伝染病および肝炎に対する解熱剤、または発熱に起因する鼻の出血の止血剤としての内部使用のため;ならびに傷、目炎症、挫傷、傷および炎症性の腫れ物を治療するための外部使用のために処方される。日本の漢方医学では、この果物は痛み、肺病および黄疸を治療するために使用される。これらの従来の使用は果物の薬理学的特性によって説明することができ、それらは止血性、抗炎症性、刺激性、胆汁排出促進性、催吐性および利尿性である。
【0009】
クチナシの他の部分には多くの効果がある。マレーシアでは解熱性の葉を砕き、片頭痛および肺の炎症を治療するための湿布が作られている。解熱性かつ強壮性の樹皮は発熱、赤痢および胃痛に使用される。インドでは、消化不良および神経障害に根を使用する。皮膚軟化性の花は眼炎、淋病および膣炎症を治療するのに有用である。種子は黄疸、リュウマチおよび憩室症を治療するためにペーストとして外部的に使用する。
【0010】
これらの医薬用途に加えて、この果物は、サフランと同一の色素であるクロシンの含有量が高いために食品または織物を橙色に染色するためにも使用される。
【0011】
果物の主要な化合物は以下のとおりである:
→主としてゲニポシドおよびガルデノシド(gardenoside)によって表わされるイリドイド類。より小量で次の化合物と同様に存在する他のイリドイド類は:6’ ’-O-トランス-シナポイルゲニピンゲンチオビオシド、6’ ’-O-トランス-p-クマロイルゲニピンゲンチオビオシド、6’ ’-O-トランス-シナモイルゲニピンゲンチオビオシド、6’ ’-O-トランス-p-クマロイルゲニポシド、6’-O-トランス-p-クマロイルゲニポシド酸、10-O-スクシノイルゲニポシド、6’-O-アセチルゲニポシド、ガルデナール-I、ガルデナール-II、ガルデナール-III、6-β-ヒドロキシゲニポシド、6-α-ヒドロキシゲニポシド、6-α-メトキシゲニポシド、フェレトシド、ゲニピン-1-β-ゲンチオビオシド、シャンジシド、およびラマルビジン酸、ピクロクロシン酸。
→カロテノイド類、例えばクロセイン酸、クロセチンおよびクロシン、クロセチンのグリコシル化した誘導体。クロシン1(クロセチンゲンチオビオシド)、クロシン2(クロセチンゲンチオビオシドグルコシド)およびクロシン3(クロセチングルコシド)は区別可能である。
→フラボノイド類:ガルデニン、ケルセチン、ケルセチン-3-ルチノシド、ケルセチン-3-O-グルコピラノシド、イソクエルシトリン、コリンボシン、ウムヘンゲリン(umuhengerin)、ニコチフロリン(nicotiflorin)。
→カフェオイルキナ酸の誘導体(3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸)、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸、4,5-ジカフェオイルキナ酸、5-O-カフェオイルキナ酸エチル、5-O-カフェオイル-3-O-シナポイルキナ酸メチル、5-O-カフェオイル-3-O-シナポイルキナ酸エチル、5-O-カフェオイル-4-O-シナポイルキナ酸メチル、5-O-カフェオイル-4-O-シナポイルキナ酸エチル、3,5-ジ-O-カフェオイル-4-O-(3-ヒドロキシ-3-メチル)グルタロイルキナ酸メチル、3-O-カフェオイル-4-O-シナポイルキナ酸、3-O-カフェオイル-4-O-シナポイルキナ酸メチル、3-O-カフェオイル-5-O-シナポイルキナ酸メチル、3,4-ジ-O-カフェオイル-5-O-(3-ヒドロキシ-メチル)グルタロイルキナ酸、3,5-ジ-O-カフェオイル-4-O-(3-ヒドロキシメチル)グルタロイルキナ酸。
→フェノール酸、例えばクロロゲン酸、コーヒー酸、および3,4-ジヒドロキシ-安息香酸。
→リグナン類:ガーデニアナンA(gardenianan A)、シリンガレシノール、ピノレジノール、シリンガレシノール-4-O-β-D-グルコピラノシド、ラリシレシノール、アランギリグリノシドD、リオニレシノール、リオニレシノール-9-O-β-D-グルコピラノシド、バラノフォニン、グリコスミシック酸(glycosmisic acid)、フィクサール(ficusal)およびセプリグナン(ceplignan)。
→糖類(マンニトール)。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、ケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維を染色するためのクチナシの抽出物または粉末の使用に関する。
【0013】
一実施態様によれば、本発明は、このようにケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維、より詳しくは毛髪を染色するためのクチナシ抽出物、とりわけクチナシ果物の抽出物の使用に関する。本発明は、より詳しくは毛髪をブロンド色に染色するためのクチナシ抽出物の使用に関する。より詳しくは、本発明は事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色することに関する。
【0014】
一実施態様によれば、本発明は、このようにケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維、より詳しくは毛髪を染色するための、クチナシ粉末、とりわけクチナシ果物の粉末の使用であって、当該果物が好ましくは事前に乾燥されたものである、使用に関する。本発明は、より詳しくは毛髪をブロンド色に染色するためのクチナシ粉末、とりわけクチナシ果物の粉末、とりわけ乾果の粉末の使用に関する。より詳しくは、本発明は事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色することに関する。
【0015】
本発明の実施態様
1.ケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維、より詳しくは毛髪を染色するためのクチナシ抽出物の使用であって、当該抽出物が、乾燥抽出物の重量に対して、0.1~10重量%の間のクロシン、好ましくは1~5重量%の間のクロシンを含有しているものである、使用。
2.前記抽出物がクチナシ果物の抽出物である、実施態様1に記載の使用。
3.前記抽出物が水性またはアルコール性または水アルコール性の抽出物である、実施態様1または2に記載の使用。
4.前記抽出物が乾燥抽出物である、実施態様1~3のいずれか一つに記載の使用。
5.毛髪をブロンド色に染色するための、より詳しくは事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色するための、実施態様1~4のいずれか一つに記載の使用。
6.ケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維を染色することを目的とした化粧組成物の使用であって、当該化粧組成物が、実施態様1~4のいずれか一つで定義されたクチナシ抽出物を有効成分として含んでなるものである、使用。
7.前記組成物が、染色有効成分としてクチナシ抽出物に加えて、化粧品上許容可能な賦形剤を含んでなる、実施態様6に記載の使用。
8.前記組成物が4~8の範囲のpHを有する、実施態様6または7に記載の使用。
9.前記組成物が還元剤を含まない、実施態様6~8のいずれか一つに記載の使用。
10.前記組成物がアルカリ性定着剤(alkaline fixing compound)を含まない、実施態様6~9のいずれか一つに記載の使用。
11.ケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維、より詳しくは毛髪を染色するためのクチナシ粉末の使用であって、当該クチナシ粉末が、粉末の重量に対して、0.1~10重量%の間のクロシン、好ましくは1~5重量%の間のクロシンを含有しているものである、使用。
12.前記粉末がクチナシ果物の粉末、好ましくは乾燥クチナシ果物の粉末である、実施態様11に記載の使用。
13.毛髪をブロンド色に染色するための、より詳しくは事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色するための、実施態様11~12のいずれか一つに記載の使用。
14.ケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維を染色することを目的とした化粧組成物の使用であって、当該化粧組成物が、実施態様11~12のいずれか一つで定義されたクチナシ粉末を有効成分として含んでなるものである、使用。
15.前記組成物が、染色有効成分としてクチナシ粉末に加えて、化粧品上許容可能な賦形剤を含んでなる、実施態様14に記載の使用。
16.前記組成物が4~8の範囲のpHを有する、実施態様14または15に記載の使用。
17.前記組成物が還元剤を含まない、実施態様14~16のいずれか一つに記載の使用。
18.前記組成物がアルカリ性定着剤を含まない、実施態様14~17のいずれか一つに記載の使用。
19.毛髪を染色するため、とりわけ毛髪をブロンド色に染色するために使用するための、実施態様1~4のいずれか一つで定義されたクチナシ抽出物、化粧品上許容可能な賦形剤、および取扱説明書一式を含んでなるキット。
20.毛髪を染色するため、とりわけ毛髪をブロンド色に染色するために使用するための、実施態様11~12のいずれか一つで定義されたクチナシ粉末、化粧品上許容可能な賦形剤、および取扱説明書一式を含んでなるキット。
21.実施態様6~10のいずれか一つで定義された化粧組成物を投与することからなる、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪を、とりわけブロンド色に染色することを目的とした、審美治療法。
22.実施態様14~18のいずれか一つで定義された化粧組成物を投与することからなる、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪を、とりわけブロンド色に染色することを目的とした、審美治療法。
23.ケラチン繊維、とりわけ毛髪を、より詳しくは毛髪をブロンド色に染色するための方法であって、
a)実施態様1~4のいずれか一つで定義されたクチナシ抽出物または実施態様11~12のいずれか一つで定義されたクチナシ粉末を含んでなる化粧組成物を適用する工程、
b)15分~3時間の範囲の期間待機する工程、
c)水ですすぐ工程、
d)任意にa)~c)の工程を繰り返す工程、
e)任意に乾燥する工程。
24.工程a)の前に、実施態様19または20で定義されたキットの成分を混合することによるか、あるいは実施態様1~4のいずれか一つで定義されたクチナシ抽出物を水と混合することによるか、あるいは実施態様11~12のいずれか一つで定義されたクチナシ粉末を水と混合することにより、使用の直前に組成物を調製することからなる任意の工程を含んでなる、実施態様23に記載の染色方法。
25.実施態様1~5のいずれか一つに記載のクチナシ抽出物の使用または実施態様6~10のいずれか一つに記載の組成物の使用であって、当該抽出物が以下の:
-水、エタノール、アセトンおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒とともに、クチナシ果物、とりわけ乾果から、場合によりペクチナーゼの存在下で抽出する工程、
-固体-液体分離を行う工程、
-場合により濾液を殺菌する工程、
-場合により80℃未満の温度で溶媒を蒸発させる工程
を含んでなる調製法によって得られるものである、使用。
26.前記溶媒が、水、エタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、実施態様25に記載の使用。
27.前記の抽出する工程が、4~8の範囲の間のpH、好ましくは5~7.5の範囲の間のpH、有利的には5.5~7.5の範囲の間のpH、典型的には中性のpHで行われる、実施態様25または26に記載の使用。
【0016】
本発明の意味の範囲内での「ブロンド色に染色する」という用語は、専門的な理髪業において色合いレベルを名づけるために共通の尺度(1番~10番)に従い使用される通りに定義されたブロンド色(7番)、明るいブロンド色(8番)、非常に明るいブロンド色(9番)またはプラチナブロンド色(10番)に染色することを意味すると理解される。
【0017】
本発明は、より環境に優しく(greener)、このように得られる有効成分の自然な性質を要求することが可能である、合成的な経路を確立する望みから生じるものである。したがって、本発明の文脈内で使用する1種以上の溶媒は、好ましくは化石資源とは反対に再生可能資源に由来する天然のものまたは天然起源のものである溶媒あって、これら溶媒は環境に優しい方法によって有利的には得られるであろう。本発明の方法によってこのように得られる抽出物は、従って好ましくは化石資源とは反対に再生可能資源に由来する天然のもの、および/または天然起源のものであろう。
【0018】
好ましい実施態様において、使用した方法により、目的の分子、クロシンをその天然の状態(即ちグリコシル化した状態)で保存することが可能である。したがって染色は植物中に天然に存在する色素の結果、得られる。したがって、本発明によるプロセスは、b-グルコシダーセおよび/またはアミノ酸を加えることからなる工程を一切含まない。
【0019】
本発明によるクチナシ抽出物は、クチナシ果物中に天然に存在する任意の化合物をさらに含有し得る。
【0020】
特別の実施態様において、本発明による抽出物は、乾燥抽出物の全重量に対して重量パーセントで表して10%以下のゲニポシド、とりわけ7~10重量%のゲニポシドを含有している。乾燥抽出物の全重量について言及する場合、それはクチナシの乾燥抽出物であり、例えば、任意の中性担体型のマルトデキストリンを除く。
【0021】
本発明によるクチナシ抽出物は水性またはアルコール性または水アルコール性の抽出物であってもよい。
【0022】
本発明によるクチナシ抽出物は液体または流体の状態でもよく、即ち全てまたは一部の抽出溶媒が常に存在している。
【0023】
本発明によるクチナシ抽出物は乾燥抽出物の状態、即ち乾燥抽出物を得るために抽出溶媒が除去された(例えば蒸発された)状態であってもよい。
【0024】
本発明によるクチナシ抽出物は水混和性または水溶性であり、これはそれが液体抽出物であるかまたは乾燥抽出物であるかにそれぞれ依存する。加えられる水の量により、得られた抽出物は液体、流体または多かれ少なかれ粘性である溶液の状態であり得る。
【0025】
本発明によるクチナシ抽出物は、流体またはペースト状、水性または水アルコール性の抽出物でもよい。それは乾燥した、または水性、または水アルコール性抽出物でもよい。とりわけそれは水性抽出物である。
【0026】
本発明は、ケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維を染色することを目的とした化粧組成物の使用であって、当該化粧組成物が上記のように抽出されたクチナシ抽出物を有効成分として含むものである、使用に関する。
【0027】
特定の実施態様によれば、化粧組成物の使用は毛髪を染色すること、とりわけ毛髪をブロンド色に染色することに関係する。より詳しくは、本発明は事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色することに関係する。
【0028】
別の実施態様において、本発明は、ケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維を染色することを目的とした化粧組成物の使用であって、当該化粧組成物が有効成分としてクチナシの流体抽出物を含むものである、使用に関する。
【0029】
別の実施態様において、本発明は、ケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維を染色することを目的とした化粧組成物の使用であって、当該化粧組成物が有効成分としてクチナシの乾燥抽出物を含むものである、使用に関する。
【0030】
本発明の特別の実施態様において、本発明によるクチナシの流体抽出物または液体抽出物、より詳しくはクチナシの水性または水アルコール性抽出物は、したがって抽出および液体-固体分離の後に得られた液体または流体画分(多少粘性)の状態であってもよく、20~60重量%のクチナシ乾燥分を含むので、水性または水アルコール性溶媒中の乾燥抽出物に相当し、より詳しくは30~50重量%のクチナシ乾燥分を含むので、水性または水アルコール性溶媒中の乾燥抽出物に相当し、一層より詳しくは約40重量%のクチナシ乾燥分を含むので水性または水アルコール性溶媒中の乾燥抽出分に相当する。抽出は下記で詳述される既知の技術によってクチナシ果物に対して行なわれる。
【0031】
本発明の別の特定の実施態様によれば、本発明による抽出物は、一旦水性または水アルコール性の溶媒が例えば蒸発によって流体または液体抽出物から除去された後の乾燥抽出物の形態であってもよい。この乾燥抽出物は、0.1μm~250μmの範囲の間、とりわけ1μm~250μmの範囲の間の平均粒径を有する典型的な粉体である。
【0032】
「乾燥抽出物」という用語は、本発明の意味の範囲内では抽出溶媒を含まない抽出物またはそれをほんのわずかに微量含有している抽出物を意味することが意図されている。そのような乾燥抽出物は、このようにクチナシ、とりわけクチナシ果物に由来した物質のみを含有している。
【0033】
従って本発明による化粧組成物は、上で定義されたクチナシ抽出物に加えて、有効染色成分として化粧品上許容可能な賦形剤を含む。
【0034】
本発明による化粧組成物は、4~8の範囲の間、好ましくは5~7.5の範囲の間、有利的には5.5~7.5の範囲の間のpH、典型的には中性のpHを有している。
【0035】
「中性のpH」という用語は、6.5~7.5の範囲の間、特に約7のpHを意味することが意図されている。
【0036】
本発明による組成物は、例えばとりわけチオール系の還元剤を含まない。
【0037】
本発明による組成物は、例えばとりわけアンモニア系のアルカリ性定着剤を含まない。
【0038】
本発明による組成物が機能性であること、即ち先行技術の染料処方物で通常見受けられる還元剤またはアルカリ性定着剤の添加剤を含まない一方で経時的に強力かつ持続的な染色を可能にすることは、確かに大きな利点であり、かつ特に有利的な特徴である。
【0039】
これらの添加剤が繊維の長期的な統合に影響する場合があり、頭皮を刺激する場合があることが知られている。本発明による抽出物および組成物は、これらアルカリ性定着剤または還元剤の存在に伴う問題を発生させることなく、このように迅速、効果的、かつ持続的な染色を可能にする。本発明に従いこのように提案される染色法は、毛髪繊維を、その統合およびその自然な状態を保存しつつも染色することを可能にする。
【0040】
「化粧品上許容可能な賦形剤」という用語は本発明の意味の範囲内において、クリーム、ローション、シャンプー、乳液タイプまたは毛髪および頭皮への適用に好適な任意の処方物の化粧組成物の処方に適した成分を含有している賦形剤を意味することが意図されている。
【0041】
また本発明は毛髪を染色するため、とりわけ毛髪をブロンド色に染色するための、クチナシ粉末、より詳しくはクチナシ果物の粉末、とりわけ乾果の粉末の使用に関する。より詳しくは、本発明は事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色することに関する。
【0042】
特定の実施態様において、「クチナシ粉末」という用語は、特に製粉によってかもしくは他の機械的手段によって、平均粒径が0.1μm~250μmの範囲の間、とりわけ1μm~250μmの範囲の間の微細粒子に縮小されたクチナシ果物、とりわけ乾果に由来する純粋な天然生成物を意味することが意図されている。粉末を得るための当該クチナシ果物の製粉は、任意の好適な手段によって乾果を製粉化することによって有利的に行うことができ、上述した微細粒子の粒径縮小および生成が可能となる。
【0043】
好ましい実施態様において、本発明による粉末は含水量がごくわずかである乾燥した紛体の生成物である。
【0044】
本発明による粉末はこのように水溶性であり、即ちそれは20~60重量%の乾燥分、より詳しくは30~50重量%の間の乾燥分、一層より詳しくは約40重量%の乾燥分を含有している水性または水アルコール性の液体組成物を得るために使用することができる。乾燥分はこのようにクチナシ粉末に相当する。
【0045】
本発明による粉末はクチナシ果物に天然に存在している任意の化合物をさらに含有してもよい。
【0046】
特定の実施態様において、本発明によるクチナシ粉末は、クチナシ粉末の全重量に対して、重量パーセントで表して10%以下のゲニポシド、とりわけ1~5重量%のゲニポシドを含有している。
【0047】
「ケラチン繊維」という用語は、頭髪、体毛、睫毛、眉毛、より詳しくは頭髪を意味することが意図されている。
【0048】
別の実施態様において、本発明は、ケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維を染色することを目的とした化粧組成物の使用に関し、当該化粧組成物は、有効成分として上で定義されるようなクチナシ粉末を含むものである。より詳しくは、本発明は事前にブリーチを行っていてもよい毛髪をブロンド色に染色することに関する。
【0049】
本発明はとりわけケラチン繊維、特にヒトケラチン繊維を染色することを目的とした化粧組成物の使用であって、当該化粧組成物が有効成分としてクチナシ粉末を含むものである、使用に関する。本発明による使用はとりわけ毛髪をブロンド色に染色することに関する。より詳しくは、本発明は事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色することに関する。
【0050】
本発明による化粧組成物は、このように、上記で定義されたようなクチナシ粉末に加えて有効染色成分として化粧品上許容可能な賦形剤を含む。
【0051】
本発明による組成物は、例えばとりわけチオール系の還元剤を含まない。
【0052】
本発明による組成物は、例えばとりわけアンモニア系のアルカリ性定着剤を含まない。
【0053】
本発明による組成物が機能性であること、即ち先行技術の染料処方物で通常見受けられる還元剤またはアルカリ性定着剤の添加剤を含まない一方で経時的に強力かつ持続的な染色を可能にすることは、確かに大きな利点であり、かつ特に有利的な特徴である。
【0054】
これらの添加剤が繊維の長期的な統合に影響する場合があり、頭皮を刺激する場合があることが知られている。本発明による粉末および組成物は、これらアルカリ性定着剤または還元剤の存在に伴う問題を発生させることなく、このように迅速、効果的、かつ長期的な染色を可能にする。本発明に従いこのように提案される染色法は、毛髪繊維を、その統合およびその自然な状態を保存しつつも染色することを可能にする。
【0055】
好ましくは、クチナシ抽出物はクチナシ(Gardenia jasminoides)の種、より好ましくはコクチナシ(Gardenia jasminoides var. radicans)の種に由来するものである。この品種は特にクロシンに富んでいる。
【0056】
同様に好ましくは、クチナシ粉末はクチナシ(Gardenia jasminoides)の種、より好ましくはコクチナシ(Gardenia jasminoides var. radicans)の種に由来してもよい。この品種は特にクロシンに富んでいる。
【0057】
本発明の実施態様によれば、ケラチン繊維、とりわけ毛髪を染色するために使用されるクチナシの抽出物または粉末は、乾燥抽出物または粉末の重量に対して、重量パーセントで表わして、0.1~10%の間のクロシン、好ましくは1~5%の間のクロシンを含有している。
【0058】
好ましい実施態様において本発明によるクチナシの抽出物または粉末は、ケラチン繊維、とりわけ毛髪をブロンド色に染色するために使用される。より詳しくは本発明は事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色することに関する。
【0059】
本発明による組成物は、ヒトへの投与用に製剤化することができる。本発明による組成物は、局所経路を介してケラチン繊維へ投与することができる。有利的には、本発明による組成物は局所経路を介して投与することが意図されている。
【0060】
本発明の特に有利な実施態様によれば、化粧組成物は少なくとも1つの化粧品上許容可能な賦形剤、とりわけ増粘賦形剤を含む。
【0061】
本発明において、「化粧品上許容可能な」という用語は、化粧組成物の調製に有用であり、一般に安全であり、無毒であり、かつ生物学的にも別の面でも望ましくないものではなく、かつ化粧用使用、とりわけ毛髪および頭皮への局所適用により許容されるものであることを意味することが意図されている。
【0062】
本発明による組成物は、局所適用のため、とりわけ毛髪および頭皮への局所適用のために有利に意図されている。
【0063】
後者の場合において、クチナシ抽出物は、水または従来の化粧担体、とりわけ増粘剤と混合して、ヒトに好適な単位投薬形式で投与することができる。好適な単位投薬形式は局所経路を介する形式を含んでいる。
【0064】
クチナシ粉末を使用する場合、水または従来の化粧担体、とりわけ増粘剤と混合して、ヒトに好適な単位投薬形式で投与することができる。好適な単位投薬形式は局所経路を介する形式を含んでいる。
【0065】
したがって、一実施態様によれば、本発明は髪を染色するため、とりわけ毛髪をブロンド色に染色するために使用するための、本発明によるクチナシ抽出物、化粧品上許容可能な賦形剤、および一式の取扱説明書からなるキットに関する。特別の場合において、化粧品上許容可能な賦形剤は水でもよい。
【0066】
したがって、一実施態様によれば、本発明は髪を染色するため、とりわけ毛髪をブロンド色に染色するために使用するための、本発明によるクチナシ粉末、化粧品上許容可能な賦形剤、および一式の取扱説明書からなるキットに関する。特別の場合において、化粧品上許容可能な賦形剤は水でもよい。
【0067】
本発明の特定の実施態様において、組成物は、一単位用量あたりにクチナシの乾燥抽出物またはクチナシ粉末を10mg~100g、好ましくは20mg~100g、有利には50mg~100g、より好ましくは100mg~100g、一層より好ましくは200mg~75g含む。
【0068】
本発明の特定の実施態様において、組成物は、一単位用量あたりにクロシンを0.2mg~5g、好ましくは1mg~5g、より好ましくは2mg~2g含む。
【0069】
本発明の実施態様によれば、クチナシの抽出物または粉末は、抽出物または粉末の乾重量(乾燥助剤を除く)に対して、クロシンを重量パーセントで0.1~10%の間、好ましくは0.5~8%の間、好ましくは1~5%の間、一層より好ましくは1~3%の間含有している。
【0070】
本発明の特に有利な実施態様によれば、化粧組成物は、少なくとも1種の他の染色剤、とりわけ植物、微生物または微細藻類に由来する染色剤をさらに含む。
【0071】
また本発明は、本発明によるクチナシ抽出物を含む化粧組成物を投与することからなる、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪を、とりわけブロンド色に染色することを意図した審美治療法に関する。好ましくは、投与は毛髪および頭皮への局所投与からなる。より詳しくは、本発明は事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色することに関する。
【0072】
さらに本発明は、本発明によるクチナシ粉末を含む化粧組成物を投与することからなる、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪を、とりわけブロンド色に染色することを意図した審美治療法に関する。好ましくは、投与は毛髪および頭皮への局所投与からなる。より詳しくは、本発明は事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色することに関する。
【0073】
特定の実施態様によれば、本発明はまたケラチン繊維、とりわけ毛髪を、より詳しくは毛髪をブロンド色に染色するための方法であって、
a)本発明によるクチナシ抽出物または本発明によるクチナシ粉末を含む化粧組成物を適用する工程、
b)15分~3時間の範囲の期間待機する工程、
c)水ですすぐ工程、
d)任意にa)~c)の工程を繰り返す工程、
e)任意に乾燥する工程
を含む方法に関する。
【0074】
一実施態様によれば、ケラチン繊維、とりわけ毛髪を染色するため、より詳しくは毛髪をブロンド色に染色するための本発明による方法は、工程a)の前に、毛髪を染色するために使用する、本発明によるクチナシ抽出物および化粧上許容可能な賦形剤を含むキットの成分を混合することにより、使用の直前に組成物を調製することからなる任意の工程を含んでいてもよい。
【0075】
最後に、ケラチン繊維、とりわけ毛髪を染色するため、より詳しくは毛髪をブロンド色に染色するための方法は、工程a)の前に、毛髪を染色するために使用する、本発明によるクチナシ粉末および化粧上許容可能な賦形剤を含むキットの成分を混合することにより、使用の直前に組成物を調製することからなる任意の工程を含んでいてもよい。組成物は粉末を水と混合することによるか、または抽出物を水と混合することにより容易に調製することができる。
【0076】
待機する工程b)は、30℃~100℃の範囲の間(例えば、ボンネットヘアドライヤーを使用)、より詳しくは30℃~75℃の範囲の間、一層より詳しくは約40℃~60℃、一層より詳しくは約50℃の温度で有利に行うことができる。
【0077】
より詳しくは、本発明は、事前にブリーチを行った毛髪をブロンド色に染色する方法に関する。
【0078】
本発明による毛染め法は、本発明による化粧組成物の繰り返しの適用を含んでいてもよい。
【0079】
毛染め法は、本発明による化粧組成物の繰り返し適用の間にすすぐ工程を含んでいてもよい。
【0080】
特定の実施態様において、本発明による染色法は、毛髪への適用の前に酸または塩基を加えることにより、組成物のpHを変化させることからなる工程を一切含まない。
【0081】
染色法はとりわけ4~8の範囲の間、好ましくは5~7.5の範囲の間、有利的には5.5~7.5の範囲の間、典型的には中性のpHで行なわれる。
【0082】
「中性のpH」という用語は6.5~7.5の範囲の間、特に約7のpHを意味することが意図されている。
【0083】
同様に、定着剤(アンモニア系アルカリ)または還元剤(例えばチオール)を適用する必要はない。
【0084】
最後に、本発明はクチナシの抽出物、特にクチナシ果物の調製法に関する。
【0085】
本発明の一実施態様において、クチナシ抽出物は、
-水性、有機、または水アルコール性の溶媒を用いた果物丸ごとから、場合によりペクチナーゼの存在下での抽出、
-固体-液体分離、
-場合により濾液の殺菌、および
-場合により80℃未満での溶媒の蒸発
によって得られる。
【0086】
クチナシ果物は、水、エタノールまたはアセトンなどの有機溶媒およびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒で抽出される。抽出は果物丸ごと、または事前に粗く粉砕した果物に対して行なうことができる。ペクチナーゼなどの酵素を抽出果汁を流動化することにより、その抽出および/またはろ過を改善するために加えることができる。その方法は、クロセチンの生成を回避するためにグリコシダーゼが存在していないことが特徴である。抽出は、酵素が存在するかどうかによって、超音波またはマイクロ波によって、20℃~100℃の範囲の間の温度にて、反応器内で当業者に知られた従来の方法によって行うことができる。抽出は気圧または亜臨界水での圧力下で行なうことができる。
【0087】
固体-液体分離後、液体画分(即ち濾液)は濃縮して、殺菌して、そのまま乾燥させるかまたはマルトデキストリンもしくはシリカなどの乾燥助剤で乾燥させることができる。高温では不安定である分子のクロシンの分解を回避するために、乾燥は80℃未満の温度で行われる。例えば、マイクロ波、凍結乾燥または噴霧など、当業者に知られている技術によって行なうことができる。
【0088】
好ましい実施態様によれば、本発明による方法は、酸または塩基を加えることにより水溶液のpHを変化させることからなる工程を一切含まない。
【0089】
抽出を行う工程はとりわけ4~8の範囲の間、好ましくは5~7.5の範囲の間、有利的には5.5~7.5の範囲の間、典型的には中性のpHで行なわれる。
【0090】
「中性のpH」という用語は6.5~7.5の範囲の間、特に約7のpHを意味することが意図されている。
【実施例】
【0091】
以下の例は本発明をその範囲を限定することなく示すものである。
【0092】
例1:クチナシ抽出物の調製
クチナシ果物丸ごとを2時間90℃にて水で抽出した。固体/液体分離後、ペクチナーゼを加えた。濾液を40%乾燥抽出物に十分な量(qs)の水で濃縮し、殺菌し、次いでマイクロ波で乾燥させた。
【0093】
得られた乾燥抽出物は赤色粉末であった。その収率は約25%であった。クロシン含有量は乾燥抽出物の0.1~10重量%の間であって、平均クロシン含有量は約2%であった。
【0094】
好ましくは水または水および有機溶媒の混合物、エタノールなどのアルコールまたはアセトンなどのケトンでクチナシ果物を抽出した。抽出は果物丸ごとまたは事前に粗く粉砕した果物に対して行なうことができる。ペクチナーゼなどの酵素はろ過を改善するために加えることができる。抽出は酵素が存在するかどうかによって、超音波または亜臨界水によって、またはマイクロ波によって、20℃~100℃の範囲の間の温度にて、反応器内で当業者に知られた従来の方法によって行うことができる。固体-液体分離後、濾液はそのまま使用するか、または好ましくは使用された1部分の植物につき2容量分の水に濃縮して、好ましくは殺菌される。その後、それは従来の方法(パレット乾燥、凍結乾燥またはマイクロ波または噴霧)によってそのまま乾燥させることができ(乾燥助剤なく)、あるいは乾燥助剤(マルトデキストリンまたはシリカ)で乾燥させることができる。マルトデキストリンの使用はより良好な加工性をもたらす。このように得られた乾燥水性抽出物は赤色粉末である。収率は約25%である。1kgの抽出物の生産は、4kgのクチナシ果物の使用を必要とする。クロシン含有量は、乾燥抽出物に対して0.1~10重量%の間であり、平均クロシン含有量は約2%である。これらの分子は感熱性であるため、乾燥温度は好ましくは80℃未満である。
【0095】
例2:クチナシ果物および/またはクチナシ果物粉末
クチナシ乾果は、そのまま使用するか、または好ましくは250μm未満の粒径に粉砕して使用した。
【0096】
例3:ブリーチを行ったヒトの毛髪に対する染色の効果の実証
染料組成物1:
例1によるクチナシ抽出物を50℃にて水(好ましくは質量比1/20~1/10)または天然粘液(キサンタンガム、イスパキュラ、亜麻、オクラ、コンニャク、ハイビスカス、キンセンカ、バナナ、バオバブ、アカンサス、アロエなど)などの増粘剤と混合した。
【0097】
事前にブリーチを行った毛髪一房(参照用の一房)を染色する方法:
一房全体をこの粘着性の溶液に漬け込み、次いで30分間50℃にて置いた。その後、一房を湯ですすいだ。
【0098】
染料組成物2:
粒径を250μm未満に粉砕したクチナシ果物粉末を50℃にて好ましくは水(好ましくは質量比1/20~1/10)または天然粘液(キサンタンガム、イスパキュラ、亜麻、オクラ、コンニャク、ハイビスカス、キンセンカ、バナナ、バオバブ、アカンサス、アロエなど)などの増粘剤と混合した。
【0099】
事前にブリーチを行った毛髪一房(参照用の一房)を染色する方法:
一房全体をこの粘着性の溶液に漬け込み、次いで30分間50℃にて置いた。その後、一房を湯ですすいだ。
【0100】
結果:
処理を行った毛髪の房は持続性および適用数により強度(明るいブロンド色~プラチナブロンド色)および深さが参照用の毛髪の房に対するものとは異なるブロンド色に染色された。
【0101】
上記の事前にブリーチを行った毛髪の房で作成された例は、事前にブリーチを行っていない新しい毛髪の房で再現され、得られた結果は、質および染色の持続性の点からすべての点において匹敵するものであった。
【0102】
比較例:ゲニポシド
1gのキサンタンガム中で2%に希釈した10mgのゲニポシド(供給元: Sigma Aldrich)を含む組成物の調製
事前にブリーチを行った毛髪一房(参照用の一房)を染色する方法:
一房全体をこの粘着性の溶液に漬け込み、次いで30分間50℃にて置いた。その後、一房を湯ですすいだ。
結果:我々は参照用の一房と比較して染色効果を観察しなかった。
【0103】
比較例:クロセチン
クロセチンは、酸加水分解によって加水分解され、その後クロマトグラフィーによって精製されたクチナシの水性抽出物から得られた。
1gのキサンタンガム中で2%に希釈した10mgのクロセチンを含む組成物の調製
事前にブリーチを行った毛髪一房(参照用の一房)を染色する方法:
一房全体をこの粘着性の溶液に漬け込み、次いで30分間50℃にて置いた。その後、一房を湯ですすいだ。
結果:我々は参照用の一房と比較して染色効果を観察しなかった。
【0104】
比較例:クチナシ青
12gのキサンタンガム中で2%に希釈した、0.5gのクチナシ青(E600764クチナシ青;供給元:JIANGXI TIANSHUN ECOLOGICAL AGRICULTURE CO)を含む組成物の調製。
事前にブリーチを行った毛髪一房(参照用の一房)を染色する方法:
一房全体をこの粘着性の溶液に漬け込み、次いで30分間50℃にて置いた。その後、一房を湯ですすいだ。
結果:我々は参照用の一房と比較して染色効果を観察しなかった。