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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】溶融めっき装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/00 20060101AFI20230626BHJP
   C23C 2/20 20060101ALI20230626BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20230626BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20230626BHJP
   C23C 2/12 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
C23C2/00
C23C2/20
C23C2/40
C23C2/06
C23C2/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019572621
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067637
(87)【国際公開番号】W WO2019002573
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】17179104.9
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505008419
【氏名又は名称】タタ、スティール、ネダーランド、テクノロジー、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL NEDERLAND TECHNOLOGY BV
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】イエルーン、マルティン、リンク
(72)【発明者】
【氏名】ヤープ、ペーテル、ファン、エーネンナーム
(72)【発明者】
【氏名】ニコ、ノールト
(72)【発明者】
【氏名】エデュアルト、アントニー、ヘルマニュス、ファン、デン、フーベル
(72)【発明者】
【氏名】ナンダ、シンティア、マンダギ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-166354(JP,A)
【文献】特開2012-107322(JP,A)
【文献】特開平09-041107(JP,A)
【文献】特開平01-263251(JP,A)
【文献】特開平05-156417(JP,A)
【文献】特開2004-100029(JP,A)
【文献】特開昭59-197554(JP,A)
【文献】特開2004-346395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する金属シート(9)上に金属コーティングを設けるための溶融めっき装置(10)であって、
前記溶融めっき装置(10)は、使用の際、金属コーティング材料の液体浴(8)を含み、
前記金属コーティング材料は、使用の際、前記移動する金属シート(9)上に供給されるものであり、
前記溶融めっき装置(10)は、
前記液体浴(8)のための容器(7)と、
使用の際、前記液体浴(8)を通る前記移動する金属シート(9)をガイドするために、前記液体浴(8)の液面レベル(8’)より下方となるように前記容器(7)内に設けられた少なくとも1つのガイドロール又はシンクロール(1)と、
使用の際、前記液体浴(8)の上方となるように設けられたガスナイフ(4)と、
を備え、
前記ガスナイフ(4)は、使用の際、前記ガスナイフ(4)に沿って通過する前記金属シート(9)上に設けられた前記金属コーティングにワイピングガスを吐出する吐出口(4’)を有し、
前記溶融めっき装置(10)は、使用の際、前記ガイドロール又はシンクロール(1)とともに、少なくとも前記ガスナイフ(4)の位置において、前記金属シート(9)の幅方向の形状に影響を与える4つの支持ロール(2,3,5,6)を備え、
前記4つの支持ロール(2,3,5,6)のうちの少なくとも1つは、使用の際、前記金属シート(9)に向かう方向及び前記金属シート(9)から離れる方向に移動可能であり、
前記4つの支持ロール(2,3,5,6)は、第1の支持ロール(5)、第2の支持ロール(6)、第3の支持ロール(3)及び第4の支持ロール(2)からなり、
前記第1の支持ロール(5)及び前記第3の支持ロール(3)は、前記移動する金属シート(9)の一方の面に接触し、前記第2の支持ロール(6)及び前記第4の支持ロール(2)は、前記移動する金属シート(9)の他方の面に接触し、
前記第1の支持ロール(5)、前記第2の支持ロール(6)、前記第3の支持ロール(3)及び前記第4の支持ロール(2)はこの順序で連続して前記移動する金属シート(9)に接触し、
前記溶融めっき装置(10)は、使用の際、前記金属シート(9)が前記液体浴(8)に入る前に、前記4つの支持ロール(2,3,5,6)が、前記金属シート(9)に作用可能な位置において、前記液体浴(8)の液面レベル(8’)より上方となるように配置されていること、及び、使用の際、前記ガイドロール又はシンクロール(1)が、前記液体浴(8)の液面レベル(8’)より下方となる唯一のロールであることを特徴とし、
前記溶融めっき装置(10)は、スナウトを備え、使用の際、前記金属シート(9)が前記スナウトを通じて、前記液体浴(8)に移動し、前記4つの支持ロール(2,3,5,6)が、前記スナウト内に配置されていることを特徴とする、溶融めっき装置(10)。
【請求項2】
前記4つの支持ロール(2,3,5,6)が、交換及び/又はメンテナンスを可能とするために、前記スナウト内に取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項に記載の溶融めっき装置。
【請求項3】
前記4つの支持ロール(2,3,5,6)のうちの少なくとも1つが、モーター駆動装置を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶融めっき装置。
【請求項4】
前記ガスナイフ(4)が、前記めっき装置の長さ方向、すなわち、使用の際、前記金属シート(9)が移動する方向に移動可能であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の溶融亜鉛めっき装置。
【請求項5】
前記ガスナイフ(4)が、移動する金属ストリップ(9)に対して前記ガスナイフを位置決めするための位置決めシステムを備えることを特徴とする、請求項に記載の溶融めっき装置。
【請求項6】
前記ガイドロール又はシンクロール(1)が、使用の際、前記液体浴(8)内で垂直及び/又は水平に移動可能であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の溶融めっき装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の溶融めっき装置を使用して、移動する金属シート(9)をコーティングする方法であって、
金属シートが、前記めっき装置の容器(7)内の金属の液体浴(8)に入る前に、4つの支持ロール(2,3,5,6)上を移動させられ、
前記ガイドロール又はシンクロール(1)が、前記金属の液体浴内の唯一のロールであることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記金属の液体浴(8)が、亜鉛又は亜鉛合金の液体浴であること、あるいは、前記金属の液体浴(8)が、アルミニウム又はアルミニウム合金の液体浴であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記亜鉛合金が、亜鉛アルミニウム合金、亜鉛マグネシウム合金又は亜鉛アルミニウムマグネシウム合金であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルミニウム合金が、アルミニウムシリコン合金であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記4つの支持ロール(2,3,5,6)のうちの少なくとも1つが、前記移動する金属シート(9)に向かう方向及び前記移動する金属シート(9)から離れる方向に移動可能であるとともに、前記金属シートが前記ガスナイフ(4)の下流に移動する際、前記コーティングの横断形状を測定する装置によって制御されることを特徴とする、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記4つの支持ロール(2,3,5,6)のうちの少なくとも1つが、前記移動する金属シート(9)に向かう方向及び前記移動する金属シート(9)から離れる方向に移動可能であるとともに、前記金属シートが前記ガスナイフ(4)の下流に移動する際、前記金属シートの横断形状を測定する装置によって制御されることを特徴とする、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する金属シート(moving metal sheet)上に金属コーティングを設けるための溶融めっき装置(hot dip coating device)であって、前記溶融めっき装置は、使用の際、金属コーティング材料の液体浴を含み、前記金属コーティング材料は、使用の際、前記移動する金属シート上に供給されるものであり、前記溶融めっき装置は、前記液体浴のための容器と、使用の際、前記液体浴を通る前記移動する金属シートをガイドするために、前記液体浴の液面レベルより下方となるように前記容器内に設けられた少なくとも1つのガイドロール又はシンクロールと、使用の際、前記液体浴の上方となるように設けられたガスナイフ(gas knife)と、を備え、前記ガスナイフは、使用の際、前記ガスナイフに沿って通過する前記金属シート上に設けられた前記金属コーティングにワイピングガス(wiping gas)を吐出する吐出口を有し、前記溶融めっき装置は、使用の際、前記ガイドロール又はシンクロールとともに、少なくとも前記ガスナイフの位置において、前記金属シートの幅方向の形状に影響を与える少なくとも1つの支持ロールを備える、溶融めっき装置に関する。本発明は、移動する金属シートをコーティングする方法にも関する。
【0002】
本発明の文脈において、金属シートは金属ストリップとも呼ばれ、通常、少なくとも数百メートルの長さ、最大で約2メートルの幅、及び最大で数ミリメートルの厚みを有する。
【背景技術】
【0003】
英国特許出願公開第2,517,622号には、溶融めっき装置であって、溶融めっき装置は、金属シート上に設けられるための金属コーティング材料の液体浴を備え、液体浴を通る移動する金属シートをガイドするために、ガイドロール又はシンクロールが、液体浴の液面レベルより下方となるように設けられており、ガスナイフが、液体浴の上方となるように設けられており、ガスナイフは、ガスナイフに沿って通過する金属シート上に設けられた金属コーティングにワイピングガスを吐出する吐出口を有する、溶融めっき装置が開示されている。英国特許出願公開第2,517,622号には、それは開示されていないが、通常、少なくとも1つの支持ロールが、シンクロールと液体浴の液面との間において、ガスナイフ側に位置するように、液体金属浴内に設けられている。上記のように、少なくとも1つの支持ロール及びガイドロール又はシンクロールは、ガスナイフの位置において、金属シートの幅方向の形状に影響を与える。実際には、これは、少なくとも1つの支持ロールが、浴内のシンクロールと浴の上方となるガスナイフとの間の金属浴内に安定化ロール(stabilizer roll)及び/又は修正ロール(correcting roll)の形態で具体化されることを意味する。
【0004】
通常、移動する金属シート又はストリップは、英国特許出願公開第2,517,622号の図に概略的に示されているように、金属の液体浴内に端部を有するスナウト(a snout which ends in the liquid bath of metal)を通じて金属の液体浴に導入される。金属ストリップを液体浴内で金属によりコーティングする前に、金属ストリップは通常、炉内で加熱される必要がある。これは、コーティング前にストリップが浴温である必要があるためであり、冷間圧延ストリップの場合、金属は硬質であり、再結晶させる必要があるためである。これは、特に鋼ストリップの場合に当てはまる。金属ストリップを、炉を通じてスナウト内にガイドするために、炉にはいくつかのロールが存在する。金属ストリップをスナウト内にガイドする最後の1つ以上のロールは、たわみロール(deflection roll)又はブライドル(bridle)である。しばしば、金属ストリップをガイドし、金属ストリップの張力を維持するために、2つのブライドルが存在する。
【0005】
少なくとも1つの支持ロールの第1の目的は、金属シートの所望の形状を獲得することである。これは、1つ以上の修正ロールと呼ばれるものにより実施される。
【0006】
少なくとも1つの支持ロールの第2の目的は、金属シートとガスナイフとを位置合わせすることである。液体金属浴内のロールの直径は、ロールの摩耗により変化するため、ガスナイフと金属シートとの間の位置合わせが必要である。これにより、金属シートの水平方向の出口位置が変更される。ガスナイフと金属シートとを位置合わせするために使用される1つ以上のロールは、安定化ロールと呼ばれる。
【0007】
多くの場合、実際には、修正ロール及び安定化ロールの両方が使用され、これらは両方とも液体金属浴内に設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既知の溶融めっき装置に関連する問題は、液体金属浴内のロールの摩耗により、定期的なメンテナンスが要求されることである。これは、溶融めっき装置の運転コストに悪影響を与えるだけでなく、メンテナンスの要求による製造時間の不可避的損失のため、装置の生産性を犠牲にする。
【0009】
液体金属浴内の既知の1つ以上の支持ロールに関連する別の問題は、液体浴内で該ロールと移動する金属シートとの湿潤状態での摩擦接触(wet frictional contact)により、該ロールが回転し、該ロールと移動する金属シートとの間の滑り(slippage)のために、金属シートの損傷の可能性があることである。また、設計上の考慮から、このようにして1つ以上の支持ロールを駆動することは、装置の処理速度に制限を生じさせる。これは、金属シートの移動する速度が、1つ以上の支持ロールに関連する滑りが発生する寸前の点まで制限されるためである。
【0010】
液中の1つ以上の支持ロールに関連するさらに別の問題は、液体金属浴内の液体金属の流れが、回転するロールによる影響を受け、液体金属浴内の流れのパターンが、浴内の不純物を、移動する金属シートの表面に定着させ得ることである。
【0011】
最後に、既知のめっき装置の設計には制限がある。この制限は、1つ以上の支持ロールのために必要な構造的支持体と結びついており、その支持体は、通常、浴のレベルより上方に設けられているが、その空間は、金属浴の液面レベル付近に存在する必要があるガスナイフによって制限されている。
【0012】
本発明の目的は、従来技術の装置の欠点を低減又は除去し、上記の問題が部分的又は完全に除去される解決策を提案することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、上記の問題が部分的又は完全に解決される、移動する金属シートをコーティングする方法を提供することである。
【課題を解決しようとする手段】
【0014】
本発明によれば、少なくとも1つの支持ロールは、使用の際、金属シートが液体浴に入る前に、金属シートに作用可能な位置において、液体浴の液面レベルより上方となるように配置されている。驚くことに、本発明者らは、この手段が使用される場合、少なくとも1つの支持ロールが使用されることにより、金属シートの所望の形状を、ガスナイフの位置において維持することが可能となるだけでなく、これを達成し、その上、少なくとも1つの支持ロールの摩耗の減少及び溶融めっき装置の製造能力の増強に関して利点を獲得することが可能となることを見出した。驚くことに、金属シートが金属浴を出る前に、少なくとも1つの支持ロールを液体金属浴の液面レベルより下方となるような位置に配置する必要がないことも見出されている。それどころか、少なくとも1つの支持ロールは、金属シートが液体金属浴に入る前、及び金属シートが液体金属浴内のガイドロール又はシンクロールに沿って又はその周辺にガイドされる前に、その位置に該支持ロールを配置することにより、機能的に有効であり得る。
【0015】
通常、溶融めっき装置は、スナウトを備え、使用の際、金属シートは、スナウトを通じて液体浴に移動する。これは、例えば英国特許出願公開第2,517,622号に示されている。有利には、少なくとも1つの支持ロールは、スナウト内に配置され、液体金属浴の液面レベル付近に配置されていてもよい。これにより、1つ以上の支持ロールの有効性が向上する。
【0016】
本発明の範囲内で生じる別の利点は、少なくとも1つの支持ロールにモーター駆動装置を設けることであり、これにより、支持ロールと移動する金属シートとの間の摩擦接触に依存する必要がなくなる。したがって、支持ロールと金属シートとの間の滑りにより金属シートを損傷するリスクが低減される。
【0017】
好ましくは、ガスナイフは、溶融めっき装置の長さ方向、すなわち、使用の際、金属シートが移動する方向に移動可能である。この設備により、連続運転により1つ以上のロールの寸法に顕著な摩耗が生じる場合に、必要に応じて、金属シートとガスナイフとを位置合わせすることができる。
【0018】
ガスナイフは、移動する金属ストリップに対してガスナイフを位置決めするための位置決めシステムを備えることが好ましい。位置決めシステムを使用することにより、金属シートのコーティング中、ガスナイフは、ガイドロール又はシンクロールに対して正しい位置に保持される。
【0019】
さらに望ましくは、ガイドロール又はシンクロールは、液体浴内で垂直及び/又は水平に移動可能である。この手段により、移動する金属シートを、それが通過するスナウトを基準に位置合わせし、スナウトの壁との接触を回避することができる。
【0020】
少なくとも1つの支持ロールは、その交換及び/又はメンテナンスを可能とする(accommodate its replacement and/or maintenance)ために、スナウト内に取り外し可能に取り付けられていることが好ましい。
【0021】
ガイドロール又はシンクロールが、使用の際、液体浴の液面レベルより下方となる唯一のロールであることを確実にすることにより、すべての最良の結果、特に処理された金属シートの製品品質におけるすべてが、達成される。
【0022】
本発明者らは、本発明の装置が2つの支持ロールを有し、そのうちの少なくとも1つが、金属シートに向かう方向及び金属シートから離れる方向に移動可能(movable to and fro the metal sheet)であることが好ましいことを見出した。
【0023】
好ましい実施形態によれば、装置は3つの支持ロールを有し、そのうちの少なくとも1つは、使用の際、金属シートに向かう方向及び金属シートから離れる方向に移動可能である。そのような場合、例えば、移動する金属シートの一方の側に2つのロールを配置し、移動する金属シートの他方の側に第3のロールを配置することで、移動する金属シートを3つのロールすべてに押し付けることができる。
【0024】
しかしながら、装置が4つの支持ロールを有し、そのうちの少なくとも1つが、使用の際、金属シートに向かう方向及び金属シートから離れる方向に移動可能である場合、最適な結果が達成可能である。本発明者らは、4つのロールを使用することにより、移動する金属シートに必要な曲げ力を加えることができることを見出した。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による溶融めっき装置を使用して、移動する金属シートをコーティングする方法であって、金属シートが、めっき装置の容器内の金属の液体浴に入る前に、少なくとも1つの支持ロール上を移動させられ、前記ガイドロール又はシンクロールが、前記金属の液体浴内の唯一のロールである方法が提供される。
【0026】
この方法を使用することにより、金属シートの所望の形状を、ガスナイフの位置において維持することが可能であり、その上、めっき装置の設計及びメンテナンスが容易になり、コーティングされた金属シートの製造が妨げられにくくなる。
【0027】
金属シートをコーティングするために、金属の液体浴が亜鉛又は亜鉛合金、好ましくは亜鉛アルミニウム合金、亜鉛マグネシウム合金又は亜鉛アルミニウムマグネシウム合金の液体浴であること、あるいは、金属の液体浴がアルミニウム又はアルミニウム合金、好ましくはアルミニウムシリコン合金の液体浴であることが好ましい。これらは、金属シートをコーティングするための主要なコーティングタイプである。
【0028】
好ましい実施形態によれば、支持ロールの少なくとも1つは、移動する金属シートに向かう方向及び金属シートから離れる方向に移動可能であるとともに、金属シートがガスナイフの下流に移動する際、コーティングの横断形状(traverse shape)を測定する装置によって制御される。金属シート上のコーティングの横断形状を測定し、これを1つ以上の支持ロールを移動させるための入力データ(input)として使用することにより、フィードバックループが導入され、これにより、金属シートの幅方向にわたるコーティングの厚み分布を制御することができる。
【0029】
別の好ましい実施形態によれば、支持ロールの少なくとも1つは、移動する金属シートに向かう方向及び金属シートから離れる方向に移動可能であるとともに、金属シートがガスナイフの下流に移動する際、金属シートの横断形状を測定する装置によって制御される。この実施形態では、金属シート自体の厚み及び形状が測定され、フィードバックループにより制御される。金属シートの横断形状は、コーティングの横断形状を決定する。
【0030】
本発明は、添付の特許請求の範囲に関して限定的ではない本発明の溶融めっき装置の例示的な実施形態の図面を参照して、以下でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、従来技術の溶融めっき装置を示す図である。
図2図2は、本発明の溶融めっき装置の第1の実施形態を示す図である。
図3図3は、本発明の溶融めっき装置の第2の実施形態を示す図である。
図4図4は、図2の実施形態における支持ロールの異なる設定による金属シートの形状を表すグラフを示す図である。
図5図5は、図3の実施形態における支持ロールの異なる設定による金属シートの形状を表すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図において同じ参照番号が適用される場合、これらの番号は同じ要素を指す。
【0033】
最初に図1を参照すると、図1は、移動する金属シート9上に金属コーティングを設ける溶融めっき装置10であって、溶融めっき装置10は、容器7内に金属シート9上に設けるための金属コーティングの液体浴8を含み、ガイドロール又はシンクロール1は、浴8を通る移動する金属シート9をガイドするために、液体浴8の液面レベル8’より下方となるように設けられている、溶融めっき装置10を示す。ガスナイフ4は、液体金属浴8の上方となるように設けられている。該ガスナイフ4は、ガスナイフ4に沿って通過する間に金属シート9上に設けられた金属コーティングにワイピングガスを吐出する吐出口4’を有する。ガスナイフ4によるワイピングは、金属シート9上のコーティングの厚みを決定する。
【0034】
図に示されるような溶融めっき装置10により実行されるコーティングプロセスが、コーティングされた金属シート9の外観品質及び耐食性のために、均一なコーティングの厚みを生じることは、最も重要である。コーティングの厚みは、とりわけガスナイフ4と金属シート9との間の距離に依存する。ガスナイフ4から金属シート9までの距離が増加するにつれて、コーティングの厚みも増加する。金属シート9上のコーティングの厚みの変動は、金属シート9の進行方向もしくはその幅方向のいずれか、又はそれらの両方で見出され得る。進行方向における変動は、通常、金属シート9の振動に起因するものであり、一方で、幅方向におけるコーティングの厚みの変動は、クロスボウ(crossbow)と呼ばれる現象に起因する。
【0035】
クロスボウによるコーティングの厚みの変動は、通常、金属シート9の処理方向で見た場合にシンクロール1の後方に位置する1組の支持ロール2,3を使用することにより相殺される。図1において、これは、修正ロール2及び安定化ロール3として具体化される支持ロール2,3が液体金属浴8に設けられることで示されている。ガイドロール又はシンクロール1とともに、修正ロール2及び安定化ロール3は、ガスナイフ4の位置において、クロスボウ又はシート9の幅方向の形状に影響を与える。
【0036】
シンクロール1の効果から生じる金属シート9の形状又はクロスボウは、負の反り(negative bow)である。金属シートの底部側Bが凹面である場合、金属シート9は負の反りを有すると言われる。これが起こると、金属シート9の底部側B上のコーティングの厚みは、その外側よりも中央で厚くなる。修正ロール2は、シンクロール1の反対方向に金属シート9を曲げるため、正のクロスボウ(positive crossbow)を生じる傾向がある。一方で、安定化ロール3は、シンクロール1と同じ方向に金属シート9を曲げるため、負のクロスボウ(negative crossbow)を再び生じる傾向がある。ガスナイフ4における金属シート9の最終的な反り(final bow)は、これら3つの連続した曲げ作用を組み合わせた結果である。
【0037】
図2及び図3は、本発明の溶融めっき装置10であって、少なくとも1つの支持ロール2,3が液体浴8の外側に配置され、特に該ロール2,3が、金属シート9が液体金属浴8に入る前に、金属シート9に作用可能な位置において、液体浴8の液面レベル8’より上方となるように配置されている溶融めっき装置10の2つの実施形態を示す。
【0038】
支持ロール2,3の位置は、通常、スナウトが設けられている位置に対応し、金属シート9が液体浴8に入る前に、金属シート9は、スナウトを通じて移動させられる。そのようなスナウトの適用は、当業者には完全に知られており、図面を参照してこれ以上の説明を必要としない。とにかく、そのようなスナウトが存在する場合、1つ以上の支持ロール2,3はスナウト内に配置されることが好ましい。
【0039】
また、少なくとも1つの支持ロール2,3がモーター駆動装置を備える好ましいオプションも図面には示されていない。支持ロール2,3へのそのようなモーター駆動装置の適用は、これを実施することができる方法が当業者にとって完全に明らかであるため、図面を参照してこれ以上の説明を必要としない。
【0040】
他の好ましい特徴は、ガイドロール又はシンクロール1が液体浴8内で垂直及び/又は水平に移動可能であることである。このような場合、ガイドロール又はシンクロールが摩耗したときに、ガスナイフ4に対する相対位置及びスナウトに対する相対位置を調整することができる。同様に、好ましくは、ガスナイフ4は、金属シート9の方向に移動可能である。この後者の状況において、有利には、ガスナイフ4は、図2に示すような位置決めシステム11を備え、通過する金属シート9の位置をモニタリングし、ガスナイフ4と移動する金属シート9とを位置合わせする。
【0041】
スナウトを適用する場合、少なくとも1つの支持ロール2,3は、その交換及び/又はメンテナンスを可能とするために、スナウト内に取り外し可能に取り付けられていることがさらに好ましい。
【0042】
図2及び図3の両方が示すように、本発明により、ガイドロール又はシンクロール1のみが液体浴8の液面レベル8’より下方となるように存在する結果となる。
【0043】
再び図2を参照すると、溶融めっき装置10は2つの支持ロール2,3を有し、そのうちの少なくとも1つは金属シート9に向かう方向及び前記金属シート9から離れる方向に移動可能に配置される必要があることが示されている。
【0044】
逆に、図3は、本発明の浸漬めっき装置10が4つの支持ロール2,3,5,6を有することも可能であることを示している。図2に示されるような(1つ又は)2つの代わりに、図3に示されるような4つの支持ロールを適用することは無作為ではないが、以下で説明されるように、金属シート9のクロスボウの制御性に関してより良い成果をもたらす。
【0045】
図には示されていないが、3つの支持ロール2,3,5を使用することも可能であり、そのうちの少なくとも1つは、移動する金属シート9に向かう方向及び前記金属シート9から離れる方向に移動可能でなければならない。使用されなければならないロールの数は、金属シート9の厚み及び金属シート9の速度によって決定され得る。
【0046】
本発明によれば、支持ロール2,3,5,6の少なくとも1つは、移動する金属ストリップ9の方向に移動可能でなければならない。このようにして、金属ストリップ9のクロスボウが影響を受け、ガイドロール又はシンクロール1による影響とともに、ガスナイフ4の位置における鋼ストリップ9のクロスボウが決定される。上記のように、金属ストリップのクロスボウは、横方向のコーティングの厚みを決定する。
【0047】
図4及び図5を参照して、図2及び図3の実施形態における支持ロールの異なる調整に対して得られたクロスボウを分析する。また、金属シート9の2つの異なる厚み、すなわち0.7mm及び1mmを検討する。図2の実施形態の結果を図4に示す。この図に示されるように、支持ロール2,3は、シンクロール1によって生じるクロスボウを修正することができる。安定化ロール3の特定の位置により、シンクロール1によって引き起こされるクロスボウを修正するために使用することができる修正ロール2の調整範囲が常に存在する。ただし、修正措置を提供するために利用可能な範囲は比較的狭いことに言及することができる。修正ロール2による使用可能なこの狭い調整範囲は、グラフの急勾配によって示され、クロスボウの水平の上下の破線は、金属ストリップ9が平坦と見なされる範囲を規定する。
【0048】
比較して、図5は、図3に示されるように4つの支持ロール2,3,5,6が適用される場合の対応する結果を示す。金属シート9の厚みが0.7mm及び1.0mmである支持ロール2の位置がそれぞれ15mm及び20mmであるとともに、図3でグラフに示されるような支持ロール3の異なる調整において、グラフにより、それらと組み合わせてロール6が、金属ストリップ9が平坦と見なされる範囲の上限及び下限内に金属シート9が収まるようにする調整値を常に設定し得ることが明らかとなる。
【0049】
本発明は、溶融浸漬技術(hot dip techniques)を使用するすべてのタイプのコーティングに使用することができ、亜鉛もしくは亜鉛合金、好ましくは亜鉛アルミニウム合金、亜鉛マグネシウム合金もしくは亜鉛アルミニウムマグネシウム合金、又はアルミニウムもしくはアルミニウム合金、好ましくはアルミニウムシリコン合金により金属シートをコーティングするために特に有用である。
【0050】
一実施形態において、コーティングの横断形状を測定する装置(図示せず)がガスナイフ4の下流で評価される。測定結果を、ロール2,3,5,6の少なくとも1つの調整を制御するために使用することができ、金属シート9の横方向におけるコーティングの厚みを、例えばP制御、PI制御、PID制御、又はスミス予測器制御を使用する閉ループにおいて改善する。あるいは、金属シート9自体の横断形状を測定する装置(図示せず)を使用し、測定結果を使用して閉ループで金属シートのクロスボウを制御することが可能である。
【0051】
本発明は、本発明の溶融めっき装置の例示的な実施形態を参照して前述してきたが、本発明は、本発明から逸脱することなく、多くの方法で変更され得るこれらの特定の実施形態に限定されない。そのため、説明された例示的な実施形態を使用して、それに厳密に従って添付の特許請求の範囲を解釈するものではない。それどころか、実施形態は、特許請求の範囲をこれらの例示的な実施形態に限定することを意図することなく、添付の特許請求の範囲の文言を説明することを単に意図している。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲のみに従って解釈されるものとし、特許請求の範囲の文言におけるあいまいさは、これらの例示的な実施形態を使用して解消されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5