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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/35 20100101AFI20230626BHJP
   G01S 19/14 20100101ALI20230626BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20230626BHJP
   H01Q 1/12 20060101ALI20230626BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
G01S19/35
G01S19/14
E02F9/00 Z
H01Q1/12 Z
H01Q1/22 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020013687
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120628
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】頴原 智里
(72)【発明者】
【氏名】西口 仁視
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊憲
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-102098(JP,A)
【文献】特開2008-102097(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/158779(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0133739(US,A1)
【文献】米国特許第09988787(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00 - 19/55
E02F 9/00 - 9/18
9/24 - 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、
前記車体に設けられ、前記車体の位置情報を計測するためのアンテナ装置と、を備えた建設機械において、
前記アンテナ装置が脱着可能に取付けられたアンテナ支持部材と、
一側が前記車体に回動可能に取付けられた第1リンク部材と、
前記第1リンク部材の下側で一側が前記車体に回動可能に取付けられた第2リンク部材と、を備え、
前記アンテナ支持部材は前記第1リンク部材の他側および前記第2リンク部材の他側に回動可能に取付けられて平行リンクを構成し、
前記アンテナ装置は前記平行リンクにより、前記車体の上方に位置するアンテナ使用位置と前記アンテナ使用位置よりも低い位置にあるアンテナ脱着位置とに切り替え可能に保持されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記アンテナ脱着位置は前記車体の外側に位置することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記車体は外側面を覆う側面カバーが取付けられたサポート部材を備え、
前記サポート部材の下部には、リンク支持部材が取付けられており、
前記第1リンク部材の一側および前記第2リンク部材の一側の回動部は前記リンク支持部材に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記車体の後側には、前記車体の前側に設けられたフロント装置との重量バランスをとるカウンタウエイトが設けられ、
前記カウンタウエイトには、外側面から内側に凹む収容凹部と、前記収容凹部を覆う凹部カバーとが設けられ、
前記収容凹部に、前記第1リンク部材の一側および前記第2リンク部材の一側の回動部が取付けられたリンク支持部材が取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記第1リンク部材の一側および前記第2リンク部材の一側の回動部は鉛直方向に並べて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体の位置情報を計測するためのアンテナ装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械を代表する油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体とからなる車体と、上部旋回体の前側に設けられた作業装置とを備えている。ここで、上部旋回体に2個のアンテナ装置が設けられた油圧ショベルが知られている。このアンテナ装置は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナからなり、これら2個のアンテナ装置の位置情報に基づいて油圧ショベルの位置情報を計測し、掘削作業等の施工管理を支援している。
【0003】
このようなアンテナ装置を備えた油圧ショベルとして、カウンタウエイトの上方にアンテナ保持機構を介してアンテナ装置を取付けたものが提案されている。このアンテナ保持機構は、カウンタウエイトの上方に回転可能に支持されたシャフトと、基端がシャフトに固定され、先端にアンテナ装置が脱着可能に取付けられたポールとを含んで構成されている。このアンテナ保持機構は、ポールがカウンタウエイトの上面から鉛直方向に立上ることにより、油圧ショベルの稼働時にアンテナ装置を高い位置に支持することができる構成となっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-102097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アンテナ装置は非常に高価であるため、油圧ショベルが稼働していないときには、アンテナ装置を車体から取外すことにより盗難を防止する必要がある。上述した従来技術によるアンテナ保持機構は、シャフトを回転させることにより、シャフトに固定されたポールの先端を下向きに回動させた状態で、ポールの先端からアンテナ装置を取外す作業を地上で行うことができる構成となっている。
【0006】
しかし、従来技術によるアンテナ保持機構は、ポールの先端を下向きに回動させた状態でアンテナ装置の脱着作業を行うため、ポールからアンテナ装置が抜ける方向が地面を向いた状態となる。このため、脱着作業時にアンテナ装置を誤って地面に落下させ、アンテナ装置を損傷させたり、落下したアンテナ装置が作業者に衝突したりする可能性がある。
【0007】
本発明の一実施形態の目的は、アンテナ装置を脱着するときの作業性を向上させることができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による建設機械は、自走可能な車体と、前記車体に設けられ、前記車体の位置情報を計測するためのアンテナ装置と、を備えた建設機械において、前記アンテナ装置が脱着可能に取付けられたアンテナ支持部材と、一側が前記車体に回動可能に取付けられた第1リンク部材と、前記第1リンク部材の下側で一側が前記車体に回動可能に取付けられた第2リンク部材と、を備え、前記アンテナ支持部材は前記第1リンク部材の他側および前記第2リンク部材の他側に回動可能に取付けられて平行リンクを構成し、前記アンテナ装置は前記平行リンクにより、前記車体の上方に位置するアンテナ使用位置と前記アンテナ使用位置よりも低い位置にあるアンテナ脱着位置とに切り替え可能に保持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、アンテナ装置が取付けられたアンテナ支持部材を、アンテナ使用位置よりも低いアンテナ脱着位置に移動させることにより、アンテナ支持部材に対してアンテナ装置を脱着するときの作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による油圧ショベルを示す右側面図である。
図2】作業装置を取外した油圧ショベルの平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態によるアンテナ保持機構、サポート部材、アンテナ装置、作動油タンク等を、前右側面カバーを取外した状態で示す斜視図である。
図4】サポート部材、アンテナ保持機構、アンテナ装置等を示す要部拡大の斜視図である。
図5】作動油タンク、サポート部材、アンテナ保持機構、アンテナ装置等をアンテナ使用位置にある状態で示す斜視図である。
図6】作動油タンク、サポート部材、アンテナ保持機構、アンテナ装置等をアンテナ脱着位置にある状態で示す斜視図である。
図7】本発明の第2の実施形態によるアンテナ保持機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。図1ないし図6は本発明の第1の実施形態を示している。なお、実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、油圧ショベルの走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0012】
図中、油圧ショベル1は、前後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に設けられた作業装置4とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場を走行し、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行う。
【0013】
作業装置4は、後述する旋回フレーム5の前側に俯仰動可能に取付けられたブーム4Aと、ブーム4Aの先端に回動可能に取付けられたアーム4Bと、アーム4Bの先端に回動可能に取付けられたバケット4Cとを含んで構成されている。また、作業装置4は、ブーム4Aを駆動するブームシリンダ4D、アーム4Bを駆動するアームシリンダ4E、バケット4Cを駆動するバケットシリンダ4Fを有している。
【0014】
上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回可能に設けられている。上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、カウンタウエイト6、エンジン7、キャブ10、建屋カバー11、作動油タンク18、燃料タンク20等を含んで構成されている。
【0015】
旋回フレーム5は、上部旋回体3のベースを構成している。図2に示すように、旋回フレーム5は、厚肉な平板状の底板5Aと、底板5A上に立設され、左右方向に所定の間隔をもって前後方向に延びた左縦板5B、および右縦板5Cと、底板5Aを挟んで左右両側に配置され、前後方向に延びた左右のサイドフレーム5D(右側のみ図示)とを含んで構成されている。左縦板5Bおよび右縦板5Cの前側には、ブーム4Aの基端、およびブームシリンダ4Dの基端が回動可能に取付けられている。
【0016】
カウンタウエイト6は、上部旋回体3を構成する旋回フレーム5の後側に設けられている。カウンタウエイト6は、作業装置4との重量バランスをとるもので、後面が円弧状をなす重量物として形成されている。また、カウンタウエイト6の左端側には、後述する第2のアンテナ装置36が取付けられている。
【0017】
原動機としてのエンジン7は、カウンタウエイト6の前側に位置して旋回フレーム5の後側に搭載されている。エンジン7は、左右方向に延びる横置き状態で配置されている。エンジン7の右側には、油圧ポンプ8が取付けられている。油圧ポンプ8は、エンジン7によって駆動されることにより、作動油タンク18に貯留された作動油を、下部走行体2の走行モータ、上部旋回体3の旋回モータ(図示せず)、作業装置4の各シリンダ4D,4E,4F等の油圧アクチュエータに向けて吐出する。なお、原動機としては、電動モータ、あるいはエンジンと電動モータとを組合せたハイブリッド式の原動機を用いることができる。
【0018】
熱交換器9は、エンジン7の左側に位置して旋回フレーム5上に搭載されている。熱交換器9は、エンジン冷却水を冷却するラジエータ、作動油を冷却するオイルクーラ等を含んで構成されている。冷却ファン(図示せず)によって建屋カバー11内に供給された冷却風が、熱交換器9を通過することにより、熱交換器9は、エンジン冷却水、作動油等の熱を冷却風中に放熱する。
【0019】
キャブ10は、旋回フレーム5の左縦板5Bよりも左側に位置して旋回フレーム5の左前側に設けられている。キャブ10は、運転室を画成するボックス状に形成され、その内部には、オペレータが座る運転席(図示せず)が設けられている。また、運転席の前側には、油圧ショベル1の走行動作を制御する走行用レバーペダル装置(図示せず)が設けられ、運転席の左右方向の両側には、上部旋回体3の旋回動作、および作業装置4の動作を制御する操作レバー装置(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0020】
建屋カバー11は、カウンタウエイト6の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。建屋カバー11は、旋回フレーム5の後側に機械室を形成し、この機械室内にエンジン7、油圧ポンプ8、熱交換器9等の搭載機器を収容している。建屋カバー11は、左側面カバー12と、右側面カバー13と、上面カバー15と、エンジンカバー16とを含んで構成され、旋回フレーム5上に設けられた後述のサポート部材14等によって支持されている。
【0021】
左側面カバー12は、カウンタウエイト6の左端とキャブ10の左側面10Aとの間に配置され、旋回フレーム5の左サイドフレーム(図示せず)から上方に延びている。左側面カバー12は、上部旋回体3の左外側面を覆うもので、カウンタウエイト6側に位置する後左側面カバー12Aと、キャブ10側に位置する前左側面カバー12Bとの2枚のカバーによって構成されている。
【0022】
右側面カバー13は、カウンタウエイト6の右端と燃料タンク20の右側面20Bとの間に配置され、旋回フレーム5の右サイドフレーム5Dから上方に延びている。右側面カバー13は、上部旋回体3の右外側面を覆うもので、カウンタウエイト6側に位置する後右側面カバー13Aと、作動油タンク18側に位置する前右側面カバー13Bとの2枚のカバーによって構成されている。後右側面カバー13Aは、サポート部材にヒンジ機構(いずれも図示せず)を介して取付けられ、油圧ポンプ8と左右方向で対面した状態で、油圧ポンプ8を右側方から開閉可能に覆っている。前右側面カバー13Bは、旋回フレーム5の右端側に立設されたサポート部材14(図3参照)にヒンジ機構(図示せず)を介して取付けられている。これにより、前右側面カバー13Bは、作動油タンク18を右側方から覆う閉位置と、作動油タンク18を外部に露出させる開位置との間で開閉可能となっている。
【0023】
上面カバー15は、カウンタウエイト6の前側に位置して左側面カバー12の上端と右側面カバー13の上端との間を水平方向に延びている。上面カバー15には、エンジン7等の上側に位置して点検用開口(図示せず)が形成され、この点検用開口を通じてエンジン7等に対するメンテナンス作業が行われる構成となっている。
【0024】
エンジンカバー16は、エンジン7等を上方から覆った状態で旋回フレーム5上に設けられている。エンジンカバー16は、上面カバー15から上方に隆起した状態で左右方向に延び、上面カバー15に形成された点検用開口を閉塞している。エンジンカバー16は、後端側がヒンジ機構を介してサポート部材(いずれも図示せず)に取付けられ、前端側がヒンジ機構を中心として上下方向ないし前後方向に回動する。これにより、エンジンカバー16は、上面カバー15に対し、点検用開口を開く開位置と点検用開口を閉じる閉位置との間で開閉可能となっている。上面カバー15のうちエンジンカバー16よりも前側となる範囲は、作業用足場17となっている。作業用足場17は、作業者がエンジンカバー16を開いてエンジン7等に対するメンテナンス作業を行うときの足場を形成している。
【0025】
作動油タンク18は、旋回フレーム5の右縦板5Cよりも右側で、かつ油圧ポンプ8の前側に位置して旋回フレーム5に設けられている。作動油タンク18は、下部走行体2の走行モータ、上部旋回体3の旋回モータ、作業装置4の各シリンダ4D,4E,4F等の油圧アクチュエータに供給される作動油を貯留している。図5に示すように、作動油タンク18は、上下方向に延びる円筒状のタンク本体18Aと、タンク本体18Aの下端を閉塞する四角形の平板状の底板18Bと、タンク本体18Aの上端を閉塞する四角形の平板状の上面板18Cとを含んで構成されている。作動油タンク18の上面板18Cは、上面カバー15と同一平面を形成している。
【0026】
作動油タンク18の上面板18Cには、エアブリーザ18Dが設けられている。また、上面板18Cの右端側には、前側取付座18Eおよび後側取付座18Fが、前後に離間して設けられている。これら前,後の取付座18E,18Fには、後述する後側手摺り23の下端が固定されている。さらに、上面板18Cの右前側には、上面板18Cの右端縁18C1に開口する切欠溝18Gが設けられている。切欠溝18Gは、前側取付座18Eに近い位置で上面板18Cの右端縁18C1を左方向に切欠くことにより形成され、切欠溝18Gの溝幅は、後述のアンテナ支持部材30の直径よりも大きく設定されている。
【0027】
ここで、サポート部材14に取付けられた前右側面カバー13Bが、作動油タンク18を右側方から覆う閉位置となったときには、前右側面カバー13Bと作動油タンク18との間に機器収容空間19が形成される。この機器収容空間19内には、後述のアンテナ保持機構27が収容される。
【0028】
燃料タンク20は、旋回フレーム5の右縦板5Cよりも右側で、かつ作動油タンク18の前側に隣接して設けられている。燃料タンク20は、上下方向に延びる直方体状の容器として形成され、エンジン7に供給される燃料を貯留している。燃料タンク20の上面20Aは、上面カバー15と同一平面を形成し、上面カバー15の上面に形成された作業用足場17に連なる足場となっている。また、燃料タンク20の右側面20Bは、右側面カバー13と同一平面を形成している。
【0029】
物品収容ケース21は、燃料タンク20の前側に位置して旋回フレーム5の右前側に設けられている。物品収容ケース21の内部には、工具、交換部品等の物品が収容されている。物品収容ケース21の上面は、例えば1段目のステップ21Aと、2段目のステップ21Bとを有する階段状に形成されている。物品収容ケース21の前側には、1段目のステップ21Aよりも下側に位置して最下段ステップ22が配置されている。これら2段のステップ21A,21Bおよび最下段ステップ22は、上面カバー15に形成された作業用足場17と地上との間で作業者が移動するときの足場を形成している。
【0030】
作動油タンク18の右端側には、前後方向に延びる後側手摺り23が立設されている。後手摺り23の下端は、作動油タンク18の上面板18Cに設けられた前側取付座18Eおよび後側取付座18Fにボルト等を用いて固定されている。燃料タンク20の上面20Aの右端側には、後側手摺り23の前側に隣接して前後方向に延びる中間手摺り24が設けられている。物品収容ケース21の右端側には、中間手摺り24の前側に隣接して前後方向に延びる前側手摺り25が設けられている。作業者は、最下段ステップ22、物品収容ケース21のステップ21A,21B、燃料タンク20の上面20Aを足場として地面と作業用足場17との間を乗降するときに、これら各手摺り23,24,25を把持する。
【0031】
次に、上部旋回体3に搭載される第1のアンテナ装置26、アンテナ保持機構27、第2のアンテナ装置36について説明する。
【0032】
第1のアンテナ装置26は、後述のアンテナ保持機構27を介してサポート部材14に取付けられている。第1のアンテナ装置26は、第2のアンテナ装置36と共に一対のGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナを構成している。これら第1,第2のアンテナ装置26,36は、ケーブル等を介してコントローラ(いずれも図示せず)に接続されている。第1,第2のアンテナ装置26,36は、衛星から位置情報を受信し、コントローラは第1,第2のアンテナ装置26,36の位置情報に基づいて油圧ショベル1の位置情報を計測し、計測した位置情報に基づいて掘削作業等の施工管理を支援する。
【0033】
ここで、第1のアンテナ装置26は高価な装置であるため、油圧ショベル1が稼働していないときには、第1のアンテナ装置26を上部旋回体3から取外すことにより、盗難を防止する必要がある。このため、サポート部材14と第1のアンテナ装置26との間には、第1のアンテナ装置26を、図4中の実線で示すアンテナ使用位置と、図4中の二点鎖線で示すアンテナ脱着位置との間で切り替え可能(移動可能)に保持するアンテナ保持機構27が設けられている。
【0034】
アンテナ保持機構27は、前右側面カバー13Bを支持するサポート部材14と、第1のアンテナ装置26との間に設けられている。アンテナ保持機構27は、第1のアンテナ装置26を、上部旋回体3を構成する作動油タンク18の上方に位置するアンテナ使用位置(図3および図5の位置)と、アンテナ使用位置よりも低い位置にあるアンテナ脱着位置(図6の位置)とに切り替え可能に保持している。アンテナ保持機構27は、リンク支持部材28と、アンテナ支持部材30と、上側リンク32と、下側リンク33とを含んで構成されている。
【0035】
リンク支持部材28は、上部旋回体3を構成するサポート部材14に取付けられている。図4等に示すように、リンク支持部材28は、鋼板等を用いてC字型の枠状に形成され、上下方向に延びる縦板部28Aと、縦板部28Aの上端に設けられた上横板部28Bと、縦板部28Aの下端に設けられた下横板部28Cとを有している。縦板部28Aは、例えばサポート部材14の下側(上下方向の高さ寸法の中間位置よりも下側となる範囲)に、複数のボルト29を用いて固定されている。
【0036】
上横板部28Bは、縦板部28Aの上端から後方に張出し、上横板部28Bの先端側は、下向きに屈曲して縦板部28Aと前後方向で対面する上取付部28Dとなっている。下横板部28Cは、縦板部28Aの下端から後方に張出し、下横板部28Cの先端側は、上向きに屈曲して縦板部28Aと前後方向で対面する下取付部28Eとなっている。リンク支持部材28の上取付部28Dと下取付部28Eとには、縦板部28Aと対面する裏面に溶接されたナットを含む雌ねじ部(いずれも図示せず)設けられている。上取付部28Dには、後述する上側リンク32の一端32Aが取付けられ、下取付部28Eには、後述する下側リンク33の一端33Aが取付けられている。
【0037】
アンテナ支持部材30は、リンク支持部材28から離間して配置され、先端(上端)に第1のアンテナ装置26が脱着可能に取付けられている。アンテナ支持部材30は、例えば直線状に延びる棒状体を用いて形成されている。アンテナ支持部材30の基端(下端)側には、径方向に貫通する上連結ピン30Aと下連結ピン30Bとが、上下方向に間隔をもって固定されている。これら上連結ピン30Aと下連結ピン30Bとの間の上下方向の寸法(間隔)は、リンク支持部材28の上取付部28Dと下取付部28Eとに設けられた雌ねじ部(図示せず)間の上下方向の寸法(間隔)と等しく設定されている。アンテナ支持部材30の先端側には、例えば雄ねじ部30Cが形成されている。この雄ねじ部30Cを、第1のアンテナ装置26の下面側に形成された雌ねじ部26Aに螺着することにより、アンテナ支持部材30の先端に、第1のアンテナ装置26が脱着可能に取付けられている。
【0038】
平行リンク31は、アンテナ支持部材30と、第1リンク部材としての上側リンク32と、第2リンク部材としての下側リンク33とにより構成されている。即ち、アンテナ支持部材30は、一端32Aがリンク支持部材28に回動可能に取付けられた上側リンク32の他端32Bと、一端33Aがリンク支持部材28に回動可能に取付けられた下側リンク33の他端33Bに回動可能に取付けられて平行リンク31を構成している。上側リンク32は、鋼板等を用いて長方形の平板状に形成され、長さ方向の一端32Aにはボルト挿通孔(図示せず)が設けられ、長さ方向の他端32Bには、ピン挿通孔(図示せず)が設けられている。下側リンク33も、上側リンク32と同一形状をなす長方形の平板状に形成され、長さ方向の一端33Aにはボルト挿通孔(図示せず)が設けられ、長さ方向の他端33Bには、ピン挿通孔(図示せず)が設けられている。
【0039】
上側リンク32の一端32Aに設けられたボルト挿通孔には、蝶ボルト34が挿通され、蝶ボルト34は、リンク支持部材28の上取付部28Dに設けられた雌ねじ部に螺着される。また、上側リンク32の他端32Bに設けられたピン挿通孔には、アンテナ支持部材30の上連結ピン30Aが挿通され、止め輪等の抜止め部材(図示せず)を用いて抜止めされている。これにより、上側リンク32の一端32Aは、蝶ボルト34を介してリンク支持部材28の上取付部28Dに回動可能に取付けられ、上側リンク32の他端32Bは、アンテナ支持部材30の上連結ピン30Aに回動可能に取付けられている。
【0040】
一方、下側リンク33の一端33Aに設けられたボルト挿通孔には、蝶ボルト35が挿通され、この蝶ボルト35は、リンク支持部材28の下取付部28Eに設けられた雌ねじ部に螺着される。また、下側リンク33の他端33Bに設けられたピン挿通孔には、アンテナ支持部材30の下連結ピン30Bが挿通され、止め輪等の抜止め部材(図示せず)を用いて抜止めされている。これにより、下側リンク33の一端33Aは、蝶ボルト35を介してリンク支持部材28の下取付部28Eに回動可能に取付けられ、下側リンク33の他端33Bは、アンテナ支持部材30の下連結ピン30Bに回動可能に取付けられている。この場合、上側リンク32の一側の回動部である一端32Aと、下側リンク33の一側の回動部である一端33Aとは、鉛直方向に並べて配置されている(図4参照)。
【0041】
ここで、蝶ボルト34,35は、上側リンク32および下側リンク33を含む平行リンク31の動作を規制するロック機構を構成している。即ち、リンク支持部材28の上取付部28Dに設けられた雌ねじ部に螺着される蝶ボルト34は、この雌ねじ部に対する締込量を調整することにより、上側リンク32の回動動作を規制することができる。一方、リンク支持部材28の下取付部28Eに設けられた雌ねじ部に螺着される蝶ボルト35は、この雌ねじ部に対する締込量を調整することにより、下側リンク33の回動動作を規制することができる。このため、蝶ボルト34,35を締込むことにより、アンテナ保持機構27がアンテナ使用位置、アンテナ脱着位置にロックされる構成となっている。
【0042】
従って、蝶ボルト34,35を緩めた状態では、上側リンク32と下側リンク33とは、リンク支持部材28側を支点として回動変位し、アンテナ支持部材30および第1のアンテナ装置26を、図4中の実線で示すアンテナ使用位置と、図4中の二点鎖線で示すアンテナ脱着位置との間で移動させる。この場合、上側リンク32の他端32Bとアンテナ支持部材30との間、および下側リンク33の他端33Bとアンテナ支持部材30との間には、上側リンク32から突出した蝶ボルト34(の頭部)の突出長さよりも大きな軸方向寸法を有するスペーサ(図示せず)がそれぞれ設けられている。これにより、アンテナ支持部材30は、蝶ボルト34と干渉することなくアンテナ使用位置とアンテナ脱着位置との間を移動することができる。
【0043】
このように、アンテナ支持部材30は、上側リンク32の他端32Bおよび下側リンク33の他端33Bに回動可能に取付けられることにより、上側リンク32および下側リンク33と共にリンク支持部材28側を支点として回動変位する平行リンク31を構成している。そして、アンテナ支持部材30に取付けられた第1のアンテナ装置26は、平行リンク31により作動油タンク18の上方に位置するアンテナ使用位置(図5の位置)と、アンテナ使用位置よりも低い位置にあるアンテナ脱着位置(図6の位置)とに切り替え可能に保持されている。
【0044】
従って、第1のアンテナ装置26は、アンテナ使用位置とアンテナ脱着位置との間で移動するときに、作動油タンク18に対して接近、離間するように上部旋回体3の左右方向に平行移動する。そして、アンテナ脱着位置では、第1のアンテナ装置26は、右側面カバー13よりも右側に移動し、上部旋回体3の外側に配置される。このため、平行リンク31によって支持された第1のアンテナ装置26のアンテナ使用位置を、上部旋回体3の右端側(右側面カバー13側)に設定し、アンテナ脱着位置を、上部旋回体3の外側に設定することができる。従って、第1のアンテナ装置26がアンテナ使用位置とアンテナ脱着位置との間で移動するときに、アンテナ支持部材30の移動経路として上部旋回体3の機器収容空間19内に占有されるスペースを、可及的に小さくすることができる。
【0045】
第1のアンテナ装置26をアンテナ使用位置に移動させるときには、前右側面カバー13Bを開位置に移動させて機器収容空間19を開放した状態で、蝶ボルト34,35を緩める。そして、上側リンク32の一端32Aおよび下側リンク33の一端33Aを作動油タンク18に接近する方向に回動変位させ、アンテナ支持部材30を作動油タンク18に接近させた後、蝶ボルト34,35を締込む。このとき、アンテナ支持部材30の途中部位は、作動油タンク18の上面板18Cに設けられた切欠溝18G内に挿入される。この状態で、前右側面カバー13Bを閉位置に移動させることにより、第1のアンテナ装置26は、作動油タンク18の上方に突出したアンテナ使用位置に保持される。
【0046】
一方、第1のアンテナ装置26をアンテナ脱着位置に移動させるときには、前右側面カバー13Bを開位置に移動させて機器収容空間19を開放した状態で、蝶ボルト34,35を緩める。そして、上側リンク32の一端32Aおよび下側リンク33の一端33Aを作動油タンク18から離れる方向に回動変位させ、アンテナ支持部材30を作動油タンク18の右側方に離間させた後、蝶ボルト34,35を締込む。これにより、アンテナ支持部材30は、鉛直方向に延びた姿勢を保ったままアンテナ脱着位置へと平行移動し、アンテナ支持部材30の雄ねじ部30Cは、上部旋回体3を構成する右側面カバー13の外側に配置され、例えば地上に立った作業者の手が届く位置まで下降する。
【0047】
第2のアンテナ装置36は、カウンタウエイト6の左端側に取付部材(図示せず)を介して取付けられている(図2参照)。第2のアンテナ装置36は、第1のアンテナ装置26と共に一対のGNSSアンテナを構成し、これら第1,第2のアンテナ装置26,36は、上部旋回体3の左右方向に離間している。このように、第1のアンテナ装置26は、カウンタウエイト6よりも前側に位置して上部旋回体3の右側に搭載された作動油タンク18の上方に配置され、第2のアンテナ装置36は、カウンタウエイト6の左端側に配置されることにより、第1のアンテナ装置26と第2のアンテナ装置36との間隔は、可及的に大きく設定されている。これにより、第1,第2のアンテナ装置26,36を用いた油圧ショベル1の位置観測精度を高めることができる構成となっている。
【0048】
第1の実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、以下、油圧ショベル1の動作について説明する。
【0049】
油圧ショベル1を稼働させるときには、まず、第1のアンテナ装置26と第2のアンテナ装置36とを、上部旋回体3に取付ける。第1のアンテナ装置26を取付けるときには、オペレータ等の作業者が前右側面カバー13Bを開位置へと移動させ、機器収容空間19を開放する。このとき、機器収容空間19内には、アンテナ使用位置にロックされたアンテナ保持機構27が収容されている。
【0050】
次に、作業者は、蝶ボルト34,35を緩めることによりアンテナ保持機構27のロック状態を解除し、上側リンク32の一端32Aおよび下側リンク33の一端33Aを、作動油タンク18から離れる方向に回動変位させる。これにより、アンテナ支持部材30は、鉛直方向に延びた姿勢を保ったまま作動油タンク18から右側方に離間し、アンテナ脱着位置へと平行移動する。この状態で、蝶ボルト34,35を締込むことにより、アンテナ支持部材30がアンテナ脱着位置にロックされる。このとき、アンテナ支持部材30の雄ねじ部30Cは、上部旋回体3を構成する右側面カバー13の外側で、かつ地上に立った作業者の手が届く位置まで下降している。このため、作業者は、地上で安定した作業姿勢を保ちつつ、アンテナ支持部材30の雄ねじ部30Cに対し、第1のアンテナ装置26の雌ねじ部26Aを容易に螺合させることができる。また、アンテナ支持部材30は、アンテナ脱着位置において鉛直方向に延びた姿勢を保っている。この結果、アンテナ支持部材30の雄ねじ部30Cに対し、第1のアンテナ装置26の自重を利用して上方から第1のアンテナ装置26の雌ねじ部26Aを螺着することができ、第1のアンテナ装置26を取付けるときの作業性を向上させることができる。
【0051】
アンテナ支持部材30の先端に第1のアンテナ装置26を取付けた後には、蝶ボルト34,35を緩めた状態で、上側リンク32の一端32Aおよび下側リンク33の一端33Aを、作動油タンク18に接近する方向に回動変位させ、アンテナ支持部材30を作動油タンク18に接近させる。そして、アンテナ支持部材30が、図3および図5に示すアンテナ使用位置に移動した状態で、蝶ボルト34,35を締込む。これにより、アンテナ保持機構27は、第1のアンテナ装置26が作動油タンク18の上方に位置するアンテナ使用位置にロックされ、アンテナ支持部材30の途中部位は、作動油タンク18の上面板18Cに設けられた切欠溝18G内に挿入される。この状態で、前右側面カバー13Bを閉位置に移動させることにより、第1のアンテナ装置26をアンテナ使用位置に保持することができる。
【0052】
次に、作業者は、カウンタウエイト6の左端側に、取付部材(図示せず)を介して第2のアンテナ装置36を取付ける。これにより、第1のアンテナ装置26は、カウンタウエイト6よりも前側に位置して上部旋回体3の右側に搭載された作動油タンク18の上方に配置され、第2のアンテナ装置36は、カウンタウエイト6の左端側に配置され、これら第1のアンテナ装置26と第2のアンテナ装置36との間隔を、可及的に大きく設定することができる。
【0053】
第1,第2のアンテナ装置26,36が上部旋回体3に取付けられた状態で、オペレータは、キャブ10に搭乗して運転席(図示せず)に座り、エンジン7を始動させる。この状態で、走行用レバーペダル装置(図示せず)を操作することにより、油圧ショベル1を作業現場に向けて走行させることができる。そして、オペレータが、作業現場において操作レバー装置(図示せず)を操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を用いて掘削作業等を行うことができる。
【0054】
作業装置4を用いた掘削作業時には、第1,第2のアンテナ装置26,36が衛星からの位置情報を受信し、この位置情報をコントローラ(図示せず)に送信する。コントローラは、第1,第2のアンテナ装置26,36の位置情報に基づいて油圧ショベル1の位置情報を計測し、この油圧ショベル1の位置情報と、作業装置4に取付けられたセンサから得られる作業装置4の先端位置情報と、地形データや目標地形データとを照合して目標地形に施工するための演算を行い、例えばキャブ10内のモニタに施工情報(演算結果)を表示させる。これにより、オペレータは、モニタに表示された施工情報を確認しつつ、操作レバー装置を用いて作業装置4の動作を制御することにより、目標地形に施工することができる。
【0055】
次に、油圧ショベル1の稼働を停止したときには、盗難防止のために第1,第2のアンテナ装置26,36を上部旋回体3から取外す。第1のアンテナ装置26を取外すときには、作業者が前右側面カバー13Bを開位置へと移動させ、機器収容空間19を開放する。次に、作業者は、蝶ボルト34,35を緩めてアンテナ保持機構27のロック状態を解除し、上側リンク32の一端32Aおよび下側リンク33の一端33Aを、作動油タンク18から離れる方向に回動変位させる。これにより、アンテナ支持部材30は、鉛直方向に延びた姿勢を保ったまま、第1のアンテナ装置26と一緒にアンテナ使用位置からアンテナ脱着位置へと上部旋回体3の左右方向に平行移動する。そして、作業者が蝶ボルト34,35を締込むことにより、アンテナ保持機構27がアンテナ脱着位置にロックされる。
【0056】
このとき、第1のアンテナ装置26は、アンテナ使用位置とアンテナ脱着位置とで高さが切り替えられ、アンテナ脱着位置では地上に立った作業者の手が届く位置まで下降している。このため、作業者は、地上で安定した作業姿勢を保ちつつ、アンテナ支持部材30の雄ねじ部30Cから第1のアンテナ装置26の雌ねじ部26Aを容易に離脱させることができる。この場合、上側リンク32の一側の回動部である一端32Aと、下側リンク33の一側の回動部である一端33Aとは、鉛直方向に並べて配置されているので、アンテナ支持部材30は、アンテナ使用位置とアンテナ脱着位置との間を移動する間、常に鉛直方向に延びた姿勢を保つことができる。このため、第1のアンテナ装置26がアンテナ脱着位置に配置されたときには、第1のアンテナ装置26の雌ねじ部26Aが、第1のアンテナ装置26の自重によってアンテナ支持部材30の雄ねじ部30Cに係合する。これにより、第1のアンテナ装置26がアンテナ支持部材30から不用意に落下するのを抑えることができ、第1のアンテナ装置26を取外すときの作業性を向上させることができる。また、第1のアンテナ装置26を、アンテナ支持部材30と一緒に作動油タンク18から右側方に離れた位置へと平行移動させることができる。これにより、第1のアンテナ装置26の脱着作業時に、第1のアンテナ装置26が作動油タンク18の周囲に設けられた部品と干渉するのを防止することができ、脱着時の作業性を一層向上させることができる。
【0057】
しかも、アンテナ支持部材30、上側リンク32、下側リンク33によって平行リンク31が構成されているので、アンテナ支持部材30は、鉛直方向に延びる姿勢を保ったまま、アンテナ使用位置とアンテナ脱着位置との間を平行移動することができる。このため、平行リンク31がアンテナ使用位置とアンテナ脱着位置との間を移動する過程で、第1のアンテナ装置26がアンテナ支持部材30から抜出す方向を常に上向きとすることができる。この結果、平行リンク31が移動する過程で第1のアンテナ装置26がアンテナ支持部材30から脱落することがなく、アンテナ支持部材30に対する第1のアンテナ装置26の脱着作業を安心・安全に行うことができる。また、アンテナ支持部材30の長さ寸法を比較的小さく設定したとしても、アンテナ支持部材30をアンテナ脱着位置に移動させることにより、地上に立った作業者の手が届く位置に第1のアンテナ装置26を配置することができる。この結果、アンテナ支持部材30を含むアンテナ保持機構27全体を軽量化することができ、第1のアンテナ装置26を脱着するときの作業者の負担を軽減することができる。
【0058】
アンテナ支持部材30から第1のアンテナ装置26を取外した後には、蝶ボルト34,35を緩めた状態で、上側リンク32の一端32Aおよび下側リンク33の一端33Aを、作動油タンク18に接近する方向に回動変位させ、アンテナ支持部材30を作動油タンク18に接近させる。そして、アンテナ支持部材30が、図3および図5に示すアンテナ使用位置に移動した状態で、蝶ボルト34,35を締込む。これにより、第1のアンテナ装置26が取外されたアンテナ保持機構27が、アンテナ使用位置にロックされ、アンテナ支持部材30の途中部位は、作動油タンク18の上面板18Cに設けられた切欠溝18G内に挿入される。この状態で、前右側面カバー13Bを閉位置に移動させることにより、第1のアンテナ装置26が取外されたアンテナ保持機構27を、機器収容空間19内に収容することができる。そして、カウンタウエイト6の左端側に配置された第2のアンテナ装置36を取外すことにより、第1,第2のアンテナ装置26,36の盗難を防止することができる。
【0059】
かくして、第1の実施形態による油圧ショベル1は、第1のアンテナ装置26が脱着可能に取付けられたアンテナ支持部材30と、一端32Aがリンク支持部材28に回動可能に取付けられた上側リンク32と、上側リンク32の下側で一端33Aがリンク支持部材28に回動可能に取付けられた下側リンク33とを備え、アンテナ支持部材30は、上側リンク32の他端32Bおよび下側リンク33の他端33Bに回動可能に取付けられて平行リンク31を構成し、第1のアンテナ装置26は、平行リンク31により、上部旋回体3の上方に位置するアンテナ使用位置と、アンテナ使用位置よりも低い位置にあるアンテナ脱着位置とに切り替え可能に保持されている。
【0060】
この構成によれば、平行リンク31が、第1のアンテナ装置26をアンテナ使用位置からアンテナ脱着位置へと移動させることにより、第1のアンテナ装置26を地上に立った作業者の手が届く高さまで下降させることができる。この結果、作業者は、地上で安定した作業姿勢を保ちつつ、アンテナ支持部材30に対する第1のアンテナ装置26の脱着作業を行うことができ、その作業性を向上させることができる。また、平行リンク31がアンテナ使用位置とアンテナ脱着位置との間を移動する過程で、第1のアンテナ装置26がアンテナ支持部材30から抜出す方向を常に上向きとすることができる。従って、第1のアンテナ装置26が不意にアンテナ支持部材30から脱落するのを確実に防止でき、アンテナ支持部材30に対する第1のアンテナ装置26の脱着作業を安心・安全に行うことができる。
【0061】
また、第1のアンテナ装置26のアンテナ脱着位置は、上部旋回体3の外側に位置している。この構成によれば、アンテナ使用位置からアンテナ脱着位置へと移動した第1のアンテナ装置26を、作動油タンク18から右側方に離れた位置に配置することができる。この結果、第1のアンテナ装置26の脱着作業時に、第1のアンテナ装置26が作動油タンク18の周囲に設けられた部品と干渉するのを防止することができ、脱着時の作業性を一層向上させることができる。しかも、第1のアンテナ装置26がアンテナ使用位置とアンテナ脱着位置との間で移動するときに、アンテナ支持部材30の移動経路を、上部旋回体3の機器収容空間19内に大きく確保する必要がないので、機器収容空間19内の機器収容スペースを大きく確保することができる。
【0062】
また、上部旋回体3は、外側面を覆う右側面カバー13が取付けられたサポート部材14を備え、サポート部材14の下部には、リンク支持部材28が取付けられており、上側リンク32の一端32Aおよび下側リンク33の一端33Aは、リンク支持部材28に取付けられている。この構成によれば、リンク支持部材28を取付けるための専用の部材を追加することなく、既存のサポート部材14を利用してリンク支持部材28を取付け、このリンク支持部材28に上側リンク32、下側リンク33、アンテナ支持部材30からなる平行リンク31を取付けることができる。
【0063】
また、上側リンク32の一端32Aおよび下側リンク33の一端33Aは、鉛直方向に並べて配置されている。この構成によれば、アンテナ支持部材30を、鉛直方向に延びた姿勢を保った状態で、アンテナ使用位置とアンテナ脱着位置との間で移動させることができる。この結果、アンテナ支持部材30がアンテナ使用位置とアンテナ脱着位置との間を移動する間に、アンテナ支持部材30の先端側を常に鉛直上向きに保つことができる。従って、仮に第1のアンテナ装置26とアンテナ支持部材30との取付部が緩んだとしても、第1のアンテナ装置26がアンテナ支持部材30の先端側から脱落するのを抑えることができる。
【0064】
次に、図7は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、カウンタウエイトに収容凹部が設けられ、この収容凹部内にリンク支持部材が配置されていることにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図中、カウンタウエイト37は、第1の実施形態によるカウンタウエイト6と同様に、上部旋回体3を構成する旋回フレーム5の後側に設けられ、作業装置4との重量バランスをとるものである。しかし、カウンタウエイト37は、後述の収容凹部38が設けられている点で、第1の実施形態によるものとは異なっている。
【0066】
収容凹部38は、カウンタウエイト37の右端部に設けられている。収容凹部38は、カウンタウエイト37の右端部を外側面37Aから内側に凹むように切欠くことにより形成され、カウンタウエイト37の外側面37Aに開口した状態でカウンタウエイト37の右端部を上下方向に貫通している。収容凹部38の内部には、後述のアンテナ保持機構40が収容され、収容凹部38の内面は、支持部材取付面38Aとなっている。凹部カバー39は、カウンタウエイト37の右端部にボルト等を用いて脱着可能に取付けられている。凹部カバー39は、カウンタウエイト37の右端部に取付けられることにより、収容凹部38を覆っている。
【0067】
アンテナ保持機構40は、カウンタウエイト37の収容凹部38内に設けられている。アンテナ保持機構40は、第1の実施形態によるアンテナ保持機構27と同様に、リンク支持部材28と、アンテナ支持部材30と、上側リンク32と、下側リンク33とを含んで構成されている。アンテナ支持部材30、上側リンク32、下側リンク33は、平行リンク31を構成している。この場合、リンク支持部材28は、収容凹部38内に配置され、支持部材取付面38Aにボルト29を用いて取付けられている。アンテナ保持機構40は、第1のアンテナ装置26を、カウンタウエイト37の上方に位置するアンテナ使用位置(図7の位置)と、アンテナ使用位置よりも低い位置にあるアンテナ脱着位置とに切り替え可能に保持している。
【0068】
アンテナ保持機構40がアンテナ脱着位置に移動したときには、第1のアンテナ装置26がアンテナ支持部材30から取外される。アンテナ保持機構40は、第1のアンテナ装置26が取外された状態で収容凹部38内に収容され、これらアンテナ保持機構40と収容凹部38とは、カウンタウエイト37の右端部に取付けられた凹部カバー39によって覆うことができる。
【0069】
第2の実施形態による油圧ショベルは、上述の如き構成を有するもので、第2の実施形態においても、平行リンク31が、アンテナ支持部材30をアンテナ使用位置からアンテナ脱着位置に移動させることにより、アンテナ支持部材30に取付けられた第1のアンテナ装置26を平行移動させ、地上に立った作業者の手が届く高さまで下降させることができる。従って、作業者は、安定した作業姿勢を保ちつつ、アンテナ支持部材30に対する第1のアンテナ装置26の脱着作業を行うことができ、その作業性を向上させることができる。
【0070】
なお、第1の実施形態では、作動油タンク18と前右側面カバー13Bとの間に形成された機器収容空間19内にアンテナ保持機構27を収容した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば後右側面カバー13A、後左側面カバー12A、前左側面カバー12B等によって開閉可能に覆われた空間内にアンテナ保持機構を収容する構成としてもよい。
【0071】
また、実施形態では、上側リンク32の一端32Aをリンク支持部材28に回動可能に取付け、他端32Bをアンテナ支持部材30に回動可能に取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、上側リンク32の長さ方向の中間部から一端32Aまでの間となる上側リンク32の一側をリンク支持部材28に回動可能に取付け、上側リンク32の長さ方向の中間部から他端32Bまでの間となる上側リンク32の他側をアンテナ支持部材30に回動可能に取付ける構成としてもよい。これと同様に、下側リンク33の一側(長さ方向の中間部から一端33Aまでの間)をリンク支持部材28に回動可能に取付け、下側リンク33の他側(長さ方向の中間部から他端33Bまでの間)をアンテナ支持部材30に回動可能に取付ける構成としてもよい。
【0072】
また、実施形態では、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1に適用した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベルにも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
6,37 カウンタウエイト
13B 前右側面カバー(側面カバー)
14 サポート部材
19 機器収容空間
26 第1のアンテナ装置
27,40 アンテナ保持機構
28 リンク支持部材
30 アンテナ支持部材
31 平行リンク
32 上側リンク(第1リンク部材)
33 下側リンク(第2リンク部材)
36 第2のアンテナ装置
37A 外側面
38 収容凹部
39 凹部カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7