(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】疎な潤滑用途のポンプ機能を備える流体動圧スラストワッシャ
(51)【国際特許分類】
F16C 17/04 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
F16C17/04 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020073686
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2020-07-09
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599039289
【氏名又は名称】フロイデンベルグ-エヌオーケー ジェネラル パートナーシップ
【氏名又は名称原語表記】FREUDENBERG-NOK GENERAL PARTNERSHIP
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サイクリシュナ サンダララマン
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド エル.スパラゴスキー
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ピー.ハーゼル
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-031979(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03290724(EP,A1)
【文献】特開平11-082487(JP,A)
【文献】特開2017-180582(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00-17/26
F16C 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一軸面及び第二軸面、前記第一軸面と前記第二軸面との間に延在する外側壁部及び内側壁部を有
する環状体を備え、
前記第一軸面及び前記第二軸面のうちの少なくとも1つは、複数の曲がった凹状溝部と、前記複数の曲がった凹状溝部の間の非凹状ランドとを有し、
前記複数の凹状溝部は、前記内側壁部と前記外側壁部との間に延在し前記ランドに移行する移行領域と、下方段差壁部によって前記移行領域から分離される凹みを
形成するスクープ領域と、を有し、
前記下方段差壁部は、前記移行領域と前記スクープ領域との間に延在し、
前記スクープ領域は、前記外側壁部において前記スクープ領域の他部分よりも
前記環状体の周方向に広く形成された入口端部開口を有する、環状スラストワッシャ。
【請求項2】
前記複数の凹状溝部は、
前記環状体の前記周方向に頂点が向くV字状に形成されたシェブロン形状を有する、請求項1に記載の環状スラストワッシャ。
【請求項3】
前記移行領域と前記スクープ領域との間にある前記下方段差壁部は、前記外側壁部で終端する先端部を有する、請求項1に記載の環状スラストワッシャ。
【請求項4】
前記複数の凹状溝部は、前記外側壁部の接線に対して0°から85°の間の入口角を有する半径方向の側面を有する、請求項3に記載の環状スラストワッシャ。
【請求項5】
前記移行領域と前記スクープ領域との間にある前記下方段差壁部の前記先端部は、0.0254から2.54ミリメートルの間の半径R
tを有する曲率のある端部を持つ、請求項3に記載の環状スラストワッシャ。
【請求項6】
前記移行領域と前記スクープ領域との間にある前記下方段差壁部は、前記先端部から径方向内側に延伸するとともに、0.127から19.05ミリメートルの間の半径R
Liを持った引き込み表面を有する、請求項5に記載の環状スラストワッシャ。
【請求項7】
前記複数の凹状溝部は、少なくとも4つの凹状溝部である、請求項1に記載の環状スラストワッシャ。
【請求項8】
前記複数の凹状溝部は、前記第一軸面及び前記第二軸面に配置される、請求項1に記載の環状スラストワッシャ。
【請求項9】
第一軸面及び第二軸面、前記第一軸面と前記第二軸面との間に延在する外側壁部及び内側壁部を有する環状体を備え、
前記第一軸面及び前記第二軸面のうちの少なくとも1つは、前記内側壁部にそれぞれ開口を形成する2つの端部及び前記外側壁部に開口する中間開口部を持つ、曲がった凹状溝部と、前記複数の曲がった凹状溝部の間の非凹状ランドとを有し、
前記複数の曲がった凹状溝部は、前記ランドに移行する移行領域と、下方段差壁部によって前記移行領域から分離される凹みを
形成するスクープ領域とを有し、
前記下方段差壁部は、前記移行領域と前記スクープ領域との間に延在し、
前記スクープ領域は前記外側壁部において入口端部開口を有し、
前記移行領域は前記スクープ領域を挟んで対向する、環状スラストワッシャ。
【請求項10】
前記下方段差壁部は、前記外側壁部で終端する先端部を有する、請求項9に記載の環状スラストワッシャ。
【請求項11】
前記複数の曲がった凹状溝部は、前記外側壁部の接線に対して0°から85°の間の入口角を含む半径方向の側面を有する、請求項10に記載の環状スラストワッシャ。
【請求項12】
前記先端部は、0.0254から2.54ミリメートルの間の半径R
tを有する曲率のある端部を持つ、請求項10に記載の環状スラストワッシャ。
【請求項13】
前記複数の曲がった凹状溝部は、前記環状体の前記第一軸面及び前記第二軸面に配置される、請求項9に記載の環状スラストワッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、疎な潤滑用途のポンプ機能を有する流体動圧スラストワッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、必ずしも従来技術ではない、本開示に関連する背景情報を提供する。
【0003】
スラストワッシャは、潤滑の損失、及び高い界面温度条件が原因で機能しない。ポリマースラスト軸受について一般的な故障モードの1つは、潤滑の損失に直接起因する、過剰な界面温度が原因である。この故障モードは、既存の設計が遠心力を克服することによって潤滑剤を界面中に効率的にポンピングすることができないことが原因で、潤滑が軸受のODにおいてのみ利用可能である用途において顕著である。その結果、このような用途の条件においてポリマー軸受の使用が課題となっている。
【発明の概要】
【0004】
このセクションは、本開示の一般的な概要を提供し、その全範囲、またはその特徴のすべての網羅的な開示ではない。
【0005】
本開示は、熱可塑性材料、熱硬化性材料、金属材料、またはセラミック材料から作製されるスラスト軸受を対象とする。本開示は、改善された溝部の特徴を使用して、潤滑剤の薄膜を形成する能力を向上させる。これらの特徴は、より良好な膜生成を可能にすることにより、より低い摩擦及び界面温度を可能にする。これらの特徴が従来の溝部の幾何学的形状よりも潤滑剤をより効率的に用いるため、これらの特徴は、非常に低い潤滑条件の使用を可能にする。これらの新規の設計の結果により、今日使用されている設計と比べて、トルクを低減しながら、それらをより積極的な速度及び圧力の用途で使用することが可能である。
【0006】
新規の溝部の特徴は、流体動圧性能を提供しながら、ワッシャのODからIDまで潤滑剤をポンピングする。これらの特徴は、摩擦抵抗を最小に保つ速度範囲にわたる潤滑剤の最適な流量を提供し、それらが従来の溝部の幾何学的形状よりも潤滑剤をより効率的に用いるため、非常に低い潤滑条件の使用を可能にする。
【0007】
さらなる適用範囲は、本明細書に提供されている説明から明らかになるであろう。この発明の概要における説明及び特定の実施例は、例示目的のみのために意図され、本開示の範囲を限定することが意図されない。
【0008】
本明細書に記載されている図面は、選択された実施形態の例示目的のみのためのものであり、すべての可能な実装ではなく、本開示の範囲を限定することが意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態における、流体動圧機能を有するスラストワッシャの斜視図である。
【
図2】より少ない数の流体動圧溝部を有する、
図1に示されるスラストワッシャと同様のスラストワッシャの平面図である。
【
図3】
図1及び
図2に示されるスラストワッシャの流体動圧機能の詳細な平面図である。
【
図4】第二実施形態における、流体動圧機能を有するスラストワッシャの斜視図である。
【
図5】第三実施形態における、流体動圧機能を有するスラストワッシャの斜視図である。
【
図6】第四実施形態における、流体動圧機能を有するスラストワッシャの斜視図である。
【
図7】
図6に示されるスラストワッシャの流体動圧機能の詳細な平面図である。
【
図8】第五実施形態における、流体動圧機能を有するスラストワッシャの斜視図である。
【
図9】第六実施形態における、流体動圧機能を有するスラストワッシャの斜視図である。
【
図10】
図9に示されるスラストワッシャの部分平面図である。
【
図11】
図8に示されるスラストワッシャの流体動圧機能の詳細な平面図である。
【
図12】スラストワッシャの第七実施形態における、流体動圧機能の詳細な平面図である。
【
図13】
図12に示されるスラストワッシャの流体動圧機能の側面図である。
【
図14】
図4に示される流体動圧機能の詳細な平面図である。
【
図15】
図14に示されるスラストワッシャの流体動圧機能の側面図である。
【
図16】第八実施形態における、流体動圧機能を有するスラストワッシャの斜視図である。
【
図17】本開示のさまざまなスラストワッシャ設計のための臨界速度比較を提供するグラフである。
【
図18】本開示のさまざまなスラストワッシャ設計のためのポンプ速度比較を提供するグラフである。
【
図19】本開示のさまざまなスラストワッシャ設計のための臨界速度対入口角のグラフである。
【
図20】本開示のさまざまなスラストワッシャ設計のためのポンプ速度対入口角のグラフである。
【
図21】対称双方向流体動圧溝部を含むスラストワッシャの斜視図である。
【
図22】代替の実施形態における、対称双方向流体動圧溝部を含むスラストワッシャの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
対応する参照番号は、いくつかの図面全体を通して対応する部品を示す。
【0011】
ここで、例示的な実施形態は、添付の図面を参照してより完全に説明されるであろう。
【0012】
例示的な実施形態は、本開示が徹底され、当業者にこの範囲を完全に伝えるように提供されている。複数の特定の詳細は、本開示の実施形態の完全な理解を提供する、特定の構成要素、装置、及び方法の実施例などに記載されている。特定の詳細が用いられる必要がないこと、例示的な実施形態が多くの異なる形態で具現化されることができること、及びいずれも本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことが当業者には明らかであろう。いくつかの例示的な実施形態において、周知のプロセス、周知のデバイス構造、及び周知の技術は、詳細に記載されていない。
【0013】
本明細書に使用される専門用語は、特定の例示的な実施形態を説明する目的のみのためのものであり、制限することが意図されない。本明細書に使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明らかに示さない限り、複数形も含むことが意図されることができる。「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」、及び「有している(having)」という用語は、包括的であるため、記載されている特徴、完全体、ステップ、操作、要素、及び/または構成要素の存在を明示するが、1つ以上の他の特徴、完全体、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/またはそれらの群の存在または追加を排除しない。本明細書に記載されている方法ステップ、プロセス、及び操作は、実行順序として明確に特定されない限り、必ずしも考察されている、または図示されている特定の順序でそれらの実行を必要とすると解釈されるべきではない。また、追加の、または代替のステップを用いることができることを理解されたい。
【0014】
要素または層が別の要素または層「上に」ある、「に係合される」、「に接続される」、または「に結合される」と称されるとき、それは、直接に、他の要素もしくは層上にある、これに係合される、これに接続される、もしくはこれに結合されることができる、または介在する要素もしくは層は、存在することができる。対照的に、要素が別の要素または層「上に直接に」ある、「に直接係合される」、「に直接接続される」、または「に直接結合される」と称されるとき、介在する要素または層の存在がなくてもよい。要素間の関係を説明するために使用される他の単語は、同様の方式(例えば、「間に」対「直接間に」、「隣接して」対「直接隣接して」など)において解釈されたい。本明細書に使用される場合、用語 「及び/または」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のいずれかの組み合わせ、及びすべての組み合わせを含む。
【0015】
第一、第二、第三などの用語がさまざまな要素、構成要素、領域、層及び/またはセクションを説明するために本明細書に使用されることができるが、これらの要素、構成要素、領域、層及び/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、またはセクションを別の領域、層、またはセクションと区別するために使用されるに過ぎないことができる。「第一」、「第二」及び他の数値用語などの用語は、本明細書に使用されるときに、文脈によって明らかに示されない限り、配列または順序を黙示しない。したがって、以下に考察される第一要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第二要素、構成要素、領域、層、またはセクションと称されることができる。
【0016】
「内側に」、「外側に」、「下方向に」、「より下に」、「下部に」、「より上に」、「上部に」などのような、空間的に相対的な用語は、図面に示されるように、別の要素(複数可)または特徴(複数可)に対する、1つの要素または特徴の関係を説明する説明の容易さのために本明細書に使用されることができる。空間的に相対的な用語は、図面に示される方向に加えて、使用または動作中のデバイスの異なる方向を包含することが意図されてもよい。例えば、図中のデバイスが反転する場合、他の要素または特徴「より下に」または「下方向に」と説明される要素は、次いで、他の要素または特徴「より上に」配向される。したがって、「より下に」の例示的な用語は、より上に、またより下にの両方の向きを包含することができる。デバイスは、その他の方法により配向される(90度または他の方向に回転する)ことができ、これに応じて本明細書に使用される空間的に相対的な記述子は、解釈されることができる。
【0017】
図1を参照して、スラスト軸受10は、その中にアパーチャ14を含む環状体12を含むように示される。環状体12は、外径側壁部20に加えて、内径側壁部22中に、第一軸面16及び第二軸面18を有し、この内径側壁部22は、第一軸面16と第二軸面18との間に延在する。軸面16、18のうちの少なくとも1つは、軸面16中に示されるように、内径側壁部22から外径側壁部20に延在する複数の凹状流体動圧溝部24を含む。軸面16は、凹状流体動圧溝部24の間に配置される複数の平面ランド26を備える。
図2及び
図3の流体動圧溝部24は、
図1が18個の流体動圧溝部24を示すこと、ならびに
図2及び
図3が12個の流体動圧溝部24を示すことを除き、
図1中の流体動圧溝部24と同じである。流体動圧溝部24の数が特定の用途に基づき選択されることができることを理解されたい。例として、
図6は、8個の流体動圧溝部24を示す。
【0018】
本開示によるスラスト軸受は、熱可塑性材料、熱硬化性材料、または機械加工、成形、焼結、スタンピング、もしくは他の技術を使用して製造される金属及びセラミックスを含む他の工学材料から作製される。
図1~
図16、及び
図21~
図22の設計案は、潤滑が軸受の内径(ID)に対向する外径(OD)で利用可能である用途に特有である。潤滑の利用可能性は、ODにおいて強制(IDよりもODにおいてより高い圧力)潤滑、またはODにおいて潤滑剤の疎な利用可能性を有するはねかけ式潤滑のいずれかであることができる。
【0019】
凹状流体動圧溝部24は、半径方向の側面R1を有することができるらせん形状の溝部からなることができる。
図1~
図3に示されるように、半径方向の側面Rは、
図2及び
図3に示されるように、内径の半分未満であることができる。代替として、
図6及び
図7に示されるように、半径方向の側面R2は、ODの四分の一に等しいことができる。さらなる代替として、
図8に示されるように、半径方向の側面R3は、ODの四分の一より大きいことができる。半径方向の側面Rは所望の用途に基づき選択されることができ、
0.127ミリメートルから0.95*IDに及ぶ半径の値を有することができることを理解されたい。加えて、半径方向の側面は、入口角に正接することができ、円形、楕円形、双曲線、または対数であることができる。
【0020】
凹状流体動圧溝部24は、平面ランド26から移行する第一移行溝部領域24A、ならびに移行溝部領域24A及び平面ランド26に対して下方向に段差のあるスクープ領域24Bを含む。凹状流体動圧溝部24の移行溝部領域24Aは、円形外側壁部20の接線に対して半径方向の側面Rの接線の角度によって規定される入口角αを有する。入口角は、0から85°に及ぶことができる。
図3では、角度αを15°として示す。代替に、
図7では、角度αを0°として示す。入口角αが所望の用途に基づき選択されることができることを理解されたい。加えて、スクープ領域24Bは、
図11の詳細な図によって最も良好に示されるように、指定された深さD(
図13及び15に最も良好に示される)、先端半径R
t、引き込み半径R
Li、及びブレンド半径R
bによって設計されることができる。スクープ先端半径R
tは、
0.0254から
2.54ミリメートルに及ぶ。スクープ引き込み半径R
Liは、
0.127から
19.05ミリメートルに及ぶことができる。スクープブレンド半径R
bは、
0.127から
25.4ミリメートルに及ぶことができる。
図4及び
図5に示されるように、スクープ領域24Bの入口端部30は、所望の用途に応じて周方向により長く、またはより短く設計されることができる。
【0021】
スクープ領域24Bは、回転速度の範囲について遠心力(流体を外方向に押すように作用する)を克服することによって、ワッシャのODに利用可能な潤滑剤をIDにポンピングするように設計される。流体動圧溝部24の移行溝部領域24Aは、負荷、速度、及び潤滑条件の範囲にわたり推進力を支持する流体膜を生成して保持することによって、ワッシャ10のランド26中への流体流を促進する際に援助するので、ランド面26の摩擦損失及び摩耗を最小限にする。ワッシャ10のODからIDに流体を引き出す機能は、ODはねかけ潤滑環境、及び強制潤滑環境においてワッシャ10が動作することを可能にする。
【0022】
溝部は、分析ツールを使用して設計され、そのうえ試験台上で検証された。試験の結果は、
図17~
図20に要約され、
図1、
図4~
図6、
図9、及び
図16に設計についての臨界速度及びポンプ速度を示す。臨界速度は、ポンプ速度がゼロになるときに対応する速度として定義される。また、これらの結果を慣習的な従来技術の設計PA1、PA2と比較する。みてわかることができるように、開発された設計は、ベースライン設計PA1及びPA2と比較して、臨界速度、及びポンプ速度を有意に改善されている。
【0023】
図9~
図11のスラストワッシャ110は、シェブロン形状溝部124を含む。
図9のシェブロン形状溝部124は、ワッシャ10の周方向を指すVを形成する内側セグメント128及び外側セグメント130を含む。シェブロン形状溝部124は、らせん形状溝部24に置換され、移行溝部領域124A、及びスクープ領域124Bを含む。シェブロン形状溝部124は、この設計が軸受のID及びODの両方から流体をポンピングすることによって流体膜生成を最初に促進するため、それが低いポンプ速度にもかかわらず臨界速度を増加させた独特の結果を達成する。シェブロン型溝部124は、ID及びODの両方に利用可能な流体を用いて界面を潤滑するために利用されることができる。シェブロン形状溝部は、OD及びID上の溝部間にオフセットを設けることができる。
【0024】
用途条件に基づき、スラストワッシャ設計のためのパラメータは、特定の動作要件を満たすように合わせられることができる。これらの新規の設計は、ODはねかけ潤滑用途、及びOD加圧用途における使用のために理想的である。
【0025】
図12は、第七実施形態における、例示的な凹状流体動圧溝部24の詳細な平面図を示す。
図13は、スクープ領域24B、及び移行溝部領域24Aの入口端部30を示すワッシャ10の側面図である。
図12及び
図13の実施形態において、スクープ領域24Bの入口端部30は、移行溝部領域24Aの入口端部の入口長さL2よりも周方向に短い入口長さL1を有する。スクープ領域24Bは、深さDを有し、スクープ領域24Bと移行溝部領域24Aとの間の段差領域32は、弓状または角度付きであることができ、スクープ領域24Bから上方向に延伸する高さHを有することができる。
【0026】
図14は、第四実施形態における、例示的な凹状流体動圧溝部24の詳細な平面図を示す。
図15は、スクープ領域24B、及び移行溝部領域24Aの入口端部30を示すワッシャ10の側面図である。
図14及び
図15の実施形態において、スクープ領域24Bの入口端部30は、移行溝部領域24Aの入口端部よりも周方向に長い。
【0027】
図16を参照して、ワッシャ10は、凹状流体動圧溝部24が半径方向に延在するテーパ状溝部40と組み合わされる第八実施形態を示す。テーパ状溝部40は、半径方向の外方向により狭くなる。テーパ状溝部または直線状溝部の他の形状を凹状流体動圧溝部24と組み合わせることができることを理解されたい。
【0028】
上記に言及されている溝部24が
図21及び
図22に示されるように、スラストワッシャ10の片面または両面上に用いられることができることに留意されたい。スラストワッシャ10の両面上の溝部24は、示されるように、アライメントを取る、または周方向にオフセットされることができる。スラストワッシャ10の両面上の溝部24は、オフセットされ、鏡映されることができる。スラストワッシャ10の両面上の溝部24は、溝部24が重なるが鏡映されないため、対向する面上のこれらの溝部は、上面から見られるときに交差する。
【0029】
図21を参照して、スラストワッシャ210が、双方向の対称な溝部224を含むさらなる実施形態を示す。スラストワッシャ210は、その中にアパーチャ214を含む環状体212を備える。環状体212は、外径側壁部220に加えて、内径側壁部222中に、第一軸面216及び第二軸面218を有し、この内径側壁部222は、第一軸面216と第二軸面218との間に延在する。軸面216、218のうちの少なくとも1つは、軸面216中に示されるように、内径側壁部222から外径側壁部220に延在する複数の対称凹状流体動圧溝部224を含む。軸面216は、凹状流体動圧溝部224の間に配置される複数の平面ランド226A、226Bを備える。ランド226Aは、流体動圧溝部224の内側部上にあり、ランド226Bは、流体動圧溝部224の外側部上にある。凹状流体動圧溝部224は、平面ランド226Bから移行する第一移行溝部領域224A、ならびに移行溝部領域224A及び平面ランド226Aに対して下方向に段差のあるスクープ領域224Bを含む。凹状流体動圧溝部224の移行溝部領域224Aは、円形外側壁部220の接線に対して半径方向の側面Rの接線の角度によって規定される入口角αを有する。追加の移行溝部領域224Cは、スクープ領域224Bの内側部上に設けることができる。双方向対称溝部224は、ランド面226への潤滑を損なうことなく、両方向での相対的な回転を可能にする。
【0030】
図22を参照して、スラストワッシャ310が、双方向の対称な溝部324を含むさらなる実施形態を示す。スラストワッシャ310は、その中にアパーチャ314を含む環状体312を備える。環状体312は、外径側壁部320に加えて、内径側壁部322中に、第一軸面316及び第二軸面318を含み、この内径側壁部322は、第一軸面316と第二軸面318との間に延在する。軸面316、318のうちの少なくとも1つ(及び任意選択で両方)は、軸面316中に示されるように、内径側壁部322から外径側壁部320に延在する複数の対称凹状流体動圧溝部324を含む。軸面316は、凹状流体動圧溝部324の間に配置される複数の平面ランド326A、326Bを含む。ランド326Aは、流体動圧溝部324の内側部上にあり、ランド326Bは、流体動圧溝部324の外側部上にある。凹状流体動圧溝部324は、平面ランド326Bから移行する第一移行溝部領域324A、ならびに移行溝部領域324A及び平面ランド326Aに対して下方向に段差のあるスクープ領域324Bを含む。凹状流体動圧溝部324の移行溝部領域324Aは、円形外側壁部320の接線に対して半径方向の側面Rの接線の角度によって規定される入口角αを有する。追加の移行溝部領域324Cは、スクープ領域324Bの内側部上に設けることができる。加えて、
図21の実施形態からの変形として、スクープ領域の入口端部は、外径側壁部320から内方向に凹状であるため、追加の移行溝部領域324Dは、外側ランド226Bの半径方向の外側部上に配置されることができる。双方向対称溝部324は、ランド面326への潤滑を損なうことなく、両方向での相対的な回転を可能にする。
【0031】
これらの実施形態の前述の説明は、例示及び説明のために提供されている。網羅的であること、または本開示を制限することは意図されない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されないが、適用可能である場合に、交換可能であり、具体的に示されない、または説明されない場合でも、選択された実施形態に使用されることができる。また、同じことは、多くの方式において変更されることができる。それらのような変形形態は、本開示からの逸脱とみなされず、すべてのそれらのような変更形態は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。