(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体および踏切の軌道のフランジウェイ用ゴム体セット
(51)【国際特許分類】
E01B 15/00 20060101AFI20230626BHJP
E01C 9/04 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
E01B15/00
E01C9/04
(21)【出願番号】P 2020084842
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000134903
【氏名又は名称】株式会社ニシヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】間々田 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】坪川 洋友
(72)【発明者】
【氏名】太田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康大
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大志郎
(72)【発明者】
【氏名】戸神 賢
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒司
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-031817(JP,A)
【文献】特開平08-311803(JP,A)
【文献】独国特許発明第19859708(DE,C1)
【文献】特開昭54-008311(JP,A)
【文献】実公昭48-006242(JP,Y1)
【文献】特開2012-184570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0000988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00-26/00
E01C 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状が、
円弧状の下面を有する下部アーチ部と、この下部アーチ部の一端に連なる鉛直部と、この鉛直部の他端に連なり上記下部アーチ部の頂上の上方まで延在する水平部と、この水平部の他端に連なり下方に傾斜する第1傾斜部と、この第1傾斜部の他端に連なり上記鉛直部側に近づくように上記第1傾斜部と反対方向に傾斜して上記下部アーチ部の他端に連なる第2傾斜部と、上記下部アーチ部の頂上と上記水平部の上記他端との間を接続するように鉛直方向に設けられた支柱部とを有し、
上記第1傾斜部は下方に直線的に傾斜する第1部分とこの第1部分より小さい角度で下方に直線的に傾斜する第2部分とからなり、上記第1部分と上記第2部分との境界部において上記第1部分に対して上記第2部分が鉛直方向下方にずれて
側面に段差がついており、
上記下部アーチ部と上記鉛直部と上記水平部と上記支柱部とにより囲まれた空間および上記下部アーチ部と上記支柱部と上記第1傾斜部と上記第2傾斜部とにより囲まれた空間がそれぞれ空洞となって
おり、
踏切の軌道のフランジウェイに詰めたときに上記水平部の上面がフランジウェイの両側のレールの頭部上面およびコンクリートブロック上面とほぼ同一平面上に位置するように選ばれた高さを有する、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体。
【請求項2】
上記下部アーチ部、上記鉛直部の上半分の部分、上記水平部、上記第1傾斜部および上記第2傾斜部の肉厚は12mm以上15mm以下である請求項1記載の、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体。
【請求項3】
底面から上記下部アーチ部の下面の頂上までの高さが13mm以上17mm以下である請求項1または2記載の、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体。
【請求項4】
上記第1傾斜部の上記第1部分の水平面に対する傾斜角度は33度±2度、上記第2傾斜部の水平面に対する傾斜角度は61度±2度である請求項1~3のいずれか一項記載の、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体。
【請求項5】
横断面形状が、
円弧状の下面を有する下部アーチ部と、この下部アーチ部の一端に連なる鉛直部と、この鉛直部の他端に連なり上記下部アーチ部の頂上の上方まで延在する水平部と、この水平部の他端に連なり下方に傾斜する第1傾斜部と、この第1傾斜部の他端に連なり上記鉛直部側に近づくように上記第1傾斜部と反対方向に傾斜して上記下部アーチ部の他端に連なる第2傾斜部と、上記下部アーチ部の頂上と上記水平部の上記他端との間を接続するように鉛直方向に設けられた支柱部とを有し、上記第1傾斜部は下方に直線的に傾斜する第1部分とこの第1部分より小さい角度で下方に直線的に傾斜する第2部分とからなり、上記第1部分と上記第2部分との境界部において上記第1部分に対して上記第2部分が鉛直方向下方にずれて
側面に段差がついており、上記下部アーチ部と上記鉛直部と上記水平部と上記支柱部とにより囲まれた空間および上記下部アーチ部と上記支柱部と上記第1傾斜部と上記第2傾斜部とにより囲まれた空間がそれぞれ空洞となって
おり、踏切の軌道のフランジウェイに詰めたときに上記水平部の上面がフランジウェイの両側のレールの頭部上面およびコンクリートブロック上面とほぼ同一平面上に位置するように選ばれた高さを有する、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体と、
設置時に上記下部アーチ部の下側に上記踏切の軌道のフランジウェイ用
詰めゴム体に平行に設けられる柱状の支持ゴム体と、
からなる、踏切の軌道のフランジウェイ用ゴム体セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体および踏切の軌道のフランジウェイ用ゴム体セットに関し、特に、踏切の軌道のフランジウェイのバリアフリー化に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路と道路とが平面交差する踏切道に用いられる踏切舗装構造においては、列車の車輪のフランジの通過を可能とするために、本線レールとコンクリートブロックとの間にフランジウェイと呼ばれる隙間が形成される。
【0003】
フランジウェイには、車椅子、ベビーカー、シルバーカー等の車輪や、踏切を渡る人の足等が落ち込むのを防止するため、ゴム等の弾性材で形成された防護材が嵌め込まれる。ただし、防護材の高さが低いため、踏切のバリアフリー化を目指した踏切用防護材が提案されている(特許文献1参照)。この踏切用防護材は、ゴム等の弾性材により断面略台形状をなす筒状に形成され、底部は肉厚で、かつフランジウェイに嵌合される幅に形成され、上部はフランジウェイの間隔よりやや幅狭に形成され、その上面は本線レールの頭部上面と略同一平面を成すような高さを有していると共に、両側部はやや肉薄に形成され、それぞれ内側に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に提案された踏切用防護材は、例えば体重の重い人が乗った車椅子が踏切を横断する場合、車椅子の車輪がフランジウェイ上に差しかかって荷重が加わったときに潰れてしまうおそれがあり、バリアフリー性が不十分であると考えられる。加えて、レールの保守点検のために検測車を走行させてレール頭部の側面にレーザー光を照射することがあるが、この踏切用防護材では、レール頭部の側面へのレーザー光の照射が妨げられてしまうことからレーザー光によるレールの保守点検を行うことができない。
【0006】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、踏切の軌道のフランジウェイに容易に挿入することができ、しかも挿入後フランジウェイから容易に外れることがなく、体重の重い人が乗った車椅子等が踏切を横断する場合においてもフランジウェイ上を支障なく通過することができることにより十分なバリアフリー性を得ることができ、レーザー光によるレールの検測を妨げることもない、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体およびこの踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体と支持ゴム体とを組み合わせた踏切の軌道のフランジウェイ用ゴム体セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は、
横断面形状が、下部アーチ部と、この下部アーチ部の一端に連なる鉛直部と、この鉛直部の他端に連なり上記下部アーチ部の頂上の上方まで延在する水平部と、この水平部の他端に連なり下方に傾斜する第1傾斜部と、この第1傾斜部の他端に連なり上記鉛直部側に近づくように上記第1傾斜部と反対方向に傾斜して上記下部アーチ部の他端に連なる第2傾斜部と、上記下部アーチ部の頂上と上記水平部の上記他端との間を接続するように鉛直方向に設けられた支柱部とを有し、
上記第1傾斜部は下方に直線的に傾斜する第1部分とこの第1部分より小さい角度で下方に直線的に傾斜する傾斜する第2部分とからなり、上記第1部分と上記第2部分との境界部において上記第1部分に対して上記第2部分が鉛直方向下方にずれて不連続となっており、
上記下部アーチ部と上記鉛直部と上記水平部と上記支柱部とにより囲まれた空間および上記下部アーチ部と上記支柱部と上記第1傾斜部と上記第2傾斜部とにより囲まれた空間がそれぞれ空洞となっている、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体である。
【0008】
この踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体の第1傾斜部の第1部分の水平面に対する傾斜角度は、好適には、レールの頭部側面にレーザー光を照射してレール検測を行う際にレーザー光を妨げない角度に選ばれ、典型的には33度±2度に選ばれる。第1傾斜部の第2部分は、レールの頭部の側部下面の下側に入り込む部分であり、この側部下面とほぼ平行な形状を有する。第1傾斜部の第1部分と第2部分との間の不連続な境界部は、レールの頭部の側面最下部に近接する部分である。第2傾斜部の水平面に対する傾斜角度は、典型的には61度±2度である。また、典型的には、鉛直部の下半分の部分は上半分の部分に比べて肉厚に構成され、従って鉛直部の側面に段差が形成される。下部アーチ部、鉛直部の上半分の部分、水平部、第1傾斜部および第2傾斜部の肉厚は、典型的には12mm以上15mm以下に選ばれ、例えば13mmに選ばれる。鉛直部の下半分の部分の肉厚は、典型的には18mm以上22mm以下に選ばれる。この踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体の高さは、フランジウェイに詰めたときに水平部の上面がフランジウェイの両側のレールの頭部上面およびコンクリートブロック上面とほぼ同一平面上に位置するように選ばれ、全体の幅は、第1傾斜部の第2部分と第2傾斜部との交差部の高さ位置でこの交差部がレールの頭部と首部との境界部に近接し、かつ鉛直部の側面がコンクリートブロック側面にほぼ接触するように選ばれる。
【0009】
また、この発明は、
横断面形状が、下部アーチ部と、この下部アーチ部の一端に連なる鉛直部と、この鉛直部の他端に連なり上記下部アーチ部の頂上の上方まで延在する水平部と、この水平部の他端に連なり下方に傾斜する第1傾斜部と、この第1傾斜部の他端に連なり上記鉛直部側に近づくように上記第1傾斜部と反対方向に傾斜して上記下部アーチ部の他端に連なる第2傾斜部と、上記下部アーチ部の頂上と上記水平部の上記他端との間を接続するように鉛直方向に設けられた支柱部とを有し、上記第1傾斜部は下方に直線的に傾斜する第1部分とこの第1部分より小さい角度で下方に直線的に傾斜する傾斜する第2部分とからなり、上記第1部分と上記第2部分との境界部において上記第1部分に対して上記第2部分が鉛直方向下方にずれて不連続となっており、上記下部アーチ部と上記鉛直部と上記水平部と上記支柱部とにより囲まれた空間および上記下部アーチ部と上記支柱部と上記第1傾斜部と上記第2傾斜部とにより囲まれた空間がそれぞれ空洞となっている、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体と、
設置時に上記下部アーチ部の下側に上記踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体に平行に設けられる柱状の支持ゴム体と、
からなる、踏切の軌道のフランジウェイ用ゴム体セットである。
【0010】
支持ゴム体は、典型的には、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体と同じ長さを有する。支持ゴム体は、この詰めゴム体をフランジウェイの底面に設置した状態でこの詰めゴム体の下部アーチ部の下面とフランジウェイの底面との間に収容される大きさ(高さ、幅)を有する。支持ゴム体は、典型的には、下部アーチ部の底面から下部アーチ部下面の頂上までの高さに等しい高さと、下部アーチ部の幅以下の幅とを有する。支持ゴム体は、典型的には詰めゴム体と同種のゴムにより構成されるが、これに限定されるものではなく、詰めゴム体と同程度の硬さを有するものであれば他の種類のゴムにより構成されてもよい。
【0011】
この踏切の軌道のフランジウェイ用ゴム体セットの発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、上記の踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体の発明に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、下部アーチ部や側面の第1傾斜部および第2傾斜部を有することにより踏切の軌道のフランジウェイ用バリアフリー詰めゴム体を変形させながら押し込むことでフランジウェイに容易に挿入することができ、しかも挿入後には第1傾斜部の第2部分がレールの頭部の下面の下側に入り込むことなどによりフランジウェイから容易に外れることがなく、下部アーチ部に加えて左右方向中央部に支柱部を有することにより耐荷重性が高いことから体重の重い人が乗った車椅子等が踏切の軌道を横断する場合においてもフランジウェイ上を支障なく通過することができ、それによって十分なバリアフリー性を得ることができ、レール側に第1傾斜部を有することによりレーザー光によるレールの検測を行う際にレーザー光が妨げられることがなくレールの検測を支障なく行うことができる。また、特に、踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体をフランジウェイに設置するときに下部アーチ部の下側にこの詰めゴム体に平行に支持ゴム体を設置することにより、詰めゴム体と支持ゴム体との全体として極めて高い耐荷重性を得ることができ、より高いバリアフリー性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の一実施の形態による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】この発明の一実施の形態による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体の横断面形状を示す断面図である。
【
図3】この発明の一実施の形態による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体と組み合わせて使用される支持ゴム体を示す斜視図である。
【
図4】この発明の一実施の形態による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体および支持ゴム体をフランジウェイに設置した状態を示す断面図である。
【
図5】この発明の一実施の形態による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体および支持ゴム体をフランジウェイに設置した状態を示す斜視図である。
【
図6】この発明の一実施の形態による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体および支持ゴム体をフランジウェイに設置した状態で車椅子の車輪がフランジウェイ上を通過する様子を示す略線図である。
【
図7】比較例1による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体を示す断面図である。
【
図8】比較例2による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体を示す断面図である。
【
図9】比較例3による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体を示す断面図である。
【
図10】比較例4による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について説明する。
【0015】
〈一実施の形態〉
[踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体]
図1および
図2は一実施の形態による踏切の軌道のフランジウェイ用詰めゴム体(以下、単に「詰めゴム体」という)10を示し、
図1は詰めゴム体10の全体構成、
図2はこの詰めゴム体10の横断面形状を示す。
図2に、レール100およびコンクリートブロック200を一点鎖線で示す。詰めゴム体10は、レール100とこのレール100に対向するコンクリートブロック200の側面との間のフランジウェイに詰められる。
【0016】
図1および
図2に示すように、この詰めゴム体10は全体として柱状の形状を有する。この詰めゴム体10の横断面形状は、下部アーチ部11と、この下部アーチ部11の一端に連なる鉛直部12と、この鉛直部12の他端(上端)に連なり下部アーチ部11の頂上の上方まで延在する水平部13と、この水平部13の他端に連なり下方に傾斜する第1傾斜部14と、この第1傾斜部14の他端に連なり鉛直部12側に近づくように第1傾斜部14と反対方向に傾斜して下部アーチ部11の他端に連なる第2傾斜部15と、下部アーチ部11の頂上と水平部12の他端との間を接続するように鉛直方向に設けられた支柱部16とを有する。第1傾斜部14は、下方に直線的に傾斜する第1部分14aとこの第1部分14aより小さい角度で下方に直線的に傾斜する傾斜する第2部分14bとからなり、第1部分14aと第2部分14bとの境界部において第1部分14aに対して第2部分14bが鉛直方向下方にずれて側面に段差がついている。下部アーチ部11の下面は円弧状となっている。鉛直部12の下半分の部分は上半分の部分に比べて肉厚に構成されている。この鉛直部12の側面はコンクリートブロック200の側面に対応した段差形状を有し、詰めゴム体10がフランジウェイに挿入されたときに鉛直部12の側面の段差がコンクリートブロック200の側面の段差に嵌まり合うようになっている。下部アーチ部11と鉛直部12と水平部13と支柱部16とにより囲まれた空間17および下部アーチ部11と支柱部16と第1傾斜部14と第2傾斜部14とにより囲まれた空間18はそれぞれ空洞となっている。空間17の上部は円弧状に形成されている。空間18の、第1傾斜部14の第1部分14aと支柱部16との交差部は円弧状に形成されている。
【0017】
下部アーチ部11、鉛直部12の上半分の部分、水平部13、第1傾斜部14および第2傾斜部15の肉厚は、典型的には12mm以上14mm以下、例えば13mmに選ばれる。鉛直部12の下半分の部分の肉厚は、典型的には18mm以上22mm以下、例えば20mmに選ばれる。第1傾斜部14の第1部分14aの水平面に対する傾斜角度は典型的には33度±2度、例えば33度に選ばれ、第1傾斜部14の第2部分14bの水平面に対する傾斜角度はレールの頭部側部の下面の傾斜角度と同等に選ばれる。また、第2傾斜部15の水平面に対する傾斜角度は典型的には61度±2度、例えば61度に選ばれる。下部アーチ部11の曲率半径は典型的には29mm以上33mm以下、例えば31.5mmに選ばれる。下部アーチ部11の両端部の底面は水平な平坦面となっており、この平坦面が詰めゴム体10の底面となっている。詰めゴム体10の底面から下部アーチ部11の下面の頂上までの高さは、典型的には13mm以上17mm以下、例えば15mmに選ばれる。
【0018】
詰めゴム体10の全幅は例えば107mm、高さは例えば82mmである。詰めゴム体10の長さは踏切の軌道に応じて選ばれるが、例えば1500mmである。
【0019】
[支持ゴム体]
図3は、詰めゴム体10と組み合わせて使用される柱状の支持ゴム体20を示す。
図3に示すように、この支持ゴム体20の横断面形状は、円柱の横断面形状から、この横断面形状の水平方向の直径に垂直な方向にこの支持ゴム体20の直径のほぼ1/2~1/3倍の距離だけ離れた位置におけるその直径と平行な直線の上側の部分を切り取った形状を有する。この支持ゴム体20の円筒面の一部からなる上面の曲率半径は、典型的には25~33mm、例えば30mmに選ばれる。支持ゴム体20の上面と平坦な底面との交差部は丸く面取りされている。
【0020】
図1および
図2に、詰めゴム体10に対する支持ゴム体20の設置位置を一点鎖線で示す。
図1および
図2に示すように、詰めゴム体10の下部アーチ部11の下面の頂上と支持ゴム体20の頂上とがほぼ一致している。
【0021】
[詰めゴム体10および支持ゴム体20の製造方法]
詰めゴム体10および支持ゴム体20は、ゴムの押し出し成形などにより容易に製造することができる。
【0022】
[詰めゴムセット10および支持ゴム体20の使用方法]
まず、踏切の軌道のフランジウェイの底面にレール100に平行に支持ゴム体20を底面を下にして設置する。次に、詰めゴム体10を下部アーチ部11を下にして上方から力を加えてフランジウェイに挿入する。このとき、詰めゴム体10のレール100側の側面の下部の第2傾斜部15は下方に向かってレール100から離れる方向に傾斜しているため、幅方向に圧縮されながらこの側面がレール100の頭部側面を滑り、第1傾斜部14の第2部分14bがレール100の頭部側部の下面の下側に入り込んだ時点で弾性によりほぼ元の形状を回復する。一方、詰めゴム体10の鉛直部12の側面の下部はコンクリートブロック200側の側面の段差に嵌まり合う。こうして、詰めゴム体10および支持ゴム体20がフランジウェイに設置された状態を
図4および
図5に示す。
【0023】
図6は、
図4および
図5に示すようにフランジウェイに詰めゴム体10および支持ゴム体20を設置した状態で、踏切を人が乗った車椅子が渡るときにその車輪300が詰めゴム体10に載った状態を示す。この状態では、詰めゴム体10の左右方向中央部に支持部16があることにより車椅子の車輪300により荷重が加わっても詰めゴム体10が潰れにくく、しかも詰めゴム体10の下部アーチ部11の下側に支持ゴム体20が設置されていることにより車輪300により荷重が加わっても下部アーチ部11の変形を低減することができることにより詰めゴム体10がより潰れにくい。このため、フランジウェイのバリアフリー性が失われるのを低減することができる。
【0024】
実施例について説明する。
【0025】
(実施例)
図2に示す詰めゴム体10において、最大幅を107mm、高さを82mm、長さを1500mmとした。下部アーチ部11の曲率半径を31.5mm、詰めゴム体10の両端部の底面から下部アーチ部11の下面の頂上までの高さを15mm、詰めゴム体10の両端部の底面の幅を10mm、底面の高さにおける幅を83mmとした。鉛直部12の下半分の部分の肉厚を20mm、この部分の高さを40mm、上半分の部分の肉厚を13mm、高さを42mmとした。水平部13の幅を36.5mm、空間17の上部の水平部13の肉厚を13mm、空間17の上部の円弧の半径を8mm、鉛直部12の上半分の部分の側面と支柱部16の空間17側の側面との間の幅を30mmとした。第1傾斜部14の第1部分14aの水平面に対する傾斜角度を33度、第1部分14aの水平方向の幅を38.5mm、第1部分14aと第2部分14bとの不連続な境界部の高さを4mm、第1部分14aおよび第2部分14bの肉厚を13mmとした。第2傾斜部15の水平面に対する傾斜角度を61度、肉厚を13mmとした。支柱部16の肉厚を13mmとした。空間18の、支柱部16と第1部分14aとの交差部の円弧の半径は2mmとした。詰めゴム体10の材質はスチレンブタジエンゴム(以下「SBR」という)とした。詰めゴム体10は押し出し成形により作製した。
【0026】
(比較例1)
比較例1の詰めゴム体を
図7に示す。この
図7に示す詰めゴム体と
図2に示す詰めゴム体10とは同じ縮尺で示されており、従ってこの
図7に示す詰めゴム体の各部のサイズは実施例の詰めゴム体10から容易に分かる(以下の比較例2~4でも同様)。
図7に示すように、この詰めゴム体は、実施例による詰めゴム体10と比較すると、左右方向中央部の支柱部が設けられていないこと、上部に水平部がなく、下方に向かって直線状に傾斜していること、鉛直部と下部アーチ部との間に高さの大きい凹部が設けられていること、各部の肉厚が小さい、特に下部アーチ部11の肉厚が小さいことが異なる。この詰めゴム体の材質はSBRである。
【0027】
(比較例2)
比較例2の詰めゴム体を
図8に示す。
図8に示すように、この詰めゴム体は、実施例による詰めゴム体と比較すると、左右方向中央部の支柱部が設けられていないこと、上部に水平部がなく、下方に向かって直線状に傾斜していること、鉛直部と下部アーチ部との間に高さの小さい凹部が設けられていることが異なる。この詰めゴム体の材質はSBRである。
【0028】
(比較例3)
比較例3の詰めゴム体を
図9に示す。
図9に示すように、この詰めゴム体は、実施例による詰めゴム体と比較すると、左右方向中央部の支柱部が設けられていないこと、上部に水平部がなく、下方に向かって直線状に傾斜していること、鉛直部と下部アーチ部との間に高さの小さい凹部が設けられていることが異なる。この詰めゴム体の材質はSBRである。
【0029】
(比較例4)
比較例4の詰めゴム体を
図10に示す。
図10に示すように、この詰めゴム体は、実施例による詰めゴム体と比較すると、上部に水平部がなく、下方に向かって直線状に傾斜していること、鉛直部と下部アーチ部との間に高さの小さい凹部が設けられていることが異なる。この詰めゴム体の材質はSBRである。
【0030】
(試験結果)
挿入性評価
実施例および比較例1~4の詰めゴム体を実際にフランジウェイに挿入したところ、いずれも挿入性に問題はなかった。
【0031】
バリアフリー性評価
比較例1の詰めゴム体をフランジウェイに挿入し、その上を車椅子が横断した場合に車輪による荷重が加わったときの詰めゴム体の形状を観察したところ、車輪により加わる荷重により詰めゴム体が大きく変形してしまい、バリアフリー性が失われてしまった。比較例2~4の詰めゴム体では、詰めゴム体の変形は比較例1に比べると減少するものの、体重が重い成人男性が乗った車椅子では、車輪により加わる荷重により詰めゴム体が大きく変形してしまい、バリアフリー性は損なわれてしまった。これに対し、実施例による詰めゴム体では、体重が重い成人男性が乗った車椅子の車輪により荷重が加わったときも変形は少なく、十分なバリアフリー性が得られた。
【0032】
この一実施の形態によれば、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、下部アーチ部11や第2傾斜部15などを有することにより詰めゴム体10をフランジウェイに容易に挿入することができる。また、詰めゴム体10をフランジウェイに挿入した状態では、第1傾斜部14の第2部分14bがレール100の頭部側部の下面の下側に入り込むとともに、鉛直部12の上半分の部分と下半分の部分との間の段差がコンクリートブロック200の側面の段差と嵌まり合うことにより、フランジウェイから容易には外れない。また、下部アーチ部11や詰めゴム体10の左右方向中央部に支柱部16を有することにより詰めゴム体10の耐荷重性が高く、例えば体重が重い成人男性が乗った車椅子の車輪等により大きな荷重が加わったときでも変形が少なく、十分なバリアフリー性が得られる。特に、詰めゴム体10の下部アーチ部11の下側に支持ゴム体20を設置する場合には、より高いバリアフリー性を得ることができる。さらに、詰めゴム体10をフランジウェイに挿入した状態では、レール100の頭部側面に隣接する部分はレール100に向かって第1傾斜部14が下方に傾斜していて十分なスペースがあることから、レーザー光によりレール100の検測を行う場合にレーザー光が詰めゴム体10に当たるのを防止することができ、従ってレーザー光によるレール100の検測を支障なく行うことができる。
【0033】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0034】
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構造、構成等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…詰めゴム体、11…下部アーチ部、12…鉛直部、13…水平部、14…第1傾斜部、15…第2傾斜部、16…支柱部、17、18…空間、20…支持ゴム体、100…レール、200…コンクリートブロック