IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェノミック ヘルス, インコーポレイテッドの特許一覧

特許7301798腎臓がんを有する患者に対する再発スコアを計算するための遺伝子発現プロファイルアルゴリズム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】腎臓がんを有する患者に対する再発スコアを計算するための遺伝子発現プロファイルアルゴリズム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20230626BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020138078
(22)【出願日】2020-08-18
(62)【分割の表示】P 2018134242の分割
【原出願日】2014-05-29
(65)【公開番号】P2020191896
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-08-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】61/829,100
(32)【優先日】2013-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504345126
【氏名又は名称】ジェノミック ヘルス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン シャク
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ アンドリュー ワトソン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル アール. クレイガー
(72)【発明者】
【氏名】タラ マダラ
(72)【発明者】
【氏名】マルガリータ ロパーチン
(72)【発明者】
【氏名】オードリー ゴダード
(72)【発明者】
【氏名】デジャン ネゼビック
(72)【発明者】
【氏名】クリステル スベッドマン
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】天野 貴子
【審判官】加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516195(JP,A)
【文献】特表2007-532113(JP,A)
【文献】特表2009-515148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎臓がんを有する患者の再発スコア(RS)結果を得るための方法であって、
前記患者から得られた腫瘍試料において、遺伝子APOLD1、EDNRB、NOS3、PPA2B、EIF4EBP1、LMNB1、TUBB2A、CCL5、CEACAM1、CX3CL1およびIL-6のそれぞれのRNA転写物のレベルを測定するステップであって、前記遺伝子が、APOLD1、EDNRB、NOS3およびPPA2Bを含む血管正常化遺伝子群と、CCL5、CEACAM1およびCX3CL1を含む免疫応答遺伝子群と、EIF4EBP1、LMNB1およびTUBB2Aを含む細胞成長/分裂遺伝子群と、IL-6とを含む、ステップと、
前記RNA転写物のレベルを、前記腫瘍試料における少なくとも1種の参照RNA転写物のレベルに対して正規化して、正規化された前記RNA転写物レベルをもたらすステップと、
前記正規化されたRNA転写物レベルを、それらのそれぞれの遺伝子サブセットに割り当てるステップと、
がん再発に対するその寄与に従って、以下:
-0.45×血管正常化遺伝子群スコア
-0.31×免疫応答遺伝子群スコア
+0.27×細胞成長/分裂遺伝子群スコア
+0.04×IL6
の通りに前記遺伝子サブセットに重みを付けるステップと、
前記重みを付けた遺伝子サブセットおよび前記正規化されたRNA転写物レベルを使用して、前記患者の再発スコア(RS)結果を計算するステップであって、前記RS結果が、以下のアルゴリズム:
RS=
-0.45×血管正常化遺伝子群スコア
-0.31×免疫応答遺伝子群スコア
+0.27×細胞成長/分裂遺伝子群スコア
+0.04×IL6
(式中、
血管正常化遺伝子群スコア=(0.5 APOLD1+0.5 EDNRB+NOS3+PPA2B)/4
細胞成長/分裂遺伝子群スコア=(EIF4EBP1+1.3 LMNB1+TUBB2A)/3
免疫応答遺伝子群スコア=(0.5 CCL5+CEACAM1+CX3CL1)/3
である)
に従って前記正規化されたRNA転写物レベルから計算される、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記RS結果を含む報告を作成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下のアルゴリズム:
RS(スケーリング後)=(RS(非スケーリング)+3.7)×26.4
(式中、
RS≦0である場合、RS=0であり、
RS≧100である場合、RS=100である)
を使用してスケーリングされたRSスコアを計算することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種のRNA転写物の前記レベルが、定量的RT-PCRにより決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記腎臓がんが、腎細胞癌(RCC)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記RCCが、腎明細胞癌(ccRCC)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍試料が、生検から得られた試料である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍試料が、パラフィン包埋および固定された試料である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記腫瘍試料が、新鮮な試料または凍結された試料である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、がん患者の予後情報を決定するための遺伝子発現プロファイルに関する情報を提供する分子診断アッセイに関する。具体的には、本開示は、遺伝子または共発現される遺伝子を含むアルゴリズムを提供し、その発現レベルを使用して、腎臓がん患者が正または負の臨床転帰を経験する可能性を決定することができる。本開示は、腎臓がん患者の再発スコアの計算に有用な遺伝子発現情報を提供する。
【背景技術】
【0002】
緒言
米国がん協会(American Cancer Society)は、米国において2013年に、腎臓がんの約65,150例の新たな症例と、腎臓がんによる約13,680名の死亡が存在することになると推定する(米国がん協会、腎臓がん(成人)腎細胞癌概要(Kidney Cancer (Adult) Renal Cell Carcinoma Overview)、http://www.cancer.org/acs/groups/cid/documents/webcontent/003052-pdf.pdfにてオンライン利用できる)。腎腺癌または副腎腫(hypernephroma)とも呼ばれる腎細胞癌(RCC)は、腎臓がん10症例のうち9症例超を占める最も一般的な種類の腎臓がんであり、全悪性腫瘍のおよそ2~3%を占める(Id.; National Comprehensive Cancer Network Guidelines (NCCN) Clinical Practice Guidelines in Oncology, Kidney Cancer、バージョンI、2013年)。未知の理由から、RCCの率は、過去65年間で年間2%増加した(NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology, Kidney Cancer)。
【0003】
腎明細胞癌、乳頭状腎細胞癌、嫌色素性腎細胞癌、集合管腎細胞癌および未分類腎細胞癌を含む、複数のサブタイプのRCCが存在する。腎明細胞癌(ccRCC)は、腎細胞癌の最も一般的なサブタイプであり、RCC患者10名のうち約7名が、ccRCCを有する(American Cancer Society, Kidney Cancer (Adult) Renal Cell Carcinoma Overview)。
【0004】
RCCの評価および病期分類は、コンピュータ断層撮影(CT)走査、超音波または磁気共鳴画像法(MRI)ならびに身体的および検査室的評価等、イメージング方法による可視化を含む。針生検を行ってRCCを診断し、疾患の監視を導くことができる。医師は、腫瘍ステージ、所属リンパ節状況、腫瘍サイズ、核グレードおよび組織学的壊死等、臨床および病理学的特色に基づき腫瘍を分類する。そのような指定は主観的となる場合があり、そのような決定の際に病理検査室間に一致を欠き(Al-Ayanti Mら(2003年)Arch Pathol Lab Med 127巻、593~596頁)、より客観的な指定の必要を強調する。
【0005】
RCCの処置は、がんのステージ、患者の健康全般、可能性のある処置副作用、疾患治癒の機会、生存改善および/またはがんに伴う症状軽減の機会に応じて変動する。外科手術は、RCCの除去可能な主な処置である(American Cancer Society Kidney Cancer (Adult) Renal Cell Carcinoma Overview)。外科的切除の後であっても、限局性腫瘍を有する患者の20~30%は再燃を経験し、その多くは3年以内に起こる(NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology, Kidney Cancer)。肺転移は、遠隔再燃の最も一般的な部位であり、患者の50~60%に起こる(Id.)。
【0006】
しかし、患者が、例えば3cm未満の小型の腫瘍を有する場合、医師は、外科手術を行わず、代わりに腫瘍成長のモニターを選ぶことができる。そのような積極的監視療法は、一部の患者に外科手術および他の処置を回避させることができる。非外科的候補、特に高齢者や、競合する健康リスクを有する対象において、凍結手術もしくは高周波アブレーション等のアブレーションによる技法または積極的監視療法を使用することができる。
医師は、RCC患者のための情報に基づく処置決断や、治験の検定力を増加させるための臨床治験への適切な高リスク患者のリクルートに役立つ予後情報を要求する。現存する方法は、主観的尺度に基づいており、したがって、不正確な予後情報を提供し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Al-Ayanti Mら(2003年)Arch Pathol Lab Med 127巻、593~596頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本願は、腎臓がん患者から得られた生体試料由来の1種または複数の遺伝子または遺伝子サブセットの発現レベル(複数可)の測定が関与する分子アッセイを開示する。例えば、臨床転帰の可能性は、疾患の観察される臨床特色または無再発間隔に基づく定量的スコアの観点から記載することができる。
【0009】
加えて、本願は、腎臓がん患者から得られた生体試料由来の1種または複数の遺伝子または遺伝子サブセットの発現レベル(複数可)の測定に基づき腎臓がん患者の再発スコア(RS)を得る方法を開示する。
【0010】
本開示は、患者から得られた腫瘍試料における少なくとも1種のRNA転写物またはその発現産物のレベルを測定するステップを含む、腎臓がん患者の再発スコアを得るための方法を提供する。RNA転写物またはその発現産物は、APOLD1、EDNRB、NOS3、PPA2B、EIF4EBP1、LMNB1、TUBB2A、CCL5、CEACAM1、CX3CL1およびIL-6から選択することができる。本方法は、腫瘍試料における少なくとも1種の参照RNA転写物またはその発現産物のレベルに対し遺伝子発現レベルを正規化するステップを含む。一部の実施形態において、正規化は、低発現遺伝子および/または非線形関数形式を有する遺伝子の遺伝子発現測定値の圧縮を含むことができる。本方法は、正規化されたレベルを遺伝子サブセットに割り当てるステップも含む。遺伝子サブセットは、血管正常化群、細胞成長/分裂群および免疫応答群から選択することができる。一部の実施形態において、APOLD1、EDNRB、NOS3およびPPA2Bは、血管正常化群に割り当てられる。様々な実施形態において、EIF4EBP1、LMNB1およびTUBB2Aは、細胞成長/分裂群に割り当てられる。他の実施形態において、CCL5、CEACAM1およびCX3CL1は、免疫応答群に割り当てられる。本方法は、がん再発のリスクの査定に対するその寄与に従って遺伝子サブセットに重みを付けるステップも含む。本方法は、重みを付けた遺伝子サブセットおよび正規化されたレベルを使用して、患者の再発スコアを計算するステップをさらに含む。本方法は、再発スコアを含む報告を作成するステップをさらに含むことができる。
【0011】
本開示は、また、腎臓がん患者の臨床転帰の可能性を予測する方法を提供する。本方法は、患者から得られた腫瘍試料における1種または複数のRNA転写物またはその発現産物のレベルを決定するステップを含む。1種または複数のRNA転写物は、APOLD1、EDNRB、NOS3、PPA2B、EIF4EBP1、LMNB1、TUBB2A、CCL5、CEACAM1、CX3CL1およびIL-6から選択される。本方法は、1種または複数のRNA転写物またはその発現産物を1種または複数の遺伝子サブセットに割り当てるステップも含む。本方法は、正規化されたレベルを遺伝子サブセットに割り当てるステップも含む。遺伝子サブセットは、血管正常化群、細胞成長/分裂群および免疫応答群から選択することができる。一部の実施形態において、APOLD1、EDNRB、NOS3およびPPA2Bは、血管正常化群に割り当てられる。様々な実施形態において、EIF4EBP1、LMNB1およびTUBB2Aは、細胞成長/分裂群に割り当てられる。他の実施形態において、CCL5、CEACAM1およびCX3CL1は、免疫応答群に割り当てられる。本方法は、臨床転帰の可能性の査定に対する寄与により、1種または複数のRNA転写物またはその発現産物のレベルに重みを付けることにより、患者の定量的スコアを計算するステップをさらに含む。本方法は、定量的スコアに基づき、患者の臨床転帰の可能性を予測するステップをその上含む。一部の実施形態において、定量的スコアの増加は、負の臨床転帰の可能性の増加と相関する。一部の実施形態において、臨床転帰は、がん再発である。
【0012】
本開示の一部の実施形態において、腎臓がんは、腎細胞癌である。他の実施形態において、腎臓がんは、腎明細胞癌である。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
腎臓がん患者の再発スコア(RS)を得るための方法であって、
前記患者から得られた腫瘍試料における、APOLD1、EDNRB、NOS3、PPA2B、EIF4EBP1、LMNB1、TUBB2A、CCL5、CEACAM1、CX3CL1およびIL-6から選択される少なくとも1種のRNA転写物またはその発現産物のレベルを測定するステップと、
前記腫瘍試料における少なくとも1種の参照RNA転写物またはその発現産物のレベルに対し前記レベルを正規化して、前記RNA転写物またはその発現産物の正規化されたレベルをもたらすステップと、
前記正規化されたレベルを遺伝子サブセットに割り当てるステップと、
がん再発に対するその寄与に従って前記遺伝子サブセットに重みを付けるステップと、
前記重みを付けた遺伝子サブセットおよび前記正規化されたレベルを使用して、前記患者の再発スコア(RS)を計算するステップと、
前記RSを含む報告を作成するステップと
を含む方法。
(項目2)
腎臓がん患者の臨床転帰の可能性を予測する方法であって、
前記患者から得られた腫瘍試料における1種または複数のRNA転写物またはその発現産物のレベルを決定するステップであって、前記1種または複数のRNA転写物またはその発現産物が、APOLD1、EDNRB、NOS3、PPA2B、EIF4EBP1、LMNB1、TUBB2A、CCL5、CEACAM1、CX3CL1およびIL-6から選択されるステップと、
前記1種または複数のRNA転写物またはその発現産物を、1種または複数の遺伝子サブセットに割り当てるステップと、
臨床転帰に対するその寄与により1種または複数のRNA転写物またはその発現産物の前記レベルに重みを付けることにより、前記患者の定量的スコアを計算するステップと、
前記定量的スコアに基づき前記患者の臨床転帰の可能性を予測するステップと
を含む方法。
(項目3)
前記定量的スコアの増加が、負の臨床転帰の可能性の増加と相関する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記臨床転帰が、腎臓がんの再発である、項目2または3に記載の方法。
(項目5)
少なくとも1種のRNA転写物の前記レベルが、定量的RT-PCRにより決定される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記遺伝子サブセットが、血管正常化群、細胞増殖/分裂群および免疫応答群から選択される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
APOLD1、EDNRB、NOS3およびPPAP2Bから選択される血管正常化群由来の少なくとも1種のRNA転写物の前記レベルが測定される、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
EIF4EBP1、LMNB1およびTUBB2Aから選択される細胞増殖/分裂群由来の少なくとも1種のRNA転写物の前記レベルが測定される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
CCL5、CEACAM1およびCX3CL1から選択される免疫応答群由来の少なくとも1種のRNA転写物の前記レベルが測定される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
IL-6のRNA転写物の前記レベルが測定される、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
腎臓がん患者の再発スコア(RS)を得るための方法であって、
前記患者から得られた腫瘍試料からRNAを抽出するステップと、
APOLD1、EDNRB、NOS3、PPA2B、EIF4EBP1、LMNB1、TUBB2A、CCL5、CEACAM1、CX3CL1およびIL-6から選択される少なくとも1種の予後遺伝子のRNA転写物を逆転写して、前記予後遺伝子のcDNAを産生するステップと、
前記予後遺伝子の前記cDNAを増幅するステップと、
前記予後遺伝子の前記RNA転写物のアンプリコンを産生するステップと、
前記予後遺伝子の前記アンプリコンのレベルをアッセイするステップと、
前記腫瘍試料における少なくとも1種の参照RNA転写物のアンプリコンのレベルに対し前記レベルを正規化して、前記予後遺伝子の正規化されたアンプリコンレベルをもたらすステップと、
前記正規化されたアンプリコンレベルを遺伝子サブセットに割り当てるステップと、
がん再発に対するその寄与に従って前記遺伝子サブセットに重みを付けるステップと、
前記重みを付けた遺伝子サブセットおよび前記正規化されたアンプリコンレベルを使用して、前記患者の再発スコア(RS)を計算するステップと、
前記RSを含む報告を作成するステップと
を含む方法。
(項目12)
前記遺伝子サブセットが、血管正常化群、細胞成長/分裂群および免疫応答群から選択される、項目11に記載の方法。
(項目13)
APOLD1、EDNRB、NOS3およびPPAP2Bから選択される血管正常化群由来の前記アンプリコンの前記レベルが測定される、項目11または12に記載の方法。
(項目14)
EIF4EBP1、LMNB1およびTUBB2Aから選択される細胞成長/分裂群由来の前記アンプリコンの前記レベルが測定される、項目11~13のいずれかに記載の方法。
(項目15)
CCL5、CEACAM1およびCX3CL1から選択される免疫応答群由来の前記アンプリコンの前記レベルが測定される、項目11~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
IL-6の前記アンプリコンの前記レベルが測定される、項目11~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記腎臓がんが、腎細胞癌(RCC)である、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記RCCが、腎明細胞癌(ccRCC)である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記腫瘍試料が、生検から得られた試料である、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記腫瘍試料が、新鮮な試料、凍結された試料、またはパラフィン包埋および固定された試料である、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1-1】図1は、実施例に記載されているアルゴリズムに基づく、ステージ1 ccRCCの患者(A)およびステージ2またはステージ3 ccRCCの患者(B)の予測曲線および95%信頼区間を示す。
図1-2】図1は、実施例に記載されているアルゴリズムに基づく、ステージ1 ccRCCの患者(A)およびステージ2またはステージ3 ccRCCの患者(B)の予測曲線および95%信頼区間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
定義
他に規定がなければ、本明細書に使用されている技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されているものと同じ意義を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 第2版、J. Wiley & Sons(New York、NY、1994年)およびMarch、Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 第4版、John Wiley & Sons(New York、NY、1992年)は、本願に使用されている用語の多くに関する一般的な指針を当業者に与える。
【0015】
当業者であれば、本発明の実施において使用され得る本明細書に記載されている方法および材料と類似または均等の多くの方法および材料を認識するであろう。実際に、本発明は、本明細書に記載されている方法および材料に決して限定されない。本発明の目的のため、次の用語を下に定義する。
【0016】
用語「腫瘍」および「病変」は、本明細書において、悪性であれ良性であれ、あらゆる新生物的細胞成長(cell growth)および増殖(cell proliferation)、ならびに前がん性およびがん性細胞および組織を指す。
【0017】
用語「がん」、「がん性」および「癌」は、調節されない細胞成長によって典型的に特徴付けられる哺乳動物における生理的状態を指すまたは記載する。本開示におけるがんの例として、腎細胞癌(RCC、腎細胞がんまたは腎細胞腺癌)、腎明細胞癌、乳頭状腎細胞癌、嫌色素性腎細胞癌、集合管腎細胞癌、未分類腎細胞癌、移行性細胞癌、ウィルムス腫瘍および腎肉腫等、腎臓のがんが挙げられる。
【0018】
本明細書において、用語「腎臓がん」、「腎がん」または「腎細胞癌」は、腎臓から生じたがんを指す。
【0019】
用語「腎細胞がん」または「腎細胞癌」(RCC)は、本明細書において、近位曲尿細管の裏層に起源を有するがんを指す。より具体的には、RCCは、数種類の相対的に一般的な組織学的サブタイプを包含する:腎明細胞癌、乳頭状(好色素性)、嫌色素性、集合管癌および髄様癌。腎明細胞癌(ccRCC)は、RCCの最も一般的なサブタイプである。ccRCCの発生率は増加しており、限局性疾患の80%および転移性疾患の90%超を構成する。
【0020】
「病態」は、患者の福祉を損なうあらゆる現象を含む。これは、異常または制御不能な細胞成長、転移、隣接する細胞の正常機能への干渉、サイトカインまたは他の分泌性産物の異常レベルでの放出、炎症性または免疫学的応答の抑制または増悪、新生物、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、リンパ節等の周囲または遠隔組織または器官の浸潤等を限定することなく含む。
【0021】
腎臓がんのための対がん米国合同委員会(America Joint Committee on Cancer)(AJCC)病期分類システム(第7版、2010年)(TNM(腫瘍、結節、転移)システムとも称される)は、ローマ数字IからIV(1~4)を使用して、疾患の程度を記載する(Edge、SBら、AJCC Cancer Staging Manual(第7版、2010年))。一般に、数が小さいほどがん伝播が少ない。ステージIV等、より大きい数は、一般に、より重篤ながんを反映する。TNM病期分類システムを次に示す:
【化1】
【0022】
用語「初期腎がん」は、本明細書において、ステージ1~3を指す。
【0023】
腎細胞癌のための腫瘍「グレード」の参照は、本明細書において、腫瘍細胞の顕微鏡レベルの外観に基づくグレード分類システムを指す。AJCCのTNM病期分類システムに従い、腎細胞癌の様々なグレードを次に示す:
GX(分化グレードを査定できず);
G1(高分化型);
G2(中分化型);および
G3~G4(低分化型/未分化型)。
【0024】
「増加したグレード」は、本明細書において、より進行したグレードにおける腫瘍の分類を指し、例えば、グレード4(G4)4は、グレード1、2および3と比べて増加したグレードである。腫瘍グレード分類は、腎細胞癌における重要な予後因子である。H. Rauschmeierら、World J Urol 2巻:103~108頁(1984年)。
【0025】
用語「壊死」または「組織学的壊死」は、本明細書において、生細胞または組織の死を指す。壊死の存在は、がんにおける予後因子となり得る。例えば、壊死は、腎細胞癌(RCC)において一般的に観察され、ある特定のRCCサブタイプにおける有害予後因子であることが示された。V. Foriaら、J Clin Pathol 58巻(1号):39~43頁(2005年)。
【0026】
用語「結節性浸潤」または「結節陽性(N+)」は、本明細書において、原発性腫瘍を含有する器官に関連する1または複数のリンパ節(例えば、器官からの排出を行う)におけるがん細胞の存在を指す。結節性浸潤の査定は、腎細胞癌を含む大部分のがんのための腫瘍病期分類の一部である。
【0027】
用語「予後」は、本明細書において、がん患者が、腎臓がん等、新生物的疾患の再発、転移性伝播および薬物抵抗性を含む、がんに起因し得る死亡または進行を有する可能性の予測を指すよう使用される。
【0028】
用語「予後遺伝子」は、本明細書において、その発現が、標準治療で処置したがん患者におけるがん再発の可能性と正または負に相関する遺伝子を指すよう使用される。遺伝子は、相当するエンドポイントと遺伝子発現レベルとの関連に応じて、予後および予測遺伝子の両方となり得る。例えば、コックス比例ハザードモデルを使用すると、遺伝子が予後のみである場合、標準治療で処置した患者または新たな介入で処置した患者において測定される際に、そのハザード比(HR)は変化しない。
【0029】
用語「予測」は、本明細書において、がん患者が、原発性腫瘍の外科的除去後に、正(「有益な応答」)であれ負であれ、処置に対し特定の応答を有する可能性を指すよう使用される。例えば、処置は、標的化薬物、免疫療法または化学療法を含むことができる。
【0030】
用語「予測遺伝子」および「応答指標遺伝子」は、本明細書において、その発現レベルが、処置に対する有益な応答の可能性と正または負に関連する遺伝子を指すよう互換的に使用される。遺伝子は、相当するエンドポイント(例えば、再発なしの生存の可能性、処置に対する有益な応答の可能性)と遺伝子発現レベルとの相関に応じて、予後および予測遺伝子の両方となり得る(逆もまた同じ)。予測遺伝子は、遺伝子発現レベルおよび処置の効果の間の相互作用を試験するためのコックス比例ハザードモデルを使用して同定することができる[処置Aで処置した患者を、処置Aを受けなかった患者(ただし、標準治療、例えば処置Bを受けていてもよい)と比較する]。未処置/標準治療患者、対、処置Aで処置した患者において測定された場合、予測遺伝子のハザード比(HR)は変化する。
【0031】
本明細書において、遺伝子に適用される用語「発現レベル」は、遺伝子産物の正規化されたレベル、例えば、遺伝子のRNA発現レベルまたは遺伝子のポリペプチド発現レベルのために決定される正規化された値を指す。
【0032】
用語「遺伝子産物」または「発現産物」は、本明細書において、mRNAを含む遺伝子のRNA転写産物(転写物)およびそのようなRNA転写物のポリペプチド産物を指すよう使用される。遺伝子産物は、例えば、スプライスされていないRNA、mRNA、スプライスバリアントmRNA、マイクロRNA、断片化RNA、ポリペプチド、翻訳後修飾されたポリペプチド、スプライスバリアントポリペプチド等となり得る。
【0033】
用語「RNA転写物」は、本明細書において、遺伝子のRNA転写産物、例えば、mRNA、スプライスされていないRNA、スプライスバリアントmRNA、マイクロRNAおよび断片化RNAを指す。
【0034】
他に断りがなければ、本明細書に使用されている各遺伝子名は、遺伝子に割り当てられた、本願の出願日の時点でEntrez Gene(URL:www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez)に提供された公式記号に相当する。
【0035】
用語「相関する」および「関連する」は、本明細書において、2種の測定値(または測定された実体)の間の関連を指すよう互換的に使用される。本開示は、例えば、遺伝子の発現レベルおよび臨床転帰の可能性の間の関連等、その発現レベルが特定の転帰尺度と関連する遺伝子および遺伝子サブセットを提供する。例えば、遺伝子の発現レベルの増加は、がんの再発なしの長期生存の可能性の増加等、患者の良好な臨床転帰の可能性の増加と正に相関(正に関連)し得る。そのような正の相関は、様々な仕方で、例えば、がん再発または死亡の低いハザード比により統計的に実証することができる。別の例において、遺伝子の発現レベルの増加は、患者の良好な臨床転帰の可能性の増加と負に相関(負に関連)し得る。この場合、例えば、患者は、がんの再発なしの長期生存の可能性の減少等を有し得る。そのような負の相関は、患者が、予後不良となる可能性が高いことを示し、このことは、様々な仕方で、例えば、がん再発または死亡の高ハザード比により統計的に実証することができる。「相関する」は、また、本明細書において、それらの発現の相関を考慮して、所定のアルゴリズムにおいて第1の遺伝子の発現レベルが第2の遺伝子の発現レベルに置換され得るような、2種の異なる遺伝子の発現レベルの間の関連を指すよう使用される。アルゴリズムにおいて置換可能な2種の遺伝子のそのような「相関する発現」は、通常、互いに正に相関する遺伝子発現レベルが関与し、例えば、第1の遺伝子の発現増加が、転帰(例えば、良好な臨床転帰の可能性の増加)と正に相関する場合、共発現され、第1の遺伝子と相関する発現を呈する第2の遺伝子も、同じ転帰と正に相関する。
【0036】
「正の臨床転帰」は、(1)遅延化および完全な成長停止を含む、ある程度の腫瘍成長の阻害;(2)腫瘍細胞数の低下;(3)腫瘍サイズの低下;(4)隣接末梢器官および/または組織への腫瘍細胞侵入の阻害(即ち、低下、遅延化または完全な中止);(5)転移の阻害;(6)おそらく腫瘍の退行または拒絶をもたらすことになる、抗腫瘍免疫応答の増強;(7)腫瘍に伴う1種または複数の症状のある程度の軽減;(8)処置後の生存の長さの増加;および/または(9)処置後の所定の時点における死亡率減少を限定することなく含む、患者に対する利益を示すいずれかのエンドポイントを使用して査定することができる。正の臨床応答は、臨床転帰の様々な尺度の観点から表すこともできる。正の臨床転帰は、比較可能な臨床診断を有する患者集団の転帰と比べた個体の転帰の文脈において考慮することもでき、無再発間隔(RFI)の持続時間の増加、集団における全生存(OS)と比較した生存時間の増加、無病生存(DFS)時間の増加、無遠隔再発間隔(DRFI)の持続時間の増加等、様々なエンドポイントを使用して査定することができる。正の臨床応答の可能性の増加は、がん再発の可能性の減少に相当する。
【0037】
用語「リスク分類」は、対象が、特定の臨床転帰を経験するリスク(または可能性)のレベルを意味する。対象は、リスク群に分類することができる、あるいは本開示の方法に基づくリスクのレベルに、例えば、高、中または低リスクに分類することができる。「リスク群」は、特定の臨床転帰のリスクの類似レベルを有する対象または個体の群である。
【0038】
用語「長期」生存は、本明細書において、特定の期間、例えば、少なくとも3年間または少なくとも5年間の生存を指すよう使用される。
【0039】
用語「再発」および「再燃」は、本明細書において、がんの潜在的臨床転帰の文脈において、局所または遠隔転移を指すよう使用される。再発の同定は、例えば、CTイメージング、超音波、動脈造影図またはX線、生検、尿もしくは血液検査、身体検査または研究センター腫瘍登録により行うことができる。
【0040】
用語「無再発間隔(RFI)」は、本明細書において、ランダム化から最初の腎臓がん再発または腎臓がんの再発による死亡までの時間(年数)を指すよう使用される。
【0041】
用語「全生存(OS)」は、本明細書において、ランダム化からいずれかの原因による死亡までの時間(年数)を指すよう使用される。
【0042】
用語「無病生存(DFS)」は、本明細書において、ランダム化から最初の腎臓がん再発またはいずれかの原因による死亡までの時間(年数)を指すよう使用される。
【0043】
実際における上に記す尺度の計算は、検閲するべきまたは検閲するべきではない事象の定義に応じて試験間で変動し得る。
【0044】
用語「ハザード比(HR)」は、本明細書において、事象(即ち、再発または死亡)のハザードまたはリスクにおける説明変数の効果を指す。比例ハザード回帰モデルにおいて、HRは、2群(例えば、2種の異なるステージのがんを有する患者)または連続型変数の単位変化(例えば、遺伝子発現の1標準偏差変化)の予測されるハザードの比である。
【0045】
用語「マイクロアレイ」は、基材上におけるハイブリダイズ可能なアレイエレメント、例えば、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドプローブの秩序的な配置を指す。
【0046】
用語「ポリヌクレオチド」は、単数形または複数形で使用される場合、一般に、非修飾RNAもしくはDNAまたは修飾RNAもしくはDNAとなり得るいずれかのポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指す。よって、例えば、ポリヌクレオチドは、本明細書において、一本および二本鎖RNA、ならびに一本および二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖となり得るまたは一本および二本鎖領域を含み得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を限定することなく含むよう定義される。加えて、用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書において、RNAもしくはDNAまたはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。そのような領域における鎖は、同じ分子または異なる分子に由来し得る。この領域は、これら分子の1種または複数の全体を含むことができるが、より典型的には、分子のうち一部の領域のみが関与する。三重らせん領域の分子の1種は、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。用語「ポリヌクレオチド」は、cDNAを具体的に含む。この用語は、1個または複数の修飾塩基を含有するDNA(cDNAを含む)およびRNAを含む。よって、安定性または他の理由のために修飾された骨格を有するDNAまたはRNAは、本明細書においてこの用語が企図される通りの「ポリヌクレオチド」である。さらに、イノシン等の珍しい塩基またはトリチウム標識塩基等の修飾塩基を含むDNAまたはRNAは、本明細書に定義される用語「ポリヌクレオチド」内に含まれる。一般に、用語「ポリヌクレオチド」は、非修飾ポリヌクレオチドのあらゆる化学、酵素および/または代謝により修飾された形態と共に、単純および複雑な細胞を含むウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学形態を包括する。
【0047】
用語「オリゴヌクレオチド」は、一本鎖デオキシリボヌクレオチド、一本または二本鎖リボヌクレオチド、RNArDNAハイブリッドおよび二本鎖DNAを限定することなく含む、相対的に短いポリヌクレオチドを指す。一本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチド等、オリゴヌクレオチドは、多くの場合、例えば、市販の自動オリゴヌクレオチド合成機を使用して、化学的方法によって合成される。しかし、オリゴヌクレオチドは、in vitro組換えDNA媒介性技法ならびに細胞および生物におけるDNAの発現を含む種々の他の方法によって作製することができる。
【0048】
本明細書において、遺伝子に適用される用語「発現レベル」は、遺伝子の発現産物のレベル、例えば、遺伝子のRNA発現産物または遺伝子のポリペプチド発現レベルのために決定される正規化された値を指す。
【0049】
用語「C」は、本明細書において、閾値サイクルを指し、反応ウェル内で生成された蛍光が定義された閾値を超える、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)におけるサイクル数である、即ち、定義された閾値を満たすほど十分な数のアンプリコンが蓄積した、反応におけるポイントである。
【0050】
用語「Cp」は、本明細書において、「クロスポイント」を指す。Cp値は、全qPCR増幅曲線の二次導関数およびその最大値を決定することにより計算される。Cp値は、蛍光の増加が最高となり、PCRの対数期が始まるサイクルを表す。
【0051】
用語「閾値」または「閾値化」は、遺伝子発現測定値および臨床応答の間の非線形関係性を説明するため、また、低発現遺伝子により誘導される報告される遺伝子発現測定値および患者スコアにおける変動をさらに低下させるために使用される手順を指す。閾値化が適用されると、閾値を下回るまたは上回るあらゆる測定値が、該閾値に設定される。遺伝子発現および転帰の間の非線形関係性は、無再発間隔におけるコックスPH回帰または再発状況におけるロジスティック回帰において遺伝子発現をモデル化するための、スムーザーまたは三次スプラインを使用して試験することができる。報告される患者スコアにおける変動は、特定の遺伝子の定量化および/または検出の限界における遺伝子発現の可変性の関数として試験することができる。
【0052】
本明細書において、用語「アンプリコン」は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびリガーゼ連鎖反応等、増幅技法を使用して合成されたDNA片を指す。
【0053】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定することができ、一般に、プローブの長さ、洗浄温度および塩濃度に依存した経験的な計算である。一般に、より長いプローブは、適正なアニーリングのためにより高い温度を要求するが、より短いプローブは、より低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは一般に、相補鎖がその融解温度を下回る環境に存在するときに再アニーリングする変性DNAの能力に依存する。プローブおよびハイブリダイズ可能な配列の間の所望の相同性の程度が高いほど、使用することができる相対温度は高くなる。結果として、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントなものとする傾向があるが、より低い温度は、その傾向が低いことになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの追加的な詳細および説明に関して、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley Interscience Publishers、(1995年)を参照されたい。
【0054】
本明細書に定義される「ストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、典型的に、(1)洗浄のために低いイオン強度および高い温度、例えば、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、50℃を用いる;(2)ハイブリダイゼーションにおいて、ホルムアミド等の変性剤、例えば、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファー、pH6.5と、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム、42℃を用いる;あるいは(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50_g/ml)、0.1%SDSおよび10%デキストラン硫酸、42℃を用い、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および50%ホルムアミドにおける42℃での洗浄と、続くEDTA含有0.1×SSC、55℃からなる高ストリンジェンシー洗浄を用いる。
【0055】
「中程度にストリンジェントな条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1989年に記載されている通りに同定することができ、上述のものよりもストリンジェンシーが低い洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)の使用を含む。中程度にストリンジェントな条件の一例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%デキストラン硫酸および20mg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液における37℃の一晩インキュベーションと、続く1×SSC、約37~500Cにおけるフィルター洗浄である。当業者であれば、必要に応じて温度、イオン強度等を調整して、プローブの長さ等の因子を適応させる仕方を認識する。
【0056】
用語「スプライシング」および「RNAスプライシング」は、互換的に使用され、イントロンを除去しエクソンを連接して、真核細胞の細胞質へと移動する連続的コード配列を有する成熟mRNAを産生するRNAプロセシングを指す。
【0057】
本明細書において、用語「エクソン」は、成熟RNA産物において表される中断された遺伝子のいずれかのセグメントを指す。本明細書において、用語「イントロン」は、そのどちらかの側のエクソンと一緒にスプライシングすることにより転写されるが転写物内から除去される、DNAのいずれかのセグメントを指す。「イントロンRNA」は、DNAのイントロン領域に由来するmRNAを指す。操作上、エクソン配列は、参照配列番号によって定義される遺伝子のmRNA配列に生じる。操作上、イントロン配列は、遺伝子のゲノムDNA内の介在配列である。
【0058】
用語「共発現される」は、本明細書において、ある遺伝子の発現レベルおよび別の遺伝子の発現レベルの間の統計的相関を指す。ペアワイズ共発現は、本技術分野において公知の様々な方法により、例えば、ピアソン相関係数またはスピアマン相関係数を計算することにより計算することができる。共発現された遺伝子クリーク(clique)は、グラフ理論を使用して同定することもできる。共発現の分析は、正規化された発現データを使用して計算することができる。
【0059】
「コンピュータベースのシステム」は、情報の分析に使用されるハードウェア、ソフトウェアおよびデータ記憶媒体のシステムを指す。患者のコンピュータベースのシステムの最小ハードウェアは、中央処理装置(CPU)と、データ入力、データ出力(例えば、ディスプレイ)およびデータ記憶のためのハードウェアとを含む。当業者であれば、いかなる現在利用できるコンピュータベースのシステムおよび/またはそのコンポーネントも、本開示の方法に関連した使用に適することを容易に認めることができる。データ記憶媒体は、上述の本情報の記録を含むいずれかの製造物またはそのような製造物にアクセスすることができるメモリアクセスデバイスを含むことができる。
【0060】
コンピュータ可読媒体にデータ、プログラミングまたは他の情報を「記録」することは、本技術分野において公知のそのような方法のいずれかを使用して情報を記憶するためのプロセスを指す。記憶された情報のアクセスに使用される手段に基づき、いずれかの簡便なデータ記憶構造を選ぶことができる。種々のデータプロセッサプログラムおよびフォーマットを記憶のために使用することができ、例えば、ワードプロセッシングテキストファイル、データベースフォーマット等が挙げられる。
【0061】
「プロセッサ」または「コンピュータ処理手段」は、これに要求される関数を実行するいずれかのハードウェアおよび/またはソフトウェア組合せを参照する。例えば、適したプロセッサは、電子制御装置、メインフレーム、サーバまたはパーソナルコンピュータ(デスクトップまたはポータブル)の形態で利用できるもの等、プログラム可能デジタルマイクロプロセッサとなり得る。プロセッサがプログラム可能である場合、適したプログラミングは、離れた場所からプロセッサへと通信することができる、あるいはコンピュータプログラム製品(磁気、光学または固体素子ベースのいずれかの、ポータブルまたは固定されたコンピュータ可読記憶媒体等)に以前にセーブされていてよい。例えば、磁気媒体または光学ディスクは、プログラミングを運ぶことができ、その相当するステーションにおいて各プロセッサと通信する適した読み取り装置により読み取ることができる。
【0062】
用語「外科手術」または「外科的切除」は、本明細書において、腫瘍の一部または全体と共に通常は周囲の組織の一部の外科的除去を指すよう使用される。外科的技法の例として、クライオセラピー、高周波アブレーションおよび高強度超音波等、腹腔鏡下手順、生検または腫瘍アブレーションが挙げられる。がん患者において、外科手術の際に除去される組織の程度は、外科医によって観察される腫瘍の状態に依存する。例えば、部分的腎摘除術は、一方の腎臓の一部が除去されることを示す;単純腎摘除術は、一方の腎臓の全体の除去を伴う;根治的腎摘除術では、一方の腎臓の全体および隣接する組織(例えば、副腎、リンパ節)が除去され;両側性腎摘除術では、両方の腎臓が除去される。
【0063】
アルゴリズムに基づく方法および遺伝子サブセット
本開示は、予想される臨床転帰、例えば予後を決定するための、アルゴリズムに基づく分子診断アッセイを提供する。がんは、例えば、腎細胞癌または腎明細胞癌となり得る。本開示は、腎臓がん患者の再発スコアを得るための方法も提供する。例えば、予後遺伝子の発現レベルを使用して、腎臓がん患者の再発スコアを得ることができる。本発明の方法の実施により提供されるアルゴリズムに基づくアッセイおよび関連情報は、腎臓がんにおける最適な処置の決断を容易にする。例えば、そのような臨床ツールは、医師が、再発の低い可能性を有する患者を同定することを可能にし、したがって、アジュバント処置を控えることができる。同様に、そのようなツールは、医師による、再発の高い可能性を有し、アジュバント処置の優れた候補となり得る患者の同定を可能にすることができる。
【0064】
本明細書において、「定量的スコア」は、腎臓がん患者の臨床転帰の可能性に対する開示されている遺伝子または遺伝子サブセットのある特定の発現レベルの相関等、より複雑な定量的情報の分析の単純化または開示または情報提供を助けるための、算術的または数学的に計算された数値である。定量的スコアは、特異的アルゴリズムの適用により決定することができる。本明細書に開示されている方法における定量的スコアの計算に使用されるアルゴリズムは、遺伝子の発現レベル値を群分けすることができる。遺伝子の群分けは、例えば、本明細書に記述されている群への群分け等、少なくとも一部には、生理的機能または構成細胞特徴に従った遺伝子の相対的な寄与の知識に基づき行うことができる。定量的スコアは、遺伝子群に対し決定することができる(「遺伝子群スコア」)。加えて、群の形成は、定量的スコアに対する遺伝子または遺伝子サブセットの様々な発現レベルの寄与の数学的重み付けを容易にすることができる。生理的プロセスまたは構成細胞特徴を表す遺伝子または遺伝子群の重み付けは、がんの再発またはグレード上昇/病期上昇等、がんの病態および臨床転帰に対する該プロセスまたは特徴の寄与を反映することができる。本発明は、例えば、実施例に表記されている通り、定量的スコアを計算するためのアルゴリズムを提供する。本発明の一実施形態において、定量的スコアの増加は、負の臨床転帰の可能性の増加を示す。
【0065】
実施形態において、定量的スコアは、がん再発、がんのグレード上昇もしくは病期上昇、有害病態、非器官限局性疾患、高グレード疾患および/または高グレードもしくは非器官限局性疾患の可能性を示す「再発スコア」である。再発スコアの増加は、がん再発、がんのグレード上昇もしくは病期上昇、有害病態、非器官限局性疾患、高グレード疾患および/または高グレードもしくは非器官限局性疾患の可能性の増加と相関し得る。
【0066】
本発明の遺伝子サブセットは、血管正常化遺伝子群、免疫応答遺伝子群、細胞成長/分裂遺伝子群およびIL-6を含む。
【0067】
本明細書において、「血管正常化群」として同定される遺伝子サブセットは、血管および/または血管新生機能に関与する遺伝子を含む。血管正常化群は、例えば、APOLD1、EDNRB、NOS3およびPPA2Bを含む。
【0068】
本明細書において、「細胞成長/分裂群」として同定される遺伝子サブセットは、重要な細胞成長および細胞分裂経路(複数可)に関与する遺伝子を含む。細胞成長/分裂群は、例えば、EIF4EBP1、LMNB1およびTUBB2Aを含む。
【0069】
本明細書において、「免疫応答群」として同定される遺伝子サブセットは、免疫系の機能に関与する遺伝子を含む。免疫応答群は、例えば、CCL5、CEACAM1およびCX3CL1を含む。
【0070】
その上、ある特定の個々の遺伝子の発現レベルを、再発スコアを計算するために使用することができる。例えば、IL-6の発現レベルを使用して、再発スコアを計算することができる。IL-6は、免疫応答に関与し得るが、他の生物学的プロセスにも関与することができ、そのため、他の免疫関連遺伝子と同じ群分けに適さないものとなる。
【0071】
本発明は、特定の遺伝子の閾値発現レベルを決定するための方法も提供する。閾値発現レベルは、特異的遺伝子のために計算することができる。遺伝子の閾値発現レベルは、正規化された発現レベルに基づくことができる。一例において、C閾値発現レベルは、ロジスティック回帰またはコックス比例ハザード回帰を使用して関数形式を査定することにより計算することができる。
【0072】
本発明は、例えば、定量的RT-PCR(qRT-PCR)によって、特定の種類のがんに関連する検証されたバイオマーカーとして同定される特定の遺伝子と共発現する遺伝子を決定するための方法をさらに提供する。共発現される遺伝子は、それ自体が有用なバイオマーカーである。共発現される遺伝子は、それと共発現する遺伝子を置換することができる。本方法は、マイクロアレイデータから遺伝子クリークを同定するステップと、マイクロアレイデータを正規化するステップと、アレイプローブに対しペアワイズスピアマン相関行列をコンピュータ処理するステップと、異なる試験にわたり有意な共発現プローブを除外するステップと、グラフを構築するステップと、遺伝子にプローブをマッピングするステップと、遺伝子クリーク報告を作成するステップとを含むことができる。遺伝子クリークの1種または複数の遺伝子の発現レベルを使用して、腎臓がん患者が、がん再発の可能性低下等、正の臨床転帰を経験する可能性を計算することができる。
【0073】
本発明の方法において、遺伝子群のいずれか1種または複数の組合せをアッセイすることができる。例えば、血管正常化遺伝子群は、単独で、あるいは細胞成長/分裂遺伝子群、免疫応答遺伝子群および/またはIl-6と組み合わせてアッセイすることができる。加えて、各遺伝子群内のいかなる数の遺伝子をアッセイしてもよい。
【0074】
本発明の特異的な実施形態において、腎臓がん患者の臨床転帰を予測するための方法は、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子の発現レベルを測定するステップを含む。別の実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子の発現レベルが測定される。さらに別の実施形態において、血管正常化遺伝子群および細胞成長/分裂遺伝子群のそれぞれに由来する、少なくとも3種の遺伝子の発現レベルが測定される。さらなる実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも4種の遺伝子と、細胞成長/分化遺伝子群由来の少なくとも3種の遺伝子の発現レベルが測定される。
【0075】
本発明の別の実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子が測定される。別の実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子の発現レベルが測定される。さらに別の実施形態において、血管正常化遺伝子群および免疫応答遺伝子群のそれぞれに由来する、少なくとも3種の遺伝子の発現レベルが測定される。さらなる実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも4種の遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも3種の遺伝子の発現レベルが測定される。
【0076】
本発明のさらなる実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。別の実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。さらに別の実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも3種の遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。さらなる実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも4種の遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。
【0077】
その上、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子の発現レベルが測定される。別の実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子の発現レベルが測定される。さらに別の実施形態において、血管正常化遺伝子群および免疫応答遺伝子群のそれぞれに由来する、少なくとも3種の遺伝子の発現レベルが測定される。さらなる実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも4種の遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも3種の遺伝子の発現レベルが測定される。
【0078】
本発明の特異的な実施形態において、腎臓がん患者の臨床転帰を予測するための方法は、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子の発現レベルを測定するステップを含む。別の実施形態において、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子の発現レベルが測定される。さらに別の実施形態において、細胞成長/分裂遺伝子群および免疫応答遺伝子群のそれぞれに由来する、少なくとも3種の遺伝子の発現レベルが測定される。
【0079】
本発明のさらなる実施形態において、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。別の実施形態において、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。さらに別の実施形態において、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも3種の遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。
【0080】
本発明のさらなる実施形態において、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。別の実施形態において、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。さらに別の実施形態において、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも3種の遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。
【0081】
本発明の追加的な実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子の発現レベルが測定される。別の実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子の発現レベルが測定される。さらに別の実施形態において、血管正常化遺伝子群、細胞成長/分裂遺伝子群および免疫応答遺伝子群のそれぞれに由来する、少なくとも3種の遺伝子の発現レベルが測定される。さらなる実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも4種の遺伝子と、細胞成長/分化遺伝子群由来の少なくとも3種の遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも3種の遺伝子の発現レベルが測定される。
【0082】
本発明の別の実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも1種の遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。別の実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、細胞成長/分裂遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子またはその共発現される遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも2種の遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。さらに別の実施形態において、血管正常化遺伝子群、細胞成長/分裂遺伝子群および免疫応答遺伝子群ならびにIL-6のそれぞれに由来する、少なくとも3種の遺伝子の発現レベルが測定される。さらなる実施形態において、血管正常化遺伝子群由来の少なくとも4種の遺伝子と、細胞成長/分化遺伝子群由来の少なくとも3種の遺伝子と、免疫応答遺伝子群由来の少なくとも3種の遺伝子と、IL-6の発現レベルが測定される。
【0083】
その上、本明細書に記載されている遺伝子サブセット内に収まらない1種または複数の遺伝子の発現レベルを、本明細書に記載されている遺伝子サブセットの組合せのいずれかと共に測定することができる。あるいは、遺伝子サブセット内に収まるいずれかの遺伝子は、遺伝子サブセットとは別々に、または別の遺伝子サブセットにおいて分析することができる。
【0084】
特異的な実施形態において、本発明の方法は、実施例に示す遺伝子および遺伝子サブセットの特異的な組合せの発現レベルを測定するステップを含む。さらなる実施形態において、遺伝子群スコア(複数可)および定量的スコア(複数可)は、実施例に示すアルゴリズム(複数可)に従って計算される。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、がん関連遺伝子APOLD1、CCL5、CEACAM1、CX3CL1、EDNRB、EIF4EBP1、IL6、LMNB1、NOS3、PPAP2BおよびTUBB2Aならびに参照遺伝子AAMP、ARF1、ATP5E、GPX1およびRPLP1の発現レベルを測定するステップと、参照遺伝子の1種または複数の発現レベルに対しがん関連遺伝子の1種または複数の発現レベルを正規化するステップと、遺伝子サブセットに、正規化された発現レベルを割り当てるステップと、がん再発に対するその寄与に従って遺伝子サブセットに重みを付けるステップと、重みを付けた遺伝子サブセットおよび正規化されたレベルを使用して再発スコアを計算するステップと、再発スコアを含む報告を作成するステップとを含む。
【0085】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、(1)APOLD1、NOS3、およびEMCN;(2)APOLD1、NOS3、IL6、IL8、およびEMCN;(3)CEACAM1、CX3CL1、IL6、およびIL8;(4)EIF4EBP1およびLMNB1;(5)APOLD1、EDNRB、およびNOS3;(6)APOLD1、EDNRB、およびPPAP2B;(7)APOLD1、NOS3、およびPPAP2B;(8)EDNRB、NOS3、およびPPAP2B;(9)APOLD1およびNOS3;(10)NOS3およびPPAP2B;(11)APOLD1、NOS3、PPAP2B、およびCEACAM1;(12)APOLD1、NOS3、PPAP2B、およびCX3CL1;(13)APOLD1、NOS3、CEACAM1、およびCX3CL1;(14)APOLD1、PPAP2B、CEACAM1、およびCX3CL1;(15)NOS3、PPAP2B、CEACAM1、およびCX3CL1;(16)APOLD1、NOS3、CEACAM1、CX3CL1、およびEIF4EBP1;(17)NOS3、PPAP2B、CEACAM1、CX3CL1、およびEIF4EBP1;(18)APOLD1、NOS3、CEACAM1、CX3CL1、およびLMNB1;(19)NOS3、PPAP2B、CEACAM1、CX3CL1、およびLMNB1;(20)APOLD1、NOS3、CEACAM1、CX3CL1、およびTUBB2A;および(21)NOS3、PPAP2B、CEACAM1、CX3CL1、およびTUBB2Aからなる群から選択されるがん関連遺伝子のある特定の亜群ならびに参照遺伝子AAMP、ARF1、ATP5E、GPX1およびRPLP1の発現レベルを測定するステップと、参照遺伝子の1種または複数の発現レベルに対しがん関連遺伝子の亜群の1種または複数の発現レベルを正規化するステップと、再発のリスクを含む報告を作成するステップとを含む。ある特定の実施形態において、再発のリスクは、がん関連遺伝子の1種または複数の亜群の正規化された発現レベルを使用して計算されるハザード比から推定される。
【0086】
開示されている遺伝子の発現レベルの決定のための様々な技術的アプローチは、本明細書に表記されており、詳細に後述するRT-PCR、マイクロアレイ、ハイスループットシークエンシング、遺伝子発現の連続分析(SAGE)およびデジタル遺伝子発現(DGE)を限定することなく含む。特定の態様において、各遺伝子の発現レベルは、エクソン、イントロン、タンパク質エピトープおよびタンパク質活性を含む、遺伝子の発現産物の様々な特色に関して決定することができる。
【0087】
アッセイされる発現産物は、例えば、RNAまたはポリペプチドとなり得る。発現産物は、断片化され得る。例えば、アッセイは、発現産物の標的配列と相補的なプライマーを使用することができ、よって、完全転写物と共に、標的配列を含有する断片化発現産物を測定することができる。さらなる情報を表Aおよび表Bに提示する。
【0088】
RNA発現産物は、直接的に、またはPCRに基づく増幅方法、例えば、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)によるcDNA産物の検出によりアッセイすることができる(例えば、米国特許第7,587,279号を参照)。ポリペプチド発現産物は、プロテオミクス技法による免疫組織化学的検査(IHC)を使用してアッセイすることができる。さらに、RNAおよびポリペプチド発現産物の両方は、マイクロアレイを使用してアッセイすることもできる。
【0089】
臨床有用性
現在、RCC患者の予想される臨床転帰は、腫瘍の臨床および病理学的特色の主観的決定に基づく。例えば、医師は、腎腫瘍のステージ、グレードおよび壊死の存在に基づき、適切な外科的手順およびアジュバント療法に関する決断を為す。これらの決断において病理学者を導くための標準化された尺度が存在するが、病理検査室間の一致のレベルは低い(Al-Ayanti Mら(2003年)Arch Pathol Lab Med 127巻、593~596頁を参照)。これらの腫瘍特徴を決定および/または確認するための再現性のある分子アッセイがあると有用である。
【0090】
加えて、標準臨床判断基準それのみでは、患者の予後を正確に推定する能力が限定的である。患者の腫瘍の生物学的機構に基づき患者の予後を査定するための再現性のある分子アッセイがあると有用である。そのような情報は、患者カウンセリング、臨床治験(例えば、アジュバント治験)のための患者選択および腎細胞癌の生物学的機構を理解する目的のために使用することができる。加えて、そのような検査は、各患者の腫瘍の生物学的機構に基づく外科手術および処置の推奨において医師を助ける。例えば、ゲノム検査は、再発のリスクおよび/または再発(再燃、転移等)なしの長期生存の可能性に基づきRCC患者を層別化することができる。アジュバント放射線および化学療法を含む、RCC治療法のための現在進行中および計画中の臨床治験がいくつかある。標準臨床判断基準よりも正確に高リスク患者を同定し、これにより、試験のためのアジュバントRCC集団をさらに濃縮することができるゲノム検査があることは有用である。この検査は、アジュバント治験に必要とされる患者数およびアジュバント設定におけるこれらの新たな薬剤の確定的な検査に必要とされる時間を低下させる。
【0091】
最後に、特異的な処置に応答する患者の可能性を予測することができる分子アッセイがあると有用である。重ねて述べるが、このアッセイは、個々の処置決断および臨床治験のための患者のリクルートを容易にし、がんと診断された後の医療決断における医師および患者の信頼を増加させる。
【0092】
遺伝子産物の発現レベルをアッセイする方法
発現プロファイリングの方法は、ポリヌクレオチドのシークエンシングに基づく方法、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づく方法およびプロテオミクスに基づく方法を含む。シークエンシングに基づく分析のための代表的な方法は、大規模並列処理シークエンシング(例えば、Tuckerら、The American J. Human Genetics 85巻:142~154頁、2009年を参照)および遺伝子発現の連続分析(SAGE)を含む。試料におけるmRNA発現の定量化のための本技術分野において公知の例示的な方法は、ノーザンブロッティングおよびin situハイブリダイゼーション(Parker & Barnes、Methods in Molecular Biology 106巻:247~283頁(1999年));RNaseプロテクションアッセイ(Hod、Biotechniques 13巻:852~854頁(1992年));および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)(Weisら、Trends in Genetics 8巻:263~264頁(1992年))等のPCRに基づく方法を含む。DNA二重鎖、RNA二重鎖およびDNA-RNAハイブリッド二重鎖またはDNA-タンパク質二重鎖を含む、配列特異的二重鎖を認識することができる抗体を用いることができる。
【0093】
核酸シークエンシングに基づく方法
核酸シークエンシング技術は、発現分析に適した方法である。これらの方法の根底にある原理は、試料においてcDNA配列が検出される回数が、該配列に相当する相対RNAレベルと直接関係することである。これらの方法は、得られたデータの個別の数値的特性を反映するために、用語、デジタル遺伝子発現(DGE)によって言及されることもある。この原理を適用する初期の方法は、遺伝子発現の連続分析(SAGE)および大規模並列処理サインシークエンシング(MPSS)であった。例えば、S. Brennerら、Nature Biotechnology 18巻(6号):630~634頁(2000年)を参照されたい。
【0094】
さらに近年、「次世代」シークエンシング技術の出現は、DGEをより単純で、よりハイスループットかつより手頃なものとした。結果として、以前に可能であったものよりも多くの研究室が、より多くの個々の患者試料におけるより多くの核酸の発現をスクリーニングするためにDGEを利用することができる。例えば、J. Marioni、Genome Research 18巻(9号):1509~1517頁(2008年);R. Morin、Genome Research 18巻(4号):610~621頁(2008年);A. Mortazavi、Nature Methods 5巻(7号):621~628頁(2008年);N. Cloonan、Nature Methods 5巻(7号):613~619頁(2008年)を参照されたい。大規模並列処理シークエンシング方法は、全ゲノムまたはトランスクリプトームシークエンシングも可能にし、コード配列のみならず非コード配列の分析も可能にした。Tuckerら、The American J. Human Genetics 85巻:142~154頁(2009年)に概説されている通り、Illumina Genome Analyzer(Illumina、Inc.、San Diego、CA)、Applied Biosystems SOLiD(商標)Sequencer(Life Technologies、Carlsbad、CA)、Roche GS-FLX 454 Genome Sequencer(Roche Applied Science、Germany)およびHelicos(登録商標)Genetic Analysis Platform(Helicos Biosciences Corp.、Cambridge、MA)等、数種類の市販の大規模並列処理シークエンシングプラットフォームが存在する。他の開発中の技術を使用してもよい。
【0095】
逆転写PCR(RT-PCR)
出発材料は、典型的には、ヒト腫瘍、通常は、原発性腫瘍から単離された全RNAである。任意選択で、同じ患者由来の正常組織を内部対照として使用することができる。RNAは、組織試料、例えば、新鮮、凍結(例えば、新鮮凍結)またはパラフィン包埋され固定された(例えば、ホルマリン固定された)試料から抽出することができる。
【0096】
RNA抽出のための一般方法は、本技術分野において周知のものであり、Ausubelら、Current Protocols of Molecular Biology、John Wiley and Sons(1997年)を含む、分子生物学の標準的な教科書において開示されている。パラフィン包埋された組織からのRNA抽出のための方法は、例えば、Rupp および Locker、Lab Invest.56巻:A67頁(1987年)およびDe Andresら、BioTechniques 18巻:42044頁(1995年)に開示されている。特に、RNA単離は、Qiagen等、商業的メーカー製の精製キット、バッファーセットおよびプロテアーゼを使用してメーカーの説明書に従って行うことができる。例えば、培養物中の細胞由来の全RNAは、Qiagen RNeasyミニカラムを使用して単離することができる。他の市販のRNA単離キットは、MasterPure(商標)完全DNAおよびRNA精製キット(EPICENTRE(登録商標)、Madison、WI)と、パラフィンブロックRNA単離キット(Ambion、Inc.)を含む。組織試料由来の全RNAは、RNA Stat-60(Tel-Test)を使用して単離することができる。腫瘍試料から調製されるRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心分離により単離することができる。続いて、米国特許出願公開第2011/0111409号に記載されている通り、単離されたRNAは、リボソームRNAを枯渇させることができる。
【0097】
続いて、RNAを含有する試料を逆転写に付して、RNA鋳型からcDNAを産生し、続いてPCR反応において指数関数的増幅を行う。2種の最も一般的に使用される逆転写酵素は、トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV-RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV-RT)である。逆転写ステップは、典型的に、発現プロファイリングの状況および目標に応じて、特異的プライマー、ランダムヘキサマーまたはオリゴdTプライマーを使用して開始される。例えば、抽出されたRNAは、GeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer、CA、USA)を使用してメーカーの説明書に従って逆転写することができる。次に、得られたcDNAは、その後のPCR反応における鋳型として使用することができる。
【0098】
PCRに基づく方法は、Taq DNAポリメラーゼ等、熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを使用する。例えば、TaqMan(登録商標)PCRは、典型的に、TaqまたはTthポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的アンプリコンに結合したハイブリダイゼーションプローブを加水分解するが、均等な5’ヌクレアーゼ活性を有するいかなる酵素を使用してもよい。2種のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、PCR反応産物に典型的なアンプリコンを作製する。第3のオリゴヌクレオチドまたはプローブを設計して、2種のPCRプライマーのハイブリダイゼーション部位間にあるアンプリコンのヌクレオチド配列の検出を容易にすることができる。プローブは、例えば、レポーター色素により検出可能に標識することができ、さらには、TaqMan(登録商標)プローブ形態のように、蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素の両方を備えることができる。TaqMan(登録商標)プローブが使用される場合、増幅反応において、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、鋳型依存性様式でプローブを切断する。その結果得られたプローブ断片は、溶液において解離し、放出されたレポーター色素由来のシグナルは、第2のフルオロフォアのクエンチング効果から解放される。合成される新たな分子毎に1分子のレポーター色素が自由になり、クエンチングされていないレポーター色素の検出は、データの定量的解釈のための基盤を提供する。
【0099】
TaqMan(登録商標)RT-PCRは、例えば、ABI PRISM 7700TM配列検出システム(商標)(Perkin-Elmer-Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)またはLightCycler(Roche Molecular Biochemicals、Mannheim、Germany)等、市販の機器を使用して行うことができる。好ましい実施形態において、5’ヌクレアーゼ手順は、ABI PRISM 7700TM配列検出システム(商標)等、リアルタイム定量的PCRデバイスにおいて実行される。このシステムは、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラおよびコンピュータからなる。このシステムは、サーモサイクラーの384ウェルフォーマットにおいて試料を増幅する。RT-PCRは、10μL反応容量につき2ng RNAインプット相当を用いて、3回複製したウェルにおいて行うことができる。増幅の際に、全ウェルに対し光ファイバーケーブルによりレーザー誘起蛍光シグナルをリアルタイムで収集し、CCDにおいて検出する。このシステムは、器具を操作しデータを分析するためのソフトウェアを含む。
【0100】
5’ヌクレアーゼアッセイデータは、一般に、閾値サイクル(「C」)として最初に表される。蛍光値は、全サイクルにおいて記録され、増幅反応における該ポイントまで増幅された産物の量を表す。閾値サイクル(C)は、一般に、蛍光シグナルが統計的に有意であると最初に記録されるポイントとして記載される。Cp値は、全qPCR増幅曲線の二次導関数およびその最大値を決定することにより計算される。Cp値は、蛍光の増加が最高となり、PCRの対数期が始まるサイクルを表す。
【0101】
誤差および試料間変動の効果を最小化するために、RT-PCRは、通常、内部標準を使用して行われる。理想的内部標準遺伝子(参照遺伝子とも称される)は、同じ起源のがん性および非がん性組織の間で一定のレベルで発現され(即ち、正常およびがん性組織の間で有意に異ならないレベル)、実験処置によって有意に影響されない(即ち、化学療法への曝露の結果として、関連する組織における発現レベルに有意差を呈さない)。遺伝子発現のパターンの正規化に最も頻繁に使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド-3-リン酸-脱水素酵素(GAPDH)およびβ-アクチンのmRNAである。遺伝子発現測定値は、1種または複数(例えば、2、3、4、5またはそれ超)種の参照遺伝子の平均と比べて正規化することができる。参照に正規化された発現測定値は、0~15に及ぶことができ、1単位増加は、一般に、RNA含量の2倍増加を反映する。
【0102】
リアルタイムPCRは、標的配列毎に内部競合体が正規化のために使用される、定量的競合PCRと、試料内に含有される正規化遺伝子またはハウスキーピング遺伝子をRT-PCRのために使用する、定量的比較PCRの両方に適合性である。さらなる詳細に関しては、例えば、Heldら、Genome Research 6巻:986~994頁(1996年)を参照されたい。
【0103】
PCRプライマーおよびプローブの設計
PCRプライマーおよびプローブは、目的のRNA転写物に存在するエクソン、イントロンまたは遺伝子間配列に基づき設計することができる。プライマー/プローブ設計は、Kent, W.J.、Genome Res.12巻(4号):656~64頁(2002年)によって開発されたDNA BLATソフトウェアまたはそのバリエーションを含むBLASTソフトウェア等、公的に入手可能なソフトウェアを使用して行うことができる。
【0104】
必要または要望に応じて、標的配列の反復配列は、非特異的シグナルを緩和するためにマスクすることができる。これを達成するための例示的なツールは、反復エレメントのライブラリに対してDNA配列をスクリーニングし、反復エレメントがマスクされた問い合わせ配列を返す、ベイラー医科大学によりオンライン利用できるRepeat Maskerプログラムを含む。続いて、Primer Express(Applied Biosystems);MGB assay-by-design(Applied Biosystems);Primer3(Steve Rozen および Helen J. Skaletsky(2000年)Primer3 on the WWW for general users and for biologist programmers. In: Rrawetz S, Misener S(編)Bioinformatics Methods and Protocols: Methods in Molecular Biology.、Humana Press、Totowa、NJ、365~386頁)等、いずれかの商業的にまたは他の仕方で公的に入手可能なプライマー/プローブ設計パッケージを使用して、マスクされた配列を、プライマーおよびプローブ配列を設計のために使用することができる。
【0105】
PCRプライマー設計に影響を与え得る他の因子は、プライマーの長さ、融解温度(Tm)およびG/C含量、特異性、相補的プライマー配列ならびに3’末端配列を含む。一般に、最適なPCRプライマーは、一般に17~30塩基の長さであり、例えば、約50~60%等、約20~80%のG+C塩基を含有し、50~80℃の間、例えば、約50~70℃のTmを呈する。
【0106】
PCRプライマーおよびプローブ設計のためのさらに別のガイドラインに関して、例えば、その全体の開示が参照により本明細書に明確に組み込まれる、Dieffenbach, CW.ら、「General Concepts for PCR Primer Design」in: PCR Primer, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、1995年、133~155頁;Innis および Gelfand、「Optimization of PCRs」in: PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications、CRC Press、London、1994年、5~11頁;およびPlasterer, T.N. Primerselect: Primer and probe design. Methods MoI. Biol.70巻:520~527頁(1997年)を参照されたい。
【0107】
表Aおよび表Bは、本明細書に開示されている実施例に関連した、プライマー、プローブおよびアンプリコン配列に関するさらなる情報を提示する。
【0108】
MassARRAY(登録商標)システム
Sequenom、Inc.(San Diego、CA)によって開発された例示的な方法等、MassARRAYに基づく方法において、RNAの単離および逆転写後に、得られたcDNAに、単一塩基を除くあらゆる位置における標的化cDNA領域にマッチし、内部標準として機能する合成DNA分子(競合体)をスパイクする。cDNA/競合体混合物をPCR増幅し、PCR後エビアルカリホスファターゼ(SAP)酵素処理に付し、残るヌクレオチドの脱リン酸化をもたらす。アルカリホスファターゼの不活性化後に、競合体およびcDNA由来のPCR産物をプライマー伸長に付し、これにより、競合体およびcDNA由来PCR産物の明確に区別される質量シグナルを生成する。精製後に、これらの産物を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)分析による分析に必要とされる成分を予めロードしたチップアレイ上に分注する。次に、作製した質量スペクトルにおけるピーク面積の比率を分析することにより、反応物中に存在するcDNAを定量化する。さらなる詳細に関しては、例えば、Ding および Cantor、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100巻:3059~3064頁(2003年)を参照されたい。
【0109】
他のPCRに基づく方法
本明細書に開示されている方法における使用を見出すことができるさらに別のPCRに基づく技法は、例えば、BeadArray(登録商標)技術(Illumina、San Diego、CA;Oliphantら、Discovery of Markers for Disease(Biotechniquesの追補)、2002年6月;Fergusonら、Analytical Chemistry 72巻:5618頁(2000));遺伝子発現の迅速なアッセイにおける市販のLuminexlOO LabMAP(登録商標)システムおよび多色コードマイクロスフェア(Luminex Corp.、Austin、TX)を使用したBeadsArray for Detection of Gene Expression(登録商標)(BADGE)(Yangら、Genome Res.11巻:1888~1898頁(2001年));ならびに高適用範囲発現プロファイリング(HiCEP)分析(Fukumuraら、Nucl. Acids. Res.31巻(16号)e94頁(2003年)を含む。
【0110】
マイクロアレイ
この方法において、目的のポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)は、基材上にアレイ化される。次に、アレイ化された配列を、特異的ハイブリダイゼーションに適した条件下で、試料のRNAから作製された検出可能に標識されたcDNAと接触させる。RNAの供給源は、典型的に、腫瘍試料と、任意選択で、内部対照として同じ患者の正常組織または細胞株から単離された全RNAである。RNAは、例えば、凍結または保管されパラフィン包埋および固定された(例えば、ホルマリン固定された)組織試料から抽出することができる。
【0111】
例えば、アッセイしようとする遺伝子のcDNAクローンのPCR増幅されたインサートを、高密度アレイにおいて基材に適用する。通常、少なくとも10,000種のヌクレオチド配列が、基材に適用される。例えば、それぞれ10,000エレメントでマイクロチップ上に固定化されたマイクロアレイ化された遺伝子は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションに適する。蛍光標識されたcDNAプローブは、目的の組織から抽出されたRNAの逆転写による蛍光ヌクレオチドの取り込みにより生成することができる。チップに適用された標識されたcDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットと特異的にハイブリダイズする。非特異的に結合したプローブを除去するためにストリンジェントな条件下で洗浄した後に、共焦点レーザー顕微鏡またはCCDカメラ等の別の検出方法によりチップを走査する。各アレイ化されたエレメントのハイブリダイゼーションの定量化は、相当するmRNA存在量の査定を可能にする。
【0112】
二色蛍光により、2種のRNA供給源から生成された別々に標識されたcDNAプローブは、アレイにペアワイズでハイブリダイズされる。それぞれ特定化された遺伝子に相当する2種の供給源由来の転写物の相対存在量が、同時に決定される。小型化されたスケールのハイブリダイゼーションは、多数の遺伝子の発現パターンの簡便かつ迅速な評価を可能にする。そのような方法は、細胞当たり数コピーが発現される稀な転写物の検出に要求される感度を有し、発現レベルにおける少なくともおよそ2倍の差を再現性良く検出することが示された(Schenaら(et at)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93巻(2号):106~149頁(1996年))。マイクロアレイ分析は、Affymetrix GenChip(登録商標)技術またはIncyteのマイクロアレイ技術の使用等、市販の機器においてメーカーのプロトコールに従って行うことができる。
【0113】
体液からのRNA単離
血液、血漿および血清(例えば、Tsui NBら(2002年)Clin. Chem.48巻、1647~53頁およびそれに引用されている参考文献を参照)ならびに尿(例えば、Boom Rら(1990年)J Clin Microbiol.28巻、495~503頁およびそれに引用されている参考文献を参照)から発現分析のためにRNAを単離する方法が記載されている。
【0114】
パラフィン包埋された組織からRNAを単離する方法
mRNA単離、精製、プライマー伸長および増幅を含む、固定されパラフィン包埋された組織をRNA供給源として使用して遺伝子発現をプロファイリングするための代表的プロトコールのステップは、様々な刊行された学術論文に提示されている(例えば、T.E. Godfreyら、J. Molec. Diagnostics 2巻:84~91頁(2000年);K. Spechtら、Am. J. Pathol.158巻:419~29頁(2001年)、M. Croninら、Am J Pathol 164巻:35~42頁(2004年)を参照)。
【0115】
免疫組織化学的検査
免疫組織化学的検査方法も、遺伝子の発現レベルの検出に適しており、本明細書に開示されている方法に適用される。そのような方法において、目的の遺伝子の遺伝子産物に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)を使用することができる。抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチン等のハプテン標識または西洋わさびペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ等の酵素により、抗体それ自体の直接標識により検出することができる。あるいは、一次抗体に特異的な標識二次抗体と併せて、非標識一次抗体を使用することができる。免疫組織化学的検査プロトコールおよびキットは、本技術分野において周知のものであり、市販されている。
【0116】
プロテオミクス
用語「プロテオーム」は、ある特定の時点における試料(例えば、組織、生物または細胞培養物)に存在するタンパク質の全体性として定義される。プロテオミクスは、とりわけ、試料におけるタンパク質発現の網羅的変化の研究(「発現プロテオミクス」とも称される)を含む。プロテオミクスは、典型的に、次のステップを含む:(1)2-Dゲル電気泳動(2-D PAGE)による、試料における個々のタンパク質の分離、(2)例えば、質量分析またはN末端シークエンシングによる、ゲルから回収された個々のタンパク質の同定、および(3)バイオインフォマティクスを使用したデータの分析。
【0117】
mRNA単離、精製および増幅の概略
mRNA単離、精製、プライマー伸長および増幅を含む、固定されパラフィン包埋された組織をRNA供給源として使用して遺伝子発現をプロファイリングするための代表的プロトコールのステップは、様々な刊行された学術論文に提示されている(例えば、T.E. Godfreyら、J. Molec. Diagnostics 2:84~91頁(2000年);K. Spechtら、Am. J. Pathol.158巻:419~29頁(2001年)、M. Croninら、Am J Pathol 164巻:35~42頁(2004年)を参照)。簡単に説明すると、代表的プロセスは、組織試料切片(例えば、パラフィン包埋された腫瘍組織試料の約10μm厚の切片)のカットから開始される。続いて、RNAが抽出され、タンパク質およびDNAが除去される。RNA濃度の分析後に、必要であればRNA修復が行われる。次に、例えば、遺伝子特異的プロモーターを使用した逆転写と続くRT-PCRにより、試料を分析に付すことができる。
【0118】
予後診断方法における使用のためのマーカー遺伝子の同定における遺伝子発現レベルの統計分析
当業者であれば、目的の転帰(例えば、生存の可能性、化学療法に対する応答の可能性)および本明細書に記載されているマーカー遺伝子の発現レベルの間に有意な関係性が存在するか決定するために使用することができる、多くの統計的方法が存在することを認識する。この関係性は、連続的再発スコア(RS)として表すことができる、あるいは患者は、リスク群(例えば、低、中、高)に層別化することができる。例えば、コックス比例ハザード回帰モデルは、特定の臨床エンドポイント(例えば、RFI、DFS、OS)への適切な適合をもたらすことができる。コックス比例ハザード回帰モデルの一仮定は、比例ハザード仮定、即ち、効果パラメータが、根底にあるハザードを乗じるという仮定である。マルチンゲール残差の累積和の試験が挙げられるがこれに限定されない、モデル妥当性の査定を行うことができる。当業者であれば、対数累積的ハザード関数の自然スプラインスムージングによるハザードスケールおよびワイブル分布を使用して、処置(化学療法または観察)の効果およびRSを時間依存性として、柔軟なパラメトリックモデルを適合させるために使用することができる(例えば、Royston および Parmer(2002年)、smoothing spline等)数多くの統計的方法が存在することを認識するであろう(P. Royston, M. Parmer、Statistics in Medicine 21巻(15号:2175~2197頁(2002年)を参照)。再発リスクと(1)再発リスク群;および(2)臨床/病理学的共変量(例えば、試験した結節の数、病理学的Tステージ、腫瘍グレード、リンパまたは血管浸潤等)との間の関係性を有意性に関して検査することもできる。
【0119】
例示的な実施形態において、PASS 2008において実行される通り、F. Hsieh および P. Lavori、Control Clin Trials 21巻:552~560頁(2000年)によって提唱された方法を使用して、単一の非バイナリー共変量によるコックス比例ハザードモデルのために検出力計算を行った。
【0120】
例示的な実施形態の概略
本開示は、患者から得られた腫瘍試料由来のある特定の予後遺伝子の発現レベルをアッセイすることにより、腎臓がん患者の再発スコアを得るための方法を提供する。そのような方法は、遺伝子産物の類似機能に基づき作製された遺伝子サブセットの使用が関与する。例えば、本明細書に開示されている予後診断方法は、血管正常化群、免疫応答群および細胞成長/分裂群ならびにIL-6のそれぞれに由来する少なくとも1種の遺伝子を含む遺伝子サブセットの発現レベルをアッセイするステップと、がん再発に対するこれらそれぞれの寄与により遺伝子サブセットのそれぞれの発現レベルに重みを付けることにより、患者の再発スコア(RS)を計算するステップが関与する。重み付けは、遺伝子サブセット毎に異なることができ、正であっても負であってもよい。例えば、血管正常化遺伝子群スコアは、-0.45の因数を乗じることにより重み付けることができ、免疫応答遺伝子群スコアは、-0.31の因数を乗じることにより重み付けることができ、細胞成長/分裂遺伝子群スコアは、+0.27の因数により重み付けることができ、IL-6の値は、+0.04の因数を乗じることができる。
【0121】
発現レベルの正規化
本明細書に開示されている方法において使用される発現データは、正規化することができる。正規化は、例えば、アッセイされるRNAの量における差および使用されるRNAの品質における可変性を補正(正規化して排除)して、C測定値における体系的変動の望まれない供給源等を除去するプロセスを指す。保管され固定されパラフィン包埋された組織試料が関与するRT-PCR実験に関して、体系的変動の供給源は、患者試料の採取後の時間経過および試料の貯蔵に使用した固定液の種類に対する、RNA分解の程度を含むことが公知である。体系的変動の他の供給源は、検査室の処理条件に起因し得る。
【0122】
アッセイは、関連する条件下で相対的に不変の遺伝子である、ある特定の正規化遺伝子の発現を取り込むことにより、正規化をもたらすことができる。例示的な正規化遺伝子として、ハウスキーピング遺伝子が挙げられる。正規化は、アッセイした遺伝子の全てまたはその大型サブセットの平均または中位シグナル(CT)に基づくことができる(網羅的正規化アプローチ)。一般に、参照遺伝子とも称される正規化遺伝子は、非がん性腎臓組織と比較して腎臓がんにおいて不変であり、様々な試料およびプロセス条件によって有意に影響されず、よって、外部の効果を正規化して排除することが公知の遺伝子となるべきである。
【0123】
他に記されていなければ、mRNA/検査された腫瘍/患者毎の正規化された発現レベルは、参照セットにおいて測定された発現レベルのパーセンテージとして表される。腫瘍の十分に多数(例えば、40種)の参照セットは、各mRNA種の正規化されたレベルの分布を生じる。分析しようとする特定の腫瘍試料において測定されたレベルは、この範囲内の数パーセンタイルに収まり、これは、本技術分野において周知の方法により決定することができる。
【0124】
例示的な実施形態において、次の遺伝子のうち1種または複数は、発現データを正規化する参照として使用される:AAMP、ARF1、ATP5E、GPX1およびRPLP1。予後遺伝子それぞれの較正された、重みを付けた平均C測定値は、5種またはそれを超える参照遺伝子の平均と比べて正規化することができる。
【0125】
当業者であれば、数多くの仕方で正規化を達成することができ、上述の技法が、包括的ではなく単に例示的となるよう企図されていることを認識できる。
【0126】
発現レベルの標準化
本明細書に開示されている方法において使用される発現データは、標準化することができる。標準化は、全遺伝子を比較可能なスケールに効果的に配置するプロセスを指す。一部の遺伝子が、その他よりも大きい変動(より広い範囲の発現)を呈するため、この操作が行われる。標準化は、各発現値を該遺伝子の全試料にわたるその標準偏差で割ることにより行われる。次に、ハザード比は、発現における1標準偏差増加毎の臨床エンドポイント(臨床再発、生物学的再発、腎臓がんによる死亡またはいずれかの原因による死亡)に対するハザードの比例的変化として解釈される。
【0127】
発現測定値および較正を橋渡しする
オリゴヌクレオチドセットは、プライマーおよびプローブ(P3)プールならびに遺伝子特異的プライマー(GSP)プールを築くために使用される、フォワードプライマー、リバースプライマーおよびプローブを表す。RT-PCRサイクル閾値(C)測定値における体系的な差は、固有の変動オリゴヌクレオチド合成により、異なるオリゴヌクレオチドセットの間に生じ得る。例えば、オリゴヌクレオチドセットにおける差は、開発、産生(検証のために使用)および将来的な産生ヌクレオチドセットの間に存在し得る。よって、RSの計算において使用される遺伝子係数への翻訳をもたらすオリゴヌクレオチドセットにおける体系的な差を調整するための統計的較正手順の使用が望ましくなり得る。例えば、アルゴリズムにおける使用のためにアッセイされる遺伝子毎に、産生オリゴヌクレオチドセットのC測定値、対、異なるオリゴヌクレオチドセットにおいて使用される相当する試料に由来するC測定値の散布図を使用して、ロット間の差の効果をランダム効果として処理する線形回帰モデルを作成することができる。そのようなプロットの試験は、C測定値の分散が、平均Cの関数として指数関数的に増加することを明らかにする。ランダム効果線形回帰モデルは、対数線形分散により評価して、線形較正方程式を得ることができる。スコアの計算された平均平方誤差(MSE)は、較正スキームが全く使用されない場合のMSEと比較することができる。
【0128】
別の例として、Cの潜在的変数測定値(例えば、第一原理成分)は、様々なオリゴヌクレオチドセットに由来し得る。潜在的変数は、「真の」根底にあるC測定値の合理的尺度である。上述の方法と同様に、線形回帰モデルは、差の効果をランダム効果として処理する試料ペアと、較正Cに対し調整された、重みを付けた平均C値に適合させることができる。
【0129】
センタリングおよびデータ圧縮/スケーリング
分析または試料の差による患者RSの分布における体系的な差は、初期開発、臨床検証および商業的試料の間に存在し得る。アルゴリズムにおいて一定センタリング調整パラメータを使用して、そのような差を説明することができる。
【0130】
データ圧縮は、アッセイの定量化限界(LOQ)を超えた観察される正規化C値における可変性の低下に使用される手順である。具体的には、腎臓がんアッセイ遺伝子のそれぞれに対し、C測定値における分散は、遺伝子の正規化CがアッセイのLOQを超えて広がるにつれ、指数関数的に増加する。そのような変動を低下させるために、遺伝子毎の正規化C値は、アッセイのLOQに向けて圧縮することができる。その上、正規化C値は、再スケーリングすることができる。例えば、予後および参照遺伝子の正規化C値は、0~15の範囲に再スケーリングすることができ、この1単位増加は、一般に、RNA含量の2倍増加を反映する。
【0131】
閾値
本発明は、がん患者から得られた腫瘍切片における遺伝子またはその発現産物の発現レベルを測定するステップと、発現レベルを正規化して、正規化された発現レベルを得るステップと、正規化された発現レベルの閾値を計算するステップと、再発または処置に対する臨床的に有益な応答の可能性に基づきスコアを決定するステップとを含む、がん関連遺伝子の発現の閾値を決定するための方法について記載し、正規化された発現レベルが、閾値未満である場合、閾値は、スコアを決定するために使用され、正規化された発現レベルが、閾値を超えるまたはそれに等しい場合、正規化された発現レベルは、スコアを決定するために使用される。
【0132】
例えば、がん関連遺伝子毎の閾値は、遺伝子発現および転帰の間の関係性の関数形式の試験により決定することができる。そのような分析の例は、遺伝子発現が自然スプラインを使用してモデル化される、無再発間隔におけるコックスPH回帰のため、また、遺伝子発現がlowessスムーザーを使用してモデル化される、再発状況におけるロジスティック回帰のために示される。
【0133】
一部の実施形態において、項および再発リスクの間の関係性が非線形である、または遺伝子の発現が相対的に低い場合、閾値を使用することができる。実施形態において、IL6の発現が<4Cである場合、値は、4Cに固定される。
【0134】
本発明のキット
本発明の方法における使用のための材料は、周知の手順に従って産生されるキットの調製に適合する。よって、本開示は、予後転帰または処置に対する応答を予測するための、開示されている遺伝子の発現を定量化するための遺伝子特異的または遺伝子選択的プローブおよび/またはプライマーを含み得る薬剤を含むキットを提供する。そのようなキットは、腫瘍試料、特に、固定されパラフィン包埋された組織試料からRNAを抽出するための試薬および/またはRNA増幅のための試薬を任意選択で含有することができる。加えて、本キットは、本発明の方法におけるその使用に関する確認用の記述またはラベルまたは説明書を有する試薬(複数可)を任意選択で含むことができる。本キットは、例えば、既製のマイクロアレイ、バッファー、適切なヌクレオチド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP;またはrATP、rCTP、rGTPおよびUTP)、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼならびに本発明の1種または複数のプローブおよびプライマー(例えば、RNAポリメラーゼと反応性のプロモーターに連結された、適切な長さのポリ(T)またはランダムプライマー)を含む、本方法において利用される様々な試薬(典型的には、濃縮型)のうち1種または複数をそれぞれ有する、容器(本方法の自動実行における使用に適したマイクロタイター(microliter)プレートを含む)を含むことができる。予後または予測情報の推定または定量化に使用される数学的アルゴリズムも、キットの適正な潜在的成分である。
【0135】
報告
本発明の方法は、商業的診断目的のために実施されると、一般に、本明細書に記載されている方法から得られた情報の報告または要約を作成する。例えば、報告は、予後遺伝子の発現レベル、再発スコア、特定の患者の予測される臨床転帰の予測または閾値に関する情報を含むことができる。本発明の方法および報告は、データベースにおいて報告を記憶するステップをさらに含むことができる。本方法は、対象のデータベースにおいて記録を作成し、記録にデータを投入することができる。報告は、書面の報告、聴覚による報告または電子記録となり得る。報告は、コンピュータ処理デバイス(例えば、ハンドヘルドデバイス、デスクトップコンピュータ、高性能デバイス、ウェブサイト等)にディスプレイおよび/または記憶することができる。報告は、医師および/または患者にもたらされることが企図される。報告の受取りは、データおよび報告を含むサーバコンピュータへのネットワーク接続を確立するステップと、サーバコンピュータからデータおよび報告を要求するステップをさらに含むことができる。
【0136】
コンピュータプログラム
発現データ、再発スコア、処置スコアおよび/または利益スコア等、上述のアッセイ由来の値は、手作業で計算および記憶することができる。あるいは、前述のステップは、コンピュータプログラム製品により完全にまたは部分的に行うことができる。よって、本発明は、コンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータプログラム製品を提供する。プログラムは、コンピュータにより読み取られる場合、個体由来の1種または複数の生体試料の分析から得られた値(例えば、遺伝子発現レベル、正規化、閾値化およびアッセイ由来の値からスコアへの変換、および/または化学療法に対する再発/応答の可能性の図示、遺伝子共発現またはクリーク分析等)に基づき関連する計算を実行することができる。コンピュータプログラム製品は、計算を行うためのコンピュータプログラムを記憶した。
【0137】
本開示は、上述のプログラムを実行するためのシステムを提供し、このシステムは、一般に、a)中央コンピュータ処理環境;b)例えば、上に詳細に記載されている患者由来の生体試料を使用したアッセイから得られた発現レベルもしくは他の値またはマイクロアレイデータを含み得る患者データを受け取るための、コンピュータ処理環境に作動可能に接続された入力デバイス;c)使用者(例えば、医療従事者)に情報を提供するための、コンピュータ処理環境に接続された出力デバイス;およびd)中央コンピュータ処理環境(例えば、プロセッサ)により実行されるアルゴリズムであって、入力デバイスにより受け取られるデータに基づき実行され、本明細書に記載されているRS、リスクまたは利益群分類、遺伝子共発現分析、閾値化または他の関数を計算するアルゴリズムを含む。本発明により提供される方法は、全体的にまたは部分的に自動化されていてもよい。
【0138】
本発明のあらゆる態様は、例えば、統計的に有意義なピアソンおよび/またはスピアマン相関係数により証明される、開示されている遺伝子と共発現される限られた数の追加的な遺伝子が、開示されている遺伝子に加えておよび/またはその代わりに予後検査において含まれるように実施することもできる。
【0139】
本発明を記載してきたが、図解として提供されている決して本発明の限定を企図しない次の実施例を参照することにより、本発明は、より容易に理解される。
【実施例
【0140】
(実施例1)
アルゴリズム開発のための遺伝子の選択
臨床再発に関連する遺伝子を同定するための遺伝子同定試験は、2010年1月11日に出願された米国特許仮出願第61/294,038号および2010年5月19日に出願された同第61/346,230号ならびに2011年1月7日に出願され2011年7月14日に公開された米国特許出願公開第2011/0171633号(その全てが参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。簡単に説明すると、保管されパラフィン包埋された腎摘除術試料を有する、1985年~2003年の間のCleveland Clinicにおける腎摘除術を受けたステージI~III ccRCC患者を同定した。6×10μmの切開腫瘍切片からRNAを抽出し、RT-PCRを使用して、732種の遺伝子(5種の参照遺伝子を含む)のRNA発現を定量化した。一次エンドポイントは、RCCの手がかりとなる、腎摘除術から最初の再発または死亡までの時間として定義される無再発間隔(RFI)であった。完全な臨床/病理学データおよび組織ブロックを有する931名の患者が評価可能であった。患者特徴:63%男性、年齢中位数61歳、ステージI(68%)、II(10%)およびIII(22%)、経過観察中位数5.6年間、ステージI、IIおよびIIIにおける5年間の再発率は、それぞれ10%、29%および45%であった。RFIに有意に関連する臨床/病態共変量は、顕微鏡レベルの壊死、Fuhrmanグレード、ステージ、腫瘍サイズおよびリンパ節関与を含んだ(全てp<0.001)。
【0141】
同定試験の結果に基づき、448種の遺伝子が、RFIに有意に(p<0.05、未調整;コックスモデル)関連した。これらの遺伝子の大部分に関して(366(82%))、発現増加は、より良い転帰に関連した。遺伝子の多くは、壊死(503種の遺伝子)、Fuhrmanグレード(494)、ステージ(482)、腫瘍サイズ(492)および結節性状況(183)と有意に(p<0.05)関連した。300種の遺伝子は、上述の5種の病理学および臨床共変量のうち少なくとも4種に有意に(p<0.05、未調整)関連した。
【0142】
次の通り、多重遺伝子モデルを開発するために、72種の遺伝子のより小型のセットを選択した:偽発見率(FDR)を10%に制御する、疾患ステージ、Fuhrmanグレード、腫瘍サイズ、壊死および結節性状況の調整後にRFIに関連する29種の遺伝子;単変量分析におけるRFIに関連する上位14種の遺伝子;血管内皮増殖因子/哺乳動物ラパマイシン標的(VEGF/mTOR)血管形成経路のメンバーである12種の遺伝子;ならびに主成分分析(PCA)により同定された追加的な生物学的経路由来の17種の遺伝子。これらのデータを使用して、最終的な11種のがん関連遺伝子および5種の参照遺伝子を選択し、ステージI/II/III腎がん患者のccRCCの再発を予測するための多重遺伝子アルゴリズムを開発した。
【0143】
(実施例2)
アルゴリズム開発
実施例1に記載されている試験において同定された遺伝子は、再発スコアにおける算入に関して考慮された。次の通り、72種の遺伝子のより小型のセットを選択した:
・ 共変量調整と、Storeyの手順(Storey JD(2002年)A direct approach to false discovery rates. Journal of the Royal Statistical Society: Series B 64巻:479~498頁;Storey JD, Taylor JE, Siegmund DO(2004年)Strong control, conservative point estimation and simultaneous conservative consistency of false discovery rates: a unified approach. Journal of the Royal Statistical Society、Series B 66巻:187~205頁)を使用した10%FDR制御後にRFIに関連する29種の遺伝子。
・ 共変量調整前に最も有意な14種の遺伝子。
・ VEGF/mTOR経路の12種の遺伝子メンバー。
・ 主成分分析により17種の遺伝子を選択して、追加的な経路由来の遺伝子を同定した。
【0144】
72種の遺伝子それぞれおよびRFIの間の関連を決定するために、単変量および多変量分析を使用した。表1A(単変量分析)および表1B(多変量分析)は、72種の遺伝子のそれぞれのハザード比、95%信頼区間、カイ二乗、p値およびq値を報告する。
【表1A-1】
【表1A-2】
【表1B-1】
【表1B-2】
【0145】
多重遺伝子モデル、エンドポイントにわたる性能の一貫性および分析的性能に対する遺伝子の寄与を探索することにより、72遺伝子セットをさらに14種の遺伝子へと低下させた。11種の遺伝子の最終セットの選択は、14種の遺伝子のあらゆる可能な組合せを考慮し、平均値への回帰(RM)が補正された多重遺伝子スコアのための標準化ハザード比(Crager、Journal of Applied Statistics 2012年2月;36巻(2号)、399~417頁)によりモデルをランク付けした多変量分析に基づいた。この方法は、遺伝子の組合せ間の選択を補正し、遺伝子同定試験において調査された全732種の遺伝子から選択された組合せを考慮する。同定された最大RM補正ハザード比は、不偏性であり(Crager、Stat Med.2010年1月15日;29巻(1号):33~45頁))、独立的データセットにおける所定の多重遺伝子モデルの性能の現実的推定をもたらす。
【0146】
遺伝子選択に関する追加的な検討は、固定されパラフィン包埋された腫瘍組織において査定された場合の個々の遺伝子のアッセイ性能(不均一性)、遺伝子発現のレベルおよび可変性ならびに臨床転帰との関係性の関数形式を含んだ。
【0147】
遺伝子発現パネルは、表2に示すがん関連遺伝子および参照遺伝子を含んだ。
【表2】
【0148】
再発スコアを得るためのアルゴリズムの概要
定量的RT-PCRを使用して、選ばれた遺伝子のmRNA発現レベルを決定した後に、遺伝子をサブセットに群分けした。血管および/または血管新生機能に関連することが公知の遺伝子を「血管正常化」遺伝子群に群分けした。免疫機能に関連することが公知の遺伝子を「免疫応答」遺伝子群に群分けした。重要な細胞成長および細胞分裂経路(複数可)に関連する遺伝子を「細胞成長/分裂」遺伝子群に群分けした。
【0149】
一部の遺伝子の遺伝子発現は、項および再発リスクの間の関係性が非線形である、または遺伝子の発現が相対的に低い場合、閾値化することができる。例えば、IL6の発現が、4C未満で見出される場合、値を4Cに固定する。
【0150】
次のステップにおいて、サブセットにおける各mRNAの測定された腫瘍レベルに、がん再発リスクに対するその相対的なセット内寄与を反映する係数を乗じた。この積を、サブセットにおけるmRNAレベルおよびその係数の間の他の積に加算して、項、例えば、血管正常化項、細胞成長/分裂項および免疫応答項を得た。例えば、免疫応答項は、(0.5 CCL5+CEACAM1+CX3CL1)/3である(後述する実施例を参照)。
【0151】
次に、係数の使用により、全体的な再発スコアに対する各項の寄与に重みを付けた。例えば、免疫応答項に、-0.31を乗じた。
【0152】
得られた項の和は、再発スコア(RS)をもたらした。
【0153】
腎明細胞癌患者の集団から得た生検腫瘍検体における被験および参照遺伝子の発現を測定し、アルゴリズムを適用することにより、再発スコア(RS)および再発リスクの間の関係性が見出された。
【0154】
本発明のアルゴリズムにより作成されたRSスケールは、様々な仕方で調整することができる。よって、特に上述するRSスケールは、-3.2~-0.2に効果的に及ぶが、この範囲は、スケールが例えば0~10、0~50または0~100に及ぶように選択することができる。例えば、特定のスケーリングアプローチにおいて、スケーリングされた再発スコア(RS)は、0~100のスケールで計算される。便宜上、10C単位が各測定C値に加えられ、スケーリングされていないRSを前述通りに計算する。下に示す方程式を使用して、スケーリングされた再発スコア値を計算する。
【0155】
0~100のスケールの再発スコア(RS)は、次の通り、参照正規化された発現測定値から得た:
RSu=
-0.45×血管正常化遺伝子群スコア
-0.31×免疫応答遺伝子群スコア
+0.27×細胞成長/分裂遺伝子群スコア
+0.04×IL6
(式中、
血管正常化遺伝子群スコア=(0.5 APOLD1+0.5 EDNRB+NOS3+PPA2B)/4
細胞成長/分裂遺伝子群スコア=(EIF4EBP1+1.3 LMNB1+TUBB2A)/3
免疫応答遺伝子群スコア=(0.5 CCL5+CEACAM1+CX3CL1)/3
である)。
次に、0~100の間となるようRSu(再発スコア、アンシール)を再スケーリングする:
RS=(RSu+3.7)×26.4
(RSu+3.7)×26.4<0である場合、RS=0である。
(RSu+3.7)×26.4>100である場合、RS=100である。
【0156】
(実施例3)
アルゴリズムの性能
再発のエンドポイントに関する平均値への回帰の補正のための調整ありおよびなしのアルゴリズムに含まれる最終遺伝子の性能を、表3にまとめる。
【0157】
Storeyの手順等、偽発見率を制御する分析を使用する場合、関連が殆どないまたは全くない遺伝子の割合の増加は、転帰に強く関連する遺伝子であっても同定力を減少させる。したがって、非常に大型の1セットとしての全遺伝子の一体的な分析は、真に関連する遺伝子を同定するには検出力が低い分析を生じることが予想され得る。この課題を緩和するために、「個別クラス」分析(Efron B. Simultaneous inference: When should hypothesis testing problems be combined. Ann. Appl. Statist.2008年;2巻:197~223頁)を行った。個別クラス分析において、偽発見率は、全遺伝子由来の情報を使用して、各遺伝子クラス内で計算されて、計算の精度を改善する。事前情報および/またはがん再発とそれとの関連に関する信条に基づいて、2種の遺伝子クラスを前向きに選択し、残る遺伝子を第3のクラスに設定する。
【表3】
【0158】
ステージにより層別化されるコックスモデルにおいて、最終再発スコアは、再発との関連に関する、絶対的標準化HR=2.16(95%CI 1.89、2.48)および平均値への回帰補正した絶対的標準化HR=1.91(95%CI 1.38、2.30)を生じた。
【0159】
再発スコアの性能は、図1Aおよび図1Bに示す予測曲線(Hung Y, Pepe MS, Feng Z.(2007年)Evaluating the predictiveness of a continuous marker. Biometrics 63巻:1181~1188頁)により実証することもできる。これらの曲線は、リスクの集団分位(ランク)に対する推定再発リスク(縦軸)のプロットである。曲線は、全体として、リスクの集団分布を示す。より有効な予後スコアは、より高リスク患者からより低リスク患者を分け、これは、平均リスク線から分離する曲線により反映される。次に、リスク切点を適用して、何名の患者が、様々なリスク群に収まるか説明することができる。例えば、切点を使用して、何名のステージ1 RCC患者が、リスク16%未満を有するか説明することができる。
【0160】
(実施例4)
不均一性試験
組織不均一性による可変性を調べる内部試験を、固定されパラフィン包埋された組織(FPET)ブロックの腎がん試料において行った。上述の実施例に示す方法およびアルゴリズムを使用して、患者毎に2個のブロックおよび各ブロック内に3枚の切片を有する8名の患者を査定した。ブロック間の可変性およびブロック内の可変性を査定することにより、不均一性を測定した。ブロック間の可変性は、同じ患者内のFPETブロック間の生物学的可変性を測定する。これにより、集団レベル可変性の推定がもたらされる。ブロック内の可変性は、ブロック内の組織不均一性と、技術的なアッセイ関連の可変性の両方を捕捉する。正規化された個々の遺伝子スコアと再発スコアを計算し、ブロック内、ブロック間および患者間の可変性推定を作成した。分析の結果を下の表4および表5に示す。ブロック間および内の可変性に対する患者間の可変性の高い率が一般に有利である。これは、個々の遺伝子測定値および再発スコアにおける臨床的に情報価値のある患者間可変性と比較して、組織不均一性および技術的なアッセイ関連の可変性が低いことを示す。
【表4】
【表5-1】
【表5-2】
【0161】
(実施例5)
追加的な多重遺伝子組合せ
遺伝子同定試験由来のデータセットまたは検証試験由来のデータセットのいずれかを使用して、いくつかの代替的多重遺伝子モデルも評価した。遺伝子同定試験由来のデータセットにおいて検査された追加的な代表的遺伝子組合せを表6に示す。検証試験由来のデータセットにおいて検査した追加的な代表的遺伝子組合せを表7に示す。表6に示すモデル1~4は、検証試験由来のデータセットにおいて検査されておらず、表7から省略されている。これらの表は、両者共に、がん再発リスクを予測するためのアルゴリズムにおける各遺伝子の相対的な重さを反映する計算された係数を示す。検査した様々なモデルにおいて使用された特異的遺伝子(例えば、モデル11は、APOLD1、NOS3、PPAP2BおよびCEACAM1を含んだ)をコードする各mRNAの測定された腫瘍レベルに、示されている係数を乗じて、代替的スコアを得た。絶対的標準ハザード比および相当する95%信頼区間により測定される、各代替的スコアの性能も表に示す。2種の遺伝子がヘッダー行に示されている場合(例えば、APOLD1-EDNRB、IL6-IL8)、この列は、これら2種の遺伝子をコードするmRNAの平均測定腫瘍レベルの係数を示す。
【表6】
【表7】
図1-1】
図1-2】