(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】電池用電極の製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20230626BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230626BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2020199039
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2022-04-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121430
【氏名又は名称】嶋田 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】榎 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-129495(JP,A)
【文献】特開2013-065478(JP,A)
【文献】特開2020-129448(JP,A)
【文献】特開2008-181708(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018211189(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第102598368(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0117924(KR,A)
【文献】特表2013-542555(JP,A)
【文献】特開平10-031998(JP,A)
【文献】特開2007-193987(JP,A)
【文献】特開2014-123663(JP,A)
【文献】特開2009-266526(JP,A)
【文献】特開2014-107237(JP,A)
【文献】特表2011-525292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が大気圧よりも減圧される第1チャンバと、
前記第1チャンバ内に配置された集電体上に、粉体状の活物質を供給する活物質供給部と、
前記集電体上に供給された前記活物質を圧縮する圧縮部と、を備え、
前記活物質供給部及び前記圧縮部が前記第1チャンバ内に配置さ
れ、
内部が大気圧よりも減圧され、前記第1チャンバに並べて配置された第2チャンバと、
少なくとも一部が前記第2チャンバ内に配置され、前記集電体を前記第1チャンバ内に供給する集電体供給部と、
を備える、電池用電極の製造装置。
【請求項2】
前記集電体上に、環状の枠体を供給する枠体供給部を備え、
前記枠体供給部は、前記第1チャンバ内に配置されている、請求項1に記載の電池用電極の製造装置。
【請求項3】
前記枠体供給部は、前記活物質供給部よりも上流側に配設され、
前記集電体上へ供給される前記活物質は、前記枠体内に供給される、請求項2に記載の電池用電極の製造装置。
【請求項4】
前記集電体は、前記第1チャンバ内に所定の速度で供給され、
前記活物質供給部から供給された前記活物質は、前記集電体上に第1の厚さで配置され、
前記圧縮部は、前記第1の厚さの前記活物質を、前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さに圧縮する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池用電極の製造装置。
【請求項5】
前記集電体供給部は、帯状の前記集電体の端部同士を接合することで、連続的に前記集電体を前記第1チャンバ内に供給する、請求項
1に記載の電池用電極の製造装置。
【請求項6】
前記第2チャンバの内部の圧力は、前記第1チャンバの内部の圧力よりも高い、請求項
1又は
5に記載の電池用電極の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極の製造装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、一般に、正極集電体の表面に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体の表面に負極活物質層が形成された負極とが、セパレータを介して積層されて構成される。このリチウムイオン電池用電極を製造する際には、例えば特許文献1に記載されたように、集電体上に活物質を供給した後、当該活物質を圧縮することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、大気中において、集電体上に活物質を供給した後圧縮している。集電体上への活物質供給が大気中で行われると、空気が含まれた活物質層が集電体上に形成されることがある。そして、集電体上に形成された活物質層の圧縮が大気中で行われると、空気が残った状態のまま活物質層を圧縮することとなるので、圧縮後に空気が膨張し、活物質が弾け飛んだり、活物質の表面に凹凸が形成されたりする問題が生じることがある。リチウムイオン電池に用いる電極は、集電体上に供給された活物質を含む活物質層が均質に形成されることで、安定した電池の性能を発揮するが、従来の構成では、前述した問題を抑制することが困難であり、所望の電池の性能が得られない虞がある。
【0005】
本発明は、活物質層に空気が含まれることを抑制し、集電体上に形成される活物質層の均一性を向上させることができる電池用電極の製造装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の電池用電極の製造装置は、内部が大気圧よりも減圧される第1チャンバと、前記第1チャンバ内に配置された集電体上に、粉体状の活物質を供給する活物質供給部と、前記集電体上に供給された前記活物質を圧縮する圧縮部と、を備え、前記活物質供給部及び前記圧縮部が前記第1チャンバ内に配置されている。
【0007】
本発明の一態様の電池用電極の製造方法は、内部が大気圧よりも減圧された第1チャンバ内に配置された集電体上に、粉体状の活物質を供給する工程と、前記集電体上に供給された前記活物質を圧縮する工程と、を有し、前記集電体への前記活物質の供給、及び、前記活物質の圧縮は、前記第1チャンバ内で行われる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電池用電極の製造装置およびその製造方法によれば、活物質を圧縮する際に、活物質に空気が含まれるのを抑制し、集電体上に形成される活物質層の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の電池用電極の製造装置を用いて製造される電池の断面模式図である。
【
図3】一実施形態の電池用電極の製造装置の一部を破断した斜視図である。
【
図4】同電池用電極の製造装置を構成する枠体供給装置の斜視図である。
【
図5】同電池用電極の製造装置を構成する活物質供給装置および第2圧縮装置における一部を破断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を適用した一実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0011】
<電池(二次電池)>
図1は、一実施形態の電池用電極の製造装置(以下、製造装置と略して呼ぶ)を用いて製造される電池10の断面模式図である。
本実施形態の電池(二次電池)10は、非水電解質二次電池の1種であるリチウムイオン二次電池である。ここで、リチウムイオン二次電池とは、正極30aと負極30bとの間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。以下では、正極30aおよび負極30bを区別無く呼ぶときには、電極(電池用電極)30と呼ぶ。
【0012】
電池10は、例えば、発電要素において電極が並列接続されてなる形式のいわゆる並列積層型電池などの従来公知の任意の二次電池にも適用可能である。なお、以下の説明では、リチウムイオン二次電池を単に「電池」と呼ぶ。
【0013】
本実施形態の電池10は、発電要素11と、正極タブ34aと、負極タブ34bと、外装体12と、を有する。
【0014】
正極タブ34aは、発電要素11の正極側の端面に接触する。同様に、負極タブ34bは、発電要素11の負極側の端面に接触する。正極タブ34aおよび負極タブ34bは、それぞれ外装体12の外側に引き出される。正極タブ34aおよび負極タブ34bは、アルミニウム合金、銅合金などの高導電性材料が用いられる。
【0015】
外装体12は、外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、発電要素11を内部に封止する。外装体12は、例えば、ラミネートフィルムによって袋状に構成される。なお、外装体12としては、金属缶ケースなどを用いてもよい。
【0016】
本実施形態の電池10の発電要素11は、複数の単セル(電池セル)20を有する。発電要素11において、複数の単セル20は、厚さ方向に積層される。単セル20の積層数は、所望する電圧に応じて調節される。
【0017】
<単セル(電池セル)>
図2は、単セル20の断面模式図である。
単セル20は、2つの電極(電池用電極)としての正極30aおよび負極30bと、セパレータ40と、を有する。
【0018】
セパレータ40は、正極30aと負極30bとの間に配置される。発電要素11において、複数の単セル20は、正極30aと負極30bとを同方向に向けて積層される。発電要素11において、積層方向の正極側の端部に配置される単セル20の正極30aには、正極タブ34aが接触し、積層方向の負極側の端部に配置される単セル20の負極30bには、負極タブ34bが接触する。
【0019】
セパレータ40には、電解質が保持される。これにより、セパレータ40は、電解質層として機能する。セパレータ40は、正極30aおよび負極30bの電極活物質層32の間に配置され、これらが互いに接触することを抑制する。これにより、セパレータ40は、正極30aと負極30bとの間の隔壁として機能する。
【0020】
セパレータ40に保持される電解質としては、例えば、電解液またはゲルポリマー電解質などが挙げられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータなどを挙げることができる。
【0021】
正極30aおよび負極30bは、それぞれ、集電体31と、電極活物質層32と、枠体45と、を有する。電極活物質層32と集電体31とは、セパレータ40側からこの順に並ぶ。枠体45は、額縁状(環状)である。枠体45は、電極活物質層32の周囲を囲む。正極30aの枠体45と負極30bの枠体45とは、互いに溶着され一体化されている。
【0022】
以下の説明において、正極30aおよび負極30bの電極活物質層32を互いに区別する場合、これらをそれぞれ正極活物質層32a、負極活物質層32bと呼ぶ。
【0023】
枠体45は、集電体31同士の接触や単セル20の端部における短絡を防止する。枠体45を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、樹脂材料が好適に採用される。
【0024】
集電体31は、導電性のシート状の部材である。集電体31を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、導電性を有する樹脂や、金属が用いられうる。軽量化の観点からは、集電体31は、導電性を有する樹脂によって形成された樹脂集電体であることが好ましい。なお、単セル20間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、樹脂製の集電体31の一部に金属層を設けてもよい。
【0025】
樹脂製の集電体31を構成する導電性を有する樹脂としては、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
【0026】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(H
DPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0027】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、白金、鉄、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、アンチモン、およびカリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0028】
導電性フィラーの添加量は、集電体31に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、好ましくは、5~35質量%程度であり、より好ましくは10~30質量%であり、さらに好ましくは15~20質量%である。
【0029】
また、集電体31が金属によって形成される場合は、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属のめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体31へのスパッタリングによる負極活物質の密着性などの観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
【0030】
電極活物質層32は、電極活物質(正極活物質または負極活物質)および導電助剤を含む電極用造粒粒子(以下、単に造粒粒子)を有する。また、電極活物質層32は、必要に応じて、電解液および粘着剤のうち何れか一方又は両方をさらに含んでいてもよい。また、電極活物質層32は、必要に応じて、イオン伝導性ポリマーなどを含んでもよい。
以下の説明において、正極活物質層32aおよび負極活物質層32bの電極活物質を互いに区別する場合、これらをそれぞれ正極活物質、負極活物質と呼ぶ。
【0031】
正極活物質としては、例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni-Mn-Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたものなどのリチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸化合物、リチウム-遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられる。さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、「NMC複合酸化物」と呼ぶ)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物などが用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を有する。そして、遷移金属1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
【0032】
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボンなどの炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、金属材料(スズ、シリコン)、リチウム合金系負極材料(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム-マンガン合金など)などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム合金系負極材料が、負極活物質として好ましく用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。また、(メタ)アクリレート系共重合体などの被覆用樹脂は特に炭素材料に対して付着しやすいという性質を有している。したがって、構造的に安定した電極材料を提供するという観点からは、負極活物質として炭素材料を用いることが好ましい。
【0033】
導電助剤は、電子伝導パスを形成し、電極活物質層32の電子移動抵抗を低減することで、電池の高レートでの出力特性向上に寄与し得る。導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。
【0034】
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタンなどの金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)など)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラックなど)などのカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっきなどでコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0035】
電解液(液体電解質)は、溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。本発明の電解液を構成する溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネートなどのカーボネート類が挙げられる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6LiClO4、Li[(FSO2)2N](LiFSI)などの無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、およびLiC(CF3SO2)3などの有機酸のリチウム塩などが挙げられる。なお、電解液におけるリチウム塩の濃度は、0.1~3.0Mであることが好ましく、0.8~2.2Mであることがより好ましい。また、添加剤を使用する場合の使用量は、添加剤を添加する前の電解液100質量%に対して、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0036】
添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1-メチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの環式炭酸エステルは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
粘着剤としては、例えば、ポリシック(登録商標)シリーズなどの(メタ)アクリル酸エステル系感圧接着剤が挙げられる。造粒粒子中の前記粘着剤の含有量は、造粒粒子の固形分の合計質量に対して、0.01~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01~8質量%であり、さらに好ましくは0.1~5質量%であり、特に好ましくは0.1~3質量%である。
【0038】
<製造装置および電池用電極の製造方法>
次に、本実施形態の製造装置および電池用電極の製造方法(以下、製造方法と略して呼ぶ)について説明する。製造装置および製造方法では、まず正極30aおよび負極30bが製造される。正極30aの製造方法と負極30bの製造方法とは、主に電極活物質層32に含まれる電極活物質が異なる。ここでは、電極30の製造方法として、正極30aおよび負極30bの製造方法をまとめて説明する。
【0039】
図3は、製造装置1000の斜視図である。製造装置1000は、第1チャンバ(チャンバ)100と、第2チャンバ200と、集電体供給装置(集電体供給部)300と、搬送装置400と、枠体供給装置(枠体供給部)500と、第1ロールプレス600と、活物質供給装置(活物質供給部)700と、第2ロールプレス(圧縮部)800と、制御部900と、を備えている。
【0040】
第1チャンバ100および第2チャンバ200は、それぞれ内部を大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋である。第1チャンバ100の側壁には、耐圧ガラスにより形成された窓である観察窓(ビューイングポート)101が設けられている。このため、第1チャンバ100の外部から、観察窓101を通して第1チャンバ100内を観察できる。
第1チャンバ100の内部は、図示しない第1減圧ポンプにより大気圧よりも減圧される。第1チャンバ100の内部の圧力は、大気圧よりも減圧されていれば任意の値でよいが、例えば、大気圧から1×10-1~1×10-2Paまでの低真空環境となるように調整されていてもよいし、1×10-6~1×10-7Paの高真空環境となるように調整されていてもよいし、それ以上の超高真空や10-8~10-9Paレベルの極高真空であってもよい。なお、標準大気圧は、約1013hPa(約105Pa)である。
第2チャンバ200の内部は、図示しない第2減圧ポンプにより大気圧よりも減圧される。第2チャンバ200の内部の圧力は、大気圧よりも減圧されていれば任意の値でよいが、例えば、大気圧から1×10-1~1×10-2Paまでの低真空環境となるように調整されていてもよいし、1×10-6~1×10-7Paの高真空環境となるように調整されていてもよいし、それ以上の超高真空や10-8~10-9Paレベルの極高真空であってもよい。第2チャンバ200の内部の圧力は、第1チャンバ100の内部の圧力よりも高くてもよい。
【0041】
第1チャンバ100および第2チャンバ200は、集電体供給装置300が、帯状の集電体31Bを搬送する搬送方向Dに並べて配置される。集電体31Bは、前記集電体31が所定の形状に切り出される前のものである。第1チャンバ100は、第2チャンバ200よりも搬送方向Dの下流側D1に配置される。
第2チャンバ200は、前室である。第2チャンバ200における下流側D1の側壁には、スリット201が形成される。第2チャンバ200における下流側D1とは反対の上流側D2の側壁には、図示しないスリットが形成される。このスリットは、第2チャンバ200のスリット201に対向するように形成される。
【0042】
第2チャンバ200内には、集電体供給装置300が配置される。第1チャンバ100内には、搬送装置400、枠体供給装置500、第1ロールプレス600、活物質供給装置700、および第2ロールプレス800が配置される。
【0043】
集電体供給装置300は、第1チャンバ100内に、集電体31Bを供給する。集電体供給装置300は、図示しないロール保持部と、スプライサ310と、送りローラ320と、を備える。
ロール保持部には、一対の集電体ロール31Rが保持される。集電体ロール31Rは、集電体31Bをロール状にしたものである。集電体ロール31Rが適宜展開され、集電体ロール31Rから集電体31Bが供給される。ロール保持部は、一対の集電体ロール31Rのうちの一方が全て展開されたら、一対の集電体ロール31Rのうちの他方の供給を開始する。
【0044】
スプライサ310は、集電体31Bの端部同士を接合する。一方の集電体ロール31Rが全て展開され、集電体31Bが全て供給されると、最終的には集電体31Bの終端が下流側D1に向けて移動する。この終端と、他方の集電体ロール31Rを展開した集電体31Bの始端とを、スプライサ310により接合する。これにより、複数の集電体31Bを途切れさせることなく連続的に第1チャンバ100内に供給する。
【0045】
送りローラ320は、ロール保持部よりも下流側D1に設けられる。送りローラ320は、複数の回転部材からなる。送りローラ320により搬送される集電体31Bは、前記複数の回転部材に沿って移動する。これにより、集電体31Bを送りローラ320の途中で緩ませることなく、安定して下流側D1の第1チャンバ100内に供給する。集電体供給装置300は、集電体31Bを所定の速度で供給する。
第2チャンバ200の内部には、予備の集電体ロール31Rが配置されていることが好ましい。
集電体供給装置300から下流側D1に供給された集電体31Bは、第2チャンバ200のスリット201、および第1チャンバ100のスリットを通して、第2チャンバ200の内部に供給される。
【0046】
本実施形態では、集電体供給装置300の全てが、第2チャンバ200内に配置される。なお、集電体供給装置300におけるロール保持部などが、第2チャンバ200の外部に配置されてもよい。この場合、集電体供給装置300の一部が、第2チャンバ200内に配置される。
【0047】
例えば、搬送装置400は、公知のベルトコンベアである。搬送装置400は、搬送ローラ401を備える。搬送ローラ401は、その回転軸が、水平面に沿うとともに搬送方向Dに直交する幅方向Eに沿うように配置される。搬送装置400は、第1チャンバ100の内部において、集電体31Bを下流側D1に搬送する。
枠体供給装置500、第1ロールプレス600、活物質供給装置700、および第2ロールプレス800は、上流側D2から下流側D1に向かって、この順で搬送装置400に沿って並べて配置される。
【0048】
図4は、枠体供給装置500の斜視図である。枠体供給装置500は、活物質供給装置700よりも上流側D2に配設される。
枠体供給装置500は、第2チャンバ200の内部であって、搬送装置400の側方に積み重ねられた枠体45を、集電体31B上に供給する。枠体供給装置500は、ロボットアーム501と、保持具502と、脱気管503と、を有する。
ロボットアーム501は、複数のロッド506を関節507で接続した公知の構成のものである。ロボットアーム501の基端部は、第1チャンバ100の床などに固定されている。
【0049】
保持具502は、枠体45と同じ大きさの額縁状である。例えば、保持具502は、本体部510と、弾性部511と、吸盤部(不図示)と、を備えている。
本体部510は、下面側に開口を有する断面コの字型の部材である。また、本体部510の開口部は、枠体45の形状に合わせた額縁状である。
弾性部511は、本体部510の開口部を塞ぐように設けられる。弾性部511は、本体部510に設けられた、枠体45に接する部位である。ここで、枠体45を吸着部に吸着するために、弾性部511は、枠体45に隙間なく密着する必要がある。
吸盤部は、弾性部511における枠体45に接する面に間隔をあけて複数設けられた、弾性部511の肉厚が薄くなっている部位である。また本実施形態では、吸盤部は、弾性部511において、枠体45に接する側の面に面一となっており、本体部510の側の面に窪みがあるように設けられている。
【0050】
脱気管503の第1端部における内部空間は、本体部510の内部空間に連なっている。脱気管503における第1端部とは反対側の第2端部には、図示しない減圧ポンプが接続されている。減圧ポンプには、減圧ポンプに接続された脱気管503の内部空間の空気を排出するか否かを切り替えるバルブが設けられている。減圧ポンプは、第2チャンバ200の外部に配置されていることが好ましい。
【0051】
このように構成された枠体供給装置500において、弾性部511が枠体45に密着した状態で減圧ポンプを駆動し、バルブを切り替えて脱気管503の内部空間の空気が排出されるようにする。すると、保持具502の内部の空気が、脱気管503、および減圧ポンプを通して第2チャンバ200の外部に排出される。保持具502内の気圧が低下する。これにより、弾性部511を本体部510の内側に吸い寄せる力が発生する。この力が発生すると、最初に吸盤部が本体部510の内側へ移動する。
【0052】
すると、枠体45と吸盤部との間に隙間を生じさせるような力が作用する。それに対し、弾性部511は、枠体45に接した状態のままとなる。枠体45と吸盤部との間に生じた隙間は、負圧となる。これにより、枠体45を保持具502の吸盤部によって吸着し、これを維持することによって枠体45を把持する。保持具502に、積み重ねられた枠体45のうち、最も上方の枠体45が保持される。ロボットアーム501を動作させ、保持した枠体45を集電体31B上に置く。枠体45は、枠体45の厚さ方向が上下方向に沿うように集電体31B上に置かれる。バルブを切り替えて脱気管503の内部空間の空気が排出されないようにすると、集電体31B上に置かれた枠体45から保持具502が離脱する。
集電体31B上に置かれた枠体45は、集電体31Bとともに下流側D1に搬送される。例えば、枠体45は、集電体31B上に搬送方向Dに隙間なく配置される。
【0053】
図3に示すように、第1ロールプレス600は、一対の圧縮ローラ601と、駆動部602と、を有する。一対の圧縮ローラ601は、それぞれの軸線が水平面に沿うように配置されている。一対の圧縮ローラ601は、上下方向に対向するように配置されている。駆動部602は、一対の圧縮ローラ601をそれぞれの軸線回りに回転させる。一対の圧縮ローラ601の間には、集電体31Bおよび枠体45が挟まれる。駆動部602は、集電体31Bおよび枠体45が下流側D1に搬送されるように、一対の圧縮ローラ601を回転させる。
【0054】
活物質供給装置700は、第1チャンバ100内に配置された集電体31B上に粉体状の活物質32cを供給する。活物質32cは、電極活物質および導電助剤を含む、複数の電極用造粒粒子のことを意味する。
図5に示すように、活物質供給装置700は、スクリューコンベア710と、投入シュート720と、排出シュート730と、シャッタユニット740と、超音波振動機750と、ならしブラシ760と、を備える。なお、投入シュート720および排出シュート730で、ホッパ770を構成する。ホッパ770は、第1チャンバ100内に配置される。
スクリューコンベア710は、活物質32cを投入シュート720へ運搬する。スクリューコンベア710の一方の端部は、第1チャンバ100の外部に配置された、活物質32cの貯蔵部など(不図示)へ接続されている。また、スクリューコンベア710の他方の端部は、投入シュート720へ接続されている。
【0055】
投入シュート720は、スクリューコンベア710から運搬された活物質32cを、排出シュート730内に落とす。
排出シュート730は、上下方向に延びる筒状である。排出シュート730の下端部には、開口731が形成されている。排出シュート730は、投入シュート720よりも下方に配置されている。すなわち、ホッパ770の下端部には、開口731が形成される。開口731は、水平面に沿うように形成される。
ホッパ770は、搬送装置400よりも上方に配置される。言い換えると、ホッパ770は、搬送装置400により搬送される集電体31Bおよび枠体45よりも上方に配置されている。開口731は、第1チャンバ100内に配置された集電体31B上に(集電体31Bに向けて)活物質32cを供給する。スクリューコンベア710から投入シュート720に運搬された活物質32cは、排出シュート730内に自由落下する。ホッパ770の内部には、活物質32cが収容される。
なお、スクリューコンベア710上で活物質32cが塊状となっている場合に、その塊状となっている活物質32cを粉砕する解砕機を、活物質供給装置700が備えてもよい。
【0056】
シャッタユニット740は、第1シャッタ扉(シャッタ)741と、第2シャッタ扉(シャッタ)742と、第1開閉機構(開閉機構)743と、第2開閉機構(開閉機構、不図示)と、を有する。
シャッタ扉741,742は、それぞれ平板状である。シャッタ扉741,742は、それぞれ水平面に沿うように配置されている。第2シャッタ扉742は、第1シャッタ扉741よりも下流側D1に配置されている。シャッタ扉741,742は、排出シュート730の開口731を開閉する。ここでシャッタ扉741,742が開口731を開くとは、シャッタ扉741,742が開口731の少なくとも一部を覆わない状態にあることを意味する。シャッタ扉741,742が開口731を閉じるとは、シャッタ扉741,742が開口731を完全に塞ぐ状態にあることを意味する。
【0057】
第1開閉機構743は、モータ745と、アーム746と、を有する。モータ745では、本体747に対して回転軸748が、回転軸748の軸線回りに回転する。回転軸748の外周面には、雄ネジが形成されている。モータ745は、回転軸748が搬送方向Dに延びるように配置されている。本体747は、第1チャンバ100の床などに固定されている。
アーム746の第1端部には、図示しない雌ネジが形成されている。この雌ネジは、モータ745の回転軸748の雄ネジに嵌め合っている。アーム746における第1端部とは反対の第2端部は、第1シャッタ扉741の上面に固定されている。
【0058】
以上のように構成された第1シャッタ扉741および第1開閉機構743では、例えば、モータ745に対して所定の向きに電圧を印加すると、回転軸748が所定の向きに回転する。回転軸748にアーム746を介して接続された第1シャッタ扉741は、下流側D1に移動する。同様に、モータ745に対して所定の向きは反対の向きに電圧を印加すると、回転軸748が所定の向きは反対の向きに回転する。第1シャッタ扉741は、上流側D2に移動する。このように、第1開閉機構743は、第1シャッタ扉741を搬送方向Dに搬送する。
第2開閉機構は、第1開閉機構743と同様に構成されている。第2開閉機構により、第2シャッタ扉742は第1シャッタ扉741とは独立して、下流側D1および上流側D2に移動できる。
【0059】
超音波振動機750は、排出シュート730下部の外壁に設けられている。つまり、超音波振動機750は、排出シュート730における活物質32cが堆積する部位の外側に設けられている。超音波振動機750は、超音波を発生することで排出シュート730の下部に堆積した活物質32cを振動させる。超音波振動機750は、排出シュート730内に堆積した活物質32cを均一にならす役割を有する。
【0060】
ならしブラシ760は、図示しないモータにより水平面に沿って移動する。ならしブラシ760は、排出シュート730内に堆積した活物質32cの上面を平坦にならす役割を有する。
以上のように本実施形態では、開口731を有する活物質供給装置700の一部が、第1チャンバ100内に配置される。
なお、活物質供給装置700は、少なくとも開口731が第1チャンバ100内に配置されていればよい。活物質供給装置700の全体が、第1チャンバ100内に配置されてもよい。
【0061】
活物質供給装置700は、開口731の下方に枠体45の内部空間45aが位置するときに、シャッタ扉741,742が開くように制御される。これにより、開口731から供給された活物質32cは、集電体31B上であって枠体45の内部空間45a(枠体45内)に第1の厚さで配置される。このように、活物質供給装置700は、集電体31B上に設けられた枠体45内に活物質32cを供給する。例えば、第1の厚さは、枠体45の厚さよりも厚い。
シャッタ扉741,742が開くタイミングを、開口731の下方に枠体45の内部空間45aが位置するときに合わせるのには、搬送装置400の搬送速度、枠体45の搬送方向Dの長さなどを考慮した、公知の時間制御などが用いられる。なお、製造装置1000が枠体45の搬送方向Dの位置を検出する位置センサを備えてもよい。そして、位置センサが検出した枠体45の位置に基づいて、制御部900が第1開閉機構743および第2開閉機構によりシャッタ扉741,742が開くタイミングを合わせてもよい。
【0062】
第2ロールプレス800は、集電体31B上に供給された活物質32cを圧縮する。第2ロールプレス800は、第1ロールプレス600と同様に構成されている。第2ロールプレス800は、一対の圧縮ローラ801と、駆動部802と、を有する。一対の圧縮ローラ801の間には、集電体31B、枠体45、および活物質32cが挟まれる。
第2ロールプレス800は、第1の厚さの活物質32cを、第1の厚さよりも薄い第2の厚さに圧縮する。例えば、第2の厚さは、枠体45の厚さである。
なお、第1ロールプレス600および第2ロールプレス800の構成は、これらに限定されない。
【0063】
制御部900は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、メモリと、を有する。メモリには、CPUを動作させるための制御プログラム、各種データなどが記憶される。制御部900は、第1開閉機構743、第2開閉機構などに接続されている。制御部900は、第1開閉機構743、第2開閉機構などを制御する。
【0064】
本実施形態の製造方法では、まず、内部が大気圧よりも減圧された第1チャンバ100内に配置された集電体31B上に、枠体45を供給する。集電体31B上であって枠体45の内部空間(内部)45aに、活物質32cを供給する。すなわち、前記枠体45の供給は、集電体31Bへの活物質32cの供給よりも上流側D2で行う。そして、集電体31B上であって枠体45の内部空間45aに供給された活物質32cを圧縮する。
集電体31Bへの枠体45の供給、集電体31Bへの活物質32cの供給、及び、活物質32cの圧縮は、第1チャンバ100内で行われる。
【0065】
なお、帯状の集電体31Bから集電体31が適宜切り出されるなどして、電極30が製造される。一対の電極30(すなわち、正極30aおよび負極30b)を、セパレータ40を介して互いに向かい合わせに積層するなどして、単セル20が製造される。複数の単セル20を厚さ方向に積層し、複数の単セル20を外装体12でシーリングすることなどにより、電池10が製造される。
外装体12でシーリングする際にも、活物質32cに含まれる空気が膨張するのが抑制される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の製造装置1000によれば、内部が大気圧よりも減圧される第1チャンバ100内に、活物質供給装置700および第2ロールプレス800が配置される。このため、集電体31B上に活物質32cを供給する際、および集電体31B上に供給された活物質32cを圧縮する際に、それぞれ活物質32cに空気が含まれ難い。従って、活物質32cを圧縮する際に、活物質32cに空気が含まれるのを抑制し、集電体31B上に形成される活物質32cの均一性を向上させることができる。
また、本実施形態の製造方法によれば、集電体31B上に活物質32cを供給する際、および集電体31B上に供給された活物質32cを圧縮する際に、それぞれ活物質32cに空気が含まれ難い。従って、活物質32cを圧縮する際に、活物質32cに空気が含まれるのを抑制し、集電体31B上に形成される活物質32cの均一性を向上させることができる。
本実施形態の製造装置1000および製造方法は、バインダを用いずに、集電体31B上に供給された活物質32cをロールプレスしている。このため、第1チャンバ100内で粉が舞わないという長所がある。
【0067】
製造装置1000は、第1チャンバ100内に配置された枠体供給装置500を備える。そして、製造方法では、第1チャンバ100内で集電体31B上に枠体45を供給する。これらにより、枠体45の内部空間45aに活物質32cを納め、集電体31B上から活物質32cがこぼれ落ちるのを防止することができる。
枠体供給装置500は活物質供給装置700よりも上流側D2に配設され、集電体31B上へ供給される活物質32cは枠体45の内部空間45aに供給される。そして、製造方法では、枠体45の供給は集電体31Bへの活物質32cの供給よりも上流側D2で行い、枠体45の内部空間45aに活物質32cを供給し、その活物質32cを圧縮する。これらにより、集電体31B上からこぼれ落ちるのを防止するために枠体45の内部空間45aに供給した活物質32cを、圧縮することができる。
【0068】
集電体31B上に第1の厚さで配置された活物質32cを、第2ロールプレス800により、第1の厚さよりも薄い第2の厚さに圧縮することができる。
製造装置1000は、第2チャンバ200、および第2チャンバ200内に配置された集電体供給装置300を備える。このため、自身の上に活物質32cを配置する集電体31Bを、予め第2チャンバ200内で、大気圧よりも減圧された環境にさらし、集電体31Bを介して活物質32cに空気が含まれるのを抑制することができる。空気が、集電体供給装置300から第1チャンバ100内に入るのを抑制することができる。
【0069】
集電体供給装置300は、帯状の集電体31Bの端部同士を接合することで、連続的に集電体31Bを第1チャンバ100内に供給する。従って、集電体31Bを第1チャンバ100内に連続的に供給することができる。
第2チャンバ200の内部の圧力は、第1チャンバ100の内部の圧力よりも高い。従って、第2チャンバ200の内部の圧力が第1チャンバ100の内部の圧力に等しい場合に比べて、第2チャンバ200内を減圧するのに要する電力などを低減させることができる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除なども含まれる。
例えば、前記実施形態では、第2チャンバ200の内部の圧力は、第1チャンバ100の内部の圧力と同等でもよい。
集電体供給装置300は、スプライサ310を備えなくてもよい。この場合、集電体31Bの端部同士は接合されない。
活物質供給装置700よりも下流側D1に、枠体供給装置500を配置してもよい。この場合、集電体31B上に活物質32cを供給してから、集電体31B上に枠体45を供給することになる。
製造装置1000は、第2チャンバ200、集電体供給装置300、搬送装置400、枠体供給装置500、第1ロールプレス600、および制御部900を備えなくてもよい。この場合、製造方法では、集電体31B上に枠体45を供給する工程、および枠体45の内部空間45aに、活物質32cを供給する工程は、行われない。
【符号の説明】
【0071】
31B 集電体
32c 活物質
45 枠体
100 第1チャンバ
200 第2チャンバ
300 集電体供給装置(集電体供給部)
500 枠体供給装置(枠体供給部)
700 活物質供給装置(活物質供給部)
800 第2ロールプレス(圧縮部)
1000 製造装置(電池用電極の製造装置)
D2 上流側