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特許7301814エチレンオリゴマー化のための防汚剤共触媒を作るインライン方法
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  • 特許-エチレンオリゴマー化のための防汚剤共触媒を作るインライン方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】エチレンオリゴマー化のための防汚剤共触媒を作るインライン方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/30 20060101AFI20230626BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20230626BHJP
   B01J 31/14 20060101ALI20230626BHJP
   B01J 31/38 20060101ALI20230626BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
C07C2/30
C07C11/08
B01J31/14 Z
B01J31/38 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020516704
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 US2018051514
(87)【国際公開番号】W WO2019060299
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】62/561,736
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メリバリ、ファイサル エム
(72)【発明者】
【氏名】ヤミ、フサイン エム
(72)【発明者】
【氏名】シャイク、ソヘル ケイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チュンリン
(72)【発明者】
【氏名】シュ、ウェイ
【審査官】大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087303(WO,A2)
【文献】特開平10-045637(JP,A)
【文献】特開2014-062094(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118462(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/120310(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/205194(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-ブテンを選択的に製造する方法であって、
少なくとも1つの防汚剤と少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物とを組み合わせて防汚供給流を形成する第1工程であって、前記少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物はAlR’ 3 またはAlR’ 2 H(式中、R’は、1~20個の炭素原子を含む直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である)の構造を有し、前記少なくとも1つの防汚剤は、-O((CH 2 n O) m R4(式中、n=1~20の整数であり、mは1~100の整数であり、R4はヒドロカルビル基である)の構造を有する防汚基を含み、かつ前記防汚供給流中で前記少なくとも1つの防汚剤を前記少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物と接触させて、
(i)前記アルミニウムアルキル化合物がAlR’ 3 の場合、前記アルミニウムアルキル化合物の1つまたは複数のR’の前記防汚基による置換により;および/または
(ii)前記アルミニウムアルキル化合物がAlR’ 2 Hの場合、前記アルミニウムアルキル化合物の、H、またはHおよび1つもしくは2つのR’の前記防汚基による置換により、
下記構造:
【化1】
(ただし、R1、R2、およびR3のうちの1つ以上が前記防汚基であり、防汚基でないR1、R2、またはR3が、存在する場合、1~20個の炭素原子を含む直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である。)
またはその二量体の構造を含む、少なくとも1つの防汚剤共触媒を生成する第1工程と、
前記防汚剤共触媒を含む前記防汚供給流、少なくとも1つのチタネート化合物を含む触媒、およびエチレンを反応器に供給して1-ブテンを製造するためエチレンを二量化する第2工程であって、前記少なくとも1つのチタネート化合物を含む触媒は、前記防汚供給流から分離された流れとして前記反応器に供給される第2工程とを含み、
前記防汚供給流を形成するために提供される前記少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物に対する前記少なくとも1つの防汚剤のモル比を、インラインミキサーを介してリアルタイムで変化させ、前記防汚剤共触媒の生成後の前記防汚供給流における生成された前記防汚剤共触媒と残留アルミニウムアルキル化合物または残留防汚剤のいずれかとの比率を調整する、方法。
【請求項2】
前記インラインミキサーが、インラインミキサーに供給される防汚剤とアルミニウムアルキル化合物とのモル比を0:1~1:0にすることができるように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物に対する前記少なくとも1つの防汚剤のモル比が0.01以上かつ0.18以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
インラインミキサーに供給されるアルミニウムアルキル化合物に対する防汚剤の比率を減少させ、それにより反応器へのアルミニウムアルキル化合物の流れを維持しながらより少ない防汚剤共触媒を生成させることにより、反応器に導入される防汚剤共触媒のレベルが、反応器の不動態化を回避するために反応開始中に低減される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応器中の防汚剤共触媒の濃度が前記反応器の始動中に監視され、前記反応器中の前記防汚剤共触媒が所定の濃度に達するとインラインミキサーへの防汚剤の供給が終了する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
防汚供給流に対する防汚剤の流量を維持または減少させることを組み合わせて、防汚供給流に対するアルミニウムアルキル化合物の流量を増加させることにより、反応器に導入される防汚剤共触媒のレベルを維持または減少させながら、反応器に導入される前記アルミニウムアルキル化合物のレベルを増加させる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
nが1~5であり、mが1~20であり、R4が1~100個の炭素原子を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1、R2、またはR3に存在する原子が、アルミニウム原子と結合してキレート環を形成する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月22日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる米国仮出願第62/561,736号の利益を主張する。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、エチレンオリゴマー化に使用される方法および触媒系に関する。より詳細には、望ましくない重合を低減する、エチレンオリゴマー化に使用される方法および防汚触媒系に関する。
【背景技術】
【0003】
1-ブテンおよび1-ヘキセンは、特にポリエチレンの製造にとって重要な石油化学製品である。エチレンと他のα-オレフィン、特に1-ブテンおよび1-ヘキセンとの反応は、有用な市販のポリマーである様々なグレードの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を形成する。1-ブテン源は、水蒸気分解装置または流動接触分解装置などの炭化水素分解装置の流出物からのブテン留分である。しかしながら、そのような流出物から1-ブテンを単離するための方法は、その方法を望ましくないものにし得るいくつかの困難な工程段階を必要とする。
【0004】
いくつかの商業的方法は、エチレンを選択的に1-ブテンおよび1-ヘキセンのようなα-オレフィンにオリゴマー化する。商業的に成功した二量化方法は、A. Forestiere, et al., “Oligomerization of Monoolefins by Homogenous Catalysts”, Oil & Science and Technology-Review de l’Institute Francais du Petrole, pages 663-664 (Volume 64, Number 6, November 2009)に記載されたInstitute Francais du Petrole (IFP)によって開発されたAlphabutol(商標)方法である。この方法は、エチレンを選択的に1-ブテンにオリゴマー化するためのプロセス流体として1-ブテンを含有するバブルポイント反応器を使用する。
【0005】
オリゴマー化システムには既知の問題、すなわちポリマー形成がある。長い滞留時間および高い発熱反応からの不十分な熱除去は、ポリエチレン系残留物の形成をもたらす。慢性的な汚れの副作用は、付着したポリマー残留物を除去するためのますます頻繁なプロセス停止およびより高い保守費用である。ポリマー残留物は、層を重ねて積層し、最終的には流体の流れがある場所の開口部およびポートを塞ぐ可能性がある。加えて、反応器の壁に沿ったポリマーコーティングは絶縁体として作用し得るので、これは反応器系への熱伝達に悪影響を及ぼす可能性がある。ポリマー堆積物はまた、反応プロセスに悪影響を及ぼし得る破片を収集する可能性がある。
【0006】
特に厄介な問題は「ホットスポット」の形成である。ホットスポットは、外部冷却が効果なく、触媒活性が高い領域である。これはプロセス制御の喪失を表す。ホットスポットは、重合を含む副反応を助長する触媒活性材料を含むポリマーが収集された領域で引き起こされ得る。未チェックのままにすると、冷却能力の喪失、重合反応の暴走、またはその両方が原因で、ホットスポットによって最終的にプロセスが停止し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
所望のオリゴマー化速度および所望の反応生成物を形成するための選択性を維持しながら、反応器系の壁および管へのポリマー汚れを防止するための効果的な反応器系および方法が継続的に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、1-ブテンを選択的に製造する方法が提供される。この方法は、少なくとも1つの防汚剤と少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物とを組み合わせて防汚供給流を形成する第1工程を含む。この工程では、少なくとも1つの防汚剤を少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物と接触させて、R1基に結合し、R2基に結合し、そしてR3基に結合している中心アルミニウム分子を含む少なくとも1つの防汚化合物またはその誘導体を形成する。化学基R1、R2、またはR3に存在する原子は、アルミニウム原子に結合してキレート環を形成してもよい。この方法は、防汚供給流、少なくとも1つのチタネート化合物を含む触媒、およびエチレンを反応器に供給してエチレンを二量化する第2工程を含む。少なくとも1つのチタネート化合物を含む触媒は、防汚供給流から分離された流れとして供給される。少なくとも1つの防汚剤と少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物とのモル比を、インラインミキサーを介してリアルタイムで変化させ、防汚供給流中に形成された防汚剤共触媒と残留アルミニウムアルキル化合物または防汚剤との比率を調整し得る。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に記載された実施形態のさらなる特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態に記載されており、かつ一部はその説明から当業者には容易に明らかとなるか、または後に続く発明を実施するための形態および特許請求の範囲を含む、記載された実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の1つ以上の実施形態による防汚剤共触媒(AFA共触媒)注入系を用いた一般化された改良エチレンオリゴマー化プロセスの概略図である。
図2】本開示の1つ以上の実施形態による、反応器への触媒供給流および反応器への防汚供給流の概略図である。
【0011】
[定義]
本開示では、用語「防汚剤」は、ポリマーの汚れを防止し、ポリマーの除去性を改善するために、プロセスに、より具体的には図1のAFA共触媒調製セクションに添加される薬剤を指すために使用される。
【0012】
本開示では、用語「AFA共触媒」と「防汚剤共触媒」は、防汚剤と共触媒との反応により、図1のAFA共触媒調製セクションにおいて新たに形成されるアルミニウム化合物を指すために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の1つ以上の実施形態は、望ましくない重合によって引き起こされる反応器の汚れを低減しながら、1-ブテンを形成するエチレンの二量化などのエチレンオリゴマー化の促進に利用できる反応器および触媒系に関する。これらの触媒系は、本開示において「防汚エチレンオリゴマー化触媒系」または「防汚触媒系」と呼ばれることがある。記載された防汚触媒系は、少なくとも1つのチタン系触媒、少なくとも1つの共触媒、および少なくとも1つの防汚剤またはその誘導体を含み得る。記載された防汚触媒系の実施形態は、少なくとも1つのチタネート化合物、共触媒として少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物、および少なくとも1つの防汚剤またはその誘導体を含み得る。防汚触媒系は、1つ以上のエーテル化合物をさらに含み得る。防汚触媒系は、エチレンを選択的にオリゴマー化して、本開示では時に「汚れ」と呼ばれる望ましくない重合を低減しながら1-ブテンおよび他の高級α-オレフィンを製造するために使用され得る。例えば、反応器の汚れは、流体の流れを減少させ、反応器系内の流体が所望の速度で流れるのを部分的または完全に阻止し得る固体ポリエチレン系の残留物の形成によって起こり得る。記載された「防汚エチレンオリゴマー化触媒系」または「防汚触媒系」は、反応中の汚れを完全に排除しないことがあることを理解すべきである。しかしながら、これらの触媒系は、本開示に記載されたような防汚剤を含まない触媒系と比較して、汚れを減少させ、形成されたポリマーの除去をより容易にする。また、本開示の触媒系は、1-ブテンを形成するためのエチレン二量化などのエチレンオリゴマー化反応において有用であり得るが、それらは他の化学反応の触媒作用にも有用であり得ることを理解すべきであり、また本開示に記載されたような防汚触媒系は、それらの使用が1-ブテンへのエチレンの二量化に限定されると考えるべきではない。
【0014】
本開示の実施形態によれば、1-ブテンはエチレン二量化によって製造することができる。1-ブテンの製造方法によれば、エチレンを防汚触媒系と接触させてエチレンを二量化して1-ブテンを形成することができる。1つ以上の実施形態において、エチレンおよび防汚触媒系は反応器に供給され、そして混合される。反応は、バッチ反応として、または連続攪拌槽反応器プロセスなどの連続プロセス反応として実施することができる。実施形態によれば、反応器内の圧力は5バール~100バールであり、反応器温度は摂氏30度(℃)~180℃である。しかしながら、特に反応器系の特定の設計ならびに反応体および触媒の濃度を考慮すると、これらの範囲外のプロセス条件が考えられる。
【0015】
作動中、AFA共触媒注入系5は、エチレンオリゴマー化中に反応器に触媒およびAFA共触媒を供給する。AFA共触媒は、共触媒と防汚剤から形成され、触媒は一般に1つ以上のチタネート化合物を含む。AFA共触媒と触媒との組み合わせは、防汚触媒系を形成する。図1を参照すると、AFA共触媒注入系5を用いた一般的な改良エチレンオリゴマー化プロセスの概略図が示されている。エチレンは、エチレン供給20として反応器10に供給され、そこで1-ブテンおよび他の高級α-オレフィンへのエチレンの触媒オリゴマー化が起こる。また、反応器10は、触媒を含む触媒流30とAFA共触媒を含む防汚供給流40のための別々の投入口を有する。防汚供給流40は、少なくとも1つの防汚剤と、少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物を含む少なくとも1つの共触媒との混合物を含む。混合物は、防汚剤補給流60に供給される防汚剤を、適切な比率で、共触媒補給流70に供給される少なくとも1つの共触媒と組み合わせることによりAFA共触媒調製セクション50において製造される。別々の投入口は、触媒とAFA共触媒との間の相互作用が反応器10内で起こることを可能にする。さらに、触媒流30は、触媒補給流34から供給される触媒調製セクション32から反応器10に供給される。反応器10に続いて、触媒除去セクション90において反応器10を出る流れから使用済み触媒80が分離される。使用済み触媒除去後の残りの反応器出口流は、エチレン再循環カラム110に供給されるプロセス流100として作用する。エチレン再循環カラム110は、再循環のために、プロセス流100から残留エチレン130を分離し、エチレン再循環流132としてオリゴマー化のために反応器10に戻すか、またはAFA共触媒注入系5からエチレン系パージ流134としてパージして燃料系として利用する。エチレン再循環カラム110を出る非エチレン流は、生成物プロセス流140として成分をさらに分離するために蒸留セクション150にさらに供給される。例えば、蒸留セクション150は、生成物プロセス流140を、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンおよび重質留分を含む複数の生成物流160に分離することができる。この分離は、当業者に現在知られているまたは将来的に知られる任意の標準的な技術に従って達成することができる。生成物プロセス流140の様々な構成要素への分離は、生成物プロセス流140の補給およびさらなる使用または収集に望ましい特定の化学種または生成物プロセス流140内の化学種に基づいて調整され得ることが理解されるだろう。蒸留セクション150はまた、溶媒再循環流162として反応器10に再循環して戻すことができる生成物プロセス流140から溶媒を分離することができる。溶媒は、溶媒補給流164を用いて直接反応器10に導入することもできる。
【0016】
図2を参照すると、反応器10への触媒供給流30の実施形態の概略図が提供されている。触媒は、ポンプ36または他の移動手段によって触媒源から反応器10に供給される。少なくとも一実施形態では、オンデマンド方式で反応器10に供給するための触媒の貯蔵所を提供する触媒貯蔵ドラム38が設けられる。触媒貯蔵ドラム38は、反応器10に供給するための触媒の貯蔵所を維持し、そして触媒補給供給34から再供給される。さらに、実施形態において、触媒源または触媒貯蔵ドラム38を反応器10に接続する導管内にインラインでフィルター42が設けられる。フィルター42は、触媒流から粒子状物質または他の異物成分を除去する。
【0017】
本開示を通して、考察した触媒は少なくとも1つのチタネート化合物を含む。しかしながら、公知の他の触媒をエチレンオリゴマー化反応およびAFA共触媒注入系5に同様に利用することができることは当業者には明らかであろう。例えば、ニッケル、クロム、ジルコニウム、または他の金属錯体のような遷移金属錯体をベースとする触媒系を、検討したチタネート化合物に加えてまたはその代わりとして使用することができる。
【0018】
再び図2を参照すると、反応器10への防汚供給流40の概略図が提供されている。少なくとも1つのAFA共触媒は、共触媒および防汚剤の供給を備えたインラインミキサー54を介して、少なくとも1つの共触媒および少なくとも1つの防汚剤の組み合わせから配合される。1つ以上の実施形態において、共触媒および防汚剤はそれぞれ、インラインミキサーの混合生成物(防汚供給流40)を反応器10へ運ぶための移動力を提供する専用ポンプ36または他の移動手段によってインラインミキサー54に供給される。共触媒および防汚剤のそれぞれに対する別個の専用ポンプ36または他の移動手段により、経時的なプロセス条件に基づいて独立して変更または変化させることができる定量的尺度(重量、体積、濃度)でそれぞれを供給することができる。
【0019】
様々な実施形態において、インラインミキサー54は、内部混合要素を備えたインペラミキサーまたは静的ミキサーであってもよい。インラインミキサー54は、らせん状、リボン状、またはプレーター型の形状を有する1つ以上の内部混合要素を含んでもよい。内部混合要素は、静的ミキサーを通して2つの流れの通過中に不動の混合要素によって連続的に混合される2つの流れの流体を静的ミキサーに送達する方法を提供する。したがって、共触媒の流れおよび防汚剤の流れがインラインミキサー54に供給され、AFA共触媒を含むプレバッチ混合物を貯蔵する必要がなく、AFA共触媒を含む防汚供給流40として排出されることが理解されるであろう。インラインミキサー54はまた、形成の所されるAFA共触媒に応じて、共触媒と組み合わせて1つ以上の防汚剤を含む3つ以上の流れを組み合わせる能力を提供する。
【0020】
1つ以上の実施形態において、少なくとも1つの防汚剤は、過剰に供給された場合、インラインミキサー54における現在のプロセス条件に適切な比率で少なくとも1つの共触媒と接触され、少なくとも1つのAFA共触媒および残留共触媒または防汚剤との混合物を含む防汚供給流40を形成する。AFA共触媒を形成するための防汚剤と共触媒との反応は、防汚剤の特定の構造に基づいて変わる。例えば、防汚剤がアルコールである場合、反応は共触媒のアルキル基のプロトン分解を含む。防汚剤および共触媒からAFA共触媒を形成する反応により、ガスが形成され、インラインミキサー54の下流でオフガス流46として、または反応器10から排出され得る。オフガス流46として放出するために生成される特定のガスは、共触媒の構造に応じて変わる。例えば、トリエチルアルミニウムはAFA共触媒形成中にエタンガスを発生する。防汚剤と共触媒との混合物から得られる防汚供給流40は、触媒とは別の注入として反応器10に供給される。理論に拘束されることを望むものではないが、AFA共触媒および触媒を組み合わせた流れとして供給することは、汚れの望ましくない増加を引き起こし得るので避けるべきであると考えられる。
【0021】
様々な実施形態において、少なくとも1つの防汚剤および共触媒は、インラインミキサー54で、防汚剤と共触媒との比率が0:1から1:0の範囲で混合され、これは防汚剤100%から共触媒100%の範囲としても示される。
【0022】
反応器への導入時に少なくとも1つの防汚剤と少なくとも1つの共触媒をインラインで組み合わせると、AFA共触媒を形成するために反応する防汚剤と共触媒の量が柔軟に供給される。AFA共触媒の所望の定量的尺度は、インラインミキサー54に導入される防汚剤または共触媒の量を制限することにより形成され得る。他の種と反応するものを超過してインラインミキサー54に導入された過剰な防汚剤または共触媒は、形成されたAFA共触媒と共に反応器10に導入される。例えば、過剰な共触媒がインラインミキサー54に導入される場合、反応器10に供給される生成物は、残留共触媒と共に形成されたAFA共触媒を含み得る。インラインミキサー54への防汚剤の供給を遮断または調整することができ、共触媒または所望のレベルの形成されたAFA共触媒のみを反応器10に注入することができる。
【0023】
作動中、1つ以上の実施形態において、反応器に導入されるAFA共触媒共触媒のレベルは、特定の処理工程中に最小化され得る。例えば、AFA共触媒はエチレンオリゴマー化触媒(触媒)を活性化するのに有用であるが、新しい反応の開始中に反応器を不要に不動態化することもある。AFA共触媒の濃度レベルは、通常の作動に比べて防汚剤の割合を減らして導入することで反応器の不動態化を避けて、反応開始中に最小限に抑えることができる。これにより、共触媒の流れを維持しながら、AFA共触媒の生成量を減らすことができる。反応開始中に所望のAFA共触媒濃度に達すると、インラインミキサー54への防汚剤の供給を停止して、保証されるまでさらなるAFA共触媒の導入を妨げることができる。同様に、熱交換器の不動態化を避けるために、熱交換器の統合中にAFA共触媒の濃度レベルを下げることもできる。
【0024】
作動中、1つ以上の実施形態において、反応器に導入されるAFA共触媒のレベルは、特定のプロセス工程中に増加され得る。例えば、反応が汚染、熱交換器の統合、またはそれらの組み合わせにより失われる反応器の条件では、反応器内の共触媒の濃度を通常増加させなければならない。共触媒と防汚剤の別々の流れのインラインミキサー54は、後に反応器に供給されるAFA共触媒の全体的な形成を維持または低減しながら、反応器に供給される共触媒の増加を可能にする。インラインミキサー54に供給される防汚剤の維持または減少は、インラインミキサー54への共触媒の供給の増加にかかわらず、AFA共触媒の総生産に相応の効果をもたらす。インラインミキサー54によって供給されるこの調整可能なAFA共触媒の生産は、エチレンの二量化反応を再開するために必要な共触媒供給の増加の結果として、反応器内のAFA共触媒の望ましくないレベルへの蓄積を防ぐ。理論に拘束されることを望むものではないが、AFA共触媒は1~10パーツパーミリオン(ppm)の範囲で最大の効果があると考えられる。
【0025】
AFA共触媒のレベルが上昇すると、反応系5がさらに複雑化する可能性がある。具体的には、AFA共触媒の濃度が高くなると、反応器や熱交換器に付着した汚染ポリマーの除去が難しくなり、形成されたポリマーの性質が変化する場合がある。
【0026】
市販の防汚剤は水を含有し得るので、防汚剤は乾燥床52を通過させて、防汚剤中の含水量を除去または低減させる。乾燥した防汚剤は、その後、防汚剤供給タンク44に供給され、インラインミキサー54における共触媒と容器44内での混合が要求されるまで、乾燥した防汚剤を貯蔵する。1つ以上の実施形態において、過剰量の水が防汚触媒系5を失活させる可能性があるため、防汚剤供給タンク44に供給される防汚剤中の含水量は、約0.3重量%(wt%)未満に維持される。さらなる実施形態において、防汚剤中の含水量は約0.1重量%未満に維持される。乾燥床52は、防汚剤補給流60から水を除去するための乾燥剤を含む。様々な実施形態において、乾燥剤は、モレキュラーシーブまたはアルミナもしくはシリカに担持されたナトリウム(Na)である。防汚剤を乾燥させる他の手段が知られておりそしてそれらが等しく想定されていることは当業者によって理解されるであろう。
【0027】
1つ以上の実施形態において、防汚剤供給タンク44は圧力逃し弁48を含む。圧力逃し弁48は、過度の加圧が発生した場合に防汚剤供給タンク44を通気させるように作動可能である。過剰なオフガス形成または不十分なオフガス収集または典型的な手段による排出の場合に、防汚剤供給タンク44の破裂を回避するために、圧力逃し弁48は防汚剤供給タンク44の迅速な通気を可能にする。
【0028】
本開示において前述したように、記載した防汚触媒系の実施形態は、1つ以上のチタネート化合物を含み得る。チタネート化合物は触媒として作用する。いくつかのチタネート化合物が防汚触媒系に含まれていてもよいが、いくつかの実施形態において、単一のチタネート化合物が防汚触媒系に含まれていてもよい。1つ以上の実施形態において、チタネート化合物はアルキルオルトチタネートであってもよい。アルキルオルトチタネートは、構造Ti(OR)4を有し、式中、Rは、それぞれの場合独立して、直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基である。1つ以上の実施形態において、各アルキル基は、2~8個の炭素原子を含んでもよく、各R基は同一でも異なっていてもよい。適切なアルキルチタネートとしては、テトラエチルオルトチタネート、テトライソプロピルオルトチタネート、テトラ-n-ブチルオルトチタネート(時にはチタンブトキシドとも呼ばれる)、およびテトラ-2-エチルヘキシルオルトチタネートが挙げられる。1つ以上の実施形態において、防汚触媒系のチタネート化合物はテトラ-n-ブチルオルトチタネートからなる。
【0029】
また本開示において前述したように、記載した防汚触媒系の実施形態は、1つ以上のアルミニウムアルキル化合物を含み得る。アルミニウムアルキル化合物は助触媒として作用しそして防汚剤と組み合わされてAFA共触媒を形成する。アルミニウムアルキル化合物は、AlR’3またはAlR’2H(式中、R’は、1~20個の炭素原子を含む直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である)の構造、またはアルミノキサン構造、すなわちトリアルキルアルミニウムの部分加水分解物を有し得る。各R’は一意的であってもよく、式AlR’1R’2R’3を提供することが理解されるであろう。例えば、限定するものではないが、適切なアルミニウムアルキル化合物はトリアルキルアルミニウムを含み得る。トリアルキルアルミニウムは、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、またはメチルアルミノキサン(MAO)であってもよい。1つ以上の実施形態において、防汚触媒系のアルミニウムアルキル化合物はトリエチルアルミニウムから構成される。
【0030】
この開示を通して、議論される共触媒はアルミニウムアルキル化合物、そしてより具体的にはトリエチルアルミニウム(TEAL)である。しかしながら、他の共触媒がAFA共触媒の配合に等しく利用されてもよいことは当業者によって理解されるであろう。例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、またはそれらの組み合わせを、議論されるアルミニウムアルキル化合物に加えてまたはその代わりとして使用することができる。
【0031】
1つ以上の実施形態において、アルミニウムアルキル化合物と組み合わされてAFA共触媒を形成する防汚剤は、ホスホニウム([R1R2R3R4P]+)、スルホニウム([ROSO2-)、スルホネート([R1R2R3S]+)、および、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤を含む防汚性界面活性剤の1つ以上から選択できる。ノニオン性界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル(CH3(CH23-27(OC241-25OH)、ポリオキシエチレンジアルキルエーテル(CH3(CH23-27(OC241-25O(CH23-27CH3)、ポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル(CH3(CH23-29(OC361-25OH)、ポリオキシプロピレンジアルキルエーテル(CH3(CH23-27(OC361-25O(CH23-27CH3)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体(HO(C24O)1-25(C36O)1-25(C24O)1-25H)、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体(HO(C36O)1-25(C24O)1-25(C36O)1-25H)、オリゴグルコシドモノアルキルエーテル(CH3(CH23-27(OC61051-3OH)、ポリオキシエチレンモノ(アルキルフェニル)エーテル(CH3(CH2327(C64)(OC241-25OH)、グリセロールアルキルエステル、N、N、N’、N’-テトラ(ポリオキシアルキレン)-1,2-エチレンジアミン((H(O(CH22-31-252NCH2CH2N(((CH22-3O)1-25H)2およびポリソルベートなどのポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルが含まれる。アニオン性界面活性剤の例には、ステアリン酸ナトリウムおよび4-(5-ドデシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムが含まれる。カチオン性界面活性剤の例には、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリドおよびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドが含まれる。双性イオン性界面活性剤の例には、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、コカミドプロピルベタイン、およびホスファチジルエタノールアミンが含まれる。
【0032】
防汚触媒系は、1つ以上のAFA共触媒またはその誘導体を含み得る。本明細書で使用されるとき、誘導体は、本開示に記載されたAFA共触媒のダイマー、トリマー、オリゴマー、ポリマー、異性体、加水分解物などのAFA共触媒の誘導体構造を指す。アルミニウムアルキル化合物と組み合わせると、異なる防汚剤は異なるAFA共触媒を形成することが理解されるであろう。1つ以上の実施形態において、AFA共触媒は、第1の化学基R1、第2の化学基R2、および第3の化学基R3の3つすべてに結合した中心アルミニウム分子を含み得る。化学構造#1は、防汚剤から誘導される防汚基を表すR1、R2、およびR3を有するAFA共触媒の一般化学構造を示す。
【化1】
【0033】
1つ以上の実施形態において、R1、R2、およびR3のうちの1つ以上は、構造-O((CH2nO)mR4を含む防汚基であり、式中、nは1~20の整数である。様々な実施形態において、nは1~10、1~5、または2~3の整数であり、mは1~100の整数であり、R4はヒドロカルビル基である。様々な実施形態において、nは1~10、1~5、または2~3の整数であり、mは1~50、1~20、または1~10の整数である。防汚基-O((CH2nO)mR4の構造は、化学構造#2に示されている。中心アルミニウム原子は、R4のヒドロカルビル基とは反対側の防汚基の末端酸素に結合している。本開示を通して使用されるように、ヒドロカルビル基は、水素および炭素原子からなる化学基を指す。例えば、ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、または環状であり得、そして1つ以上のアルキル部分、1つ以上のアルケニル部分、1つ以上のアルキニル部分、アリール部分、またはそれらの組み合わせを含み得る。様々な実施形態において、R4は、1~100個の炭素原子、2~50個の炭素原子、または8~28個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり得る。
【化2】
【0034】
本開示において前述したように、R1、R2、およびR3のうちの1つ、2つ、または3つすべてが、化学構造#2の構造を含む防汚基を含み得る。本開示に記載の実施形態において、防汚基を含まない化学基R1、R2、またはR3が、もしあればそれらはヒドロカルビル基である。例えば、R1は化学構造#2に示される構造を有する防汚基であり得、そしてR2およびR3はヒドロカルビル基であり得る。別の実施形態において、R1およびR2は、化学構造#2に示される構造を有する防汚基であり得、そしてR3はヒドロカルビル基であり得る。別の実施形態において、R1、R2、およびR3は、化学構造#2に示される構造を有する防汚基であり得る。R1、R2、およびR3のうちの少なくとも2つがヒドロカルビル基である場合、それらは互いに同一であってもよく、または異なるヒドロカルビル基であってもよい。また、R1、R2、R3のうちの2つ以上が防汚基である場合、防汚基は同一でも化学的に異なっていてもよい。しかしながら、それらはそれぞれ化学構造#2に示される一般構造を有する。様々な実施形態において、ヒドロカルビル基であるR1、R2およびR3はそれぞれ、1~100個の炭素原子、2~75個の炭素原子、または2~50個の炭素原子を有していてもよい。例えば、R1、R2、またはR3がヒドロカルビル基である場合、それらはメチル、エチル、プロピル、またはブチル基などの直鎖状アルキル基、あるいはイソプロピルまたはイソブチル基などの分岐状アルキル基であり得る。
【0035】
例として、R1が防汚基であり、そしてR2およびR3がヒドロカルビル基である場合、AFA共触媒の一般化された構造は化学構造#3によって表すことができる。
【化3】
【0036】
1つ以上の実施形態において、AFA共触媒は、エチル基であるR1基、エチル基であるR2基、および構造-O((CH2nO)mR4(式中、n=2、m=4、そしてR4はドデシル基である)を有する防汚基であるR3を含み得る。そのようなAFA共触媒は、(CH3CH22AlO(CH2CH2O)4(CH211CH3と記載でき、化学構造#4(式中、「Et」はエチル基を表す)に示される化学構造を有する。
【化4】
【0037】
1つ以上の実施形態において、AFA共触媒は、本明細書ではAFA共触媒の誘導体の一例として言及される二量化形態として存在してもよい。調製されたAFA共触媒は、二量化形態および非二量化形態の両方、すなわち非結合形態で存在してもよい。例えば、二量化状態では、AFA共触媒は化学構造#5に示されるような構造を含み得る。化学構造#5は、化学構造#3に示されるAFA共触媒構造の二量体化された実施形態を示す。二量体化された実施形態において、AFA共触媒の中心アルミニウム原子と隣接するAFA共触媒の酸素原子との間に結合が形成されてもよい。化学構造#5では、中心アルミニウム原子は、その中心アルミニウム原子に最も近い隣接するAFA共触媒の酸素原子に結合しているが、他の実施形態ではそうでなくてもよく、中心アルミニウム原子は、その中心アルミニウム原子に最も近いものではない隣接するAFA共触媒の酸素原子と結合してもよい。
【化5】
【0038】
1つ以上の実施形態において、AFA共触媒は異なる異性体状態で存在してもよく、そのような一例は化学構造#6に示される。異性体は、AFA共触媒の誘導体構造の一例である。例えば、そして化学構造#6に示されるように、AFA共触媒の中心アルミニウム原子は、単一の防汚基の2つの酸素原子に結合してキレート環を形成し得る。化学構造#6は、中心アルミニウム原子に最も近い2つの酸素原子が中心アルミニウム原子と結合している異性体を示すが、他の実施形態では、中心アルミニウム原子がAFA共触媒分子中の中心アルミニウム原子に他の酸素原子ほど接近していない酸素原子との結合を形成するときに形成される異性体などの他の異性体が形成され得ると理解されるべきである。例えば、化学構造#6は、2個の酸素原子とn個の炭素原子を有する環構造を示すが、3個以上の酸素原子を有する環のような他の異性体ではより大きい環構造が形成され得る。化学構造#6に示されるもののような記載されたAFA共触媒の異性体は、AFA共触媒と見なされ、化学構造#1に示される基本構造に適合すると理解されるべきである。例えば、両方の酸素原子が防汚基の一部である、中心アルミニウム原子に結合した2個の酸素原子の存在は、化学構造#1に示される基本構造に一致すると考えられる。
【化6】
【0039】
化学構造#3~#6のそれぞれは、化学構造#2の防汚基を有するAFA共触媒を示す。様々な実施形態において、他のまたは追加の防汚基がR1、R2、またはR3において化学構造#1の一般化されたAFA共触媒の中心アルミニウム原子に結合されてもよいことが理解されるであろう。防汚基のための具体的で非限定的なさらなる例には、-NHR、-OC(O)R、および-OS(O)ORなどの構造が含まれる。
【0040】
さらに、AFA共触媒は、AlR1R2R3(化学構造#1)とイオン性界面活性剤との反応によって形成されるアルミニウム錯体であり得る。得られたAFA共触媒は、化学構造#7に示す通りの構造であり、式中、R4およびX+はそれぞれイオン性界面活性剤のアニオン部分およびカチオン部分を表す。
【化7】
【0041】
1つ以上の実施形態において、防汚触媒系は、1つ以上のホスホニウム防汚剤を含む。ホスホニウム防汚剤をアルミニウムアルキル化合物と組み合わせて、化学構造#7に示すAFA共触媒を形成することができる。本開示で使用される場合、ホスホニウム防汚剤は、化学構造#8に示されるホスホニウム構造を含む任意の化合物を含み、式中、R1、R2、R3およびR4は他の部分を含み得る化学基を表し、様々なR基は互いに同一でも異なっていてもよい。一般に、ホスホニウム防汚剤は、ホスホニウムカチオンがアニオン化合物とイオン結合を形成する、ホスホニウム塩として防汚触媒系に導入することができる。本開示で使用される場合、ホスホニウム防汚剤は、ホスホニウム塩またはホスホニウム部分を含む双性イオン化合物を含む。
【化8】
【0042】
適切なホスホニウム防汚剤としては、限定されないが、テトラアルキルホスホニウム塩が挙げられる。例えば、防汚剤には、テトラアルキルホスホニウムハライド(例えば、テトラブチルホスホニウムハライド)、ホスホニウムマロネート(例えば、テトラブチルホスホニウムマロネート)、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムハライド(例えば、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムブロミド)、テトラブチルホスホニウムハライド(例えば、テトラブチルホスホニウムヨーダイド)、テトラブチルホスホニウムテトラハロボレート(例えば、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート)、テトラブチルホスホニウムハライド(例えば、テトラブチルホスホニウムクロリド)、テトラブチルホスホニウムヘキサハロホスフェート(例えば、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、またはテトラブチルホスホニウムテトラハロボレート(例えば、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート)を含み得る。本開示を通して使用される場合、ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物を含み得る(そして「ハロ」は、元素のフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を含み得る)。1つ以上の実施形態において、R基、すなわちR1、R2、R3、およびR4は、直鎖状、分岐状、または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールであってもよく、R基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0043】
1つ以上の実施形態において、防汚触媒系は、1つ以上のスルホネート防汚剤を含む。スルホネート防汚剤をアルミニウムアルキル化合物と組み合わせて、化学構造#7に示すAFA共触媒を形成することができる。本開示で使用される場合、スルホネート防汚剤は、Rが他の部分を含み得る化学基を表す、化学構造#9に示される構造を含む任意の化合物を含む。一般に、スルホネート防汚剤は、スルホネート塩として防汚触媒系に導入することができ、そこでスルホネートアニオンはカチオン化合物とイオン結合を形成する。本開示で使用される場合、スルホネート防汚剤は、スルホン酸またはスルホネート部分を含む双性イオン化合物を含む。
【化9】
【0044】
適切なスルホネート防汚剤としては、限定されないが、スルホネート塩が挙げられる。例えば、スルホネート防汚剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホンコハク酸ジオクチルナトリウム、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラブチルホスホニウムp-トルエンスルホネート、および(ヘキサデシル)トリメチルアンモニウムp-トルエンスルホネートを含み得るが、これらに限定されない。他の実施形態では、適切な防汚剤は、非塩スルホネート、すなわち分離したカチオンとアニオンに解離しない双性イオンスルホネートを含み得る。例えば、防汚剤として適切な非塩スルホネートとしては、限定されないが、3-(ジメチル(オクタデシル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート、3,3’-(1,4-ジドデシルピペラジン-1,4-ジイウム-1-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1-スルホネート)、および3-(4-(tert-ブチル)ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートが挙げられる。
【0045】
1つ以上の実施形態において、防汚触媒系は、1つ以上のスルホニウム防汚剤を含む。スルホニウム防汚剤をアルミニウムアルキル化合物と組み合わせて、化学構造#7に示すAFA共触媒を形成することができる。スルホニウム防汚剤は一般に化学構造#10で表され、式中、R1、R2、およびR3は他の部分を含み得る化学基を表し、ならびに様々なR基、すなわちR1、R2、およびR3は互いに同一でも異なっていてもよい。一般に、スルホニウム防汚剤はスルホニウム塩として防汚触媒系に導入することができ、そこでスルホニウムカチオンはアニオン化合物とイオン結合を形成する。本開示で使用される場合、スルホニウム防汚剤は、スルホニウム塩またはスルホニウム部分を含む双性イオン化合物を含む。
【化10】
【0046】
1つ以上の実施形態において、防汚触媒系は、2つ以上の分子種のAFA共触媒を含むことができる。例えば、いくつかのAFA共触媒は、1つ、2つ、または3つの防汚基を含み得るが、他のものは、異なる数の防汚基を含む。これらのAFA共触媒種の混合物は、それぞれ中心アルミニウム原子に結合しているヒドロカルビル基と防汚基とのそのバルクモル比によって特徴付けることができるバルクAFA共触媒を形成することができる。例えば、AFA共触媒の半分が1つの防汚基と2つのヒドロカルビル基を有し、AFA共触媒の他の半分が2つの防汚基と1つのヒドロカルビル基を有する場合、ヒドロカルビル基と防汚基のバルク量が同量であるため、ヒドロカルビル基と防汚基とのバルクモル比は、1:1となる。様々な実施形態において、ヒドロカルビル基と防汚基とのバルクモル比は、1:3~2:1、1:2~2:1、または1:1~2:1であり得る。
【0047】
1つ以上の実施形態において、防汚触媒系は、ポリマーの形成を低減するために1つ以上のエーテル化合物を含んでもよい。1つ以上のエーテル化合物は、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロピラン(THP)、またはこれらの組み合わせなどである環状エーテルを含み得るが、これらに限定されない。
【0048】
防汚触媒系は、少なくとも1つ以上のチタネート化合物、1つ以上のアルミニウムアルキル化合物、および1つ以上のAFA共触媒を含み得る。様々な実施形態において、総チタネート化合物と総アルミニウムアルキル化合物とのモル比は、1:10~1:1.5、1:3~1:1.5、または1:3~1:2であり得る。
【0049】
様々な実施形態において、アルミニウムアルキル化合物と接触させる防汚剤と、アルミニウムアルキル化合物と接触させ、かつ追加的に反応器に供給されるアルミニウムアルキル化合物の合計とのモル比は、0.001:1~0.5:1、0.01~0.18、または0.01~0.13であってもよい。
【0050】
様々な実施形態において、総チタネート化合物と総エーテル化合物とのモル比は、1:20~1:0、1:10~1:1、または1:8~1:3であり得る。
【0051】
前述の防汚触媒系の成分のモル比は、チタネート化合物またはアルミニウムアルキル化合物の総量に対する防汚触媒系の各成分の総量を表すことを理解すべきであり、ここで、「総」量とは、特定の成分タイプと見なすことができる防汚触媒系のすべての種、すなわち、チタネート化合物、アルミニウムアルキル化合物、エーテル化合物、または防汚剤のモル量を指す。成分の総量は、それぞれチタネート化合物、アルミニウムアルキル化合物、エーテル化合物、または防汚剤である2つ以上の化学種を含んでいてもよい。
【0052】
1つ以上の実施形態において、理論に拘束されることなく、AFA共触媒の酸素または窒素のようなヘテロ原子は、触媒系において触媒として利用されるチタネート化合物と弱い配位を形成し得ると考えられる。1つ以上の実施形態において、AFA共触媒のアルキル基または他の比較的長鎖の基は、チタネート化合物の触媒中心へのエチレンのアクセスを防ぐために、ある程度の機能を果たし得ると考えられる。チタンの触媒部位へのエチレンのアクセスが制限されると、エチレンの重合が減少し、したがって反応器の汚れが減少する。
【0053】
1つ以上の実施形態において、触媒系へのAFA共触媒の導入は、1-ブテン形成の触媒活性を大きく低下させることなく、ポリマー形成を抑制し得る。一実施形態において、AFA共触媒を含めることによって、ポリマー形成(汚れ)は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、さらには95%まで低減させることができる。一実施形態において、AFA共触媒を含めることによって、1-ブテンの生成を増加させ、またはそのままにし、または50%、40%、30%、20%、10%、さらには5%以下まで減少させることができる。いくつかの実施形態において、AFA共触媒はポリマー形成を、例えば少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、さらには95%まで低減させることができ、かつ1-ブテンの生成速度を増加させ、または影響せず、または50%、40%、30%、20%、10%、さらには5%以下まで減少させることができる。百分率ベースでのポリマー形成速度および触媒活性の低下は、AFA共触媒を含まない触媒系と比較して記載されている1つ以上のAFA共触媒を含む触媒系に基づく。
【0054】
1-ブテンを選択的に製造する方法の様々な態様が記載されており、そのような態様は様々な他の態様と関連して利用され得ることが理解されるはずである。
【0055】
第1態様では、本開示は、1-ブテンを選択的に製造する方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの防汚剤と少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物とを組み合わせて防汚供給流を形成する第1工程であって、少なくとも1つの防汚剤を少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物と接触させて、下記構造またはその二量体の構造を含む、少なくとも1つの防汚剤共触媒を形成する第1工程と、
【化11】
少なくとも1つのチタネート化合物を含む触媒、およびエチレンを反応器に供給してエチレンを二量化する第2工程であって、少なくとも1つのチタネート化合物を含む触媒は、防汚供給流から分離された流れとして供給される第2工程とを含む。防汚供給流を形成するために供給される少なくとも1つの防汚剤と少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物とのモル比を、インラインミキサーを介してリアルタイムで変化させ、防汚供給流中に形成された防汚剤共触媒と残留アルミニウムアルキル化合物または防汚剤との比率を調整し得る。
【0056】
第2態様では、本開示は、第1工程で提供される防汚供給流を形成するための少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物と第2工程で提供される少なくとも1つのチタネート化合物とのモル比が1.5以上かつ3.0以下である、第1態様の方法を提供する。
【0057】
第3態様では、本開示は、化学基R1、R2、およびR3のうちの1つ以上が構造-O((CH2nO)mR4を含む防汚基であり、式中、nが1~20の整数であり、mが1~100の整数であり、R4がヒドロカルビル基である、第1または第2態様の方法を提供する。防汚基を含まない化学基R1、R2、またはR3が、存在する場合、ヒドロカルビル基である。
【0058】
第4態様では、本開示は、インラインミキサーが、インラインミキサーに供給される防汚剤とアルミニウムアルキル化合物との比率を0:1~1:0にすることができるように構成される、第1~第3態様のいずれかの方法を提供する。
【0059】
第5態様では、本開示は、少なくとも1つのアルミニウムアルキル化合物に対する少なくとも1つの防汚剤のモル比が0.01以上かつ0.18以下である、第1~第4態様のいずれかの方法を提供する。
【0060】
第6態様では、本開示は、インラインミキサーに供給されるアルミニウムアルキル化合物に対する防汚剤の比率を減少させ、それにより反応器へのアルミニウムアルキル化合物の流れを維持しながらより少ない防汚剤共触媒を生成させることにより、反応器に導入される防汚剤共触媒のレベルが、反応器の不動態化を回避するために反応開始中に低減される、第1~第5態様のいずれかの方法を提供する。
【0061】
第7態様では、本開示は、防汚剤共触媒の濃度が反応器の始動中に監視され、防汚剤共触媒が所定の濃度に達するとインラインミキサーへの防汚剤の供給が終了する、第6態様の方法を提供する。
【0062】
第8態様では、本開示は、防汚供給流に対する防汚剤の流量を維持または減少させることを組み合わせて、防汚供給流に対するアルミニウムアルキル化合物の流量を増加させることにより、反応器に導入される防汚剤共触媒のレベルを維持または減少させながら、反応損失の場合にエチレンの二量化反応を回復するために、反応器に導入されるアルミニウムアルキル化合物のレベルを増加させる、第1~第7態様のいずれかの方法を提供する。
【0063】
第9態様では、本開示は、インラインミキサーに供給されるアルミニウムアルキル化合物と防汚剤との比率および防汚供給流の総流量を調整することにより、反応器内の防汚剤共触媒の濃度が10ppm以下に維持される、第1~第5態様のいずれかの方法を提供する。
【0064】
第10態様では、本開示は、nが1~5である、第3~第9態様のいずれかの方法を提供する。
【0065】
第11態様では、本開示は、mが1~20である、第3~第10態様のいずれかの方法を提供する。
【0066】
第12態様では、本開示は、R4が1~100個の炭素原子を有する、第3~第11態様のいずれかの方法を提供する。
【0067】
第13態様では、本開示は、化学基R1、R2、またはR3に存在する原子が、アルミニウム原子と結合してキレート環を形成する、第1または第2態様の方法を提供する。
【0068】
第14態様では、本開示は、化学基R1、R2、およびR3のうちの1つ以上が、ホスホニウム部分を含む防汚基である、第1または第2態様の方法を提供する。
【0069】
第15態様では、本開示は、防汚剤が、テトラアルキルホスホニウムハライド、ホスホニウムマロネート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムテトラハロボレート、テトラブチルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムヘキサハロホスフェート、およびテトラブチルホスホニウムテトラハロボレートのうちの1つ以上を含む、第14態様の方法を提供する。
【0070】
第16態様では、本開示は、化学基R1、R2、およびR3のうちの1つ以上が、スルホネート部分を含む防汚基である、第1または第2態様の方法を提供する。
【0071】
第17態様では、本開示は、防汚剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホンコハク酸ジオクチルナトリウム、メタンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウムp-トルエンスルホネート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムp-トルエンスルホネート、3-(ジメチル(オクタデシル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート、3,3’-(1,4-ジドデシルピペラジン-1,4-ジイウム-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1-スルホネート)、および3-(4-(tert-ブチル)ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートのうちの1つ以上を含む、第16態様の方法を提供する。
【0072】
第18態様では、本開示は、化学基R1、R2、およびR3のうちの1つ以上が、スルホニウム部分を含む防汚基である、第1または第2態様の方法を提供する。
【0073】
当業者には、特許請求される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態に対して様々な修正および変更がなされ得ることが明らかであろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載された様々な実施形態の修正および変更を包含することが意図されるが、そのような修正および変更が、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内であることを条件とする。
図1
図2