(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】車両を停止する方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230626BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230626BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/16 A
H04Q9/00 301Z
(21)【出願番号】P 2020520784
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(86)【国際出願番号】 EP2018077495
(87)【国際公開番号】W WO2019072858
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-27
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】520124143
【氏名又は名称】アビアクル カイ,エロディ
【氏名又は名称原語表記】ABIAKLE KAI,Elodie
(73)【特許権者】
【識別番号】520124154
【氏名又は名称】カイ,ウイッサム
【氏名又は名称原語表記】KAI,Wissam
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】アビアクル カイ,エロディ
(72)【発明者】
【氏名】カイ,ウイッサム
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/082075(WO,A1)
【文献】特表2019-502183(JP,A)
【文献】特開2003-118550(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0195069(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
G08G 1/16
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急時に車両を停止または減速させる方法であって、前記車両は、緊急停止システムを備え、前記緊急停止システムは、第1の無線通信ユニットを備え、ここで、前記緊急停止システムは、前記車両を停止または減速することができ、前記緊急停止システムは、そのメモリに、前記車両の識別子を格納しており、
前記方法は、前記車両を運転していないユーザを含み、前記ユーザは、第2の無線通信ユニットおよびディスプレイを備えるポータブル電子デバイスを携行し、可視的特徴を記述するデータが、前記車両の前記識別子に関連付けられて、前記緊急停止システム、サーバ、または前記ポータブル電子デバイスのうちの少なくとも1つに格納され、
前記方法は、以下のステップを備え、
a)前記車両が、前記第1の無線通信ユニットを使用して、前記車両の前記識別子を、前記ポータブル電子デバイスへ提供し、
b)前記ポータブル電子デバイスが、前記第2の無線通信ユニットを使用して、前記車両の前記識別子を受信し、
c)前記ポータブル電子デバイスが、前記ディスプレイ上に、前記車両の前記可視的特徴を表示し、
d)前記ユーザが、前記デバイスの前記ディスプレイ上で、前記車両を選択し、
e)前記ポータブル電子デバイスが、前記車両の前記識別子、および前記第2の無線通信ユニットを使用して、前記車両の前記緊急停止システムの前記第1の無線通信ユニットへ、信号を提供し、および、
f)前記緊急停止システムの前記第1の無線通信ユニットが、前記信号を受信し、前記緊急停止システムが、前記車両を停止または減速させる、
ここで、前記車両の前記緊急停止システムは、前記車両を停止または減速させるため、所定の時間ウインドウ内に、複数の異なるポータブル電子デバイスからの複数の信号を受信しなければならない、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記電子デバイスが、前記車両から閾値距離内にある場合にのみ、前記車両の前記可視的特徴が、前記電子デバイスの前記ディスプレイ上に表示される、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記識別子は、前記車両からサーバへ提供され、前記サーバは、前記識別子を、前記ポータブル電子デバイスに提供する、
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記車両の位置と、前記ポータブル電子デバイスとの間の距離が、閾値距離未満である場合にのみ、前記識別子が、前記サーバから、前記ポータブル電子デバイスに提供される、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記車両が、所定の方法で動作する場合にのみ、前記可視的特徴が、前記ポータブル電子デバイスの前記ディスプレイ上に表示される、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記車両が、所定の方法で動作する場合にのみ、前記識別子が、前記車両から送信される、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法であって、
前記所定の方法は、前記車両が、閾値速度を超える速度で移動する、または、閾値加速度を超える加速で加速することである、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法であって、
前記車両の前記可視的特徴は、車両の色、車両の製造業者、車両のライセンスプレート番号またはライセンスプレート文字、またはライセンスプレート番号または文字の一部、車両モデル、車両のタイプ、および、前記車両のライセンスプレート上の国籍、シンボル、またはフラグ、から選択される、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の方法であって、
前記可視的特徴を記述する前記データは、前記車両から、前記識別子とともに送信される、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
車両を含む車両制御システムであって、
前記車両は、緊急停止システムを備え、前記緊急停止システムは、第1の無線通信ユニットを備え、ここで、前記緊急停止システムは、前記車両を停止または減速させることができ、前記緊急停止システムは、前記車両の識別子を無線で提供するよう構成され、前記識別子は、前記車両の可視的特徴を記述するデータにリンクされ、
前記車両制御システムは、さらに、ポータブル電子デバイスを備え、前記電子デバイスは、第2の無線通信ユニットおよびディスプレイを備え、
前記電子デバイスは、
前記車両の前記識別子を受信して、前記車両の前記可視的特徴を表示するよう構成され、
前記電子デバイスは、さらに、
ユーザが、前記ディスプレイ上で前記車両を選択した際、前記車両の前記緊急停止システムに、信号を送信するよう構成され、前記信号は、前記車両を停止または減速させ
、
ここで、前記車両の前記緊急停止システムは、前記車両を停止または減速させるため、所定の時間ウインドウ内に、複数の異なるポータブル電子デバイスからの複数の信号を受信しなければならない、
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項11】
請求項
10に記載の車両制御システムであって、前記車両および前記ポータブル電子デバイスの間の距離が、閾値距離未満である場合にのみ、前記車両の前記可視的特徴が、前記ポータブル電子デバイスの前記ディスプレイ上に表示される、
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項12】
ドライバにより制御される車両のための緊急停止システムであって、
前記緊急停止システムは、前記車両を停止または減速させることができ、前記緊急停止システムは、無線通信ユニットを備え、ここで、前記緊急停止システムは、そのメモリに、前記車両の識別子を格納しており、前記緊急停止システムは、前記車両の前記識別子を、無線で提供するよう構成され、前記緊急停止システムは、さらに、
所定の時間ウインドウ内に、複数の異なるポータブル電子デバイスからの複数の無線停止信号を受信した際、即座に、前記車両を停止または減速させる、
ことを特徴とする緊急停止システム。
【請求項13】
請求項
12に記載の緊急停止システムであって、
前記識別子は、繰り返して提供される、
ことを特徴とする緊急停止システム。
【請求項14】
請求項
12または
13に記載の緊急停止システムを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、例えば、自動車、トラック、またはバス、を、特に緊急事態の際に、停止する方法およびシステムに関する。本発明を使用して、車両を運転しない人は、車両を停止または減速させることができる。これは、例えば、車両がテロリスト攻撃に使用される場合に有用である。
【背景技術】
【0002】
過去数年の間、車両を使うテロリスト攻撃、いわゆる車両体当たり攻撃(vehicle-ramming attack)が多数発生している。車両、しばしば、トラック等の大型車両、は、歩行者群に突っ込み、多数の犠牲者や負傷者を生む。注目すべき攻撃の1つは、ニースで2016年7月14日に起きた攻撃であり、87名の死者が生じた。攻撃はまた、例えば、ロンドン、バルセロナ、ストックホルム、エルサレム、およびベルリンで発生している。近年、攻撃の数は増加しているようである。
【0003】
車両体当たりは、犯人(perpetrator)にほとんどスキルを要求せずに、多数の犠牲者を発生させる可能性を持つ。車両はしばしば、攻撃の少し前に、テロリストにより、盗まれるかハイジャックされる。後続する攻撃は、典型的には、歩行者で混雑する通りにおいて発生する。
【0004】
車両体当たりに対する保護対策の1つは、ブロッキングする物体、例えば、ボラード(車止めポール)(bollards)を歩行者密度が高い場所に置くことである。
【0005】
さらに、電子制御システムや自動走行(autonomous)システムを備える最新の自動車は、遠隔操作を使用して遠くからハイジャックされ得る。さらに、こうした車両は、テロリストなしで、危険運転を引き起こすバグまたはウイルスを持つ可能性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、緊急時に車両を停止または減速させる方法が提供される。前記車両は、緊急停止システムを備え、この緊急停止システムは、第1の無線通信ユニットおよびメモリを備え、ここで、緊急停止システムは、車両を停止または減速させることができ、緊急停止システムは、そのメモリ内に、車両の識別子(identity)を格納している。
前記方法は、車両を運転していないユーザを含み、前記ユーザは、第2の無線通信ユニットおよびディスプレイを備えるポータブル電子デバイスを携行し、可視的(visible)特徴を記述するデータが、車両の識別子に関連付けられ、前記緊急停止システム、サーバ、または、前記ポータブル電子デバイスの少なくとも1つに格納される。
前記方法は、以下のステップを備える。a)前記車両が、前記第1の無線通信ユニットを使用して、前記車両の前記識別子を、前記ポータブル電子デバイスに提供し、b)前記ポータブル電子デバイスが、前記第2の無線通信ユニットを使用して、前記車両の前記識別子を受信し、c)前記ポータブル電子デバイスが、前記ディスプレイ上に、前記車両の前記可視的特徴を表示し、d)前記ユーザが、前記デバイスの前記ディスプレイ上で、車両を選択し、e)前記ポータブル電子デバイスが、前記車両の前記識別子および前記第2の無線通信ユニットを使用して、前記車両の前記緊急停止システムの前記第1の無線通信ユニットに、信号を提供し、およびf)前記緊急停止システムの前記第1の無線通信ユニットが、前記信号を受信して、前記緊急停止システムが、前記車両を停止または減速させる。
【0007】
これにより、車両を運転していない人、例えば、歩行者、が、車両を停止させることができ、これにより、車両体当たり攻撃を防止するためのクラウドソーシング(crowd sourcing)ソリューションが提供される。
【0008】
電子デバイスが、車両から閾値距離内にある場合にのみ、電子デバイスのディスプレイ上に車両の可視的特徴が表示されるのであれば、有用である。これは、車両の位置とポータブル電子機器の位置との間の距離が、閾値距離未満である場合にのみ、識別子がサーバからポータブル電子デバイスへ提供されることにより、達成することができる。これにより、デバイスは、より少ない車両を表示し、ネットワークトラフィックを減少させることができる。さらに、車両が所定の方式で動作する(behaves)場合にのみ、視覚的(visual)特徴が、ポータブル電子デバイスのディスプレイ上に表示されてよい。車両が所定の方式で動作する場合にのみ、車両から識別子が送信されてよい。この所定の方式は、車両が閾値速度を上回る速度で移動すること、または、閾値加速度を上回る加速度で加速することであってよい。
【0009】
視覚的(可視的)特徴は、例えば、車両の色、車両の製造業者、車両のライセンスプレート番号またはライセンスプレート文字またはライセンスプレート番号または文字の一部、車両のモデル、車両のタイプ、および、車両のライセンスプレート上の国籍、記号またはフラグから選択されてよい。
【0010】
車両の緊急停止システムは、車両を停止または減速させるため、所定の時間ウインドウ内で、複数の異なる電子デバイスから、信号を受信してよい。これにより、誤りやいたずらにより停止のトリガを与えることが防止される。
【0011】
緊急停止システムとポータブル電子デバイスとの間の通信は、異なる方法で構成されてよい。識別子(identity)は、車両からサーバへ提供されてよく、サーバは、この識別子を、ポータブル電子デバイスへ提供する。
【0012】
可視的特徴を記述するデータは、識別子とともに、車両から送信されてよい。可視的特徴を記述するデータは、車両の識別子を使用して、電子デバイス上のデータベースから、検索されてよい。可視的特徴を記述するデータは、車両の識別子を使用して、サーバ上のデータベースから、電子デバイスへ、提供されてよい。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、車両を備える車両制御システムが提供される。前記車両は、緊急停止システムを備え、緊急停止システムは、無線通信ユニットを備え、ここで、緊急停止システムは、車両を停止または減速させることができ、緊急停止システムは、車両の識別子を無線で提供するよう構成され、前記識別子は、車両の可視的特徴を記述するデータにリンクされる。
車両制御システムはさらに、ポータブル電子デバイスを備え、前記電子デバイスは、無線通信ユニットおよびディスプレイを備え、前記電子デバイスは、車両の識別子を受信して、車両の可視的特徴を表示するよう構成される。電子デバイスはさらに、ユーザがディスプレイ上で車両を選択した際、車両の緊急停止システムに信号を送信するよう構成され、前記信号が車両を停止または減速させる。車両とポータブル電子デバイスとの間の距離が閾値距離未満である場合にのみ、車両の可視的特徴が、ポータブル電子デバイスのディスプレイ上に表示されてよい。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、ディスプレイおよび無線通信ユニットを備えるポータブル電子デバイス上で、またはこの電子デバイスこれから実行されるよう構成されるコンピュータソフトウエア製品(プロダクト)が提供される。このコンピュータソフトウエア製品は、以下の処理を実行するよう構成される。a)車両の識別子を受信し、b)前記識別子を使用して、車両の可視的特徴を記述するデータを検索し、c)ポータブル電子デバイスのディスプレイ上に、車両の可視的特徴を表示し、d)ユーザから、車両を選択する入力を受信し、および、e)電子デバイスが、車両の識別子を使用して、無線停止信号を前記車両に提供する。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、ドライバにより制御される車両のための緊急停止システムが提供される。この緊急停止システムは、車両を停止または減速させることができ、緊急停止システムは、無線通信ユニットを備え、ここで、緊急停止システムは、そのメモリ内に、車両の識別子を格納しており、緊急停止システムは、車両の識別子を無線で提供するよう構成され、緊急停止システムはさらに、無線停止信号を受信した際に、車両を直ちに停止または減速させるよう構成される。クレームの緊急停止システムは、識別子を繰り返して提供してよい。
【0016】
本発明の第5の態様によれば、前記緊急停止システムを備える車両が提供される。
【0017】
添付図面は、本明細著の一部を構成し、本発明の好適な実施態様を概略的に図示し、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図2は、本実施形態の方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、ユーザ、危険な車両、およびポータブル電子デバイスを示す図である。
【
図4】
図4は、緊急停止システムを概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、ポータブル電子デバイスを概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、車両制御システムを概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、車両制御システムを概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、ポータブル電子デバイスを概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、本実施形態の方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、緊急停止システムを概略的に示す図である。
【
図14】
図14は、本実施形態の方法を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、車両、ユーザ、およびポータブルデバイスを備え、音声を出すためのシステムを概略的に示す図である。
【
図16】
図16は、緊急停止システムを概略的に示す図である。
【
図17】
図17は、緊急停止システムを概略的に示す図である。
【
図18】
図18は、本実施形態の方法を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、車両制御システムを概略的に示す図である。
【
図20】
図20は、緊急停止システムを備える車両を概略的に示す図である。
【
図21】
図21は、非緊急事態の実施形態における本方法を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、非緊急事態の実施形態における本方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
車両1は、あらゆるタイプの動力源付き(powered)車両、例えば、自動車、トラック、バス、またはトラクタであってよい。車両1は、好適には20km/h以上、より好適には30km/h以上、さらに好適には40km/h以上、および最も好適には50km/hより早い速度で走行することのできる車両であってよい。車両1は、好適には、車輪を使用して道路上を走行するよう適合される。あらゆるタイプの駆動力(推進力)(propulsion)が、車両1に使用されてよい。車両1は、例えば、ガソリンやディーゼルエンジン等の燃焼エンジン、または電気モータにより駆動されることができる。電気エンジンは、例えば、太陽電池または燃料電池等のバッテリにより駆動されてよい。
【0020】
車両1は、多様な車両サブシステムを有する。こうした車両サブシステムは、例えば、ブレーキシステム、点火システム、燃料噴射システム、バッテリまたは電力供給であってよい。こうした車両サブシステムの他の例は、速度、ブレーキ、および操縦(ステアリング)を制御することができる高度ドライバ支援システム(Advanced driver-assistance system: ADAS)を含む。車両はまた、完全に機械化された(automatous)自動車(自動運転車)であってよく、このため、車両全体を自動化制御する車両サブシステム(自動走行制御サブシステム)を有してよい。
【0021】
車両は、好適には、ドライバにより制御され、典型的には、ADASにより支援され得る、ハンドル、および1つ以上のアクセルまたはスピードペダル等の速度を制御するデバイスを備える車両である。こうして、車両1は、好適には、ある実施形態において、非自動走行(non-autonomous)車である。
【0022】
車両1は、
図1に示すように、緊急停止システム2を備える。緊急停止システムは、以下に説明される非緊急時の実施形態において、「停止システム2」として参照される。緊急停止システム2の汎用的用途は、車両1を運転していない人に、車両1を停止または減速させることである。車両1を運転していない人は、歩行者、自転車に乗る人、近傍の車の乗員、車両1の乗員、例えばバスの乗員であってよく、この者は以下、「ユーザ4」として参照される。ユーザ4は、好適には、以下で説明される方法のみにより、車両1を制御することができる人であり、こうして、ユーザ4は、車両を停止または制御するあらゆる他の手段、例えば、ここで説明される以外のキー、フォブ、または遠隔制御装置(リモコン)を持たない。
【0023】
緊急停止システム2は、停止アクティベータ3を備え、この停止アクティベータ3は、車両の少なくとも1つの車両サブシステム、例えば、1つ以上のブレーキシステム、速度制御システム、アクセル、燃料噴射、点火、バッテリ、電力供給等、に接続され、または、ADASまたは自動走行車システム、またはその一部と相互作用する。停止アクティベータ3は、車両1の他のソフトウエア、またはその一部と相互作用するソフトウエアであってよく、車両1の他の車両サブシステムと相互作用する電子または機械部品を有してよい。
【0024】
停止アクティベータ3は、緊急停止システム2により制御される。緊急停止システム2は、多様な送信元、例えば、ポータブル電子デバイス5、押圧センサ16、マイクロフォン13、からの入力を受信することができ、その後、停止アクティベータ3を作動して、車両1を停止または減速させることができる。
【0025】
停止アクティベータ3は、典型的には、燃料噴射を停止すること、ブレーキを作動すること、または電気自動車の場合にモータへの給電を停止することにより、ドライバの制御より優先する(ドライバの制御をオーバーライドする)。停止アクティベータ3は、車両1を停止または減速させる車両1のソフトウエアサブシステムへ命令を供給してよい。
【0026】
停止アクティベータ3は、制御された方法で、車両1を停止または減速させるよう設計されてよい。例えば、所定の最大速度、例えば、最大20km/h、より好適には最大10km/h、最も好適には最大5km/h、に車両を減速する。減速は、制御された方法で、例えば、低速での減速(slow deceleration)または超高速での減速(very fast deceleration)、で実行されてよい。
【0027】
停止アクティベータ3は、車両1を、短時間に、例えば、30秒以内、より好適には20秒以内、より好適には10秒以内、より好適には5秒以内、最も好適には3秒以内、最も好適には1秒以内、に完全に停止させてよい。車両1をできるだけ迅速に停止することが望ましい。しかしながら、停止アクティベータ3が誤りまたはいたずらにより作動される僅かなリスクがあり、ドライバや乗員に危害が及ばないことが重要であるため、減速(deceleration)は、ある方法で制御される必要があり得る。さらに、車両1内には、無害な(危害を及ぼさない)(innocent)乗員がいるかもしれない。
【0028】
好適には、車両1は、停止アクティベータ3が作動された際に、ドライバの動作(ステアリング、アクセル)に応答して停止する。
【0029】
停止アクティベータ3の作動により、車両1は、所定の時間、例えば、少なくとも15秒間または30秒間であって、最大1分、最大5分、最大10分または最大30分間、運転不可能になってよい。これにより、歩行者が安全なエリアへ移動し、警察が状況を掌握してテロリストを逮捕することができる。しかしながら、誤りまたはいたずらによる作動の場合、過度に不便とならないようこの時間は十分に短くなければならない。
【0030】
停止または減速に加えて、緊急停止システム2は、傍観者に警告するため、車両1の警笛(horn)をスイッチオンし、またはハザードランプを作動してよい。
【0031】
緊急停止システム2は、車両1の近傍にいるユーザ4からの入力を、多様な方法、例えば、ポータブル電子デバイス5からのタッチ、音声、または信号、またはこれらの種類の信号の組み合わせで、受信することができる。
図2を参照して、ステップ200で、ユーザ4は、車両1の緊急停止システム2へ信号を提供する。ステップ201で、緊急停止システム2は、ユーザ4から信号を受信して、緊急停止システム2の停止アクティベータ3が、車両1を停止または減速させる。
【0032】
図4、
図13、
図16、および
図17を参照して、緊急停止システム2は、ソフトウエアおよびいくつかの実施形態において車両1の識別子を格納するメモリ6と、プロセッサ7と、通信インタフェース8と、送信器および受信器を有する無線通信ユニット9と、マイクロフォン13と、音響分析ユニット14と、押圧センサ16と、危険判定システム18と、タイマ21と、カウンタ22と、および、方向判定ソフトウエア23とを備える。通信インタフェース8は、緊急停止システム2内の各コンポーネントの間、および緊急停止システム2と車両1のサブシステムとの間の接続を提供する。
【0033】
これらシステムおよび方法はまた、車両の盗難、または例えば、車両が警察にハントされた(hunted)場合に、車両を停止するのに使用されることができる。
【0034】
図3から
図12は、ユーザ4がポータブル電子デバイス5を使用して車両1を停止または減速する実施形態を示す。ポータブル電子デバイス5(
図5)は、典型的には、モバイルフォン5、例えば、iPhone(登録商標)またはアンドロイド(登録商標)フォン、であるが、スマートウォッチまたはスマートグラス(例えばGoogleグラス)であってもよい。ポータブル電子デバイス5は、好適にはカラーディスプレイであるディスプレイ10を有する。ディスプレイ10は、文字、数字、記号、または画像を表示することができる。好適には、ディスプレイ10は、タッチ式ディスプレイであって、ユーザにディスプレイ上のアイテムを選択させることができる。しかしながら、ディスプレイ上でナビゲートしアイテムを選択させる他の手段、例えば、ジョイスティック、または音声コマンドがあってよい。ポータブル電子デバイス5は、プロセッサ25およびメモリ26を有し、送信器および受信器を有する少なくとも1つの無線通信ユニット24を有する。無線通信方法およびプロトコルの多くの異なるタイプが、ここで説明される。ある実施形態において、デバイス5の無線通信ユニット24は、緊急停止システム2の無線通信ユニット9と、無線で直接的に通信することができる。無線通信ユニット24は、デバイス5および緊急システム2の間のネットワークでの無線通信を可能にするユニットであってよい。電子デバイス5は、緊急停止システム2およびデバイス5の間の直接的な通信、およびネットワーク19を介した通信、の双方を可能にする無線通信ユニット24を備えてよい。
【0035】
緊急停止システム2およびポータブル電子デバイス5は、複数の車両1およびデバイス5を備えてよい車両制御システム10(
図6および
図7)の一部である。車両1の緊急停止システム2は、そのメモリ6に、車両の識別子(ID)を格納している。この識別子は、好適には、ユニークな識別子である。識別子は、例えば、メモリ6に格納される番号であってよい。識別子は、例えば、必要に応じてカントリーコードと組み合わされた、車両のライセンスプレート番号/文字であってよいが、数字および/または文字のあらゆる他の有用な組み合わせであってもよい。IDはまた、緊急停止システム2または車両1全般の携帯電話ユニットのIMSIであってよい。IDはまた、車両シリアル番号であってよい。
【0036】
車両制御システム100は、車両1の可視的特徴を記述するデータを格納している。好適には、車両制御システム100は、複数の車両1の可視的特徴を記述するデータを格納している。それぞれの車両1の可視的特徴は、車両制御システム100内で、車両1のユニークなIDにリンクされ、IDを使用して、可視的特徴を記述するデータを検索することができる。
【0037】
可視的特徴は、好適には、少し離れた距離からでも容易に認識可能な特徴、例えば、車両のタイプ(バス、自家用車、トラック、ピックアップ、セダン)、製造業者(フォード、ボルボ、メルセデスベンツ)、色(黒、赤、青等)、モデル(フォードエスコート、トヨタランドクルーザ)、国籍、またはライセンスプレート番号の一部または全体、である。ライセンスプレートはまた、1つ以上の文字、および可視的特徴としてまた使用可能なものを含んでよい。例えば、ある国では(例えば、ドイツ)、1番目の文字は、車両を登録した都市または地域を示し、これらは典型的には、容易に識別および記憶可能である。米国では、車両登録された州が使用されてよい。さらに、ライセンスプレートは、車両登録の国(ノルウェー)または地域(スイス)のフラグまたはシンボルを表示してよく、これらは典型的には、識別容易である。他の使用され得る可視的特徴は、車両のボディに表示される会社名またはロゴを含む。
【0038】
好適には、ユーザ4が離れた距離からある程度の確実性で車両1を識別できるような特徴の組み合わせが使用される。色、ボディタイプ、および車両製造業者の組み合わせにより、半径30メートル以内の2車線(two-way)道路で、複数の車両の可視的特徴の中から、ある程度の確実性で、車両1を識別することができるべきである。好適には、単一の車両がある程度の確実性で、車両群から、好適には3台の車両のランダムグループから、より好適には10台の車両のグループから、より好適には100台の車両のグループから、最も好適には1000台を上回る車両のグループから、識別できるよう、可視的特徴が選択される。ライセンスプレートからの情報の一部(文字または数字)が可視的特徴として含まれる場合、少なくとも1つの重要性(大きさ)(magnitude)により、識別における正確性は向上するであろう。ライセンスプレート全体は国籍とともに、世界中のすべての車両から車両1をユニークに識別することができるであろう。しかしながら、ユーザ4が、ライセンスプレートを完全に識別する時間がないリスクがある。
【0039】
ある実施形態において、車両の可視的特徴を記述するデータは、特に、ライセンスプレートの一部が可視的特徴に含まれる場合に、車両のユニークなIDとして使用されてよい。
【0040】
簡潔には、緊急停止システム2は、車両1の識別子を、ユーザ4が携行するポータブル電子デバイス5に提供する。ポータブル電子デバイス5は、車両1の識別子を受信して、ディスプレイ10上に車両1の可視的特徴を表示する。これにより、危険な方法で動作する(挙動する)車両1を観測したユーザ4は、ディスプレイ10上で、対応する可視的特徴を持つ車両1を選択することができる。これにより、ポータブル電子デバイス5は、信号を、緊急停止システム2へ提供する。この信号は、緊急停止システム2の無線通信ユニット9により受信される。緊急停止システム2の停止アクティベータ3はその後作動され、車両1を停止または減速させる。
【0041】
車両制御システム100は、車両1の可視的特徴に関する格納データを備える。可視的特徴データは、車両制御システム100のあらゆる場所に格納されてよい。可視的特徴データは、例えば、車両の緊急停止システム2に格納され、車両1のIDとともに、デバイス5に提供されてよい。代替的に、可視的特徴データは、デバイス5にデータベースとして格納されてよく、デバイス5は、車両のIDを使用して、データベースから可視的特徴データを検索する。可視的特徴データは、サーバ11に格納され、サーバ11からポータブル電子デバイス5に提供されてよい(以下参照)。サーバ11は、IDを使用して、データベースから可視的特徴を検索し、このデータをポータブル電子デバイス5に提供してよい。
【0042】
ポータブル電子デバイス5は、ここで説明される方法の部分を実行する、インストールされたソフトウエア(例えば、アプリケーション)を有してよい。このソフトウエアは、ポータブル電子デバイスに予めダウンロードされてよい。このソフトウエアは、好適には、例えば、車両1のリスト12(
図8)として複数の車両の可視的特徴を表示可能であり、ユーザ4は、これにより、車両1の可視的特徴が表示された際に、例えば、スクリーン10をタッチすることにより、所望の車両1を選択することができる。
ある実施形態において、車両1の写真は、可視的特徴データに含まれ、ユーザに表示されてよい。しかしながら、例えば、自動車用に1つのシンボル、バス用に1つのシンボル等(
図8)のアイコンを表示することはより効率的である。シンボルは、車両の色に色付けられ、または車両1の他の可視的特徴とともに表示される。代替的に、ソフトウエアは、サーバ11上で稼働して、デバイス5にディスプレイ10上に可視的特徴を表示させてよい。
【0043】
緊急停止システム2およびポータブル電子デバイス5間の通信は、多数の異なる方法で構成され得る。有用な技術およびプロトコルは、NFC、RFID、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、Wi-Fi(登録商標)、lora、sigfox、固定無線ネットワーク、モバイル無線ネットワーク、衛星ネットワーク、2G、GSM、TDMA、FDMA、GPRS、EGPRS、EDGE、3G、HSPA、WCDMA(登録商標)、CDMA2000、CDMA、4G、OFDM、LTE-M、NB-IoT、OFDMA、SC-FDMA、5G、またはWiMAXを含む。
【0044】
図4に示すように、無線通信は、デバイス5および緊急停止システム2の間で直接、送受信(2方向)無線により実行されてよい。こうして、通信は、ピアツーピア方式で実行され得る。
【0045】
代替的に、
図5に示すように、通信は、ネットワーク19、例えば、セルラーネットワーク、を介して実行され得る。これは、サーバ11を含んでよい。
【0046】
好適には、緊急停止システム2およびデビアス5の間の通信の部分、または好適にはすべて、は、無線である。しかしながら、通信が
図5に示すように、ネットワークを介して実行される場合、通信の一部は、有線により送信されてよい。
【0047】
さらに、システム100での通信は、多数の方法で構成可能であるが、いくつかの可能性を以下に説明する。
【0048】
第1の可能性として、IDは、無線信号として、
図6に示すように、緊急停止システム2からデバイス5へ、直接送信され、デバイス5は、緊急停止システム2へ、停止信号を直接送信する。IDの同報は、好適には、所定の時間間隔、好適には、60秒未満、より好適には10秒未満、より好適には1秒未満、で繰り返して実行される。同報は、ある基準が充足された場合(以下参照)にのみ、実行されるよう、条件付けられてよい。ある実施形態において、ポータブル電子デバイス5は、緊急停止システム中のRFIDタグにそのIDを同報させるRFIDリーダを備える。同報は、全方向性(無指向性)、または指向性、すなわち、ある方向に実行されてよい。
【0049】
第2の可能性として、緊急停止システム2は、IDをサーバ11へ提供し、順に、サーバ11が、IDをポータブル電子デバイス5に提供する(
図7)。IDは、例えば、プッシュ技術を使用してデバイス5に提供されることができる。こうして、識別子は、車両1からサーバ11へ、および、サーバ11からポータブル電子デバイス5へ、提供されてよい。本実施形態において、ある種の地理的フィルタ(geographic filter)が適用されれば有用であり、これにより、IDは、車両1から閾値距離17以内にあるデバイス5に配布される(以下参照)。
【0050】
第3の可能性として、緊急停止システム2は、IDを近傍のデバイス5にリレーする固定またはモバイル送信器に、IDを提供する。これを使用して、地理的フィルタを実装することができる。
【0051】
第4の可能性として、いくつかの信号、例えば、ID信号、が、ネットワーク19を介して提供され、および停止信号が、デバイス5から緊急停止システム2に直接提供され、逆もまた同様である。例えば、いくつかのケースにおいて、迅速性かつ信頼性のため、停止信号を、サーバ11を介するのではなく、デバイス5から緊急停止システム2へ直接送信することは、有利であり得る。また、冗長性を提供するため、停止信号を、ポータブルデバイス5から、車両1およびサーバ11の双方へ直接送信し、これを車両1へパスすることもまた、望ましい。さらに、緊急停止システム2は、識別子を、ポータブル電子デバイス5に直接提供してよく、および、ポータブル電子デバイス5が、車両の識別子を使用して、サーバ11から、車両11の可視的特徴を記述するデータを、例えば、サーバ11を検索することにより、取得してよい。
【0052】
さらに、緊急停止システム2およびデバイス5の間の通信を構成する多数の他の可能性が利用可能である。
【0053】
図9を参照して、ステップ300で、車両1は、車両の識別子を、無線通信ユニット9を使用して、ポータブル電子デバイス5に提供する。このIDは、好適には、デバイス5に繰り返して、好適には所定の時間間隔で、好適には60秒未満、より好適には10秒未満、より好適には1秒未満の間隔で、提供される。送信は、所定のルールにより条件付けられてよい。例えば、送信は、車両1がスイッチオンされている場合のみ、例えば、エンジンが作動している際に、発生してよい。
代替的に、IDの提供は、車両が所定の方法で動作する(挙動する)際にのみ、実行されてよい。例えば、車両1が移動している場合にのみ、識別子が同報されてよく、あるいは、車両1が、所定の閾値速度、例えば、15km/h、を超える速度で移動している場合にのみ、または、車両1が所定の加速度より速く加速した場合や、危険な方法で動作した(挙動した)場合にのみ、識別子が同報されてよい(以下参照)。速度および加速度に関する情報は、車両1のサブシステムから緊急停止システム2へ提供されてよい。危険判定ユニット18が使用されて、以下のように、同報をスイッチオンしてよい。
【0054】
可視的特徴は、好適には、複数のポータブルデバイス5に提供される。これは、攻撃に対する警戒(vigilance)のクラウドソーシングを提供する。閾値距離17が使用されて、以下のように、地理的フィルタを提供してよい。
【0055】
ステップ301で、電子デバイス5は、無線通信ユニット24を使用して、車両のIDを受信する。ステップ302で、ポータブル電子デバイス5は、ディスプレイ10上に、車両1の可視的特徴を表示する。
【0056】
ステップ303で、危険な方法で動作したため車両1を停止したいユーザ4は、デバイスのディスプレイ10上で、車両1を選択する。ユーザ4による選択は、タッチディスプレイの補助で実行されてよいが、例えば、ディスプレイ10側のナビゲーションボタンまたはジョイスティックを使用して実行されてもよい。
ステップ304で、ポータブル電子デバイス5は、車両1の識別子を使用して、選択された車両1の緊急停止システム2の無線通信ユニット9へ信号を提供する。ユーザ4が、ディスプレイ10上で車両を選択すると、信号が、問題となる車両1に即座に同報される。正しい車両1は、IDの手段により選択される。対応するIDを持つ車両のみが、停止または減速される。他の車両は、影響されない。例えば、ポータブル電子デバイスの無線通信ユニット24は、複数の車両1により受信される信号を送信するが、対応するIDを持つ車両1のみが、この信号に反応する。
ステップ305で、緊急停止システム2の無線通信ユニット9は、信号を受信し、緊急停止システム2は、停止アクティベータ3を使用して、車両を停止または減速させる。
車両制御システム100は、好適には、緊急停止システム2を備える複数の車両1を操作することができる。こうして、複数の車両1の可視的特徴は、ディスプレイ10上に、リスト12で表示されてよい。
【0057】
ポータブル電子デバイス5は、好適には、そのメモリ26に格納されるソフトウエアを有する。ポータブル電子デバイス5のソフトウエアは、ディスプレイ10を備えるポータブル電子デバイス5上でまたはこの電子デバイスから実行される。コンピュータソフトウエア製品は、
図10のステップを実行するよう構成される。すなわち、ステップ400で、車両1の識別子を受信し、ステップ401で、識別子を使用して、車両1の可視的特徴を記述するデータを検索する。可視的特徴を記述するデータが、車両1のIDとともに提供される場合、ステップ401は必ずしも実行されない。ステップ402で、デバイス5は、ディスプレイ10上に、車両1の可視的特徴を表示する。好適には、ディスプレイ10は、少なくとも10秒ごと、より好適には少なくとも毎秒ごと、に更新されて、例えば、周囲の車両1へのユーザ4の相対移動を反映する。
【0058】
ステップ403で、デバイス5は、ユーザから、車両を選択する、例えばタッチスクリーンを介した入力を受信する。ステップ404で、デバイス5は、無線停止信号を、車両1へ提供する。
【0059】
車両1が、所定の方法、すなわち、潜在的に危険な方法、で動作(挙動)した場合にのみ、車両1の可視的特徴が、デバイス5のディスプレイ10上に表示されてよい。これは、緊急停止システム2内の危険判定ユニット18により、実行されてよい。これにより、システム100の信号トラフィックが減少され、ディスプレイ10およびリスト12を、ユーザ4にとってより雑然と(cluttered)させない。例えば、車両1が、所定の閾値を超えた速度を持つ、または所定の加速度閾値を超える加速度で加速する場合にのみ、可視的特徴が表示されてよい。高スピードでの不規則(erratic)ステアリングもまた、表示にトリガと与えてよい。さらに、緊急停止システム2は、車両1の多様なサブシステムから、これを判定するためのデータを取得してよい。
【0060】
危険判定ユニット18はまた、サーバ11に設置されてもよい。一般的に、緊急停止システム2の部分は、クラウドコンピューティングソリューションの一部として、サーバ11に設置されてもよい。
【0061】
車両が危険な方法で動作(挙動)しているか否かを決定するため、サーバ11は、車両1のサブシステムからのデータを使用してよく、また、モバイル測位またはGPSにより提供される車両位置特定(局在)(localisation)データを使用してよい。例えば、車両1が、車両通行が禁止されているまたは低速でのみ許容されている歩行者道路上を速すぎる速度で走行することを、サーバ11が検知した場合、車両1に関する可視的特徴が、表示されてよい。ディスプレイ10の制御は、緊急停止システム2、サーバ11、またはデバイス5により実行されることができる。
【0062】
こうして、IDの送信およびディスプレイ10上の可視的特徴の表示のためのルールは、緊急停止システム2、サーバ11、またはデバイス5により採用されてよい。例えば、リスト12は、車両1の挙動に基づいて、サーバ11またはデバイス5により編集されてよい。こうして、危険判定ユニット18は、サーバ11、緊急停止システム2、または、デバイス5に設置されてよい。
【0063】
閾値距離
ディスプレイ10上に表示される車両1の数を制限するため、電子デバイス5が、
図11に示すように、車両1の閾値距離17内にある場合にのみ、可視的特徴は、ポータブル電子デバイス5のディスプレイ10上に表示されてよい。この利点は、限られた数の車両1が電子デバイス5のディスプレイ10上に表示されることで、ユーザ4が正しい車両1を選択することをより容易にする点である。閾値距離は、好適には、最大100mであり、例えば、100m以下、50m以下、30m以下であってよい。代替的に、閾値距離17は、ポータブル電子デバイス5から計測されてよい。
【0064】
図11を参照して、ポータブル電子デバイス5aは、閾値距離17内であって、ディスプレイ10上に車両1を表示するが、ポータブル電子デバイス5bは、閾値距離17外にあって、ディスプレイ10上に車両1の可視的特徴を表示しない。
【0065】
あらゆる好適な技術が使用されて、閾値距離を達成できる。閾値17は、例えば、緊急停止システム2の無線通信ユニット9が、識別子信号を近距離に送信するだけで、達成可能である。こうして、車両1から遠すぎるポータブル電子デバイス5bは、信号が弱すぎるため、信号を受信できない。この例は、
図6に示されている。
【0066】
代替的に、ポータブル電子デバイス5および車両1の間の距離は、ポータブル電子デバイス5により、電波の飛行時間(time of flight)を計測することにより、決定することができる。他のオプションにおいて、車両1は、例えば、車両の前方および車両の前方および車両の後方のそれぞれのアンテナ上のフェーズドアレイ(phased array)を有する。さらに、受信信号強度インディケータ(RSSI)を使用することができる。
【0067】
車両1およびポータブル電子デバイス5の間の距離は、ポータブル電子デバイス5および車両1の位置を決定し、これら位置間の距離を計測することにより、決定することができる。
【0068】
電子デバイス5に対する車両1の位置の決定は、あらゆる好適な技術を使用して実行されてよい。例えば、車両1は、車両1の位置を決定する手段、例えば、GPS、Wi-Fi測位またはモバイル測位(車両が携帯電話チップ(mobile cell chip)を有する場合)、AGPS、またはOTDOA、を有してよい。車両1は、その位置を識別子とともに、好適には、所定の時間間隔で、同報してよい。ポータブル電子デバイス5の位置は、例えば、デバイス5のモバイル測位またはGPSユニットを使用して決定することができる。ポータブル電子デバイス5は、車両1の位置を受信していて自身の位置を決定することができ、その後、マップおよび距離決定アルゴリズムを使用して距離を決定することができる。
【0069】
こうして、車両制御システム100は、車両がポータブル電子デバイス5から閾値距離17内にある場合のみ、可視的特徴を表示すると決定することができる。
【0070】
ある実施形態において、サーバ11は、車両1およびポータブル電子デバイス5の位置を追跡して記録する。サーバ11は、例えば、車両1およびポータブル電子デバイス5のそれぞれのためのモバイル測位を使用するモバイルネットワークから、車両1およびポータブル電子デバイス5の位置を取得してよい。サーバ11はまた、他のユニット、例えば、モバイルネットワークのアンテナまたはサーバ等のネットワーク19内のユニットから、車両1またはデバイス5の位置情報を取得してよい。サーバ11は、ネットワーク19を検索し、または、プッシュ技術を使用して位置を取得してよい。代替的に、GPSまたはWi-Fi測位が使用されてよい。車両1の位置は、緊急停止システム2から、IDと共に、サーバ11に提供されてよい。車両1の位置は、サーバ11からポータブル電子デバイス5に提供されてよく、その後、距離を決定してよい。
【0071】
車両1およびポータブル電子デバイス5の間の距離が距離閾値17以内である場合にのみ、サーバ11は、車両1の識別子をポータブル電子デバイス5へ提供してよい。代替的に、サーバ11は、より大きい閾値距離20以内にある多数の車両1、例えば、都市(街)中のすべての車両、の識別子を受信し、定期的な時点で、更新された位置を、ポータブル電子デバイス5へ提供してよい。電子デバイス5は、自身の位置と、サーバ11から受信された車両1の位置とを比較し、車両1が閾値距離17以内である場合にのみ、可視的特徴を表示する。
代替的に、サーバ11は、デバイス5へ、距離17内の関連する車両のIDのみを提供し、デバイス5が、デバイス5のデータベースから可視的特徴を検索する。こうして、デバイス5は、多数の車両1のIDおよび可視的特徴をバッファに格納する。これにより、システム100のトラフィックがスピードアップし得る。
図12を参照して、デバイス5dは、閾値距離20外であり、サーバ11から車両1に関するいかなるデータも受信していない。デバイス5bおよび5cは、閾値距離20以内であり、車両1に関する情報(IDおよび可視的特徴)を受信している。しかしながら、デバイス5bおよび5cは、車両1の可視的特徴を表示しない。デバイス5aは、車両に関する情報を受信しており、かつディスプレイ10上に可視的特徴を表示する。デバイス5bおよび5cは、閾値距離17以内となるよう移動した場合、ディスプレイ10上に可視的特徴を迅速に表示することができる。
【0072】
閾値距離内にある車両1群は、交通の流れとともに急速に移動するため、ディスプレイ10は、好適には、頻繁に更新される。好適な更新頻度は、例えば、10秒未満、より好適には5秒未満、より好適には1秒未満であってよい。
【0073】
車両1、ポータブル電子デバイス5、およびサーバ11の間の信号は、好適には、暗号化される。こうして、緊急停止システム2、ポータブル電子デバイス5、およびサーバ11は、信号を暗号化および復号化するための暗号化および復号化ユニットを有する。信号はまた、デジタル署名で署名されてよい。この方法は、緊急停止システム2、サーバ11、またはポータブル電子デバイス5の照合(verification)ユニットを使用して、信号の送信者を照合するステップを含んでよい。
【0074】
これは緊急システムであるため、通信が迅速に実行されることが重要であり、このため、停止信号は、できるだけ速やかに提供されることができる。例えば、停止信号がネットワーク19を介して提供される場合、停止信号は、他のタイプのネットワークトラフィックより優先されてよい(given priority)。
【0075】
さらに、停止信号が車両1に到達する可能性を増加させるため、ポータブル電子デバイス5は、ユーザがディスプレイ10上で車両を選択した際、その送信電力を増加してよい。例えば、デバイス5は、その送信電力を、その最大送信電力まで増加してよい。
【0076】
音響
ある実施形態において、ユーザ4が所定の語を発するか所定の音を立てた場合、または、ユーザ4のグループが所定の音響パターンを生成した場合に、車両1が停止されてよい。本実施形態において、緊急停止システム2は、車両1の近傍の音を検出する少なくとも1つのマイクロフォン13と、音を検出および分析する音響分析ユニット14とを備える。音響分析ユニット14は、少なくとも1つの所定の音響パターンを有する。マイクロフォンの最大ピックアップ距離は、20~300mであってよい。音響分析ユニット14は、マイクロフォン13によりピックアップされた音を、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで分析することができる。音響分析ユニット14は、人口知能または機械学習を採用してよく、ノイズキャンセリング能力を備えてよい。マイクロフォン13は、例えば、車両1のボディの小さな開口に設置されてよい。音響分析ユニット14は、ハードウエアまたはソフトウエアまたは双方により実装されてよい。
【0077】
図14の方法は、以下を含む。ステップ500で、緊急停止システム2のマイクロフォン13は、音を収音し、ステップ501で、マイクロフォンは、音を表す信号を音響分析ユニット14へ送信し、ステップ502で、音響分析ユニット14は、受信された音が所定の音響パターンに一致するかを判定する。受信された音は、少なくとも、音響パターンを備える。ステップ503で、音響分析ユニット14は、緊急停止システム2に、車両1を停止または減速させる。
【0078】
音響分析ユニット14は、発話された語を識別することができる音声認識ソフトウエアを備えてよい。所定の音響パターンは、所定の発話された語、例えば、「ストップ」の語、であってよい。ユーザが車両1の近傍で「ストップ」の語を発話した場合、緊急停止システム2は、車両を停止または減速させることができてよい。音声認識ソフトウエアは、あらゆる言語を識別および理解してよい。他の実施形態において、これを使用して、非緊急状況において、道路上のタクシーを停止させてよい。
【0079】
音響分析ユニットは、ユーザ4が何を言ったかの意味、例えば、複数の人が例えば「助けて」、「テロリスト」、「危ない(watch out)」等の所定の語の組み合わせ、または悲鳴や叫びを使用したか、を解釈することができてよく、声のフラストレーション、恐怖、または怒りを検出することができてよい。音響分析ユニット14は、これらの語が異なる人により発話されたか否かを、例えば、音声の強さ、音源への距離、音声がオーバーラップしているか、トーン、ピッチ、発話スピード、抑揚、恐怖、方言、言語等を使用して、識別することができてよい。AIまたは機械学習がこれに特に有用である。機械学習が使用されて、所定の音響パターンを修正または更新してよい。
【0080】
図15に示すある実施形態において、音響分析ユニット14は、好適には携帯可能であり、例えばホイッスル(whistle)のような音響デバイス15により生じる特定の音響を識別することが可能である。複数の音響デバイス15は、ユーザ4の間、例えば、混雑したエリアに近い警察官、守衛、または店主に配布されてよい。一般公衆は、音響デバイス15から生じる音響について知らされることができ、これにより、音響は危険と関連付けられる。ポータブル音響デバイス15を使用することにより、車両停止信号は、迅速に生成されることができる。音響デバイス15の音響はまた、近傍の人々、例えば、歩行者に警告する。
音響デバイス15を使用する利点は、遠隔まで搬送される大音量の信号が生成される点である。音響デバイス15により生成される特定の音響はまた、周囲のノイズや会話から容易に識別され得る。音響デバイス15は、例えば、警察のホイッスルや他のよく知られた音響から識別されることが可能な音響を生成するよう設計されることができる。
【0081】
都市において騒音公害は問題であり、地方自治体は一般的に、どのレベルのノイズが都市のどこで発生しているかに関する情報を取得することを求める。緊急停止システム2がマイクロフォン13を備える場合、マイクロフォンは、騒音公害のマッピングのため使用されてよい。緊急停止システム2は、ノイズをマッピングするため、マッピングソフトウエア27を有する。マッピングソフトウエア27は、マイクロフォン13を使用して、ノイズレベルを定期的に記録し、車両1の現在の位置とともにノイズレベルを格納する。この格納は、例えば、少なくとも5分毎、より好適には毎分毎、より好適には、少なくとも10秒毎、に発生してよい。車両1の位置は、ここで開示されるように、例えば、GPSにより決定される。この結果は、緊急停止システム2のメモリに格納されてよい。経時的に収集された複数の車両1からの情報は、結合されて、ノイズの「ヒートマップ」を形成してよく、これにより、ノイズレベルに関する重要な情報が提供される。ノイズ情報は、複数の車両1からネットワーク19を介してサーバへ転送され、サーバは、複数の車両1からのノイズ情報を結合して、ノイズマップを取得する。
【0082】
押圧
図16に示すある実施形態において、緊急停止システム2は、車両1のボディ上、好適には、車両の外側、の押圧またはタッチセンサ16からの停止信号を受信してよい。こうして、車両1のボディは、緊急の場合にユーザ4により押圧されて緊急停止信号を生成するボタンまたは部品(例えば、ウインドウ)を有してよい。緊急停止システム2に接続される緊急停止ボタンは、車両1の外部のユーザにより押圧(pressed)されることができるよう、車両1の外部に設置されてよい。また、車両1のボディの所定の部品、例えばドア、サイドパネル、またはウインドウ、は、ユーザ4の押下(押圧)を感知してよい。こうして、車両上のボタン、または車両のボディの部品を押圧することにより、ユーザ4は、押圧感知センサ16を作動し、停止信号を緊急停止システム2に送信して、車両1を停止または減速させる。
【0083】
車両1が自動走行車である場合、乗員により押圧されることができる緊急停止ボタンが設けられてよく、例えば、ハイジャックされた場合やソフトウエアバグにより乗っ取られた場合に自動運転システムより優先(オーバーライド)してよい。
【0084】
複数の信号
誤りやいたずらによる停止アクティベータ3の作動を回避するため、緊急停止システム2の停止アクティベータ3を作動するのに2つの独立した信号を必要とするルールを採用することが有用であり得る。好適には、独立した複数の信号は、異なる複数のユーザに起因する。好適には、停止アクティベータ3を作動するため、少なくとも2つの停止信号が、緊急停止システム2により所定の時間ウインドウ内に受信されなければならない。停止信号は、例えば、2つの異なるポータブル電子デバイス5からの停止信号のような同じタイプの信号であってよく、あるいは、例えば、1つの停止信号がポータブル電子デバイス5からで他の1つの信号がマイクロフォン13により検出されるなど異なるタイプの信号であってよい。
図17を参照して、緊急停止システム2は、無線通信システム9から(例えば、ポータブル電子デバイス5、サーバ11、または他のデバイスから)、マイクロフォン13、押圧センサ16、または他のセンサまたはデバイスから、信号を受信してよい。
【0085】
図17から
図20を参照して、
図18のステップ600で、緊急停止システム2は、車両1を停止する第1の信号を受信する。停止信号は、ここで説明されるあらゆるタイプの信号、例えば、ポータブル電子デバイス5からの信号、音響分析ユニット14または押圧センサ16により検出される音響信号、または、車両1を運転していないユーザにより緊急停止システムに提供されるあらゆる他のタイプの信号であってよい。
本実施形態において、緊急停止システム2は、タイマ21およびカウンタ22を備える。緊急停止システム2が信号を受信すると、タイマ21は、即座にスタートする。ステップ601で、タイミングプロシージャは、あらゆる第2の信号が所定の時間ウインドウ内に受信されたかを判定する。カウンタ22は、時間ウインドウ内で受信された信号の数をカウントし、第1の信号を1つの信号としてカウントしてよい。
【0086】
時間ウインドウは、適切な安全性を提供するが、誤りまたはいたずらによる使用のリスクを減少させるよう、選択されてよい。適切な時間ウインドウは、信号のタイプ(デバイス5、音響または押圧センサ)に基づいて選択されてよい。時間ウインドウは、例えば、最大30分、最大15分、最大5分、最大1分、最大10秒、または最大1秒であってよい。システム100が、少なくとも2つの異なるポータブルデバイス5からの信号を必要とする場合、時間ウインドウは、比較的長くてよく、例えば、最大30分、最大15分、または最大5分であってよい。
【0087】
ステップ602で、少なくとも第2の停止信号が所定のタイムウインドウ内に受信された場合、ステップ603で、緊急停止システム2は、車両1を停止または減速させる。第2の停止信号が時間ウインドウ内に受信されない場合、カウンタ22はゼロにセットされてよい。
【0088】
この例において、2つの信号が停止にトリガを与えるのに必要であるが、あらゆる好適な数の停止信号が必要とされてよく、例えば、3、4、5、またはそれ以上の信号、または信号のタイプ、が使用されてよい。停止にトリガを与えるため、複数の信号が異なるタイプであることを要求してよい。
【0089】
例えば、3つの信号が2分以内に受信され、そのうちの2つの信号がポータブル電子デバイス5からで1つが押圧センサ16からである場合にのみ、システムが、車両1を停止または減速させるよう構成されてよい。
【0090】
好適には、複数の信号は、独立した複数のユーザからであってよい。複数のユーザが独立していることを確実にするため、システムは異なる方法で設計されてよい。
【0091】
図19に示すある実施形態において、第1の信号は、第1のポータブル電子デバイス5から提供され、第2の信号は、第2のポータブル電子デバイス5´から提供される。さらに、システム100内の通信は、あらゆる好適な方法で、例えば、ネットワーク19を介して、実行されることができる。異なるポータブル電子デバイス5、5´からの2つの信号がある場合、ポータブル電子デバイスは、システム100において、例えば、ポータブル電子デバイス5、5´のユーザIDにより識別されることができる。ユーザIDは、停止信号とともに、緊急停止システム2またはサーバ11へ提供される。例えば、ユーザIDは、デバイス5、5´のIMSIまたはIMEIであってよい。停止信号が、例えば、Bluetoothで提供される場合、BluetoothのMACアドレスが、ポータブル電子デバイス5、5´を識別するため使用されることができる。ある実施形態において、サーバ11は、2つの別々のポータブルデバイス5、5´から時間ウインドウ内に2つの信号を受信し、1つの単一の停止信号を、緊急停止システム2へ送信し、緊急停止システムは順に、停止アクティベータ3を作動する。本実施形態において、タイマ21およびカウンタ22は、サーバ11に設置される。
【0092】
こうして、システム100内でのポータブル電子デバイス5、5´の識別は、緊急停止システム2またはサーバ11により実行されることができる。
【0093】
停止信号が、特に、発話された語、または語のパターンである場合、多様な方法を使用することができる。
【0094】
ある実施形態において、音声認識ソフトウエアは、異なる音声を、例えば、トーン、スピード等に基づいて、識別することができる。発話された語が、音声認識ソフトウエアにより、2人の異なるユーザにより発話されたとみなされた場合、停止アクティベータ3が作動される。上記のように、音響分析ユニット14は、ユーザが何を発話したかの意味、例えば、複数の人が、例えば、「助けて」、「テロリスト」、「危ない」等の所定の語の組み合わせを使用した、あるいは、悲鳴または叫び等がされたか、を解釈することができてよく、音声中のフラストレーション、恐怖、または怒りを検出可能であってよい。音響分析ユニット14は、これらの語が異なる人により発話されたかを識別可能であってよい。音響分析ユニット14は、このため、隠れマルコフモデル(HMM)を採用してよい。
【0095】
ある実施形態において、車両は、少なくとも、2つのマイクロフォン13、13´(
図20)を有する。好適には、これらは、車両1上で離れて配置される。複数のマイクロフォン13、13´が使用されて、音源の方向を、例えば、三角測量(少なくとも2つのマイクロフォンを使用する)を使用して、決定することができる。この目的のため、緊急停止システム2は、三角測量を採用してよい三角測量ソフトウエア23を有してよい。方向判定ソフトウエア23は、複数のマイクロフォン13、13´からの情報を使用して、どこから音声が発生したかの位置を決定することができる。音声がマイクロフォン13、13´により受信されたときからの時間差が使用されて、位置を決定してよい。
【0096】
音声の強さと音声の歪み量が使用されて、ユーザ4の距離を決定することができる。2つの異なる音源が、所定の時間ウインドウ内で遠く離れている場合、2人の独立したユーザからであると考えることができる。時間ウインドウは、例えば、ユーザ、例えば、通りを歩行中または走っている歩行者、の可能な移動速度を考慮することができる。
【0097】
複数の信号が、時間ウインドウ内に、車両1のボタンの押圧(押下)、または車両1のボディの感知性部品の押圧を含む場合、空間的に離隔した部分を押圧すること、例えば、短い時間間隔内、例えば、1秒内に、1つは車両1の後方の押圧センサ16、1つは車両1の前方の押圧センサ16´(
図20)を押圧すること、を必要としてよい。1人のユーザ4が、1秒で車両の前方から車両の後方に移動することは通常困難である。こうして、これにより、2つの押圧信号が独立した複数のユーザからであることが確実となる。こうして、押圧センサ16、16´は、最小距離で離間していてよい。最小距離および時間ウインドウは、センサ16、16´から受信される複数の信号が、独立した複数のユーザからのものであることを確実にするよう選択されるべきである。最小距離は、例えば、3メートル、より好適には4メートルであってよい。
【0098】
さらに、緊急停止システム2は、車両の移動を考慮してよい。車両1が50km/hで移動する場合、10秒離れて受信される2つの押圧動作は、自動車がその間、135メートル移動したものであるから、2人の異なるユーザからのものである可能性が最も高い。緊急停止システム2は、これに関する情報を、車両1の上記のサブシステムから取得してよい。
【0099】
非緊急の実施形態
上記のように、車両1がマイクロフォン13を備える実施形態は、非緊急の目的、例えば、自動運転車であるタクシーを、例えば、「タクシー!」と呼び掛けることにより拾う(呼び止める)ことに使用されてよい。本実施形態において、車両1は、車両を制御する公知である自動運転制御サブシステムを有する。「タクシー」の語は、音響分析ユニット14により認識され、音響分析ユニット14が、停止システム2の停止アクティベータ3にタクシーを減速および停止させる(停止システム2は、上記の緊急停止システム2の特徴を共有する)。好適には、車両1は、縁石(curb)で制御された停止を行い、これにより、ユーザは、車両に乗車することができる。
【0100】
タクシーが自動走行車である場合、そうでない場合にはタクシードライバにより解決される特定の課題が解決されなければならない。例えば、2人の異なる人が「タクシー」と呼び掛ける場合、タクシーに最初に呼び掛けた人が乗車するのが合理的である。これは、以下のように解決されてよい。上記のように、また以下で説明されるように、音響分析ユニット14は、異なる人々の音声を識別可能であってよい。車両1の乗車ドアは、停止システム2によりアンロックされるまで、当初はロックされている。乗車ドアは、アンロックされるまで、ロックされて、想定される(putative)乗員がタクシーに入るのを防止する。第2の語が発話されてシステム2により検出され、システム2が発話された第2の語が「タクシー」と最初に呼び掛けた者と同じ人であると検出して、車両1を停止させた場合にのみ、ドアは、アンロックされる。ユーザは、例えば、デジタル音声や車両のドアのサインにより、第2の語を発話することを促されてよい。
【0101】
図21を参照して、ステップ700で、音響分析ユニット14は、第1の発話された語を検出し、その音声パターンを保存する。第1の語は、好適には、所定の語、例えば、「タクシー」である。ステップ701で、システム2は、車両を停止させる。ステップ702で、音響分析ユニット14は、第2の発話された語を受信し、第2の発話された語の音声パターンを保存する。第2の発話された語は、ステップ700での語(例えば、「タクシー」)と同じであってよいが、異なる語、例えば、「オープン(開け)」、であってもよい。これは予め定義された語であってよいが、あらゆる語であってよい。ステップ703で、音響分析ユニット14は、第1および第2の語の音声パターンを分析し、これらが同じ人により発話されたと見做されれば、車両のドアはアンロックされる。こうして、第2の人が停止した車両に近づいて発話した場合、音声パターンは同一ではないため、ドアは、アンロックされない。音声パターンが同一である場合にのみ、ドアは、アンロックされる。
【0102】
図21の方法は、以下を備える。第1の発話された語の音声パターンを検出し、車両を停止させ、その後、第2の発話された語の音声パターンを検出し、その後、音声パターンを比較して、ドアをアンロックする。
【0103】
本発明の第2の非緊急アプリケーションは、自動走行の自動販売車(autonomous vending vehicle)1である。将来、自動走行の自動販売車1が、都市を走り回り、商品、例えば、食べ物や飲料を販売することが予想されている。自動走行車1は、車両の自動走行制御サブシステムにより規定される所定の方法で、走り回る。車両1は、例えば、所定の通りに沿って走行するよう指令されてよい。タクシーと同様に、ユーザ4は、ある語、例えば、車両1上に記載された語、を呼び掛けることにより、車両1を停止させることができる。例えば、ユーザ4が、自動走行アイスクリーム販売バン(van)1を見た場合、ユーザ4は、「アイスクリーム!」と呼び掛け、これにより、上記のように停止システム2を使用して、車両1が停止する。この場合の課題は、いつ車両1を再始動するかである。この課題は、ユーザが車両1と、例えば、タッチディスプレイにタッチする、購入する等の相互作用をしない場合に、車両1を再始動させるタイマにより解決される。
【0104】
図22を参照して、本方法は、以下を備える。ステップ800で、マイクロフォン13および音響分析ユニット14は、所定の語、例えば、「アイスクリーム」を認識する。これにより、停止アクティベータ3が作動して、ステップ801で、好適には制御された方法で、縁石の側で、車両を停止させる。車両1は、完全に停止する。車両1が完全に停止した場合、ステップ802で、タイマは即時にスタートする。自動走行車両サブシステムにより、停止が検出され、タイマをスタートさせる。ユーザ4が所定の方法で所定の時間内に車両1と相互作用(interact)しない場合、ステップ803で、車両は、再び走行を開始する。開始手順は、自動走行制御サブシステムにより定義されている。例えば、車両は、所定の方法で加速してよい。タイマをストップさせるユーザ4および車両1の間の相互作用は、車両1の自動走行制御サブシステムに接続されるセンサにより検出される。基本的に、ユーザ4の車両1のセンサとの相互作用は、車両1をその場に留まらせ、これにより、ユーザ4は、取引を完結してよい。
【0105】
以上、本発明を、特定の例示的実施形態を参照して説明した。しかしながら、本開示は、一般的に、本発明の概念を例示することのみを意図するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。本発明は、一般的に、以下の請求項により規定される。