IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルヴェエムアッシュ ルシェルシュの特許一覧

特許7301842シリコーン相に分散された無水スフェロイドを含む化粧品組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】シリコーン相に分散された無水スフェロイドを含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20230626BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230626BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20230626BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/19
A61K8/81
A61K8/891
A61K8/25
A61K8/37
A61K8/88
A61K8/02
A61Q1/00
A61Q1/02
A61Q1/04
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020534208
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 FR2018053462
(87)【国際公開番号】W WO2019122754
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】1763086
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】302071210
【氏名又は名称】エルヴェエムアッシュ ルシェルシュ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ド ラ ポテリー、ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】マニゲ、サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】マサネッリ、アルメール
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-274975(JP,A)
【文献】特開2007-238578(JP,A)
【文献】特表2015-506357(JP,A)
【文献】特開2005-336119(JP,A)
【文献】米国特許第6572892(US,B1)
【文献】特開2007-1868(JP,A)
【文献】特開2011-231073(JP,A)
【文献】特開2011-093853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1~10mmの直径および50℃を超える融点を有する無水スフェロイドを含むことを特徴とする無水化粧品組成物であって、前記スフェロイドは、
(a)少なくとも1種の炭化水素オイル、および必要に応じて、前記炭化水素オイル用のゲル化剤、及び/又は
(b)少なくとも1種のワックス
を含む、室温において固体である美容的に許容され得る脂質マトリックスからなり、
前記スフェロイドは、少なくとも1種のシリコーンオイルを含む不混和性の連続相に分散されており、前記不混和性の連続相が、ヒュームドシリカ、クレイ、必要に応じて改質されるヘクトライト、デキストリンエステル、グリセロールエステルおよびポリアミドから選択される少なくとも1つのシリコーン油ゲル化剤によってゲル化されていることを特徴とする、無水化粧品組成物。
【請求項2】
前記スフェロイドが、いかなる外部コーティングも含まないことを特徴とする、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
前記炭化水素オイル(a)が、揮発性炭化水素オイル及び/又は不揮発性炭化水素オイルであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
前記脂質マトリックスが、シリカ、クレイ、必要に応じて改質されるヘクトライト、デキストリンエステル、シリコーンポリアミドまたはポリアミド、L-グルタミン酸またはアスパラギン酸のアミド、少なくとも1つのスチレン単位を含む炭化水素ブロックコポリマーから選択される、前記炭化水素オイル用のゲル化剤を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のワックス(b)が、炭化水素ワックス及び/又はポリエチレンワックスから選択される少なくとも1種のワックス(b)を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのワックス(b)が炭化水素ワックスから選択される、請求項5に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
前記脂質マトリックスが、少なくとも1つの色素または真珠層を含むことを特徴とする、請求項1~いずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
前記脂質マトリックスが、有機色素または無機色素を含むことを特徴とする、請求項7に記載の化粧品組成物。
【請求項9】
前記スフェロイドが、60~120℃の範囲の融点を有することを特徴とする、請求項1~いずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項10】
前記スフェロイドが、70~100℃の範囲の融点を有することを特徴とする、請求項9に記載の化粧品組成物。
【請求項11】
前記連続相のシリコーンオイルが、揮発性シリコーンオイル及び/又は不揮発性シリコーンオイルであることを特徴とする、請求項1~10いずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項12】
前記連続相が、少なくとも1種のシリコーンオイルゲル化剤によってゲル化され、前記シリコーンオイルゲル化剤は、焼成シリカまたはシリカアエロゲル粒子であることを特徴とする、請求項1~11いずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項13】
前記スフェロイドが、前記化粧品組成物の総重量に対して5~70重量%を占めることを特徴とする、請求項1~12いずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項14】
前記スフェロイドが、前記化粧品組成物の総重量に対して10~60重量%を占めることを特徴とする、請求項13に記載の化粧品組成物。
【請求項15】
前記スフェロイドが、前記化粧品組成物の総重量に対して20~50重量%を占めることを特徴とする、請求項14に記載の化粧品組成物。
【請求項16】
請求項1~15いずれか1項に記載の化粧品組成物を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、以下の工程:
(i)50~120℃の範囲の温度において、少なくとも1種の炭化水素オイル(a)および必要に応じて前記炭化水素オイル用のゲル化剤、及び/又は少なくとも1種のワックス(b)を撹拌によって均質化することによって、前記無水スフェロイドを構成している脂質マトリックスを調製する工程、
(ii)工程(i)において得られた液体混合物を、50~120℃の範囲の温度に加熱された水相に撹拌によって分散させることによって成形する工程、
(iii)工程(ii)において得られた分散液を、水相を加えることによって冷却して、スフェロイドを得る工程、
(iv)工程(iii)において得られたスフェロイドを室温において濾過することによって分離する工程、
(v)工程(iv)において得られたスフェロイドを乾燥する工程、
(vi)工程(v)において得られたスフェロイドを、少なくとも1種のシリコーンオイルを含む連続相に撹拌によって分散させる工程
を含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項17】
身体または顔面の皮膚のメーキャップ及び/又はケアのための、請求項1~15いずれか1項に記載の化粧品組成物の使用。
【請求項18】
メーキャップ及び/又は唇のケアのためのである、請求項17に記載の化粧品組成物の使用。
【請求項19】
請求項1~15いずれか1項に記載の化粧品組成物を含むことを特徴とする、リップスティック。
【請求項20】
請求項1~15いずれか1項に記載の化粧品組成物を含むことを特徴とする、ファンデーション。
【請求項21】
身体または顔面の皮膚のメーキャップ及び/又はケアのためのプロセスであって、前記プロセスは、以下の工程:
(i’)少なくとも1回の塗布を行うのに必要な量の請求項1~15いずれか1項に記載の化粧品組成物を取る工程、
(ii’)前記無水スフェロイドを、少なくとも1種のシリコーンオイルを含む不混和性の連続相と混錬する工程、および
(iii’)そのように混合された化粧品組成物を、身体または顔面の皮膚
に塗布する工程
を含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項22】
メーキャップ及び/又は唇のケアのためのプロセスである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記混錬工程が、身体もしくは顔面の皮膚上で直接的に行われるか、または身体もしくは顔面の皮膚への塗布の前に、前記化粧品組成物を含む供給デバイス内で行われることを特徴とする、請求項21又は22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記混錬工程が、指を用いて身体もしくは顔面の皮膚上で直接的に行われることを特徴とする、請求項23に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のシリコーンオイルを含む不混和性の連続相に分散された無水スフェロイドを含む化粧品組成物に関する。より詳細には、この化粧品組成物は、リップスティックまたはファンデーションであり得る。
【背景技術】
【0002】
従来技術および発明の目的
化粧品業界は、驚くべき効果をもたらす組成物を常に探してきた。これらは、例えば、種々の色の固形粒子を透明の連続相に分散させることによって、元の外観を有する組成物であり得る。それらは、従来の手法では結びつけることが難しい性能(例えば、瑞々しさと艶、瑞々しさと保持、艶と保持)を併せ持つ新しい組成物でもあり得る。
【0003】
しかしながら、相間の不相溶性が安定性の問題を引き起こすので、不混和相の会合によって安定した組成物を得ることは、容易なタスクではない。
【0004】
2つの液相を併せ持つエマルジョンの場合、当業者は、例えば、界面活性物質を用いて小滴を安定化することによって、分散相の小球が一体化しないように、したがって相が分離するように試みる。
【0005】
液体のまたはゲル化した連続相に可視の固形粒子を分散させる場合、それらの固形粒子は、その連続相に分散または懸濁されることが多い。連続相が固形粒子の中に徐々に拡散すること、または逆に、固形粒子を構成している材料が連続相の中に拡散することを回避することが、特に重要である。このことは、連続相が半透明または透明であるとき、連続相の中に任意の材料が拡散するとすぐに目に見えるので、特に問題になる。
【0006】
したがって、本発明の根底にある第1の課題は、安定した無水組成物を、連続相に分散された固体スフェロイドの形態で得ることにあり、それらのスフェロイドは、室温において形状および完全性を保持するのに十分に硬く、変形せず、前記スフェロイドと不混和性の前記連続相に材料を放出しない。
【0007】
本発明の根底にある第2の課題は、スフェロイドが、例えば指を用いた、わずかな剪断または押しつぶす動きによって、容易に押しつぶされ、皮膚に塗布される十分に柔らかい構造を有する、二相性の組成物を得ることである。ゆえに、それらのスフェロイドは、連続相と容易に混合されて、例えば皮膚または唇への塗布時に単相を形成できるので、2つの相の特性を兼ね備えることができる。
【0008】
連続相にスフェロイドを含む組成物は、すでに従来技術において報告されている。
【0009】
仏国特許出願公開第2649608号明細書には、例えば、50~10000μmの平均直径および50℃未満の融点を有する脂質スフェロイドを前記連続相に懸濁された状態で含む水性ゲルの形態の連続相を含む組成物が記載されている。この低融点スフェロイドは、それらの形状(多分散かつ不均一なスフェロイド)と最終的な組成物の安定性との両方に影響する不十分な硬度を有する。
【0010】
本発明者らは、少なくとも1種のシリコーンオイルを含む連続相に分散された、50℃を超える融点を有する脂質マトリックスからなるスフェロイドを含む無水化粧品組成物が、上記の課題を解決できることを、かなり意外な形で認めた。
【0011】
予想外にも、本発明者らは、高融点スフェロイドが、良好な塗り広げ特性を有することも示した。このように、本発明の無水組成物は、非常に塗布しやすく、皮膚に塗布したとき、驚くべきテクスチャーをもたらし、スフェロイドとスフェロイドが分散されている不混和性の連続相とが、その部位で混合されて、感覚及び/又は色の性能(例えば、皮膚の表面上における艶(光沢)、保持、感覚刺激または快適さといった特性)を高める。これらの2つの不混和相が皮膚に同時に接触することに起因して、驚くべき感覚効果を発揮しつつ、本発明に係る組成物がゲルからクリームに変化すること、及び/又は種々の色のスフェロイドと連続相との混合物が単一の均一な色調に変化することを観察することが可能である。
【0012】
現在のところ、上述の課題を解決する不混和相を有する無水組成物は、提唱されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】仏国特許出願公開第2649608号明細書
【発明の概要】
【0014】
発明の説明
第1の態様によると、本発明の主題は、0.1~10mmの直径および50℃を超える融点を有する無水スフェロイドを含む無水化粧品組成物であり、前記スフェロイドは、
(a)少なくとも1種の炭化水素オイル、および必要に応じて、前記炭化水素オイル用のゲル化剤、及び/又は
(b)少なくとも1種のワックス
を含む、美容的に許容され得る脂質マトリックスからなり、
前記スフェロイドは、少なくとも1種のシリコーンオイルを含む不混和性の連続相に分散されている。
【0015】
本発明において、「脂質マトリックス」は、脂肪物質に基づく、すなわち、(a)少なくとも1種の炭化水素オイル及び/又は(b)少なくとも1種のワックスを含む、均一な組成物(すなわち、コアを囲むコーティング層を含まない)を意味する。
【0016】
本発明において、表現「不混和性」は、本発明のスフェロイドが、分散されている相において拡散しないこと、崩壊しないことまたは膨張しないことを意味する。
【0017】
本発明において、用語「スフェロイド」とは、室温において固体であり、スフェロイド全体にわたって同じ組成を有する、本質的に球状の小さな固体のことを指す。室温は、15~27℃、より一般的には、20~25℃の温度を意味する。スフェロイドの直径は、0.1~10mm、好ましくは、0.3~8mm、より優先的には、0.5~5mm、さらにより優先的には、1~3mmに及び得、この直径は、従来の方法によって、例えば、双眼拡大鏡または篩を用いて、10回の計測で計測された平均直径である。これらのスフェロイドは、好ましくは、規則的な外観、滑らかな表面および均一な体積を有する。
【0018】
本発明のスフェロイドは、好都合なことに、脂質マトリックスの組成と異なる組成を有する外部媒体(すなわち連続相)から脂質マトリックスを隔離するようにデザインされたいかなる外部コーティングも含まない。
【0019】
用語「無水」は、本発明の文脈において、問題になっている物体の含水量が、好ましくは、前記物体の1重量%未満、さらにより優先的には、0.5重量%未満であることを意味する。
【0020】
本発明のスフェロイドは、室温におけるテクスチャーが十分に柔らかく変形しやすい脂質マトリックスからなり、低剪断力で、例えば指で容易に皮膚に塗布されるので、皮膚に対してスキンケア効果またはメーキャップ効果をもたらす。
【0021】
本発明者らは、本発明のスフェロイドの組成物において使用される構成物の性質が、これらのスフェロイドの塗布の容易さだけでなく、それらの最終的な特性に対しても影響し得ることを認めた。
【0022】
したがって、有益な実施形態によると、炭化水素オイル(a)は、揮発性及び/又は不揮発性炭化水素オイルから選択される。それは、好ましくは、炭化水素オイルの混合物である。
【0023】
炭化水素オイル(a)、および必要に応じて、前記炭化水素オイル用のゲル化剤は、脂質マトリックスの総重量に対して5~99.5重量%、好ましくは、10~95重量%、より優先的には、20~90重量%、さらにより優先的には、30~85重量%、さらにより優先的には、40~80重量%の範囲の含有量で存在し得る。
【0024】
本発明において、「炭化水素オイル」は、主に、炭素原子および水素原子、ならびに場合によっては、酸素、窒素、硫黄およびリンの原子を含む油を意味する。
【0025】
本発明において定義される揮発性炭化水素オイルは、皮膚と接触したとき、室温および大気圧において1時間未満で気化することができる油である。本発明の揮発油は、室温および大気圧においてゼロではない蒸気圧、特に0.13Pa~40000Pa(10-3~300mmHg)の範囲、特に、1.3Pa~13000Pa(0.01~100mmHg)の範囲、より詳細には、1.3Pa~1300Pa(0.01~10mmHg)の範囲の蒸気圧を有する、室温において液体の油である。不揮発性炭化水素オイルは、室温および大気圧において少なくとも数時間にわたって皮膚上に残存する油、特に、0.13Pa(10-3mmHg)未満の蒸気圧を有する油を意味する。
【0026】
本発明の揮発性炭化水素オイルは、8~16個の炭素原子を有する炭化水素オイル、特に、8~16個の炭素原子を含む分岐状アルカン、例えば、石油起源の8~16個の炭素原子を含むイソアルカン(イソパラフィンとも呼ばれる)、例えば、イソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとも呼ばれる)、イソデカン、イソヘキサデカン、および例えばIsopar(商標)またはPermetyls(ExxonMobil Chemical)という商品名で販売されている油、8~16個の炭素原子を有する分岐状エステル、例えば、ネオペンタン酸イソ-ヘキシル、およびそれらの混合物から選択されることが有益である。SHELLがShell Soltとして販売しているものを含む、石油留出物などの他の揮発性炭化水素オイルも使用され得る。揮発性炭化水素オイルは、8~16個の炭素原子を有する直鎖アルカンからも選択され得る。8~16個の炭素原子を有する直鎖アルカンの例は、n-ノナデカン(C)、n-デカン(C10)、n-ウンデカン(C11)、n-ドデカン(C12)、n-トリデカン(C13)、n-テトラデカン(C14)、n-ペンタデカン(C15)、n-ヘキサデカン(C16)およびそれらの混合物、特に、CognisがCETIOL UTとして販売している、n-ウンデカン(C11)とn-トリデカン(C13)との混合物である。
【0027】
ある実施形態によると、本発明に適した揮発性の直鎖アルカンは、n-ノナデカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカンおよびそれらの混合物から選択され得る。
【0028】
本発明の揮発性炭化水素オイルは、8~16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素オイルおよびそれらの混合物から選択されることが有益である。
【0029】
不揮発性炭化水素オイルとしては、植物起源の炭化水素オイル、例えば、4~24個の炭素原子を含む脂肪酸を含む脂肪酸とグリセロールとのトリエステルが特に挙げられ得、これらの油は、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和であり得る。これらの油は、麦芽油、ヒマワリ油、ブドウ種油、ゴマ油、トウモロコシ油、アンズ油、ヒマシ油、シア油、アボカド油、オリーブ油、ダイズ油、甘扁桃油、パーム油、ナタネ油および綿実油、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、ホホバ、アルファルファ、ポピー、カボチャ、ゴマ、スクワッシュ、ナタネ、クロフサスグリ、月見草、アワ、オオムギ、キノア、ライムギ、ベニバナ、ククイ、トケイソウ、マスカットローズ;またはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えば、Stearineries Duboisが販売しているもの、もしくはMiglyol(登録商標)810、812、818および829としてDynamit Nobelが販売しているもの;または無機物もしくは合成起源の、4~24個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の炭化水素、例えば、石油ゼリー、ポリデセン、水素化ポリイソブテン、例えば、Parleam(登録商標)、スクアランおよびそれらの混合物;合成エステル、例えば、Purcellin(商標)(オクタン酸ケトステアリル)オイル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、12~15個の炭素原子を有する安息香酸アルコール、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチル-ヘキシル、イソステアリン酸イソステアリル、アルコールまたは多価アルコールのオクタン酸エステル、デカン酸エステルまたはリシノール酸エステル、例えば、ジオクタン酸プロピレングリコール;ヒドロキシルエステル、例えば、乳酸イソステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル;およびペンタエリトリトールのエステル;12~26個の炭素原子を有する分岐状及び/又は不飽和の炭素鎖を有する、室温において液体である脂肪アルコール、例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイン酸アルコール、2-ヘキシルデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ウンデシルペンタデカノール;高級脂肪酸、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸;炭酸エステル、アセタール、クエン酸エステルおよびそれらの混合物であることが有益である。
【0030】
本発明の脂質マトリックスが、ワックス(b)を含まないとき、炭化水素オイル(a)は、少なくとも1種の、前記炭化水素オイル用のゲル化剤と併用される。
【0031】
炭化水素オイル用のゲル化剤は、好ましくは、シリカ、クレイ、必要に応じて改質されるヘクトライト、デキストリンエステル、ポリアミドまたはシリコーンポリアミド、L-グルタミン酸またはアスパラギン酸のアミド、少なくとも1つのスチレン単位を含む炭化水素ブロックコポリマーから選択される。
【0032】
本発明において、ヘクトライトは、第四級塩化アルキルアンモニウム、好ましくは、14~20個の炭素原子を有する、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのアルキル基で置換されたアンモニウムによって改質されたヘクトライトであり得る。そのアルキルは、ステアリルであることが有益であり得る。アンモニウムが2つのメチル基および2つのステアリル基を含むジステアルジモニウムヘクトライトというINCI名を有する化合物が挙げられ得る。
【0033】
本発明において、デキストリンエステルは、12~24個の炭素原子、好ましくは、14~22個の炭素原子、さらにより優先的には、14~18個の炭素原子を含む脂肪酸と、デキストリンとのエステルである。好ましくは、デキストリンエステルは、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリンおよびそれらの混合物から選択される。
【0034】
本発明において、L-グルタミン酸のアミド(グルタミド)またはアスパラギン酸のアミドは、好ましくは、6~14個の炭素原子、例えば8または12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルキル基を含む。そのようなグルタミン酸のアミドは、例えば、仏国特許第2820739号に記載されている。グルタミドは、好ましくは、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドおよびそれらの混合物から選択され、例えば、Ajinomotoが製造するEB-21、GP-1、AJK-OD2046、AJK-BG2055およびAJK-CE2046といったブランド製品のうちの1つであり得る。グルタミドは、例えば、ジブチルラウロイルグルタミドおよびジブチルエチルヘキサノイルグルタミドまたはそれらの混合物から選択される。
【0035】
アミドまたはアミドの混合物、特にグルタミドは、例えば、脂質マトリックスの総重量に対して0.1重量%~15.0重量%、1.0重量%~15.0重量%、0.5重量%~8.0重量%、1.0重量%~5.0重量%、0.8重量%~5重量%または2.0~3.0重量%を占める。
【0036】
本発明において、少なくとも1つのスチレン単位を含む炭化水素ブロックコポリマーは、好ましくは、スチレンとオレフィンとのブロックコポリマー、例えば、少なくとも1つのスチレン単位と、ブタジエン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレンおよびそれらの混合物から選択される単位とを含むコポリマーである。本発明の炭化水素ブロックコポリマーは、スチレン-エチレン/プロピレンコポリマー、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン/ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンコポリマー、スチレン/メチルスチレン/インデンコポリマーおよびそれらの混合物から選択されることが有益である。
【0037】
本発明の文脈において使用されるワックス(b)は、室温において固体であるが、状態が固体/液体に可逆的に変化し、30℃を超える融解温度、好ましくは、50~120℃、より優先的には、60~110℃、さらにより優先的には、70~100℃の融解温度を有する、親油性の化合物であり得る。本発明において、融解温度は、NF EN ISO 11357-3規格に記載されている熱分析(DSC)において観察される最も大きな吸熱ピークの温度に対応する。ワックスの融解温度は、示差走査熱量計(DSC)、例えば、DSC Mettler Toledoとして販売されている熱量計を用いて計測され得る。
【0038】
ワックス混合物は、高い融解温度、すなわち、50℃を超える、好ましくは、70℃を超える融解温度を有するワックスを、それより低い融解温度、すなわち、50℃未満、好ましくは、40℃未満または40℃に等しい融解温度を有するワックスと合わせることによって形成されることが有益であり得る。融解温度が高いワックスと、融解温度が低いワックスとの混合物は、50℃より高い融点を有するスフェロイドを得ることを可能にするはずである。
【0039】
本発明のスフェロイドは、50~120℃、より優先的には、60~110℃;さらにより優先的には、70~100℃の範囲の融点(または滴点)を特徴とすることが有益であり得る。脂質マトリックスの融点は、後者が加熱されたとき脂質マトリックスの最初の液滴が現れる温度に対応する。
【0040】
本発明の文脈において使用されるワックス(b)は、動物、植物、無機物または合成起源の、室温において固体であるワックスおよびそれらの混合物から選択され得る。
【0041】
本発明のワックス(b)は、以下から選択されることが有益であり得る:
・炭化水素ワックス、例えば、蜜ろう、ラノリンろう、シナろう、米糠ろう、カルナウバろう、カンデリラろう、オウリカリろう、アフリカハネガヤ(Alfa)ろう、コルクファイバーワックス、サトウキビろう、ベリーろう、セラックワックス、和ろう、木ろう、モンタンろう、オレンジおよびレモンワックス、パラフィンろうおよび地ろう、ポリメチレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンおよびそれらのエチレン/プロピレンコポリマー、8~22個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の脂肪鎖を有する動物油または植物油(例えば、異性化ホホバ油、水素化ヒマワリ油、水素化ヒマシ油、水素化ヤシ油、水素化ラノリン油、ジ-(トリメチロール-1,1,1-プロパン)テトラステアレートおよびジ-(トリメチロール-1,1,1-プロパン)テトラベヘネート)の接触水素化によって得られるろう;
・20~60個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖状または分岐状の脂肪アルコールから選択される脂肪アルコールワックス、
・シリコーンワックス、例えば、16~45個の炭素原子を有するアルキル-もしくはアルコキシ-ジメチコン、またはフッ素化ワックス、および
・それらの混合物。
【0042】
特に有益な実施形態によると、ワックス(b)は、好ましくは、炭化水素ワックス、例えば、ミクロクリスタリンワックスSP-88およびミクロクリスタリンワックスSP-16W(Strahl and Pitsch Inc.)、及び/又はポリエチレンワックス、例えば、Jeenate(登録商標)(Jeen International Corporation)およびPerformalene(登録商標)(Baker Hughes)から選択される無極性ワックスであり、炭化水素ワックスが、最も好ましい。本発明の炭化水素ワックスは、18~60個の炭素原子を含むワックスであることが有益である。
【0043】
ワックス(b)の含有量は、本発明の無水スフェロイドを構成している脂質マトリックスの総重量に対して0.5~95重量%、好ましくは、3~90重量%、より優先的には、3~60重量%、さらにより優先的には、4~45重量%、さらにより優先的には、5~30重量%に及び得る。
【0044】
本発明の無水スフェロイドは、少なくとも1つの色素または真珠層(真珠母)、好ましくは、有機色素または無機色素も含み得る。本発明の色素または真珠層は、表面処理されたことがあり得、すなわち、化学的、電子的、機械化学的及び/又は機械的な性質の1つ以上の表面処理を受けたことがあり得る。
【0045】
色素または真珠層の含有量は、脂質マトリックスの総重量に対して0~20重量%、好ましくは、2~10重量%に及ぶことが有益である。
【0046】
無水スフェロイドと不混和性である、本発明の組成物の連続相は、少なくとも1種の揮発性及び/又は不揮発性シリコーンオイルを含む。
【0047】
揮発性シリコーン、例えば、揮発性の直鎖状または環状シリコーンオイル、特に、2~7個のケイ素原子を有するシリコーンオイル、1~10個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を必要に応じて含むこれらのシリコーンが、揮発性シリコーンオイルとして挙げられ得る。本発明の文脈において使用可能な揮発性シリコーンオイルとしては、シクロペンタジメチルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンおよびそれらの混合物が優先的に挙げられ得る。
【0048】
3-ブチル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、3-プロピル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサンおよび3-エチル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサンおよびそれらの混合物から選択される直鎖状の揮発性アルキルトリシロキサンオイルも挙げられ得る。
【0049】
好ましい揮発性シリコーンオイルは、シクロペンタジメチルシロキサンである。
【0050】
本発明に係る組成物において使用可能な不揮発性シリコーンオイルは、シリコーン鎖の途中及び/又は末端に好都合なことに12~24個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルまたはアルコキシ基を含むポリジメチルシロキサン(PDMS)、フェニル化シリコーン、例えば、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケートであり得る。
【0051】
連続相は、フルオロシリコーンオイル、フルオロポリエーテルおよびフルオロシリコーンから選択されるフッ素化オイルも含み得る。ノナフルオロメトキシブタンまたはペルフルオロメチルシクロペンタンなどの揮発性フッ素化オイルが、使用され得る。
【0052】
好ましい実施形態によると、連続相は、少なくとも1種のシリコーンオイルゲル化剤によってゲル化される。シリコーンオイル用のゲル化剤は、ヒュームドシリカ、クレイ、必要に応じて改質されるヘクトライト、デキストリンエステル、グリセロールエステルおよびポリアミドから選択され得る。そのゲル化剤は、ヒュームドシリカおよびシリカエーロゲル粒子から選択されることが有益である。ヒュームドシリカは、シリカの表面上に存在するシラノール基の数を減少させる化学反応によって、表面において化学的に改変される。特に、シラノール基は、以下のものなどの疎水性基によって置換され得る。
・トリメチルシロキシル基(特に、ヘキサメチルジシラザンの存在下においてヒュームドシリカを処理することによって得られる)。このように処理されたシリカは、CTFA(第8版、2000年)によると「シリル化シリカ」と呼ばれる。例えば、それらは、アエロジル R812(登録商標)としてEVONIK INDUSTRIESが販売している。
・ジメチルシリルオキシルまたはポリジメチルシロキサン基(特に、ポリジメチルシロキサンまたはジメチルジクロロシランの存在下においてヒュームドシリカを処理することによって得られる)。このように処理されたシリカは、CTFA(第8版、2000年)によると「ジメチルシリル化シリカ」と呼ばれる。それらは、例えば、アエロジル R972(登録商標)およびアエロジル R974(登録商標)としてEVONIK INDUSTRIESが販売している。
【0053】
シリコーンオイル用のゲル化剤を使用することにより、ゲル化した連続相を得ることが可能になる。そのゲル化した連続相は、好ましくは、半透明または透明である。用語「半透明」は、その連続相に含まれるスフェロイドの輪郭をはっきりと識別させることなく、その連続相が、光線が拡散して通り抜けることを可能にすることを意味する。用語「透明」は、その連続相が屈折によって光を通過させ、それにより、それを含んでいるスフェロイドをはっきりと識別させることが可能になることを意味する。この透明性の特性は、有色スフェロイドをシリコーン処理された連続相に分散させる際に特に求められ、それは、非常に魅力的な視覚効果をもたらす。
【0054】
連続相は、シリコーンエラストマー、好ましくは、事前にシリコーンオイルに分散されたシリコーンエラストマーも含むことが有益であり得る。シリコーンエラストマーは、通常、ゲル、ペーストまたは粉末の形態であり、シリコーンエラストマーが炭化水素オイル及び/又はシリコーンオイルに分散されたゲルの形態であることが有益である。シリコーンエラストマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(またはジメチコン)、メチル-ポリシロキサン(MQ)、ビニル-メチル-ポリシロキサン(VMQ)、フェニル-ビニル-メチル-ポリシロキサン(PVMQ)、フルオロ-ビニル-メチル-ポリシロキサン(FVMQ)およびそれらの混合物から選択されることが有益である。詳細には、これらには、信越シリコーンが販売しているKSG-15およびKSG-16ゲル、Dow Corningが販売しているDC9040およびDC9041、ならびにGrant Industries,Inc.が販売しているGransil PC-12が含まれる。
【0055】
連続相は、フィルム形成ポリマーを含み得る。フィルム形成ポリマーは、基材上に連続フィルムを形成することができるポリマーと定義される。フィルム形成ポリマーは、天然または合成起源であり得、以下のものから選択されることが有益である:
・トリメチルシロキシシリケート、
・アルキル基が好ましくは1~6個の炭素原子を含む、フェニルアルキルシロキシシリケート(例えば、フェニルプロピルジメチルシロキシシリケート)、
・シリコーンアクリレートポリマー、例えば、アクリレート/ジメチコンコポリマー、特に、シクロペンタシロキサン中のアクリレート/ジメチコンコポリマー(例えば、信越化学株式会社製のKP-545)、メチルトリメチコン中のアクリレート/ジメチコンコポリマー(例えば、信越化学株式会社製のKP-579)、イソドデカン中のアクリレート/ジメチコンコポリマー(例えば、信越化学株式会社製のKP-550);ジメチコン中のアクリレート/ポリトリメチルシロキシ-メタクリレートコポリマー、特に、アクリレート/ポリトリメチルシロキシ-メタクリレートコポリマー(例えば、Dow Corning(登録商標)製のFA-4003DM)、イソドデカン中のアクリレート/ポリトリメチルシロキシ-メタクリレートコポリマー(例えば、Dow Corning(登録商標)製のFA-4004ID)、
・1~6個の炭素原子を有するポリアルキルシルセスキオキサン、好ましくは、ポリメチルシルセスキオキサン(例えば、Momentive製のSilform(登録商標)Flexible Resin)、
・アルキル基が1~6個の炭素原子を含むトリアルキルシロキシシリルカルバモイルプルラン、好ましくは、トリメチルシロキシシリルカルバモイルプルラン(例えば、信越化学株式会社製のTSPL-30-ID)、
・ビニルピロリドン(VP)のコポリマー、好ましくは、VPと2~20個の炭素原子を有するアルケンとのコポリマー、例えば、VP/エイコセン、VP/酢酸ビニル、VP/メタクリル酸エチル、VP/メタクリル酸エチル/メタクリル酸、VP/ヘキサデセン、VP/トリアコンタン、VP/スチレン、VP/アクリル酸/メタクリル酸ラウリル、ブチル化ポリビニルピロリドン(PVP)のコポリマー、
・ビニルエステルのコポリマー、好ましくは、酢酸ビニル/ステアリン酸アリル、酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/ステアリン酸ビニル、酢酸ビニル/オクタデセン、酢酸ビニル/オクタデシルビニルエーテル、プロピオン酸ビニル/ラウリン酸アリル、プロピオン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル/オクタデセン-1、酢酸ビニル/ドデセン-1、ステアリン酸ビニル/エチルビニルエーテル、プロピオン酸ビニル/セチルビニルエーテル、ステアリン酸ビニル/酢酸アリル、ジメチル-2,2-オクタン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、アリルジメチル-2,2-ペンタノエート/ラウリン酸ビニル、ジメチルプロピオン酸ビニル/ステアリン酸ビニル、ジメチルプロピオン酸アリル/ステアリン酸ビニル、
・水素化または非水素化ポリオレフィン、好ましくは、2~20個の炭素原子を有するアルケンのポリマーまたはコポリマー、例えば、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリデセン、
・アルキルセルロース、好ましくは、2~6個の炭素原子を有するアルキル基を有するアルキルセルロース、例えば、エチルセルロースおよびプロピルセルロース、
・ポリビニルアルコール、ならびに
・それらの混合物。
【0056】
フィルム形成ポリマーは、好ましくは、シリコーンポリマー、例えば、トリメチルシロキシシリケート;アルキル基が好ましくは1~6個の炭素原子を含むフェニルアルキルシロキシシリケート、例えば、フェニルプロピルジメチルシロキシシリケート;およびビニルピロリドンのコポリマーから選択される。
【0057】
意図される最終用途に応じて、本発明の無水化粧品組成物は、化粧品の分野において通常の添加物、例えば、充填剤または保存剤も含み得る。
【0058】
充填剤は、無機または有機であり得、任意の形状、小板状、球状または細長い形状であり得る。
【0059】
充填剤は、特に、無機充填剤、例えば、タルク、天然または合成起源の雲母、カオリン、8~22個の炭素原子、好ましくは、12~18個の炭素原子を有する有機カルボン酸から得られる金属石鹸、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ガラスビーズ、セラミックビーズおよびそれらの混合物から選択される。
【0060】
有機充填剤、例えば、架橋デンプンまたは非架橋デンプン、架橋されたまたは架橋されていない、球形化されたまたはされていない、伸長されたまたはされていない、合成ポリマー粉末、例えば、ポリエチレン粉末、ポリエステル粉末(例えば、イソフタレートまたはテレフタレート)、ポリアミド粉末(例えば、ポリ-β-アラニン粉末およびナイロン粉末、例えば、ORGASOL(登録商標)として販売されているもの)、ポリ(メタ)アクリル酸またはポリ(メタ)アクリレート粉末、例えば、架橋メタクリル酸メチル粉末、ポリウレタン粉末、例えば、PLASTIC POWDER(登録商標)D-400およびPLASTIC POWDER(登録商標)D-800としてTOSHIKIが販売している、ヘキサメチレンジイソシアナートとトリメチロールヘキシルラクトンとのコポリマー、ジビニルベンゼン-架橋ポリスチレン粉末、シリコーン樹脂粉末、例えば、シルセスキオキサン、またはテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))粉末ならびにそれらの混合物も、充填剤として使用され得る。
【0061】
本発明の化粧品組成物において、重量基準での無水スフェロイドの比率は、化粧品組成物の総重量に対して、5~70重量%、好ましくは、10~60重量%、さらにより優先的には、20~50重量%に相当し得る。
【0062】
本発明の第2の目的は、本発明に係る化粧品組成物を調製するためのプロセスに関し、そのプロセスは、以下の工程を含む:
(i)完全に溶融した液体の混合物を得るために、少なくとも1種の炭化水素オイル(a)および必要に応じて前記炭化水素オイル用のゲル化剤、及び/又は少なくとも1種のワックス(b)を、50~120℃の範囲の温度において撹拌によって均質化することによって、本発明の無水スフェロイドを構成する脂質マトリックスを調製する工程、
(ii)工程(i)において得られた液体混合物を、50~120℃の範囲の温度に加熱された水相に、撹拌によって分散させることによって成形する工程、
(iii)工程(ii)において得られた分散液を、水相、好ましくは、0℃未満または0℃に等しい温度を有する水相を加えることによって急冷して、工程(ii)において得られた小滴を固化し、スフェロイドを得る工程、
(iv)工程(iii)において得られたスフェロイドを、例えばモレキュラーシーブを用いて、室温において濾過することによって分離する工程、
(v)工程(iv)において得られたスフェロイドを好ましくは室温において乾燥して、残留水を除去する工程、
(vi)工程(v)において得られたスフェロイドを、少なくとも1種のシリコーンオイルを含む連続相に撹拌によって分散させる工程。
【0063】
少なくとも1種のシリコーンオイルを含む連続相は、スフェロイドをその連続相に分散させる工程の前または後に、シリコーンオイル用のゲル化剤を加えることによってゲル化され得る。次いで、その連続相を50~120℃の温度、好ましくは、85℃の温度に加熱し、ゲル化剤を、撹拌によってシリコーンオイルに組み込む。連続相が均質化されたら(粒子が無くなったら)、それを室温に冷却する。
【0064】
本発明の第3の目的は、身体または顔面の皮膚、特に口唇のメーキャップ及び/又はケアのために、本発明に係る化粧品組成物を使用することに関する。
【0065】
本発明は、本発明に係る化粧品組成物を含むリップスティックおよびファンデーションにも関する。
【0066】
最後に、本発明の最後の目的は、身体または顔面、特に口唇に対するメーキャップ及び/又はスキンケアのプロセスに関し、そのプロセスは、以下の工程を含む:
(i’)少なくとも1回の塗布を行うのに必要な量の本発明に係る化粧品組成物を取る工程、
(ii’)本発明の化粧品組成物に含まれる少なくとも1種のシリコーンオイルを含む不混和性の連続相と無水スフェロイドを混錬する工程、および
(iii’)そのように混合された化粧品組成物を、身体または顔面の皮膚、特に口唇に塗布する工程。
【0067】
剪断による混合工程は、身体または顔面の皮膚上で、例えば指を用いて直接的に行われ得るか(直接適用)、または本発明の化粧品組成物を含むパッケージなどの供給デバイス内で前もって行われ得る(間接適用)。後者の場合、化粧品組成物のテクスチャーは、スフェロイドの形態で供給され得、次いで、それが塗布中に押しつぶされるか、または皮膚に塗布される前に前記供給デバイス内でクリームもしくはゲルに改変される。
【0068】
前述の規定に加えて、本発明は、さらなる規定を含み、それは、本発明に係る化粧品組成物の調製に関する以下の追加の説明から明らかになる。
【実施例
【0069】
実施例において使用される種々の試験および計測方法は、以下のとおりである:
【0070】
スフェロイドの平均直径の計測:
製造の24時間後に、10個のスフェロイドを得る。それらの直径を、室温において10倍の倍率の双眼拡大鏡を用いて計測する。スフェロイドの平均直径は、これらの10回の計測値の平均である。
【0071】
融点の計測:
脂質マトリックスの調製中に、このマトリックスのサンプルを穴のあいたレザバーに注ぎ込む。このレザバーを20℃、大気圧下で24時間維持する。次いで、それをオーブンに入れ、1℃/分の加熱速度で加熱する。融点は、レザバー内の脂質マトリックスの最初の小滴の融解に対応する。
【0072】
安定性試験:
安定性を、種々の温度において:4℃、室温、および50℃のオーブンにおいて、1ヶ月間にわたって評価する。
【0073】
実施例1:
シリコーン連続相に無水スフェロイドを含むリップスティック組成物の調製:
【表1】
【0074】
均一な混合物が得られるまで、組成物1のすべての成分を撹拌しながら85℃に加熱する。次いで、このようにして得られた混合物を、小滴が得られるまで、撹拌を続けながら85℃の水にゆっくり分散させる。次いで、得られた分散液を、0℃の水相を加えることによって急激に冷却する。撹拌を停止して、固化したスフェロイドが損傷しないようにする。次いで、そのスフェロイドを濾過によって分離し、室温で乾燥させる。
【0075】
得られたスフェロイドの特徴付け:
・融点:81℃、
・平均直径:2.5mm。
【表2】
【0076】
組成物2のシリコーン連続相を、表2に列挙された各種構成要素を混合することによって調製する。ジフェニルジメチコン(シリコーンオイル)を、85℃の温度に加熱し、次いで、そのシリコーンオイルにシリカ(ゲル化剤)を静かに加える。次いで、均一な(粒子を含まない)混合物が得られるまで、その混合物を85℃の温度において激しく撹拌し続ける。次いで、2つのポリマーを、85℃の温度の高温の状態で加え、その混合物を撹拌によって均質化する。次いで、半透明のゲルが得られるまで、その混合物を室温に冷却する。
【0077】
次いで、事前に調製しておいた組成物1のスフェロイドを、組成物2のシリコーン連続相に、40/60という組成物1/組成物2の重量比で、室温において撹拌することによって分散させる。
【0078】
リップスティック組成物の特性の評価:
光沢テスト:
偏光イメージングによって光沢を計測する。この試験は、正確な量の組成物(0.15g)を合成皮膚であるBio Skin Plate上に170×30mmの面積にわたって手作業で広げることからなる。その組成物を均一な厚さのストリップに広げて、滑らかな表面を得る。このようにして、3つのストリップを調製する。各計測に向けて、Bio Skin Plateサンプルを可視化するために、そのサンプルをSAMBA Hairデバイスの円柱状のホルダー上に置く。各ストリップに対して異なる位置において3回の光沢計測を行う。
【0079】
得られた光沢値を下記の表3に示す。結果は、光沢単位で表す:
【表3】
【0080】
参照グロス:DIOR ADDICT ULTRA-GLOSS製品(Mintel ID:4228439)
参照グロスリップスティック:DIOR ADDICT LIPSTICK製品(Mintel ID:3263269)
参照サテンリップスティック:ROUGE DIOR INTERNATIONAL製品(Mintel ID:5206147)
参照マットリップスティック:DIORIFIC製品(Mintel ID:4395479)
【0081】
本発明の組成物は、参照リップスティックよりも高レベルの光沢、およびグロスよりもさらに高レベルの光沢を有する。
【0082】
官能試験:
次いで、本発明に係るリップスティック(組成物2のシリコーン連続相中の組成物1の無水スフェロイド)と参照ロングラスティングマットリップスティック(MAC MAT LIPSTICK、Russian Red色、Mintel ID:4601379)との比較官能試験を、8人の被験体のパネルに対して行う。
【0083】
リップスティックを、種々の基準:滑らかさ、光沢、快適さ、3時間後のにじみおよび移り、3時間後の光沢および薄膜の保持に従い、0(悪い)から4(優れている)までの範囲の評定尺度によって、評価する。
【表4】
【0084】
本発明のリップスティックは、優れた滑らかさの力、光沢および光沢の保持を示しつつ、にじみ、移りおよび薄膜の保持に関しては参照ロングラスティングマットリップスティックと等価な性能レベルを有する。
【0085】
実施例2:
4つの無水スフェロイド組成物A、B、CおよびDを調製する。
【0086】
組成物AおよびBのスフェロイドは、仏国特許出願公開第2649608号におけるスフェロイドに対応する。それらは、36~38℃という低い融点を有する。これらのスフェロイドの可視化を向上させるために、色素を加えた。
【0087】
組成物A、B、CおよびDは、以下のとおりである:
【表5】
【表6】
【表7】
【0088】
組成物Cは、69.05%不揮発油(a)(そのうち10%が無極性油である)および17.2%ワックス(b)からなる。
【表8】
【0089】
組成物Dは、57%オイル(a)および19.6%ワックス(b)からなる。
【0090】
組成物A、B、CおよびDのスフェロイドを、同じプロセスによって調製した:
・組成物AおよびBの場合は50℃において、組成物CおよびDの場合は80℃において、成分を加熱し、混合し、均質化する。
・その混合物が均一になったら、同じ温度に加熱された水相にゆっくり分散させる。小滴が得られるまで、撹拌を続ける。
・次いで、その混合物を、0℃に冷却した水相を加えることによって急激に冷却する。撹拌を停止して、固化したスフェロイドが損傷しないようにする。
・次いで、そのスフェロイドを濾過し、室温で乾燥させる。
・次いで、そのスフェロイドを組成物Hのシリコーン連続相に40/60という無水スフェロイドと組成物Hとの重量比で、室温において撹拌しながら組み込む。
【表9】
【0091】
ジフェニルジメチコン(シリコーンオイル)を、85℃の温度に加熱し、次いで、そのシリコーンオイルにシリカ(ゲル化剤)を静かに加えることによって、シリコーン連続相を調製する。次いで、均一な(粒子を含まない)混合物が得られるまで、その混合物を85℃の温度において強く撹拌し続ける。
【0092】
得られたスフェロイドの特徴付け:
次いで、得られた組成物A、B、CおよびDの無水スフェロイドを、上に記載された試験に従って特徴付ける。結果を下記の表10に示す。
【表10】
【0093】
組成物AおよびBのスフェロイドは、50℃未満の融点を有し、長い時間にわたって安定でない。他方で、それらのスフェロイドをシリコーン連続相に組み込む際のそれらの取り扱いは、非常に注意を要する:それらのスフェロイドは、形が崩れ、クラスターとして塊りになり、それにより、それらをシリコーン連続相に組み込むことが非常に困難になる。さらに、得られるスフェロイドは、規則的でなく、再現性のない、より細長い形状を有する。
【0094】
組成物CおよびDのスフェロイドは、50℃を超える融点を有し、オーブン内で1ヶ月が経過した後も形が崩れず、サイズを保持する。それらは、取り扱いやすく、シリコーン連続相に組み込みやすい。さらに、組成物CおよびDのスフェロイドは、良好な安定性を長い時間にわたって示す。それらは、組成物AおよびBのスフェロイドとは異なり、中程度の撹拌によってシリコーン連続相に容易に組み込まれ、互いに塊りにならない。
【0095】
実施例3:
シリコーン連続相に無水スフェロイドを含む本発明に係るリップスティック組成物の調製:
【表11】
【0096】
均一な混合物が得られるまで、組成物Eのすべての成分を撹拌しながら85℃に加熱する。次いで、このようにして得られた混合物を、小滴が得られるまで、撹拌を続けながら85℃の水にゆっくり分散させる。次いで、得られた分散液を、0℃に冷却した水相を加えることによって急激に冷却する。撹拌を停止して、固化したスフェロイドが損傷しないようにする。次いで、そのスフェロイドを濾過によって分離し、室温で乾燥させる。
【0097】
得られたスフェロイドの特徴付け:
・融点:68.1℃、
・平均直径:2.1mm。
【表12】
【0098】
組成物Fのシリコーン連続相を、表12に列挙された各種成分を混合することによって調製する。
【0099】
ジフェニルジメチコン(シリコーンオイル)を、85℃の温度に加熱し、次いで、そのシリコーンオイルにシリカ(ゲル化剤)を静かに加える。次いで、均一な(粒子を含まない)混合物が得られるまで、その混合物を85℃の温度の高温のまま強く撹拌し続ける。次いで、その他の成分を、85℃の温度の高温の状態で加え、その混合物を撹拌によって均質化する。次いで、半透明のゲルが得られるまで、その混合物を室温に冷却する。
【0100】
次いで、事前に調製しておいた組成物Eのスフェロイドを組成物Fのシリコーン連続相に40/60という組成物E/組成物Fの重量比で、室温において撹拌することによって分散させる。
【0101】
組成物EおよびFの混合物を含む比較用リップスティック組成物Gの調製:
組成物Fのシリコーン連続相に分散された組成物Eのスフェロイドに基づく本発明の化粧品組成物を、先に記載した組成物EおよびFを40/60という組成物E/組成物Fの比率で混合した比較用化粧品組成物Gと比較する。
【0102】
比較用化粧品組成物Gを調製するために、均一な混合物が得られるまで、組成物EおよびFのすべての成分を撹拌しながら85℃に加熱する。次いで、その混合物を、撹拌しながら室温に冷却する。
【0103】
2つの最終的なリップスティック組成物の特性の評価:
安定性試験:
上に記載された試験を用いて、安定性を評価する。1ヶ月後、比較用化粧品組成物Gは、表面上に油層を有する表面がざらざらした外観を有する。対照的に、本発明の化粧品組成物の外観は、改変されていない:スフェロイドは、シリコーン連続相に分散されたままであり、スフェロイドの形状は、影響を受けていない。
【0104】
光沢試験:
BYK Additives and Instruments製のMicro-gloss S光沢計を用いて、光沢を計測する。上記の2つの化粧品組成物を、40μmという薄膜の厚さおよび4m/秒という延展速度にて、剪断バーでコントラストカード上に広げた。室温における15分間の乾燥時間の後、そのカード全体に対して、10回の計測を行った。
【0105】
光沢値を下記の表13に示す。結果は、光沢単位で表す:
【表13】
【0106】
組成物Fのシリコーン連続相に分散された組成物Eのスフェロイドを含む本発明に係る化粧品組成物は、比較用化粧品組成物Gより高いレベルの光沢を有する。
【0107】
官能試験:
本発明に係る化粧品組成物と比較用化粧品組成物Gとの比較官能試験を、10人の被験体のパネルに対して行った。各被験体が、各組成物を同じ通過回数で塗布し、製品の艶および保持を評価するために質問票に回答した。
【0108】
上記の2つの組成物を、種々の基準:艶、塗布時の粘着性、3時間後の艶および保持に従い、表14に示される評定尺度によって、評価した。
【表14】
【0109】
結果を下記の表15に示す:
【表15】
【0110】
本発明の化粧品組成物は、全体的に比較用化粧品組成物Gよりも高いレベルの性能を示す。