(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】トラゾドンの調製のための継続的なプロセス
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20230626BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230626BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
C07D471/04 101
A61K31/496
A61P25/24
(21)【出願番号】P 2020542436
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2019052690
(87)【国際公開番号】W WO2019154770
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-26
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592160973
【氏名又は名称】アジェンデ・キミケ・リウニテ・アンジェリニ・フランチェスコ・ア・チ・エレ・ア・エフェ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】AZIENDE CHIMICHE RIUNITE ANGELINI FRANCESCO A.C.R.A.F.SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】イアコアンジェリ トンマーゾ
(72)【発明者】
【氏名】モロ レオナルド マリオ
(72)【発明者】
【氏名】カラッチョロ トルキアローロ ジュリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】カヴァリスキャ クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】フルロッティ グイド
【審査官】大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105777745(CN,A)
【文献】米国特許第05900485(US,A)
【文献】特表2010-535170(JP,A)
【文献】Neal G. Anderson,Practical Use of Continuous Processing in Developing and Scaling Up Laboratory Processes,Organic Process Research & Development,2001年10月24日,Volume 5, Issue 6,pp. 613-621
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応スキーム2による、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)およびs-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)から出発する、トラゾドン塩基(IV)を調製するための連続的な方法であって:
【化1】
流動反応容器中で、s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)のアルカリ
性水溶液とN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)の有機溶液を連続的に混合し、トラゾドン塩基(IV)を連続的に回収することを含む方法。
【請求項2】
以下のステップを含む、請求項1に記載の連続的な方法:
(i) s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)及び少なくとも1種の塩基性化合物の水溶液を流動反応容器の第1のチャネルに連続的に供給
して、前記アルカリ性水溶液を得ること;
(ii) 少なくとも1つの有機溶媒中のN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)の有機溶液を前記流動反応容器の第2のチャネルに連続的に供給すること;
(iii) 前記流動反応容器中で前記アルカリ
性水溶液と前記有機溶液とを少なくとも90℃の温度で連続的に混合することで、前記s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)を前記N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)と連続的に反応させ
て、反応混合物を形成すること;および
(iv) 前記流動反応容器から前記反応混合物を連続的に収集し、得られた生成物トラゾドン塩基(IV)を単離すること。
【請求項3】
トラゾドン塩基(IV)が、HPLCによる少なくとも70%の転化収率で得られる、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
トラゾドン塩基(IV)が、HPLCによる少なくとも90%の純度を有する、請求項
2または3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(iii)における連続反応の温度が130℃~160℃である、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(i)における前記塩基性化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、およびそれらの混合物を含む群から選択される無機塩基である、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記無機塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、およびそれらの混合物を含む群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(i)における前記塩基性化合物が、脂肪族アミンおよび芳香族アミン、ならびにそれらの混合物を含む群から選択される有機塩基である、請求項
2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アミンが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、およびそれらの混合物を含む群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(ii)における有機溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサンを含む群から選択される極性非プロトン性溶媒であるか、またはトルエン、ジエチルエーテルを含む群から選択される非極性溶媒であるか、またはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ベンジルアルコールを含む群から選択される極性プロトン性溶媒である、請求項2~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応スキーム3に従って、トラゾドン塩基(IV)をトラゾドン塩酸塩(V)に転化し、単離するステップ(v)をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【化2】
【請求項12】
m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および1-ブロモ-3-クロロプロパンの、反応スキーム4によるN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)への先行反応をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の連続的な方法。
【化3】
【請求項13】
m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および1-ブロモ-3-クロロプロパンを連続モードで反応させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および1-ブロモ-3-クロロプロパンをバッチモードで反応させる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
反応スキーム5に従って以下の工程を含む、請求項13に記載の方法:
(a) m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および少なくとも1つの塩基性化合物の水溶液を流動反応容器の第1のチャネルに連続的に供給して、アルカリ性水相を提供すること;
(b) 1-ブロモ-3-クロロプロパンの有機相を、任意に少なくとも1つの有機溶媒と組み合わせて、前記流動反応容器の第2のチャネルに連続的に供給すること;
(c) 前記流動反応容器中で前記アルカリ性水相および前記有機相を少なくとも70℃の温度で連続的に混合して、前記m-クロロフェニル-ピペラジン(I)を前記1-ブロモ-3-クロロプロパンと連続的に反応させ
て、反応混合物を形成すること;および
(d)
ステップ(c)で形成した前記反応混合物を前記流動反応容器から連続的に取り出し、得られた生成物N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)を単離し、これはさらに少なくとも1つの有機溶媒と混合されること;
(i) s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)及び少なくとも1種の塩基性化合物の水溶液を
、ステップ(a)~(d)で使用した前記流動反応容器または該流動反応容器とは異なる流動反応容器の第1のチャネルに連続的に供給
して、s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)を含む前記アルカリ性水溶液を得ること;
(ii)
ステップ(d)で得たN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)及び少なくとも1種の有機溶媒の有機溶液を
ステップ(i)の前記流動反応容器の第2のチャネルに連続的に供給すること;
(iii)
ステップ(i)の前記アルカリ
性水溶液と
ステップ(ii)の前記有機溶液を
前記流動反応容器中で少なくとも90℃の温度で連続的に混合して、前記s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)を前記N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)と連続的に反応させ
て、反応混合物を形成すること;および
(iv)
ステップ(iii)で形成した前記反応混合物を
前記流動反応容器から連続的に取り出し、得られた生成物トラゾドン塩基(IV)
を単離すること。
【化4】
【請求項16】
反応スキーム3に従って、トラゾドン塩基(IV)をトラゾドン塩酸塩(V)に転化し、単離するステップ(v)をさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【化5】
【請求項17】
ステップ(c)における連続反応の温度が80℃~100℃である、請求項15~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(a)における塩基性化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、およびそれらの混合物を含む群から選択される無機塩基である、
および/または
ステップ(i)における塩基性化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、およびそれらの混合物を含む群から選択される無機塩基である、
請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(a)における塩基性化合物が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、キノリン、ピリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される有機塩基である、
および/または
ステップ(i)における塩基性化合物が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、およびそれらの混合物を含む群から選択される有機塩基である、
請求項
15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)における有機溶媒が、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルを含む群から選択される極性非プロトン性溶媒であるか、またはトルエン、ベンゼンおよびジエチルエーテルを含む群から選択される非極性溶媒である、請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動反応容器中において連続方式で実施されるトラゾドンの改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トラゾドン(Trazodone)、すなわち2‐[3‐[4‐(3‐クロロフェニル)‐1‐ピペラジニルプロピル]‐1,2,4‐トリアゾロ[4,3‐a]ピリジン‐3(2H)‐オンは、5‐HT受容体を介して作用し、5‐HT輸送体を阻害する、多機能多モード抗うつ薬(multifunctional and multimodal antidepressant drug)である。
【0003】
トラゾドンは、「多モード」抗うつ薬に分類され(Sulcova A、Psychiatrie,2015,19(1)、49-52)、その結果生じる薬理学的プロファイルは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)、ならびに、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI:Serotonin and Norepinephrine Reuptake Inhibitors)とは異なる。
【0004】
1970年代に導入されて以来、トラゾドンは、三環系抗うつ薬(tricyclics)(Bryant S. G.ら、Journal of Clinical Psychiatry、1990、51、27-29)、フルオキセチンを含むSSRI(Beasley C. M.ら、Journal of Clinical Psychiatry、1991、52、294-299)、パロキセチン(paroxetine)(Kasper S.ら、Current Medical Research and Opinion、2005、21(8)、1139-1146)、サートラリン(sertraline)(Munizza C.ら、Current Medical Research and Opinion、2006、22(6)、1703-1713)、およびベンラファキシン(venlafaxine)などのSNRI(Cunningham L. A.ら、Journal of Clinical Psychopharmacology、1994、14(2)、99-106)など、異なるクラスに属する他のよく知られた抗うつ薬と同等の抗うつ薬であることが証明されてきた。
【0005】
全体的に、トラゾドンは有効で忍容性が高いと考えられており、最も一般的な有害事象(AE)は傾眠・沈静化(somnolence/sedation)、頭痛(headache)、めまい(dizziness)、口渇(dry mouth)である(Fagiolini A.ら、2012、26、1033-1049)。
【化1】
【0006】
トラゾドンは、現在、遊離塩基の形態で、および酸付加の製薬学的に許容される塩として製造されており、両方とも上に描かれている。好ましい形態は、遊離塩基を塩酸で処理することによって得られる塩酸塩である。
【0007】
トラゾドンの合成のためのいくつかの方法は、当該分野で公知である。
【0008】
本出願人によるUS3381009は、トラゾドン基(IV)の合成のための異なる合成ルートを開示しており、その中でも、以下のスキームの第1ステップで描かれるような、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)ピペラジン(II)とs-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)との間の反応が開示されている。
【化2】
【0009】
トラゾドン塩基(IV)は、例えば同じ出願人によるEP1108722に記載されているように、塩酸で処理することによって、容易にトラゾドン塩酸塩(V)に転化することができる。
【0010】
CN105777745は、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)ピペラジンおよびピリジントリアゾロンから、有機溶媒中かつ塩基の添加により、高純度のトラゾドンおよびトラゾドン塩酸塩を調製することを開示している。反応は還流温度(reflux temperature)で行われると言われている。
【0011】
特許HU201324Bは、水酸化ナトリウムおよびアルカリ金属ヨウ化物の代わりにアルカリ金属炭酸塩を触媒量で添加することによって、ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミドなどの双極性非プロトン性溶媒中で実施される、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)およびs-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)からのトラゾドンの上記合成を記載している。この合成は、数時間で行われ、高収率で良好な品質のトラゾドン塩基を提供すると言われている。
【0012】
一方、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)は、例えばEP0027002またはUS5900485に記載されているように、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)を1-ブロモ-3-クロロプロパンと反応させて容易に合成することができる(以下のスキームを参照)。
【化3】
【0013】
当技術分野に記載される合成方法は一般に、長い反応時間(数時間)および取り扱われるべき大量の毒性試薬を含む。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)とs-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)との反応による連続モードでのトラゾドンの合成に関し、トラゾドン塩基(IV)を得る。
【0015】
次いで、トラゾドン塩基(IV)は、さらなる精製なしに、非常に低いアルキル化物質含有量で得られるトラゾドン塩酸塩(V)(下記スキーム1)に転化され、上記低レベルは、15ppm、好ましくは10ppm、さらに好ましくは5ppm、より好ましくは2.5ppm以下であり、少なくとも同じ出願人によるEP2178850に記載された精製プロセスによって達成されたものと同等のものである。
【化4】
【0016】
上記の反応に関与するアルキル化物質は、例えば、化合物(II)を得るために使用される1-ブロモ-3-クロロプロパン、および化合物(II)自体である。
【0017】
いわゆる「バッチ」プロセスで使用される一般的な反応技術は、操作者に多量の上記物質と接触させる。
【0018】
さらに、高温での長い反応時間は試薬の分解を欠点として与え、これは最終生成物の収率および品質の両方に悪影響を及ぼす。
【0019】
本出願人は、トラゾドンを調製するためのより安全でより効率的な方法が必要とされていると感じている。
【0020】
このようなニーズは本発明によって満たされ、流動反応容器中で行われる連続的なプロセスによって、トラゾドン塩基(IV)を製造することができ、これはさらにトラゾドン塩酸塩(V)に転化され、現在知られている「バッチ」プロセスで得られるものと比較して、より効率的に、反応時間を非常に短縮し、同等またはそれ以上の収率と品質で、結果として、より効率的で、費用対効果が高く、環境に優しいプロセスを得ることができる。
【0021】
従って、本出願人は、上記スキーム1に従って、流動反応容器中で行われる連続的方法からなる少なくとも1つのステップを含む、トラゾドンの調製のための新規な方法を開発した。
【0022】
特に、本出願人は、主要中間体N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)およびs-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)から出発するフロー反応器中でのトラゾドン塩基(IV)の調製のための工程を含む、トラゾドンの連続製造方法を開発した(上記のステップ2、スキーム1)。
【0023】
次いで、このようにして得られたトラゾドン塩基(IV)を、当該技術分野で公知の方法(ステップ3、上記スキーム1)を用いて、対応する塩酸塩(V)に転化する。
【0024】
最後に、本出願人はまた、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および1-ブロモ-3-クロロプロパンから出発するトラゾドンの連続製造方法を開発し、これは上記の連続的方法を含む(ステップ1および2、上記スキーム1)。
【0025】
好ましい実施形態によれば、トラゾドンの合成における重要な中間体であるN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)は、アルカリ性水性媒体中でかつ70℃より高い温度で、流動反応容器中で、連続的なプロセスでこの反応を行い、高収率および高純度で、わずか数分の反応時間で得られる。
【0026】
重要な中間体(II)は、高収率および高純度で、わずか数分の反応時間で、アルカリ性水性媒体中でかつ90℃より高い温度で、上記のような流動反応容器中で、連続的方法を介して反応を実施して、トラゾドン塩基(IV)に転化される。
【0027】
N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)のようなハロゲン化アルキルが、例えばUS4,254,124、HU201324、およびJ. March、Advanced Organic Chemistry、IV ed、1992、370頁に開示されているように、高温のアルカリ性水溶液中で不安定であることが当技術分野で十分に認識されていることから、この結果はさらに驚くべきことである。
【0028】
したがって、本発明は、古典的な「バッチ」方法と比較した場合、製造プロセスの安全性および効率の劇的な改善を伴って、短い反応時間で、試薬の必要量および取扱いを劇的に減少させて、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)およびトラゾドン塩基(IV)を高い収率および高純度で得ることを可能にする。
【0029】
このようにして得られたトラゾドン塩基(IV)は、濃塩酸での単純な処理によって、さらに精製することなく、EP2178850B1に開示されたものに匹敵する品質のトラゾドン塩酸塩(V)に直接転化される。
【0030】
したがって、主な態様によれば、本発明は、上記スキーム1のステップ2に従って、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)およびs-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)から出発して、流動反応容器中でs-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)のアルカリ水溶液とN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)の有機溶液とを連続的に混合し、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは90%の転化収率で、トラゾドン塩基(IV)を連続的に回収することを含む、トラゾドン塩基(IV)およびトラゾドン塩酸塩(V)の調製のための連続的な方法を提供する。さらにより好ましくは、転化収率が95%、97%、98%以上であるか、または定量的である。
【0031】
本発明はさらに、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および1-ブロモ-3-クロロプロパンから出発するトラゾドン塩基(IV)の調製のための連続的な方法を提供し、ここで、上記のステップ2の方法は、上記のスキーム1のステップ1に従ったN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)の調製に先行され、流動反応容器中、連続モードで実施される。
【0032】
さらなる態様によれば、本発明は、上記スキーム1のステップ1による、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および1-ブロモ-3-クロロプロパンから出発するN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)の、流動反応容器中での連続モードでの調製に関する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明は限定ではなく例示として与えられる以下の実施例を読むことにより、添付の図面と共に読まれることにより、より良く理解されるであろう。
【
図1】
図1は、流動反応容器中で実施されるN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)の調製のための連続的方法(ステップ1、スキーム1参照)の好ましい実施形態の概略図を示す。
【
図2】
図2は、流動反応容器中で実施されるトラゾドン塩基(IV)の調製のための連続的方法(ステップ2、スキーム1を参照のこと)の好ましい実施形態の概略図を示す。
【
図3】
図3はトラゾドンHCl(V)の調製のための連続的方法の好ましい実施形態を表し、ここで、ステップ1およびステップ2は、異なる流動反応容器において連続モードで実施され(スキーム1)、そしてステップ3はバッチモードで実施される。
【
図4】
図4は、ステップ1およびステップ3(スキーム1)がバッチモードで行われる、トラゾドンHCl(V)の調製のための連続的方法の代替の実施形態を表す。ステップ2は、本発明の主な態様によれば、流動反応容器中において連続モードで実施される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本明細書で使用される「流動反応容器」という語は、バッチリアクターとは対照的に、化学反応が連続的に流れる流れの中で実行され、得られた反応混合物が連続的に回収されるシステムを意味する。
【0035】
本明細書で使用される「連続的方法」という語は、少なくとも1つの合成反応が流動反応容器中で連続モードで行われるプロセスを意味する。
【0036】
本明細書で使用される「連続的に」という語は、バッチ操作(batch)、断続的操作(intermittent)、または順序的操作(sequenced)とは対照的に、連続的な流れ(材料または時間)に基づいて行われる。本発明の実施形態において、用語「連続的な」、「連続的に」などは、反応混合物中の1つ以上の反応物質の有効濃度を実質的に連続的に維持するように、当該1つ以上の反応物質を含む溶液を添加するモードを意味し得る。生成物の性質に実質的に影響を及ぼさない溶液の漸増的添加は、本明細書中で使用される場合、なお「連続的」である。
【0037】
本明細書で使用される「滞留時間」という語は、反応物質の微粒子が容器内で費やす時間の平均長さを意味する(マグロウヒル社によるマグロウヒル ディクショナリー オブ エンジニアリング(McGraw-Hill Dictionary of Engineering)、2E、コピーライト(C)2003の458頁に定義されている。)。
【0038】
本明細書で使用される「流体デバイス」または「流体モジュール」などの語は、(マグロウヒル社によるマグロウヒル ディクショナリー オブ エンジニアリング、2E、コピーライト(C)2003の228頁に定義されるような)流体の流れの相互作用によって動作するデバイスを意味する。
【0039】
本明細書で使用される「約」という語は、点値が与えられる場合の範囲を指すことを意図し、この範囲は、与えられた値の少なくとも2%+/を含む。
【0040】
本明細書で使用される「チャネル」という語は、管、入口などのような反応器の任意の入口点を指すことが意図される。
【0041】
本明細書で使用される「転化収率」、「転化率」および「転化」は、HPLC対標準溶液によって計算される、反応混合物中に形成される生成物の量を意味する。
【0042】
詳細な説明
主な態様によれば、本発明は、下記の反応スキーム(スキーム2)によるN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)およびs-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)から出発するトラゾドン塩基(IV)の調製のための連続的な方法であって、s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)のアルカリ性水溶液とN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)の有機溶液とを流動反応容器中で連続的に混合し、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは90%の転化収率でトラゾドン塩基(IV)を回収することを含む。さらにより好ましくは、転化収率が95%、97%、98%、99%以上または定量的である。
【0043】
好ましくは、反応容器中の上記有機溶液および上記アルカリ性水溶液の比が約2:1~約1:2である。
【化5】
【0044】
特に、本発明は上記の反応スキーム(スキーム2)によるトラゾドンの調製のための連続的方法に関し、これは以下を含む:
(i)s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)及び少なくとも1種の塩基性化合物の水溶液を流動反応容器の第1のチャネルに連続的に供給すること;
(ii)少なくとも1つの有機溶媒中のN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)の有機溶液を上記流動反応容器の第2のチャネルに連続的に供給すること;
(iii)少なくとも90℃の温度で、好ましくは180秒を超えずかつ少なくとも70秒の滞留時間で、アルカリ性水溶液および有機溶液を流動反応容器中で連続的に混合することによって、s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)をN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)と連続的に反応させること;および
(iv)反応混合物を流動反応容器から連続的に収集し、トラゾドン塩基(IV)を単離すること。
【0045】
好ましくは、ステップ(iii)における有機溶液およびアルカリ性水溶液の比が約2:1~約1:2である。
【0046】
収集された反応混合物は転化率を決定するために、例えばHPLCによって分析することができ、次いで、トラゾドン塩基(IV)は、標準的な技術によって、例えば有機相と水相とを分離し、有機相を濃縮すること(例えば蒸発または蒸留)によって、オレンジ色の油状残渣を取得し、これを例えばイソブタノールで処理し、冷却後に沈殿によってトラゾドン塩基(IV)を生じさせることで、混合物から単離される。
【化6】
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、次いで、ステップ(v)に従って、トラゾドン塩基(IV)が、その対応する塩、トラゾドン塩酸塩(V)(ステップ3、スキーム3)に転化される、これは、トラゾドン塩基(IV)を少なくとも1つの有機溶媒に溶解し、塩酸で処理して、トラゾドン塩酸塩(V)結晶の沈殿を得ることによって実施される。
【0048】
次に、トラゾドン塩酸塩(V)の沈殿物を、当業者に公知の技術に従って濾過し、洗浄し、乾燥させる。
【0049】
したがって、本発明の連続的方法で得られるトラゾドン塩基(IV)は、トラゾドン塩基が一般的なバッチ法で得られる場合に必要とされるさらなる精製工程を必要とせずに、トラゾドン塩酸塩(V)への直接転化を可能にする品質を特徴とする。
【0050】
トラゾドンHCl(V)は、高純度で、アルキル化物質のレベルが極めて低い状態で得られ、上記低レベルは15ppm以下、好ましくは10ppm以上、より好ましくは5ppm以下、より好ましくは2.5ppm以下であり、少なくともEP2178850B1に開示されたものに匹敵し、さらなる精製を必要としない。
【0051】
したがって、本方法の工程(i)によれば、s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)は、0.3M~1.5M、好ましくは0.5M~1.0M、さらにより好ましくは0.6M~0.8Mの濃度でアルカリ性水溶液に溶解される。
【0052】
好ましい実施形態では、上記s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)は、約0.6~0.8Mの濃度で上記アルカリ性水溶液に溶解される。
【0053】
好ましくは、上記s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)の溶液は、(iii)において、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)1モルあたり0.8~2.0モル、より好ましくはN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)1モルあたり1.0~1.6モル、さらにより好ましくはN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)1モルあたり1.2~1.4モルのモル比を達成するために調製される。
【0054】
好ましい実施形態では、上記s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)は、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)1モル当たり約1モルのモル比で添加される。
【0055】
有利には、s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)の水溶液は、少なくとも1つの無機塩基、少なくとも1つの有機塩基、およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの塩基性化合物を含む。
【0056】
好ましくは、無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0057】
好ましくは、有機塩基は、脂肪族および芳香族アミン、好ましくはトリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0058】
好ましくは、塩基性化合物は、無機塩基であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0059】
より好ましい実施形態において、塩基性化合物は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである。
【0060】
好ましくは、塩基性化合物は、s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)1モル当たり1.0~1.5モル、より好ましくはs-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)1モル当たり1.0~1.3モルのモル比で添加される。
【0061】
好ましい実施形態では、塩基性化合物は、s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)1モル当たり約1モルのモル比で添加される。
【0062】
好ましくは、塩基性化合物は、0.3M~3.0M、好ましくは0.5M~1.5M、さらにより好ましくは0.6M~1.0Mの濃度で上記水溶液に溶解される。
好ましい実施形態では、塩基性化合物は、約0.6~0.8Mの濃度で上記水溶液に溶解される。
【0063】
本方法のステップ(ii)によれば、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)は、0.3M~1.5M、好ましくは0.5M~1.0Mの濃度で少なくとも1つの有機溶媒に溶解される。
【0064】
好ましい実施形態では、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)は、約0.6~0.8Mの濃度で上記少なくとも1つの有機溶媒に溶解される。
【0065】
有利には、ステップ(ii)における上記有機溶媒は、極性非プロトン性溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン;無極性溶媒、好ましくはトルエン、ジエチルエーテル;極性プロトン性溶媒、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ベンジルアルコール;およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0066】
好ましくは、有機溶媒は、イソブチルアルコール、イソプロパノール、ジオキサン、アセトニトリル、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0067】
好ましい実施形態において、有機溶媒は、イソブチルアルコールおよびアセトニトリルから選択される。
【0068】
反応容器中の有機溶液およびアルカリ性水溶液の比は、可変であり、約2:1~約1:2の範囲であってよい。
【0069】
有利には、アルカリ性水溶液および有機溶液は、少なくとも70秒、好ましくは70~300秒、より好ましくは100~150秒の滞留時間で、流動反応容器中に連続的に供給され、混合される。
【0070】
好ましい実施形態において、アルカリ性水溶液および有機溶液は、約110~130秒の滞留時間で、流動反応容器中に連続的に供給され、混合される。
【0071】
有利には、アルカリ性水溶液および有機溶液は、少なくとも90℃、好ましくは90℃~170℃、より好ましくは130℃~160℃、さらにより好ましくは135℃~155℃の温度で、流動反応容器中に連続的に供給され、混合される。
【0072】
好ましい実施形態において、アルカリ性水溶液および有機溶液は、少なくとも130℃の温度で、流動反応容器中に連続的に供給され、混合される。
【0073】
別の好ましい実施形態では、アルカリ性水溶液および有機溶液は、160℃以下の温度で、流動反応容器中に連続的に供給され、混合される。
【0074】
例えば、化合物(II)と化合物(III)との比が1:1であるとき、反応が125℃で実施される場合には、最適な転化収率を得るために約290秒の滞留時間が必要であり、一方、反応が150℃で実施される場合には、約115秒の滞留時間で最適な転化収率が得られる。
【0075】
本明細書を発明の実施例と共に読むことによって、当業者は転化率をさらに改善するために、温度および滞留時間などの反応条件をどのように適応させるかを理解することができるであろう。
【0076】
有利には、本発明のトラゾドン塩基(IV)の調製のための連続的な方法は、HPLCで測定して、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは90%の転化収率をもたらす。さらにより好ましくは、転化収率は、95%、97%、98%以上であるか、または定量的である。
【0077】
有利には、本発明の連続的方法が少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも85%の収率でトラゾドン塩基(IV)をもたらす。
【0078】
有利には、本発明の連続的方法は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは96%、97%、98%に等しいかまたはそれ以上の純度で、HPLCによって測定された純度を有するトラゾドン塩基(IV)をもたらし、薬学的に活性な成分へのその直接転化に適している。
【0079】
好ましい実施形態によれば、本発明の連続的方法は、HPLCによって少なくとも99%の純度を有するトラゾドン塩基(IV)をもたらす。
【0080】
本発明の方法で得られるトラゾドン塩酸塩(V)は、上記で定義したようなアルキル化物質の含有量が低く、好ましくは2.5ppm未満であることを特徴とし、したがって、USP 40 NF 35(2017年12月1日)に規定されている薬局方の要件に適合する。
【0081】
有利には、本発明の方法のステップ(v)が、非常に効率的であり、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%の収率でトラゾドン塩酸塩(V)をもたらす。
【0082】
好ましい実施形態において、本発明の方法のステップ(v)は、約90%の収率でトラゾドン塩酸塩(V)をもたらす。
【0083】
有利には、本発明の方法のステップ(v)は、HPLCによって測定して少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の純度を有するトラゾドン塩酸塩(V)をもたらす。さらにより好ましくは、純度は96%、97%、98%、99%以上である。
【0084】
好ましい実施形態によれば、本発明の連続的方法は、HPLCにより少なくとも99.5%の純度を有するトラゾドン塩酸塩(V)をもたらす。
【化7】
【0085】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、上記の反応スキーム(ステップ1、スキーム4)に従って、トラゾドンの合成における重要な中間体であるN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)の調製のための連続的な方法を先行してさらに含み、その方法は以下のステップを含むかまたは以下のステップからなる:
(a)m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および少なくとも1つの塩基性化合物の水溶液を流動反応容器の第1のチャネルに連続的に供給して、アルカリ性水相を提供すること;
(b)1-ブロモ-3-クロロプロパンの有機相を、任意に少なくとも1つの有機溶媒と組み合わせて、上記流動反応容器の第2のチャネルに連続的に供給すること;
(c)少なくとも70℃の温度で、好ましくは180秒を超えずかつ少なくとも40秒の滞留時間で、上記流動反応容器中でアルカリ性水相および有機相を連続的に混合することによって、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)を1-ブロモ-3-クロロプロパンと連続的に反応させること;および
(d)反応混合物を上記流動反応容器から連続的に取り出し、得られた生成物N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン塩基(II)を単離すること。
【0086】
生成物は、以下の手順で単離することができる:有機相および水相を分離し、水を有機相に添加する。混合物のpHを酸で中和する。水相を排出し、真空下で有機溶媒を蒸発させて、化合物(II)を油状残渣として得る。
【0087】
得られたN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン塩基(II)は、その後のトラゾドン塩基(IV)の調製のために、それを塩酸塩形態に転化する必要なしに、そのまま使用される(スキーム1、ステップ2)。
【化8】
【0088】
この好ましい実施形態によれば、この連続的方法は、上記で定義したように、ステップ(i)~(iv)および任意選択でステップ(v)を含み、その結果、上記のスキーム1に従って実施される、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および1-ブロモ-3-クロロプロパンから出発する、トラゾドン塩基(IV)および/またはトラゾドン塩酸塩(V)の調製のための完全な方法は、以下の段階を含む:
(a)m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および少なくとも1つの塩基性化合物の水溶液を流動反応容器の第1のチャネルに連続的に供給して、アルカリ性水相を提供すること;
(b)1-ブロモ-3-クロロプロパンの有機相を、任意に少なくとも1つの有機溶媒と組み合わせて、上記流動反応容器の第2のチャネルに連続的に供給すること;
(c)少なくとも70℃の温度で、好ましくは180秒を超えずかつ少なくとも40秒の滞留時間で、上記流動反応容器中でアルカリ性水相および有機相を連続的に混合することによって、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)を1-ブロモ-3-クロロプロパンと連続的に反応させること;および
(d)上記反応混合物を上記流動反応容器から連続的に取り出し、得られた生成物N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)を単離すること、ここで、これはさらに少なくとも1つの有機溶媒と混合される;
(i)s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)及び少なくとも1種の塩基性化合物の水溶液を流動反応容器の第1のチャネルに連続的に供給すること;
(ii)N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)及び少なくとも1種の有機溶媒の有機溶液を上記流動反応容器の第2のチャネルに連続的に供給すること;
(iii)少なくとも90℃の温度で、好ましくは180秒を超えずかつ少なくとも70秒の滞留時間で、上記アルカリ性水溶液および上記有機溶液を上記流動反応容器中で連続的に混合することによって、s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)をN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)と連続的に反応させること;および
(iv)上記反応混合物を流動反応容器から連続的に取り出し、得られた製品トラゾドン塩基(IV)を単離し、これは好ましくは、ステップ(v)に従い、その対応する塩であるトラゾドン塩酸塩(V)に転化される(ステップ3、スキーム1)、ここで、試薬、反応容器および有機溶媒はステップ(i)~(iv)および(v)について上記で定義したとおりである。
【0089】
有利には、本方法のステップ(a)において、水溶液は、少なくとも1つの無機塩基、少なくとも1つの有機塩基、およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの塩基性化合物を含む。
【0090】
好ましくは、無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0091】
好ましくは、有機塩基は、好ましくはトリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、キノリン、ピリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0092】
好ましくは、上記塩基性化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチレン、およびそれらの混合物から成るグループから選択される。
【0093】
好ましい実施形態では、塩基性化合物は水酸化ナトリウムである。
【0094】
好ましくは、塩基性化合物は、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)1モルあたり0.8~3.0モル、より好ましくはm-クロロフェニル-ピペラジン(I)1モルあたり0.9~2.0モル、さらに好ましくはm-クロロフェニル-ピペラジン(I)1モルあたり1.0~1.5モルのモル比で添加される。
【0095】
好ましい実施形態では、塩基性化合物は、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)1モル当たり約1.1モルのモル比で添加される。
【0096】
好ましくは、塩基性化合物は、1.0M~11.0M、好ましくは1.3M~10.5M、さらにより好ましくは8.0M~10.0Mの濃度で上記水溶液に溶解される。
【0097】
好ましい実施形態では、塩基性化合物は、約9.5Mの濃度で上記水溶液に溶解される。
【0098】
上記ステップ(b)において、有利には、1-ブロモ-3-クロロプロパンは、m-クロロペニール-ピペラジン(I)1モルあたり1.0~5.0モル、より望ましくはm-クロロペニール-ピペラジン(I)1モルあたり1.5~4.0モル、より望ましくはm-クロロペニール-ピペラジン(I)1モルあたり2.5~3.5モルのモル比で添加される。
【0099】
好ましい実施形態では、1-ブロモ-3-クロロプロパンは、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)1モル当たり約3.0~約4.0モルを含むモル比で添加される。
【0100】
この点に関して、本出願人は、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)1モル当たりのアルキル化剤の最適モル比が約1.5~4.0モル、さらにより好ましくは2.5~3.5モルの範囲であると定義した。
【0101】
有利には、本方法のステップ(b)で定義されるように、有機相中の1-ブロモ-3-クロロプロパンに任意に組み合わされた有機溶媒は、有機相の総重量に対して10重量%~20重量%の量で使用される。
【0102】
好ましい実施形態では、有機溶媒は、有機相の総重量に対して15重量%~20重量%の量で使用される。
【0103】
有利には、有機溶媒は、極性非プロトン性溶媒、好ましくはN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル;および無極性溶媒、好ましくはトルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル;およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0104】
好ましい実施形態では、有機溶媒は、N-メチルピロリドンである。
【0105】
有利には、アルカリ性水相および有機相は、少なくとも40秒、好ましくは50~120秒、より好ましくは55~90秒の滞留時間で、流動反応容器中に連続的に供給され、混合される。
【0106】
好ましい実施形態では、アルカリ性水相および有機相は、約60秒の滞留時間で、流動反応容器中に連続的に供給され、混合される。
【0107】
有利には、アルカリ性水相および有機相は、少なくとも70℃、好ましくは80℃~100℃、より好ましくは85℃~95℃の温度で、流動反応容器中に連続的に供給され、混合される。
【0108】
好ましい実施形態において、アルカリ性水相および有機相は、約88℃の温度で、流動反応容器の流体モジュールに連続的に供給され、混合される。
【0109】
上記で定義したステップ(d)によれば、有利には、本発明の連続的方法で得られ、上記のように単離されたN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)はそのままで、そのHCl塩への事前転化なしに、トラゾドンの調製のための次の連続的方法で使用することができる。
【0110】
これは、反応の生成物であるN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)自体がアルキル化剤であり、取り扱いを制限することがより安全であり、毒性物質の取り扱いのための常により制限的な工業規格へのより良好なコンプライアンスを可能にするので、さらなる利点を表す。
【0111】
有利には、本発明の連続的方法は、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)を、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%の収率でもたらす。
【0112】
好ましい実施形態では、本発明の連続的方法は、約85%の収率でN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)をもたらす。
【0113】
有利には、本発明の連続的方法は、HPLC法によって測定して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%の純度を有するN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)をもたらす。
【0114】
好ましい実施形態では、本発明の連続的方法は、HPLC法によって測定して95%の純度を有するN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)をもたらす。
【0115】
それにもかかわらず、N-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)は、例えば米国特許第5,900,485号に記載されているように、一般的な「バッチ」プロセスによって製造することができ、または商業的に入手することができる。
【0116】
したがって、さらなる実施形態によれば、本発明による方法は、m-クロロフェニル-ピペラジン(I)および1-ブロモ-3-クロロプロパンをバッチで反応させてN-(3-クロロフェニル)-N’-(3-クロロプロピル)-ピペラジン(II)を提供するバッチプロセスを含み、これは、単離され、好ましくはHClの添加によりその塩に転化され、次いでステップ(i)~(iv)および好ましくは(i)~(v)に従って連続的反応に供給するために使用される。
【0117】
有利には、本発明は、連続的方法のための任意の適切な設備を使用して実施することができる。
【0118】
スキーム1、ステップ1および2に示される連続的反応が別々に実施され、
図3に開示される特定の実施形態に記載される流動反応容器システムは、マイクロスケールフローリアクター、好ましくはマイクロチップフローリアクター、マイクロ流体フローリアクター、コイル型フローリアクター、管状フローリアクター、プレートリアクター、充填床リアクター、流動床リアクター、固定床リアクターであるか、またはメソスケールフローリアクターもしくは大規模フローリアクターである。
【0119】
流量反応容器システムは、反応物質の相溶性、条件および生産規模を考慮して、有機転化を実行するのに適したものを選択することを可能にする材料(ガラス、シリコン、ポリマー、金属、セラミック)のアレイから製造することができる。
【0120】
好ましくは、流動反応容器は、マイクロチップフローリアクター、マイクロ流体フローリアクター、コイル型フローリアクター、管状フローリアクター、プレートリアクター、充填床リアクター、流動床リアクター、および固定床リアクターを含む群から選択されるマイクロスケール、メソスケール、または大規模フローリアクターである。
【0121】
さらにより好ましくは、反応容器は、マイクロ流体フローリアクター、チップメソスケールフローリアクター、コイル型メソスケールフローリアクター、大規模フローリアクターおよびそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0122】
好ましい実施形態によれば、ステップ1は、セラミックプレート連続流リアクター中で実施され、ステップ2は、チップまたはチップとコイルとを組み合わせたタイプのマイクロまたはメソスケール連続流リアクター中で実施される。
【実施例】
【0123】
ステップ1の概要:
m-クロロフェニルピペラジン(I)と1-ブロモ-3-クロロプロパンを、
図1に概略的に示すように流動反応容器中で連続的に反応させて、トラゾドンの合成における重要な中間体であるN-クロロフェニル-N’-プロピル-ピペラジン(II)を得た。
【0124】
化合物(I)(チャネル2)およびアルカリ性水溶液(チャネル3)を使用して、流体モジュール1(
図1においてFM1として表される。)に供給した。1-ブロモ-3-クロロプロパン(化合物(I)に対して3.34当量)、または1-ブロモ-3-クロロプロパン(化合物(I)に対して3.34当量)およびN-メチルピロリドン(NMP)(チャネル1)の溶液を使用して、流体モジュール2に供給した(FM2として
図1に示す。)。
【0125】
両方の溶液を加熱し、次いで、同じ温度で、続くモジュール(
図1にFM3として示す。)中で2つの相を連続的に混合することによって、化合物を反応させた。
【0126】
収集後、化合物(II)を以下の仕上げによって有機相から単離した:有機相と水相を分離し、水を有機相に添加した。混合物のpHを酸で中和した。水相を排出し、真空下で有機溶媒を蒸発させて、化合物(II)を油状残渣として得た。
【0127】
例1-3:
ステップ1の一般的な説明で報告した手順を使用して、異なるアルカリ性水溶液を使用して反応を行った。使用した反応容器は、6つの流体モジュール(それぞれ9mlの内部容積)、2つの予熱モジュール、およびクエンチング流体モジュールを装備したコーニングのアドバンスド・フロー(商標)反応容器(AFR)G1であった。
【0128】
以下の表1は、使用した反応条件および得られた結果を示す。
【表1】
aHPLCで測定した。
bTEA:トリエチルアミン。
【0129】
表1は、全ての試験条件が94%を超える純度で65%以上の収率を得ることを可能にしたことを示す。
【0130】
例4-6:
ステップ1の一般的な説明において報告した手順を使用して、異なる平均温度で反応を行った(表2)。全ての反応は、水酸化ナトリウムの1.7M溶液(m-クロロフェニルピペラジン(I)に対して1.1当量)を用いて行った。使用した反応器は、6つの流体モジュール(それぞれ9mlの内部容積)、2つの予熱モジュール、およびクエンチング流体モジュールを装備したコーニングのアドバンスド・フロー(商標)反応容器(AFR)G1であった。
【表2】
aHPLCで測定した。
【0131】
上記表2にまとめた結果から、温度を上昇させると収率が上昇するが、主な副生物の量が多くなり、純度が減少することが明らかである。
【0132】
例7-9:
ステップ1の一般的な説明において報告した手順を用いて、水溶液中の塩基の濃度を9.5Mに増加させ、NMPの%を変化させた反応を行った(表3)。使用した反応器は、6つの流体モジュール(それぞれ9mlの内部容積)、2つの予熱モジュール、およびクエンチング流体モジュールを装備したコーニングのアドバンスド・フロー(商標)反応容器(AFR)G1であった。
【0133】
水酸化ナトリウムの9.5M溶液(m-クロロフェニルピペラジン(I)に対して1.1当量)を用いて反応を行った。
【表3】
bHPLCで測定した。
【0134】
表3にまとめた結果は、すべての場合において、84%以上の収率および約95%の純度を有する化合物(II)を得ることが可能であったことを示す。
【0135】
ステップ2の概要:
化合物(II)およびs-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)を、
図2に概略的に示すように流動反応容器中で連続的に反応させて、トラゾドン塩基(IV)を得た。
【0136】
s-トリアゾロ-[4,3-a]-ピリジン-3-オン(III)のアルカリ性水溶液を使用して、流動反応容器の第1の流体モジュール(
図2にFM1として示す。)のチャネル1に供給した。化合物(II)の有機溶液を使用して、流動反応容器の第2の流体モジュールのチャネル2に供給した(
図2にFM2として示す。)。
【0137】
両方の溶液を加熱し、次いで、同じ温度で、流動反応容器の第3の流体モジュール(
図2にFM3として示される。)中で2つの溶液を連続的に混合することによって、化合物を反応させた。
【0138】
収集後、トラゾドン塩基(IV)への転化を決定するために、混合物を、米国薬局方(Pharmacopoeia USP)40 NF 35(2017年12月1日)に記載のHPLC法によって分析し、トラゾドン塩基(IV)に関連するピークを、純粋なトラゾドン塩基(IV)の標準溶液の滴定曲線のピークに対して評価した。
【0139】
例10-15:
ステップ2の一般的な説明において報告した手順を用いて、化合物(III)およびNaOH(1当量)の0.6M水溶液をイソブタノール中の化合物(II)の0.6M溶液と混合し、滞留時間および平均温度を変化させて反応を行った(表4)。使用した反応容器は、ウルトラフレックス ラボトリックス(登録商標)スタートシステム(UltraFlex Labtrix Start system)、PTFE反応容器ホルダーを有するデバイスタイプ3227、ETFE逆止弁およびFEP管であった。
【0140】
全ての実験は、1:1の化合物(III)/化合物(II)モル比で行った。
【表4】
a転化、HPLCで測定した。
【0141】
表4は、全ての試験条件が80%以上の転化率を得ることを可能にしたことを示す。
【0142】
例16-21:
ステップ2の一般的な説明において報告した手順を使用して、0.6Mの化合物(III)および水酸化ナトリウム(1.25当量)の水溶液を、イソブタノール中の化合物(II)の0.6M溶液と混合し、滞留時間、平均温度、ならびに異なる化合物(III)/化合物(II)モル比を得るために両方の溶液の流速を変化させる反応を行った(表5)。使用した反応容器は、ウルトラフレックス ラボトリックス(登録商標)スタートシステム、PTFE反応容器ホルダーを有するデバイスタイプ3227、ETFE逆止弁およびFEP管であった。
【表5】
a転化、HPLCで測定した。
【0143】
2:1~1:2の水相/有機相比を得るために、1:1のモル比を維持し、両方の溶液の流速を変化させて、いくつかの試験も行った。全ての場合において、得られた結果は、(HPLCによる)転化率に関して同等であった。
【0144】
例22-25:
ステップ2の一般的な説明において報告した手順を使用して、有機溶媒としてアセトニトリルを使用する反応を行った。
【0145】
以下の表6は、化合物(III)の0.6Mアルカリ水溶液をアセトニトリル中の化合物(II)(化合物(III)/化合物(II)のモル比1:1)の0.6M溶液と117秒の滞留時間で混合し、平均温度および使用した塩基(表6)を変化させて反応を行った結果を示す。使用した反応容器は、ウルトラフレックス ラボトリックス(登録商標)スタートシステム、PTFE反応容器ホルダーを有するデバイスタイプ3227、ETFE逆止弁およびFEP管であった。
【表6】
a転化、HPLCで測定した。
【0146】
例26-29
アセトニトリル中で行われる反応の場合にも、2:1~1:2の水相/有機相比を得るために、モル比1:1を維持し、両溶液の濃度および流量を変化させて、いくつかの試験を行った。全ての場合において、得られた結果は、(HPLCで測定した)転化率に関して同等であった。
【0147】
さらに、異なる濃度の化合物(III)の水溶液およびNaOHまたはKOHをアセトニトリル中の化合物(II)の0.6M溶液と117秒の滞留時間で混合し、異なる化合物(III)/化合物(II)のモル比を得るために平均温度ならびに流速を変化させて反応を行った(表7)。使用した反応容器は、ウルトラフレックス ラボトリックス(登録商標)スタートシステム、PTFE反応容器ホルダーを有するデバイスタイプ3227、ETFE逆止弁およびFEP管であった。
【表7】
a化合物IIIに関する。
b転化、HPLCで測定した。
【0148】
例30
ステップ2の一般的な説明において報告した手順を用いて、化合物(III)/化合物(II)のモル比を1:1に維持しながら、化合物(III)および水酸化ナトリウム(1当量)の0.6M水溶液を、イソブタノール中、145℃の温度および120秒の滞留時間で、化合物(III)/化合物(II)の0.6M溶液と混合する反応を行った。反応は、電気的に加熱されたコイル(PTFE-ポリテトラフルオロエチレン)反応容器と組み合わされた、試薬の予備加熱および予備混合のための2チャネルホウ珪酸ガラス静的ミキサーチップ反応容器に試薬を送達する2つの高圧ポンプを装備したフロー・シン・ユニクシス・システム(Flow Syn UNIQSIS system)中で実施した。
【0149】
収集した300ml容量は、仕上げ後にトラゾドン塩基(IV)を与えた。簡単に述べると、相を分離し、有機物を濃縮してオレンジ色の油状残渣を得、これをイソブタノールで希釈した。
【0150】
トラゾドン塩基(IV)を、冷却後の沈殿によって単離し(黄色がかった固体、収率66%)、それをHPLCによって分析した(純度: 99.4%)。
【0151】
ステップ3の概要:
ステップ2に記載したように調製したトラゾドン塩基(IV)をアセトンに溶解した。水を加え、混合物を撹拌しながら約50℃に加熱した。次いで、塩酸(12 N)を添加し、温度を50℃未満、pH=3~4まで維持した。
【0152】
得られた溶液をゆっくり冷却した。5℃の温度に達したら、冷却された懸濁液をブフナーフィルターで濾過し、アセトンで2回洗浄し、溶媒を真空下60℃で除去した。
【0153】
得られたトラゾドン塩酸塩(V)をHPLCで分析した。
【0154】
例31
ステップ3の一般的な説明において報告した手順を用いて、例30で得られたトラゾドン塩基(IV)の塩酸塩(20g)を調製した。トラゾドン塩酸塩(V)をオフホワイトの固体として90%の収率で単離し、それをHPLC(純度99.8%)によって分析した。