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特許7301866発光装置の構成部品のためのフルオロポリマー組成物
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  • 特許-発光装置の構成部品のためのフルオロポリマー組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】発光装置の構成部品のためのフルオロポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20230626BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230626BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230626BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20230626BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20230626BHJP
【FI】
C08L27/18
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/30
H01L33/56
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020548910
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056196
(87)【国際公開番号】W WO2019175197
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】18162112.9
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コライアンナ, パスクア
(72)【発明者】
【氏名】ベサーナ, ジャンバッティスタ
(72)【発明者】
【氏名】カニル, ジョルジョ
(72)【発明者】
【氏名】アヴァタネオ, マルコ
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-508559(JP,A)
【文献】国際公開第93/016126(WO,A1)
【文献】特表2011-530834(JP,A)
【文献】特表2017-503896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
B29C45/00- 45/84
H01L33/00- 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー組成物[組成物(C)]であって:
(i)主要量の少なくとも1種の溶融加工可能なパーフルオロ化テトラフルオロエチレンコポリマー[ポリマー(F)]と、
(ii)組成物(C)の総重量に対して1~50重量%未満の、二酸化チタン(TiO)、二硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)及び硫酸バリウム(BaSO)から成る群から選択される少なくとも1種の顔料[顔料(P)]と、
(iii)組成物(C)の総重量に対して0.5~20重量%の、5.0m/gを超えるB.E.T.表面積を有する、少なくとも1種のPTFE微粉末[粉末(PTFE)]と;任意選択的に
(iii)顔料(P)とは異なる、少なくとも1種の強化充填材[充填材(F)]と、を含むフルオロポリマー組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
ポリマー(F)は、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)に由来する繰り返し単位と、任意選択的に少なくとも1つのCF=CFORパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキルである)に由来する繰り返し単位とを含むTFEコポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
ポリマー(F)は、少なくとも1つのCF=CFORパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキルである)に由来する繰り返し単位を含む、及び任意選択的に更に少なくとも1つのC~Cパーフルオロオレフィンに由来する繰り返し単位を含むTFEコポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項4】
ポリマー(F)は:
(a)3~13重量%パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)に由来する繰り返し単位;
(b)0~6重量%の、PMVEとは異なり、且つ前記PAVE、及びパーフルオロオキシアルキルビニルエーテルから成る群から選択される、1種又は2種以上のフッ素化コモノマーに由来する繰り返し単位
(c)繰り返し単位(a)、(b)及び(c)の百分率の合計が100重量%に等しいような量での、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位から本質的に成るTFE/PMVEコポリマーである、請求項3に記載の組成物(C)。
【請求項5】
ポリマー(F)は:
(a)0.5~5重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルに由来する繰り返し単位;
(b)0.4~4.5重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルとは異なり、且つ前記PAVE、及びパーフルオロオキシアルキルビニルエーテルから成る群から選択される1種又は2種以上のフッ素化コモノマーに由来する繰り返し単位;
(c)0~6重量%の、少なくとも1種のC~Cパーフルオロオレフィンに由来する繰り返し単位;及び
(d)繰り返し単位(a)、(b)、(c)及び(d)の百分率の合計が100重量%に等しいような量にある、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位から本質的に成るTFEコポリマーである、請求項3に記載の組成物(C)。
【請求項6】
ポリマー(F)は;
(a)0.5~8重量%パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)に由来する繰り返し単位;
(b)繰り返し単位(a)及び(b)の百分率の合計が100重量%に等しいような量にある、TFE由来の繰り返し単位から本質的に成るTFEコポリマーである、請求項3に記載の組成物(C)。
【請求項7】
顔料(P)は、硫酸バリウム(BaSO)である、請求項1~6の何れか一項に記載の組成物(C)。
【請求項8】
組成物(C)中の顔料(P)の重量パーセントは、組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも3重量%であり、及び/又は組成物(C)の総重量を基準として、最大で45重量%である、請求項1~7の何れか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
粉末(PTFE)は、6.0m2/gを超えるB.E.T.表面積を有する、及び/又は380未満のバルク密度を有する、請求項1~8の何れか一項に記載の組成物(C)。
【請求項10】
組成物(C)中の粉末(PTFE)の重量パーセントは、組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも1重量%であり、及び/又は組成物(C)の総重量を基準として、最大で18重量%である、請求項1~9の何れか一項に記載の組成物(C)。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載のフルオロポリマー組成物(C)を含む、少なくとも1つの構成部品を含む物品。
【請求項12】
自動車のキーレスエントリーシステム、冷蔵庫の照明、液晶ディスプレイ装置、自動車フロントパネル照明装置、電気スタンド、ヘッドライト、家庭用電化製品のインジケータ及び屋外ディスプレイ装置、並びに発光ダイオード(LED)デバイスとして一般に知られる、電磁放射線を放射する、及び/又は伝送する少なくとも1個の半導体チップを含む光電子デバイスから成る群から選択される発光装置である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
UV領域内で発光する接合部を有する発光ダイオードデバイスである、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
請求項11~13の何れか一項に記載の物品を製造する方法であって、圧縮成形、押出成形、射出成形又は他の溶融加工技術を含む標準技術によって、請求項1~10の何れか一項に記載の組成物(C)を加工する工程を含む方法。
【請求項15】
組成物(C)を射出成形する工程を含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
射出成形する工程は、ラム又はスクリュー式プランジャーを使用して溶融組成物(C)を金型キャビティ内へ押し込み、金型のキャビティ内において、組成物(C)は、金型の輪郭に従った形状へ固化する、請求項15に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月15日出願の欧州特許出願公開第18162112.9号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、所定の熱加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマー、所定量の特定のPTFE微粉末及び/白色顔料を含むフルオロポリマー組成物、造形品を製造するためのこのフルオロポリマー組成物の使用並びに発光装置の構成部品、例えばLEDアセンブリを含むフルオロポリマー組成物からの造形品に関する。
【背景技術】
【0003】
ハウジング、リフレクタ、リフレクタカップ、ヒートシンクスラグ等の発光ダイオード(LED)構成部品は、(LEDアセンブリ製造中の)高温での加工及びはんだ付け条件後、並びに連続LED操作の熱及び放射線への長期曝露等の、熱及び放射線への長期曝露後の両方で良好な不透過性及び並優れた反射特性を保証できるように、素晴らしい色と改良された物理的特性との特に要求の厳しい組み合わせを必要とする。これは、特に、パッケージにおける中央導熱スラグ(central heat-conducting slug)の使用を必要とする、より高い伝導力消失に適応する新世代のLEDアセンブリについて特に当てはまる。上述の構成部品を製造するためにはセラミックを使用できるが、それらに固有のコスト及び加工技術が極めて難しいため、代替材料が必要とされてきた。そのため、この目的に向けてプラスチックが幅広く研究且つ開発されてきた。
【0004】
発光ダイオード(LED)のハウジングは、慣習的に、ハウジングの可視光反射率を増加させるために二酸化チタンが添加され、機械的性能及び熱抵抗を改善するために充填材が組み込まれている、半芳香族ポリフタルアミド(PPA)等のエンジニアリングプラスチックから構築される。しかしながら、PPAは、場合により経時的使用で変色(黄変)現象を受け易く、全体的なLED効率の低下及び発色の変化をもたらすことが知られている。
【0005】
そこでフッ素材料をベースとする化合物が、特にポリアミド構造物よりも向上したフッ素材料の熱安定性/化学的不活性を活用して、この使用分野において提案されてきた。
【0006】
従って、2010年2月11日出願の米国特許出願公開第2010032702号明細書(DUPONT)は、フルオロポリマー及び白色顔料を含む発光ダイオードのハウジングを開示している。この文献において提供されたLEDハウジングに有用なフルオロポリマーは、溶融押出可能且つ射出成形可能であり、約1.5~約40g/10分のメルトフローレートを有し、特にDuPontによって商標TEFLON(登録商標)PFAで販売されている、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)とのコポリマーであるパーフルオロアルコキシフルオロカーボン樹脂(PFA)、PAVEがPPVE又はPEVEであり、典型的には約2~約15重量パーセントのPAVEを含む場合を含めて、総重量パーセントの少なくとも約2重量パーセントのPAVEを有する、PFAとして一般に知られるTFE/PAVEフルオロポリマー、及びPAVEがPMVEを含み、且つ組成が約0.5~約13重量パーセントのパーフルオロ(メチルビニルエーテル)及び約0.5~約3重量パーセントのPPVEであり、合計100重量パーセントの残りがTFEである場合、MFAとして一般に知られるTFE/PAVEフルオロポリマーが挙げられる。
【0007】
2011年10月6日出願の特開2011-195710号公報(住友電気工業株式会社)は、150℃以上の高温の環境及び光に長時間曝露されても変色しにくい高い耐熱劣化性及び耐光劣化性を有し、更に加工し易い等、LEDのリフレクタ部を構成する材料として好適な特性を有する白色樹脂成形体、及びこの白色樹脂成形体から成るLEDリフレクタを開示している。白色樹脂成形体は、260℃以上の融点を有するフッ素樹脂(A)及び酸化チタン(B)から成る樹脂組成物を成形することによって得られ、LEDリフレクタは、この白色樹脂成形体から成る。基礎となる実施形態は、約25~26g/10分(372℃/5kg)のメルトフローレートを有することが知られている、HYFLON(登録商標)MFA 1041テトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテルコポリマーから製造された例示的な成形組成物を含む。
【0008】
それでも、2014年3月6日出願の米国特許出願公開第2014063819号明細書(MITSUI DU PONT FLUORCHEMICAL)は、紫外領域から可視領域までの範囲で反射率の小さい低下を有し、且つ優れた耐熱性、耐光性及び耐候性を有する発光ダイオードのためのリフレクタ、並びにこのリフレクタを有するハウジングを開示している。このリフレクタは、1μmよりも小さい平均粒子径の充填材であって、240~700nmの波長での反射率の最大値と最小値との間の差が25%以内である充填材を含有するフッ素樹脂組成物を成形することによって得られる。このフッ素樹脂は、FEP(TFE/HFPコポリマー)、PFA(TFE/PAVEコポリマー)、TFE/HFP/PAVEコポリマー(ここで、PAVEは、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)及び/又はパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)である)、MFA(TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)/PAVEコポリマー、ここで、PAVEのアルキル基は、2個以上の炭素原子を有する)、THV(TFE/HFP/フッ化ビニリデン(VF2)コポリマー)等のTFEコポリマーの中から好ましくは選択される。TFEコポリマーは、ASTM D-1238に従って前記具体的なTFEコポリマーの標準温度で測定される約0.5~100g/10分、好ましくは0.5~50g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する。
【0009】
更に、2017年9月8日出願の国際公開第2017/148905号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS IT)は、明確に定義されたTFE/MVEモノマー組成物を有する所定のテトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテルコポリマーを含み、低分子量及び白色顔料を有するフルオロポリマー組成物、造形品を製造するためのこのフルオロポリマー組成物の使用、並びに発光装置の構成部品、例えばLEDアセンブリを含むフルオロポリマー組成物からの造形品に関する。
【0010】
それでもなお、射出成形部品、特にLED構成成分の製造に使用するために好適である、特に(可視光領域及びUVスペクトル領域の両方における)より高い光の反射率、より高い白色度並びに小型パターンを複製する際の優れた成形適性を可能にする、(例えば、低下したメルトフローレートによって明らかになる)改良された処理加工性を含む、改良された性能を有するポリマー組成物に対する継続的なニーズがある。
【0011】
国際公開第2015/112751号パンフレットは、特に硫酸バリウム及び酸化チタンから製造されているものを挙げることのできる追加の充填材を含み得る、そのうちの1つは粒子の形状下で運ばれる、硬化部位を含む所定のテトラフルオロエチレンコポリマーを含むフルオロエラストマー組成物に向けられる)。
【0012】
国際公開第2011/068835号パンフレットは、燃料管理システムのフッ素ゴム成分に向けられ、前記フッ素ゴム成分は、硬化フルオロエラストマー及び非フィブリル化PTFE微粉末を含む。フッ素ゴムは、TFE系フッ素ゴムであり得る。
【0013】
国際公開第2010/019459号パンフレットは、PFA又はFEPを含み得る、及び所定の実施形態によると、明所視の反射率を増加させるために、二酸化チタンであり得る充填材を含み、更に、特にPTFE微粒子等の有機充填材を含み得るフルオロポリマー組成物から製造された発光ダイオードのハウジングに向けられる。
【0014】
国際公開第09026284号パンフレットは、可溶性フルオロポリマー及び粒子状不溶性フルオロポリマーを含む溶媒系コーティング組成物に向けられる;所定の実施形態によると、両方のフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド(THV)型ポリマーであってよいが、それらのモノマー組成のために相違する;他の実施形態によると、粒子状不溶性フルオロポリマーは、PTFE微粉末であってよい。本組成物は、追加の添加剤、特に着色剤及び/又は白色化剤等を含むことができ、例えば、LEDデバイス上で、シーラントとして作用する塗布層を形成するために特に適合する。
【発明の概要】
【0015】
本出願人は、今では、所定の熱加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマー及び所定量の特定のPTFE微粉末の組合せが、上述の要件を満たすことに、従って上記の全ての要件を満たすLED部品を送達することに特に有効であるポリマー化合物を提供するために、特定の成分(白色顔料)と配合されると特に有利であることを見出した。
【0016】
本発明は、フルオロポリマー組成物[組成物(C)]であって、
(i)主要量の少なくとも1種の溶融加工可能なパーフルオロ化テトラフルオロエチレンコポリマー[ポリマー(F)]と、
(ii)組成物(C)の総重量に対して、1~50重量%未満の、二酸化チタン(TiO)、二硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)及び硫酸バリウム(BaSO)から成る群から選択される少なくとも1種の顔料[顔料(P)]と、
(iii)組成物(C)の総重量に対して、0.5~20重量%の、5.0m/gを超えるB.E.T.表面積を有する少なくとも1種のPTFE微粉末[粉末(PTFE)]と;任意選択的に
(iii)顔料(P)とは異なる少なくとも1種の強化充填材[充填材(F)]と、を含むフルオロポリマー組成物[組成物(C)]に関する。
【0017】
本出願人は、驚くべきことに、組成物(C)が、熱加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマーと所定量の特定のPTFE微粉末との前記組合せが存在するおかげで、上述した白色顔料及びもしかすると他の成分と組み合わせた場合に、LEDのための構成部品、特にリフレクタの製造のために最適な材料として確立されるように、比較的円滑な条件(中等度の温度及び加圧)で加工される可能性並びにフルオロポリマー組成物に典型的な全ての他の望ましい特性を含む、優れた光反射率能力を有する、及び改良された加工性を有する部品を提供するために射出成形され得ることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の組成物から製造された1つ以上の構成部品を含むトップビューLEDを示す図である。
図2】本発明の組成物から製造された1つ以上の構成成分を含むパワーLEDを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本組成物(C)は、上で詳述した1種又は2種以上の溶融加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマー、より特別にはテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーと1種以上のパーフルオロ化コモノマー[コモノマー(F)]とから形成されたポリマーを含み得る。本発明のためには、「溶融加工可能な」ポリマーは、従来型の溶融押出、成形、射出又はコーティング手段によって加工できる(即ち、如何なる形状であっても造形品に加工される)ポリマーを指す。これは、一般には、加工温度でのポリマーの溶融粘度が10Pa・s以下、好ましくは10~10Pa・s以下であることを必要とする。
【0020】
好ましくは、本発明のポリマー(F)は、半結晶性である。本発明のためには、用語「半結晶性」は、ASTM D 3418に従って、示差走査熱量測定法(DSC)によって10℃/分の加熱速度で測定した場合に1J/g超の融解熱を有するポリマーを意味することが意図されている。好ましくは、本発明の半結晶性ポリマー(F)は、少なくとも15J/g、より好ましくは少なくとも25J/g、最も好ましくは少なくとも35J/gの融解熱を有する。
【0021】
ポリマー(F)は、有利には0.5重量%超、好ましくは2.0重量%超、より好ましくは少なくとも2.5重量%のコモノマー(F)を含む。
【0022】
上に詳述したポリマー(F)は、有利には最大で20重量%、好ましくは最大で15重量%、より好ましくは最大で10重量%のコモノマー(F)を含む。
【0023】
良好な結果は、少なくとも0.7重量%及び最大で10重量%のコモノマー(F)を含むポリマー(F)を用いて得られている。
【0024】
好適なコモノマー(F)としては、特に:
- C~Cパーフルオロオレフィン、例えば、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ヘキサフルオロイソブテン;
- CF=CFORパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル、例えば、-CF、-C又は-Cである);
- CF=CFOXパーフルオロオキシアルキルビニルエーテル(式中、Xは、1個以上のエーテル基を有するC~C12パーフルオロアルキルである);及び
- パーフルオロジオキソールを挙げることができる。
【0025】
好ましくは、前記コモノマー(F)は、以下のコモノマー:
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、-CF、-C及び-C、即ち、
パーフルオロメチルビニルエーテル(式CF=CFOCFのPMVE)、
パーフルオロエチルビニルエーテル(式CF=CFOCのPEVE)、
パーフルオロプロピルビニルエーテル(式CF=CFOCのPPVE)及びそれらの混合物、から選択される)のPAVE;
- 一般式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、直鎖又は分岐C~Cパーフルオロアルキル基、環状C~Cパーフルオロアルキル基、直鎖又は分岐C~Cパーフルオロオキシアルキル基であり;好ましくは、Rf2は、-CFCF(MOVE1)、-CFCFOCF(MOVE2)、又は-CF(MOVE3)である)のパーフルオロメトキシビニルエーテル(MOVE);及び
- 以下の式:
(式中、X及びXは、互いに等しいか又は異なり、F及びCF、好ましくはFから選択される)を有するパーフルオロジオキソール、から選択される。
【0026】
本発明の第1実施形態によると、ポリマー(F)は、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及び任意選択的に、上で定義した、少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含む、TFEコポリマーから成る群から選択される。
【0027】
この実施形態による好ましいポリマー(F)は、上で定義した少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテルの3~15重量%、及び任意選択的に、0.5~3重量%の範囲の量にある、テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)に由来する繰り返し単位を含む(好ましくは、実質的にそれらの繰り返し単位から成る)TFEコポリマーの中から選択される。
【0028】
表現「から本質的に成る」は、これがポリマーの本質的な特性を変更することなく、前記ポリマー中に少量含まれていることがある、末端鎖、欠陥、不規則性及びモノマー転位を考慮に入れるべくポリマーの構成成分を定義するために本発明の文脈の中で使用される。
【0029】
そのようなポリマー(F)についての記述は、特に1977年6月14日出願の米国特許第4029868号明細書(DUPONT)、1997年10月14日出願の米国特許第5677404号明細書(DUPONT)、1997年12月30日出願の米国特許第5703185号明細書(DUPONT)及び1997年11月18日出願の米国特許第5688885号明細書(DUPONT)の中に見出すことができる。
【0030】
この実施形態によるポリマー(F)は、E.I.DuPont de Nemoursから商標TEFLON(登録商標)FEP 9494、6100及び5100の下で、又はDaikinから(例えばFEP NP-101材料)、又はDyneon LLCから(FEP 6322)商業的に入手可能である。
【0031】
この実施形態内での最良の結果は、4~12重量%の範囲の量にあるテトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)並びに0.5~3重量%の量にあるパーフルオロ(エチルビニルエーテル)又はパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)の何れかに由来する繰り返し単位を含む(好ましくは、本質的にそれらの繰り返し単位から成る)TFEコポリマーを用いて得られている。
【0032】
本発明の第2実施形態によると、ポリマー(F)は、上で定義した少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位及び任意選択的に上で詳述した少なくとも1種のC~Cパーフルオロオレフィンに由来する繰り返し単位を含むTFEコポリマーから成る群から選択される。
【0033】
この第2実施形態内での良好な結果は、上で特定した1種又は2種以上のパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含むTFEコポリマーを用いた場合に得られている。特に良好な結果は、パーフルオロアルキルビニルエーテルが、PMVE、PEVE、PPVE及びそれらの混合物から成る群から選択されるTFEコポリマーを用いて達成されている。
【0034】
本発明の第2実施形態の好ましい変形によると、ポリマー(F)は、有利には、
(a)3~13重量%、好ましくは5~12重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルに由来する繰り返し単位;
(b)0~6重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルとは異なり、且つ上で詳述したパーフルオロアルキルビニルエーテル、及び上で詳述したパーフルオロオキシアルキルビニルエーテルから成る群から選択される、1種又は2種以上のフッ素化コモノマーに由来する;好ましくは、パーフルオロエチルビニルエーテル及び/又はパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する、繰り返し単位;
(c)繰り返し単位(a)、(b)及び(c)の百分率の合計が100重量%に等しいような量での、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位から本質的に成るTFE/PMVEコポリマーである。
【0035】
前記TFE/PMVEコポリマーは、一般に、ASTM D3418に従って決定される、少なくとも265℃、好ましくは少なくとも270℃、及び一般に最高で290℃、好ましくは最高で285℃の融点を有する。
【0036】
上述したように、前記TFE/PMVEコポリマーは、5kgのピストン荷重下において372℃で決定した場合に、5g/10分超のMFRを有する。MFRについての上限は、特に重要ではない。それにもかかわらず、機械的特性に有害な影響を及ぼさずに加工性を最適化するためには、上述のように測定して、800g/10分未満、有利には700g/10分未満、好ましくは600g/10分未満、より好ましくは550g/10分未満のMFRを有するTFE/PMVEコポリマーを組成物(C)に使用することが一般に好ましい。
【0037】
この変異体のTFE/PMVEコポリマーは、最も好ましくは、好ましくは本質的に:
- 3.7~5.8モル%の、パーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)に由来する繰り返し単位、
- 94.2~96.3モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位から成るコポリマーである。
【0038】
本発明のこの第2の実施形態の別の好ましい変形によると、ポリマー(F)は有利には:
(a)0.5~5重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルに由来する繰り返し単位;
(b)0.4~4.5重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルとは異なり、且つ上述したパーフルオロアルキルビニルエーテル、及び/又は上述したパーフルオロオキシアルキルビニルエーテルから成る群から選択される1種又は2種以上のフッ素化コモノマーに由来する;好ましくは、パーフルオロエチルビニルエーテル及び/又はパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する繰り返し単位;
(c)0~6重量%の、少なくとも1種のC~Cパーフルオロオレフィンに由来する、好ましくはヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位;及び
(d)繰り返し単位(a)、(b)、(c)及び(d)の百分率の合計が100重量%に等しいような量にある、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位
から本質的に成るTFEコポリマーである。
【0039】
この第2実施形態の更にまた別の変形によると、ポリマー(F)は、有利には、本質的に:
(a)0.5~8重量%、好ましくは0.7~6重量%の、PPVEに由来する繰り返し単位;
(b)繰り返し単位(a)及び(b)の百分率の合計が100重量%に等しいような量にある、TFE由来の繰り返し単位から成るTFEコポリマーである。
【0040】
本発明の組成物のための使用に好適なMFA及びPFAは、HYFLON(登録商標)PFA P及びMシリーズ並びにHYFLON(登録商標)MFA及びHYLON(登録商標)という商品名を付けて、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から商業的に入手可能である。
【0041】
上述のように、ポリマー(F)は、組成物(C)の主成分である。組成物(C)中のポリマー(F)の重量パーセントは、一般に、組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。組成物(C)におけるポリマー(F)の重量パーセントは一般に、組成物(C)の全重量を基準として、最大で95重量%、好ましくは最大で85重量%、最も好ましくは最大で80重量%であることは更に理解されている。
【0042】
素晴らしい結果は、組成物(C)が、組成物(C)の総重量を基準として、65~95重量%、好ましくは70~93重量%、より好ましくは75~92重量%の量でポリマー(F)を含む場合に得られた。
【0043】
本発明の組成物(C)に場合により使用されるのに好適である強化充填材[充填材(F)]は、当業者には周知である。
【0044】
その形態を考慮に入れると、組成物(C)の充填材(F)は、一般に、繊維充填材及び微粒子充填材から成る群から選択することができる。
【0045】
典型的には、充填材(F)は、無機充填材(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、鋼繊維、ウォラストナイト、無機ウィスカーから成る群から選択される。更により好ましくは、充填材は、マイカ、カオリン、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無機ウィスカー、ガラス繊維及びウォラストナイトから選択される。
【0046】
組成物(C)中で有利に使用できる繊維充填材の特定のクラスは、ウィスカー、即ちAl、SiC、BC、Fe及びNi等の様々な原材料から製造された単結晶繊維から成る。
【0047】
所定の実施形態によると、充填材(F)は、繊維充填材から成る群から選択することができる。繊維充填材の中ではガラス繊維が好ましく、ガラス繊維の非限定的な例としては、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるAdditives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyの5.2.3章、43~48頁に記載されている、特にチョップドストランドのA、E、C、D、S及びRガラス繊維が挙げられる。組成物(C)において有用なガラス繊維充填材は、円形横断面又は非円形横断面を有し得る。
【0048】
本発明の所定の実施形態では、充填材(F)は、ウォラストナイト充填材及びガラス繊維充填材から成る群から選択される。
【0049】
存在する場合、組成物(C)中の充填材(F)の重量パーセントは、一般に、組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、最も好ましくは少なくとも2重量%である。充填材(F)の重量パーセントは、一般に、組成物(C)の総重量を基準として、最大で30重量%、好ましくは最大で20重量%、最も好ましくは最大で15重量%である。
【0050】
それにもかかわらず、好ましい組成物(C)は、追加の充填材(F)がポリマー(F)、粉末(PTFE)及び顔料(P)の組合わせに全く添加されていない組成物である。
【0051】
上述の顔料(P)は、典型的には、限定された入射可視光を吸収し、前記入射可視光の殆どを散乱させる点において白色顔料として知られている。換言すれば、組成物(C)に使用される顔料(P)は、一般に、可視領域(波長400~800nm)の光を本質的に吸収せず、所定の場合には、それらの一部は、UV領域(波長100~400nm)の光を吸収しないが、それらはこの領域の入射放射線をできる限り完全に分散させる。
【0052】
顔料(P)は、二酸化チタン(TiO)、二硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)及び硫酸バリウム(BaSO)から成る群から選択される。
【0053】
所定の実施形態によると、顔料(P)は、二酸化チタンであってよい。好適な二酸化チタン顔料は、特にChemours、ISK等の様々な商業的供給源から供給され得る。二酸化チタン顔料の種類は、特に限定されず、アナターゼ型、ルチル型及び単斜晶型等の様々な結晶形が有利に使用可能である。しかしながら一般には、ルチル型が、そのより高い屈折指数及びその優れた光安定度のために好ましい。二酸化チタン顔料は、たとえ二酸化チタン顔料が表面処理を全く有さない実施形態がまた好適であったとしても、少なくとも1種の処理剤でその表面上を処理され得る。好ましくは、二酸化チタン顔料のAPSは、0.05μm~0.40μmの範囲である。
【0054】
硫酸バリウム(BaSO)は、本組成物が100~410nmの間の発光波長を備えるUV-LEDにおいて使用することが意図される場合に特に好ましいが、他方TiOは、その吸光率のために使用することができない。そこでUV-LED装置のために意図される好ましい組成物では、顔料(P)は、好ましくはBaSOである。
【0055】
BaSOを顔料(P)として使用する場合、本発明の組成物(C)内に組み込まれる前に、下記の前処理:
- 水溶性汚染物質を除去するために、水で洗浄する/すすぎ洗う;及び
- 例えば、80℃又はそれより高い温度で、真空下若しくは大気中又は不活性ガス(例えば、N)下で、一般に有利に広範囲の水分又は汚染物質の除去を可能にする好適な時間に渡る加熱前処理、の内の少なくとも1つを市販されているBaSOに適用することができる。
【0056】
顔料(P)は、有利には、一般に250μm未満、好ましくは100μm未満、より好ましくは5μm未満の平均粒径(APS、D50と表示する)を有する粒子の形態下で組成物(C)中に存在する。より大きいサイズは、本組成物の特性に有害な影響を及ぼし得る。
【0057】
より大きいAPSを有する顔料(P)を使用することはできるが、これらの顔料(P)は、それらが組成物(C)の他の関連特性(例えば、機械的特性)を損なう可能性がある点においてあまり有利ではない。
【0058】
好ましくは、顔料(P)のAPSは、5μm未満である。顔料(P)のAPSについての下限は、特に重要ではないが、顔料(P)は、一般に、少なくとも0.1μmのAPSを有するであろうと理解されている。
【0059】
顔料(P)の平均粒径は、一般に、レーザー回折法によって決定されるが、ここで平均粒径は、即ち、サンプルの質量の50%がそれより小さく、サンプルの質量の50%がそれより大きい粒子の径であるD50として決定される。
【0060】
顔料(P)の粒子の形状は、特に限定されず、前記粒子は、顕著に円形、フレーク状、平坦等であり得る。
【0061】
組成物(C)中の顔料(P)の重量パーセントは、組成物(C)の総重量を基準として、一般に少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも6重量%である。加えて、顔料(P)の重量パーセントは、組成物(C)の総重量を基準として、一般に50重量%未満、好ましくは最大で45重量%、より好ましくは最大で30重量%、いっそうより好ましくは最大で25重量%及び最も好ましくは最大で20重量%である。
【0062】
優れた結果は、顔料(P)が組成物(C)の総重量を基準として、3~35重量%、好ましくは5~25重量%の量で使用された場合に得られた。
【0063】
PTFE微粉末は、当技術分野において周知であり、極めて長いポリマー鎖が形成されることを防止する条件下での直接重合によって、又は非溶融流動性PTFEポリマーの照射分解によって得ることのできる非溶融流動性PTFEポリマーの低分子量誘導体である。それでも、一般に、PTFE微粉末は、非溶融流動性PTFEポリマーの照射分解の結果として生じる。
【0064】
上述したように、粉末(PTFE)にとって必須であるのは、5.0m2/gを超える、好ましくは6.0m2/gを超える、より好ましくは7.0m2/gを超えるB.E.T.表面積を有することである。
【0065】
B.E.T.表面積の決定は、窒素の沸点(-196℃)で粒子の表面に吸着した窒素の体積を測定することによって実施される。吸着した窒素の量は、BET(Brunauer、Emmett及びTeller)理論に基づく表面内の孔を含む粒子の全表面積と相関する。
【0066】
一般に、粉末(PTFE)においては、そのような高いB.E.T.表面積には、更に380未満、好ましくは350未満、より好ましくは340g/l未満のバルク密度が付随するが、バルク密度は、ASTM D1895を遡って参照しながら、ASTM D4895規格に従って測定される。
【0067】
組成上の観点からは、PTFE微粉末は、TFEのホモポリマー又はそのホモポリマーと約1重量%以下の量にある少なくとも1種の他のフッ素含有モノマーとのコポリマーであってよい。そのようなコポリマーは、「変性PTFE」として知られており、溶融加工可能なTFEコポリマーとは区別されている。変性PTFEを製造するためには、変性剤として、TFEとは異なるパー(ハロ)フルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロジオキソールを含む共重合可能なモノマーが使用されてきた。一般に、それでも、粉末(PTFE)は、TFEのホモポリマーである。
【0068】
粉末(PTFE)はまた、好ましくは少なくとも50J/gの結晶化熱を示す、高い結晶化度によって特徴付けることもできる。
【0069】
粉末(PTFE)は、有利には溶融流動性である。「溶融流動性」は、PTFEが、10kgのピストン加重下で、372℃で測定した場合に、ASTM D1238によって測定できるゼロではないメルトフローレートを有することを意味する。
【0070】
粉末(PTFE)は、一般に、そのメルトフローレート(MFR)が、溶融ポリマー上で10kg重量を使用して372℃で、ASTM D 1238に従って測定して、少なくとも0.01g/10分、好ましくは少なくとも0.1g/10分及びより好ましくは少なくとも0.5g/10分であるような溶融流動性を有する。
【0071】
粉末(PTFE)は低分子量を有するが、それでも高温まで固体である、例えば、少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも310°、一層より好ましくは少なくとも318℃の融点を有するために十分な分子量を有する。特に好ましい方法では、粉末(PTFE)の融点は、ASTM D 3418規格に従って決定した場合に、少なくとも328℃、より好ましくは少なくとも329℃である。
【0072】
粉末(PTFE)は、Algoflon(登録商標)Lの商品名の下でSolvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から入手することができる。
【0073】
顔料(PTFE)は、有利には、一般に25μm未満、好ましくは15μm未満、より好ましくは10μm未満、最も好ましくは7.5μm未満の平均粒径(APS、上述したように、D50と表示する)を有する粒子の形態下で組成物(C)中に存在する。より大きい粒径は、本組成物の特性に有害な影響を及ぼし得る。
【0074】
好ましくは、顔料(PTFE)のAPS(D50)は、約5μm又は5μm未満である。顔料(PTFE)のAPS(D50)についての下限は、特に重要ではないが、顔料(PTFE)は、少なくとも0.1μmのAPSを有するであろうと一般に理解されている。
【0075】
組成物(C)中の粉末(PTFE)の重量パーセントは、一般に、組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%である。それに加えて、粉末(PTFE)の重量パーセントは、組成物(C)の総重量を基準として、一般に最大で18重量%、好ましくは最大で17重量%、より好ましくは最大で16重量%、最も好ましくは最大で15重量%である。
【0076】
任意選択的成分
本組成物(C)は、安定化添加剤、特に離型剤、可塑剤、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤及び酸化防止剤等の追加の成分を任意選択的に含むことができる。
【0077】
物品
本発明の態様はまた、全てのそれらの他の特性を高レベルで維持しながら、先行技術の部品及び物品を上回る様々な利点、特に熱及び放射線(可視及びUVの両方)への同時曝露に対する耐性の増加を提供する、上で詳述したフルオロポリマー組成物(C)を含む少なくとも1種の構成成分を含む物品を提供する。好ましくは、この物品又は物品の一部は、上で詳述した組成物(C)から成る。
【0078】
特定の実施形態では、物品は、発光装置である。
【0079】
発光装置の非限定的な例は、自動車のキーレスエントリーシステム、冷蔵庫内の照明、液晶ディスプレイ装置、自動車フロントパネルの照明装置、電気スタンド、ヘッドライト、家庭用電気機器のインジケータ及び交通標識等の屋外ディスプレイ装置並びに発光ダイオード(LED)デバイスとして一般に知られている、電磁放射線を放射する、及び/又は伝送する、少なくとも1つの半導体チップを含む光電子デバイスである。好ましくは、発光装置は、発光ダイオード(LED)デバイスである。
【0080】
発光源としてLED装置内に含まれる接合ダイオードのエレクトロルミネセンスの特徴に依存して、本発明のLEDは、特に可視領域又はUV領域内で発光することができる。
【0081】
可視領域内で発光するLEDデバイスは、典型的には可視スペクトル領域内の様々な波長で発光する1つ又は2つ以上の接合部を有する。赤色LED接合部は620~645nmの間で発光することができ;赤橙色LED接合部は610~620nmの間で発光することができ、緑色LED接合部は520~550nmの間で発光することができ、シアンLED接合部は490~520nmの間で発光することができ、そして青色LED接合部は460~490nmの間で発光することができる。白色光を提供するためには、それらの任意の組合せを使用することができる;代替法として、使用する蛍光体のストークスシフトを通して単色光を青色又はUV-LEDから広域スペクトル白色光へ変換させるために、蛍光体を単色LED接合部と組み合わせて使用することができる。
【0082】
UV領域内で発光する接合部を有するLEDデバイスは、波長315~400nmの領域内で紫外線A(又はUVA)、波長280~315nmの領域内で紫外線B(又はUVB)及び波長100~280nmの領域内で紫外線C(又はUVC)を発光することができる。
【0083】
UV領域内で発光するLEDデバイスは、例えば、デジタル印刷用途及び不活性UV硬化環境におけるUV硬化のためだけではなく、例えば歯科分野における他の汎用硬化系のため、又はマニキュアやネイルラッカーのためにさえも使用するために設計されている;更に、UV-LED(特に、UV-C LED)は、消毒(例えば、空気又は水性媒体を消毒するため)及び液体クロマトグラフィー機器における重水素ランプに取って代わる線光源として使用するためにも適合する;更に、UV-LEDは、例えば、偽造紙幣検出のため、身分証明書/パスポートを確認するため、又は他の品物を偽造品に対して規制するためのセンサ/検出器として使用することができる。
【0084】
構造的に、LEDは、好ましくはトップビューLED、サイドビューLED及びパワーLEDの群から選ばれる。トップビュー及びサイドビューLEDは、通常、一般にリフレクタとしての役割を果たす基礎ハウジングを含み、その上、トップビュー及びサイドビューLEDは、通常、如何なるヒートシンクスラグも含まない。他方、パワーLEDは、通常、一般にリフレクタとしての役割を果たすヒートシンクスラグを含む。パワーLEDは、通常、ヒートシンクスラグとは異なる部品である基礎ハウジングを更に含む。
【0085】
トップビューLEDは、特に計器パネルディスプレイ、ストップランプ及びウィンカー等の自動車照明用途に使用される。サイドビューLEDは、特に、例えば携帯電話及びPDA等のモバイル機器用途向けに使用される。パワーLEDは、特に懐中電灯、自動車日中走行用ライト、標識において、且つLCDディスプレイ及びTVのためのバックライトとして使用される。
【0086】
本発明によるLEDは、上に記載した組成物(C)を含む少なくとも1つの部品を含む。部品は、好ましくは、基礎ハウジング及びヒートシンクスラグから成る群から選択される。上に詳述した組成物(C)から製造された部品は、一般に、リフレクタとしての役割を果たすことが意図されている。
【0087】
部品の好ましくは少なくとも50重量%及びより好ましくは80重量%超は、組成物(C)から成り、この部品は、場合により他の材料、例えば金属を更に含有することがあり、例えば、所定の最終用途向けには、上に詳述した組成物(C)から製造され、且つリフレクタとしての役割を果たす所定の部品の表面が金属メッキされ得ると理解されている。より好ましくは、部品の90重量%超は、組成物(C)から成る。更により好ましくは、部品は、本質的に組成物(C)から成る。最も好ましくは、部品は、組成物(C)から成る。
【0088】
トップビューLEDの例示的な実施形態は、前記実施形態の断面図を例示する図1に提供した。トップビューLED1は、上に詳述した組成物(C)を含む、好ましくはそれから成る基礎ハウジング2を含む。本明細書で以下に詳述するように、基礎ハウジング2はまた、リフレクタカップとしての役割も果たす。ヒートシンクスラグは全く存在しない。通常、LED1は、既製の電気リードフレーム3を更に含む。リードフレーム3は、有利には、基礎ハウジング2に含まれる組成物(C)と共に射出成形することによって封入することができる。
【0089】
基礎ハウジング2は、空洞6を有する。LEDチップ等の電磁放射線を放射する半導体チップ4は、そのような空洞内に取り付けられる。半導体チップ4は、一般に、リードフレーム端子の1つに結合線5によって接着され、電気的に接触接続される。
【0090】
透明又は半透明の埋込み用樹脂(図1には示していないが、例えば、エポキシ、ポリカーボネート又はシリコーン樹脂)が、一般に、LEDチップを保護するために空洞内に組み込まれる。LEDチップの外部効率を高める目的のため、空洞が前側に向けてフォーム開口部を得るように非垂直内面積を有する基礎ハウジングの空洞を造形することが慣習となっている(空洞の内壁の断面図は、例えば、図1に従った例示的実施形態におけるように、斜め直線の形態又はパラボラの形態を有し得る)。
【0091】
従って、空洞の内壁7は、半導体チップ又は接合部によって横方向に放射される放射線を基礎ハウジングの前側へ顕著に反射する、この放射線のためのリフレクタカップとしての機能を果たす。
【0092】
基礎ハウジングの空洞内に取り付けることができるチップ又は接合部の数、及び基礎ハウジング内に形成できる空洞の数が1つに制限されないことは理解されている。
【0093】
パワーLEDの例示的な実施形態は、前記実施形態の断面図を例示する図2に提供した。パワーLED8は、有利には、非球面レンズ1と、上で詳述した組成物(C)を含む、及び好ましくはそれから成る基礎ハウジング2とを含む。前の実施形態におけるように、LED8は、既製の電気リードフレーム3を更に含む。
【0094】
パワーLED8はまた、上で詳述した組成物(C)を含み得るか又はそれから成り得るキャリアボディ又はヒートシンクスラグ9を含む。空洞6は、ヒートシンクスラグ9の上方部分で実現される。電磁放射線を放射する半導体LEDチップ4は、空洞6の底部エリア上に取り付けられ、一般に、キャリア基板又ははんだ接続部10によってヒートシンクスラグ9に固定される。はんだ接続部10は、一般に、エポキシ樹脂又は別の同等の接着材料である。LEDチップ又は接合部は、一般に、結合線5によってリードフレーム3の電気端子に導電的に接続される。
【0095】
空洞6の内壁7は、一般に、LEDチップの外部効率を高めるリフレクタカップを形成できるように、空洞の底部領域から前側まで延在する。リフレクタカップの内壁7は、例えば、直線且つ斜めであるか、又は(図2に従った例示的な実施形態におけるように)凹面に湾曲し得る。
【0096】
リードフレーム3及びヒートシンクスラグ9は、一般に、基礎ハウジング2内に封入される。LEDチップ又は接合部4を保護するために、空洞は、一般に、放射線透過性の、例えば透明な封入化合物(封入剤は図2に示されていない)により、図1の第1の例示的な実施形態におけるのと同様に完全に充填されている。上で詳述した組成物(C)は、優れた熱伝導性を有し、こうして光電子デバイスによって生成した熱を容易に消散させる優れた熱伝導性を有することに加えて、それはまた、良好な機械的特性、高い加熱撓み温度、良好なめっき性、リードフレームへの良好な接着、優れた光特性、顕著に優れた初期白色度、並びに熱及び放射線への長期曝露後においてさえ反射率の高い保持率を有するために、上記で記載した基礎ハウジング及び/又はヒートシンクスラグを製造するために特に好適である。
【0097】
物品の製造方法
上で詳述した物品は、特に圧縮成形、押出成形、射出成形、又は他の溶融加工技術を含む標準技術により、上で詳述した組成物(C)を加工して製造され得る。
【0098】
それでも、一般に、上で詳述した物品を製造する方法は、上記で詳述した組成物(C)を射出成形する工程を一般に含むと理解されている。
【0099】
射出成形する工程は、一般に、ラム又はスクリュー式プランジャーを使用して溶融組成物(C)を金型キャビティ内へ押し込み、組成物(C)は、前記金型キャビティ内で金型の輪郭に従った形状へ固化する。
【0100】
使用できる金型は、1個取り金型又は多数個取り金型であり得る。
【0101】
ここで、本発明を以下の実施例に関連してより詳細に記載するが、その目的は単に例示することであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0102】
原料
約270℃の融点、及び8.0~18.0g/10分のメルトマスフローレート(MFI)(372℃/5.0kg)を有する、市販粉末グレードのHyflon(登録商標)SBS91000850P MFA(本明細書の以下では、MFA-1)。
500g/10分のMFI及び約240℃の融点を有するTFE/PMVE/PPVEターポリマー(約91.1/8/0.9モル)をベースとするHyflon(登録商標)ポリマー(本明細書の以下では、MFA-2)。
Merckから入手できる硫酸バリウムであるEMPROVE(登録商標)ESSENTIAL(欧州薬局方、英国薬局方、米国薬局方)(本明細書の以下では、BaSO
Polymist(登録商標)F5A PTFEは、4.0m2/g未満のB.E.T.表面積、約4.0μmのD50、約400g/lのバルク密度、約325℃の融点及び測定不能のMFI(372℃/10kg)を有する、Solvay Specialty Polymers Italy SpA製の市販で入手できるPTFE微粉末である[以下では、μ-PTFE-1]。
Algoflon(登録商標)L 2013 PTFEは、7.5m2/g超のB.E.T.表面積、約5.0μmのD50、約330g/lのバルク密度、約329℃の融点及び1.2g/10分のMFI(372℃/10kg)を有する、Solvay Specialty Polymers Italy SpA製の市販で入手できるPTFE微粉末である[以下では、μ-PTFE-2]。
【0103】
実施例1C(比較例)
MFA-1の粉末は、90/10重量%の比率でBaSOと共に3分間にわたりターボミキサー中で混合し、次に粉末状のブレンドをBrabender円錐二軸押出機でペレット化した。温度プロフィールは、ポリマーの溶融粘度及び融点に依存して、280℃~320℃の範囲の溶融温度を有するように設定した。次に、ペレットには、厚さ約1.5mmのプラークを作製するために縦プレス内で270~320℃での溶融圧縮成形を受けさせた。サンプルの反射率は、室温のプラーク上で測定し、結果は、表Aに要約した。MFIは、5kg荷重下の372℃において、押出ペレット上で測定した。
【0104】
実施例2C(比較例)
手順は、BaSO対MFA-1の比率を80/20重量%に設定した以外は、実施例1に記載した手順と同一であった。
【0105】
実施例3C(比較例)
MFA-1の粉末は、75/20/5重量%の比率でBaSO及びμ-PTFE-1と共に3分間にわたりターボミキサー中で混合し、次に粉末状のブレンド組成物をBrabender円錐二軸押出機でペレット化した。他の点については、実施例1と同一の手順に従った。
【0106】
実施例4(本発明による)
配合調製及びペレット化及び圧縮成形の手順は、実施例3Cに記載した手順と同一であったが、配合は、75/25/5重量%の比率にあるMFA-1、BaSO及びμ-PTFE-2をベースとしていた。
【0107】
実施例5(本発明による)
配合調製及びペレット化及び圧縮成形の手順は、成分のMFA-1、BaSO及びμ-PTFE-2の比率が60/30/10重量%であったことを除いて、実施例4に記載した手順と同一であった。
【0108】
実施例6C(比較例)
配合調製及びペレット化及び圧縮成形の手順は、BaSOを使用しなかったこと、並びに成分のMFA-1及びμ-PTFE-1を90/10重量%の比率で使用したことを除いて、実施例4に記載した手順と同一であった。
【0109】
実施例7C(比較例)
配合調製及びペレット化及び圧縮成形の手順は、BaSOを使用しなかったこと、並びに成分のMFA-1及びμ-PTFE-1を90/10重量%の比率で使用したことを除いて、実施例4に記載した手順と同一であった。
【0110】
実施例8C(比較例)
BaSOは、より乾燥していてより清潔な充填材が得られるように120℃のオーブン内で2時間処理し、次にMFA-2の粉末と80/20重量%の比率で配合し、次にターボミキサーで3分間混合した。粉末組成物をBrabender円錐二軸押出機でペレット化し、温度プロフィールは、ポリマーの溶融粘度及び融点に依存して、280℃~300℃の範囲内の溶融温度を有するように設定した。次にペレットには、厚さ約1.5mmのプラークを作製するために、縦プレス内で270~320℃での溶融圧縮成形を受けさせた。
【0111】
実施例9(本発明による)
ある量のμ-PTFE-2をMFA-2/BaSO/μ-PTFE-2の重量比率が70/20/10となるように、実施例8Cの成分に添加した。粉末をターボミキサー中で3分間ブレンドし、次に280℃~300℃の範囲内の溶融温度を有するためにペレット化し、次にこのペレットに上述したように300℃で溶融圧縮成形を受けさせた。
【0112】
実施例10C(比較例)
配合調製及びペレット化及び圧縮成形の手順は、BaSOが供給されたままで熱処理を加えずに使用されたことを除いて、実施例8に記載した手順と同一であった。
【0113】
反射率の測定
下記の表では、反射率は、入射放射束に対する反射放射束の比率(%)を指定することが意図されている。圧縮成形試験片は、UVからIR領域まで発光するハロゲン光源及びキセノン光源を装備したUV-Vis分光測光計(Shimadzu 3600)に挿入し、全立体角に渡って反射された放射線は、積分球、即ち複数の反射による衝突放射線全部を吸収する、内部がBaSOでコーティングされた、直径15cmを備える中空球によって決定した。測定は、ASTM E 903規格(積分球を用いた材料の吸光度、反射率、透過率の標準試験方法)に従って実施した。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
図1
図2