(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】HC-1119製剤及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4166 20060101AFI20230626BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230626BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230626BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230626BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230626BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230626BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230626BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230626BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230626BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A61K31/4166
A61K9/48
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/42
A61K47/44
A61P35/00
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020564111
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2019086694
(87)【国際公開番号】W WO2019218979
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】201810458165.1
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515329931
【氏名又は名称】ヒノバ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ シン
(72)【発明者】
【氏名】チー ミン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー ウー
(72)【発明者】
【氏名】リー シンハイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユエンウェイ
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107303278(CN,A)
【文献】特表2015-501820(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104857517(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106432090(CN,A)
【文献】国際公開第2017/067530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119製剤であって、下記重量配合比の原料・補助材料からなり、
前記原料・補助材料及び前記重量配合比が、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 25~55部、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド920~980部、ブチルヒドロキシアニソール0.5~1.5部、ブチルヒドロキシトルエン0.05~0.15部であることを特徴とする、製剤。
【請求項2】
下記重量配合比の前記原料・補助材料からなり、前記原料・補助材料及び前記重量配合比が、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 40部、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド958.9部、ブチルヒドロキシアニソール1部、ブチルヒドロキシトルエン0.1部であることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
1錠の製剤が、下記重量の前記原料に前記補助材料を加えてなり、前記原料及び前記重量が、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 1~100mgであることを特徴とする、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119軟カプセル剤であって、請求項3に記載の製剤及びカプセルシェルにより形成され、
乾燥前の前記カプセルシェル
の補助材料及
び重量配合比が、ゼラチン100部、グリセリン20~60部、ソルビトール溶液20~60部又はソルビトール10~50部、二酸化チタン0.5~2部、精製水50~100部であることを特徴とする、軟カプセル剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製剤の製造方法であって、以下のステップ(1)及びステップ(2)を含み、
ステップ(1)HC-1119の原薬を粒径1~150μmに粉砕して使用に備え、
ステップ(2)窒素ガスによる保護のもと、前記重量配合比のHC-1119原薬、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド、ブチルヒドロキシアニソール及びブチルヒドロキシトルエンを混合し、40~60℃で、HC-1119の原薬が完全に溶解するまで撹拌し、真空引きを行い、窒素ガスで置換して前記製剤を得ることを特徴とする、製造方法。
【請求項6】
ステップ(2)の前記溶解の温度が45℃±3℃であることを特徴とする、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製剤の、アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病を治療するための薬物の製造における使用であって、好ましくは、前記アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病が前立腺癌、乳癌であり、好ましくは、前記前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である、使用。
【請求項8】
請求項4に記載の軟カプセル剤の、アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病を治療するための薬物の製造における使用であって、好ましくは、前記アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病が前立腺癌、乳癌であり、好ましくは、前記前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具体的にはアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119製剤及びその製造方法と使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
HC-1119はアンドロゲン受容体(Androgen Receptor,AR)阻害剤であり、アンドロゲンとARとの結合を競合的に阻害し、ARシグナル伝達経路の伝達を遮断することが可能である。適応症は、アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病であり、前立腺癌、乳癌を含むがこれらに限定されない。その化学名は、4-{3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオ-1-イミダゾリジニル}-2-フルオロ-N-トリデューテロメチルベンズアミドであり、構造は式Iに示すとおりである。
【0003】
【0004】
出願番号201280052853.9、発明の名称「イミダゾリジンジオン系化合物及びその使用」の特許出願によって、化合物HC-1119が開示されている。
【0005】
HC-1119の物理化学的性質の研究結果により、HC-1119は水に溶解しにくいことが示されている。また、体外での実験では、Caco-2細胞モデルを用いてHC-1119の浸透性を評価した結果、HC-1119は高浸透性という特徴を有することが示された(10μMのHC-1119の見かけ透過係数は11.4~13.6×10-6cm/s)。そのため、HC-1119が難溶性且つ高浸透性の薬物であり、BSC分類の第2類に属し、薬物のバイオアベイラビリティを向上させることは、薬物開発の鍵となる。
【発明の概要】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、HC-1119製剤及び該製剤を含有するHC-1119軟カプセル剤を提供する。
【0007】
本発明のHC-1119製剤は、下記重量配合比の原料・補助材料からなり、前記原料・補助材料及び前記重量配合比が、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 1~100部、溶媒100~1000部、酸化防止剤0.11~11部である。
【0008】
前記溶媒が、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド、大豆油、グリセリン、マクロゴール、マクロゴールグリセリド及びカプリル酸カプリン酸グリセリドのうちの1種又は複数種の組成物であり、好ましくは、前記マクロゴールグリセリドがマクロゴールモノグリセリド、マクロゴールトリグリセリドから選択される1種又は2種であり、前記カプリル酸カプリン酸グリセリドがカプリル酸カプリン酸トリグリセリドから選択され、好ましくは、前記溶媒がカプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリドである。
【0009】
前記酸化防止剤が、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、芳香族アミン酸化防止剤のうちの1種又は複数種の組成物であり、好ましくは、前記酸化防止剤がブチルヒドロキシアニソールとブチルヒドロキシトルエンの組成物であり、そのうち、ブチルヒドロキシアニソールが0.1~10部、ブチルヒドロキシトルエンが0.01~1部である。
【0010】
さらに、上記HC-1119製剤は下記重量配合比の原料・補助材料からなり、前記原料・補助材料及び前記重量配合比が、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 5~55部、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド460~980部、ブチルヒドロキシアニソール0.25~1.5部、ブチルヒドロキシトルエン0.025~0.15部である。
【0011】
さらに、上記HC-1119製剤は下記重量配合比の原料・補助材料からなり、前記原料・補助材料及び前記重量配合比が、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 25~55部、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド920~980部、ブチルヒドロキシアニソール0.5~1.5部、ブチルヒドロキシトルエン0.05~0.15部であり、又は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 15~25部、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド460~500部、ブチルヒドロキシアニソール0.25~0.75部、ブチルヒドロキシトルエン0.025~0.075部であり、又は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-11195~15部、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド460~500部、ブチルヒドロキシアニソール0.25~0.75部、ブチルヒドロキシトルエン0.025~0.075部である。
【0012】
さらに、上記HC-1119製剤は、下記重量配合比の原料・補助材料からなり、前記原料・補助材料及び前記重量配合比が、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 40部、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド958.9部、ブチルヒドロキシアニソール1部、ブチルヒドロキシトルエン0.1部であり、又は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 20部、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド479.5部、ブチルヒドロキシアニソール0.5部、ブチルヒドロキシトルエン0.05部であり、又は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 10部、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド479.5部、ブチルヒドロキシアニソール0.5部、ブチルヒドロキシトルエン0.05部であり、又は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 12部、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド271.5部、ブチルヒドロキシアニソール0.03部、ブチルヒドロキシトルエン0.03部である。
【0013】
さらに、1錠の製剤が、下記重量の原料に補助材料を加えてなり、前記原料及び前記重量が、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 1~100mg、好ましくは80mgであり、又は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 25~55mg、好ましくは40mgであり、又は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 15~25mg、好ましくは20mgであり、又は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119 5~15mg、好ましくは10mgである。
【0014】
前記製剤が錠剤、液体製剤、軟カプセル剤であり、好ましくは前記製剤が軟カプセル剤である。
【0015】
本発明は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119軟カプセル剤をさらに提供し、前記の製剤及びカプセルシェルにより形成され、前記カプセルシェルが、下記重量配合比の補助材料により形成され、前記補助材料及び前記重量配合比が、ゼラチン100部、グリセリン20~60部、ソルビトール溶液20~60部又はソルビトール10~50部、二酸化チタン0.5~2部、精製水50~100部である。
【0016】
本発明は、前記製剤の製造方法をさらに提供し、以下のステップ(1)及びステップ(2)を含み、
ステップ(1)HC-1119の原薬を粒径1~150μmに粉砕して使用に備え、
ステップ(2)窒素ガスによる保護のもと、上記重量配合比のHC-1119原薬、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド、ブチルヒドロキシアニソール及びブチルヒドロキシトルエンを混合し、40~60℃で、HC-1119の原薬が完全に溶解するまで撹拌し、真空引きを行い、窒素ガスで置換して製剤を得る。
【0017】
ステップ(2)の前記溶解の温度が45℃±3℃である。
【0018】
本発明は、前記HC-1119軟カプセル剤の製造方法をさらに提供し、以下のステップ1)及びステップ2)を含み、
ステップ1)カプセルシェルの製造
a.ゼラチン溶解タンクを70℃に昇温し、上記重量配合比の水、グリセリン、ソルビトール溶液を加え、20分間撹拌する、
b.上記溶液の一部を取り、上記重量配合比の二酸化チタンを加え、高速剪断機で分散させ、均一に分散した溶液をゼラチン溶解タンクに加える、
c.上記重量配合比のゼラチンを加え、粘稠状になるまで分散させる、
d.ゼラチン溶解タンクを密閉して、真空脱気し、真空度-0.06~-0.1Mpaを維持したまま1時間撹拌し、温度50~60℃、非真空状態で一晩保温する、
ステップ2)軟カプセル剤の製造
A.窒素ガスによる保護のもと、カプセルシェルの厚さを0.8mm~1.10mmに制御し、カプセルの内容物充填量は理論充填量の±5%として、プレス充填を行い、
B.プレス充填が完了した後、冷風でタンブラーに送り、形を安定させ、吸油綿を加えてカプセルを拭き、温度25.0~30.0℃及び湿度≦25.0%の下、内容物の水分が5.0%未満になるまで乾燥して軟カプセル剤を得る。
【0019】
本発明は、前記HC-1119製剤の、アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病を治療するための薬物の製造における使用をさらに提供し、好ましくは、前記アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病が前立腺癌、乳癌であり、好ましくは、前記前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である。
【0020】
本発明は、前記軟カプセル剤の、アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病を治療するための薬物の製造における使用をさらに提供し、好ましくは、前記アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病が前立腺癌、乳癌であり、好ましくは、前記前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である。
【0021】
本発明は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119の経口製剤をさらに提供し、有効用量のHC-1119を活性成分とし、薬学的に許容可能な補助材料を加えてなる経口製剤であり、各製剤単位が1~100mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を含有する。
【0022】
前記製剤単位は、錠剤の各錠、カプセル剤の各カプセル、顆粒剤の各袋など薬学における通常製剤の剤型単位を指す。
【0023】
好ましくは、各製剤単位が80mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を含有する。
【0024】
好ましくは、各製剤単位が25~55mg、好ましくは40mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を含有し、又は、各製剤単位が15~25mg、好ましくは20mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を含有し、又は、各製剤単位が5~15mg、好ましくは10mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を含有する。
【0025】
本発明は、前記経口製剤の、アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病を治療するための薬物の製造における使用をさらに提供し、好ましくは、前記アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病が前立腺癌、乳癌であり、好ましくは、前記前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である。
【0026】
本発明は、アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病を治療する方法をさらに提供し、患者に前記HC-1119製剤、前記軟カプセル剤又は前記経口製剤を投与するものであり、好ましくは、前記アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病が前立腺癌、乳癌であり、好ましくは、前記前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である。
【0027】
本発明は、アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119の投与方法をさらに提供し、患者に毎回1~100mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を投与し、1日に1回、又は1日に2回、又は2日に1回、又は3日に1回、又は4日に1回、又は5日に1回、又は6日に1回、又は1週間1回投与する。
【0028】
好ましくは、患者に毎回80mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を投与し、1日1回投与する。
【0029】
好ましくは、患者に毎回25~55mg、好ましくは40mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を投与し、又は、患者に毎回15~25mg、好ましくは20mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を投与し、又は、患者に毎回5~15mg、好ましくは10mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を投与する。
【0030】
好ましくは、前記アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119が、前記HC-1119製剤、前記軟カプセル剤を投与することによって投与される。
【0031】
本発明は、アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病を治療する方法をさらに提供し、患者に毎回1~100mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を投与し、1日1回投与する。
【0032】
好ましくは、患者に毎回80mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を投与し、1日1回投与する。
【0033】
好ましくは、患者に毎回25~55mg、好ましくは40mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を投与し、又は、患者に毎回15~25mg、好ましくは20mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を投与し、又は、患者に毎回5~15mg、好ましくは10mgのアンドロゲン受容体阻害剤HC-1119を投与する。
【0034】
好ましくは、前記アンドロゲン受容体阻害剤HC-1119が、前記HC-1119製剤、前記軟カプセル剤を投与することによって投与される。
【0035】
前記アンドロゲンシグナル伝達経路依存性の疾病が前立腺癌、乳癌であり、好ましくは、前記前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である。
【0036】
本発明において、ソルビトール溶液はSPI Pharma New Castle社から購入したものであり、型番はSorbitol Special(TM)である。
【0037】
本発明のHC-1119製剤は、HC-1119原料をカプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリドに溶解させることにより、HC-1119の溶解性を著しく改善し、バイオアベイラビリティを著しく向上させ、個体間における血中トラフ濃度及び暴露量の差を小さくし、投薬安全性を向上させた。本発明のHC-1119軟カプセル剤は、安定性が良好である。
【0038】
臨床薬物動態の実験では、軟カプセル剤は、用量を半分にした場合でも、先発医薬品エンザルタミドの暴露量を達成することができ、固体間における血中トラフ濃度(Ctrough)及び暴露量(AUC)の差が小さくなり、安全性が向上した。
【0039】
当然ながら、本発明の上記内容に基づき、当分野の一般的な技術的知識や慣用的手段に照らし、本発明の上記基本的な技術的思想を逸脱しないという前提において、他の様々な形態の修正、置換又は変更を行うことができる。
【0040】
以下、実施例という形の具体的な実施形態によって、本発明の上記内容をさらに詳細に説明する。但し、これをもって、本発明の上記主題の範囲が以下の実施例に限定されると理解してはならない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、いずれも本発明の範囲に属する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の具体的な実施形態に使用される原料、装置はすべて従来の製品であり、市販の製品を購入したものである。
【0042】
ソルビトール溶液はSPI Pharma New Castle社から購入したものであり、型番はSorbitol Special(TM)である。
【0043】
本発明における略語:CCMG(カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)。
【0044】
[実施例1.本発明のHC-1119軟カプセル剤の製造]
1.原料・補助材料の処方
本発明の原料・補助材料の処方を表1に示す。
【0045】
【0046】
2.製造方法
1)カプセルシェルの製造
(1)処方量に従ってソルビトール、グリセリン、ゼラチン、二酸化チタンを秤取した。
(2)ゼラチン溶解タンクを起動し、65~70℃で保温した。
(3)処方量の約70%の精製水を用意し、処方量のソルビトールを加え、完全に溶解するまで撹拌した。
(4)上記ソルビトール溶液をゼラチン溶解タンクに移し、撹拌を開始し、70℃まで加熱した。
(5)撹拌を停止し、処方量のグリセリンをゼラチン溶解タンクに移し、残り30%の精製水を用いて残留したグリセリンを徐々に溶解させ、ゼラチン溶解タンクに移した後、完全に溶解するまで撹拌を継続し、70℃まで加熱した後、10min保温した。
(6)撹拌を停止し、上記溶液の一部を取り、処方量の二酸化チタンを加え、高速剪断機で分散させ、均一に分散した溶液をゼラチン溶解タンクに加えた。
(7)処方量のゼラチンをゆっくりとゼラチン溶解タンクに加え、撹拌を開始し、均一な粘稠状になるまで溶解させた。
(8)ゼラチン溶解タンクを密閉して、真空脱気を開始し、真空度-0.06~-0.1Mpaを維持したまま1時間撹拌した後、撹拌を停止し、真空を解除して、60℃で一晩保温し、使用に備えた。
【0047】
2)内容物の製造
(1)前処理:BHTとHC-1119を粉砕し、100メッシュのふるいにかけた。
(2)処方量に従ってHC-1119、CCMG、BHA及びBHTを秤取した。
(3)調合タンクを起動し、45℃±3℃で保温し、処方量のBHT、BHA、HC-1119を順次調合タンクに投入し、処方量のCCMGをゆっくりと加えた。調合タンクを密閉し、窒素ガスを導入して保護し、撹拌を開始して、溶液が清澄化し透明になったところで撹拌及び加熱を停止し、室温まで冷却して使用に備えた。
【0048】
3)軟カプセル剤の製造
(1)プレス充填:内容物を充填ホッパに移し、窒素ガス充填による保護を続け、プレス充填を開始した。充填工程において、外観が不合格であるカプセルを随時選別すると同時に、カプセルシェルの厚さを0.8mm~1.10mmに制御し、カプセルの内容物の充填量は理論充填量の±5%とした。
(2)プレス充填が完了した後、冷風でタンブラーに送り、形を安定させた。吸油綿を加えてカプセルを拭いた。
(3)サンプリング:内容物の水分及びカプセルシェルの水分が約8.0%になったところで、一次乾燥工程を停止した。
(4)カプセルの乾燥:カプセルを乾燥室(温度20~25℃、湿度RH28~35%)に移して二次乾燥を行い、3hごとに1回サンプリングを行い、カプセルシェルの水分が5.0%未満、及び内容物の水分が5.0%未満になったところで、カプセルの乾燥を停止した。
【0049】
[実施例2.本発明のHC-1119軟カプセル剤の製造]
1.原料・補助材料の処方
本発明の原料・補助材料の処方を表2に示す。
【0050】
【0051】
2.製造方法
1)カプセルシェルの製造
(1)処方量に従ってソルビトール溶液、グリセリン、ゼラチン、二酸化チタンを秤取した。
(2)ゼラチン溶解タンクを起動し、加熱温度を70℃に設定して、処方量の精製水、ソルビトール溶液、グリセリンをゼラチン溶解タンクに加え、20分間撹拌し、均一に混合した。
(3)上記溶液の一部を取り、処方量の二酸化チタンを加え、高速剪断機で分散させ、均一に分散した溶液をゼラチン溶解タンクに加えた。
(4)処方量のゼラチンをゆっくりとゼラチン溶解タンクに加え、撹拌を開始し、均一な粘稠状になるまで溶解させた。
(5)ゼラチン溶解タンクを密閉して、真空脱気を開始し、真空度-0.06~-0.1Mpaを維持したまま1時間撹拌した後、撹拌を停止し、真空を解除して、60℃で一晩保温し、使用に備えた。
【0052】
2)内容物の製造
(1)前処理:HC-1119に微粉化処理を行い、D90<20μmとした。
(2)処方量に従ってHC-1119、CCMG、BHA、BHTを秤取した。
(3)以下の操作では全工程において窒素ガスを導入して保護した。調合タンクを起動し、処方量のCCMGを加え(真空引き、窒素ガス置換)、45℃±3℃に昇温して保温し、処方量のBHA及びBHTを加えて撹拌し溶解させた。
(4)HC-1119を調合タンクに投入して、撹拌を開始し、溶液が清澄化して透明になったところで撹拌及び加熱を停止し、室温まで冷却し、200メッシュのふるいにかけてフィルタリングし、使用に備えた。
【0053】
3)軟カプセル剤の製造
(1)カプセルシェルの厚さの調整:ゼラチンを出して、カプセルシェルの厚さを調整し(1.00~1.10mm)、さらにプロセスパラメータを調整した。
(2)パイプの洗浄:CCMGを用いて調整するとともに、プロセスパラメータ及び充填量の初期調整を行った。
(3)プレス充填テスト:プロセスパラメータが安定した後、内容物を供給ホッパに加えてパイプを洗浄し、充填量を調節した。
(4)プレス充填:内容物を充填ホッパに移し、窒素ガス充填による保護を続け、プレス充填を開始した。充填工程において、外観が不合格であるカプセルを随時選別すると同時に、充填量の差及びカプセルシェルの厚さを監視して、全て±5%に制御し、異常を発見した場合は直ちに調整した。
(5)プレス充填が完了した後、冷風でタンブラーに送り、形を安定させた。吸油綿を加えてカプセルを拭いた後、温度25.0~30.0℃、湿度≦25.0%の条件で乾燥を続け、サンプリングを行い、カプセルシェルの水分が5.0%未満、内容物の水分が5.0%未満になったところで、乾燥を停止した。
【0054】
[実施例3.本発明のHC-1119軟カプセル剤の製造]
本発明の原料・補助材料の処方を表3に示す。
【0055】
【0056】
2.製造方法
1)カプセルシェルの製造
(1)処方量に従ってソルビトール溶液、グリセリン、ゼラチン、二酸化チタンを秤取した。
(2)ゼラチン溶解タンクを起動し、加熱温度を70℃に設定し、処方量の精製水、ソルビトール溶液、グリセリンをゼラチン溶解タンクに加えて、20分間撹拌し、均一に混合した。
(3)上記溶液の一部を取り、処方量の二酸化チタンを加え、高速剪断機で分散させ、均一に分散した溶液をゼラチン溶解タンクに加えた。
(4)処方量のゼラチンをゆっくりとゼラチン溶解タンクに加え、撹拌を開始し、均一な粘稠状になるまで溶解させた。
(5)ゼラチン溶解タンクを密閉して、真空脱気を開始し、真空度-0.06~-0.1Mpaを維持したまま1時間撹拌した後、撹拌を停止し、真空を解除して、60℃で一晩保温した。
【0057】
2)内容物の製造
(1)前処理:HC-1119に微粉化処理を行い、D90<20μmとした。
(2)処方量に従ってHC-1119、CCMG、BHA、BHTを秤取した。
(3)以下の操作では全工程において窒素ガスを導入して保護した。調合タンクを起動し、処方量のCCMGを加え(真空引き、窒素ガス置換)、45℃±3℃に昇温して保温し、処方量のBHA及びBHTを加えて撹拌し溶解させた。
(4)HC-1119を調合タンクに投入して、撹拌を開始し、溶液が清澄化して透明になったところで撹拌及び加熱を停止し、室温まで冷却し、200メッシュのふるいにかけてフィルタリングし、使用に備えた。
【0058】
3)軟カプセル剤の製造
(1)カプセルシェルの厚さの調整:ゼラチンを出して、カプセルシェルの厚さを調整し(1.00~1.10mm)、さらにプロセスパラメータを調整した。
(2)パイプの洗浄:CCMGを用いて調整するとともに、プロセスパラメータ及び充填量の初期調整を行った。
(3)プレス充填テスト:プロセスパラメータが安定した後、内容物を供給ホッパに加えてパイプを洗浄し、充填量を調節した。
(4)プレス充填:内容物を充填ホッパに移し、窒素ガス充填による保護を続け、プレス充填を開始した。充填工程において、外観が不合格であるカプセルを随時選別すると同時に、充填量の差及びカプセルシェルの厚さを監視して、全て±5%に制御し、異常を発見した場合は直ちに調整した。
(5)プレス充填が完了した後、冷風でタンブラーに送り、形を安定させた。吸油綿を加えてカプセルを拭いた後、温度25.0~30.0℃、湿度≦25.0%の条件で乾燥を続け、サンプリングを行い、カプセルシェルの水分が5.0%未満、内容物の水分が5.0%未満になったところで、乾燥を停止した。
【0059】
[実施例4.本発明のHC-1119軟カプセル剤の製造]
本発明の原料・補助材料の処方を表4に示す。
【0060】
【0061】
2.製造方法
1)カプセルシェルの製造
(1)処方量に従ってソルビトール溶液、グリセリン、ゼラチン、二酸化チタンを秤取した。
(2)ゼラチン溶解タンクを起動し、加熱温度を70℃に設定し、処方量の精製水、ソルビトール溶液、グリセリンをゼラチン溶解タンクに加えて、20分間撹拌し、均一に混合した。
(3)上記溶液の一部を取り、処方量の二酸化チタンを加え、高速剪断機で分散させ、均一に分散した溶液をゼラチン溶解タンクに加えた。
(4)処方量のゼラチンをゆっくりとゼラチン溶解タンクに加え、撹拌を開始し、均一な粘稠状になるまで溶解させた。
(5)ゼラチン溶解タンクを密閉して、真空脱気を開始し、真空度-0.06~-0.1Mpaを維持したまま1時間撹拌した後、撹拌を停止し、真空を解除して、60℃で一晩保温した。
【0062】
2)内容物の製造
(1)前処理:HC-1119に微粉化処理を行い、D90<20μmとした。
(2)処方量に従ってHC-1119、CCMG、BHA、BHTを秤取した。
(3)以下の操作では全工程において窒素ガスを導入して保護した。調合タンクを起動し、処方量のCCMGを加え(真空引き、窒素ガス置換)、45℃±3℃に昇温して保温し、処方量のBHA及びBHTを加えて撹拌し溶解させた。
(4)HC-1119を調合タンクに投入して、撹拌を開始し、溶液が清澄化して透明になったところで撹拌及び加熱を停止し、室温まで冷却し、200メッシュのふるいにかけてフィルタリングし、使用に備えた。
【0063】
3)軟カプセル剤の製造
(1)カプセルシェルの厚さの調整:ゼラチンを出して、カプセルシェルの厚さを調整し(1.00~1.10mm)、さらにプロセスパラメータを調整した。
(2)パイプの洗浄:CCMGを用いて調整するとともに、プロセスパラメータ及び充填量の初期調整を行った。
(3)プレス充填テスト:プロセスパラメータが安定した後、内容物を供給ホッパに加えてパイプを洗浄し、充填量を調節した。
(4)プレス充填:内容物を充填ホッパに移し、窒素ガス充填による保護を続け、プレス充填を開始した。充填工程において、外観が不合格であるカプセルを随時選別すると同時に、充填量の差及びカプセルシェルの厚さを監視して、全て±5%に制御し、異常を発見した場合は直ちに調整した。
(5)プレス充填が完了した後、冷風でタンブラーに送り、形を安定させた。吸油綿を加えてカプセルを拭いた後、温度25.0~30.0℃、湿度≦25.0%の条件で乾燥を続け、サンプリングを行い、カプセルシェルの水分が5.0%未満、内容物の水分が5.0%未満になったところで、乾燥を停止した。
【0064】
以下、本発明の有益な効果を、実験例によって説明する。
【0065】
[実験例1.本発明のHC-1119軟カプセル剤の安定性試験]
1.実験方法
安定性試験の計画:実施例2で製造した軟カプセル剤に対して安定性試験を行った。6ヶ月の加速試験及び12ヶ月間の長期試験を行い、それぞれ安定性について調査した。加速試験(40℃±2℃、相対湿度(RH)75%±5%)、中間条件試験(30℃±2℃,RH 65%±5%)、長期試験(25℃±2℃,RH 60%±5%)の3つの条件について調査した。包装はアルミブリスターパックを使用し、外側にバックシールパックを使用した。各時点で、軟カプセル剤の性状、酸価、過酸化物価、関連物質、溶出性、酸化防止剤量、水分、微生物限度及び含有量についてそれぞれ調査を行った。
【0066】
性状:検査方法は目視である。本製品は、類白色の楕円形カプセルで、内容物が淡黄色の油状液体であり、沈殿がない状態を標準とする。
【0067】
関連物質:本製品の内容物を取り、高速液体クロマトグラフィー法(中国薬典2015版通則0512)に従って、試験・検査を行った。
【0068】
酸化防止剤量:本製品の内容物を取り、高速液体クロマトグラフィー法(中国薬典2015版通則0512)に従って、試験・検査を行った。
【0069】
溶出性:本製品を取り、溶出性測定法(通則0931第二法)に従って、0.2%のドデシル硫酸ナトリウムを含む塩酸溶液900mlを溶出媒体とし、回転速度を毎分50回転として、測定法に従って操作し、30分経過後、適量の溶液を取り、試験・検査を行った。
【0070】
過酸化物価:本製品の内容物を取り、脂肪及び脂肪油測定法(通則0713)の過酸化物価測定方法に従って測定した。
【0071】
酸価:本製品の内容物を取り、脂肪及び脂肪油測定法(通則0713)の酸価測定方法に従って測定した。
【0072】
水分:本製品の内容物を取り、水分測定法(中国薬典2015版通則0832第一法1)に従って測定した。
【0073】
微生物限度:本製品を取り、非無菌製品微生物限度検査(通則1105、1106及び1107)に従って測定した。
【0074】
含有量測定:高速液体クロマトグラフィー法(中国薬典2015版通則0512)に従って測定した。
【0075】
クロマトグラフィー条件及びシステム適合性試験:オクタデシルシラン結合シリカゲルを充填剤とし、pH3.0のリン酸水溶液-メタノール-アセトニトリルを移動相とし、液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0076】
2.実験結果:
(1)安定性試験の条件1(加速試験):包装は市販の包装であり、調査の条件は40℃±2℃、RH 75%±5%とした。加速試験の結果を表5に示す。
【0077】
【0078】
(2)安定性試験の条件2(中間条件試験):包装は市販の包装であり、調査の条件は30℃±2℃、RH 65%±5%とした。中間条件実験の結果を表6に示す。
【0079】
【0080】
(3)安定性試験の条件3(長期試験):包装は市販の包装であり、調査の条件は25℃±2℃、RH 60%±5%とした。長期試験の結果を表7に示す。
【0081】
【0082】
加速試験6ヶ月、中間条件試験12ヶ月及び長期試験12ヶ月の調査からわかるように、HC-1119軟カプセル剤は、従来の包装という条件において、重点調査を行った各品質指標全てが品質基準に定める限度の範囲内にあり、関連物質、含有量、溶出性、性状のいずれも0ヶ月と比較して大きな差異は見られず、製品が安定していた。
【0083】
[実験例2.本発明のHC-1119軟カプセル剤の臨床薬物動態試験]
1.投与方法
実施例2で製造したHC-1119軟カプセル剤を用意した。
(1)投与量:毎日80mg(40mgの軟カプセル剤2錠)。
(2)投与方法:連続投与で、1日1回、初回は空腹時に投与し、その後飲食の制限はしなかった。
【0084】
2.実験方法
薬物動態の研究では、計9名の被験者がこの研究に参加した。
【0085】
1)単回投与の生物試料採取:
被験者に対し、試験1日目の空腹時に単回投与を行った。投与前0~0.5h及び投与後0.5h、0.75h、1h、2h(±5min)、4h、8h、12h(±15min)、24h(±30min、2日目投与前)にそれぞれ1回血液採取を行い、各時点で静脈血3mLを採取し、抗凝固チューブに入れた(抗凝固剤の種類は確立された分析試験方法によって決定した)。
【0086】
2)連続投与の生物試料採取:
連続投与の7、21、35、42、56、70、84日目の投与前0~0.5h、84日目の投与後0.5h、0.75h、1h、2h(±5min)、4h、8h、12h(±15min)、24h(±30min、85日目の投与前)。各時点で静脈血3mLを採取し、抗凝固チューブに入れた(抗凝固剤の種類は確立された分析試験方法によって決定した)。
【0087】
3)試料処理:
試料をできるだけ迅速に遠心機にかけ(約3000回転/分、10分間)、血漿を分離した。分離した血漿のサンプルは2連で血漿凍結チューブに保存する必要があり、被験者のグループ番号、氏名の省略形、収集日及び時間をラベルに記入した。血漿サンプルはできるだけ迅速に-60℃~-80℃の冷凍庫に保存した。血漿サンプルは、1つは研究センターに保管し、もう1つは血漿薬物濃度測定のため専門の検査会社に送った。
【0088】
3.実験結果
表8は本発明のHC-1119軟カプセル剤の80mg用量の臨床薬物動態データである。
【0089】
【0090】
表9は米国FDAによって開示されたエンザルタミド160mg用量の臨床薬物動態データである。
【0091】
【0092】
HC-1119は重水素化されたエンザルタミドであり、両者の体外生物活性は同じである。しかし、臨床薬物動態の実験において、HC-1119軟カプセル剤は、用量を半分にした場合、つまりHC-1119が80mgの用量でも、エンザルタミド160mg用量以上の原薬暴露量及び血中濃度を達成することができた。HC-1119(80mg用量)について、84日目の定常状態Ctrough=18.9μg/mLは、エンザルタミド(160mg用量)の定常状態Cmin=12μg/mLよりも高かった。HC-1119(80mg用量)について、84日目の定常状態AUC=479.7h*μg/mLは、エンザルタミド(160mg用量)の定常状態AUC=321.5h*μg/mLよりも高かった。HC-1119軟カプセル剤は、使用する用量を減らし、薬物安全性及び服薬コンプライアンスを高めることができる。
【0093】
同時に、HC-1119軟カプセル剤は、実験対象間での薬物動態の変動を減少させた。データの変動を標準偏差係数CV(coefficient of variation)を用いて表した。HC-1119(80mg用量)について、84日目の定常状態Ctroughに対応するCV=14.5%は、エンザルタミド(160mg用量)の定常状態Cminに対応するCV=29.3%よりも低かった。HC-1119(80mg用量)について、84日目の定常状態AUCに対応するCV=14%は、エンザルタミド(160mg用量)の定常状態AUCに対応するCV=26.6%よりも低かった。CVが低いということは、HC-1119軟カプセル剤の薬物動態の患者間での変動が小さいことを意味し、患者の個体差による治療効果及び安全性に関するリスクを低減することができる。従って、HC-1119軟カプセル剤によって、薬物の安全性がよりいっそう向上した。
【0094】
以上のように、本発明のHC-1119製剤は、HC-1119原料をカプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリドに溶解させて軟カプセル剤を製造することにより、HC-1119の溶解性を著しく改善し、バイオアベイラビリティを著しく向上させ、個体間における血中トラフ濃度及び暴露量の差を小さくし、投薬安全性を向上させた。本発明のHC-1119軟カプセル剤は安定性が良好である。