(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20230626BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230626BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230626BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
G09G5/00 550C
B60K35/00 A
G09G5/00 510A
G09G5/00 530H
G09G5/00 530M
G08G1/09 H
G08G1/16 A
(21)【出願番号】P 2021037891
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 明弘
(72)【発明者】
【氏名】岡本 進一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 美治
(72)【発明者】
【氏名】山本 壮祐
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-149894(JP,A)
【文献】特開2018-148284(JP,A)
【文献】特開2020-126478(JP,A)
【文献】特開2009-146288(JP,A)
【文献】特開2005-165643(JP,A)
【文献】特開2008-149786(JP,A)
【文献】特開2020-60932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 - 5/42
B60K 35/00
G08G 1/09
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車両の進行を阻害する障害に関する情報である障害情報を取得する取得部と、
自車両が停車または徐行しており、かつ前記先行車両が停車または徐行している状況において、前記障害情報を表示させる表示器と、
を備え
、
前記表示器は、前記自車両のウインドシールドに投影する表示光によって、前記先行車両に重ねて前記障害情報の虚像を表示させる投影器であり、
前記表示器は、前記先行車両の進行を直接阻害する障害が前記先行車両の前方を走行する先先行車両である場合、前記先先行車両を模した虚像および渋滞の原因を示すアイコンの虚像を前記障害情報の虚像として表示させ、
前記表示器は、前記先行車両の進行を直接阻害する障害が先先行車両ではない場合、前記先行車両の進行を直接阻害する原因を示すアイコンの虚像を前記障害情報の虚像として表示させる
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記先行車両の車両幅が所定幅以上であること、および前記先行車両の車高が所定高さ以上であること、の少なくとも一方が成立する場合に前記障害情報を表示させる
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記表示器は、前記先行車両の前方の渋滞度合いに応じて前記先先行車両を模した虚像の大きさおよび表示距離の少なくとも一方を異ならせる
請求項
1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記障害情報の虚像を表示するか否かを決定するシーン判別部を備え、
前記シーン判別部は、自車両が交差点の手前に位置する先頭車両であり、かつ前記先行車両が前記交差点の向こう側に位置する場合に前記障害情報の虚像を表示すると決定する
請求項
1から
3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行支援を行なう技術がある。特許文献1には、交差点情報及び先行車情報に基づいて、自車が交差点を交差道路の通行を阻害せずに通過できる可能性を判断する車両用走行支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行支援において、なお改良の余地がある。例えば、判断結果のみを知らされただけで前方の状況が分からないと、ドライバが不安を覚える可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、先行車両よりも前方の状況をドライバに対して知らせることができる車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用表示装置は、先行車両の進行を阻害する障害に関する情報である障害情報を取得する取得部と、自車両が停車または徐行しており、かつ前記先行車両が停車または徐行している状況において、前記障害情報を表示させる表示器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用表示装置は、自車両が停車または徐行しており、かつ先行車両が停車または徐行している状況において、先行車両の進行を阻害する障害に関する情報を表示させる。本発明に係る車両用表示装置によれば、先行車両よりも前方の状況をドライバに対して知らせることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の車両用表示装置が搭載された車両を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の車両用表示装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、障害情報の虚像を表示させるシーンの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の車両用表示装置によって表示される画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の車両用表示装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態の車両用表示装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態の車両用表示装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、要求ジェスチャーの判定表を示す図である。
【
図9】
図9は、進行支援が必要な状況を説明する図である。
【
図19】
図19は、実施形態の第1変形例に係るスペースレベルの判定表を示す図である。
【
図20】
図20は、実施形態の第1変形例のマップを示す図である。
【
図21】
図21は、実施形態の第1変形例に係るスペースレベルの判定表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用表示装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から
図18を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両用表示装置に関する。
図1は、実施形態の車両用表示装置が搭載された車両を示す図、
図2は、実施形態の車両用表示装置のブロック図、
図3は、障害情報の虚像を表示させるシーンの一例を示す図、
図4は、実施形態の車両用表示装置によって表示される画像の一例を示す図、
図5から
図7は、実施形態の車両用表示装置の動作を示すフローチャート、
図8は、要求ジェスチャーの判定表を示す図、
図9は、進行支援が必要な状況を説明する図、
図10は、先行車両の一例を示す図である。
【0011】
図11は、先行車両の前方の状況を示す図、
図12は、スペースレベルの判定表を示す図、
図13は、危険度レベルの判定表を示す図、
図14は、総合レベルの判定表を示す図、
図15は、総合レベルに応じた画像を示す図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係る車両用表示装置1は、車両100に搭載される。実施形態に係る車両用表示装置1は、所謂ヘッドアップディスプレイ装置である。車両用表示装置1は、車両100のアイポイント201の前方に虚像VIを表示する。アイポイント201は、運転席に着座したドライバ200の視点位置として予め定められた位置である。
【0013】
車両用表示装置1は、車両100のダッシュボード101の内側に配置されている。ダッシュボード101の上面には、開口部101aが設けられている。車両用表示装置1は、この開口部101aを介してウインドシールド102に画像の表示光を投影する。ウインドシールド102は、車両100におけるアイポイント201の前方に位置する反射部である。ウインドシールド102は、例えば、半透過性を有しており、車両用表示装置1から入射する表示光をアイポイント201に向けて反射する。ドライバ200は、ウインドシールド102によって反射された画像を虚像VIとして認識する。ドライバ200にとって、虚像VIはウインドシールド102よりも前方に存在するかのように認識される。
【0014】
なお、本明細書において、特に記載しない限り、「前後方向」は車両用表示装置1が搭載された車両100の車両前後方向を示すものとする。また、特に記載しない限り、「車幅方向」は車両100の車幅方向を示し、「上下方向」は車両100の車両上下方向を示すものとする。
【0015】
図2に示すように、車両用表示装置1は、取得部2、ON/OFF確認部3、シーン判別部4、渋滞度合い処理部5、表示処理部6、および表示器7を有する。取得部2、ON/OFF確認部3、シーン判別部4、渋滞度合い処理部5、および表示処理部6は、例えば、演算部、記憶部、通信インタフェース等を有するコンピュータである。取得部2、ON/OFF確認部3、シーン判別部4、渋滞度合い処理部5、および表示処理部6は、例えば、予め記憶されているプログラムに基づいて動作する。
【0016】
表示器7は、車両100のドライバ200に対して前方に画像を表示させる装置である。本実施形態の表示器7は、車両100のウインドシールド102に投影する表示光によって、車両100の前景に重ねて虚像を表示させる投影器である。
図1に示すように、表示器7は、画像投影部71およびミラー72を有する。画像投影部71は、表示処理部6から取得した画像の表示光を生成する。
【0017】
画像投影部71は、例えば、TFT-LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)等の液晶表示装置である。この場合、画像投影部71は、画像を表示する液晶表示部を有し、液晶表示部から表示光を出射する。ただし、画像投影部71は、液晶表示装置には限定されず、例えば、レーザ光によってスクリーンに画像を生成する装置であってもよい。この場合、画像投影部71は、スクリーンから画像の表示光を出射する。
【0018】
ミラー72は、画像投影部71から出射される表示光をウインドシールド102に向けて反射する反射部材である。ミラー72は、表示光を反射する反射面を有する。反射面の形状は、例えば、自由曲面である。ミラー72は、表示光を拡大しながら反射する拡大ミラーであることが好ましい。ウインドシールド102は、表示光をドライバ200のアイポイント201に向けて反射する。ミラー72は、ウインドシールド102のうち、車両100の前景と重畳する領域に向けて表示光を反射する。よって、形成される虚像VIは、車両100の前景と重畳して表示される。
【0019】
取得部2は、各種の情報を取得する。取得部2は、周辺情報取得部21,22、走行情報取得部23、ナビ情報取得部24、ドライバ状態取得部25、および操作入力受付部26を有する。
【0020】
周辺情報取得部21は、車両100の通信部110を介して、先行車情報、周辺交通情報、および周辺道路情報を取得する。通信部110は、V2X(Vehicle to everything)通信を行なう。通信部110は、例えば、路車間通信によってインフラシステムと無線通信することができる。通信部110は、車車間通信を介して他車両と無線通信することができる。また、通信部110は、通信基地局との無線通信によりクラウドネットワークと接続されてもよい。通信部110が無線通信を行なうときの通信規格は任意である。
【0021】
周辺情報取得部21は、V2X通信により、先行車情報、周辺交通情報、および周辺道路情報を取得する。先行車情報は、先行車両の車速を含む走行情報、先行車両のセンサによって取得された周辺情報、先先行車両の車速を含む走行情報、先先行車両のセンサによって取得された周辺情報を含む。周辺交通情報は、先行車両や先先行車両を含む周辺の他車両についての情報、周辺の歩行者についての情報、周辺の障害物等に関する情報、および周辺の道路工事の情報を含む。周辺道路情報は、周辺の信号についての情報、および周辺の交差点についての情報を含む。信号についての情報は、その信号の現在の表示状態、および青信号の残時間等を含む。
【0022】
周辺情報取得部22は、第一の車載センサ120から、先行車情報、周辺交通情報、および周辺道路情報を取得する。第一の車載センサ120は、車両100の周辺に存在する物体を検出するセンサを含む。こうしたセンサとしては、例えば、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)やレーダセンサが挙げられる。第一の車載センサ120は、例えば、車両100に対する先行車両の相対位置や範囲、相対速度を検出することができる。また、第一の車載センサ120は、例えば、先行車両の形状や大きさを検出することができる。第一の車載センサ120は、車両100の周辺を撮像するカメラを含んでもよい。周辺情報取得部22は、カメラによって撮像された画像に基づいて、先行車両、周辺交通情報、および周辺道路情報を取得することができる。
【0023】
走行情報取得部23は、車両100の走行情報を取得する。走行情報は、例えば、車両100の車速および舵角である。走行情報取得部23は、例えば、車両100に搭載されている車速センサや舵角センサから走行情報を取得する。
【0024】
ナビ情報取得部24は、車両100の現在走行位置や地図情報、案内経路情報を取得する。ナビ情報取得部24は、例えば、車両100に搭載されたナビゲーション装置130から各種の情報を取得する。ナビ情報取得部24は、携帯式のナビゲーション装置やスマートフォンのナビゲーションアプリから情報を取得してもよい。ナビ情報取得部24は、周辺の信号についての情報、周辺の交差点についての情報、車両100の自車位置についての情報、地図情報等を取得する。
【0025】
ドライバ状態取得部25は、第二の車載センサ140からドライバの状態を取得する。第二の車載センサ140は、例えば、ドライバ200に対して前方に配置されたカメラを含む。第二の車載センサ140は、画像認識により、ドライバ200の状態を検出する。ドライバの状態は、例えば、ドライバ200の視線方向、ドライバ200の姿勢、およびドライバ200のジェスチャーを含む。
【0026】
操作入力受付部26は、スイッチ150に対する操作入力を受け付ける。スイッチ150は、後述する障害情報の虚像を表示させるか否かを指定するスイッチである。スイッチ150は、ON状態およびOFF状態の何れかを選択することが可能に構成されている。操作入力受付部26は、スイッチ150によって選択された状態を保持する。スイッチ150によってON状態が選択されている場合、車両用表示装置1は、障害情報の虚像を表示させる。一方、車両用表示装置1は、スイッチ150によってOFF状態が選択されている場合、障害情報の虚像を表示させない。
【0027】
ON/OFF確認部3は、操作入力受付部26からスイッチ150による操作入力を取得する。ON/OFF確認部3は、操作入力受付部26から取得した情報に基づいて、障害情報の虚像を表示させるか否かを判断する。
【0028】
シーン判別部4は、車両100が現在置かれているシーンを判別する。より詳しくは、シーン判別部4は、取得部2によって取得された情報に基づいて、現在のシーンが障害情報の虚像を表示させるシーンに該当するか否かを判断する。
図3には、障害情報の虚像を表示させるシーンの一例が示されている。自車両である車両100は、交差点Crの手前に位置している。交差点Crにおいて、車両100の進行方向の車両用信号機SG1では青信号が点灯しており、かつ歩行者用信号機SG2では赤信号が点灯している。
【0029】
交差点Crの向こう側には、先行車両300が停止している。先行車両300の直前には、先先行車両310が存在する。先行車両300は、先行車両300から先先行車両310までの車間距離が小さいために前進することができない。先行車両300の後方には車両100に対する十分なスペースがないため、車両100は交差点Crの手前で待機している。
図3のシーンでは、横断歩道を横断する歩行者400がいることで、車両100から見て交差点Crの向こう側に渋滞が発生している。車両100のドライバ200からは、渋滞の原因や渋滞の状態を目視することができない。このようなシーンでは、ドライバ200は車両100を交差点Crに進入させてよいか否かを正しく判断することが難しい。特に、先行車両300が大型の車両や、高い車高を有する車両である場合、ドライバ200が前方に関する情報を得にくい。
【0030】
本実施形態の車両用表示装置1は、以下に説明するように、先行車両300の進行を阻害する障害に関する情報を表示させる。以下の説明では、先行車両300の進行を阻害する障害に関する情報を単に「障害情報」と称する。本実施形態の車両用表示装置1は、先行車両300に重ねて障害情報の虚像を表示させる。
図3に示すシーンでは、先行車両300の進行を直接的に阻害している障害は、先先行車両310である。車両用表示装置1は、例えば、以下に説明するように、直接的な障害情報を示す虚像を表示させる。
【0031】
図4には、車両用表示装置1によって表示される画像30の一例が示されている。画像30は、車両画像31および枠画像32を含む。車両画像31は、先先行車両310を模した画像である。枠画像32は、車両画像31を囲む枠状の画像である。枠画像32の内側に車両画像31が表示されることで、車両画像31が実体ではなく虚像であることをドライバ200が認識しやすい。画像30が表示されることで、ドライバ200は、先行車両300の進行を阻害する先先行車両310の存在を知ることができる。よって、車両用表示装置1は、ドライバ200に対して状況判断のための適切な情報を提供することができる。
【0032】
図5のフローチャート等を参照して、車両用表示装置1の動作について説明する。ステップS10において、取得部2は、各種の情報を取得する。周辺情報取得部21,22、走行情報取得部23、ナビ情報取得部24、ドライバ状態取得部25、および操作入力受付部26による情報取得が完了すると、ステップS20に進む。
【0033】
ステップS20において、ON/OFF確認部3は、表示ONの状態が選択されているかを確認する。ON/OFF確認部3は、表示ONの状態あるいは表示OFFの状態の何れが選択されているかについての情報を操作入力受付部26から取得する。ステップS20の判定の結果、表示ONの状態が選択されていると肯定判定された場合にはステップS30に進み、否定判定された場合にはフローチャートが終了する。
【0034】
ステップS30において、ON/OFF確認部3は、要求ジェスチャーがないかを判定する。要求ジェスチャーは、障害情報の虚像を表示させることを要求するドライバ200の動作である。要求ジェスチャーは、例えば、車両用表示装置1に予め登録されている。本実施形態のON/OFF確認部3は、
図8に示す判定表に基づいて要求ジェスチャーの有無を判定する。ON/OFF確認部3は、ドライバ状態取得部25から取得するドライバ200の視線方向およびドライバ200のジェスチャーに基づいてステップS30の判定を行なう。
【0035】
要求ジェスチャーのパターンは、パターンA、パターンB、およびパターンCを含む。パターンAは、ドライバ200が視線を先行車両300に向ける動作である。パターンBは、ドライバ200が視線を先行車両300に向ける動作と、ドライバ200が先行車両300を指差す動作との組み合わせである。パターンCは、ドライバ200が視線を先行車両300に向ける動作と、ドライバ200が先行車両300を覗き込む動作との組み合わせである。
【0036】
ON/OFF確認部3は、例えば、パターンA、パターンB、およびパターンCの少なくとも一つの動作をドライバ200が行なった場合に要求ジェスチャーがあると判定する。一方、ON/OFF確認部3は、ドライバ200がパターンA、パターンB、およびパターンCの何れの動作も行なっていない場合、要求ジェスチャーがないと判定する。ステップS30の判定の結果、要求ジェスチャーがないとして肯定判定された場合にはステップS40に進み、要求ジェスチャーがあると否定判定された場合にはステップS60に進む。
【0037】
ステップS40において、シーン判別部4は、交差点における進行支援の必要性を評価する。より詳しくは、シーン判別部4は、下記の条件(a)から条件(d)までの全ての条件が成立するかを判定する。
図9を参照しながら各条件について説明する。
【0038】
条件(a)は、車両100が交差点Crの手前で停車し、または徐行していることである。条件(a)の判断にあたり、車両100が交差点の手前における先頭車両であること、および車両100が停車中または徐行中であることを検出する処理がなされる。シーン判別部4は、第一の車載センサ120により先行車両300を認識し、かつ車両100から先行車両300までの距離を測定する。更に、シーン判別部4は、ナビ情報取得部24から地図情報および車両100の現在位置を取得する。シーン判別部4は、先行車両300までの距離および車両100の現在位置に基づき、車両100が交差点Crの手前の先頭車両であるかを演算する。また、シーン判別部4は、先行車両300までの距離および車両100の現在位置に基づき、先行車両300が交差点Crの手前にいないかを演算する。
【0039】
シーン判別部4は、車両100が交差点Crの手前に位置し、かつ先行車両300が交差点Crの手前に位置していない場合に車両100が交差点Crの手前の先頭車両であると判定する。なお、シーン判別部4は、車両100の前方を撮像した画像に基づいて車両100が交差点Crの手前の先頭車両であるか否かを判断してもよい。シーン判別部4は、走行情報取得部23から取得した車両100の車速に基づいて、車両100が停車していると判定すること、および車両100が徐行していると判定することができる。なお、徐行とは、車両等が直ちに停止することができるような速度で走行している走行状態を示す。
【0040】
条件(b)は、先行車両300が交差点Crの向こう側で停車し、または徐行していることである。条件(b)の判断にあたり、先行車両300が交差点Crの向こう側にいるか否かを検出する処理がなされる。シーン判別部4は、第一の車載センサ120により先行車両300を認識し、かつ車両100から先行車両300までの距離を測定する。シーン判別部4は、ナビ情報取得部24から地図情報および車両100の現在位置を取得する。シーン判別部4は、先行車両300までの距離および車両100の現在位置に基づき、先行車両300が交差点Crの向こう側に位置しているか否かを演算する。
【0041】
条件(c)は、先行車両300の後方に車両100が進入できるスペースがないことである。条件(c)の判断にあたり、十分なスペースがあるか否かを検出する処理がなされる。シーン判別部4は、第一の車載センサ120により先行車両300を認識し、かつ車両100から先行車両300までの距離を測定する。第一の車載センサ120のカメラから取得した画像に基づいて、車両100から交差点Crの向こう側にある横断歩道Cwまでの距離L1を演算する。
【0042】
シーン判別部4は、横断歩道Cwまでの距離L1に基づいて、先行車両300の後方にあるスペースの長さL2を演算する。スペースの長さL2は、車両100から先行車両300までの距離と、車両100から横断歩道Cwまでの距離L1との差分である。シーン判別部4は、スペースの長さL2が閾値未満の値である場合に、先行車両300の後方に車両100が進入できるスペースがないと判定する。閾値は、例えば、車両100の全長と、最低限必要な車間距離との和である。
【0043】
条件(d)は、車両100の進行方向の車両用信号機SG1において青信号が点灯していることである。シーン判別部4は、車両用信号機SG1の状態を周辺情報取得部21から取得する。なお、シーン判別部4は、青信号の残時間を考慮してシーンを判別してもよい。例えば、シーン判別部4は、青信号の残時間が所定時間以下である場合に進行支援の必要があると判断してもよい。
【0044】
シーン判別部4は、条件(a)から条件(d)のそれぞれについて成立するか否かを判定する。ステップS40の判定の結果、条件(a)から条件(d)の全てが成立すると肯定判定された場合にはステップS50に進み、少なくとも一つの条件が成立しないとして否定判定された場合にはフローチャートが終了する。
【0045】
ステップS50において、シーン判別部4は、前方視界を評価する。より詳しくは、シーン判別部4は、下記条件(p)または条件(q)が成立するか否かを判定する。条件(p)および条件(q)は、ドライバ200の前方視界が妨げられると考えられる条件である。
【0046】
条件(p)は、先行車両300の車種が予め定められた所定車種に該当することである。所定車種は、ドライバ200の前方視界を妨げやすい車種であり、例えば、トラック、バス、ワゴン車等の大型の車種である。所定車種は、車両幅が所定幅よりも広いこと、および車高が所定高さよりも高いこと、の少なくとも一方を満たす。先行車両300の車種は、カメラによって撮像された前方画像に基づく車両タイプ認識で推定される。
【0047】
条件(q)は、先行車両300の車両幅や車高が一定サイズ以上であることである。先行車両300の車両幅および車高は、カメラによって撮像された前方画像に基づく車両サイズ認識で推定される。
図10に示すように、先行車両300の車両幅W1および車高H1が算出される。先行車両300のサイズは、例えば、画像における先行車両300の大きさと、車両100から先行車両300までの距離とに基づいて算出される。シーン判別部4は、先行車両300の車両幅が所定幅以上であること、および先行車両300の車高が所定高さ以上であること、の少なくとも一方が成立する場合に条件(q)が成立したと判断する。
【0048】
ステップS50の結果、条件(p)または条件(q)が成立するとして肯定判定された場合にはステップS60に進み、何れの条件も成立しないとして否定判定された場合にはフローチャートが終了する。
【0049】
ステップS60において、渋滞度合い処理部5は、渋滞度合いを判断する。渋滞度合いの判断内容について、
図6のフローチャートを参照して説明する。ステップS110において、渋滞度合い処理部5は、先行車両300よりも前方のスペースを予想する。
図11に示すように先行車両300の前方にスペースSpがある場合、そのスペースSpの大きさは先行車両300の走行状態に反映されると考えられる。渋滞度合い処理部5は、以下に説明するようにスペースSpのレベルを予想する。
【0050】
図12に示すように、渋滞度合い処理部5は、スペースSpのレベルを第1レベルから第3レベルまでの三段階で評価する。第1レベルは、スペースSpが最も狭いと考えられるレベルであり、第3レベルは、スペースSpが最も広いと考えられるレベルである。渋滞度合い処理部5は、第一の車載センサ120から取得した先行車両300の速度に基づいてスペースレベルを判定する。渋滞度合い処理部5は、先行車両300が停車している場合、スペースレベルを第1レベルとする。
【0051】
渋滞度合い処理部5は、先行車両300が所定値未満の車速で徐行している場合、加減速に応じてレベルを評価する。詳しくは、渋滞度合い処理部5は、先行車両300が減速している場合、スペースレベルを1とし、定速走行している場合、スペースレベルを2とし、加速している場合、スペースレベルを3とする。
【0052】
渋滞度合い処理部5は、先行車両300が所定値以上の速度で徐行している場合、スペースレベルを3とする。ステップS110でスペースの予測が完了すると、ステップS120に進む。
【0053】
ステップS120において、渋滞度合い処理部5は、前方の危険度を確認する。渋滞度合い処理部5は、先行車両300よりも前方の障害についての情報を周辺情報取得部21から取得する。
図11に示すように、先行車両300の前方にスペースSpがあったとしても、歩行者400等の障害が存在する場合には先行車両300の進行が阻害される可能性が高い。
【0054】
図13に示すように、渋滞度合い処理部5は、先行車両300の前方の危険度レベルを第1レベルから第3レベルまでの三段階で評価する。第1レベルは、危険度が最も高いと考えられるレベルであり、第3レベルは、危険度が最も低いと考えられるレベルである。渋滞度合い処理部5は、周辺情報取得部21から障害に関する情報を取得する。障害について取得する情報は、車車間通信によって先行車両300から取得した情報であってもよく、路車間通信によってインフラ側のシステムから取得した情報であってもよい。
【0055】
渋滞度合い処理部5は、先行車両300の進路上に障害がある場合、危険度レベルを1とする。進路上の障害とは、例えば、先行車両300の前方を横断している歩行者400や、先行車両300の前方の障害物等である。渋滞度合い処理部5は、先行車両300の進路のすぐ近くに障害がある場合、危険度レベルを2とする。進路のすぐ近くの障害とは、例えば、先行車両300の前方を横断しようとしている歩行者400や、隣接する車線を横断している歩行者や、隣接する車線の障害物等である。渋滞度合い処理部5は、先行車両300の進路に影響する障害がない場合、危険度レベルを3とする。ステップS120で危険度のレベルが決定されると、ステップS130に進む。
【0056】
ステップS130において、渋滞度合い処理部5は、総合レベルを決定する。総合レベルは、スペースレベルおよび危険度レベルを総合したレベル値である。総合レベルは、交差点Crの向こう側に車両100が進入できるスペースが発生する可能性を示す。
図14に示すように、渋滞度合い処理部5は、総合レベルを第1レベルから第3レベルまでの三段階で評価する。第1レベルは、交差点Crの向こう側に車両100のためのスペースが発生する可能性が最も低いと考えられるレベルである。第3レベルは、交差点Crの向こう側に車両100のためのスペースが発生する可能性が最も高いと考えられるレベルである。
【0057】
図14に示すように、スペースレベルが第1レベルである場合、または危険度レベルが第1レベルである場合、総合レベルが1とされる。スペースレベルおよび危険度レベルが何れも第1レベルではなく、かつスペースレベルの値と危険度レベルの値との合計値が5以下である場合、総合レベルは2とされる。スペースレベルおよび危険度レベルが両方とも第3レベルである場合、総合レベルが3とされる。ステップS130で総合レベルが決定されると、渋滞度合いの判断が終了してステップS70に進む。
【0058】
ステップS70において、表示処理部6は、表示処理を実行する。表示処理の内容について、
図7のフローチャートを参照して説明する。ステップS210において、表示処理部6は、表示物の画像を生成する。ここでは、表示物が先先行車両310である場合の画像生成について説明する。表示処理部6は、例えば、先行車両300のカメラ映像から画像を生成する。より詳しくは、表示処理部6は、周辺情報取得部21を介して、先行車両300が撮像した先先行車両310の画像を取得する。この場合、先先行車両310の画像は、車車間通信によって先行車両300から車両100に送信される。
【0059】
表示処理部6は、取得した画像から先先行車両310の画素範囲を抽出し、かつ画像を加工する。加工後の画像は、例えば、
図4に示す車両画像31である。表示処理部6は、例えば、抽出された先先行車両310の画素範囲に対して二値化を行なって単純化する。単純化がなされることで、表示される画像が先先行車両310の実景ではないことが明確となる。
【0060】
なお、表示処理部6は、先行車両300がLiDAR等によって認識した物体の情報を取得してもよい。この場合の表示物は、先行車両300によって認識された物体である。表示処理部6は、先行車両300が抽出して加工した画像を表示物の画像として用いてもよい。
【0061】
表示処理部6は、先行車両300よりも前の物体の情報をインフラ側のシステムから取得してもよい。この場合の表示物の画像は、例えば、予め用意した画像である。例えば、先行車両300よりも前の物体が車両である場合、表示処理部6は、予め記憶していた車両画像を表示物の画像として用いる。ステップS210で表示物の画像が生成されると、ステップS220に進む。
【0062】
ステップS220において、表示処理部6は、表示枠の画像を生成する。表示枠の画像は、例えば、
図4に示す枠画像32である。表示枠の画像は、この表示枠の画像を介して向こう側を覗き込んでいるような感覚を起こさせる画像であることが好ましい。このような画像としては、例えば、虫眼鏡の形状を有する画像や、窓の形状を有する画像が挙げられる。ステップS220で表示枠の画像が生成されると、ステップS230に進む。
【0063】
ステップS230において、表示処理部6は、表示の配置とサイズを決定する。表示処理部6は、表示物の画像および表示枠の画像がそれぞれ先行車両300と重なるように表示位置を決定する。
図15には、総合レベルに応じた画像が示されている。
図15において、左側は、総合レベルが3である場合の画像30の配置およびサイズを示す。
図15において、中央は、総合レベルが2である場合の画像30の配置およびサイズを示す。
図15において、右側は、総合レベルが1である場合の画像30の配置およびサイズを示す。
【0064】
本実施形態の表示処理部6は、
図15に示すように、車両画像31の全体が先行車両300と重なるように車両画像31の配置およびサイズを調節する。また、表示処理部6は、枠画像32の略全体が先行車両300と重なるように枠画像32の配置およびサイズを調節する。横方向における車両画像31および枠画像32の中心位置は、例えば、先行車両300の中央とされる。横方向における車両画像31および枠画像32の中心位置は、車両100が走行している車線の中央であってもよい。
【0065】
縦方向における車両画像31および枠画像32の中心位置は、例えば、車両100から先先行車両310までの距離に応じて定められてもよい。車両画像31および枠画像32の中心位置は、ドライバ200から見た場合の消失点とされてもよい。
【0066】
なお、車両画像31は、車両100から見た場合の先先行車両310の位置に重ねて配置されることが好ましい。言い換えると、車両画像31の位置は、先行車両300を透視した場合の先先行車両310の位置であることが好ましい。
【0067】
なお、車両画像31のサイズは、先行車両300から先先行車両310までの距離が大きくなるに従って小さくされてもよい。車両画像31の大きさは、車両100から見た場合の先先行車両310の見かけの大きさと同じとされてもよい。言い換えると、車両画像31の大きさは、先行車両300を透視した場合の先先行車両310の大きさと同じであってもよい。
【0068】
枠画像32のサイズは、例えば、車両100から先先行車両310までの距離にかかわらず一定とされる。このようにした場合、枠画像32のサイズに対する車両画像31のサイズの割合は、例えば、渋滞度合いに応じて変化する。すなわち、車両画像31が大きなサイズで表示されることで、先行車両300の前方の渋滞度合いが高いことが表現される。
図15に示すように、総合レベルの値が1である場合、車両画像31は、枠画像32によって囲まれた領域の全体を覆うように表示される。横方向における車両画像31の端部は、枠画像32と重なっている。このような表示により、交差点Crの向こう側における渋滞度合いが高いことが直感的に理解される。ステップS230で表示の位置およびサイズが決定されると、ステップS240に進む。
【0069】
なお、車両用表示装置1は、渋滞度合いに応じて車両画像31の表示距離を変化させてもよい。表示距離とは、アイポイント201から車両画像31の結像位置までの距離である。本実施形態の車両用表示装置1は、拡張現実ヘッドアップディスプレイ(AR-HUD)であり、表示距離を変化させることができる。車両用表示装置1は、例えば、表示光の光路長を変化させる機構を有する。一例として、表示器7は、画像投影部71からミラー72までの光路長を可変とする機構を有していてもよい。
【0070】
車両用表示装置1は、例えば、渋滞度合いが高いほど表示距離を短くする。この場合、車両用表示装置1は、総合レベルの値が3である場合の表示距離を最も長くし、総合レベルの値が1である場合の表示距離を最も短くする。言い換えると、総合レベルの値が3である場合、アイポイント201から見た車両画像31の結像位置が最も遠くなる。一方、総合レベルの値が1である場合、アイポイント201から見た車両画像31の結像位置が最も近くなる。ドライバ200は、表示距離に基づく遠近感により、先方の渋滞度合いを知ることができる。
【0071】
車両用表示装置1は、渋滞度合い等に応じて車両画像31の大きさおよび表示距離の少なくとも一方を変化させることができる。つまり、車両用表示装置1は、車両画像31の大きさおよび表示距離の両方を変化させてもよく、車両画像31の大きさまたは表示距離の何れかを変化させてもよい。車両用表示装置1は、例えば、車両100から先先行車両310までの距離、および渋滞度合いの少なくとも一方に基づいて、車両画像31の大きさおよび表示距離を決定する。
【0072】
ステップS240において、表示処理部6は、表示色を決定する。表示処理部6は、例えば、総合レベルの値に応じて画像30の表示色を決定する。表示処理部6は、総合レベルの値が3である場合、画像30の表示色を緑色とする。表示処理部6は、総合レベルの値が2である場合、画像30の表示色を黄色とする。表示処理部6は、総合レベルの値が1である場合、画像30の表示色を赤色とする。ステップS240において表示色が決定されると、ステップS250に進む。
【0073】
ステップS250において、表示処理部6は、表示させるアイコン40を決定する。アイコン40は、渋滞の原因を示す画像であり、障害情報の画像である。アイコン40は、
図16に示す左折アイコン41、
図17に示す工事アイコン42、および
図18に示す歩行者アイコン43を含む。左折アイコン41は、左へ曲がる矢印の形状の画像である。左折アイコン41は、左折しようとしている車両が原因で渋滞が発生していることを示す。左折しようとしている車両は、先先行車両310であってもよく、先先行車両310よりも前方の車両であってもよい。
【0074】
例示された工事アイコン42は、黒の線と黄色の線とが交互に配置された縞模様の画像である。工事アイコン42は、工事が原因で渋滞が発生していることを示す。歩行者アイコン43は、歩行者を模した形状の画像である。歩行者アイコン43は、歩行者が原因で渋滞が発生していることを示す。歩行者アイコン43は、横断歩道以外の箇所で道路を横断する歩行者が存在する場合に表示されてもよい。
【0075】
アイコン40は、例えば、車両画像31に重ねて表示される。アイコン40が表示されることにより、ドライバ200は先行車両300の前方の状況をより詳しく把握することができる。ステップS250においてアイコン40が決定されると、ステップS260に進む。
【0076】
ステップS260において、表示処理部6は、表示する画像を表示器7に出力する。表示処理部6は、画像30およびアイコン40の画像データ、表示位置、表示サイズ、および表示色を表示器7に出力する。表示器7は、表示処理部6の指令に従い、画像30およびアイコン40の虚像を表示させる。
【0077】
なお、車両用表示装置1は、車両100が交差点Crの手前に位置しているときに限らず障害情報を表示させてもよい。例えば、車両用表示装置1は、先行車両300が大きなサイズの車両であり、先行車両300が停車または徐行しており、かつ車両100が停車または徐行している場合に画像30やアイコン40等の障害情報の画像を表示させてもよい。車両画像31が表示された場合、ドライバ200は先行車両300の進行を阻害している障害が先先行車両310であると知ることができる。アイコン40が表示された場合、ドライバ200は先行車両300の進行を阻害している原因を知ることができる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の車両用表示装置1は、取得部2と、表示器7と、を有する。取得部2は、先行車両300の進行を阻害する障害に関する情報である障害情報を取得する。表示器7は、自車両である車両100が停車または徐行しており、かつ先行車両300が停車または徐行している状況において、障害情報を表示させる。本実施形態の車両用表示装置1は、車両100のドライバ200に対して先行車両300よりも前方の状況を知らせることができる。
【0079】
本実施形態の車両用表示装置1は、先行車両300の車両幅が所定幅以上であること、および先行車両300の車高が所定高さ以上であること、の少なくとも一方が成立する場合に障害情報を表示させる。すなわち、車両用表示装置1は、ドライバ200の前方視界が妨げられやすい場面において障害情報を表示させる。
【0080】
本実施形態の表示器7は、車両100のウインドシールド102に投影する表示光によって、先行車両300に重ねて障害情報の虚像を表示させる投影器である。先行車両300に重ねて障害情報の虚像が表示されることで、直感的な情報提供が可能である。
【0081】
本実施形態の取得部2は、先先行車両310の情報を取得する。表示器7は、障害情報の虚像として、先先行車両310を模した虚像を表示させる。例示された車両画像31は、先先行車両310を模した画像である。先先行車両310を模した画像を表示させることで、先先行車両310によって先行車両300の進行が阻害されていることを直感的にドライバ200に伝えることができる。
【0082】
本実施形態の表示器7は、先行車両300の前方の渋滞度合いに応じて先先行車両310を模した虚像の大きさおよび表示距離の少なくとも一方を異ならせる。渋滞度合いに応じて虚像の大きさおよび表示距離の少なくとも一方が異なることで、直感的な情報提供が可能である。
【0083】
本実施形態の取得部2は、先行車両300の進行を阻害する渋滞の原因を取得する。表示器7は、障害情報の虚像として、渋滞の原因を示す虚像を表示させる。例示されたアイコン40は、渋滞の原因を示す画像である。本実施形態の車両用表示装置1は、渋滞の原因を示す虚像を表示させることで、ドライバ200に対して詳細な状況を提供することができる。
【0084】
本実施形態の車両用表示装置1は、障害情報の虚像を表示するか否かを決定するシーン判別部4を有する。シーン判別部4は、自車両である車両100が交差点Crの手前に位置する先頭車両であり、かつ先行車両300が交差点Crの向こう側に位置する場合に障害情報の虚像を表示すると決定する。このようなシーンにおいて障害情報を提供することで、車両100を交差点Crに進入させてよいか否かの判断材料をドライバ200に提供することができる。
【0085】
なお、表示器7は、車両100の前景に重ねて虚像VIを表示するものには限定されない。すなわち、虚像VIは、前景と重ならない位置に表示されてもよい。表示器7は、虚像VIを表示する装置には限定されない。表示器7は、例えば、画面に表示した実像をドライバ200に視認させる装置であってもよい。この場合、表示器7の画面がドライバ200の前方に、かつドライバ200から視認可能な箇所に配置される。表示器7は、例えば、メータ装置の一部であってもよく、メータ装置に隣接して配置されてもよい。
【0086】
表示器7がドライバ200に実像を視認させる装置である場合、表示器7は、先行車両300を模した画像を表示し、更に、先行車両300を模した画像に重畳させて車両画像31および枠画像32を表示してもよい。
【0087】
先行車両300の進行を直接阻害する障害が先先行車両310ではない場合、車両用表示装置1は、車両画像31を表示させなくてもよい。例えば、先行車両300の直前を横断している歩行者が先行車両300の進行を阻害している場合、車両用表示装置1は、歩行者アイコン43を表示させ、かつ車両画像31を表示させなくてもよい。先行車両300が工事によって進行を阻害されている場合、車両用表示装置1は、工事アイコン42を表示させ、かつ車両画像31を表示させなくてもよい。
【0088】
[実施形態の第1変形例]
実施形態の第1変形例について説明する。実施形態の第1変形例に係る車両用表示装置1は、先先行車両310の走行状態を加味してスペースレベルを決定する。
図19は、実施形態の第1変形例に係るスペースレベルの判定表を示す図である。先先行車両310の車速を含む走行状態は、例えば、車車間通信によって先先行車両310から取得される。
【0089】
先行車両300が停車している場合、先先行車両310の状態にかかわらず、スペースレベルは1とされる。また、先行車両300が所定値未満の車速で徐行しており、かつ減速している場合、先先行車両310の状態にかかわらず、スペースレベルは1とされる。
【0090】
先行車両300の状態が
図19に示す第一状態である場合、先先行車両310の状態に応じてスペースレベルが決定される。第一状態は、先行車両300が所定値未満の定速で徐行している状態である。第一状態に対して、先先行車両310が停車している場合、スペースレベルは1とされる。先先行車両310が徐行し、かつ減速している場合、スペースレベルは1とされる。先先行車両310が徐行し、かつ定速走行している場合、スペースレベルは2とされる。先先行車両310が徐行し、かつ加速している場合、スペースレベルは3とされる。
【0091】
先行車両300の状態が
図19に示す第二状態である場合、先先行車両310の状態に応じてスペースレベルが決定される。第二状態は、先行車両300が所定値未満の車速で走行し、かつ加速している状態である。第二状態に対して、先先行車両310が停車している場合、スペースレベルは1とされる。先先行車両310が減速している場合、スペースレベルは2とされる。先先行車両310が定速走行し、または加速している場合、スペースレベルは3とされる。
【0092】
先行車両300が所定値以上の車速で徐行している場合、先先行車両310の状態にかかわらずスペースレベルは3とされる。先先行車両310の走行状態がスペースレベルに反映されることで、ドライバ200に対して適切な情報を提供することが可能となる。
【0093】
なお、
図20および
図21を参照して説明するように、先先行車両310と先先行車両310の速度差がスペースレベルに反映されてもよい。
図20において、横軸は先行車両300の車速、縦軸は先先行車両310の車速を示す。
図20のマップには、スペースレベルの判定のための境界線Thが定められている。先行車両300の車速がV1以下の領域では、境界線Thの値が一定である。速度V1は、車両が略動いていないと考えられる速度であり、例えば、クリープ現象による走行速度よりも低い速度である。速度V1は、例えば、5km/h未満の値である。先行車両300の車速がV1よりも大きい領域では、境界線Thは傾きが1の直線である。この傾斜線は、例えば、原点を通る直線である。
【0094】
マップには、第一領域R1および第二領域R2が設定されている。第一領域R1は、境界線Thよりも先先行車両310の車速が大きい領域である。第二領域R2は、境界線Thよりも先先行車両310の車速が小さい領域である。第一領域R1では、先先行車両310と先行車両300との間の車間距離が増加傾向にあると考えられる。第二領域R2では、先先行車両310と先行車両300との間の車間距離が減少傾向にあると考えられる。
【0095】
渋滞度合い処理部5は、先行車両300の車速と、先先行車両310の車速との組み合わせによって決まる点がマップ上でどこに位置するかによってスペースレベルを決定する。渋滞度合い処理部5は、先先行車両310の車速が第一領域R1にある場合、スペースレベルを3とする。また、先先行車両310の車速が境界線Th上の値である場合、スペースレベルは2とされる。先先行車両310の車速が第二領域R2にある場合、スペースレベルは1とされる。
【0096】
[実施形態の第2変形例]
車両画像31および枠画像32の形状は、実施形態において例示された形状には限定されない。車両画像31の形状は、先先行車両310の車種に応じて異なる形状とされてもよい。アイコン40の種類および形状は、実施形態において例示された種類および形状には限定されない。例えば、事故によって渋滞が発生している場合、事故を示すアイコン40が表示されてもよい。故障車によって渋滞が発生している場合、故障車を示すアイコン40が表示されてもよい。
【0097】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 車両用表示装置
2 取得部
3 ON/OFF確認部
4 シーン判別部
5 渋滞度合い処理部
6 表示処理部
7 表示器
21,22:周辺情報取得部、 23:走行情報取得部、 24:ナビ情報取得部
25:ドライバ状態取得部、 26:操作入力受付部
30:画像、 31:車両画像、 32:枠画像
40 アイコン
41:左折アイコン、 42:工事アイコン、 43:歩行者アイコン
71:画像投影部、 72:ミラー
100:車両、 101:ダッシュボード、 102:ウインドシールド
110:通信部、 120 第一の車載センサ、 130:ナビゲーション装置
140:第二の車載センサ、 150:スイッチ
200:ドライバ、 201:アイポイント
300:先行車両、 310:先先行車両
400:歩行者
Cr:交差点、 Cw:横断歩道
SG1:車両用信号機、 SG2:歩行者用信号機
VI:虚像